説明

農園芸用殺菌剤組成物及び植物病害の防除方法

【課題】 植物病害に感染した栽培作物に対する安定した高い殺菌効果を有する組成物を提供する。
【解決手段】 (a)式(I):
【化1】


(式中、RはC1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基であり、nは1〜5の整数である)で表されるイミダゾール系化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤とを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除効果、特に植物病害を予防及び/又は治療する効果を格段に向上させた農園芸用殺菌剤組成物及びその組成物を用いる植物病害の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイミダゾール系化合物が有害生物防除剤として有用であることが記載され、必要に応じて他の殺菌剤との混用・併用が可能であるとの記載がある。また、フルモルフ(flumorph)は、特許文献2のTable3にEx.No.3.01として記載の化合物である。しかしながら、これら公報には本発明の農園芸用殺菌剤組成物における有効成分化合物の組み合わせは記載されていない。
【0003】
【特許文献3】ヨーロッパ公開特許公報第298196号
【特許文献4】米国特許公報第6020332号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後記式(I)で表されるイミダゾール系化合物は各々その植物病害防除効果において、特定の植物病害に対してその効果が十分でなかったり、残効性が比較的短かったりして、ある施用場面では、植物病害に対し実用上、不十分な防除効果しか示さないこともある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前述の問題点を解決すべく研究した結果、後記式(I)で表されるイミダゾール系化合物に対し、フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤を混合して使用することにより、各化合物を単独で使用した場合に比して予想することができないような、さらに優れた植物病害防除効果が得られることの知見を得、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、(a)式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、RはC1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、nは1〜5の整数である)で表されるイミダゾール系化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤とを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物に関する。また、本発明は前記農園芸用殺菌剤組成物を植物に施用することを特徴とする植物病害の防除方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害に感染した栽培作物に対する安定した高い防除効果を有するものであり、この組成物を用いて植物病害を防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
式(I)のイミダゾール系化合物中、Rで定義されたC1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基のアルキル部分としては、炭素数1〜6のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。これらのアルキルは直鎖又は枝分かれ鎖であってもよい。また、式(I)のnは1〜5の整数である。なお、nが2以上の場合、Rは同種であっても異種であってもよい。
【0011】
式(I)のイミダゾール系化合物には、例えば次の化合物が含まれる。
(1)4−クロロ−2−シアノ−1−ジメチルスルファモイル−5−(4−メチルフェニル)イミダゾール(化合物No.1)
(2)4−クロロ−2−シアノ−1−ジメチルスルファモイル−5−(4−メトキシフェニル)イミダゾール(化合物No.2)
(3)4−クロロ−2−シアノ−1−ジメチルスルファモイル−5−(4−エチルフェニル)イミダゾール(化合物No.3)
(4)4−クロロ−2−シアノ−1−ジメチルスルファモイル−5−(3−メチル−4−メトキシフェニル)イミダゾール(化合物No.4)
なお、前記式(I)のイミダゾール系化合物は、ヨーロッパ公開特許公報第298196号及びヨーロッパ公開特許公報第705823号などに記載された方法によって製造することができる。
【0012】
本発明で有効成分(b)として用いられるフルモルフ(Flumorph)は、The Pesticide Manual(第13版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第462〜463頁に記載の化合物である。ベナラキシル‐M(Benalaxyl-M)(別名キララキシル(Kiralaxyl、Chiralaxyl))は、AG CHEM NEW COMPOUND REVIE VOLUME22(2004)の第61頁並びにShibuya Index(2005)第116頁に記載の化合物である。
【0013】
前記の(a)式(I)のイミダゾール系化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤とを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物は、有害病菌に感染している或いはその恐れのある栽培作物、例えばキュウリ、トマト、ナスなどの蔬菜類;イネ、麦類などの禾穀類;マメ類、リンゴ、ナシ、ブドウ、柑橘などの果樹類;バレイショなどに適用することにより優れた殺菌作用を呈する。例えばうどんこ病、べと病、炭そ病、灰色かび病、みどりかび病、黒星病、斑点落葉病、斑点細菌病、黒斑病、黒点病、晩腐病、疫病、輪紋病、いもち病、紋枯病、苗立枯病、白絹病などの病害の防除に好適である。また、フザリウム菌、リゾクトニア菌、バーティシリウム菌、プラズモディオホーラ属菌、ピシウム菌などの植物病原菌によって引き起こされる土壌病害に対しても優れた防除効果を示す。本発明の農園芸用殺菌剤組成物は残効性が長く、浸透移行性が優れ、予防効果及び/又は治療効果を有するが、特に予防効果が優れている。
【0014】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、具体的にはイネいもち病;イネ紋枯病;キュウリ炭そ病;キュウリ、メロン、キャベツ、ハクサイ、タマネギ、カボチャ、ブドウなどのべと病;小麦、大麦、キュウリなどのうどんこ病;バレイショ、トウガラシ、ピーマン、スイカ、カボチャ、タバコ、トマトなどの疫病;小麦のセプトリア病;トマト輪紋病;柑橘類の黒点病;柑橘類のみどりかび病;ナシ黒星病;リンゴ斑点落葉病;タマネギの白色疫病;スイカの褐色腐敗病;各種の灰色かび病、菌核病、さび病、斑点細菌病などの病害;フザリウム菌、ピシウム菌、リゾクトニア菌、バーティシリウム菌などの植物病原菌によって引き起こされる各種土壌病害などの藻菌類による病害に対して優れた防除効果を示す。また、プラズモディオホーラ属菌による病害に対しても優れた防除効果を示す。該組成物は、さらに具体的にはバレイショ、トウガラシ、ピーマン、スイカ、カボチャ、タバコ、トマト、ナス、イチゴ、イチジクなどの疫病;キュウリ、メロン、キャベツ、ハクサイ、タマネギ、カボチャ、ブドウ、レタス、ホウレンソウ、ヒマワリ、ホップなどのべと病などによる病害に対して特に優れた防除効果を示す。
【0015】
本発明における農園芸用殺菌剤組成物を構成する複数の有効成分は従来の農薬製剤の場合と同様に、各種補助剤と配合し、乳剤、粉剤、水和剤、液剤、粒剤、懸濁製剤などの種々の形態に製剤することができる。その際、前記式(I)の化合物と他の特定の化合物とを一緒に混合・製剤してもよいし、あるいは別々に製剤してそれらを混合してもよい。これら製剤品の実際の使用に際しては、そのまま使用するか、又は水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用することができる。ここにいう補助剤としては、担体、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、安定剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤、凍結防止剤、消泡剤などが挙げられ、必要により適宜添加すればよい。担体としては、固体担体と液体担体が挙げられる。固体担体としては、澱粉、砂糖、セルロース粉、シクロデキストリン、活性炭、大豆粉、小麦粉、もみがら粉、木粉、魚粉、粉乳などの動植物性粉末;タルク、カオリン、ベントナイト、有機ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、ゼオライト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、クレー、アルミナ、シリカ、硫黄粉末、消石灰などの鉱物性粉末などが挙げられる。液体担体としては、水;大豆油、綿実油などの植物油;牛脂、鯨油などの動物油;エチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ケロシン、灯油、流動パラフィンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキサン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;酢酸エチルエステル、脂肪酸のグリセリンエステルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどの含硫化合物類;N−メチル−2−ピロリドン、などが挙げられる。展着剤としては、アルキル硫酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、リグニンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明において、他の農薬、例えば殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、抗ウイルス剤、誘引剤、除草剤、植物生長調製剤等を混用することもできる。この場合には一層優れた効果を示すことがある。
【0017】
前記した他の農薬中、殺菌剤の有効成分化合物(一般名;一部申請中を含む、又は日本植物防疫協会供試試験コード。但し、一部申請中とは、農薬の国際標準名(ISO名)に申請中であるが、正式に認可されていない、ということであり、以下同様である。)としては、例えば、メパニピリム(Mepanipyrim)、ピリメサニル(Pyrimethanil)、シプロジニル(Cyprodinil)のようなアニリノピリミジン系化合物;
フルアジナム(Fluazinam)のようなピリジナミン系化合物;
トリアジメホン(Triadimefon)、ビテルタノール(Bitertanol)、トリフルミゾール(Triflumizole)、エタコナゾール(Etaconazole)、プロピコナゾール(Propiconazole)、ペンコナゾール(Penconazole)、フルシラゾール(Flusilazole)、マイクロブタニル(Myclobutanil)、シプロコナゾール(Cyproconazole)、テブコナゾール(Tebuconazole)、ヘキサコナゾール(Hexaconazole)、ファーコナゾールシス(Furconazole‐cis)、プロクロラズ(Prochloraz)、メトコナゾール(Metconazole)、エポキシコナゾール(Epoxiconazole)、テトラコナゾール(Tetraconazole)、オキスポコナゾールフマル酸塩(Oxpoconazole fumarate)、シプコナゾール(Sipconazole)、プロチオコナゾール(Prothioconazole)、トリアジメノール(Triadimenol)、フルトリアフオール(Flutriafol)、ジフェノコナゾール(Difenoconazole)、フルキンコナゾール(Fluquinconazole)、フェンブコナゾール(Fenbuconazole)、ブロムコナゾール(Bromuconazole)、ジニコナゾール(Diniconazole)、ペフラゾエート(Pefurazoate)、イプコナゾール(ipconazole)、シメコナゾール(Simeconazole)のようなアゾール系化合物;
キノメチオネート(Quinomethionate)のようなキノキサリン系化合物;
マンネブ(Maneb)、ジネブ(Zineb)、マンゼブ(Mancozeb)、ポリカーバメート(Polycarbamate)、メチラム(Metiram)、プロピネブ(Propineb)チラム(thiram)、のようなジチオカーバメート系化合物;
フサライド(Fthalide)、クロロタロニル(Chlorothalonil)、キントゼン(Quintozene、PCNB)のような有機塩素系化合物;
ベノミル(Benomyl)、チオファネートメチル(Thiophanate‐Methyl)、カーベンダジム(Carbendazim)、チアベンダゾール(Thiabendazole)、フベリアゾール(fuberiazole)のようなイミダゾール系化合物;
シモキサニル(Cymoxanil)のようなシアノアセトアミド系化合物;
メタラキシル(Metalaxyl)、メタラキシル-M(Metalaxyl-M、メフェノキサム(Mefenoxam))、オキサジキシル(Oxadixyl)、オフレース(Ofurace)、ベナラキシル(Benalaxyl)、フララキシル(Furalaxyl)、シプロフラム(Cyprofuram)のようなフェニルアミド系化合物;
ジクロフルアニド(Dichlofluanid)のようなスルフェン酸系化合物;
水酸化第二銅(Cuprichydroxide)、有機銅(Oxine Copper)のような銅系化合物;
ヒメキサゾール(Hymexazol)のようなイソキサゾール系化合物;
ホセチルアルミニウム(Fosetyl‐Al)、トルコホスメチル(Tolcofos‐Methyl)、S−ベンジル O,O−ジイソプロピルホスホロチオエート、O−エチル S,S−ジフェニルホスホロジチオエート、アルミニウムエチルハイドロゲンホスホネートのような有機リン系化合物;
キャプタン(Captan)、キャプタホル(Captafol)、フォルペット(Folpet)のようなN−ハロゲノチオアルキル系化合物;
プロシミドン(Procymidone)、イプロジオン(Iprodione)、ビンクロゾリン(Vinclozolin)のようなジカルボキシイミド系化合物;
フルトラニル(Flutolanil)、メプロニル(Mepronil)、ゾキサミド(Zoxamid)、チアジニル(Tiadinil)のようなベンズアニリド系化合物;
カルボキシン(Carboxin)、オキシカルボキシン(Oxycarboxin)、チフルザミド(Thifluzamide)、MTF-753(ペンチオピラド、Penthiopyrad)、ボスカリド(Boscalid) のようなアニリド系化合物;
トリホリン(Triforine)のようなピペラジン系化合物;
ピリフェノックス(Pyrifenox)のようなピリジン系化合物;
フェナリモル(Fenarimol)、フルトリアフォル(Flutriafol)のようなカルビノール系化合物;
フェンプロピディン(Fenpropidine)のようなピペリジン系化合物;
フェンプロピモルフ(Fenpropimorph)、トリデモルフ(Tridemorph)のようなモルフォリン系化合物;
フェンチンヒドロキシド(Fentin Hydroxide)、フェンチンアセテート(Fentin Acetate)のような有機スズ系化合物;
ペンシキュロン(Pencycuron)のような尿素系化合物;
ジメトモルフ(Dimethomorph)のようなシンナミック酸系化合物;
ジエトフェンカルブ(Diethofencarb)のようなフェニルカーバメート系化合物;
フルジオキソニル(Fludioxonil)、フェンピクロニル(Fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物;
アゾキシストロビン(Azoxystrobin)、クレソキシムメチル(Kresoxim‐Methyl)、メトミノフェン(Metominofen)、トリフロキシストロビン(Trifloxystrobin)、ピコキシストロビン(Picoxystrobin)、オリザストロビン(Oryzastrobin)、ジモキシストロビン(Dimoxystrobin)、ピラクロストロビン(Pyraclostrobin)、フルオキサストロビン(Fluoxastrobin)、フルアクリピリム(Fluacrypyrin)のようなストロビルリン系化合物;
ファモキサドン(Famoxadone)のようなオキサゾリジノン系化合物;
エタボキサム(Ethaboxam)のようなチアゾールカルボキサミド系化合物;
シルチオファム(Silthiopham)のようなシリルアミド系化合物;
イプロバリカルブ−イソプロピル(Iprovalicarb)、ベンチアバリカルブ−イソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)のようなアミノアシッドアミドカーバメート系化合物;
フェナミドン(Fenamidone)のようなイミダゾリジン系化合物;
フェンヘキサミド(Fenhexamid)のようなハイドロキシアニリド系化合物;
フルスルファミド(Flusulfamid)のようなベンゼンスルホンアミド系化合物;
シフルフェナミド(Cyflufenamid)のようなオキシムエーテル系化合物;
フェノキサニル(Fenoxanil)のようなフェノキシアミド系化合物;
バリダマイシン(Validamycin)、カスガマイシン(Kasugamycin)、ポリオキシン(polyoxins)のような抗生物質;
イミノクタジン(Iminoctadine)のようなグアニジン系化合物;
ジクロメジン(Diclomezine)のようなピリダジノン系化合物が挙げられる。
【0018】
さらに、イソプロチオラン(Isoprothiolane)、トリシクラゾール(Tricyclazole)、ピロキロン(Pyroquilon)、ジクロメジン(Diclomezine)、プロベナゾール(Probenazole)、キノキシフェン(Quinoxyfen)、プロパモカルブ塩酸塩(Propamocarb Hydrochloride)、スピロキサミン(Spiroxamine)クロルピクリン(Chloropicrin)、ダゾメット(Dazomet)、メタムナトリウム塩(Metam‐sodium)、メトラフェノン(Metrafenone)、UBF-307、ジクロシメット(Diclocymet)、プロキンアジド(Proquinazid)、アミスルブロム(Amisulbrom;別名アミプロドール(Amibrodole))、KIF-7767(KUF-1204、Pyribencarb methyl、mepyricarb)、Syngenta 446510(Mandipropamid、 dipromandamid)、フルオピコリド(Fluopicolide)なども挙げられる。
【0019】
前記した他の農薬中、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤又は殺土壌害虫剤の有効成分化合物(一般名;一部申請中を含む)としては、例えばプロフェノホス(Profenofos)、ジクロルボス(Dichlorvos)、フェナミホス(Fenamiphos)、フェニトロチオン(Fenitrothion)、EPN、ダイアジノン(Diazinon)、クロルピリホスメチル(Chlorpyrifos-methyl)、アセフェート(Acephate)、プロチオホス(Prothiofos)、ホスチアゼート(Fosthiazate)、ホスホカルブ(Phosphocarb)、カズサホス(Cadusafos)、ジスルホトン(Disulfoton)、クロルピリホス(Chlorpyrifos)、デメトン-S-メチル(Demeton-S-methyl)、ジメトエート(Dimethoate)、メタミドホス(Methamidophos)のような有機リン酸エステル系化合物;カルバリル(Carbaryl)、プロポキスル(Propoxur)、アルジカルブ(Aldicarb)、カルボフラン(Carbofuran)、チオジカルブ(Thiodicarb)、メソミル(Methomyl)、オキサミル(Oxamyl)、エチオフェンカルブ(Ethiofencarb)、ピリミカルブ(Pirimicarb)、フェノブカルブ(Fenobucarb)、カルボスルファン(Carbosulfan)、ベンフラカルブ(Benfuracarb)のようなカーバメート系化合物;カルタップ(Cartap)、チオシクラム(Thiocyclam)、ベンスルタップ(Bensultap)のようなネライストキシン誘導体;ジコホル(Dicofol)、テトラジホン(Tetradifon)、エンドスルファン(Endosulfan)のような有機塩素系化合物;酸化フェンブタスズ(Fenbutatin Oxide)のような有機金属系化合物;フェンバレレート(Fenvalerate)、ペルメトリン(Permethrin)、シペルメトリン(Cypermethrin)、デルタメトリン(Deltamethrin)、シハロトリン(Cyhalothrin)、テフルトリン(Tefluthrin)、エトフェンプロックス(Ethofenprox)、フェンプロパトリン(Fenpropathrin)、ビフェントリン(Bifenthrin)のようなピレスロイド系化合物;ジフルベンズロン(Diflubenzuron)、クロルフルアズロン(Chlorfluazuron)、テフルベンズロン(Teflubenzuron)、フルフェノクスロン(Flufenoxuron)、ルフェヌロン(Lufenuron)、ノバルロン(Novaluron)のようなベンゾイルウレア系化合物;メトプレン(Methoprene)、ピリプロキシフェン(Pyriproxyfen)、フェノキシカルブ(Fenoxycarb)のような幼若ホルモン様化合物;ピリダベン(Pyridaben)のようなピリダジノン系化合物;フェンピロキシメート(Fenpyroximate)、フィプロニル(Fipronil)、テブフェンピラド(Tebufenpyrad)、エチプロール(Ethiprole)、トルフェンピラド(Tolfenpyrad)、アセトプロール(Acetoprole)、ピラフルプロール(Pyrafluprole)、ピリプロール(Pyriprole)のようなピラゾール系化合物;イミダクロプリド(Imidacloprid)、ニテンピラム(Nitenpyram)、アセタミプリド(Acetamiprid)、チアクロプリド(Thiacloprid)、チアメトキサム(Thiamethoxam)、クロチアニジン(Clothianidin)、ジノテフラン(Dinotefuran)などのネオニコチノイド;テブフェノジド(Tebufenozide)、メトキシフェノジド(Methoxyfenozide)、クロマフェノジド(Chromafenozide)、ハロフェノジド(Halofenozide)などのヒドラジン系化合物が挙げられる。
【0020】
また、ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラゾン系化合物また、その他の化合物として、フロニカミド(Flonicamid)、ブプロフェジン(Buprofezin)、ヘキシチアゾクス(Hexythiazox)、アミトラズ(Amitraz)、クロルジメホルム(Chlordimeform)、シラフルオフェン(Silafluofen)、トリアザメイト(Triazamate)、ピメトロジン(Pymetrozine)、ピリミジフェン(Pyrimidifen)、クロルフェナピル(Chlorfenapyr)、インドキサカルブ(Indoxacarb)、アセキノシル(Acequinocyl)、エトキサゾール(Etoxazole)、シロマジン(Cyromazine)、1,3−ジクロロプロペン(1,3-dichloropropene)、ジアフェンチウロン(Diafenthiuron)、ベンクロチアズ(Benclothiaz)、フルフェンリム(Flufenerim)、ピリダリル(Pyridalyl)、スピロジクロフェン(Spirodiclofen)、ビフェナゼート(Bifenazate)、スピロメシフェン(Spiromesifen)、スピロテトラマット(spirotetramat)、プロパルギット(Propargite)、クロフェンテジン(Clofentezine)、フルアクリピリム(Fluacrypyrim)、メタフルミゾン(Metaflumizone)、フルベンジアミド(Flubendiamide)、シフルメトフェン(Cyflumetofen)のような化合物などが挙げられる。更に、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、昆虫病原糸状菌剤、線虫病原糸状菌剤などのような微生物農薬、アベルメクチン(Avermectin)、エマメクチンベンゾエート(Emamectin-Benzoate)、ミルベメクチン(Milbemectin)、スピノサッド(Spinosad)、イベルメクチン(Ivermectin)、レピメクチン(Lepimectin)のような抗生物質、アザディラクチン(Azadirachtin)、ロテノン(Rotenone)のような天然物などが挙げられる。
【0021】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物において、(a)の式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)の他の殺菌剤との混合重量比(a:b)は、一般に1: 150000〜1000:1、望ましくは1: 10000〜1000:1、さらに望ましくは1:200〜200:1であり、最も望ましい混合重量比は、1:150〜20:1である。
【0022】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物を植物に施用する植物病害の防除方法も本発明に含まれる。本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分の使用濃度は、対象作物、使用方法、製剤形態、施用量、施用時期、有害病菌の種類などの条件などの違いによって異なり、一概に規定できない。なかでも、茎葉処理の場合、有効成分濃度で前記(a)の式(I)で表される化合物が0.01〜1,000ppm、望ましくは0.3〜500ppmであり、(b)の他の殺菌剤が0.1〜10,000ppm、望ましくは0.5〜5,000ppmである。
【0023】
次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の望ましい実施形態のいくつかを例示するが、これらは本発明を限定するものではない。
(1)(a)式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤とを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。
(2)(a)式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤との重量比が1:150000〜1000:1である(1)の農園芸用殺菌剤組成物。
(3)(a)式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤との重量比が1:10000〜1000:1である(1)の農園芸用殺菌剤組成物。
(4)(a)式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤との重量比が1:200〜200:1である(1)の農園芸用殺菌剤組成物。
(5)(a)式(I)の化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤との重量比が1:150〜20:1である(1)の農園芸用殺菌剤組成物。
【実施例】
【0024】
次に本発明に係わる試験例を記載するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0025】
試験例1
キュウリべと病予防効果試験
直径7.5cmのポリ鉢でキュウリ(品種:相模半白節成)を栽培し、2葉期に達した時に、各供試化合物を所定濃度に調整した薬液をスプレーガンにて散布した(散布水量;1000L/ha)。散布液が乾いた後にキュウリべと病胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃で20時間湿室に保った。その後20℃の恒温室内に7日間保った後、病斑面積率を求めた。その結果を第1表及び第2表に示した。
病斑面積率とは、調査葉におけるべと病の病斑面積を目視により求めた値である。
なお、無処理区の病斑面積率は、薬液に代えて水をスプレーガンにて散布したこと以外は処理区と同様の操作を行ない、求めた。
また、コルビーの式により、病斑面積率の理論値を計算した。実験値がコルビーの式による理論値よりも低い場合に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害の防除に関し相乗効果を有する。理論値を第1表及び第2表の( )内に併せ示した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
試験例2
キュウリべと病治療効果試験
直径7.5cmのポリ鉢でキュウリ(品種:相模半白節成)を栽培し、2葉期に達した時に、キュウリべと病胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃で20時間湿室に保った。その後作物を乾かしてから、各供試化合物を所定濃度に調整した薬液をスプレーガンにて十分量(20ml)散布した。散布液が乾いた後に20℃の恒温室内に5日間保った後、病斑面積率を求めた。その結果を第3表及び第4表に示した。
なお、無処理区の病斑面積は、薬液に代えて水をスプレーガンにて散布したこと以外は処理区と同様の操作を行ない、求めた。
また、コルビーの式により、病斑面積率の理論値を計算した。実験値が理論値よりも低い場合に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害の防除に関し相乗効果を有する。コルビーの式による理論値を第3表及び第4表の( )内に併せ示した。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
試験例3
トマト疫病予防効果試験
直径7.5cmのポリ鉢でトマト(品種:ポンデローザ)を栽培し、4葉期に達した時に、各供試化合物を所定濃度に調整した薬液をスプレーガンにて散布した(散布水量;1000L/ha)。散布液が乾いた後にトマト疫病菌の遊走子嚢懸濁液を噴霧接種し、20℃で6時間湿室に保った。その後に20℃の恒温室内に3日間保った後、下記のような各葉位の発病指数を求め、下記計算式によって発病度を算出し、その結果を第5表及び第6表に示した。なお、無処理区の発病度は、薬液に代えて水をスプレーガンにて散布したこと以外は処理区と同様の操作を行ない、求めた。
発病指数0:病斑を認めない。
1:病斑面積が葉面積の10%未満。
2:病斑面積が葉面積の10%から25%未満。
3:病斑面積が葉面積の25%から50%未満。
4:病斑面積が葉面積の50%以上。
発病度=[(0×A+1×B+2×C+3×D+4×E)/{4×(A+B+C+D+E)}]×100
式中、A:発病指数0の葉数、B:発病指数1の葉数、C:発病指数2の葉数、D:発病指数3の葉数、E:発病指数4の葉数。
また、コルビーの式により、発病度の理論値を計算した。実験値が理論値よりも低い場合に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害の防除に関し相乗効果を有する。コルビーの式による理論値を第5表及び第6表の( )内に併せ示した。
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
試験例4
トマト疫病治療効果試験
直径7.5cmのポリ鉢でトマト(品種:ポンデローザ)を栽培し、4葉期に達した時に、トマト疫病菌の遊走子嚢懸濁液を噴霧接種し、20℃で4時間湿室に保った。その後作物を乾かしてから各供試化合物を所定濃度に調整した薬液をスプレーガンにて十分量(20ml)散布した。散布液が乾いた後に20℃の恒温室内に3日間保った後、下記のような各葉位の発病指数を求め、下記計算式によって発病度を算出し、その結果を第7表及び第8表に示した。なお、無処理区の発病度は、薬液に代えて水をスプレーガンにて散布したこと以外は処理区と同様の操作を行ない、求めた。
発病指数0:病斑を認めない。
1:病斑面積が葉面積の10%未満。
2:病斑面積が葉面積の10%から25%未満。
3:病斑面積が葉面積の25%から50%未満。
4:病斑面積が葉面積の50%以上。
発病度=[(0×A+1×B+2×C+3×D+4×E)/{4×(A+B+C+D+E)}]×100
式中、A:発病指数0の葉数、B:発病指数1の葉数、C:発病指数2の葉数、D:発病指数3の葉数、E:発病指数4の葉数。
また、コルビーの式により、発病度の理論値を計算した。実験値が理論値よりも低い場合に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害の防除に関し相乗効果を有する。コルビーの式による理論値を第7表及び第8表の( )内に併せ示した。
【0035】
【表7】

【0036】
【表8】

【0037】
試験例5
ブドウべと病予防効果試験(リーフディスク試験)
ブドウ(品種:ネオマスカット)葉をリーフパンチャーで直径1cmに打ち抜いたリーフディスクに、各供試化合物を所定濃度に調整した薬液を室内噴霧装置にて散布した(散布水量;500L/ha)。散布液が乾いた後に直径3cmのシャーレに移し、ブドウべと病菌の遊走子嚢懸濁液を滴下接種した。20℃の恒温室内に10日間保った後、下記のような各ディスクの発病指数を求め、下記計算式により発病度を算出し、その結果を第9表及び第10表に示した。なお、無処理区の発病度は、薬液に代えて水を室内噴霧装置にて散布したこと以外は処理区と同様の操作を行ない、求めた。
発病指数0:胞子形成を認めない。
1:胞子形成が滴下面積の10%未満。
2:胞子形成が滴下面積の10%から50%未満。
3:胞子形成が滴下面積の50%から90%未満。
4:胞子形成が滴下面積の90%以上。
発病度=[(0×A+1×B+2×C+3×D+4×E)/{4×(A+B+C+D+E)}]×100
式中、A:発病指数0のディスク数、B:発病指数1のディスク数、C:発病指数2のディスク数、D:発病指数3のディスク数、E:発病指数4のディスク数。
また、コルビーの式により、発病度の理論値を計算した。実験値が理論値よりも低い場合に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物病害の防除に関し相乗効果を有する。コルビーの式による理論値を第9表及び第10表の( )内に併せ示した。
【0038】
【表9】

【0039】
【表10】

【0040】
次に、本発明の有害生物防除用組成物の製剤例について記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
製剤例1
(イ)カオリン 78重量部、(ロ)β−ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物 2重量部、(ハ)ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート 5重量部、(ニ)含水無晶形二酸化ケイ素 15重量部、の各成分の混合物と、化合物No.1と、フルモルフとを8:1:1の重量割合で混合し、水和剤が得られる。
【0042】
製剤例2
(イ)化合物No.1 0.5重量部、(ロ)フルモルフ 0.5重量部、(ハ)ベントナイト 20重量部、(ニ)カオリン 74重量部、(ホ)リグニンスルホン酸ソーダ 5重量部、の各成分の混合物に適量の造粒所要水を加え、混合、造粒して粒剤が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I):
【化1】

(式中、RはC1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基であり、nは1〜5の整数である)で表されるイミダゾール系化合物の少なくとも1種と、(b)フルモルフ及びベナラキシル−Mから成る群から選択される少なくとも1種の他の殺菌剤とを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項2】
(a)イミダゾール系化合物と、(b)他の殺菌剤との混合重量比(a:b)が1:150000〜1000:1である請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項3】
(a)イミダゾール系化合物と、(b)他の殺菌剤との混合重量比(a:b)が1:10000〜1000:1である請求項1に記戟の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項4】
(a)イミダゾール系化合物と、(b)他の殺菌剤との混合重量比(a:b)が1:200〜200:1である請求項1に記戟の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項5】
(a)イミダゾール系化合物と、(b)他の殺菌剤との混合重量比(a:b)が1:150〜20:1である請求項1に記戟の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項6】
更に殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、抗ウイルス剤、誘引剤、除草剤、及び植物生長調製剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの農薬を混用する請求項1に記戟の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項7】
(a)のイミダゾール系化合物が、4-クロロ-2-シアノ-1-ジメチルスルファモイル-5-(4-メチルフェニル)イミダゾール、4-クロロ-2-シアノ-1-ジメチルスルフモイル-5-(4-メトキシフェニル)イミダゾール、4-クロロ-2-シアノ-1-ジメチルスルフモル-5-(4-エチルフェニル)イミダゾール、又は4-クロロ-2-シアノ-1-ジメチルスルファモイル-5-(3-メチル-4-メトキシフェニル)ミダゾールである請求項1〜5のいずれかに記載の農芸用殺菌剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の農園芸用殺菌剤組成物を植物に施用することを特徴とする植物病害の防除方法。
【請求項9】
植物を茎葉処理する場合、(a)の式(I)で表される化合物が0.01〜10,000ppmである請求項8に記載の植物病害の防除方法。

【公開番号】特開2007−169265(P2007−169265A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309875(P2006−309875)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】