説明

農業用被覆シート

【課題】低コストでしかも取付作業が簡単な農業用被覆シートを提供する。
【解決手段】略長方形の被覆シート(10)であって、両端部に折り返し(2)が設けられているとともに、前記折り返し(2)に接着部(3)が一定間隔で交互に設けられていることを特徴とする。なお、「交互に」とは、後述するように、折り返しの両側の接着部を結ぶいわゆる線が、いわゆるジグザグ状になるように接着されている様子を意味する。このように被覆シートの両端部を折り返すと、ポケットPが形成されるので、このポケット部に土壌等をいれておけば、風雨で被覆シートがはずれ難く、かつ、取付作業も極めて容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用の作物を栽培する畝やビニールハウスに被せる農業用被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
畑に畝を造成して農作物を栽培する場合、保温ないし鳥類或いは害虫からの保護を主目的として、マルチシートともよばれる黒い農業用のフィルム状のシート(本明細書では、これを「農業用被覆シート」或いは、単に「被覆シート」ということもある。)を畝の表面に被せることがある。
【0003】
最も原始的な農業用被覆シートは長方形の単なる黒いビニールシートを畝に被せ、畝の溝に沿ってシートの両端部に土壌を盛り、当該被覆シートの端部が地中に埋まる格好で固定されていた。しかし、この方法では、設置作業に手間がかかるだけでなく、風雨によりはずれ易く、シートを安全かつ確実に固定できない。
【0004】
そこで考え出されたのが、被覆シートを固定するための固定具である(特許文献1)。この固定具を用いれば、風雨により被覆シートがはずれにくくすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−75666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、固定具は繰り返し使用できるにせよ、初期コストが必要であり、かつ、固定具の取付作業もそれほど楽なものではない。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、取付け作業が極めて簡単で、コストもかからない、新規な農業用被覆シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る農業用被覆シートは、略長方形の被覆シート(10)であって、長辺の両端部に折り返し(2)が設けられているとともに、前記折り返し(2)に接着部(3)が一定間隔で交互に設けられていることを特徴とする。
【0009】
なお、「交互に」とは、後述するように、折り返しの両側の接着部を結ぶ線が、ジグザグ状になるように接着されている様子を意味する。このように被覆シートの両端部を折り返すと、ポケットPが形成されるので、このポケット部に土壌等をいれておけば、これが「重り」或いは「返し」となって風雨で被覆シートがはずれ難く、かつ、取付作業も極めて容易である。なお、接着部をジグザグ状にすると、被覆シートがたわみにくく、畝にぴったりと取り付けられるようになる。逆に、対向位置に接着部があると、均一に荷重がかからなくなるため被覆シートがたわみ、強風ではずれやすくなる。
【0010】
この被覆シートには、更に、その折り返し部に水抜孔(20)が設けられていてもよい。折り返しにより形成されたポケット部に長期間水がたまるとボウフラが発生するなどの弊害が生ずるため、このような弊害を未然に防止できる点において、いくつかの水抜孔を設けてくことも実用的である。
【0011】
また、折り返しの端部にミシン目を設けておけば、これが水抜き孔としても機能するだけでなく、最終的に被覆シートを畝から取りはずす際に、工具を使わなくてもミシン目に沿ってポケット部を開いて取りはずせるため、使い終わった被覆シートを回収する際にポケットの土壌等はそのまま畑に残しておくこともできる。
【0012】
なお、これらの被覆シートは、畝に直接被せる黒色のタイプ(マルチシート)に限らず、畝の上に組み立てるタイプの小型のビニールハウスの覆い(ビニールハウスを設ける際に、その骨組み(11)に被せる透明乃至半透明の被覆シート)として用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例)−基本原理を説明するための実施例−
図1(a)及び(b)は、本発明に係る被覆シートの製造方法を示す図である。図1(a)に示すように、始めに、従来から知られている通常の農業用被覆シート1を用意する。被覆シート1は、畝の長さに合わせて所定の大きさに切り取られる。サイズは種々のものがあるが、例えば、縦50m、横幅Wは90cm乃至2mである。
【0014】
被覆シート1の材質は、特に限定されるものではないが、畝に直接被せる場合は黒色の被覆シート(例えば、厚さ0.03mmのポリエチレンフィルムシート)を用いることが好ましい。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、この被覆シート1の両端部を図1(a)の点線に沿って折り返し、一定間隔Sで接着すると、本発明に係る農業用被覆シート10は完成する。なお、接着は図のように対向位置にこないように、いわゆるジグザグ状に設けることが好ましい。この理由は後述する。
【0016】
図2(a)は、これをロール状に巻き取った様子を示している。図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図を示している。図2(b)に示すように、折り返し2と接着部3によって、被覆シートにポケットPが形成される。ポケットPには、土壌等を入れることができ、これが被覆シートの両側に重りとして機能する。
この両端部の折り返しは、少なくとも5cm以上あることが好ましい。本件発明者の実験によれば、折り返しが3cm以下の場合、重りが不十分であったため強風で被覆シートがはずれることがあったが、5cm以上とした時は、通常予想される程度の強風ではシートがはずれることはなかった。また、接着部の位置は、ポケット部を大きくとるために折り返しの中央より上側(正面からみて内側より)にあることが好ましい。
【0017】
図3(a)及び(b)は、本発明に係る被覆シートの使用状態を表す一例である。図3(a)は断面図、(b)は全体斜視図を示している。
【0018】
本発明に係る被覆シート10は両端部に折り返し2が設けられ、そこに形成されるポケットに土壌等を保持することができるため、これが重りとして機能する。被覆シートを畝に被せ、両端のポケットに土壌等を入れていくだけで取付作業が完成する。畝に被せて保温や鳥或いは虫による被害を防止して、植物30を育てるという被覆シート本来の機能は、従来の被覆シート1と同様である。
【0019】
なお、重りとなる土壌等はできる限り均一に入れることが必要であるが、仮に、一部に偏りがあっても、ジグザグに設けていると重りによる張力が互いに距離の大きい斜め方向に向かうため、均一な力に分散しやすい。これが接着部をジグザグに設ける理由である。逆に、対向位置に接着部を設けると、張力が強すぎる部分と弱すぎる部分とがあらわれるので、強風でシートがはずれやすくなる。
【0020】
(第2の実施例)−園芸用ビニールハウスシートに応用した例−
本発明に係る被覆シートは材質及び大きさを適宜選択すれば、畝の上に設ける園芸用の小型のビニールハウスシートに適用することもできる。
図4は、ビニールハウスの骨組み11の上に、本発明に係る被覆シートを被せた様子を示している。ビニールハウスシートとして用いる場合、被覆シートは透明乃至半透明のものが好ましい。従来のビニールハウスシートでは、両端部にポケットなど存在しなかったため、両端に土を盛り、畝に埋め込んで固定していたが、強風でシートがはずれやすかった。しかし、本実施例のようにポケットを設けておけば、上述した第1の実施例と同様の理由により、両端部に設けたポケットの土壌等が重りとして機能し、簡単に固定できる。また、この場合も、ジグザグに接着部を設けると張力が均一に分散し、シートが骨組みにぴったりと張り付いて撓むことがない。
【0021】
ところで、上記第1又は第2の実施例のいずれにもあてはまるが、本発明に係る被覆シートを長期間使用していると、折り返しのポケットに水が貯まってくることがある。さらに条件が重なると、この水にボウフラ等の虫が発生することがある。そこで、このような虫の発生を防止するために、折り返しの部分に一定程度の間隔で複数の水抜孔20(特に限定されないが例えば直径5mmφ)を設けておくとよい。
このようにすると、ポケットの土壌等が一定の保水力を持って水分を保持しているが、一定以上の水が貯まると水抜き孔から排水され、虫の発生を防止することができる。
【0022】
なお、水抜孔の位置、大きさ及び個数は天候などにより種々のものが考えられるが、両端部の折り返し部にミシン目を設けておくと、これが水抜として孔として機能すると共に、このミシン目で切り離すことが容易となるため使用後に被覆シートを回収する際にポケットに貯まっている土壌等を畝の脇に払い落とすことができるため、シートを回収しても土壌を持ち帰ることがない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る農業用被覆シートは、取付けに固定具等の特別な道具を必要とせず、取付けが簡単でコスト的にも有利であるため、被覆シートや畝用の小型ビニールハウスシートに適用すれば、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明に係る被覆シートの製造方法を示す図である。
【図2】図2(a)は、本発明に係る被覆シートをロール状に巻き取った様子を示している。(b)は、(a)のA−A線断面図を示している。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明に係る被覆シートの使用状態を表す一例である。(a)は断面図、(b)は全体斜視図を示している。
【図4】図4は、ビニールハウスの骨組み11の上に、本発明に係る被覆シートを被せた様子を示している。
【符号の説明】
【0025】
1 従来の被覆シート(ポリエチレンシート)
2 折り返し
3 接着部
4 土壌
10 本発明に係る被覆シート
11 骨組み
30 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の被覆シート(10)であって、両端部に折り返し(2)が設けられているとともに、前記折り返し(2)に接着部(3)が一定間隔で交互に設けられていることを特徴とする、農業用被覆シート。
【請求項2】
前記折り返しの部分に水抜孔(20)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の農業用被覆シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の被覆シート(10)であって、両端部に折り返し(2)が設けられているとともに、前記折り返し(2)の中央部より上側に接着部(3)が一定間隔で交互に設けられていることを特徴とする、農業用被覆シート。
【請求項2】
前記折り返しの部分に水抜孔(20)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の農業用被覆シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−254847(P2006−254847A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79304(P2005−79304)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(305015866)
【出願人】(505101776)
【Fターム(参考)】