説明

逆流防止弁

【課題】排水配管の流通性能の低下が少ない逆流防止弁を提供する。
【解決手段】逆流防止弁は、下流管の流路を開閉自在に塞ぐ弁体21と、弁体21を支持する支持体とを備えている。弁体21は、支持体に可動ピンを介して揺動可能に支持されている。弁体21は、略長円形状の板状体23を横方向に3分割してなる第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cと、各板状片23a,23b,23cの上流側の面に接着されたゴムシート24とを備えている。第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cは、ゴムシート24によって一体的に連結されている。弁体21は、閉鎖時には平板状になる一方、開放時には下流管の上部内壁の湾曲形状に沿って屈曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水配管内に設置される逆流防止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、民有地と公道との境界付近には、公共ますおよび公共雨水ますが埋設されており、家屋等の汚水および雨水は、それぞれ公共ますおよび公共雨水ますに集積された後、下水道本管(合流本管)に排出される。すなわち、家屋等から発生する汚水は、宅地内配管を介して公共ますに集められる。また、宅地内で地中に浸透した雨水は、雨水浸透ますに捕集され、雨水用配管を介して公共雨水ますに集められる。
【0003】
これら宅地内配管および雨水用配管は、汚水および雨水を自然流下させるために、下流側に向かって下方に傾斜している。また、公共ますと下水道本管とを接続する配管や、公共雨水ますと下水道本管とを接続する配管も、同様の理由により、下流側に向かって下方に傾斜している。
【0004】
ところで、豪雨の際や豪雨の後には、雨水がマンホールを介して下水道本管に多量に流入し、下水道本管内の水位が上昇する。このような場合には、下水道本管内の汚水が、各配管の傾斜に逆らって宅地側へ逆流することがある。そこで、配管(特に、公共ますと下水道本管とを接続する配管、または公共雨水ますと下水道本管とを接続する配管)内に逆流防止弁を取り付けることにより、汚水の逆流を防止する方法が提案されている。
【0005】
一般に、逆流防止弁は、上側の一部を支点として揺動する弁体を備えている。この弁体が揺動することにより、配管内の通路が開閉される。通常、排水配管は、円管によって形成されている。そのため、弁体は、配管の流路を塞ぐ関係上、円管形状に応じて円板状または楕円板状に形成されている。しかし、このように弁体が円板状または楕円板状に形成されているため、そのままでは開放時に弁体の幅広部が配管の内壁面に突き当たり、弁体を十分に開くことができなかった。
【0006】
ところが、弁体の開度が小さいと、弁体が流路の一部を塞ぐことになるため、汚水や雨水(以下、それらを総称して排水という)の流通抵抗が大きくなり、排水が円滑に流れにくくなる。また、排水に汚物等が含まれる場合、汚物等が弁体に引っ掛かることが懸念される。そこで、従来より、弁体をできるだけ大きく開けられるように工夫した逆流防止弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された逆流防止弁は、弁体を支持する筒形状の支持体を備えており、この支持体の下流側開口を縮径し、他の部分よりも小径に形成している。弁体は、この支持体の下流側開口を塞ぐように取り付けられている。このような構造により、弁体を小さくしても支持体の下流側開口を塞ぐことが可能となり、弁体を従来よりも小さく形成することができる。そのため、弁体が小さい分、弁体と配管の内壁面との干渉が抑制され、通常よりも弁体を大きく開くことが可能となる。
【特許文献1】実開昭61−84786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された逆流防止弁では、支持体の下流側開口を縮径させているため、その部分において流路面積が小さくなる。すなわち、配管の有効管径(汚水等を流通させるために実質的に有効な管径)が小さくなる。したがって、上記逆流防止弁では、弁体を大きく開くことができるものの、流通性能を十分に改善できるとは言い難かった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排水配管の流通性能の低下が少ない逆流防止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る逆流防止弁は、排水配管内に設置される逆流防止弁であって、板状体を横方向に分割してなる複数の板状片と、それら板状片の一方の面に固着された可撓性を有するシートとを有し、前記排水配管の流路を開閉自在に塞ぐ弁体と、前記排水配管内に設置され、横断面が下方に開いた略C字状の筒部を有し、前記弁体を支持する支持体と、前記弁体の上側を支点として前記弁体が揺動するように、前記弁体を前記支持体に軸支する支持機構と、を備え、前記筒部は、前記排水配管の内径よりも大径に形成されるとともに、縮径時に径方向外向きに広がる反発力を生じ、前記支持体は、前記排水配管内で前記筒部が径方向外向きに広がることによって前記排水配管の内周面に支持され、前記弁体は、閉鎖時には平板状になる一方、開放時には前記排水配管内の上面の湾曲形状に沿って湾曲または屈曲するものである。
【0011】
なお、ここでいう「排水配管」には、例えば汚水管や雨水管等が含まれる。
【0012】
上記逆流防止弁によれば、排水配管内に排水が流れてくると、弁体は排水の流れによって押し開かれる。この際、弁体は排水配管内の上面の湾曲形状に沿って湾曲または屈曲する。その結果、弁体自体を小さくしなくても、弁体は排水配管と略平行な位置まで開かれ、従来よりも大きく開かれることになる。したがって、排水配管の有効管径を大きくすることが可能となり、排水配管の流通性能の低下を抑制することができる。一方、排水配管内で排水が逆流しそうになった場合には、弁体は平板状の状態で排水配管の流路を閉鎖する。そのため、弁体は十分な面積を有することになり、排水配管をしっかりと封止することができる。したがって、排水の逆流を確実に防止することが可能となる。
【0013】
また、上記逆流防止弁によれば、上述の特性を有する弁体、すなわち、閉鎖時には平板状になり、開放時には排水配管内の上面の湾曲形状に沿って湾曲または屈曲する弁体を、簡単な構成で実現することができる。
【0014】
また、上記逆流防止弁によれば、排水配管内で筒部が径方向外向きに広がることによって、支持体は排水配管内に支持される。そのため、ねじ等の締結具や接着剤等を用いなくても、支持体を排水配管内に設置することができる。したがって、支持体の取り付けおよび取り外しが容易となり、逆流防止弁の交換を容易に行うことが可能となる。また、筒部は下方に開いた形状に形成されているので、筒部が排水配管の内周面に支持されているにも拘わらず、排水配管の管底部に段差は生じない。そのため、逆流防止弁を設けることによる流通性能の低下を更に抑制することができる。
【0015】
前記複数の板状片には、前記排水配管の中央側に位置する中央側板状片と、前記中央側板状片の左側に位置する左側板状片と、前記中央側板状片の右側に位置する右側板状片とが含まれ、前記シートは、前記左側板状片、前記中央側板状片、および前記右側板状片の上流側の面に固着され、前記中央側板状片の左側および右側には、下流側に行くに従って中央側に向かう傾斜面が形成され、前記左側板状片の右側には、下流側に行くに従って右側に向かう傾斜面が形成され、前記右側板状片の左側には、下流側に行くに従って左側に向かう傾斜面が形成され、前記弁体の閉鎖時に、前記中央側板状片の左側の傾斜面と前記左側板状片の傾斜面、ならびに、前記中央側板状片の右側の傾斜面と前記右側板状片の傾斜面は、それぞれ前記排水配管の長手方向に重なり合うことが好ましい。
【0016】
このことにより、弁体が平板状態から屈曲状態に移行する際には、左側板状片および右側板状片は、中央側板状片の左右の傾斜面に沿ってそれぞれ左右に折れ曲がる。逆に、弁体が屈曲状態から平板状態に移行する際には、左側板状片および右側板状片は、中央側板状片の左右の傾斜面に沿って移動し、中央側板状片と略面一の状態となる。このように、中央側板状体の左右の傾斜面が左側板状片および右側板状片の移動を案内するので、弁体の状態変化が円滑に行われる。
【0017】
前記シートは、前記複数の板状片によって形成される板状体よりも大径に形成されていることが好ましい。
【0018】
このことにより、閉鎖時にシートの周縁部が排水配管の内壁面と密着し、排水配管はシートによって確実に封止される。したがって、排水の逆流をより確実に阻止することができる。
【0019】
前記排水配管はますに接続され、前記支持体は、前記排水配管における前記ます側に設置され、前記逆流防止弁は更に、前記支持体に接続され、前記ますの内周面と接触することによって前記支持体を保持する保持具を備えていることが好ましい。
【0020】
上記逆流防止弁によれば、逆流水によって弁体に大きな圧力が加わったとしても、上記保持具が上記圧力に対向する力を付与するので、支持体が押し流されることをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、排水配管の流通性能の低下が少ない逆流防止弁を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る逆流防止弁1が取り付けられた下水道システムの構成を示す平面図である。図1において、符号2は家屋10内の汚水を集水する汚水ますを示し、符号3は、雨水ますまたは雨水浸透ます(以下、単に雨水ますという)を示している。各汚水ます2は、排水管4によって連結され、排水管4の端部は、宅地101と公道102との境界付近に設けられた公共ます6に接続されている。各雨水ます3は、雨水排水管5によって連結されており、雨水排水管5の端部は、宅地101と公道102との境界付近に設けられた公共雨水ます7に接続されている。公共ます6は、公道102に設けられた下水道本管100と合流管8を介して接続され、公共雨水ます7は、下水道本管100と雨水合流管9を介して接続されている。
【0024】
図1に示す下水道システムは、公共ます6内の汚水と、公共雨水ます7内の雨水とが、下水道本管100で合流する合流式下水道システムである。この合流式下水道システムにおいて、本実施形態に係る逆流防止弁1は、合流管8の公共ます6側端部、または、雨水合流管9の公共雨水ます7側端部に設置されている。ただし、逆流防止弁1の設置場所は、それらに限定される訳ではない。逆流防止弁1を排水管4または雨水排水管5に設置することも勿論可能である。以下、合流管8または雨水合流管9を単に下流管11(図2参照)と称し、下流管11が接続された公共ます6または雨水公共ます7を単にます12(図2参照)と称して、下流管11に設置された逆流防止弁1について説明する。
【0025】
図2は、下流管11に取り付けられた逆流防止弁1の縦断面図であり、図3は逆流防止弁1の平面図である。これら図2および図3に示すように、逆流防止弁1は、下流管11内のます12側端部に設置されている。逆流防止弁1は、下流管11内で当該下流管11の流路を開閉自在に覆う蓋状部材からなる弁体21と、弁体21を支持する支持体22とを備えている。図2に示すように、弁体21の上側部分は、可動ピン31を介して支持体22に揺動可能に支持されている。なお、符号13は、汚水または雨水をます12に導く上流管を示している。
【0026】
下流管11および上流管13の材料は特に限定されないが、本実施形態では、塩化ビニルによって形成されている。また、ます12も塩化ビニルによって形成されている。ただし、ます12の材料も何ら限定されず、例えば、コンクリートによって形成されていてもよい。
【0027】
図4に示すように、弁体21は、略長円形状の板状体23を横方向に3分割してなる第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cと、平板状のゴムシート24(図5(a)参照)とを備えている。ゴムシート24は可撓性および弾性を有しているが、板状片23a〜23cは、容易に変形しないように剛性を有していることが好ましい。板状片23a〜23cは、例えば塩化ビニル等によって形成される。図5(a)に示すように、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cの一方の面(具体的には、閉鎖時に上流側に位置する側の面)には、ゴムシート24が接着されている。これにより、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cは、ゴムシート24によって一体的に連結されている。ゴムシート24は、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cが形成する板状体23よりも大径に形成されている。
【0028】
板状体23を構成する第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cの内、中央部分に位置する第2板状片23bは、上流側(図5(a)の下側)が幅広に形成されている。一方、第1板状片23aおよび第3板状片23cは、下流側(図5(a)の上側)が幅広に形成されている。また、図4に示すように、第2板状片23bの上端部には、下流側に突出する2つの突起部28が設けられている。突起部28には、左右方向に延びる孔29(図2参照)が形成されている。
【0029】
図5(a)に示すように、第1板状片23aと第2板状片23bとは、互いに対向する傾斜面51,52をそれぞれ有している。これら傾斜面51,52は、下流側(図5(a)の上側)に行くに従って中央側に傾斜している。また、第2板状片23bと第3板状片23cとにも、互いに対向する傾斜面51,52が形成されている。第2板状片23bと第3板状片23cとの間に形成された傾斜面51,52も、下流側に行くに従って中央側に傾斜している。このような構成により、弁体21は、ゴムシート24側(上流側)には屈曲自在であるが(図5(b)参照)、板状体23側(下流側)には屈曲しないように構成されている。また、閉状態(弁体21の下端部が下流管11の下面と接触する状態)において、板状体23は、段差や凹凸のない一様な状態となる。さらに、開状態(図5(b)参照)の際に、第1板状片23aと第3板状片23cとが、第2板状片23bから過度に垂れ下がらなくなる。
【0030】
図2に示すように、支持体22は、下方に開いた断面略C字状の筒部25(図6も参照)を備えている。本実施形態では、筒部25の断面は、中心角が略270度の円弧形状に形成されている。筒部25は、撓み変形に伴って外径が変化するように構成されており、外部から力が加わっていない状態では、下流管11の内径よりも大径に形成されている。本実施形態では、筒部25は塩化ビニルによって形成されている。ただし、筒部25の材料は塩化ビニルに限定される訳ではない。筒部25の下流側開口部25bは、下流側に行くに従って下方に傾斜している。これにより、閉鎖時に弁体21を安定して支持することができる。
【0031】
図6に示すように、筒部25は、下流側開口部25bの上端部に、斜め下側に突出する突出部分25aを有している。当該突出部分25aには、下流側に突出する2つの突起部26が設けられている。突起部26には、横方向に延びる孔27が形成されている。図3に示すように、2つの突起部26の間には、第2板状片23bの2つの突起部28が挿入されている。そして、突起部26の孔27と突起部28の孔29とは、横方向に連続して連通孔を形成し、この連通孔には可動ピン31(図2参照)が挿入されている。可動ピン31は、弁体21の一部が下流管11の上面に接触する姿勢をとる開状態と、弁体21の一部が下流管11の下面に接触する姿勢をとる閉状態との間で、弁体21を支持体22に対し揺動自在に支持する。
【0032】
図2に示すように、支持体22の筒部25の上流側端部には、筒状体32が連結されている。筒状体32の下部開口部32aは、上部開口部32bよりも内径が僅かに大きくなっている。筒状体32には、上下方向に延びる支持パイプ34が嵌合されている。また、筒状体32と筒部25との間には、上方に開いた溝部35が形成されている。溝部35には、逆流水に対向する力を支持体22に付与する保持具40の連結部41が嵌め込まれている。
【0033】
保持具40は、ます12内に設置されている。図7(a)、(b)に示すように、保持具40は、略円弧形状の水平部分42aと水平部分42aの一端部に設けられた垂直部分42bとを有する一対の湾曲片42と、一対の湾曲片42の垂直部分42b同士を連結する連結部41とを備えている。これにより、保持具40は、平面視略C字状に形成されている。図3に示すように、連結部41は、支持パイプ34の外周面に沿って湾曲している。
【0034】
図7(a)、(b)に示すように、保持具40の水平部分42aの他端部(垂直部分42bが設けられている端部と異なる端部)には、径方向内向きに延びる板状片からなる持ち手43が形成されている。保持具40は、撓み変形によって外径が変化するように構成されており、外部から力が加わっていない状態では、ます12の内径よりも大径に形成されている。本実施形態では、保持具40は塩化ビニルによって形成されている。ただし、保持具40の材料は何ら限定されるものではない。
【0035】
以上が逆流防止弁1の構成である。次に、逆流防止弁1の弁体21の動作について説明する。
【0036】
上流管13からます12に流れ込んだ排水が下流管11側に流れる場合(通常時)には、弁体21は排水によって下流側に押され、可動ピン31を支点として揺動し、開かれる。一方、排水が下流管11側に流れていない場合には、弁体21は自重によって下方に揺動し、流路を閉鎖した状態となる。その結果、下水道本管100から上流管13に向かって悪臭が入り込むことが防止される。下水道本管100から下流管11内へ排水が逆流した場合(逆流時)には、弁体21は閉じた状態を維持し、排水の逆流を防止する。
【0037】
具体的には、通常時、ます12に流れ込んだ排水は、下流管11内に流入する。この際、弁体21は、可動ピン31により支持体22に揺動自在に取り付けられているため、排水の勢いにより、下流側方向(図8(a)に示す矢印F方向)に力を受けて、上方に押し開けられる(図8(a)参照)。
【0038】
ここで、弁体21は、ゴムシート24によって連結された第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cを備えている。そのため、弁体21は、ゴムシート24側(上流側)には屈曲自在であるが、板状体23側(下流側)には湾曲しない。このような性質により、弁体21が上方に押し開けられる際、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cは、下流管11の内周面の形状に合わせて屈曲する(図9参照)。これにより、弁体21は、下流管11の軸方向と略平行な角度にまで開かれる(図8(a)参照)。
【0039】
一方、逆流時は、下水道本管100内の排水が、下流管11内に流入する。この際、弁体21は、可動ピン31により支持体22に揺動自在に取り付けられているため、排水の勢いにより、上流側方向(図8(b)の矢印B方向)に力を受ける。上流側方向に力を受けた弁体21は、支持体22に当接するまで移動し、支持体22に押し付けられる(図8(b)参照)。これにより、弁体21は、支持体22の下流側端部および下流管11を塞ぐこととなり、排水が逆流してます12内に流入することを防止する。
【0040】
このとき、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cによって構成される板状体23は、凹凸のない一様な状態となる。また、第2板状片23bは、上流側が幅広に形成されており、一方、第1板状片23aおよび第3板状片23cは、下流側が幅広に形成されている。そのため、第1板状片23aと第2板状片23bとは、下流管11の軸方向視において、少なくとも一部が重なった状態となる。また、第2板状片23bと第3板状片23cも、下流管11の軸方向視において、少なくとも一部が重なった状態となる。
【0041】
次に、逆流防止弁1の着脱の手順について説明する。
【0042】
始めに装着の手順について説明する。まず、支持体22の筒状体32に、支持パイプ34を嵌合する。そして、支持パイプ34の上端部を持ち、支持体22をます12内に挿入し、ます12内で下降させる。このとき、保持具40は取り外しておく。支持体22がます12内の下流管11に対峙する位置までくると、支持パイプ34をます12の中央部側に倒しながら支持体22を下流管11側に押し付け、支持体22の筒部25を下流管11内に押し込む。筒部25は、下流管11の内径よりも大径に形成されているため、弾性により径方向外側向きの力を生じ、下流管11内周面に密着する。
【0043】
支持体22の筒部25が下流管11内に挿入された後、保持具40を取り付ける。保持具40を取り付ける際、まず、持ち手43に指をかけ、2つの持ち手43を合わせるように図7(a)の矢印方向に力を加える。すると、保持具40の略円弧形状の水平部分42aが撓み、ます12の内周面の径よりも小径となる(以下、この状態を「縮径状態」と称する)。次に、縮径状態とした保持具40を、連結部41が支持体22の溝部35上に至るまで下降させる。このとき、連結部41により支持パイプ34を挟み込む様にして、連結部41を支持パイプ34に係合させる。そのうえで、連結部41を支持パイプ34の外周面上で摺動させ、支持パイプ34に沿って保持具40を下降させる。そして、連結部41が溝部35上まで至ると、連結部41を溝部35に嵌合する。その後、持ち手43を離し、保持具40を開放する。すると、保持具40には、縮径状態からもとの形状に復元しようとする反発力(弾性力)が働き、ます12内で、保持具40は径方向外側向きに広がる。これにより、保持具40は、ます12の内周面に密着することとなる。
【0044】
逆流防止弁1を取り外す作業は、装着の際と逆の手順により行う。つまり、まず、保持具40を取り外す。具体的には、保持具40の持ち手をつまみ、保持具40を縮径状態にして支持体22の溝部35から保持具40の連結部41を引き抜く。そして、縮径状態のまま、保持具40をます12から引き上げる。このとき、装着時と同様に、連結部41により支持パイプ34を挟み込む様にして、保持具40を上昇させる。
【0045】
保持具40を引き上げた後、筒部25を下流管11から取り外す。まず、支持パイプ34をます12の中央部側に倒しながら、支持体22の筒部25を下流管11内から取り外す。筒部25が下流管11内から外れた後、支持パイプ34を持ち上げて弁体21および支持体22を引き上げる。これにより、脱着作業が終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る逆流防止弁1の弁体21は、下流側には屈曲自在であるが、上流側には屈曲しない。そのため、上流側から下流側に向かって排水が流れてきた場合(通常時)には、弁体21は排水によって押し開かれ、下流管11の上部内壁に沿って屈曲する。例えば、弁体21は、下流管11の上部内壁と接触し、当該上部内壁から力を受けて屈曲する。これにより、弁体21は下流管11と略平行な位置まで開くことが可能となり、下流管11の有効管径を大きくすることが可能となる。一方、排水が逆流してきた場合には、弁体21は上流側には屈曲しないため平板状となり、下流管11をしっかりと封止することができる。そのため、逆流を確実に防止することができる。したがって、本逆流防止弁1によれば、通常時の排水の流通性能を低下させることなく、排水の逆流を防止することが可能となる。
【0047】
本実施形態に係る弁体21は、略長円形状の板状体23を横方向に3分割してなる第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cと、これら第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cの一方の面に接着されたゴムシート24とを備えている。そのため、本逆流防止弁1によれば、上述の特性を有する弁体21、すなわち、開放時には下流管11の上部壁面の湾曲形状に沿って屈曲するが、閉鎖時には平板状となる弁体21を、簡単な構成により実現することができる。
【0048】
ゴムシート24は弾性を有しているので、弁体21が下流管11の上部内壁から離れると、ゴムシート24の弾性力によって弁体21は自動的に平板状態に戻る。したがって、閉鎖時に、下流管11の流路を確実に封止することができる。また、ゴムシート24の周縁部が下流管11の内壁と密着するので、悪臭の浸入をより確実に防止することができる。
【0049】
また、図5(a)に示すように、第1〜第3板状片23a〜23cの内、中央部分に位置する第2板状片23bは上流側が幅広に形成され、第1板状片23aおよび第3板状片23cは下流側が幅広に形成されている。さらに、第1〜第3板状片23a〜23cの内、隣り合う第1板状片23aと第2板状片23bとは、互いに対向する傾斜面51,52をそれぞれ有している。また、第2板状片23bと第3板状片23cとは、互いに対向する傾斜面52,51をそれぞれ有している。
【0050】
これにより、第1板状片23aと第2板状片23bとは、閉状態において、下流管11の軸方向視において、少なくとも一部が重なることになる。また、第2板状片23bと第3板状片23cも、閉状態において、下流管11の軸方向視において、少なくとも一部が重なることになる。さらに、閉状態において、板状体23は、段差や凹凸のない一様な状態になる。したがって、逆流防止弁1の弁体21によれば、逆流水に対し、より大きな対抗力を発揮することができる。また、上記傾斜面51,52により、弁体21の状態変化(屈曲状態と平板状態との間の状態変化)が円滑化される。
【0051】
さらに、本逆流防止弁1によれば、ゴムシート24は、第1板状片23a、第2板状片23bおよび第3板状片23cによって形成される略長円形状の板状体23よりも大径に形成されている。これにより、ゴムシート24によって下流管11はより確実に封止される。したがって、本逆流防止弁1によれば、より確実に排水の逆流を阻止することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、弁体21は複数の板状片23a〜23cとゴムシート24とによって形成されており、各板状片23a〜23cの間に隙間が生じない構成となっているため、逆流時の上流側への漏水や、上流側への悪臭の侵入を確実に防ぐことができる。
【0053】
本逆流防止弁1では、開状態において、弁体21は下流管11の軸方向と略平行となる。これにより、弁体21を、下流管11の軸方向と略平行な角度まで開くことが可能となり、下流管11の有効管径を大きくすることが可能となる。したがって、本逆流防止弁1によれば、通常時の排水の流通性能を低下させることなく、排水の逆流を防止することが可能となる。
【0054】
本逆流防止弁1の支持体22は、断面が略円弧形状であり下流管11の内径よりも大径に形成された筒部25を有している。また、筒部25は、下流管11内で、弾性により径方向外側向きの力を生じ、下流管11の内周面に密着する。したがって、簡単な構成により、着脱容易な逆流防止弁を実現することができる。
【0055】
支持体22の筒部25は、下方に開いた横断面略C字状に形成されている。また、支持体22は、筒部25が下流管11内で径方向外向きに広がることによって、下流管11の内壁に支持されている。したがって、ねじ等の締結具や接着剤等を用いなくても、支持体22を下流管11内に設置することができる。そのため、支持体22の取り付けおよび取り外しが容易となり、逆流防止弁1の交換を容易に行うことが可能となる。また、下流管11の底部に段差が生じないので、逆流防止弁1を設けることによる流通性能の低下を、更に抑制することができる。
【0056】
また、逆流防止弁1は、ます12の内側に嵌め込まれる保持具40を備えている。そのため、逆流水によって弁体21に大きな圧力が加わったとしても、保持具40が上記圧力に対向する力を付与するので、下流管11内における支持体22の位置ずれや脱落をより確実に防止することができる。なお、保持具40は、ます12の内周面と接触することによって支持体22の位置ずれや脱落を阻止するものであれば足り、その具体的形状は特に限定される訳ではない。保持具40として、例えば、ます12内に架け渡された棒状体等を用いることも可能である。
【0057】
本実施形態では、弁体21は複数の板状片23a〜23cとゴムシート24とによって形成されていた。しかし、弁体21は、閉鎖時には平板状になり、開放時には下流管11の上部内壁に沿って屈曲または湾曲するものであればよく、例えば、周方向に曲げられる柔らかい材料(例えば、ゴム等)で形成されていてもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、逆流防止弁1は、下流管11のます12側端部に設置されていた。しかし、逆流防止弁1の設置位置は上記のものに限られない。したがって、例えば、ます12の下流側の下流管11ではなく、上流管13(図2参照)のます12側端部に設置してもよい。また、排水管4の各汚水ます2側端部や雨水排水管5の各雨水ます3側端部に設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、排水配管内に設置される逆流防止弁について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る逆流防止弁が取り付けられた下水道システムの構成を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る逆流防止弁の縦断面図である。
【図3】本実施形態に係る逆流防止弁の平面断面図である。
【図4】図8(b)におけるA−A矢視図である。
【図5】(a)は、開状態時の弁体の断面図である。(b)は、閉状態時の弁体の断面図である。
【図6】支持体の平面図である。
【図7】(a)は、保持具の平面図である。(b)は、保持具の側面断面図である。
【図8】(a)は、開状態時の逆流防止弁の縦断面図である。(b)は、閉状態時の逆流防止弁の縦断面図である。
【図9】図8(a)におけるA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 逆流防止弁
11 下流管(排水配管)
21 弁体
22 支持体
23 板状片
23a 第1板状片(左側板状片)
23b 第2板状片(中央側板状片)
23c 第3板状片(右側板状片)
24 ゴムシート
25 筒部
31 可動ピン(支持機構)
40 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水配管内に設置される逆流防止弁であって、
板状体を横方向に分割してなる複数の板状片と、それら板状片の一方の面に固着された可撓性を有するシートとを有し、前記排水配管の流路を開閉自在に塞ぐ弁体と、
前記排水配管内に設置され、横断面が下方に開いた略C字状の筒部を有し、前記弁体を支持する支持体と、
前記弁体の上側を支点として前記弁体が揺動するように、前記弁体を前記支持体に軸支する支持機構と、を備え、
前記筒部は、前記排水配管の内径よりも大径に形成されるとともに、縮径時に径方向外向きに広がる反発力を生じ、
前記支持体は、前記排水配管内で前記筒部が径方向外向きに広がることによって前記排水配管の内周面に支持され、
前記弁体は、閉鎖時には平板状になる一方、開放時には前記排水配管内の上面の湾曲形状に沿って湾曲または屈曲する、逆流防止弁。
【請求項2】
前記複数の板状片には、前記排水配管の中央側に位置する中央側板状片と、前記中央側板状片の左側に位置する左側板状片と、前記中央側板状片の右側に位置する右側板状片とが含まれ、
前記シートは、前記左側板状片、前記中央側板状片、および前記右側板状片の上流側の面に固着され、
前記中央側板状片の左側および右側には、下流側に行くに従って中央側に向かう傾斜面が形成され、
前記左側板状片の右側には、下流側に行くに従って右側に向かう傾斜面が形成され、
前記右側板状片の左側には、下流側に行くに従って左側に向かう傾斜面が形成され、
前記弁体の閉鎖時に、前記中央側板状片の左側の傾斜面と前記左側板状片の傾斜面、ならびに、前記中央側板状片の右側の傾斜面と前記右側板状片の傾斜面は、それぞれ前記排水配管の長手方向に重なり合う、請求項1に記載の逆流防止弁。
【請求項3】
前記シートは、前記複数の板状片によって形成される板状体よりも大径に形成されている、請求項1または2に記載の逆流防止弁。
【請求項4】
前記排水配管は、ますに接続され、
前記支持体は、前記排水配管における前記ます側に設置され、
前記支持体に接続され、前記ますの内周面と接触することによって前記支持体を保持する保持具を備えている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の逆流防止弁。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−309030(P2007−309030A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141060(P2006−141060)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)