説明

農芸用ビニールハウスの換気構造

【課題】ハウス室温を効果的に低下できる農芸用ビニールハウス10の換気構造を提供すること。
【解決手段】ハウス10の内部空間を屋根裏空間S1(S1a,S1b)と、その下部空間S2に区画するようにビニールシート28,29を張設し、屋根裏空間S1aの一側に同空間S1中の空気をハウス外部に排出する換気ファン24を設け、屋根裏空間S1bの他側を下部空間S2に連通し、下部空間S2の反連通側に外気導入口25を設ける。そして好ましくは、前記屋根裏空間S1と下部空間S2との連通部に下部空間S2からから屋根裏空間S1への空気の流れを許容し、その逆方向の流れを阻止する逆止手段30,31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農芸用ビニールハウスの換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に農芸用ビニールハウスは、多数の門型パイプフレームを並列に地面に立設してハウスの骨組を構成し、骨組の上からビニールシートを張設して組み立てられている。
この種の農芸用ビニールハウスでは、ハウスの屋根裏空間に熱気が滞留し易く、熱気が農芸作物に悪影響を及ぼすのを防止するため、屋根裏空間に近接する位置に換気ファンを設けて熱気をハウス室外に排出している。
【特許文献1】特開平5−15260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、単に換気ファンを設けるだけでは、ファンを稼働して屋根裏空間の熱気を室外に排出する際にハウス室内全体の空気が攪拌され、屋根裏空間の熱気がハウス室内全体に拡散するため効果的にハウス室温を低下させることができず、室温の分布にムラが生じる。
本発明はかかる問題点に鑑み、ハウス室温をムラなく効果的に低下できる農芸用ビニールハウスの換気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明に係る農芸用ビニールハウスの換気構造は、ハウスの内部空間を屋根裏空間と、その下部空間に区画するようにビニールシートを張設し、屋根裏空間の一側に同空間中の空気をハウス外部に排出する換気ファンを設け、屋根裏空間の他側を下部空間に連通し、下部空間の反連通側に外気導入口を設ける。
そして好ましくは、前記屋根裏空間と下部空間との連通部に下部空間から屋根裏空間への空気の流れを許容し、その逆方向の流れを阻止する逆止手段を設ける。
【発明の効果】
【0005】
本発明の換気構造によれば、換気ファンを稼働して屋根裏空間の熱気をハウス外部へ排出すると、それに伴い外気が導入口からハウスの下部空間に流入し、下部空間中を導入口から屋根裏空間との連通部へと流れ、さらに連通部から屋根裏空間を通って換気ファンへと吸引され、ハウス外部へ排出される。すなわち、換気ファンの稼働に伴い外気導入口→下部空間→連通部→屋根裏空間→換気ファン→ハウス外部という空気の流れが生じる。このため、屋根裏空間の熱気がハウス全体に拡散することなく、ハウス外部に排出されるので、ハウス室内の温度が場所むらなく均等に低下する。また、ビニールシートによって仕切られた屋根裏空間の空気層による断熱効果により冬季に下部空間の室温が低下するのを防止できる。
また、屋根裏空間と下部空間の連通部に逆止手段を設けることにより、換気ファンの停止時に屋根裏空間の熱気が連通部を通って下部空間へ流入するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
各種パイプで構成したハウス骨格の外側全体にビニールシートを張設する。ハウス室内にビニールシートを張設して室内空間を屋根裏空間と下部空間に区画し、さらに屋根裏空間にビニールシートを張設して屋根裏空間を上層屋根裏空間と下層屋根裏空間に区画する。上層屋根裏空間の一側に換気ファンを設置し、他側を下層屋根裏空間に連通する。上層屋根裏空間と下層屋根裏空間の連通部に第1ダンパーを設置する。第1ダンパーは下層屋根裏空間から上層屋根裏空間への空気の流れを許容し、逆方向の空気流れを阻止する逆止手段として作動する。下層屋根裏空間の反第1ダンパー側を下部空間に連通し、連通部には第2ダンパーを設置する。第2ダンパーは下部空間から下層屋根裏空間への空気流れを許容し、逆方向の空気流れを阻止する。下部空間の反第2ダンパー側に外気導入口を設ける。
【実施例1】
【0007】
以下に本発明を図面に基づき説明するに、図1には本発明の第1実施例に係る農芸用ビニールハウス10が示されている。当該ビニールハウス10は複数本の門型パイプ11、左右対を成す第1横パイプ12、第2横パイプ13及び第3横パイプ14、縦パイプ15、棟パイプ16、第1中間パイプ17、第2中間パイプ18、第1梁パイプ19、第2梁パイプ20、第3梁パイプ21、第4梁パイプ22、左右2本のベースプレート23、換気ファン24、外気導入口25、ドア26を備えている。
【0008】
各ベースプレート23は断面L字形を有し、底面の長手方向に沿って一定間隔で貫通穴(図2参照)が形成されている。ビニールハウス10のハウス骨格は、門型パイプ11を地面に敷設したベースプレート23の貫通穴23aに挿入立設し、ベースプレート23に沿って貫通穴23aの間隔で並ぶ門型パイプ11の列を形成し、門型パイプ間に棟パイプ16と第1、第2及び第3横パイプ12,13,14を平行に架設して門型パイプ11の列を連結して構成されている。
【0009】
図2に示すように、棟パイプ16は門型パイプ11を構成するアーチパイプ11aの頂部内側に固着され、棟パイプ16から縦パイプ15が垂設されている。そして、縦パイプ15に第1中間パイプ17と第2中間パイプ18が固着され、棟パイプ16と平行に延びている。
【0010】
第1梁パイプ19は左側の第1横パイプ12と右側の第3横パイプ14間に架設され、第2梁パイプ20は右側の第1横パイプ12と左側の第3横パイプ14間に架設されている。第3梁パイプ21は右側の第3横パイプ14と第2中間パイプ18間に架設され、第4梁パイプ22は左側の第3横パイプ14と第2中間パイプ18間に架設されている。
【0011】
図3及び図4に、第1梁パイプ19、第2梁パイプ20、縦パイプ15及び第1中間パイプ17との交差部分の構造の詳細を示す。第1梁パイプ19は短尺第1梁パイプ19aと長尺第1梁パイプ19bから成る。同じく第2梁パイプ20は短尺第2梁パイプ20aと長尺第2梁パイプ20bから成る。縦パイプ15は上側縦パイプ15aと下側縦パイプ15bから成る。
【0012】
短尺第1梁パイプ19aの先端はプレス加工により断面形状が半円形のフック部19cとフック部19cの前後両側(パイプ長手方向における前後両側)にプレート部19d,19eが成形されている。そして、各プレート部19d,19eにはネジ穴19fと、その横に貫通穴19gが対を成して形成されている。同じく、長尺第1梁パイプ19b、短尺第2梁パイプ20a、長尺第2梁パイプ20b、上側縦パイプ15a、下側縦パイプ15bのそれぞれについても先端部にフック部、前後のプレート部、ネジ穴、貫通穴が形成されている。
【0013】
第1梁パイプ19は、短尺第1梁パイプ19aのフック部19cを第1中間パイプ17に下から掛止し、長尺第1梁パイプ19bのフック部19cを第1中間パイプ17に上から掛止し、短尺、長尺両第1梁パイプ19a,19bのプレート部19d,19eの貫通穴19gから対向するプレート部19d,19eのネジ穴19fにビス19hを通して両フック部19cを第1中間パイプ17に締め付けることにより第1中間パイプ17を介して短尺第1梁パイプ19aと長尺第1梁パイプ19bを連結している。同様にして短尺第2梁パイプ20aと長尺第2梁パイプ20bを連結し、上側縦パイプ15aと下側縦パイプ15bを連結している。図示しないが、第3梁パイプ21と第2中間パイプ18及び第4梁パイプ22と第2中間パイプ18も同様にしてフック部を第2中間パイプ18に締め付けて連結されている。
【0014】
当該ビニールハウス10の全体の骨格は以上説明したように、複数本の門型パイプ11、左右対を成す第1、第2及び第3横パイプ12,13,14、縦パイプ15、棟パイプ16、第1、第2中間パイプ17,18、第1、第2、第3、第4梁パイプ19〜22から構成され、ビニールハウス10の骨格のうち屋根裏部分の骨格が門型パイプ11のアーチパイプ11aと左右対を成す第1、第2及び第3横パイプ12,13,14、縦パイプ15、棟パイプ16、第1、第2中間パイプ17,18、第1、第2、第3、第4梁パイプ19〜22から構成される。そして、正面中央上部に換気ファン24が取り付けられ、背面中央下部に外気導入口25が取り付けられている。また、側面の正面側にドア26が取り付けらる。
【0015】
各種パイプで構成したハウス骨格の外側全体にビニールシート27が張設される。また、図2に示すように第3梁パイプ21と第4梁パイプ22にビニールシート28を張設してハウス室内空間を屋根裏空間S1と下部空間S2に区画し、さらに長尺第1梁パイプ19bと長尺第2梁パイプ20bにビニールシート29を張設して屋根裏空間S1を上層屋根裏空間S1aと下層屋根裏空間S1bに区画する。
【0016】
図5にビニールシート28,29で区画された下部空間S2、上層屋根裏空間S1a、下層屋根裏空間S1bを模式的に図示する。上層屋根裏空間S1aの一側には換気ファン24が設置され、他側が下層屋根裏空間S1bに連通している。上層屋根裏空間S1aと下層屋根裏空間S1bの連通部には第1ダンパー30が設置されている。第1ダンパー30は実線で示す閉位置と2点鎖線で示す開位置との間で回動し、下層屋根裏空間S1bから上層屋根裏空間S1aへの空気の流れを許容し、逆方向の空気流れを阻止する逆止手段として作動する。下層屋根裏空間S1bの反第1ダンパー30側は下部空間S2に連通し、連通部には第2ダンパー31が設置されている。第2ダンパー31は下部空間S2から下層屋根裏空間S1bへの空気流れを許容し、逆方向の空気流れを阻止する。下部空間S2の反第2ダンパー31側に外気導入口25が設けられている。
【0017】
第1実施例に係る農芸用ビニールハウスの換気構造は以上の通りであって、換気ファン24を稼働すると、図5に矢印で示すように外気導入口25→下部空間S2→第2ダンパー31→下層屋根裏空間S1b→第1ダンパー30→上層屋根裏空間S1a→換気ファン24→ハウス外部という空気の流れが生ずる。そして、第1ダンパー30と第2ダンパー31を配設したので、換気ファン24の停止時に屋根裏空間S1a,S1bの熱気が下部空間へ流入するのを防止できる。このため、農芸用ビニールハウスの室温を場所むらもなく均等に低下させることができる。
【0018】
また、本実施例では図3及び図5に示すように、梁パイプ19,20や縦パイプ15にフック部19cとプレート部19d,19eを形成したので、ビニールシート29を交差部分に張設するとき可及的に隙間を小さくでき、ビニールシートによる密閉性が良い。さらに、プレート部19d,19eにはネジ穴と貫通穴を両方設けたので、プレートの上下どちら側からでもビスhの締め付け作業が可能となり、組立作業が容易になる。
【実施例2】
【0019】
前述した第1実施例に係る農芸用ビニールハウスでは、屋根裏空間S1を上層屋根裏空間S1aと下層屋根裏空間S1bに区画し、図5の矢印に示すようにZ形の空気の流れをハウス室内に生じるように構成したが、図6及び図7に示す第2実施例に係る農芸用ビニールハウスでは、長尺第1梁パイプ19bと長尺第2梁パイプ20bに張設したビニールシート29を省略し、第3梁パイプ21と第4梁パイプ22にだけビニールシート28を張設し、ハウス室内を屋根裏空間S1と下部空間S2の2層に区画している。そして、屋根裏空間S1と下部空間S2との連通部にダンパー33を配置し、換気ファン24と同じ面に外気導入口25を設けている。
【0020】
第2実施例に係る農芸用ビニールハウスでは、外気導入口25→下部空間S2→ダンパー33→屋根裏空間S1→換気ファン24→ハウス室外という空気の流れが生じ、ハウス室内の熱気が排出され、室温が均等に低下する。
【0021】
上記実施例1及び2に係る農芸用ビニールハウスでは、背面中央下部に外気導入口25を設けたが、導入口25の設置位置は背面の中央下部に限定されるものではなく、換気ファン24で吸引される外気が下部空間S2の一側から他側へと流れ、下部空間S2において空気の流れがほとんど生じないよどみ空間が可及的に少なくなる位置であれば、背面の左右であったり、側面の背面側でも良い。
また、下部空間S2から屋根裏空間S1a,S1b,S1への空気の流れを許容し逆方向の空気の流れを阻止する逆止手段としてダンパー30,31,33を設けたが、ファン24に近接してシャッターを設け、ファン24の稼働によりこのシャッターが開き、ファン24の停止時にはシャッターが閉じるようにしても実施例1,2におけるダンパー30,31,33と同じ作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例に係る換気構造を備えた農芸用ビニールハウスを示す斜視図である。
【図2】同農芸用ビニールハウスを示す断面図である。
【図3】同農芸用ビニールハウスの骨格を構成するパイプの連結構造を示す斜視図である。
【図4】同農芸用ビニールハウスの骨格を構成するパイプの連結構造を示す正面図である。
【図5】同農芸用ビニールハウスの換気構造を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る換気構造を備えた農芸用ビニールハウスを示す断面図である。
【図7】同農芸用ビニールハウスの換気構造を模式的に示す説明図である
【符号の説明】
【0023】
10…農芸用ビニールハウス、S1…屋根裏空間、S1a…上層屋根裏空間、S1b…下層屋根裏空間、S2…下部空間、24…換気ファン、25…外気導入口、27,28,29…ビニールシート、30,31,33…ダンパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウスの内部空間を屋根裏空間と、その下部空間に区画するようにビニールシートを張設し、屋根裏空間の一側に同空間中の空気をハウス外部に排出する換気ファンを設け、屋根裏空間の他側を下部空間に連通し、下部空間の反連通側に外気導入口を設けたことを特徴とする農芸用ビニールハウス。
【請求項2】
前記屋根裏空間と下部空間との連通部に下部空間から屋根裏空間への空気の流れを許容し、その逆方向の流れを阻止する逆止手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の農芸用ビニールハウス。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−189941(P2007−189941A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10804(P2006−10804)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000252067)鈴木工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】