説明

送信源判定プログラム、記録媒体および送信源判定方法

【課題】所定の移動通信CDMAシステムでセル最適化設計を行う際に基地局10のセル識別信号として各々PSC、PNを利用する場合、1回のみ測定した一連のデータにより構成される接続呼及び非接続呼の測定結果から受信した信号の送信源が基地局か中継局かを判定でき、各カバレッジ区分を明確に判定できる送信源判定プログラムを提供する。
【解決手段】各Finger infoデータに対し各ブロックをPSCのEc/Ioの値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める。一次判定では、対象とするPSCのFinger infoデータ毎にその直接の発信源を識別する判定を行う。二次判定では、一次判定に基づき、接続呼においてBest fingerが受信した信号の送信源を判定する。同一PSC(又はPN)に対し二つ以上のFingerにより相対遅延情報を提供可能な測定系から取得したデータを用いた一次判定も可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継局を用いたCDMA(Code Division Multiple Access : 符号分割多重)移動通信システムで、パス検出機能が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を実行させるための送信源判定プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動通信事業者は、自社の移動通信ネットワークが提供するサービスエリアを隈なくカバーするために、必要となる基地局を設置している(以後「置局」と言う。)。ここで、置局された基地局がカバーする所定の受信品質を満足するサービスエリアの基本単位を「セル」と呼ぶ。一つの基地局が3つのセルを有する、即ち3つの基地局アンテナを有する3セクタ(または3セル)、あるいは一つの基地局が1つのセルを有する、即ち1つの基地局アンテナを有する1セクタ(または1セル)等がある。これらの基地局アンテナは各セルを識別するセル識別信号を送信している。上述のように置局した後、実際のフィールドで受信品質パラメータの測定をしてみると、予測に比べ、サービスエリアのセルカバレッジまたは無線カバレッジ(以下、「カバレッジ」と言う。)が不足している、またはカバレッジが大きすぎて他のセルのエリアと重なってしまい、干渉が発生する等の問題が生ずる場合がある。このような問題を解決する作業がセル設計最適化(RF Field Optimization)という作業である。
【0003】
サービスエリアの通信品質を評価するために測定および記録される受信品質パラメータとしては、当該の無線帯域の総受信電力(Received Signal Strength Indicator : RSSI)、希望信号の受信電力(移動通信CDMAシステムでは、Received Signal Code Power : RSCP)、希望信号対干渉雑音比(移動通信CDMAシステムではCIR:Carrier-to-Interference Ratio(逆拡散前)、 Signal-to-Interference Ratio : SIR(逆拡散後)等) 、希望信号対総受信電力比(移動通信CDMAシステムではEc/Io(逆拡散前))等が用いられている。
【0004】
上述したセル設計最適化という作業において、各セルのカバレッジの不足を補償する、あるいは干渉を引き起こすカバレッジの重なりを少なくする等の調整作業が行われる。そのためには、一般に、任意の場所で測定された信号がどの局から送信された信号なのかを判定することが必要である。
【0005】
各セルのカバレッジの不足問題を解決する場合、主として、1)基地局アンテナの向きおよび/または送信電力を調整する、2)新たに置局する、3)中継局を離隔配置する、の三通りの方法で対処することになる。
【0006】
上記1)は最も低コストで対処できる方法であるが、どのように工夫しても有効な調整結果を得る可能性が無い場合、上記2)または3)が有効な対処策となる。上記2)はカバレッジのみならずシステム容量も増加することができるが、最もコストが高くなる。これと比較して上記3)ではシステム容量は増加しないが、カバレッジを拡大する上で極めて低コストで実現できる。このため、容量増大を必要としない都市郊外または地方の小都市等の電波不感地帯等に採用される例が多い。
【0007】
ここで、上記3)の中継局を離隔配置する方法を採用する場合、まず当該方法を採用した結果のカバレッジの効果を確認するために、屋外、屋内のフィールドにて取得した電波の受信品質の測定データについて、基地局から送信された信号と当該基地局の信号を受信中継する中継局から送信された信号とを判定することが必要となる。この判定を実現する方法として、中継局の中継動作機能を停止(OFF)した状態と作動(ON)した状態とのそれぞれで電波の計測を実施する方法を用いればよいことは自明であるが、この方法では測定作業に必要な時間およびコストが通常の測定作業の2倍になる。従って、中継動作機能を作動した状態における1回の測定で、中継局からの送信信号を識別できることが望ましい。
【0008】
以下、中継動作機能を作動した状態における1回の測定で、中継局からの送信信号を識別する従来の方法について説明する。一般に、移動通信システムにおいて、中継局の送信信号とその送信信号の源となる基地局からの直接の送信信号とが同時に測定系に到達する場合、これらを識別するのは困難である。そこで、移動通信CDMAシステムでは、従来、下記のような手順による方法で中継局の送信信号と基地局からの送信信号とを識別する判定を行っている。
【0009】
ステップ1.
移動通信のマルチパス伝搬環境により複数のパスに分散して到達する各セル固有のセル識別信号であるスペクトラム拡散された信号(移動通信WCDMA(Wideband CDMA)システムではPSC : Primary Scrambling Code、移動通信CDMA2000システムではPN : Pseudo Noise等)を受信し、同受信信号を逆拡散する過程で、上記マルチパス中、電力の大きい順に2本のパスの信号を各々1本ずつ分離検出する2つのパス検出機能(以下、Finger1およびFinger2と呼ぶ。)を備えた測定器を用い、所定のPSCまたはPNのFinger1とFinger2とが検出したパスの時間的遅延を測定する。
【0010】
図24は、上記マルチパス中、電力の大きい順から2本のパスを経由したセル識別信号の逆拡散後の波形例とこれらを捕捉するFinger1とFinger2との対応関係を示す。図24で、横軸は時間、縦軸は信号強度である。図24に示されるように、Finger1が捕捉した波形の時刻は時間t1であり、Finger2が捕捉した波形の時刻は時間t2であるため、Finger1とFinger2との時間的遅延差はt2−t1となる。これらのFinger1等から得られる情報は、それぞれが検出したパスの時間的遅延差だけでなく、Finger1等による対応するパスの逆拡散処理で用いた参照用拡散符号の識別番号(PSC番号、PN番号等)もあり、さらに、対応するパスの各種品質情報(信号対干渉雑音エネルギー比:Ec/Io(Ec/Noとも表記する)、逆拡散した識別信号の電力:RSCP、無線信号帯域の総受信電力:RSSI等)の測定結果もFinger1等によるパス検出に続く受信信号処理で得ることができる。
【0011】
ステップ2.
Finger1とFinger2とが検出したパスの時間的遅延差と、中継局の中継処理遅延τとを比較し以下のように判定する。
【0012】
<場合1>
Finger1とFinger2とが検出したパスの時間的遅延差の絶対値が中継処理遅延τ以上である場合、Finger1とFinger2との内、遅延が小さい(図24で時刻が早い)方のFingerが検出した信号を基地局から発せられ中継局を経由しない信号(以下、「基地局信号」と言う。)と判定し、遅延が大きい(図24で時刻が遅い)方のFingerが検出した信号を中継局を経由した信号(以下、「中継局信号」と言う。)と判定する。
【0013】
<場合2>
Finger1とFinger2とが検出したパスの時間的遅延差の絶対値が中継処理遅延τ未満である場合、中継局の送信信号と基地局からの送信信号とを識別する判定を保留する。
【0014】
次に、中継局の中継動作機能を停止(OFF)した状態と作動(ON)した状態とのそれぞれで電波の計測を実施する方法と、上述したステップ1および2による方法を実測例に適用した結果とについて説明する。図25は、移動通信WCDMAシステムにおける実測対象のサービスエリアを含む地域の標高に関する地形的状況について、陰影をつけて立体的に示した地図を示す。図25において、実線の網目パターン(点線の楕円151内)は測定車両の走行ルートを示している。図25の中央右側の3個の矢印152、153および154の中心は基地局155を表しており、各矢印152等はその基地局155におけるそれぞれおよそ120°の方位角のサービスエリアをカバーするセルまたはセクタの指向方位を表している。さらに、図25の中央左側の四辺形156の右端は中継局157を表しており、四辺形156の左端の方向は中継局157がカバーするおおよその方位を示している。図25より明らかな通り、実測対象のサービスエリアは図25に示される地図内で上下に位置する山岳に挟まれた谷に位置しており、中継局157は当該地図内でその位置より左側の谷間のサービスエリアにおける電波の電界強度を強めるために置局されている。
【0015】
図26は、図25に示される実測対象のサービスエリアにおいて、中継局の中継動作機能をON(作動)/OFF(停止)した状態のそれぞれで電波の計測を実施することにより、中継局157の有効サービスエリアを実測した例を示す。図26で図25と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図26の原図はカラーで示されているが、出願図面では白黒となっている。図26において、赤、黄、白地に縞、灰の各色でプロットされた点は、中継局157の中継動作機能をOFFからONへ切り替えた場合における当該地点でのRSCP測定値の上昇分(言い換えれば、中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差)の区分を示している。図26にも示されているように、その区分の内訳は以下の通りである。
【0016】
赤:中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が4dB以上(上昇)
黄:中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が1dB以上4dB未満(上昇)
白地に縞:中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が−2dB以上1dB未満(含下降)
灰:中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が−2dB未満(下降)
【0017】
中継局157の有効サービスエリアを判断するためには中継動作機能の効果が顕著に見えるエリアを抽出する必要があり、そのエリアは赤でプロットされた地点(4dB以上の上昇)が密集したエリアが該当する。その他の色でプロットされた地点および赤でプロットされた地点であってもそれらが密集していないエリアは、基地局と中継局とから送信される電波の相互作用による変動または測定誤差による地点またはエリアであると考えてよい。以上の実測とその推察とから、中継局157の有効サービスエリア、すなわち赤でプロットされた地点が密集するエリアは、中継局157が図26に示される地図の中心よりやや左側に偏心した円形状に広がっていることがわかる。
【0018】
次に、上述したような中継局157の中継動作機能をON(作動)/OFF(停止)した2回にわたる電波の計測による推察ではなく、中継局157が常時中継動作を行う状態で1回のみ測定した結果から基地局155と中継局157との各送信信号を識別し、それらのサービスエリアを判定する上述した従来の判定方法(上記ステップ1および2から構成される方法)の実測例について説明する。
【0019】
図27は、図25に示される実測対象のサービスエリアにおいて、上述した従来の判定方法を適用した場合の判定結果を示す。図27で図25と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。ここでは、中継局157の処理遅延τ=6.5μsec≒25chips(移動通信WCDMAシステムでは1μsec=3.84chip)としている。図27で、「/」と黒菱形とは上述した<場合1>により、それぞれ「中継局信号」、「基地局信号」と判定された地点を示している。図27で、「.」(ピリオド)および「−」(マイナス)は、上述した<場合2>により判定が保留された地点(判断不可と記載)を示しており、時間的遅延差の正負により、各々「.」または「−」と表示してある。図27より明らかに、Finger1とFinger2とが検出したパスの時間的遅延差の絶対値が中継処理遅延τ(25chips)より小さい場合が存在するため、上述した従来の判定方法では、かなりの地域で判定が完全にはできないという結果になっていることがわかる。
【0020】
【非特許文献1】“オプティマイゼーションとは”、[online]、株式会社弘栄、[平成19年12月25日検索]、インターネット、<URL:http://www.couei.co.jp/service/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、1回のみ測定した結果から基地局155と中継局157との各送信信号を識別し、それらのサービスエリアを判定する従来の判定方法では、同一局からの信号が中継局157の中継処理遅延τ以内の時間的遅延差を持つ異なるパスを経由してFinger1とFinger2とに検出されている場合、多くの測定点で判定が困難になるという問題があった。サービスエリア内での良好な通信品質の提供は移動無線通信システムにおいて必須であり、そのため品質が良好ではないエリアに対してカバレッジの最適化を行う必要がある。しかし、上述した従来の判定方法では、多くの測定点で測定器(移動局)により受信した信号が「基地局信号」なのか「中継局信号」なのかを判定することができないという問題があった。移動通信WCDMAシステムでセル最適化設計を行う場合、基地局のセル識別信号として各々PSC、PNを利用して、受信した信号が基地局のみならず中継局も含めてどの局からの送信信号なのかを判定する際に生ずる問題があった。即ち、中継局から送信されるセル識別信号は基地局からのセル識別信号と同一になるため、受信したセル識別信号からは基地局からの送信信号なのか中継局からの送信信号なのかを判定することができないという問題があった。
【0022】
図28(A)および(B)は、上記判定ができない場合とできた場合とにおけるサービスエリアの概念図を各々示す。図(A)および(B)で図25と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図28(A)および(B)で、符号160は移動局(携帯端末)である。図28(A)に示されるように、従来の判定方法では基地局155と中継局157とのカバレッジ区分が判然としない測定結果となり、移動局160に対する電波伝搬環境の改善が必要な場合であっても、どの局をどのように調整すれば良いかわからなくなる。一方、図28(B)に示されるように、基地局155のカバレッジ区分Bと中継局157のカバレッジ区分Rとが判定できた場合、移動局160に対する電波伝搬環境の問題エリアの改善が可能になる。
【0023】
移動通信CDMA2000システムでは、全ての基地局のセル識別信号がGPS(Global Positioning System)に同期し、移動局も基地局に同期を合わせる構成となっている。このため、移動局において何らかの手段により同期基準時間を保持すれば、基地局から移動局までの遅延時間を測定することが可能となる。従って、上述した従来の判定方法による遅延時間の大小判定により、受信した信号の送信源の判定はある程度可能になるものの、当該信号の送信源の判定が保留とされる地点が多く残ることは避けられない。GPSに対して非同期に動作するシステムである移動通信WCDMAシステムの場合、上述した従来の方法により受信した信号の送信源を判定することは極めて困難であるという問題があった。
【0024】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、基地局のセル識別信号として各々PSC、PNを利用する場合、1回のみ測定した結果から受信した信号の送信源が基地局か中継局かを判定することができ、基地局と中継局との各カバレッジ区分を明確に判定することができる送信源判定プログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この発明の送信源判定プログラムは、中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、コンピュータに、複数の時間帯に亘り複数のパス検出機能により取得された一連の情報に対し整列処理した一連の観測サンプルを求めさせ、該一連の観測サンプルに対し所定のパス検出機能が受信した信号の送信源の仮判定を行わせ、一連の該仮判定に基づき観測サンプルに対する該所定のパス検出機能が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を実行させるための送信源判定プログラムである。
【0026】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、呼の接続から切断までの接続状態における時間区間を示す接続呼は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された前記一連の情報から構成され、各情報は複数の前記パス検出機能毎に取得されたデータのブロックから構成され、各ブロックは所定のCDMA移動通信システムで定められた標準時刻を基準とする該データが取得された時間的相対位置と該データ中の所定の信号の所定の値とを含み、各情報に対し各ブロックを前記所定の値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置とに基づき、該観測サンプルで前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定に基づき前記接続呼において前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源を判定する二次判定ステップとを備えることができる。
【0027】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロックとすることができる。
【0028】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記接続呼の一連の情報と呼の切断から接続までの非接続状態における時間区間を示す非接続呼の一連の情報とは交互に呼情報記録部に記録され、前記所定の信号はセル識別信号であり、前記所定の値は信号対干渉雑音エネルギー比であり、前記観測サンプル取得ステップは、前記呼情報記録部に記録された接続呼の各情報に対し、各ブロックから時間的相対値、セル識別信号及び信号対干渉雑音エネルギー比を取り出した整理用ブロックからなる整理用情報を作成する整理ステップと、前記整理ステップで作成された各整理用情報に対し、整理用ブロックを信号対干渉雑音エネルギー比の大きい順に整列した観測サンプルを得る整列ステップと、前記整列ステップで得られた各観測サンプルに対し、信号対干渉雑音エネルギー比が最大の整理用ブロックである最良ブロックの信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値以下の場合、該観測サンプルを接続呼から削除し、該最良ブロックの該信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値を越える場合、観測サンプルの該最良ブロックにおける時間的相対値と該観測サンプルの直前の観測サンプルの最良ブロックにおける時間的相対値との間の変化量を求める変化量計算ステップとを備えることができる。
【0029】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記一次判定ステップは、接続呼の観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良ブロックに対応するパス検出機能である最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、接続呼のすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記中継局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0030】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記二次判定ステップは、前記判定保留ステップで送信源を保留と判定された観測サンプルである判定保留観測サンプルに対し、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがある場合、該接続呼中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルより前の判定保留観測サンプルに対しては該最初の観測サンプルの一次判定結果とは逆の判定を適用し、該最初の観測サンプルより後の判定保留観測サンプルに対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する判定適用ステップと、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と所定の距離内にある場合、接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源を基地局と判定する基地局二次判定ステップと、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と前記所定の距離内にない場合、該接続呼の直前の非接続呼における各情報に対し前記観測サンプル取得ステップと同じ処理を行い、該非接続呼の各観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間以上である場合又は前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の他の閾値を超える場合は判定不可とし、前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間未満である場合及び前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の他の閾値以下の場合、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値以上である場合は前記送信源を中継局と判定し、該変化量が該所定の閾値の負の値以下である場合は該送信源を基地局と判定し、該変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合は判定不可とする非接続呼判定ステップと、前記非接続呼判定ステップで判定不可とされなかった場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として前記非接続呼判定ステップによる判定を適用する非接続呼判定適用ステップと、前記非接続呼判定ステップで判定不可とされた場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として、該非接続呼より前の接続呼であって且つ最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源の判定が得られた最も近い観測サンプルに対する判定を適用する近接観測サンプル判定適用ステップと、接続呼のすべての判定保留観測サンプルに対し判定又は判定の適用が終了していない場合、前記判定適用ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0031】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロック及び次に大きいブロックとすることができる。
【0032】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記一連の情報は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の測定情報から構成され、該一連の測定情報は測定情報記録部に記録され、各測定情報は、マルチパス中から最大電力を有する第1パスと次に大きい電力を有する第2パスとを分離検出する第1パス検出機能及び第2パス検出機能により各測定時刻において取得された各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを含み、前記測定情報記録部に記録された各測定情報に対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける前記相対的遅延量と所定の閾値とに基づき該観測サンプルで第1パス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、観測サンプルにおける第1パスの電力値と、該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値及び第2パスの電力値と、所定の電力差閾値とに基づき該観測サンプルにおいて第1パス検出機能が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求め、該入れ替わり判定と前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定とに基づき該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の再判定を行い、該観測サンプルにおける前記相対的遅延量と前記所定の閾値との比較と該再判定とに基づき、又は該比較と該観測サンプルにおける各パスの電力値の比較と該再判定とに基づき、該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルに対して行う二次判定ステップとを備えることができる。
【0033】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記一次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記基地局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0034】
ここで、この発明の送信源判定プログラムにおいて、前記二次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値との差が第1電力差閾値より大きく且つ第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第2パスの電力値との差の絶対値が第2電力差閾値より小さい場合、該観測サンプルの時点において第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源に入れ替わりが発生したという判定を行う入れ替わり判定ステップと、前記判定保留ステップで判定を保留とされた観測サンプルに対し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていた場合、該観測サンプルに対しては該一次判定結果と同一の判定を適用し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定された場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以降で最初に一次判定結果を得られた観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再判定ステップと、前記再判定ステップにおいて、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていなかった場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以前で一次判定結果を得られた最も近い観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再々判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上でない場合、前記再判定ステップ又は前記再々判定ステップで観測サンプルに対し適用された判定を最終判定とする判定保留観測サンプル最終判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上である場合、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さい場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果の逆の判定を最終判定として観測サンプルに対し適用し、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さくない場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果を最終判定として観測サンプルに対し適用する最終判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記最終判定が終了していない場合、前記入れ替わり判定ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0035】
この発明の送信源判定プログラムは、中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、コンピュータに、接続呼の区間では請求項1乃至7のいずれかに記載の送信源判定プログラムを実行させ、非接続呼の区間では請求項8乃至10のいずれかに記載の送信源判定プログラムを実行させるための送信源判定プログラムである。
【0036】
この発明の記録媒体は、請求項1乃至11のいずれかに記載の送信源判定プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0037】
この発明の送信源判定方法は、中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、複数の時間帯に亘り複数のパス検出機能により取得された一連の情報に対し整列処理した一連の観測サンプルを求め、該一連の観測サンプルに対し所定のパス検出機能が受信した信号の送信源の仮判定を行い、一連の該仮判定に基づき観測サンプルに対する該所定のパス検出機能が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を行うことを特徴とする。
【0038】
ここで、この発明の送信源判定方法において、呼の接続から切断までの接続状態における時間区間を示す接続呼は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された前記一連の情報から構成され、各情報は複数の前記パス検出機能毎に取得されたデータのブロックから構成され、各ブロックは所定のCDMA移動通信システムで定められた標準時刻を基準とする該データが取得された時間的相対位置と該データ中の所定の信号の所定の値とを含み、各情報に対し各ブロックを前記所定の値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置とに基づき、該観測サンプルで前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定に基づき前記接続呼において前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源を判定する二次判定ステップとを備えることができる。
【0039】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロックとすることができる。
【0040】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記所定の信号はセル識別信号であり、前記所定の値は信号対干渉雑音エネルギー比であり、前記観測サンプル取得ステップは、各情報に対し、各ブロックから時間的相対値、セル識別信号及び信号対干渉雑音エネルギー比を取り出した整理用ブロックからなる整理用情報を作成する整理ステップと、前記整理ステップで作成された各整理用情報に対し、整理用ブロックを信号対干渉雑音エネルギー比の大きい順に整列した観測サンプルを得る整列ステップと、前記整列ステップで得られた各観測サンプルに対し、信号対干渉雑音エネルギー比が最大の整理用ブロックである最良ブロックの信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値以下の場合、該観測サンプルを接続呼から削除し、該最良ブロックの該信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値を越える場合、観測サンプルの該最良ブロックにおける時間的相対値と該観測サンプルの直前の観測サンプルの最良ブロックにおける時間的相対値との間の変化量を求める変化量計算ステップとを備えることができる。
【0041】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記一次判定ステップは、接続呼の観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良ブロックに対応するパス検出機能である最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、接続呼のすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記中継局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0042】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記二次判定ステップは、前記判定保留ステップで送信源を保留と判定された観測サンプルである判定保留観測サンプルに対し、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがある場合、該接続呼中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルより前の判定保留観測サンプルに対しては該最初の観測サンプルの一次判定結果とは逆の判定を適用し、該最初の観測サンプルより後の判定保留観測サンプルに対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する判定適用ステップと、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と所定の距離内にある場合、接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源を基地局と判定する基地局二次判定ステップと、接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と前記所定の距離内にない場合、該接続呼の直前の非接続呼における各情報に対し前記観測サンプル取得ステップと同じ処理を行い、該非接続呼の各観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間以上である場合又は前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の他の閾値を超える場合は判定不可とし、前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間未満である場合及び前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の他の閾値以下の場合、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値以上である場合は前記送信源を中継局と判定し、該変化量が該所定の閾値の負の値以下である場合は該送信源を基地局と判定し、該変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合は判定不可とする非接続呼判定ステップと、前記非接続呼判定ステップで判定不可とされなかった場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として前記非接続呼判定ステップによる判定を適用する非接続呼判定適用ステップと、前記非接続呼判定ステップで判定不可とされた場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として、該非接続呼より前の接続呼であって且つ最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源の判定が得られた最も近い観測サンプルに対する判定を適用する近接観測サンプル判定適用ステップと、接続呼のすべての判定保留観測サンプルに対し判定又は判定の適用が終了していない場合、前記判定適用ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0043】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロック及び次に大きいブロックとすることができる。
【0044】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記一連の情報は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の測定情報から構成され、該一連の測定情報は測定情報記録部に記録され、各測定情報は、マルチパス中から最大電力を有する第1パスと次に大きい電力を有する第2パスとを分離検出する第1パス検出機能及び第2パス検出機能により各測定時刻において取得された各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを含み、各測定情報に対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける前記相対的遅延量と所定の閾値とに基づき該観測サンプルで第1パス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、観測サンプルにおける第1パスの電力値と、該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値及び第2パスの電力値と、所定の電力差閾値とに基づき該観測サンプルにおいて第1パス検出機能が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求め、該入れ替わり判定と前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定とに基づき該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の再判定を行い、該観測サンプルにおける前記相対的遅延量と前記所定の遅延量閾値との比較と該再判定とに基づき、又は該比較と該観測サンプルにおける各パスの電力値の比較と該再判定とに基づき、該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルに対して行う二次判定ステップとを備えることができる。
【0045】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記一次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記基地局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0046】
ここで、この発明の送信源判定方法において、前記二次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値との差が第1電力差閾値より大きく且つ第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第2パスの電力値との差の絶対値が第2電力差閾値より小さい場合、該観測サンプルの時点において第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源に入れ替わりが発生したという判定を行う入れ替わり判定ステップと、前記判定保留ステップで判定を保留とされた観測サンプルに対し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていた場合、該観測サンプルに対しては該一次判定結果と同一の判定を適用し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定された場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以降で最初に一次判定結果を得られた観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再判定ステップと、前記再判定ステップにおいて、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていなかった場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以前で一次判定結果を得られた最も近い観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再々判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上でない場合、前記再判定ステップ又は前記再々判定ステップで観測サンプルに対し適用された判定を最終判定とする判定保留観測サンプル最終判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上である場合、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さい場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果の逆の判定を最終判定として観測サンプルに対し適用し、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さくない場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果を最終判定として観測サンプルに対し適用する最終判定ステップと、前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記最終判定が終了していない場合、前記入れ替わり判定ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えることができる。
【0047】
この発明の送信源判定方法は、中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、接続呼の区間では請求項13乃至19のいずれかに記載の送信源判定方法を用い、非接続呼の区間では請求項20乃至22のいずれかに記載の送信源判定方法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明の第1の送信源判定プログラム等では、まず、各Finger infoデータに対し各ブロックをPSCのEc/Ioの値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める。次に、取得された観測サンプルにおけるセル識別信号のEc/Ioの値が最大となるブロック(最良ブロック)の時間的相対位置と当該観測サンプルの時間的に直前の観測サンプルにおける最良ブロックの時間的相対位置との間の変化量δ(fing_pos)に基づき、当該観測サンプルで上記最良ブロックに対応するBest fingerが受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う(一次判定)。一次判定では、対象するPSCのFinger infoデータ毎にその直接の発信源(中継局またはドナー基地局)を識別する判定を行う。最後に、一次判定で行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定に基づき、接続呼においてBest fingerが受信した信号の送信源を判定する(二次判定)。Best fingerのみを対象とした場合、現在と直前のBest fingerの時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を計算し、中継局のカバーエリアに対する測定系の進入および脱出の際に発生する対象PSCの時間的相対値の変化を検出する。即ち、二次判定では、最初に一次判定結果が出た時の観測サンプルの前後においては基地局信号と中継局信号との入れ替わりが発生していると判断し得る確度が高いという理由により判定を行う。一方、最初に一次判定結果が出た時の観測サンプルより後の判定保留観測サンプルに対しては、前方にある一次判定結果を優先することにより、判定を確定していく。以上より、本発明の第1の送信源判定プログラムによれば、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、基地局のセル識別信号として各々PSC、PNを利用する場合、1回のみ測定した一連のFinger infoデータ等から構成される接続呼および非接続呼等の測定結果から受信した信号の送信源が基地局か中継局かを判定することができ、基地局と中継局との各カバレッジ区分を明確に判定することができる送信源判定プログラム等を提供することができる。このため、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、中継局が置局されているエリアの実測データによるカバレッジ判別作業のコスト削減、カバレッジ判別の精度向上および問題発生時の解決策の確実性向上等の諸点において大きな利点があるという効果がある。
【0049】
本発明の第2の送信源判定プログラムでは、一次判定においてBest fingerだけではなく、観測サンプル中でセル識別信号のEc/Ioの値が2番目に高いブロックに対応するSecondary best fingerも用いることができる。現在のBest fingerとSecondary best fingerとの両方の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を個別に計算し、上記両方で、逆極性且つ同じ絶対量の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を呈することを検出することにより、さらに信頼度の高い一次判定結果を得ることができる送信源判定プログラム等を提供することができるという効果がある。
【0050】
本発明の第3の送信源判定プログラムでは、同一PSC(またはPN)に対し二つ以上のFingerを用いて相対遅延情報を提供できる測定系から取得したデータを使用することができる。この場合、二つのFinger1およびFinger2が捕捉している各パスの相対的遅延量を用いて一次判定を行う。二次判定では、まず観測サンプルにおいてFinger1が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求める。この入れ替わり判定と一次判定で行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定とに基づき、当該観測サンプルに対するFinger1が受信した信号の送信源の再判定および最終判定を行う。以上より、本発明の第3の送信源判定プログラムによれば、同一PSC(またはPN)に対し二つ以上のFingerを用いて相対遅延情報を提供できる測定系から取得したデータを使用することにより、1回のみ測定した一連のデータから構成される測定結果に基づき受信した信号の送信源が基地局か中継局かを判定することができ、基地局と中継局との各カバレッジ区分を明確に判定することができる送信源判定プログラム等を提供することができるという効果がある。
【0051】
本発明の第4の送信源判定プログラムによれば、接続呼の区間では第1または第2の送信源判定プログラムを実行させ、非接続呼の区間では第3の送信源判定プログラムを実行させることにより、各送信源判定プログラムの長所を引き出すことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、まず、本発明の送信源判定プログラム等の妥当性を裏付けるための理論的背景について説明し、次に、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
理論的背景.
最初に、電波が複数のパスに分散して到達する移動通信のマルチパス伝搬環境において、中継局が介在しない場合における基地局から移動局までの電波伝搬経路について考察する。図1は、中継局が介在しない場合の基地局から移動局までの電波伝搬経路をモデル化して示す。図1において、符号10は基地局、12は移動局、20は反射物である。図1に示されるように、基地局10から移動局12までの主な経路は、直接波が到達する経路P1と、反射物20による反射や障害物(不図示)による回折により到達する遅延波の経路P2となる。一般に、遅延波の経路P2は複数存在しうるが、ここではこれら複数の経路のうち、最大の受信電力を得る経路を経路P2として取り扱うこととする。本発明の送信源判定プログラム等は、移動局12において最大レベルおよびその次に大きいレベルの各パスで受信された識別信号の送信源を判定することが目的であるため、取扱いの対象を上記のように限定したとしても、議論の一般性を失うことはない。
【0054】
図1に示されるように、経路P1と経路P2とには経路長に差があるため、移動局12に到達する識別信号には以下の式1で表される相対遅延時間τが発生する。
【0055】
τ=(P2−P1)/光速 (1)
【0056】
さて、市街地または屋内での電波伝搬環境では、直接波の到達した時刻を基準とする相対遅延時間τに対する遅延波の平均電力分布p(τ)(遅延プロファイルと呼ばれる。)は、一般に以下の式2で示される指数関数型のモデルでよく近似できることが知られている(細矢良雄、北見工業大学企画・監修「電波伝搬ハンドブック」、リアライズ理工センター(リアライズAT株式会社)発行、平成11年1月28日第1刷、第131頁参照)。
【0057】
【数1】

【0058】
但し、Pは受信電力、στは遅延スプレッド(相対遅延時間τの標準偏差)である。この場合、受信電力Pで正規化した正規化遅延プロファイルP(τ)/Pは、以下の式3となる。
【0059】
【数2】

【0060】
この正規化遅延プロファイルP(τ)/Pをτで積分すると、以下の式4で示される正規化累積電力P(τ)(相対遅延時間がτ以下である受信電力を受信電力Pで正規化した値)を得る。
【0061】
【数3】

【0062】
因みに、セル半径2(km)以下の移動通信における遅延スプレッドστの市街地における典型的な値は、0.1(μsec)〜1(μsec)のオーダーである。図2は、一例として、στ=0.5(μsec)とした場合の正規化遅延プロファイルP(τ)/Pおよび正規化累積電力P(τ)の例を示すグラフである。図2で横軸は相対遅延時間τ(μsec)、縦軸は正規化値であり、菱形は正規化遅延プロファイルP(τ)/P、正方形は正規化累積電力P(τ)を示す。図2に示されるように、例えば、相対遅延時間τが2(μsec)以下となる正規化累積電力P(τ)の値は0.98(総受信電力の98%)となる。 ここで、電力を信号の信頼度(確率)として捉えると、上記正規化遅延プロファイルP(τ)/Pおよび正規化累積電力P(τ)は、相対遅延時間τに関する確率密度関数(PDF:Probability Density Function)と累積分布関数(CDF: Cumulative Distribution Function)とにそれぞれ相当する。従って、図2に示されるような遅延スプレッドστ=0.5(μsec)とした場合の例では、相対遅延時間τが2μsec以下の識別信号の全てを異なる2つの経路を経由して到達した同じ送信源からの信号と判断したときの信頼度が98%となることがわかる。
【0063】
次に、中継局が存在する場合の基地局(中継局と中継関係にある基地局を一般にドナー基地局と呼ぶ。)から移動局までの電波伝搬経路について考察する。図3および4は、中継局が存在する場合の基地局から移動局までの電波伝搬経路をモデル化して示す。図3および4で図2と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図3および4において、符号14は中継局であり、図3の符号22は反射物、図4の符号24は反射物である。図1に示した経路構成P1およびP2に加え、中継局14を経由する経路として図3および4に示す経路を考える必要がある。図3は、基地局10から中継局14を経由して移動局12に到るまでの直接波が到達する経路P3と、中継局14から移動局12までの間に発生する反射物22による遅延波(反射波または回折波)が到達する経路P4とを示している。図4は、上記経路P3に加え、基地局10と中継局14との間に発生する反射物24による遅延波(反射波もしくは回折波)が到達する経路P5を示している。
【0064】
さて、移動局12が受信した識別信号の直前の発信源が基地局10または中継局14のいずれであるかを判定する方法は、中継局14を経由しない(中継局非経由)識別信号と経由する(中継局経由)識別信号との電波伝搬遅延の差から求めることとする。図5は、図3および4でモデル化した経路の集合(P1、P2、P3、P4およびP5)から、中継局経由/中継局非経由の経路の組合せとその遅延差とをケースに応じてまとめた表30を示す。図5で、符号31はケースの区分欄、32は当該ケースにおける経路の組合せ欄、33は当該ケースにおける電波伝搬遅延の差欄、34は当該ケースにおける備考欄である。図5に示されるように、ケース1(経路P3とP1との組合せ)における電波伝搬遅延の差は経路P3と経路P1との間の電波伝搬遅延の差+中継局14における処理遅延となる。備考欄34に示されるように、ケース1では反射物、障害物はないことを想定している。次に、ケース2(経路P3とP2との組合せ)における電波伝搬遅延の差は、経路P3と経路P1との間の電波伝搬遅延の差、即ちケース1における電波伝搬遅延の差から経路P2と経路P1との間の電波伝搬遅延の差を引いたものとなる。続いて、ケース3(経路P4とP1との組合せ)における電波伝搬遅延の差は、経路P3と経路P1との間の電波伝搬遅延の差、即ちケース1における電波伝搬遅延の差に経路P4と経路P3との間の電波伝搬遅延の差を加えたものとなる。ケース4(経路P4とP2との組合せ)における電波伝搬遅延の差は、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差、即ちケース2における電波伝搬遅延の差に経路P4と経路P3との間の電波伝搬遅延の差を加えたものとなる。ケース5(経路P5とP1との組合せ)における電波伝搬遅延の差は、経路P3と経路P1との間の電波伝搬遅延の差、即ちケース1における電波伝搬遅延の差に経路P5と経路P3との間の電波伝搬遅延の差を加えたものとなる。最後に、ケース6(経路P5とP2との組合せ)における電波伝搬遅延の差は、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差、即ちケース2における電波伝搬遅延の差に経路P5と経路P3との間の電波伝搬遅延の差を加えたものとなる。ケース1の電波伝搬遅延の差、経路P2と経路P1との間の電波伝搬遅延の差、経路P4と経路P3との間の電波伝搬遅延の差、経路P5と経路P3との間の電波伝搬遅延の差は各々正であるため、表30から電波伝搬遅延の差が最小値になるのは、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差(ケース2:最小遅延差)であることがわかる。一方、電波伝搬遅延の差が最大値になるのはケース3および5となる(最大遅延差)。中継局14のカバレッジエリアは基地局10のそれに比べて小さく、中継局14の基地局10向け指向性アンテナ(ドナーアンテナという。)のビーム幅は小さいため、経路P4と経路P3との間の電波伝搬遅延の差と経路P5と経路P3との間の電波伝搬遅延の差とは、いずれも経路P2と経路P1との間の電波伝搬遅延の差に比べ小さいと想定できる。以上より、識別信号を中継局14経由の「中継局信号」であるかまたは中継局非経由の「基地局信号」であるかを判定するために、下記の判定基準を採用する。
【0065】
<基準1>ケース2の遅延差が所定の閾値τthより大きい場合、遅延の大きい方を「中継局信号」と判定する。
<基準2>ケース2の遅延差が所定の閾値τth 以下の場合、両方を同一局(同一の基地局または同一の中継局)からの識別信号と判定する。
【0066】
但し、所定の閾値τthの設定条件は以下のように定める。
【0067】
<設定条件1>正規化累積電力P(τth)=所定の信頼度の下限値
<設定条件2>所定の閾値τth<中継局の中継処理遅延τ
【0068】
以下では、上述の例と同様に遅延スプレッドστ=0.5(μsec)と仮定し、上述した相対遅延時間τが2(μsec)以下の識別信号の全てを異なる2つの経路を経由して到達した同じ送信源からの信号と判断したときの信頼度である0.98を所定の信頼度の下限値として正規化累積電力P(τth)=0.98と仮定し、且つ中継局の中継処理遅延τ=5(μsec)と仮定した場合について考察する。ここで、正規化累積電力P(τth)=0.98という仮定は、即ち所定の閾値τth=2(μsec)ということであり、反射物からの反射による遅延差の発生については2μsec以下の遅延波成分を考慮するということである。図6は、中継局とドナー基地局との離隔距離が2kmの場合における電波伝搬経路を横軸(X軸)と縦軸(Y軸)とからなる二次元座標上でモデル化して示す。図6で図3と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図6で、横軸(X軸)はドナー基地局10と中継局14との間の水平方向の距離、縦軸(Y軸)はドナー基地局10と中継局14との間の垂直方向の距離であり、P0はドナー基地局10と中継局14との間の経路である。図6に示されるように、ドナー基地局10の座標を原点(0,0)にとると、中継局14の座標は(2km,0)となる。移動局12の座標は(x,y)とする。図6において、改めて各変数を以下のように定義する。
【0069】
τ:ドナー基地局10と中継局14との間の電波伝搬遅延
τ:ドナー基地局10と移動局12との間の直接波の電波伝搬遅延
τ:経路P2における電波伝搬遅延
τ:中継局14と移動局12との間の電波伝搬遅延
τ:中継局14の中継処理遅延=5(μsec)
【0070】
このとき、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τは以下の式5で与えられる。
【0071】
τ= τ+ τ+ τ− τ (5)
【0072】
但し、
【0073】
【数4】

(c=3×10(km/sec)=0.3(km/μsec):光速)
【0074】
以上をまとめると、以下の式10となる。
【0075】
【数5】

【0076】
式10の最右辺から明らかなように、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τは、中継局14と移動局12との間の電波伝搬遅延τ(式9)と、ドナー基地局10と移動局12との間の直接波の電波伝搬遅延τ(式8)との差に、固定値(τ+3(μsec))を加えた値となっている。従って、τが一定となる移動局12(座標(x,y))の軌跡はドナー基地局10と中継局14とのそれぞれからの距離の差が一定な双曲線を描くことがわかる。
【0077】
図7および8は、式10に基づき図6の経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τを計算した結果を各々3次元グラフ40および二次元グラフ50で示す。両グラフ40および50で、図6と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、説明は省略する。両グラフ40および50において、X軸はドナー基地局10と移動局12との間の水平距離であり、Y軸はドナー基地局10と移動局12との間の垂直距離であり、グラフ40でZ軸は遅延(μsec)である。出願図面では白黒表示されているが、原図の両グラフ40および50では遅延は凡例に示されるように色分けされている。両グラフ40および50に示されるように、全てのエリアにおいて遅延差は3μsec以上となる。この理由は、式10の最右辺中の第1項と第2項の和の部分(τ+τ)と第3項の成分(τ)とがドナー基地局10、中継局14、移動局12を頂点とする三角形の2辺の和と残りの1辺との関係(三角形の2辺の和は1辺より大きい)と等価であるため正となり、さらに、これらの頂点が一直線上に並ぶ場合も含めると、これらの差{(τ+τ)−τ}は非負値となるため、τは3(μsec)以上となるからである。以上のように、上記のパラメータ設定例では、経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τ(3(μsec)以上)は所定の閾値τth(=2(μsec))より大きい値になるため、上述した「<基準1>ケース2の遅延差が所定の閾値τthより大きい場合、遅延の大きい方を「中継局信号」と判定する。」が成立することになる。従って、受信信号に「基地局信号」と「中継局信号」とが混在する場合 (例えば、上述したFinger1は「基地局信号」(中継局非経由)、上述したFinger2は「中継局信号」(中継局経由)を捕捉している場合)、送信源の判定が信頼度98%(正規化累積電力P(τth)=0.98)で可能になることがわかる。
【0078】
上記二つのFingerがいずれも「基地局信号」のみ、または「中継局信号」のみを捕捉している場合、送信源がドナー基地局10であるか中継局14であるかの絶対的判定はこのままでは容易ではない。しかし、以下に説明される本発明の構成によれば、このような場合であっても高い確度で送信源の判定を行なうことができる。まず、本発明の各実施例に共通する概要について説明する。図9は、本発明の各実施例における送信源判定プログラムが実行される環境を示す。図9において、符号60は本発明の各実施例における送信源判定プログラムを実行するコンピュータ、62はコンピュータ60の出力結果を表示するディスプレイ、64はコンピュータ60のディスク等の記録装置、71、72、73および74は、各々本発明の実施例1、2、3、4における送信源判定プログラム、80は送信源判定プログラム71、72および74で使用される接続呼の一連の情報等(後述)が記録された呼情報記録データベースDB(呼情報記録部)、100は送信源判定プログラム73および74で使用される一連の測定情報等(後述)が記録された測定情報記録データベースDB(測定情報記録部)である。送信源判定プログラム71ないし74に共通する機能は以下の通りである。即ち、中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、コンピュータ60に、複数の時間帯に亘り複数のパス検出機能(背景技術で述べたように、「Finger1等」と言う。)により取得された一連の情報に対し整列処理した一連の観測サンプルを求めさせ、該一連の観測サンプルに対しFinger1等が受信した信号の送信源の仮判定を行わせ、一連の該仮判定に基づき観測サンプルに対するFinger1等が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を実行させるという機能である。所定のCDMA移動通信としては、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムが好適である。以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0079】
実施例1では、測定系から取得したデータを用いて中継局14の信号と基地局10の信号とを識別する送信源判定プログラム71等について説明する。図10は、呼情報記録データベースDB80(以下、「呼情報記録DB80」と略す。)に記録された携帯電話端末(図1の移動局12。以下、携帯端末12とも言う。)における呼の接続状態および非接続状態のタイムチャートを示す。図10に示されるように、携帯端末12における接続呼C1、C2、C3、...、Cnは、呼の接続から切断までの接続状態における時間区間(濃い網掛けの時間区間)として定義される。一方、非接続呼ID1、ID2、ID3、...、IDnは、Idle状態も含め、呼が切断されてから再接続するまでの非接続状態における時間区間(薄い網掛けの時間区間)で定義される。接続呼Ci(例えばC2)は、所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の情報(C2−1、C2−2、C2−3、...、C2−k)から構成されている。図10では、所定の時間単位はC2−1等の時間区間であり、複数の時間帯はk個である。非接続呼、例えばIDnも、所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の情報(IDn−1、IDn−2、IDn−3、...、IDn−m)から構成されている。図10では、非接続個における所定の時間単位はIDn−1等の時間区間であり、複数の時間帯はm個である。図10に示されるように、呼情報記録DB80には、接続呼Ciの一連の情報Ci−jと非接続呼IDiの一連の情報IDi−kとが交互に記録されている。以下では、図10に示される情報Ci−jをFinger Infoデータと言う。接続呼C2はk組のFinger Infoデータを有している。
【0080】
図11は、携帯端末12から取得したFinger infoデータCi−jを例示する。図11に示されるように、符号81で示される第1行にはFinger infoデータCi−jの取得日時(2006 Sep 14 11:42:55.545)(2006年9月14日11時42分55.545秒の意味)が記録されており、符号82で示される第3行のnum_fing:6はFingerの総数が6個であることを示している。つまり、Finger infoデータCi−jは複数(本例では6個)のFinger毎に取得されたデータのブロック83、84、85等から構成されている。図11では図面の都合上、3個のブロック83、84および85と4個目のブロックの最初の部分のみ示している。各ブロック83等の最初の行はfing[0]、fing[1]、 fing[2]、 fing[3]等で始まり、各々Finger0、 Finger1、Finger2、Finger3の状態を示す情報が記録されている。以下、各Finger毎に取得されたデータのブロック83等の中で、本発明の構成を理解する上で必要な項目のみ説明する。まず、符号83aで示されるfing_posは、所定のCDMA移動通信システムのネットワークで定められた標準時刻を基準とする、データが取得された各fingerの時間的相対位置(position)を1/8chip(1chip=1/3840000seconds)単位で示している。例えば、Finger0の時間的相対位置は71453と示されている。符号84a、85a等で示されるfing_posも同様であり、Finger1の時間的相対位置は214581と示され、Finger2の時間的相対位置は71483と示されている。次に、符号83bで示されるCPICH Ec/Io TOTAL(dB) は、Finger0が捕捉しているセル識別信号(データ中の所定の信号)であるPSC(Primary scrambling code)のEc/Io(信号対干渉雑音エネルギー比)の値(データ中の所定の信号の所定の値。対数値で単位はdB)を示している。例えば、Finger0では−14.493dBと示されている。符号84b、85b等で示されるCPICH Ec/Io TOTAL(dB)も同様であり、Finger1では−13.549dBであり、Finger2では−9.818dBである。符号83cで示されるprim_sc_code_idxは、上記PSCのセル識別番号を示している。例えば、Finger0では200である。符号84c、85c等で示されるprim_sc_code_idxも同様であり、Finger1では208であり、Finger2では200である。
【0081】
図12は、携帯端末12等の測定器から取得したデータを使用して中継局信号と基地局信号とを判別する本発明の実施例1における送信源判定プログラム71の処理概要および送信源判定方法の流れをフローチャートで示す。図12に示されるように、まず、各Finger infoデータCi−jに対し各ブロックをPSCのEc/Ioの値(所定の値)に基づき整列処理した各観測サンプルSi−jを求める(観測サンプル取得ステップ。ステップS100)。ここで、観測サンプルSi−jはFinger infoデータCi−jと対応している。次に、観測サンプル取得ステップ(ステップS100)で取得された観測サンプルSi−jにおける所定のブロックの時間的相対位置と当該観測サンプルの時間的に直前の観測サンプルSi−(j−1)における所定のブロックの時間的相対位置とに基づき、当該観測サンプルSi−jで上記所定のブロックに対応するFingerが受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルSi−jに対して行う(一次判定又は仮判定ステップ。ステップS200)。所定のブロックは、PSCのEc/Ioの値(データ中の所定の信号の所定の値)が最大となるブロックとすることが好適である。一次判定ステップ(ステップS200)では、対象するPSCのFinger
infoデータCi−j毎にその直接の発信源(中継局またはドナー基地局)を識別する判定を行う。最後に、一次判定ステップ(ステップS200)で行われた一連の観測サンプルSi−jに対する送信源の判定に基づき、接続呼CiにおいてPSCのEc/Ioの値が最大となるブロックに対応するFingerが受信した信号の送信源を判定する(二次判定ステップ。ステップS300)。即ち、接続呼Ci単位でFingerが受信した信号の識別を行う。以下、各ステップS100、S200およびS300について詳細に説明する。
【0082】
観測サンプル取得ステップ(ステップS100).
図13は、観測サンプル取得ステップ(ステップS100)の処理を詳細にフローチャートで示す。図13に示されるように、まず、呼情報記録DB80に記録された接続呼Ciの各Finger infoデータCi−jに対し、各ブロックから時間的相対位置、セル識別信号およびEc/Ioを取り出した整理用ブロックからなる整理用情報Wi−jを作成する(整理ステップ。ステップS110)。即ち、携帯端末12において取得したFinger infoデータCi−jから上記の値をデータの時間に沿って抜き出す。
【0083】
次に、整理ステップ(ステップS110)で作成された各整理用情報Wi−jに対し、整理用ブロックをEc/Ioの大きい順に整列した観測サンプルSi−jを得る(整列ステップ。ステップS120)。言い換えれば、各Finger infoデータCi−jにおいて、当該PSC(中継局が使用しているもの)の時間的相対位置をEc/Ioの大小の順に整列する。即ち、Ec/Ioの大きさの順に複数のfing[0]等のブロックを整列する。ここで、Ec/Ioが最も高いブロックに対応するFingerをBest fingerとする。観測サンプルSi−jとは、Finger infoデータCi−jが取得された一つの短い時間帯で上述のように整理された一組の情報のことである。
【0084】
続いて、整列ステップ(ステップS120)で得られた各観測サンプルSi−jに対し、Ec/Ioが最大の整理用ブロック(以下、「最良ブロック」と言う。)のEc/Ioが所定の下限値以下かどうか判断し(ステップS130)、所定の下限値以下の場合、当該観測サンプルSi−jを接続呼Ciから削除する(ステップS140)。これは、時間的相対位置の信頼度を高めるため、Best fingerのEc/Ioが所定の下限値(例えば、−30dB)以下の場合は、その時間帯のデータである観測サンプルSi−jを削除するということである。一方、最良ブロックのEc/Ioが所定の下限値を越える場合、観測サンプルSi−jの当該最良ブロックにおける時間的相対値(fing_pos)tと観測サンプルSi−jの直前の観測サンプルSi−(j−1)の最良ブロックにおける時間的相対値(fing_pos)t−1との間の変化量δ(fing_pos)を求める(変化量計算ステップ。ステップS150)。つまり、当該PSCのFinger infoデータCi−jについて、現在の観測サンプルSi−jのBest fingerに対応するブロック(即ち、最良ブロック)における時間的相対値とその直前の観測サンプルSi−(j−1)のBest fingerに対応するブロック(即ち、最良ブロック)に置ける時間的相対値との間の変化量を以下の式11のように計算する。
【0085】
δ(fing_pos) = (fing_pos)t − (fing_pos)t−1 (11)
【0086】
すべての観測サンプルSi−jについてステップS130の判断が終了していない場合はステップS130へ戻って処理を繰返し、終了している場合は観測サンプル取得ステップ(ステップS100)の処理を終了して一次判定ステップ(ステップS200)へ進む。
【0087】
一次判定ステップ(ステップS200).
図14は、一次判定ステップ(ステップS200)の処理を詳細にフローチャートで示す。一次判定ステップ(ステップS200)では、接続呼Ciの観測サンプルSi−jに対し、観測サンプルSi−jの最良ブロックに対応するFingerであるBest finger(最良パス検出機能)が受信したセル識別信号の送信源について、判定を行う。図14に示されるように、まず、finger infoデータCi−jの接続状態/非接続状態を判断する(ステップS210)。ステップS210で接続状態である(接続呼である)と判断された場合は、以下の各ステップを開始する。一方、ステップS210で非接続状態である(非接続呼である)と判断された場合は、判定は保留し、一次判定ステップ(ステップS200)は終了する。
【0088】
変化量計算ステップ(ステップS150)で求められた変化量δ(fing_pos)が所定の閾値τth以上である場合(所定の閾値τthは上述した<基準1>および<基準2>で用いられた所定の閾値τthと同じである。)、Best fingerが捕捉しているセル識別信号の送信源を中継局14と判定する一次判定結果を得る(中継局判定ステップ。ステップS220およびS230)。即ち、当該セル識別信号は中継局14を経由した信号と判定する。この後、ステップS270へ進む。一方、変化量計算ステップ(ステップS150)で求められた変化量δ(fing_pos)が所定の閾値の負の値−τth以下である場合、送信源を基地局10と判定する一次判定結果を得る(基地局判定ステップ。ステップS240およびS250)。即ち、当該セル識別信号は中継局14を経由しない信号と判定する。この後、ステップS270へ進む。変化量計算ステップ(ステップS150)で求められた変化量δ(fing_pos)が所定の閾値τth未満且つ所定の閾値の負の値−τthより大きい場合、送信源を保留と判定する(判定保留ステップ。ステップS260)。接続呼Ciのすべての観測サンプルSi−jに対し上記一次判定が終了していない場合、中継局判定ステップ(ステップS220)へ戻って処理を繰り返す(一次判定繰返しステップ。ステップS270)。接続呼Ciのすべての観測サンプルSi−jに対し上記一次判定が終了した場合、一次判定(ステップS200)を終了して二次判定ステップ(ステップS300)へ進む。以上の一次判定(ステップS200)の説明で明らかなように、現在の観測サンプルSi−jのBest fingerに対応するブロックにおける時間的相対値とその直前の観測サンプルSi−(j−1)のBest fingerに対応するブロックにおける時間的相対値との間の変化量δ(fing_pos)を式1を用いて計算することにより、中継局14のカバーエリアに対する測定系の進入および脱出の際に発生する対象PSC(またはPN)の時間的相対値の変化を有効に検出できることがわかる。
【0089】
二次判定ステップ(ステップS300).
二次判定ステップ(ステップS300)では、判定保留ステップ(ステップS260)で送信源を保留と判定された観測サンプル(判定保留観測サンプル)Si−jに対して判定を行う。詳しくは、一つの接続呼Ci区間内で「基地局信号」または「中継局信号」の一次判定結果が存在する観測サンプルSi−jが含まれている場合は、当該観測サンプルSi−jの一次判定結果を利用して一次判定結果がない他の観測サンプルSi−kについて判定を行う。一方、一次判定結果が全て保留となっている接続呼Cp区間については接続呼Cp区間単位で判定を行い、その判定結果をその接続呼Cp区間内の全ての観測サンプルCp−jに適用する。
【0090】
図15は、二次判定ステップ(ステップS300)の処理を詳細にフローチャートで示す。まず、接続呼Ci内で一次判定ステップ(ステップS300)による一次判定結果を得られた観測サンプルSi−jが少なくとも一つあるかどうか判断する(ステップS310)。ステップS310で一次判定結果を得られた観測サンプルSi−jが一つ以上あると判断された場合、その接続呼Ci中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルSi−fより前の判定保留観測サンプルに対しては、当該最初の観測サンプルSi−fの一次判定結果とは逆の判定を適用する。一方、当該最初の観測サンプルSi−fより後の判定保留観測サンプルに対しては、一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルSi−qの一次判定結果と同一の判定を適用する(判定適用ステップ。ステップS320)。いずれの場合も、その後ステップS390へ進む。例えば、接続呼Ci中の観測サンプルSi−1、Si−2、Si−3、Si−4、Si−5の一時判定結果が各々、判定保留、基地局、判定保留、中継局、判定保留であったとする。この場合、接続呼Ci中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルはSi−2である(Si−fはSi−2)。従って、最初の観測サンプルSi−2より前の判定保留観測サンプルSi−1に対しては最初の観測サンプルSi−2の一次判定結果(基地局)とは逆の判定(中継局)を適用する。一方、当該最初の観測サンプルSi−2より後の判定保留観測サンプルSi−3、Si−5に対しては、一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する。つまり、判定保留観測サンプルSi−3に対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルSi−2(Si−qはSi−2)の一次判定結果(基地局)と同一の判定(基地局)を適用し、判定保留観測サンプルSi−5に対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルSi−4(Si−qはSi−4)の一次判定結果(中継局)と同一の判定(中継局)を適用する。別の例で、接続呼Ci中継局の観測サンプルSi−1、Si−2、Si−3、Si−4、Si−5の一時判定結果が各々、判定保留、中継局、判定保留、基地局、判定保留の場合、Si−1に対しては基地局の判定、Si−3に対しては中継局の判定、Si−5に対しては基地局の判定を適用する。以上の判定方法の理由は以下の通りである。本実施例1では、Best fingerのみを対象とし、現在と直前のBest fingerの時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を計算し、中継局14のカバーエリアに対する測定系12の進入および脱出の際に発生する対象PSCの時間的相対値の変化を検出する構成である。このため、最初に一次判定結果が出たときの前後は基地局信号と中継局信号との入れ替わりが発生していると判断し得る確度が高い。一方、最初の観測サンプルSi−fより後の判定保留観測サンプルに対しては、前方にある一次判定結果を優先することにより、判定を確定していくという理由による。
【0091】
接続呼Ci内で一次判定ステップ(ステップS200)による一次判定結果を得られた観測サンプルSi−jがなく且つFinger InfoデータCi−j等の情報を取得した地点が基地局10と所定の距離内にある場合(基地局10と地理的に近い場合)、接続呼Ci内の全ての判定保留観測サンプルに対し、Best fingerが受信したセル識別信号の送信源を基地局と判定する(基地局二次判定ステップ。ステップS330、S340)。その後、ステップS390へ進む。
【0092】
接続呼Ci内で一次判定ステップ(ステップS200)による一次判定結果を得られた観測サンプルSi−jがなく且つFinger InfoデータCi−j等の情報を取得した地点が基地局と前記所定の距離内にない場合(基地局10と地理的に近くない場合)、以下の非接続呼判定ステップ(ステップS350)のように処理する。
【0093】
非接続呼判定ステップ(ステップS350).
当該接続呼Ciの直前の非接続呼IDiにおける各情報IDi−jに対し観測サンプル取得ステップ(ステップS100)と同じ処理を行う。次に、当該非接続呼IDiの各観測サンプルIDSi−jに対し、当該観測サンプルIDSi−jのBest fingerが受信したセル識別信号の送信源について以下のように処理する。
【0094】
観測サンプルIDSi−jと当該観測サンプルIDSi−jの直前の観測サンプルIDSi−(j−1)との間の時間差が所定時間(例えば5秒)以上である場合、または変化量計算ステップ(ステップS150)で求められた変化量δ(fing_pos)が所定の他の閾値(例えば60chips)を超える場合は判定不可とする。つまり、変化量δ(fing_pos)≧τth=2μsであったとしても、変化量δ(fing_pos)>60chips=15.6μsの場合は判定不可とするということである。以上の理由は、非接続状態(非接続呼IDi)における移動局12の時間的相対値は、接続状態(接続呼Ci)と比べて同一場所でも固定されず相対的に変わりやすいためである。特に、変化量δ(fing_pos )が大きいにも関わらず判定不可とする理由は以下の通りである。非接続状態で移動局12の電源をOFF/ONした場合、ON後の時間的相対値は0〜38,399chipsの間でランダムに決まり(移動局のアルゴリズムに依存)、OFF前の時間的相対値との関連性(または連続性)がなくなる。この例のように、移動局の新たな時間的相対値とその前の観測サンプルの時間的相対値との差が予想以外に大きい場合には、二つの連続した観測サンプルの関連性がないという理由により判定不可とする。
【0095】
観測サンプルIDSi−jと当該観測サンプルIDSi−jの直前の観測サンプルIDSi−(j−1)との間の時間差が上記所定時間未満である場合および変化量計算ステップ(ステップS150)で求められた変化量が上記所定の他の閾値以下の場合、変化量計算ステップで求められた変化量δ(fing_pos)が上記所定の閾値以上である場合は送信源を中継局と判定し、変化量δ(fing_pos)が上記所定の閾値の負の値以下である場合は送信源を基地局と判定し、変化量δ(fing_pos)が上記所定の閾値未満且つ上記所定の閾値の負の値より大きい場合は判定不可とする。以上が、非接続呼判定ステップ(ステップS350)である。
【0096】
非接続呼判定ステップ(ステップS350)で判定があったかどうか判断する(ステップS360)。ステップS360で判定不可とされなかった場合、接続呼Ci内の全ての判定保留観測サンプルに対し、Best fingerが受信したセル識別信号の送信源として非接続呼判定ステップ(ステップS350)による判定を適用する(非接続呼判定適用ステップ。ステップS370)。その後、ステップS390へ進む。
【0097】
一方、非接続呼判定ステップ(ステップS350)で判定不可とされた場合、接続呼Ci内の全ての判定保留観測サンプルに対し、Best fingerが受信したセル識別信号の送信源として、非接続呼IDiより前の接続呼Ci−p等であって且つBestfingerが受信したセル識別信号の送信源の判定が得られた最も近い観測サンプルS(i−p)−j等に対する判定を適用する(近接観測サンプル判定適用ステップ。ステップS380)。接続呼Ciで判定が確定せず、その直前の非接続呼IDiにおける判定もない状況では、非接続呼IDiより前の接続呼Ci−p等で得た最も近い観測サンプルS(i−p)−j等における二次判定結果を当該接続呼Ciの全ての観測サンプルSi−jに適用するという趣旨である。
【0098】
接続呼Ciのすべての判定保留観測サンプルに対し判定または判定の適用が終了していない場合、判定適用ステップ(ステップS310)へ戻って処理を繰り返す(二次判定繰返しステップ。ステップS390)。接続呼Ciのすべての判定保留観測サンプルに対し判定または判定の適用が終了した場合、二次判定ステップを終了する。
【0099】
図16は、上述した本実施例1の方法により「基地局信号」と「中継局信号」とを識別した結果の例を示す。フィールド測定データは背景技術の図25および26で説明したものを用いており、図16で図26と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図16で、「/」と「・」とは各々「中継局信号」または「基地局信号」と判定した地点を示している。判定を保留とした地点は無印としている。図16から明らかな通り、網目パターン(点線の楕円151内)で示される測定車両の走行ルートにおいて測定された地点はほとんどが判定結果を得ており、判定を保留とした地点(無印としたため、「/」または「・」で続く線の途切れとなって現れる。)は比較的少ないことがわかる。図16と図26とを比較すると明らかな通り、図16における「中継局信号」と判定したエリアと、図26における中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が4dB以上(上昇)の地点の密集エリアとはよく一致していることがわかる。
【0100】
以上より、本発明の実施例1によれば、まず、各Finger infoデータCi−jに対し各ブロックをPSCのEc/Ioの値に基づき整列処理した各観測サンプルSi−jを求める。次に、取得された観測サンプルSi−jにおけるセル識別信号のEc/Ioの値が最大となるブロック(最良ブロック)の時間的相対位置と当該観測サンプルの時間的に直前の観測サンプルSi−(j−1)における最良ブロックの時間的相対位置との間の変化量δ(fing_pos)に基づき、当該観測サンプルSi−jで上記最良ブロックに対応するBest fingerが受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルSi−jに対して行う(一次判定ステップ)。一次判定ステップでは、対象するPSCのFinger infoデータCi−j毎にその直接の発信源(中継局またはドナー基地局)を識別する判定を行う。最後に、一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルSi−jに対する送信源の判定に基づき、接続呼CiにおいてBest fingerが受信した信号の送信源を判定する(二次判定ステップ)。本実施例1では、Best fingerのみを対象とし、現在と直前のBest fingerの時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を計算し、中継局14のカバーエリアに対する測定系12の進入および脱出の際に発生する対象PSCの時間的相対値の変化を検出する。このため、二次判定では、最初に一次判定結果が出たときの前後は基地局信号と中継局信号との入れ替わりが発生していると判断し得る確度が高いという理由により判定を行う。一方、最初の観測サンプルSi−fより後の判定保留観測サンプルに対しては、前方にある一次判定結果を優先することにより、判定を確定していく。以上より、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、基地局10のセル識別信号として各々PSC、PNを利用する場合、1回のみ測定した一連のFinger infoデータCi−j等およびIDi−j等から構成される接続呼Ciおよび非接続呼IDCi等の測定結果に基づき、受信した信号の送信源が基地局10か中継局14かを判定することができ、基地局10と中継局14との各カバレッジ区分を明確に判定することができる送信源判定プログラム71等を提供することができる。このため、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、中継局14が置局されているエリアの実測データによるカバレッジ判別作業のコスト削減、カバレッジ判別の精度向上および問題発生時の解決策の確実性向上等の諸点において大きな利点がある。
【実施例2】
【0101】
実施例2では、一次判定においてBest fingerだけではなく、観測サンプルSi−j中でセル識別信号のEc/Ioの値が2番目に高いブロックに対応するSecondary best fingerも用いる送信源判定プログラム72について説明する。即ち、観測サンプルSi−j中でセル識別信号のEc/Ioの値が最大となるブロック(所定の信号の所定の値が最大となるブロック)に対応するBest fingerと、観測サンプルSi−j中でセル識別信号のEc/Ioの値が2番目に高いブロック(所定の信号の所定の値が次に大きいブロック)に対応するSecondary best fingerとを用いる。詳しくは、現在のBest fingerとSecondary best fingerとの両方の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を個別に計算し、上記両方で、逆極性且つ同じ絶対量の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を呈することを検出することにより、実施例1よりさらに信頼度の高い一次判定結果を得ることができる。ここで、「逆極性且つ同じ絶対量の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を呈する」とは以下の通りである。例えば、現在(時刻t)の観測サンプルSi−tにおけるBest fingerが受信した信号の送信源が基地局であり、Secondary best fingerが受信したτth遅れの信号の送信源が中継局であり、直前(時刻t−1)の観測サンプルSi−(t−1)におけるBest fingerが受信した信号の送信源が中継局であり、Secondary best fingerが受信したτth早い信号の送信源が基地局であるものと想定する。この場合、Best fingerの方では時間的相対値の変化量δ(fing_pos)は−τthとなり、一方、Secondary best fingerの方では時間的相対値の変化量δ(fing_pos)は+τthとなる。即ち、Best fingerとSecondary best fingerと両方で、逆極性(+と−)且つ同じ絶対量(τth)の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を呈することを検出することができる。
【0102】
実施例2における一次判定方式では、「基地局信号」と「中継局信号」とのそれぞれの最大の電力を与えるパス(大きい順にBest fingerとSecondary best fingerがそれぞれ捕捉する。)の電力の大小関係の入れ替わりの発生を検出することになるため、信頼度が向上することは自明である。実施例2の構成は同一PSC(またはPN)に対し二つ以上のfinger情報を提供することができる測定系であれば実現することが可能である。但し、上記方法はSecondary best fingerの存在を前提としているため、Secondary best fingerが存在しない場合は、Best fingerのみを用いる第1の実施構成例での一次判定の方法を併用すればよい。実施例2における送信源判定プログラム72は、一次判定は上述のように実行し、観測サンプル取得ステップと二次判定ステップとは実施例1と同様に実行する。
【0103】
以上より、本発明の実施例2によれば、一次判定においてBest fingerだけではなく、観測サンプルSi−j中でセル識別信号のEc/Ioの値が2番目に高いブロックに対応するSecondary best fingerも用いる。現在のBest fingerとSecondary best fingerとの両方の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を個別に計算し、上記両方で、逆極性且つ同じ絶対量の時間的相対値の変化量δ(fing_pos)を呈することを検出することにより、実施例1よりさらに信頼度の高い一次判定結果を得ることができる送信源判定プログラム2等を提供することができる。
【実施例3】
【0104】
実施例3では、同一PSC(またはPN)に対し二つ以上のFingerを用いて相対遅延情報を提供できる測定系(携帯端末12またはスキャナ(不図示))から取得したデータを使用し、中継局信号と基地局信号との識別を行う送信源判定プログラム73について説明する。スキャナ等は、実施例1のように呼接続を行わず、複数のセルのパイロット信号等の制御信号、セル識別信号のみを巡回的且つ継続して測定し記録することができる。図17(A)は、同一のPSC(またはPN)のマルチパスの内、最大電力を有するパスとその次に大きい電力を有するパスとの二つのパスを捕捉するFinger1およびFinger2の各パスの電力値と相対的遅延量とをスキャナ等で測定して測定情報記録DB100に記録した事例を示し、図17(B)は実施例3で説明する方法を適用した判定結果例を示す。図17(B)は後述する判定結果の説明の際に適宜参照する。
【0105】
図17(A)において、符号101は、観測サンプルPj毎の測定データ番号(NO)欄、102は測定時刻(TIME)欄、103はセル識別信号の番号(CH1_CODE)欄、104は測定対象の無線チャネル(この事例ではCH1)の信号帯域での総受信電力(CH1-RSSI。単位はdBm:1ミリワットの電力を基準0dBmとする対数値)欄である。続いて、符号105は基準となるパスとFinger1が捕捉しているパスとの相対的遅延量(CH1_F1_DLY。単位はチップ:移動通信CDMA方式で使用される拡散信号の瞬時変動の最小時間周期)欄であり、Finger1を基準となるパスとしているため、CH1_F1_DLY=0としてある。符号106はFinger1が捕捉しているパスの電力(CH1_F1_RSCP。単位はdBm)欄、107はFinger1が捕捉しているパスとFinger2が捕捉しているパスとの相対的遅延量(CH1_F2_DLY。単位はチップ。Finger1が相対的基準となる。)欄、108はFinger2が捕捉しているパスの電力(CH1_F2_RSCP。単位はdBm)欄である。CH1_F2_DLY欄107における相対的遅延量の内、太字で表記された数値(例えば、NO欄101が442の場合におけるCH1_F2_DLY欄107が29.5の数値)は、その絶対値が予め設定された前述の所定の閾値τthを超える場合を示している。図17(B)の符号については適宜後述する。実施例1(および2)と3との間の違いは、実施例1では移動通信CDMAシステムのネットワークの標準時刻を基準とする時間的相対値を用いて一次判定を行ったのに対し、実施例3では、上述した二つのFinger1およびFinger2が捕捉している各パスの相対的遅延量(CH1_F2_DLY欄107に示す量)を用いて一次判定を行う点にある。
【0106】
実施例3における一連の情報は、上述のようにスキャナ等により巡回的且つ継続して測定され、所望の測定時間単位(所定の時間単位)で複数の時間帯に取得された一連の測定情報Fから構成されている。当該一連の測定情報Fは測定情報記録DB(測定情報記録部)100に記録されている。各測定情報Fjは、マルチパス中から最大電力を有する第1パスと次に大きい電力を有する第2パスとを分離検出するFinger1(第1パス検出機能)およびFinger2(第2パス検出機能)により各測定時刻において取得された各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを含む。各測定情報Fjはこれら以外のデータを含んでいてもよい。各測定情報Fjに対応する上記観測サンプルPj(求め方は後述する。)は、図17(A)のTIME欄102により示される測定時間単位でNO欄101により示される複数の時間帯に取得された上記各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを少なくとも含む。観測サンプルPjの添え字jの値は、図17(A)に示される表の行番号としてもよく、NO欄101の値(442等)としてもよい。
【0107】
図18は、スキャナ等の測定器から取得したデータを使用して中継局信号と基地局信号との識別を行う本発明の実施例3における送信源判定プログラム73の処理概要および送信源判定方法の流れをフローチャートで示す。図18に示されるように、まず、測定情報記録DB100に記録された各測定情報Fjに対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルPjを求める(観測サンプル取得ステップ。ステップS400)。観測サンプル取得ステップ(ステップS400)は、測定データの整理及び操作を行う過程である。測定データから当該PSC(またはPN)をFinger1およびFinger2により捕捉したパスの相対的遅延量の差で定義される相対遅延(Δf_dly)、総受信電力RSCPまたは信号対干渉雑音エネルギー比(Ec/Io)等を時間順に整列する。観測サンプルPjは、情報Fjを上述のように一つの短い時間帯で観測し整理した一組の情報のことを言う。
【0108】
観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得された観測サンプルPjにおける相対的遅延量(CH1_F2_DLY欄107に示される。)と所定の閾値とに基づき、当該観測サンプルPjでFinger1が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルPjに対して行う(一次判定又は仮判定ステップ。ステップS500)。
【0109】
観測サンプルPjにおける第1パスの電力値(CH1_F1_RSCP欄106に示される。)と、当該観測サンプルPjの直前の観測サンプルP(j−1)における第1パスの電力値および第2パスの電力値(CH1_F2_RSCP欄108に示される。)と、所定の電力差閾値とに基づき、当該観測サンプルPjにおいてFinger1が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求める。この入れ替わり判定と一次判定ステップ(ステップS500)で行われた一連の観測サンプルPjに対する送信源の判定とに基づき、当該観測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の再判定を行う。次に、1)当該観測サンプルPjにおける相対的遅延量と上記所定の閾値との比較と上記再判定とに基づき、当該観測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルPjに対して行う。あるいは、2)当該観測サンプルPjにおける相対的遅延量と上記所定の閾値との比較と当該観測サンプルPjにおける各パスの電力値の比較と上記再判定とに基づき、当該測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルPjに対して行う。以上が、二次判定ステップ(ステップS600)である。以下、一次判定ステップ(S500)および二次判定ステップ(S600)について詳述する。
【0110】
一次判定ステップ(ステップS500).
図17(A)のパラメータを用いてFinger1およびFinger2が捕捉したパスの相対的遅延量(Δf_dly)を以下の式12で定義する。
【0111】
D(f_dly)=CH1_F2_DLY−CH_F1_DLY=CH1_F2_DLY (12)
【0112】
ここで、
CH1_F1_DLY:Finger1の捕捉するパスの相対的遅延量=0
CH1_F2_DLY:Finger2の捕捉するパスの相対的遅延量
(いずれもCH1_F1_DLYを基準としている)
【0113】
上記のデータ整理後、各観測サンプルPjについて以下のように一次判定を行う。図19は、PSC(またはPN)に対し相対的遅延量を提供する測定系からの各Fingerのデータを用いる一次判定ステップ(ステップS500)の処理を詳細にフローチャートで示す。一次判定ステップ(ステップS500)は、観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得された観測サンプルPjに対し、Finger1が受信したセル識別信号の送信源について判定を行う。図19に示されるように、まず、観測サンプルPjの相対的遅延量(Δf_dly)が所定の閾値(τth)以上である場合、上記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る(基地局判定ステップ。ステップS510、S520)。この後、ステップS560へ進む。観測サンプルPjの相対的遅延量(Δf_dly)が所定の閾値の負の値(−τth)以下である場合、上記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る(中継局判定ステップ。ステップS530、S540)。この後、ステップS560へ進む。観測サンプルPjの相対的遅延量(Δf_dly)が所定の閾値(τth)未満且つ所定の閾値の負の値(−τth)より大きい場合、上記送信源を保留と判定する(判定保留ステップ。ステップS550)。観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得されたすべての観測サンプルPjに対し判定が終了していない場合、基地局判定ステップ(ステップS510)へ戻って処理を繰り返す(一次判定繰返しステップ。ステップS560)。観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得されたすべての観測サンプルPjに対し判定が終了した場合、一次判定ステップ(ステップS500)を終了する。以上のように、一次判定ではFinger1の捕捉するパスが「基地局信号」であるか「中継局信号」であるかを判別できる範囲で概略判定している。一次判定を終了すると以下に記載する二次判定のフローに入る。ここで、上述した図17に示される実測例における中継局14の中継処理遅延(τ)は27(chip。約7μsecに相当)であり、上記所定の閾値(τth)は22(chip。移動通信CDMAシステムにおいて、約5.7μsecに相当)に設定されている。図17(B)の符号110は図17(A)に示される観測サンプルPjに対して行われた一次判定結果(F1 decision)欄を示す。F1
decision欄110に示されるように、例えばNO欄101が442の観測サンプルの場合、相対的遅延量(Δf_dly)はCH1_F2_DLY欄107の29.5chipとなる。従って、29.5≧τth=22chipとなるため、一次判定結果は基地局(「bts」と示す。)となる。NO欄101が447の観測サンプルの場合、相対的遅延量(Δf_dly)はCH1_F2_DLY欄107の9.0chipとなる。従って、9.0≧τth=22ではなく、9.0≦−τth=−22でもないため、一次判定結果は判定保留(空白で示す。)となる。NO欄101が454の観測サンプルの場合、相対的遅延量(Δf_dly)はCH1_F2_DLY欄107の−29.0chipとなる。従って、−29.≧τth=22ではなく−29.0≦−τth=−22chipとなるため、一次判定結果は中継局(「rpt」と示す。)となる。
【0114】
二次判定ステップ(ステップS600).
以下の説明では、優先的に特定の一個のFinger(例えばFinger1)に最大電力のパスを優先的に捕捉させるように構成している測定器を用いる場合について説明する。二次判定では、Finger1の捕捉するパスに関し一次判定において判定を保留した観測サンプルを含む全ての観測サンプルPjに対して、最初にFinger1の捕捉するパスが「基地局信号」であるか「中継局信号」であるかを前後の時点の関係に基いて再度判別する再判定を行う。最後に、全ての測定時点における最も電力の大きいパスが「基地局信号」であるか「中継局信号」であるかを判別する最終判定を行う。
【0115】
図20および21は、二次判定ステップ(ステップS600)の処理を詳細にフローチャートで示す。図面の都合上、二次判定ステップ(ステップS600)は2図面に分かれて示されており、図20の外部接合子Aは図21の外部接合子Aへ繋がり、図21の外部接合子Bは図20の外部接合子Bへ繋がっている。まず、現在の観測サンプルPtと直前の観測サンプルP(t−1)において、当該PSC(またはPN)を捕捉しているFinger1の信号が「基地局信号」のパスから「中継局信号」のパスへ、または「中継局信号」のパスから「基地局信号」のパスへ入れ替わりが発生する観測サンプルPtの時点を‘Turning Point’ (以下、「TP」と表記する。)と定義し、TPの発生時点を判定する。具体的には、現時点tの観測サンプルPtにおけるFinger1と直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger1との間、および現時点tの観測サンプルPtにおけるFinger1と直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger2との間で、各Fingerが捕捉するパスの電力直(RSCP値)の電力差(dB)を計算し、以下の式13および14の条件を満たす場合に、現時点tがTPの発生時点であると判定する。
【0116】
(Finger1 RSCP) − (Finger1 RSCP)t−1 >δ1th dB (13)
|(Finger1 RSCP) − (Finger1 RSCP)t−1|<δ2th dB (14)
ここで、
(Finger1 RSCP):現時点tの観測サンプルPtにおけるFinger1のRSCP値
(Finger1 RSCP)t−1:直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger1のRSCP値
(Finger2 RSCP)t−1:直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger2のRSCP値であり、いずれも単位はdBmである。さらに、
δ1th:第1の電力差閾値 (単位はdB)
δ2th:第2の電力差閾値 (単位はdB)
|・|:絶対値
である。
【0117】
式13および14のように設定することにより、現時点tの観測サンプルPtにおいて、Finger1の捕捉するパスの電力値(Finger1 RSCP)が直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger1の捕捉するパスの電力値(Finger1 RSCP)t−1より急に増加し(増加分が第1の電力差閾値δ1th以上)、且つ直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger2の捕捉するパスの電力値(Finger2 RSCP)が現時点tの観測サンプルPtにおけるFinger1の捕捉するパスの電力値(Finger1 RSCP)に近い(その差が第2の電力差閾値δ2th以内)という条件で、直前時点t−1の観測サンプルP(t−1)におけるFinger2で捕捉していた電力値の大きいパスがFinger1に移り変わったという事象、すなわちTPの発生を検出できることがわかる。因みに、上記第1、第2の電力差閾値δ1th、δ2thとしては、各々10dB程度でよいことが経験的にわかっている。上述したTPの発生の判定基準(式13および14)は、特定のFinger(上例ではFinger1)に電力最大のパスを優先的に捕捉させるように構成している測定器に適用する場合のものである。しかし、そのような構成でない測定器の場合は、上記判定基準の記述において、Finger1とFinger2とを入れ換えた形式の判定基準も論理和条件として加える必要があることは自明である。
【0118】
以上をまとめると図20に示されるように、観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得された観測サンプルPtに対し、Finger1(第1パス)の電力値(Finger1 RSCP)と当該観測サンプルPtの直前の観測サンプルP(t−1)におけるFinger1の電力値(Finger1 RSCP)t−1との差が第1電力差閾値δ1thより大きく且つFinger1の電力値(Finger1 RSCP)と当該観測サンプルの直前の観測サンプルP(t−1)におけるFinger2(第2パス)の電力値(Finger2 RSCP)t−1との差の絶対値が第2電力差閾値δ2thより小さい場合、当該観測サンプルPtの時点tにおいてFinger1が受信したセル識別信号の送信源に入れ替わり(TP)が発生したという判定を行う(入れ替わり判定ステップ。ステップS610)。図17(B)の符号111は図17(A)に示される観測サンプルPjに対して行われたTPの発生時点の判定結果(Turning point TP)欄を示す。Turning point TP欄111に示されるように、例えばNO欄101が445の観測サンプルの場合、現時点tにおけるFinger1の電力値(Finger1 RSCP)はCH1_F1_RSCP欄106の−84.8dBmであり、直前時点t−1におけるFinger1の電力値(Finger1 RSCP)t−1はNO欄101が444の観測サンプルの場合におけるCH1_F1_RSCP欄106の−95.7dBmである。従って、−84.8−(−95.7)=10.9>δ1th=10dBとなり、式13が成立する。直前時点t−1におけるFinger2の電力値(Finger2 RSCP)t−1はNO欄101が444の観測サンプルの場合におけるCH1_F2_RSCP欄108の−81.7dBmである。従って、|−84.8−(−81.7)|=|−3.1|=3.1<δ2th=10dBとなり、式14も成立する。このため、TPが発生したと判定され、Turning point TP欄111に「TP?」と記載されている。
【0119】
次に、判定保留ステップ(ステップS550)で判定を保留とされた観測サンプルPtに対し、入れ替わり判定ステップ(ステップS610)で入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルPtの直前の観測サンプルP(t−1)で一次判定結果が得られていた場合、当該観測サンプルPtに対しては直前の観測サンプルP(t−1)の一次判定結果と同一の判定を適用する(ステップ630、S640)。一方、入れ替わり判定ステップ(ステップS610)で入れ替わりが発生したと判定された場合、当該観測サンプルPtに対しては当該観測サンプルPt以降で最初に一次判定結果を得られた観測サンプルP(t+k)の一次判定結果と同一の判定を適用する(ステップS620)。以上のステップS630、S640およびS620が再判定ステップである。この後、図21のステップS660へ進む。図17(B)の符号112はTPの発生を考慮した場合における判定結果を示す。例えば、NO欄101が452の観測サンプルの場合、F1 decision欄110に示されるように判定は保留とされている。Turning point TP欄111に示されるようにTPが発生しているため、NO欄101が452の観測サンプル以降で最初に一次判定結果を得られたNO欄101が454の観測サンプルの一次判定結果であるrpt(中継局)をNO欄101が452の観測サンプルに対して適用する。この結果、符号112で示されるTPを考慮した判定結果(F1 decision after considering TP effect)欄112にはrpt(中継局)と記載されている。NO欄101が447の観測サンプルの場合、F1 decision欄110に示されるように判定は保留とされている。Turning point TP欄111に示されるようにTPは発生しておらず、直前のNO欄101が446の観測サンプルでは一次判定結果がbts(基地局)と得られている。このため、NO欄101が447の観測サンプルに対しては直前のNO欄101が446の観測サンプルの一次判定結果であるbts(基地局)と同一の判定を適用する。この結果、F1 decision after considering TP effect欄112にはbts(基地局)と記載されている。
【0120】
再判定ステップ(ステップS630、S640およびS620)において、入れ替わり判定ステップ(ステップS610)で入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルPtの直前の観測サンプルP(t−1)で一次判定結果が得られていなかった場合、当該観測サンプルPtに対しては当該観測サンプルPt以前で一次判定結果を得られた最も近い観測サンプルP(t−m)の一次判定結果と同一の判定を適用する(再々判定ステップ。ステップS650)。この後、図21のステップS660へ進む。NO欄101が450の観測サンプルの場合、F1 decision欄110に示されるように判定は空白(保留)と示されている。Turning point TP欄111に示されるようにTPは発生しておらず、直前のNO欄101が449の観測サンプルでは一次判定結果が得られていない。このため、NO欄101が450の観測サンプルに対しては、NO欄101が450の観測サンプル以前で一次判定結果を得られた最も近いNO欄101が448の観測サンプルの一次判定結果であるbts(基地局)と同一の判定を適用する。この結果、再々判定結果を示す符号113のDecision for all F1欄には基地局(bts)と記載されている。Decision for all F1欄113は再判定ステップ(ステップS630、S640およびS620)で得られた判定結果と再々判定ステップ(ステップS650)で得られた結果とを合成した判定結果が示されている。
【0121】
図21に示されるように、観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得された観測サンプルPtの相対的遅延量の絶対値(|Δf_dly|)が所定の閾値(τth)以上でない場合、再判定ステップ(ステップS630、S640およびS620)または再々判定ステップ(ステップS650)で観測サンプルPtに対し適用された判定を最終判定とする(判定保留観測サンプル最終判定ステップ。ステップS670)。その後、ステップS690へ進む。このように判定方法を構成する根拠としては、この時点では、Finger1およびFinger2の捕捉する信号が同一局(基地局10または中継局14のいずれか一方のみ)から送出された識別信号の一つのパスとその遅延パスである可能性が高いということが挙げられる。
【0122】
一方、観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得された観測サンプルPtの相対的遅延量の絶対値(|Δf_dly|)が所定の閾値(τth)以上である場合、Finger 1における電力値(Finger1 RSCP)がFinger 2における電力値(Finger2 RSCP)より小さい場合は、一次判定ステップ(ステップS500)で得られた一次判定結果の逆の判定を最終判定として観測サンプルPtに対し適用する(ステップS675、S685)。これは、Finger2の方が最大の電力を有するパスを捕捉していると結論できるので、一次判定結果の逆を最終判定(当該の観測サンプルPtにおける電力最大の識別信号が「基地局信号」か「中継局信号」かの判定)として適用するということである。一方、Finger 1における電力値(Finger1 RSCP)がFinger 2における電力値(Finger2 RSCP)より小さくない場合は、一次判定ステップ(ステップS500)で得られた一次判定結果を最終判定として観測サンプルPtに対し適用する。これは、Finger1が最大の電力を有するパスを捕捉していると結論できるので、一次判定結果を当該観測サンプルPtの最終判定結果としてそのまま適用するということである。以上のステップS670、S680およびS685が最終判定ステップである。観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得されたすべての観測サンプルPtに対し上記最終判定が終了していない場合、入れ替わり判定ステップ(ステップS610)へ戻って処理を繰り返す(二次判定繰返しステップ。ステップS690)。観測サンプル取得ステップ(ステップS400)で取得されたすべての観測サンプルPtに対し上記最終判定が終了した場合、二次判定を終了する。図17(B)の符号114で示される欄は最終判定の結果(Final decision for best signal)を示す。NO欄101が442の観測サンプルのDecision for all F1欄113ではbts(基地局)と示されている。しかし、当該観測サンプルのCH1_F2_DLY欄107で示される相対的遅延量の絶対値(=29.5)が所定の閾値(=22)以上であり、CH1_F1_RSCP欄106で示されるFinger1における電力値(=−92.9)がCH1_F2_RSCP欄108で示されるFinger2における電力値(=−80.3)より小さい。このため、Final decision for best signal欄114に示されるように、一次判定結果で得られた判定であるbts(基地局)とは逆のrpt(中継局)という判定が最終判定となっている。
【0123】
以下、図17(B)に示される他の例についていくつか説明する。NO欄101が445の観測サンプルの時点において式13および14の条件が成立し、TP発生と判定されている。この場合、Finger1に関する一次判定は保留されていないため、このTP発生の判定は無視されている。NO欄101が452の観測サンプルに関しても上述したようにTPが発生している。Decision for all F1欄113では直前時点のNO欄101が451の観測サンプルで、基地局から中継局へ転じていることがわかる。Final decision for best signal欄114では、図21のステップS660により相対的遅延量の絶対値(|Δf_dly|)が所定の閾値(τth)以上となる条件が成立すれば、Finger1の捕捉するパスの電力値CH1_F1_RSCPがFinger2の捕捉するパスの電力値CH1_F2_RSCPより小さい場合にDecision for all F1欄113の判定結果の逆がFinal decision for best signal欄114に示されている様子がわかる。上記条件が成立しない場合は、Decision for all F1欄113の判定結果がそのままFinal decision for best signal欄114に適用されている様子も確認することができる。
【0124】
以上の判定フローで得られた最終判定結果であるFinal decision for best signal欄114の結果を総合的に眺めると、NO欄101が442〜450の観測サンプルの区間では基地局信号(bts)と中継局信号(rpt)とが交番しているが、NO欄101が451の観測サンプルの時点以降は中継局信号(rpt)に安定している。これから、本測定事例の測定地点が、基地局10と中継局14とのサービスのカバレッジが重なっているエリアから、中継局14のサービスエリアへ徐々に移行しているということを容易に推定することができる。
【0125】
図22は、観測サンプル毎に「基地局信号」と「中継局信号」とを判別した結果の例を示す。フィールド測定データは背景技術の図25および26で説明したものを用いており、図22で図26と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図22の表記形式および対象となる測定データはいずれも図16の場合と同様である。図22より明らかな通り、網目パターン(点線の楕円151内)で示される測定車両の走行ルート上において、判定保留とした測定点(空白)が無く、途切れのない連続した測定エリア全域の判定結果が得られており、中継局157のサービスエリアの区分けができていることがわかる。図16の場合と同様に図22と図26とを比較すると、図22における「中継局信号」と判定したエリアは、図26における中継局157の中継動作機能ONとOFFとの間のRSCP測定値差が4dB以上(上昇)以上の地点の密集エリアとよく一致していることがわかる。
【0126】
以上より、本発明の実施例3によれば、同一PSC(またはPN)に対し二つ以上のFingerを用いて相対遅延情報を提供できる測定系から取得したデータを使用する。送信源判定プログラム73は、まず、測定情報記録DB100に記録された各情報Fjに対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルPjを求める。即ち、測定データから当該PSC(またはPN)をFinger1およびFinger2により捕捉したパスの相対的遅延量の差で定義される相対遅延(Δf_dly)、総受信電力RSCPまたは信号対干渉雑音エネルギー比(Ec/Io)等を時間順に整列する。取得された観測サンプルPjにおける相対的遅延量(CH1_F2_DLY欄107に示される。)と所定の閾値とに基づき、当該観測サンプルPjでFinger1が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルPjに対して行う(一次判定)。実施例3では、二つのFinger1およびFinger2が捕捉している各パスの相対的遅延量(CH1_F2_DLY欄107に示す量)を用いて一次判定を行う点に特徴がある。観測サンプルPjにおけるFinger1の電力値(CH1_F1_RSCP欄106に示される。)と、当該観測サンプルPjの直前の観測サンプルP(j−1)におけるFinger1の電力値およびFinger2の電力値(CH1_F2_RSCP欄108に示される。)と、所定の電力差閾値とに基づき、当該観測サンプルPjにおいてFinger1が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求める。この入れ替わり判定と一次判定で行われた一連の観測サンプルPjに対する送信源の判定とに基づき、当該観測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の再判定を行う。次に、1)当該観測サンプルPjにおける相対的遅延量と上記所定の閾値との比較と上記再判定とに基づき、当該観測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルPjに対して行う。あるいは、2)当該観測サンプルPjにおける相対的遅延量と上記所定の閾値との比較と当該観測サンプルPjにおける各パスの電力値の比較と上記再判定とに基づき、当該測サンプルPjに対するFinger1が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルPjに対して行う(二次判定)。以上より、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、基地局10のセル識別信号として各々PSC、PNを利用する場合、1回のみ測定した一連の情報Fにより構成される測定結果に基づき、受信した信号の送信源が基地局10か中継局14かを判定することができ、基地局10と中継局14との各カバレッジ区分を明確に判定することができる送信源判定プログラム73等を提供することができる。このため、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムでセル最適化設計を行う際に、中継局14が置局されているエリアの実測データによるカバレッジ判別作業のコスト削減、カバレッジ判別の精度向上および問題発生時の解決策の確実性向上等の諸点において大きな利点がある。
【実施例4】
【0127】
実施例4は、接続呼Ciの区間では実施例1または2の送信源判定プログラム71または72を実行させ、非接続呼IDiの区間では実施例3の送信源判定プログラム73を実行させるための送信源判定プログラム74について説明する。一般に、携帯端末12のシステム動作において、携帯端末12は接続呼Ciの区間では常時連続的に通信状況を観測するため判定結果の頻度が多いのに対し、非接続呼IDiの区間では充電器に蓄積した電力エネルギーの消費を抑えるために間欠受信動作を行うため、判定結果の頻度が少なくなる。従って、実施例1または2において、携帯端末12から得られる測定データを使用する場合、接続呼Ciの区間においては判定結果の頻度が極めて多いため、その判定結果の信頼度は高くなるが、逆に非接続呼の区間では判定結果の頻度が少なくなるため、その判定結果の信頼度は相対的に低くなる。一方、相対遅延を検出するスキャナ等の測定器の測定データを使用した実施例3における判定結果を得る頻度は、上記二種類の頻度の中間となる。つまり、スキャナ等では呼接続を行わずに複数のセルのパイロット信号等の制御信号のみを巡回的かつ継続して測定するため、一つのセルの制御信号あたりでは判定結果の頻度は上記の中間となる。従って、その信頼度も上記二種の中間となる。
【0128】
以上より、本発明の実施例4によれば、送信源判定プログラム74は接続呼Ciの区間では実施例1または2の送信源判定プログラム71または72を実行させ、非接続呼IDiの区間では実施例3の送信源判定プログラム73を実行させる。この結果、実施例1ないし3の各長所を引き出すことができる。
【実施例5】
【0129】
図23は、上述した各実施例を実現するための本発明のコンピュータ・プログラム(送信源判定プログラム71ないし74)を実行するコンピュータ60の内部回路120を示すブロック図である。図23に示されるように、CPU121、ROM122、RAM123、画像制御部125、コントローラ126、入力制御部128および外部インタフェース(I/F)部130はバス131に接続されている。図23において、上述した本発明の送信源判定プログラム71等は、ROM122、ディスク等の記録装置64またはCD−ROM127等の記録媒体(脱着可能な記録媒体を含む)に記録されている。記録装置64には上述した呼情報記録DB80、測定情報記録DB100等が記録されている。本発明の送信源判定プログラム71等は、ROM122からバス131を介し、または記録装置64若しくはCD−ROM127等の記録媒体からコントローラ126を経由してバス131を介しRAM123へロードされる。入力制御部128はマウス、テンキー等の入力操作部129と接続され入力制御等を行う。画像メモリであるVRAM124はコンピュータ60の表示装置62の少なくとも一画面分のデータ容量に相当する容量を有しており、画像制御部125はVRAM124のデータを画像データへ変換して表示装置62へ送出する機能を有している。外部I/F部130は、外部との間の入出力インタフェース機能を有する。
【0130】
上述のようにCPU121が本発明の送信源判定プログラム71等を実行することにより、本発明の目的を達成することができる。送信源判定プログラム71等は上述のようにCD−ROM127等の記録媒体の形態でコンピュータCPU121に供給することができ、送信源判定プログラム71等を記録したCD−ROM127等の記録媒体も同様に本発明を構成することになる。送信源判定プログラム71等を記録した記録媒体としては上述した記録媒体の他に、例えばメモリ・カード、メモリ・スティック、DVD、光ディスク、FD等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の活用例として、移動通信WCDMAシステムおよび移動通信CDMA2000システムへの応用が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】中継局が介在しない場合の基地局から移動局までの電波伝搬経路をモデル化して示す図である。
【図2】一例として、στ=0.5μsecとした場合の正規化遅延プロファイルおよび正規化累積電力の例を示すグラフである。
【図3】中継局が存在する場合の基地局から移動局までの電波伝搬経路をモデル化して示す図である。
【図4】中継局が存在する場合の基地局から移動局までの電波伝搬経路をモデル化して示す図である。
【図5】図3および4でモデル化した経路の集合(P1、P2、P3、P4およびP5)から、中継局経由/中継局非経由の経路の組合せとその遅延差とをケースに応じてまとめた表30を示す図である。
【図6】中継局とドナー基地局との離隔距離が2kmの場合における電波伝搬経路を横軸(X軸)と縦軸(Y軸)とからなる二次元座標上でモデル化して示す図である。
【図7】式10に基づき図6の経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τを計算した結果を3次元グラフ40で示す図である。
【図8】式10に基づき図6の経路P3と経路P2との間の電波伝搬遅延の差τを計算した結果を二次元グラフ50で示す図である。
【図9】本発明の各実施例における送信源判定プログラムが実行される環境を示す図である。
【図10】呼情報記録DB80に記録された携帯電話端末12における呼の接続状態および非接続状態のタイムチャートを示す図である。
【図11】携帯電話端末12から取得したFinger infoデータCi−jを例示する図である。
【図12】携帯端末12等の測定器から取得したデータを使用して中継局信号と基地局信号とを判別する本発明の実施例1における送信源判定プログラム71の処理概要を示すフローチャートである。
【図13】観測サンプル取得ステップ(ステップS100)の処理を詳細に示すフローチャートである。
【図14】一次判定ステップ(ステップS200)の処理を詳細に示すフローチャートである。
【図15】二次判定ステップ(ステップS300)の処理を詳細に示すフローチャートである。
【図16】上述した本実施例1の方法により「基地局信号」と「中継局信号」とを識別した結果の例を示す図である。
【図17】同一のPSC(またはPN)のマルチパスの内、最大電力を有するパスとその次に大きい電力を有するパスとの二つのパスを捕捉するFinger1およびFinger2の各パスの電力値と相対的遅延量とをスキャナと呼ばれる測定器で測定し測定情報記録DB100に記録した事例と判定結果例とを示す図である。
【図18】スキャナ等の測定器から取得したデータを使用して中継局信号と基地局信号との識別を行う本発明の実施例3における送信源判定プログラム73の処理概要を示すフローチャートである。
【図19】PSC(またはPN)に対し相対的遅延量を提供する測定系からの各Fingerのデータを用いる一次判定ステップ(ステップS500)の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図20】二次判定ステップ(ステップS600)の処理を詳細示すフローチャートである。
【図21】二次判定ステップ(ステップS600)の処理を詳細示すフローチャートである。
【図22】背景技術で説明した図25および26の実際のフィールド測定データ例を用いて、観測サンプル毎に「基地局信号」と「中継局信号」とを判別した結果の例を示す図である。
【図23】述した各実施例を実現するための本発明のコンピュータ・プログラム(送信源判定プログラム71ないし74)を実行するコンピュータ60の内部回路120を示すブロック図である。
【図24】マルチパス中、電力の大きい順から2本のパスを経由したセル識別信号の逆拡散後の波形例とこれらを捕捉するFinger1とFinger2との対応関係を示す図である。
【図25】移動通信WCDMAシステムにおける実測対象のサービスエリアを含む地域の標高に関する地形的状況について、陰影をつけて立体的に示した地図である。
【図26】図25に示される実測対象のサービスエリアにおいて、中継局の中継動作機能をON(作動)/OFF(停止)した状態のそれぞれで電波の計測を実施することにより、中継局157の有効サービスエリアを実測した例を示す図である。
【図27】図25に示される実測対象のサービスエリアにおいて、上述した従来の判定方法を適用した場合の判定結果を示す図である。
【図28】判定ができない場合とできた場合とにおけるサービスエリアの概念図である。
【符号の説明】
【0133】
10、155 基地局、 12、160 携帯端末、 14、157 中継局、 20、22、24 反射物、 30 中継局経由/中継局非経由の経路の組合せとその遅延差とをケースに応じてまとめた表、 31 ケースの区分欄、 32 経路の組合せ欄、 33 電波伝搬遅延の差欄、 34 備考欄、 40 伝搬遅延差の計算結果の3次元グラフ、 50 伝搬遅延差の計算結果の2次元グラフ、 60 コンピュータ、 62 ディスプレイ、 64 記録装置、 71、72、73、74 送信源判定プログラム、 80 呼情報記録DB、 81 第1行、 82 第3行、 83、84、85 ブロック、 83a、84a、85a fing_pos、 83b、84b、85b CPICH Ec/Io TOTAL、 83c、84c、85c prim_sc_code_idx、 100 測定情報記録DB、 101 NO欄、 102 TIME欄、 103 CH1_CODE欄、 104 CH1_RSSI欄、 105 CH1_F1_DLY欄、 106 CH1_F1_RSCP欄、 107 CH1_F2_DLY欄、 108 CH1_F2_RSCP欄、 110 F1
decision欄、 111 Turning point (TP)欄、 112 F1 decision after considering TP effect欄、 113 Decision
for all F1欄、 114 Final decision for best signal欄、 120 内部回路、 121 CPU、 122 ROM、 123 RAM、 124 VRAM、 125 画像制御部、 126 コントローラ、 127 CD−ROM、 128 入力制御部、 129 入力操作部、 130 外部I/F部、 131 バス、 151 点線の楕円、 152、153、154 セルの指向方位、 156 四辺形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、コンピュータに、複数の時間帯に亘り複数のパス検出機能により取得された一連の情報に対し整列処理した一連の観測サンプルを求めさせ、該一連の観測サンプルに対し所定のパス検出機能が受信した信号の送信源の仮判定を行わせ、一連の該仮判定に基づき観測サンプルに対する該所定のパス検出機能が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を実行させるための送信源判定プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の送信源判定プログラムにおいて、呼の接続から切断までの接続状態における時間区間を示す接続呼は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された前記一連の情報から構成され、各情報は複数の前記パス検出機能毎に取得されたデータのブロックから構成され、各ブロックは所定のCDMA移動通信システムで定められた標準時刻を基準とする該データが取得された時間的相対位置と該データ中の所定の信号の所定の値とを含み、
各情報に対し各ブロックを前記所定の値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置とに基づき、該観測サンプルで前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、
前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定に基づき前記接続呼において前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源を判定する二次判定ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項3】
請求項2記載の送信源判定プログラムにおいて、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロックであることを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項4】
請求項3記載の送信源判定プログラムにおいて、前記接続呼の一連の情報と呼の切断から接続までの非接続状態における時間区間を示す非接続呼の一連の情報とは交互に呼情報記録部に記録され、前記所定の信号はセル識別信号であり、前記所定の値は信号対干渉雑音エネルギー比であり、前記観測サンプル取得ステップは、
前記呼情報記録部に記録された接続呼の各情報に対し、各ブロックから時間的相対値、セル識別信号及び信号対干渉雑音エネルギー比を取り出した整理用ブロックからなる整理用情報を作成する整理ステップと、
前記整理ステップで作成された各整理用情報に対し、整理用ブロックを信号対干渉雑音エネルギー比の大きい順に整列した観測サンプルを得る整列ステップと、
前記整列ステップで得られた各観測サンプルに対し、信号対干渉雑音エネルギー比が最大の整理用ブロックである最良ブロックの信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値以下の場合、該観測サンプルを接続呼から削除し、該最良ブロックの該信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値を越える場合、観測サンプルの該最良ブロックにおける時間的相対値と該観測サンプルの直前の観測サンプルの最良ブロックにおける時間的相対値との間の変化量を求める変化量計算ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項5】
請求項4記載の送信源判定プログラムにおいて、前記一次判定ステップは、接続呼の観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良ブロックに対応するパス検出機能である最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、
接続呼のすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記中継局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項6】
請求項5記載の送信源判定プログラムにおいて、前記二次判定ステップは、前記判定保留ステップで送信源を保留と判定された観測サンプルである判定保留観測サンプルに対し、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがある場合、該接続呼中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルより前の判定保留観測サンプルに対しては該最初の観測サンプルの一次判定結果とは逆の判定を適用し、該最初の観測サンプルより後の判定保留観測サンプルに対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する判定適用ステップと、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と所定の距離内にある場合、接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源を基地局と判定する基地局二次判定ステップと、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と前記所定の距離内にない場合、該接続呼の直前の非接続呼における各情報に対し前記観測サンプル取得ステップと同じ処理を行い、該非接続呼の各観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間以上である場合又は前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の他の閾値を超える場合は判定不可とし、
前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間未満である場合及び前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の他の閾値以下の場合、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値以上である場合は前記送信源を中継局と判定し、該変化量が該所定の閾値の負の値以下である場合は該送信源を基地局と判定し、該変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合は判定不可とする非接続呼判定ステップと、
前記非接続呼判定ステップで判定不可とされなかった場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として前記非接続呼判定ステップによる判定を適用する非接続呼判定適用ステップと、
前記非接続呼判定ステップで判定不可とされた場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として、該非接続呼より前の接続呼であって且つ最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源の判定が得られた最も近い観測サンプルに対する判定を適用する近接観測サンプル判定適用ステップと、
接続呼のすべての判定保留観測サンプルに対し判定又は判定の適用が終了していない場合、前記判定適用ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項7】
請求項2記載の送信源判定プログラムにおいて、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロック及び次に大きいブロックであることを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項8】
請求項1記載の送信源判定プログラムにおいて、前記一連の情報は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の測定情報から構成され、該一連の測定情報は測定情報記録部に記録され、各測定情報は、マルチパス中から最大電力を有する第1パスと次に大きい電力を有する第2パスとを分離検出する第1パス検出機能及び第2パス検出機能により各測定時刻において取得された各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを含み、
前記測定情報記録部に記録された各測定情報に対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける前記相対的遅延量と所定の閾値とに基づき該観測サンプルで第1パス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、
観測サンプルにおける第1パスの電力値と、該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値及び第2パスの電力値と、所定の電力差閾値とに基づき該観測サンプルにおいて第1パス検出機能が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求め、該入れ替わり判定と前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定とに基づき該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の再判定を行い、該観測サンプルにおける前記相対的遅延量と前記所定の閾値との比較と該再判定とに基づき、又は該比較と該観測サンプルにおける各パスの電力値の比較と該再判定とに基づき、該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルに対して行う二次判定ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項9】
請求項8記載の送信源判定プログラムにおいて、前記一次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記基地局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項10】
請求項9記載の送信源判定プログラムにおいて、前記二次判定ステップは、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値との差が第1電力差閾値より大きく且つ第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第2パスの電力値との差の絶対値が第2電力差閾値より小さい場合、該観測サンプルの時点において第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源に入れ替わりが発生したという判定を行う入れ替わり判定ステップと、
前記判定保留ステップで判定を保留とされた観測サンプルに対し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていた場合、該観測サンプルに対しては該一次判定結果と同一の判定を適用し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定された場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以降で最初に一次判定結果を得られた観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再判定ステップと、
前記再判定ステップにおいて、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていなかった場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以前で一次判定結果を得られた最も近い観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再々判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上でない場合、前記再判定ステップ又は前記再々判定ステップで観測サンプルに対し適用された判定を最終判定とする判定保留観測サンプル最終判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上である場合、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さい場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果の逆の判定を最終判定として観測サンプルに対し適用し、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さくない場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果を最終判定として観測サンプルに対し適用する最終判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記最終判定が終了していない場合、前記入れ替わり判定ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定プログラム。
【請求項11】
中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、コンピュータに、接続呼の区間では請求項1乃至7のいずれかに記載の送信源判定プログラムを実行させ、非接続呼の区間では請求項8乃至10のいずれかに記載の送信源判定プログラムを実行させるための送信源判定プログラム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の送信源判定プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項13】
中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、複数の時間帯に亘り複数のパス検出機能により取得された一連の情報に対し整列処理した一連の観測サンプルを求め、該一連の観測サンプルに対し所定のパス検出機能が受信した信号の送信源の仮判定を行い、一連の該仮判定に基づき観測サンプルに対する該所定のパス検出機能が受信した信号の送信源が基地局か中継局かの判定を行うことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項14】
請求項13記載の送信源判定方法において、呼の接続から切断までの接続状態における時間区間を示す接続呼は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された前記一連の情報から構成され、各情報は複数の前記パス検出機能毎に取得されたデータのブロックから構成され、各ブロックは所定のCDMA移動通信システムで定められた標準時刻を基準とする該データが取得された時間的相対位置と該データ中の所定の信号の所定の値とを含み、
各情報に対し各ブロックを前記所定の値に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける所定のブロックの時間的相対位置とに基づき、該観測サンプルで前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、
前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定に基づき前記接続呼において前記所定のブロックに対応するパス検出機能が受信した信号の送信源を判定する二次判定ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項15】
請求項14記載の送信源判定方法において、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロックであることを特徴とする送信源判定方法。
【請求項16】
請求項15記載の送信源判定方法において、前記所定の信号はセル識別信号であり、前記所定の値は信号対干渉雑音エネルギー比であり、前記観測サンプル取得ステップは、
各情報に対し、各ブロックから時間的相対値、セル識別信号及び信号対干渉雑音エネルギー比を取り出した整理用ブロックからなる整理用情報を作成する整理ステップと、
前記整理ステップで作成された各整理用情報に対し、整理用ブロックを信号対干渉雑音エネルギー比の大きい順に整列した観測サンプルを得る整列ステップと、
前記整列ステップで得られた各観測サンプルに対し、信号対干渉雑音エネルギー比が最大の整理用ブロックである最良ブロックの信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値以下の場合、該観測サンプルを接続呼から削除し、該最良ブロックの該信号対干渉雑音エネルギー比が所定の下限値を越える場合、観測サンプルの該最良ブロックにおける時間的相対値と該観測サンプルの直前の観測サンプルの最良ブロックにおける時間的相対値との間の変化量を求める変化量計算ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項17】
請求項16記載の送信源判定方法において、前記一次判定ステップは、接続呼の観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良ブロックに対応するパス検出機能である最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、
前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、
接続呼のすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記中継局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項18】
請求項17記載の送信源判定方法において、前記二次判定ステップは、前記判定保留ステップで送信源を保留と判定された観測サンプルである判定保留観測サンプルに対し、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがある場合、該接続呼中で一次判定結果を得られた最初の観測サンプルより前の判定保留観測サンプルに対しては該最初の観測サンプルの一次判定結果とは逆の判定を適用し、該最初の観測サンプルより後の判定保留観測サンプルに対しては一次判定結果を得られた最も近い前の観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する判定適用ステップと、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と所定の距離内にある場合、接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源を基地局と判定する基地局二次判定ステップと、
接続呼内で前記一次判定ステップによる一次判定結果を得られた観測サンプルがなく且つ情報を取得した地点が基地局と前記所定の距離内にない場合、該接続呼の直前の非接続呼における各情報に対し前記観測サンプル取得ステップと同じ処理を行い、該非接続呼の各観測サンプルに対し、該観測サンプルの最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間以上である場合又は前記変化量計算ステップで求められた変化量が所定の他の閾値を超える場合は判定不可とし、
前記観測サンプルと該観測サンプルの直前の観測サンプルとの間の時間差が所定時間未満である場合及び前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の他の閾値以下の場合、前記変化量計算ステップで求められた変化量が前記所定の閾値以上である場合は前記送信源を中継局と判定し、該変化量が該所定の閾値の負の値以下である場合は該送信源を基地局と判定し、該変化量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合は判定不可とする非接続呼判定ステップと、
前記非接続呼判定ステップで判定不可とされなかった場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として前記非接続呼判定ステップによる判定を適用する非接続呼判定適用ステップと、
前記非接続呼判定ステップで判定不可とされた場合、前記接続呼内の全ての判定保留観測サンプルに対し、最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源として、該非接続呼より前の接続呼であって且つ最良パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源の判定が得られた最も近い観測サンプルに対する判定を適用する近接観測サンプル判定適用ステップと、
接続呼のすべての判定保留観測サンプルに対し判定又は判定の適用が終了していない場合、前記判定適用ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項19】
請求項14記載の送信源判定方法において、前記所定のブロックは前記所定の信号の所定の値が最大となるブロック及び次に大きいブロックであることを特徴とする送信源判定方法。
【請求項20】
請求項13記載の送信源判定方法において、前記一連の情報は所定の時間単位で複数の時間帯に取得された一連の測定情報から構成され、該一連の測定情報は測定情報記録部に記録され、各測定情報は、マルチパス中から最大電力を有する第1パスと次に大きい電力を有する第2パスとを分離検出する第1パス検出機能及び第2パス検出機能により各測定時刻において取得された各パスの電力値と2つのパスの相対的遅延量とを含み、
各測定情報に対し各測定時刻に基づき整列処理した各観測サンプルを求める観測サンプル取得ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルにおける前記相対的遅延量と所定の閾値とに基づき該観測サンプルで第1パス検出機能が受信した信号の送信源の判定を一連の観測サンプルに対して行う一次判定ステップと、
観測サンプルにおける第1パスの電力値と、該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値及び第2パスの電力値と、所定の電力差閾値とに基づき該観測サンプルにおいて第1パス検出機能が受信した信号の送信源に入れ替わりが発生したか否かの入れ替わり判定を求め、該入れ替わり判定と前記一次判定ステップで行われた一連の観測サンプルに対する送信源の判定とに基づき該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の再判定を行い、該観測サンプルにおける前記相対的遅延量と前記所定の遅延量閾値との比較と該再判定とに基づき、又は該比較と該観測サンプルにおける各パスの電力値の比較と該再判定とに基づき、該観測サンプルに対する第1パス検出機能が受信した信号の送信源の最終判定を一連の観測サンプルに対して行う二次判定ステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項21】
請求項20記載の送信源判定方法において、前記一次判定ステップは、前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源について、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が所定の閾値以上である場合、前記送信源を基地局と判定する一次判定結果を得る基地局判定ステップと、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値の負の値以下である場合、前記送信源を中継局と判定する一次判定結果を得る中継局判定ステップと、
前記観測サンプルの前記相対的遅延量が前記所定の閾値未満且つ該所定の閾値の負の値より大きい場合、前記送信源を保留と判定する判定保留ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記判定が終了していない場合、前記基地局判定ステップへ戻って処理を繰り返す一次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項22】
請求項21記載の送信源判定方法において、前記二次判定ステップは、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルに対し、第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第1パスの電力値との差が第1電力差閾値より大きく且つ第1パスの電力値と該観測サンプルの直前の観測サンプルにおける第2パスの電力値との差の絶対値が第2電力差閾値より小さい場合、該観測サンプルの時点において第1パス検出機能が受信したセル識別信号の送信源に入れ替わりが発生したという判定を行う入れ替わり判定ステップと、
前記判定保留ステップで判定を保留とされた観測サンプルに対し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていた場合、該観測サンプルに対しては該一次判定結果と同一の判定を適用し、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定された場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以降で最初に一次判定結果を得られた観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再判定ステップと、
前記再判定ステップにおいて、前記入れ替わり判定ステップで入れ替わりが発生したと判定されず且つ観測サンプルの直前の観測サンプルで一次判定結果が得られていなかった場合、該観測サンプルに対しては該観測サンプル以前で一次判定結果を得られた最も近い観測サンプルの一次判定結果と同一の判定を適用する再々判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上でない場合、前記再判定ステップ又は前記再々判定ステップで観測サンプルに対し適用された判定を最終判定とする判定保留観測サンプル最終判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得された観測サンプルの前記相対的遅延量の絶対値が所定の閾値以上である場合、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さい場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果の逆の判定を最終判定として観測サンプルに対し適用し、第1パスにおける電力値が第2パスにおける電力値より小さくない場合は前記一次判定ステップで得られた一次判定結果を最終判定として観測サンプルに対し適用する最終判定ステップと、
前記観測サンプル取得ステップで取得されたすべての観測サンプルに対し前記最終判定が終了していない場合、前記入れ替わり判定ステップへ戻って処理を繰り返す二次判定繰返しステップとを備えたことを特徴とする送信源判定方法。
【請求項23】
中継局を用いた所定のCDMA移動通信システムで、接続呼の区間では請求項13乃至19のいずれかに記載の送信源判定方法を用い、非接続呼の区間では請求項20乃至22のいずれかに記載の送信源判定方法を用いることを特徴とする送信源判定方法。


【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図16】
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【図17】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−253560(P2009−253560A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97618(P2008−97618)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(301066730)株式会社弘栄 (3)
【Fターム(参考)】