説明

近赤外線カットフィルターおよび近赤外線カットフィルターを用いた装置

【課題】視野角が広く、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物に由来する構造を有する化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)を有することを特徴とする近赤外線カットフィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カットフィルターに関する。詳しくは、十分な視野角を持ち、特にCCD、CMOS等の固体撮像素子用視感度補正フィルターとして好適に用いることができる近赤外線カットフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)を搭載したテレビが商品化され、一般家庭にも広く普及するようになってきた。このPDPは、プラズマ放電を利用して作動するディスプレイであるが、プラズマ放電の際に近赤外線(波長:800〜1000nm)が発生することが知られている。
【0003】
一方、家庭内においては、テレビ、ステレオあるいはエアコン等の家電製品のリモコン、さらには、パーソナルコンピューターの情報のやり取りに近赤外線を利用することが多くなっており、PDPの発する近赤外線がこれら機器の誤作動の原因になる可能性が高いことが常々指摘されている。
【0004】
そこで、市販されているPDPの多くは、その前面板に、自らが発する近赤外線をカットするためのフィルター機能を備えるようになっている。
【0005】
また、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されているが、これら固体撮像素子はその受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルターを用いることが多い。
【0006】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、ガラスなど透明基材の表面に銀等の金属を蒸着して近赤外線を反射するようにしたもの、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に近赤外線吸収色素を添加したものなどが実用に供されている。
【0007】
しかしながら、ガラス基材に金属を蒸着した近赤外線カットフィルターは製造コストがかかるだけでなく、カッティング時に異物として基材のガラス片が混入してしまうという問題があった。さらに、基材として無機質材料を用いる場合は、近年の固体撮像装置の薄型化・小型化に対応していくためには限界があった。
【0008】
また、特開平6−200113号公報(特許文献1)には、基材として透明樹脂を用い、透明樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線吸収能が必ずしも十分ではない場合があった。
【0010】
また、本出願人は、特開2005−338395号公報(特許文献2)にて、ノルボルネン系樹脂製基板と近赤外線反射膜を有する近赤外線カットフィルターを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−200113号公報
【特許文献2】特開2005−338395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線カット能、耐吸湿性、耐衝撃性に優れるが、十分な視野角の値をとることはできない場合があった。
【0013】
本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置用に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。さらに、薄型で耐衝撃性に優れた固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る近赤外線カットフィルターは、下記式(I)で表される化合物に由来する構造を有する化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)を有することを特徴とする。
【0015】
【化1】

[式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)を満たす。
(i)Raはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−NRef基(ReおよびRfはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)、またはヒドロキシ基を表し、
bはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−NRgh基(RgおよびRhはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または−C(O)Ri基(Riは炭素数1〜5のアルキル基を表す。))、またはヒドロキシ基を表し、
Yは−NRjk基(RjおよびRkはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。)を表す。
(ii)1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、構成原子数5または6の窒素原子を少なくとも1つ含む複素環を形成し、
bおよび該結合に関与しないRaはそれぞれ独立に前記(i)のRbおよびRaと同義である。]
【0016】
本発明に係る近赤外線カットフィルターは、透過率が下記(A)〜(D)を満たすことが好ましい。
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上
(B)波長800〜1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満
(D)波長560〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満
【0017】
前記樹脂製基板(I)は下記(E)および(F)を満たすことが好ましい。
(E)波長600〜800nmに吸収極大がある
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値が75nm未満
【0018】
前記式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
【化2】

[式(II)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に、前記式(I)の(i)と同義であり、Rcはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。]
【0020】
前記樹脂製基板(I)は、環状オレフィン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を含んでなる基板であることが好ましい。
【0021】
前記環状オレフィン系樹脂は、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体から得られる樹脂であることが好ましい。
【0022】
【化3】

(式(X0)中、Rx1〜Rx4は、それぞれ独立に下記(i')〜(viii')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し(iv')を除く)
(vii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
(viii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
【0023】
【化4】

(式(Y0)中、Ry1およびRy2は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、下記(ix')を表し、kyおよびpyは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(ix')Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環または多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表す
【0024】
前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することが好ましい。
【0025】
【化5】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0026】
【化6】

(式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。)
【0027】
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することが好ましい。
【0028】
【化7】

(式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0029】
【化8】

(式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【0030】
前記化合物(I)は樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部含有されてなることが好ましい。
【0031】
本発明に係る近赤外線カットフィルターは、固体撮像装置用として好適に用いることができる。
本発明に係る固体撮像装置およびカメラモジュールは、前記近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、吸収(透過)波長の入射角依存性が小さく、視野角が広く、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない近赤外線カットフィルターを製造することができる。
また、本発明によれば、固体撮像装置およびカメラモジュール等を薄型化および小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1(a)は、従来のカメラモジュールの一例を示す断面概略図である。図1(b)は、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'を用いた場合のカメラモジュールの一例を示す断面概略図である。
【図2】図2は、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率を測定する方法を示す模式図である。
【図3】図3は、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0035】
〔近赤外線カットフィルター〕
本発明に係る近赤外線カットフィルターは、下記式(I)で表されるスクエアリリウム構造を有する化合物(以下「化合物(I')」ともいう。)に由来する構造を有する化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)を有することを特徴とし、下記樹脂製基板(I)と下記近赤外線反射膜とを有することが好ましい。
近赤外線カットフィルターは、このような樹脂製基板を有することで、特に、入射角依存性の小さい近赤外線カットフィルターとなる。
【0036】
≪樹脂製基板(I)≫
前記樹脂製基板(I)は化合物(I)を含んでなり、下記(E)および(F)を満たすことが好ましい。
【0037】
(E)吸収極大が波長600〜800nmの範囲にあることが望ましい。
基板の吸収極大波長がこのような範囲にあれば、該基板は、近赤外線を選択的に効率よくカットすることができる。
【0038】
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値(|Za−Zb|)が75nm未満、好ましくは50nm未満、さらに好ましくは30nm未満の値をとることが望ましい。
【0039】
樹脂製基板(I)の吸収極大波長および(Za)と(Zb)の差の絶対値が前記範囲にあると、該基板に光を入射したときに近赤外線の波長領域付近の波長(Za)と(Zb)の間で透過率が急変することとなる。
【0040】
このような基板は、近赤外線を効率よくカットすることができ、また、このような基板を近赤外線カットフィルターに用いた場合には、そのフィルターの(Ya)と(Yb)の差の絶対値が小さくなり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0041】
また、このような基板を用いた近赤外線カットフィルターを、カメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0042】
PDP用前面板やカメラモジュールなど用途によっては、波長400〜700nmのいわゆる可視光領域において、化合物(I)を含有した樹脂製基板の厚みを100μmとした時の該基板の平均透過率が50%以上、好ましくは65%以上であることが必要な場合もある。
【0043】
前記樹脂製基板(I)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、該基板が前記(E)および(F)を満たすように調整することが好ましく、より好ましくは250〜50μm、さらに好ましくは200〜50μm、特に好ましくは150〜80μmである。
【0044】
樹脂製基板(I)の厚みが前記範囲にあると、該基板を用いた近赤外線カットフィルターを小型化、軽量化することができ、固体撮像装置等さまざまな用途に好適に用いることができる。特にカメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0045】
<化合物(I)>
前記化合物(I)は、化合物(I')に由来する構造を有する。なお、化合物(I)は、スクエアリリウム構造を有する染料であることが好ましい。
【0046】
【化9】

【0047】
式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)を満たす。
(i)Raはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−NRef基(ReおよびRfはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)、またはヒドロキシ基を表し、
bはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−NRgh基(RgおよびRhはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または−C(O)Ri基(Riは炭素数1〜5のアルキル基を表す。))、またはヒドロキシ基を表し、
Yは−NRjk基(RjおよびRkはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。)を表す。
(ii)1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、構成原子数5または6の窒素原子を少なくとも1つ含む複素環を形成し、Rbおよび該結合に関与しないRaはそれぞれ独立に前記(i)のRbおよびRaと同義である。
【0048】
前記Raの炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n−プロピル基(n−Pr)、i−プロピル基(i−Pr)、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基(t−Bu)、ペンチル基およびヘキシル基等を挙げることができ、これらの基の任意の水素原子がメチル基およびエチル基などで置換されていても良い。
【0049】
前記−NRef基におけるReおよびRfの炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等を挙げることができる。
【0050】
前記Rbの炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等を挙げることができる。
【0051】
前記−NRgh基におけるRgおよびRhの炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等を挙げることができる。
【0052】
前記−C(O)Ri基におけるRiとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等を挙げることができる。
【0053】
前記−NRjk基におけるRjおよびRkの炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等の鎖状脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状脂肪族炭化水素基;などを挙げることができる。
【0054】
前記−NRjk基におけるRjおよびRkの任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基としては、前記鎖状脂肪族炭化水素基の任意の水素原子が−NR'R''基(R'およびR''は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等の鎖状脂肪族炭化水素基を表す。)、−CN、−OH、−OR(Rはメチル基、エチル基およびプロピル基を表す。)等の官能基で置換された置換鎖状脂肪族炭化水素基;前記環状脂肪族炭化水素基の任意の水素原子がメチル基およびエチル基等で置換された置換環状脂肪族炭化水素基などを挙げることができる。
【0055】
前記−NRjk基におけるRjおよびRkの炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基等を挙げることができる。
【0056】
前記−NRjk基におけるRjおよびRkの任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基としては、フェニル基の任意の水素原子がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基およびペンチル基等の鎖状脂肪族炭化水素基で置換された置換フェニル基;などを挙げることができる。
【0057】
前記式(I)の(ii)における、1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合した、構成原子数5または6の窒素原子を少なくとも1つ含む複素環としては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジン等を挙げることができる。これらの複素環のうち、当該複素環を構成し、かつ、ベンゼン環を構成する炭素原子の隣の1つの原子が窒素原子である複素環が好ましく、ピロリジンがさらに好ましい。
【0058】
化合物(I')は、例えば、下記式(I−1)で表わされる構造の共鳴構造を有する化合物(I−2)を含む。つまり、化合物(I')としては、例えば、化合物(I−1)および化合物(I−2)が挙げられる。
【0059】
【化10】

【0060】
前記化合物(I)は、該化合物(I)をその良溶媒に溶解させることで得られる溶液の透過率を測定(光路長1cm)した時の、吸収極大における分光透過率が、該溶液中の化合物(I)の濃度によらず、30%以下となる化合物であることが望ましく、また、化合物(I)をその良溶媒に溶解させることで得られる溶液の透過率を測定(光路長1cm)した時に、該溶液中の化合物(I)の濃度によらず、波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長と、波長580nm以上の波長領域において透過率が30%となる最も短い波長との差の絶対値が75nm未満、好ましくは65nm未満、さらに好ましくは55nm未満となる化合物であることが望ましい。
【0061】
なお、従来の近赤外線カットフィルターでは、このような化合物(I)は、その透過率曲線が急峻な傾きを有すること、近赤外線領域の吸収領域が狭いこと、およびガラス等の基板に混ぜて近赤外線カットフィルターを製造する際に該化合物(I)がガラスの成形温度に耐えることができないなどの理由から用いられてこなかった。そのため、本発明のように特に、入射角依存性の小さい近赤外線カットフィルターは得られなかった。
【0062】
このような化合物(I)を含有してなる樹脂製基板(I)は前記(E)および(F)の特徴を有するため、本発明の近赤外線カットフィルターは、特に下記(A)、(C)および(D)の特徴を有することになる。そのため、入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0063】
また、後述する近赤外線反射膜を、蒸着などにより樹脂製基板(I)に設ける場合、近赤外線カットフィルターの視野角が狭くなる等の性能が劣化する場合があったが、前記樹脂製基板(I)は、前記化合物(I)を含むため、近赤外線反射膜を設けることで生じうる近赤外線カットフィルターの性能の劣化を防ぐことができる。よって、近赤外線反射膜を蒸着などにより樹脂製基板(I)上に設けた場合であっても、入射光の入射角に依存しない安定した吸収波長領域を有する近赤外線カットフィルターが得られる。
【0064】
本発明では、前記化合物(I')が、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0065】
【化11】

【0066】
式(II)中、RaおよびRbは、前記式(I)の(i)と同義であり、Rcは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。
【0067】
式(II)中のRcで表される炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、および任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基としては、前記−NRjk基におけるRjおよびRkの炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、および任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基で挙げた基と同様の基等を挙げることができる。
【0068】
また、化合物(II)は、その共鳴構造である下記式(II−1)で表される化合物であってもよい。
【0069】
【化12】

【0070】
前記式(II)で表される化合物としては、下記の(a−1)〜(a−19)等を挙げることができる。なお、下記化合物中、「Ac」は−C(O)−CH3を表す。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
これらの中でも、化合物(a−10)は、塩化メチレンによく溶解し、化合物(a−10)を塩化メチレンに0.0001重量部の濃度で溶解させた溶液の分光透過率測定(光路長1cm)を行った場合に、波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、化合物(a−10)0.04重量部、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、さらに塩化メチレンを加えて得られる樹脂濃度が20重量%の溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、さらに減圧下100℃で8時間乾燥して得られた厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板の分光透過率測定を行った場合に、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長との差の絶対値が55nm未満であるため、吸収(透過)波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを製造することができるため好ましい。
【0075】
本発明において、化合物(I)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、たとえば、特開平1−228960号公報に記載されている方法で合成すればよい。
【0076】
本発明において、化合物(I)の使用量は、前記樹脂製基板(I)が前記(E)および(F)を満たすように適宜選択されることが好ましく、具体的には、樹脂製基板(I)製造時に用いる樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜10.0重量部、さらに好ましくは0.01〜8.0重量部、特に好ましくは0.01〜5.0重量部である。
【0077】
化合物(I)の使用量が前記範囲内にあると、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角が広く、近赤外線カット能、430〜580nmの範囲における透過率および強度に優れた近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0078】
化合物(I)の使用量が前記範囲より多いと、化合物(I)の特性(性質)がより強く表れる近赤外線カットフィルターを得ることができる場合もあるが、430〜580nmの範囲における透過率が所望の値より低下する恐れや、樹脂製基板や近赤外線カットフィルターの強度が低下する恐れがあり、また、化合物(I)の使用量が前記範囲より少ないと、430〜580nmの範囲における透過率の高い近赤外線カットフィルターを得ることができる場合もあるが、化合物(I)の特性が表れにくくなる恐れがあり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角が広い樹脂製基板や近赤外線カットフィルターを得ることが困難になる場合がある。
【0079】
<樹脂>
本発明で用いる樹脂製基板(I)は化合物(I)と樹脂とを含んでなればよく、該樹脂としては透明樹脂が好ましい。このような樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂が挙げられる。また、樹脂のガラス転移温度が、120℃以上、好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である場合には、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため望ましい。
【0080】
また、前記樹脂としては、厚さ0.1mmでの全光線透過率が、好ましくは75〜94%であり、さらに好ましくは78〜94%であり、特に好ましくは80〜94%である樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲であれば、得られる基板は、光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0081】
このような樹脂としては例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリサルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリパラフェニレン樹脂(PPP)、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂(PEPO)、ポリイミド樹脂(PPI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、(変性)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)および有機−無機ナノハイブリッド材料を挙げることができる。
【0082】
前記樹脂のうち、透明性の高い環状オレフィン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を用いると可視光領域の透過率が特に高くなるため好ましく、また、これらの樹脂は、吸湿性が低く、ソリが生じにくいため好ましい。
また、樹脂として、特にノルボルネン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を用いると、前記化合物(I)のノルボルネン系樹脂への分散性が良好であるため、光学特性が均一な、成形加工性に優れる基板を得ることができる。
【0083】
<環状オレフィン系樹脂>
本発明に用いられる透明樹脂として、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体を重合することで得られる樹脂、または必要に応じてさらに前記で得られた樹脂を水素添加することで得られる樹脂を用いることができる。
【0084】
【化16】

(式(X0)中、Rx1〜Rx4は、それぞれ独立に下記(i')〜(viii')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し(iv')を除く)
(vii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
(viii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
【0085】
【化17】

(式(Y0)中、Ry1およびRy2は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、下記(ix')を表し、kyおよびpyは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(ix')Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環または多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表す
【0086】
前記(ii')ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0087】
前記(iii')トリアルキルシリル基としては、炭素数1〜12のトリアルキルシリル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のトリアルキルシリル基である。このようなトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基およびトリイソプロピルシリル基等が挙げられる。
【0088】
前記酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基としては、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホニル基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)およびシロキサン結合(−OSi(R)2−(式中、Rはメチル、エチル等のアルキル基))等が挙げられ、前記(iv')の置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基は、これらの連結基を複数含む基であってもよい。
これらの中でも赤外線反射膜との接着性や密着性に優れるといった点、化合物(I)の分散性や溶解性の点でカルボニルオキシ基(*−COO−)およびシロキサン結合(−OSi(R)2−)が好ましい。但し*が式(X0)の環に結合するものとする。
【0089】
前記置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基としては、置換または非置換の炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基およびプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、フェニルエチル基等の芳香族炭化水素基;ビニル基、アリル基およびプロペニル基等のアルケニル基;などが挙げられる。これらの基の中でも、メチル基およびエチル基が耐熱安定性の点で好ましい。
置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0090】
前記(vi')極性基としては、例えば、ヒドロキシ基;メトキシ基およびエトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;シアノ基;アミノ基;アシル基;スルホ基;カルボキシル基;などが挙げられる。
【0091】
また、Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0092】
x1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環、Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環または多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロへプチレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、シクロヘキセニレン、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。
【0093】
x、mx、px、ky、pyは、それぞれ独立に、0〜3の整数が好ましい。また、より好ましくはkx+mx+pxが0〜4の整数、さらに好ましくはkx+mx+pxが0〜2の整数であり、特に好ましくはkx+mx+pxが1である。ky+pyは0〜4の整数であることが好ましく、ky+pyは0〜2の整数であることがより好ましい。mxが0であり、kx+pxが1である環状オレフィン系単量体を用いると、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度にも優れた樹脂が得られるため好ましい。
【0094】
前記式(X0)または(Y0)で表される環状オレフィン系単量体の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が例示できるが、これらの例示に限定されるものではない。
・ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)
・5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
【0095】
・トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
【0096】
・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン
・8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
なお、これら環状オレフィン系単量体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
本発明に用いられる環状オレフィン系単量体の種類および量は、得られる樹脂に求められる特性により適宜選択される。
【0098】
これらのうち、その分子内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種の原子を少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という。)を有する化合物を用いると、化合物(I)の分散性に優れ、また、他素材(近赤外線反射膜等)との接着性や密着性に優れるなどの利点がある。特に、前記式(X0)中、Rx1およびRx3がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくは水素原子またはメチル基であり、かつ、Rx2またはRx4のいずれか一つが極性構造を有する基であって他が水素原子または炭素数1〜3炭化水素基である化合物を重合した樹脂は、吸水(湿)性が低く好ましい。また、Ry1またはRy2のいずれか一つが極性構造を有する基であって他が水素原子または炭素数1〜3炭化水素基である化合物を重合した樹脂は、吸水(湿)性が低く好ましい。さらに、前記極性構造を有する基が下記式(Z0)で表わされる基である環状オレフィン系単量体は、得られる樹脂の耐熱性と吸水(湿)性とのバランスがとりやすいため、好ましく用いられる。
【0099】
−(CH2zCOOR …(Z0
(式(Z0)中、Rは置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基を表し、zは0または1〜10の整数を表す。)
【0100】
前記式(Z0)において、zの値が小さい基ほど得られる水素添加物のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れるので、zが0または1〜3の整数であることが好ましく、更に、zが0である単量体はその合成が容易である点で好ましい。また、前記式(Z0)におけるRは、炭素数が多いほど得られる重合体の水素添加物の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、耐熱性を保持する観点からは炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、特に炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。
【0101】
なお、前記式(X0)において、前記式(Z0)で表される基が結合した炭素原子に、炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合していると、耐熱性と吸水(湿)性のバランスの良い化合物となる傾向にあるため好ましい。さらに、前記式(X0)において、mxが0であり、かつ、kx+pxが1である化合物は、反応性が高く、高収率で重合体が得られること、また、耐熱性が高い重合体水素添加物が得られること、さらに工業的に入手しやすいことから好適に用いられる。
【0102】
前記環状オレフィン系樹脂は、前記環状オレフィン系単量体と該単量体と共重合可能な単量体とを本発明の効果を損なわない範囲で共重合させた重合体であってもよい。
【0103】
これら共重合可能な単量体として、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの環状オレフィンや1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエンなどの非共役環状ポリエンを挙げることができる。
これらの共重合可能な単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記環状オレフィン系単量体の重合方法については、単量体の重合が可能である限り特に制限されるものではないが、例えば、開環重合、もしくは付加重合によって重合することができる。
【0105】
前記開環重合反応により得られる重合体は、その分子中にオレフィン性不飽和結合を有している。また、前記付加重合反応においても、重合体がその分子中にオレフィン性不飽和結合を有する場合がある。このように、重合体分子中にオレフィン性不飽和結合が存在すると、係るオレフィン性不飽和結合が経時着色やゲル化等劣化の原因となる場合があるので、このオレフィン性不飽和結合を飽和結合に変換する水素添加反応を行うことが好ましい。
【0106】
水素添加反応は、通常の方法、すなわちオレフィン性不飽和結合を有する重合体の溶液に公知の水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行うことができる。
【0107】
水素添加重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定されるオレフィン性不飽和結合に水素が付加した割合が通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性に優れたものとなり、長期にわたって安定した特性を維持できる樹脂製基板となるため好ましい。
【0108】
<芳香族ポリエーテル系樹脂>
本発明に用いられる透明樹脂として、芳香族ポリエーテル系樹脂が挙げられる。芳香族ポリエーテル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、下記式(1)で表わされる構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)および下記式(2)で表わされる構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(以下「構造単位(1−2)」ともいう。)を有する樹脂(以下「樹脂(1)」ともいう。)であることが好ましい。このような樹脂から得られる基板は、優れた耐熱性および力学的強度に優れ、さらに、透明性および表面平滑性等に優れる。
【0109】
【化18】

【0110】
前記式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示す。a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0または1である。
【0111】
炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の1価の有機基等を挙げることができる。
【0112】
炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0113】
前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0114】
前記直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基等が挙げられる。
【0115】
前記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0116】
炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0117】
前記炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0118】
酸素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1〜12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0119】
エーテル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基などを挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0120】
また、カルボニル基を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシル基等を挙げることができる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基およびベンゾイル基等が挙げられる。
【0121】
エステル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシルオキシ基等が挙げられる。具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0122】
窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基およびベンズトリアゾール基等が挙げられる。
【0123】
酸素原子および窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子、および、窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンズオキサゾール基およびベンズオキサジアゾール基等が挙げられる。
【0124】
前記式(1)におけるR1〜R4としては、樹脂(1)の吸水(湿)性の点から炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0125】
【化19】

【0126】
前記式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、mは、0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0127】
前記樹脂(1)は、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)とのモル比(但し、両者(構造単位(1)+構造単位(2))の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から構造単位(1):構造単位(2)=50:50〜100:0であることが好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=70:30〜100:0であることがより好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=80:20〜100:0であることがさらに好ましい。
ここで、力学的特性とは、樹脂の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0128】
また、前記樹脂(1)は、さらに、下記式(3)で表わされる構造単位および下記式(4)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(以下「構造単位(3−4)」ともいう。)を有してもよい。前記樹脂(1)がこのような構造単位(3−4)を有すると、該樹脂(1)を含む基板の力学的特性が向上するため好ましい。
【0129】
【化20】

【0130】
前記式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、nは、0または1を示す。eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0131】
炭素数1〜12の2価の有機基としては、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基等を挙げることができる。
【0132】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0133】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基およびヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0134】
炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基などが挙げられる。
【0135】
炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。
【0136】
炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基、炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0137】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基としては、ジフロオロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、テトラクロロエチレン基、ヘキサフルオロトリメチレン基、ヘキサクロロトリメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびヘキサクロロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0138】
炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基としては、前記炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0139】
炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0140】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子および炭素原子と、酸素原子および/または窒素原子とからなる有機基が挙げられ、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合またはアミド結合と炭化水素基とを有する総炭素数1〜12の2価の有機基等が挙げられる。
【0141】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基としては、具体的には、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0142】
前記式(3)におけるZとしては、単結合、−O−、−SO2−、>C=Oまたは炭素数1〜12の2価の有機基が好ましく、樹脂(1)の吸水(湿)性の点から炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基または炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0143】
【化21】

【0144】
前記式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。なお、mが0の時、R7はシアノ基ではない。
【0145】
前記樹脂(1)は、前記構造単位(1−2)と前記構造単位(3−4)とのモル比(但し、両者((1−2)+(3−4))の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から(1−2):(3−4)=50:50〜100:0であることが好ましく、(1−2):(3−4)=70:30〜100:0であることがより好ましく、(1−2):(3−4)=80:20〜100:0であることがさらに好ましい。
ここで、力学的特性とは、樹脂の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0146】
前記樹脂(1)は、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から前記構造単位(1−2)および前記構造単位(3−4)を全構造単位中70モル%以上含むことが好ましく、全構造単位中95モル%以上含むことがより好ましい。
【0147】
前記樹脂(1)は、例えば、下記式(5)で表わされる化合物(以下「化合物(5)」ともいう。)および下記式(7)で表わされる化合物(以下「化合物(7)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を含む成分(以下「(A)成分」ともいう。)と、下記式(6)で表わされる化合物を含む成分(以下「(B)成分」ともいう。)とを、反応させることにより得ることができる。
【0148】
【化22】

【0149】
前記式(5)中、Xは独立してハロゲン原子を示し、フッ素原子が好ましい。
【0150】
【化23】

【0151】
前記式(7)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、Xは、独立に前記式(5)中のXと同義である。
但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。
【0152】
【化24】

【0153】
前記式(6)中、RAは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、この中でも水素原子が好ましい。なお、式(6)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義である。
【0154】
前記化合物(5)としては、具体的には、2,6−ジフルオロベンゾニトリル(DFBN)、2,5−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,5−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリルおよびこれらの反応性誘導体を挙げることができる。特に、反応性および経済性等の観点から、2,6−ジフルオロベンゾニトリルおよび2,6−ジクロロベンゾニトリルが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0155】
前記式(6)で表わされる化合物(以下「化合物(6)」ともいう。)としては、具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンおよびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0156】
前記化合物(7)としては、具体的には、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDS)、2,4'−ジフルオロベンゾフェノン、2,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、2,2'−ジフルオロベンゾフェノン、2,2'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,4'−ジクロロベンゾフェノン、2,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,2'−ジクロロベンゾフェノン、2,2'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロベンゾフェノンおよび3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン等を挙げることができる。これらの中でも、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホンが好ましい。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0157】
化合物(5)および化合物(7)からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物は、(A)成分100モル%中に、80モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがより好ましい。
また、(B)成分は、必要に応じて下記式(8)で表わされる化合物を含むことが好ましい。化合物(6)は、(B)成分100モル%中に、50モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、80モル%〜100モル%含まれていることがより好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがさらに好ましい。
【0158】
【化25】

【0159】
前記式(8)中、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義であり、RAは、それぞれ独立に前記式(6)中のRAと同義である。
【0160】
前記式(8)で表わされる化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2−フェニルヒドロキノン、4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3'−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1'−ビ−2−ナフトール、1,1'−ビ−4−ナフトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、レゾルシノール、4,4'−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましく、反応性および力学的特性の観点から、4,4'−ビフェノールが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0161】
前記樹脂(1)は、より具体的には、以下に示す方法(I')で合成することができる。
方法(I'):
(B)成分を有機溶媒中でアルカリ金属化合物と反応させて、(B)成分(化合物(6)および/または化合物(8)等)のアルカリ金属塩を得た後に、得られたアルカリ金属塩と、(A)成分とを反応させる。なお、(B)成分とアルカリ金属化合物との反応を(A)成分の存在下で行うことで、(B)成分のアルカリ金属塩と(A)成分とを反応させることもできる。
【0162】
反応に使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属;水素化リチウム、水素化カリウムおよび水素化ナトリウム等の水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩などを挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0163】
アルカリ金属化合物は、前記(B)成分中の全ての−O−RAに対し、アルカリ金属化合物中の金属原子の量が通常1〜3倍当量、好ましくは1.1〜2倍当量、さらに好ましくは1.2〜1.5倍当量となる量で使用される。
【0164】
また、反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)およびトリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)などを使用することができる。これらの溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびジメチルスルホキシド等の誘電率の高い極性有機溶媒が特に好適に用いられる。これら有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0165】
さらに、前記反応の際には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどの水と共沸する溶媒をさらに用いることもできる。
【0166】
(A)成分と(B)成分の使用割合は、(A)成分と(B)成分との合計を100モル%とした場合に、(A)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは50モル%以上52モル%以下、さらに好ましくは50モル%を超えて52モル%以下であり、(B)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは48モル%以上50モル%以下であり、さらに好ましくは48モル%以上50モル%未満である。
【0167】
また、反応温度は、好ましくは60℃〜250℃、より好ましくは80℃〜200℃の範囲である。反応時間は、好ましくは15分〜100時間、より好ましくは1時間〜24時間の範囲である。
【0168】
前記樹脂(1)は、示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)によるガラス転移温度(Tg)が好ましくは230〜350℃、より好ましくは240〜330℃、さらに好ましくは250〜300℃である。
前記樹脂(1)のガラス転移温度は、例えばRigaku社製8230型DSC測定装置(昇温速度20℃/分)やエスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)(昇温速度20℃/分)などを用いて測定される。
【0169】
前記樹脂(1)は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう。))で測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは15,000〜400,000、さらに好ましくは30,000〜300,000である。
【0170】
前記樹脂(1)は、熱重量分析法(TGA)で測定した熱分解温度が、好ましくは450℃以上、より好ましくは475℃以上、さらに好ましくは490℃以上である。
【0171】
<ポリイミド樹脂>
本発明に用いることができる透明樹脂として、ポリイミド樹脂を挙げることができる。
前記ポリイミド樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子であれば良く、たとえば特開2008−163107に挙げられている方法で合成することができる。
【0172】
本発明に用いることができる透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂の市販品としては、たとえば、JSR株式会社製アートン、日本ゼオン株式会社製ゼオノア、三井化学株式会社製APEL、ポリプラスチックス株式会社製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン樹脂の市販品として、住友化学株式会社製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド樹脂の市販品として三菱ガス化学株式会社製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート樹脂の市販品として帝人株式会社製ピュアエースなどを挙げることができる。有機−無機ナノハイブリッド材料の市販品として新日鐵化学株式会社製シルプラスなどを挙げることができる。
【0173】
<その他成分>
前記樹脂製基板(I)には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、近赤外線を吸収する染料や顔料、および金属錯体系化合物等の添加剤を添加することができる。また、後述する溶液キャスティング法により樹脂製基板(I)を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂製基板(I)の製造を容易にすることができる。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0174】
前記酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0175】
前記紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0176】
なお、これら添加剤は、樹脂製基板(I)を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を製造する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部である。
【0177】
<化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)の製造方法>
本発明に用いる樹脂製基板(I)は、例えば、溶融成形、キャスト成形により形成することができ、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングする方法により製造することができる。
【0178】
(A)溶融成形
前記樹脂製基板(I)は、前記樹脂と化合物(I)および/または化合物(I')とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;前記樹脂と化合物(I)および/または化合物(I')とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;化合物(I)および/または化合物(I')、前記樹脂、ならびに溶媒を含む樹脂組成物から溶媒を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などにより製造することができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形あるいはブロー成形などを挙げることができる。
【0179】
(B)キャスティング
前記樹脂製基板(I)は、化合物(I)および/または化合物(I')、前記樹脂、ならびに溶媒を含む樹脂組成物を適当な基材の上にキャスティングして溶媒を除去すること、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤ならびに化合物(I)および/または化合物(I')を含む樹脂組成物を適当な基材の上にコーティングすること、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤ならびに化合物(I)および/または化合物(I')を含む硬化性組成物を適当な基材の上にコーティングして硬化、乾燥させることなどにより製造することもできる。
【0180】
例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムあるいはポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等の透明樹脂などの基材の上に、上述の樹脂組成物を塗布して溶媒を乾燥させることで塗膜を得て、その後基材から塗膜を剥離することにより、樹脂製基板(I)を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない限り、基材から塗膜を剥離せずに基材と塗膜との積層体を前記樹脂製基板(I)としてもよい。さらに、ガラス板、石英あるいは透明プラスチック製等の光学部品に上述の樹脂組成物をコーティングして溶媒を乾燥させたり、前記樹脂、ハードコート剤等のコーティング剤、溶媒ならびに化合物(I)および/または化合物(I')を含む樹脂組成物をコーティングして硬化、乾燥させることにより、光学部品上に直接樹脂製基板(I)を形成することもできる。
【0181】
前記方法で得られた樹脂製基板(I)中の残留溶媒量は可能な限り少ない方がよく、通常3重量%以下、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶媒量が3重量%を超える場合、経時的に樹脂製基板(I)が変形したり特性が変化したりして所望の機能が発揮できなくなることがある。
【0182】
≪近赤外線反射膜≫
本発明に用いられる近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。このような近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜などを用いることができる。
【0183】
本発明の近赤外線カットフィルターは、このような近赤外線反射膜を有しているため、特に下記(B)の特徴を有することになる。そのため、近赤外線を十分にカットすることのできるフィルターを得ることができる。
【0184】
本発明において、近赤外線反射膜は樹脂製基板(I)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0185】
これら近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を好適に用いることができる。
【0186】
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。
【0187】
これら材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、および、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および酸化セリウムなどを少量(例えば、主成分に対し0〜10%)含有させたものなどが挙げられる。
【0188】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。
【0189】
これら材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
【0190】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、前記樹脂製基板(I)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法およびイオンプレーティング法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0191】
これら高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みが好ましい。厚みがこの範囲あると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
【0192】
また、誘電体多層膜における積層数は、5〜60層、好ましくは10〜50層であることが望ましい。
【0193】
さらに、誘電体多層膜を形成した際に基板にソリが生じてしまう場合には、これを解消するために、基板両面に誘電体多層膜を形成したり、基板の誘電体多層膜を形成した面に紫外線等の電磁波を照射したりする等の方法をとることができる。なお、電磁波を照射する場合、誘電体多層膜の形成中に照射してもよいし、形成後別途照射してもよい。
【0194】
≪その他の機能膜≫
本発明の近赤外線カットフィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂製基板(I)と誘電体多層膜等の近赤外線反射膜の間、樹脂製基板(I)の近赤外線反射膜が設けられた面と反対側の面、または近赤外線反射膜の樹脂製基板(I)が設けられた面と反対側の面に、樹脂製基板(I)の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。本発明の近赤外線カットフィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の近赤外線カットフィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0195】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを樹脂製基板(I)または赤外線反射膜上に、前記と同様に溶融成形する方法、およびキャスティング等する方法を挙げることができる。また、前記コーティング剤形成材料などを含む硬化性組成物をバーコーター等で樹脂製基板(I)または赤外線反射膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0196】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤に対応する前記硬化性組成物としては、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0197】
前記ウレタン系、ウレタンアクリレート系硬化性組成物に含まれる成分としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴウレタン(メタ)アクリレート類を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらにポリウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
【0198】
アクリレート系硬化性組成物としては、特に限定されないが、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を含む組成物などを挙げることができる。
前記(メタ)アクリルエステル類の具体例としては、例えば、
イソボルニル(メタ)アクリレート、
ボルニル(メタ)アクリレート、
トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、
4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、
アクリロイルモルホリン、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、
プロピル(メタ)アクリレート、
イソプロピル(メタ)アクリレート、
ブチル(メタ)アクリレート、
アミル(メタ)アクリレート、
イソブチル(メタ)アクリレート、
t−ブチル(メタ)アクリレート、
ペンチル(メタ)アクリレート、
イソアミル(メタ)アクリレート、
へキシル(メタ)アクリレート、
ヘプチル(メタ)アクリレート、
オクチル(メタ)アクリレート、
イソオクチル(メタ)アクリレート、
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
ノニル(メタ)アクリレート、
デシル(メタ)アクリレート、
イソデシル(メタ)アクリレート、
ウンデシル(メタ)アクリレート、
ドデシル(メタ)アクリレート、
ラウリル(メタ)アクリレート、
ステアリル(メタ)アクリレート、
イソステアリル(メタ)アクリレート、
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、
ブトキシエチル(メタ)アクリレート、
エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシエチル(メタ)アクリレート、
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、
イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、
t−オクチル(メタ)アクリルアミド、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、
フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、
p−クミルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、
2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
4−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,6−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
グリセリントリ(メタ)アクリレート、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート
1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、
イソボロニル(メタ)アクリレート、
トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、
トリシクロデカンメタノールジ(メタ)アクリレート、
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、
テトラシクロデカンジイルジメタジ(メタ)アクリレート、
これらの化合物を製造する際の出発アルコール類のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、
分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、および、
オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、
を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらにポリエステル(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
【0199】
前記ビニル化合物類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0200】
前記エポキシ系、エポキシアクリレート系硬化性組成物に含まれる成分としては、特に限定されないが、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらにポリエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
【0201】
前記コーティング剤(コーティング剤形成材料などを含む硬化性組成物)の市販品としては、東洋インキ製造株式会社製LCH、LAS、荒川化学工業株式会社製ビームセット、ダイセル・サイテック株式会社製EBECRYL、UVACURE、JSR株式会社製オプスター等が挙げられる。
【0202】
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。
重合開始剤の具体例としては、特に限定されないが、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、
キサントン、
フルオレノン、
ベンズアルデヒド、
アントラキノン、
トリフェニルアミン、
カルバゾール、
3−メチルアセトフェノン、
4−クロロベンゾフェノン、
4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、
4,4'−ジアミノベンゾフェノン、
ミヒラーケトン、
ベンゾインプロピルエーテル、
ベンゾインエチルエーテル、
ベンジルジメチルケタール、
1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、
チオキサントン、
ジエチルチオキサントン、
2−イソプロピルチオキサントン、
2−クロロチオキサントン、
2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、
ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシドが挙げられる。
これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0203】
これらの市販品としては、イルガキュア184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、Darocure TPO(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ルシリンLR8728(BASF社製)、Darocure1116、1173(以上、メルク社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0204】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100重量%として、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性に優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0205】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0206】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは0.7μm〜5μmである。
【0207】
また、樹脂製基板(I)と機能膜および/または近赤外線反射膜との密着性や、機能膜と近赤外線反射膜との密着性を上げる目的で、樹脂製基板(I)や機能膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0208】
≪近赤外線カットフィルター≫
本発明の近赤外線カットフィルターは、その光線透過率が、下記(A)〜(D)を満たすことが好ましい。
【0209】
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上、好ましくは78%以上、さらに好ましくは80%以上の値をとることが望ましい。本発明では、厚さ0.1mmでの全光線透過率が高い樹脂、当該波長領域に吸収を持たない化合物(I)等を用いることで、このような波長430〜580nmにおいて、高い透過率を有する近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0210】
近赤外線カットフィルターを固体撮像装置やカメラモジュール等のレンズユニットにおける視感度補正用フィルター等に用いる場合、波長430〜580nmにおける透過率の平均値が前記範囲であり、この波長範囲において透過率が一定であることが好ましい。
【0211】
波長430〜580nmの範囲における透過率の平均値としては高い方が好ましい。透過率の平均値が高いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保され、前記用途に好適に用いることができる。
【0212】
一方、波長430〜580nmの範囲における透過率の平均値が低いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保されず、前記用途に好適に用いることができないおそれがある。
【0213】
(B)波長800〜1000nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下の値をとることが望ましい。本発明では、樹脂製基板(I)上に高い近赤外線反射能を有する所定の近赤外線反射膜を設けることで、このような波長800〜1000nmにおける透過率が十分に低い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0214】
本発明の近赤外線カットフィルターは近赤外線の波長(800nm以上)を選択的に低減させるものであるため、800〜1000nmの範囲における透過率の平均値は低い方が好ましい。透過率の平均値が低いと、近赤外線カットフィルターは、近赤外線を十分にカットすることができる。
【0215】
一方、波長800〜1000nmの範囲における透過率の平均値が高いと、フィルターは、近赤外線を充分カットすることができず、該フィルターをPDP等に用いた場合には、家庭内において、PDP周辺にある電子機器の誤作動を防ぐことができないおそれがある。
【0216】
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa−Xb|)が75nm未満、好ましくは72nm未満、さらに好ましくは70nm未満の値をとることが望ましい。本発明では、前記化合物(I)を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が前記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0217】
近赤外線カットフィルターの(Xa)と(Xb)との差の絶対値が前記範囲にあると、近赤外線の波長領域付近の波長(Xa)と(Xb)の間で透過率が急変することとなるため、近赤外線を効率よくカットすることができ、また、下記(Ya)と(Yb)の差の絶対値が小さくなり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0218】
(D)波長560〜800nm、好ましくは580〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya−Yb|)が15nm未満、好ましくは13nm未満、さらに好ましくは10nm未満の値をとることが望ましい。
【0219】
本発明では、前記化合物(I)を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が前記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0220】
このように、波長560〜800nmの範囲において、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が前記範囲にあると、このようなフィルターをPDP等に用いた場合には、ディスプレイを斜め方向から見た場合にも、垂直方向から見た場合と同等の明るさおよび色調を示し、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0221】
一方、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が15nm以上である近赤外線カットフィルターをPDP等に用いると、ディスプレイを見る角度により明るさが著しく減じたり、色調が反転したり、特定の色が見えにくくなったりするおそれがあり、前記用途に好適に用いることができない場合がある。
【0222】
ここで、「視野角」とは、ディスプレイなどを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことである。
本発明においては、近赤外線カットフィルターを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことをいう。
【0223】
正常に見ることができるかどうかの判断として、本発明では、波長560〜800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満となることを一つの基準とする。
【0224】
前記近赤外線カットフィルターの厚みは、該フィルターの透過率が前記(A)〜(D)を満たすように調整することが好ましく、特に制限はないが、好ましくは50〜250μm、より好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは、80〜150μmである。
【0225】
近赤外線カットフィルターの厚みが前記範囲にあると、フィルターを、小型化、軽量化することができ、固体撮像装置等さまざまな用途に好適に用いることができる。特にカメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0226】
<近赤外線カットフィルターの用途>
本発明で得られる近赤外線カットフィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能等を有する。したがってカメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボットおよびおもちゃ等に有用である。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0227】
ここで、本発明で得られる近赤外線カットフィルターをカメラモジュールに用いる場合について具体的に説明する。
【0228】
図1に、カメラモジュールの断面概略図を示す。
図1(a)は、従来のカメラモジュールの構造の断面概略図であり、図1(b)は、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'を用いた場合の、とり得ることができるカメラモジュールの構造の一つを表す断面概略図である。
【0229】
図1(b)では、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'をレンズ5の上部に用いているが、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'は、図1(a)に示すようにレンズ5とセンサー7の間に用いることもできる。
【0230】
従来のカメラモジュールでは、近赤外線カットフィルター6に対してほぼ垂直に光が入射する必要があった。そのため、フィルター6は、レンズ5とセンサー7の間に配置する必要があった。
【0231】
ここで、センサー7は、高感度であり、5μ程度のちりやほこりが触れるだけで正確に作動しなくなるおそれがあるため、センサー7の上部に用いるフィルター6は、ちりやほこりの出ないものであり、異物を含まないものである必要があった。また、前記センサー7の特性から、フィルター6とセンサー7の間には、所定の間隔を設ける必要があり、このことがカメラモジュールの低背化を妨げる一因となっていた。
【0232】
これに対し、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'では、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が15nm以下である。つまり、フィルター6'の垂直方向から入射する光と、フィルター6'の垂直方向に対して30°から入射する光の透過波長に大きな差はないため(吸収(透過)波長の入射角依存性が小さい)、フィルター6'は、レンズ5とセンサー7の間に配置する必要がなく、レンズの上部に配置することもできる。
【0233】
このため、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'をカメラモジュールに用いる場合には、該カメラモジュールの取り扱い性が容易になり、また、フィルター6'とセンサー7の間に所定の間隔を設ける必要がないため、カメラモジュールの低背化が可能となる。
【実施例】
【0234】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【0235】
まず、各物性値の測定方法および物性の評価方法について説明する。
【0236】
(1)分子量:
東ソ−製のHタイプカラムが装着された、ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型)を用い、o−ジクロロベンゼン溶媒、120℃の条件で、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0237】
(2)ガラス転移温度(Tg):
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0238】
(3)飽和吸水率:
ASTM D570に準拠し、合成例で得られた樹脂から厚さ3mm、縦50mm、横50mmの試験片を作成し、得られた試験片を23℃の水中に1週間浸漬させた後、試験片の重量変化より吸水率を測定した。
【0239】
(4)分光透過率:
株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。
【0240】
ここで、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率は、図2のようにフィルターに対し垂直に透過した光を測定した。
【0241】
また、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率は、図3のようにフィルターの垂直方向に対して30°の角度で透過した光を測定した。
【0242】
なお、この透過率は、(Yb)を測定する場合を除き、光が基板、フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。(Yb)を測定する場合には、光がフィルターの垂直方向に対して30°の角度で入射する条件で該分光光度計を使用して測定したものである。
【0243】
[合成例1]
下記式(a)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)300部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0244】
【化26】

【0245】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
【0246】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。樹脂Aの分子量は数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)は165℃であった。
【0247】
[合成例2]
十分に乾燥し、窒素置換した1リットルのステンレス製オートクレーブに水分6ppmの脱水されたシクロヘキサン;420.4g、p−キシレン;180.2g、5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;48.75ミリモル(10.43g)、およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;1,425ミリモル(134.1g)を仕込み、ガス状のエチレンをオートクレーブ内圧が0.1MPaになるように仕込んだ。その後、オートクレーブを75℃に加温した。
【0248】
触媒成分である2−エチルヘキサン酸パラジウム(Pd原子として);0.003ミリグラム原子とトリシクロヘキシルホスフィン;0.0015ミリモルとをトルエン;10ml中に加え、25℃で1時間反応させて溶液を調製し、この溶液全量と、トリフェニルカルベニウムペンタフルオロフェニルボレート;0.00315ミリモルとを、この順に75℃に加温したオートクレーブに添加して重合を開始した。
【0249】
オートクレーブに5−トリメトキシトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを、重合開始90分後に11.25ミリモル(2.41g)、その後30分毎に7.5ミリモル(1.61g)、3.75ミリモル(0.80g)、3.75ミリモルと計4回添加した。
【0250】
重合反応を75℃で4時間行った後、トリブチルアミン;1mlを添加して重合を停止し、固形分19.9重量%の付加重合体Bの溶液を得た。付加重合体Bの溶液の一部をイソプロパノールに入れ、凝固させ、さらに乾燥することにより、付加重合体B(以下「樹脂B」ともいう。)を得た。
【0251】
この樹脂Bの270MHz−核磁気共鳴分析(1H−NMR分析)の結果、樹脂B中の5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は4.8モル%で、分子量は数平均分子量(Mn)が74,000、重量平均分子量(Mw)が185,000であり、ガラス転移温度(Tg)は360℃、飽和吸水率は0.35%であった。
【0252】
[合成例3]
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管、冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル10.0重量部(0.05モル)を、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン85重量部に溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物11.2重量部(0.05モル)を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。
【0253】
次に、共沸脱水溶媒としてキシレン30.0重量部を添加して180℃に昇温した後、3時間反応を行い、ディーンスターク管でキシレンを還流させて、共沸してくる生成水を分離した。3時間後、水の留出が終わったことを確認し、1時間かけて190℃に昇温しながらキシレンを留去させ、29.0重量部を回収した後、内温が60℃になるまで空冷してポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(以下「ポリイミド溶液C」ともいう。)105.4重量部を得た。
【0254】
[合成例4]
3Lの4つ口フラスコに2,6−ジフルオロベンゾニトリル 35.12g(0.253mol)、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン125.65g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。
【0255】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末D(以下、樹脂Dという)を得た(収量95.67g、収率95%)。
【0256】
得られた重合体の構造分析を行った。結果は、赤外吸収スペクトルの特性吸収が、3035(C−H伸縮)、2229cm-1(CN)、1574cm-1、1499cm-1(芳香環骨格吸収)、1240cm-1(−O−)であった。樹脂Dの分子量は数平均分子量(Mn)が67,000、重量平均分子量(Mw)が146,000であり、ガラス転移温度(Tg)は275℃であった。得られた重合体は前記構造単位(1)を有していた。
【0257】
[合成例5]
9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン125.65g(0.250mol)の代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)を使用した以外は合成例4と同様に合成を行い、樹脂Eを得た。樹脂Eの分子量は数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)は285℃であった。
【0258】
[合成例6]
9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン125.65g(0.250mol)の代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン78.84g(0.225mol)および9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン6.71g(0.025mol)を使用した以外は合成例4と同様に合成を行い、樹脂Fを得た。樹脂Fの分子量は数平均分子量(Mn)が36,000、重量平均分子量(Mw)が78,000であり、ガラス転移温度(Tg)は260℃であった。
【0259】
[合成例7]
2,6−ジフルオロベンゾニトリル 35.12g(0.253mol)の代わりに、4,4−ジフルオロジフェニルスルホン(DFDS)78.84g(0.250mol)を使用した以外は合成例4と同様に合成を行い、樹脂Gを得た。樹脂Gの分子量は数平均分子量(Mn)が37,000、重量平均分子量(Mw)が132,000であり、ガラス転移温度(Tg)は265℃であった。
【0260】
[実施例1]
容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液(ex1)を得た。
次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0261】
この基板の分光透過率を測定し、吸収極大波長と、(Za)、(Zb)を求めた。
この結果を表1に示す。
【0262】
この基板の吸収極大波長は699nmであった。また、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値(|Za−Zb|)は45nmであった。
【0263】
続いて、係る基板の片面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚83〜199nm)層とチタニア(TiO2:膜厚101〜125nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数20〕を形成し、さらに基板のもう一方の面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚77〜189nm)層とチタニア(TiO2:膜厚84〜118nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数26〕を形成し、厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。この結果を表1に示す。
【0264】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は91%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0265】
波長800nm以下の波長領域において、透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa−Xb|)は39nmであった。
【0266】
また、波長560〜800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して 30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya−Yb|)は3nmであった。
【0267】
[実施例2]
実施例1で得られた、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板の片面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数40〕を形成し、厚さ0.104mmの近赤外線カットフィルターを得た。さらに、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0268】
[実施例3]
容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.02重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。結果を表1に示す。
【0269】
[実施例4]
容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0270】
この基板の両面に、荒川化学工業株式会社製ハードコート剤「ビームセット」を、硬化後の膜厚が各0.002mmとなるようにバーコーターにて塗布した後UV照射して硬化し、厚さ0.104mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.109mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0271】
[実施例5]
容器に、日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂「ゼオノア 1420R」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.40重量部、さらにシクロヘキサンとキシレンの7:3混合溶液を加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間、80℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で24時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0272】
[実施例6]
容器に、三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂「APEL #6015」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.24重量部、さらにシクロヘキサンと塩化メチレンの99:1混合溶液を加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、40℃で4時間、60℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0273】
[実施例7]
容器に、帝人株式会社製のポリカーボネート樹脂「ピュアエース」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.02重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0274】
[実施例8]
容器に、住友ベークライト株式会社製のポリエーテルサルホン「FS−1300」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.05重量部、さらにN-メチル−2−ピロリドンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で4時間、80℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0275】
[実施例9]
JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」の代わりに合成例1で得た樹脂Aを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0276】
[実施例10]
容器に、合成例2で得た樹脂B100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.24重量部、さらにトルエンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0277】
[実施例11]
容器に、合成例3で得たポリイミド溶液C100重量部、およびスクエアリリウム系化合物「a−10」をポリイミド溶液Cの固形分100重量部に対して0.05重量部加え、固形分が18%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で4時間、80℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0278】
[実施例12]
容器に、合成例4で得た樹脂D100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.05重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0279】
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0280】
[実施例13]
容器に、合成例5で得た樹脂E100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.05重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0281】
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0282】
[実施例14]
容器に、合成例6で得た樹脂F100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.05重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0283】
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0284】
[実施例15]
容器に、合成例7で得た樹脂G100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.05重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0285】
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0286】
[実施例16]
容器に、合成例1で得た樹脂A100重量部、スクエアリリウム系化合物「a−10」0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0287】
この基板の両面に、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートとメチルエチルケトンを50:50の割合で混合した組成物を、乾燥後の膜厚が各0.002mmとなるようにバーコーターにて塗布したのちUV照射して硬化し、厚さ0.104mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
【0288】
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.109mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0289】
[比較例1]
溶液(ex1)の代わりに、合成例1で得た樹脂Aを塩化メチレンに溶解して得た樹脂濃度が20%の溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0290】
[比較例2]
スクエアリリウム系化合物「a−10」の代わりにスクエアリリウム構造を有さないニッケル錯体化合物であるSIR159(三井化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0291】
[比較例3]
スクエアリリウム系化合物「a−10」の代わりにスクエアリリウム構造を有さないシアニン系色素であるSDB3535(H.W.SANDS社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。
さらに、実施例1と同様にしてこの基板から厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0292】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0293】
本発明の近赤外線カットフィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボットおよびおもちゃ等に好適に用いることができる。
【0294】
さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0295】
1:カメラモジュール
2:レンズ鏡筒
3:フレキシブル基板
4:中空パッケージ
5:レンズ
6:近赤外線カットフィルター
6':本発明で得られる近赤外線カットフィルター
7:CCDまたはCMOSイメージセンサー
8:近赤外線カットフィルター
9:分光光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物に由来する構造を有する化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)を有することを特徴とする近赤外線カットフィルター。
【化1】

[式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)を満たす。
(i)Raはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−NRef基(ReおよびRfはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)、またはヒドロキシ基を表し、
bはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−NRgh基(RgおよびRhはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、または−C(O)Ri基(Riは炭素数1〜5のアルキル基を表す。))、またはヒドロキシ基を表し、
Yは−NRjk基(RjおよびRkはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。)を表す。
(ii)1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、構成原子数5または6の窒素原子を少なくとも1つ含む複素環を形成し、
bおよび該結合に関与しないRaはそれぞれ独立に前記(i)のRbおよびRaと同義である。]
【請求項2】
透過率が下記(A)〜(D)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カットフィルター。
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上
(B)波長800〜1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満
(D)波長560〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満
【請求項3】
前記樹脂製基板(I)が下記(E)および(F)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線カットフィルター。
(E)波長600〜800nmに吸収極大がある
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値が75nm未満
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。
【化2】

[式(II)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に、前記式(I)の(i)と同義であり、Rcはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6〜12の置換芳香族炭化水素基を表す。]
【請求項5】
前記樹脂製基板(I)が、環状オレフィン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を含んでなる基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項6】
前記環状オレフィン系樹脂が、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体から得られる樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の近赤外線カットフィルター。
【化3】

(式(X0)中、Rx1〜Rx4は、それぞれ独立に下記(i')〜(viii')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し(iv')を除く)
(vii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
(viii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す
【化4】

(式(Y0)中、Ry1およびRy2は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、下記(ix')を表し、KyおよびPyは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
(ix')Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環または多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表す
【請求項7】
前記芳香族ポリエーテル系樹脂が、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することを特徴とする請求項5に記載の近赤外線カットフィルター。
【化5】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【化6】

(式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0の時、R7はシアノ基ではない。)
【請求項8】
前記芳香族ポリエーテル系樹脂が、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することを特徴とする請求項7に記載の近赤外線カットフィルター。
【化7】

(式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【化8】

(式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【請求項9】
前記化合物(I)が樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部含有されてなる請求項5〜8のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項10】
前記近赤外線カットフィルターが固体撮像装置用であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−8532(P2012−8532A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98475(P2011−98475)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】