説明

透光パネルの作成方法

【課題】取り外された既設の透光パネルを外観的にも機能的にも好ましい状態にして実用に供するようにする総合的な透光パネルのリサイクルシステムを目指した、透光パネルの作成方法を提供する。
【解決手段】既設の透光パネル1を枠材2と透光性合成樹脂板3とに分解し、分解した枠材2と他の透光性合成樹脂板4とを組み合わせ、若しくは分解した透光性合成樹脂板3と他の枠材6とを組み合わせて、新たな透光パネル5,7を作成するため、再利用可能な部材を廃棄することなく有効に用いることで、有限な資源の有効利用を実施し、省資源・エネルギーに貢献することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等に沿って設置される防音壁を構成する周囲を枠材により枠組みされた透光パネルについて、リサイクルを考慮した透光パネルの作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等に沿って設置される防音壁に用いられる透光パネルについては、既設のパネルの取替え工事が行われた際に、取り外された透光パネルのほとんどは建設混合廃棄物として埋め立て等の処理がなされているのが実情であり、それを再利用して環境負荷の軽減や省資源・エネルギーに寄与することが望まれており、例えば特許文献1に記載されるような透光パネルに用いられるポリカーボネート樹脂積層板に関する提案がなされている。
【0003】
このポリカーボネート樹脂積層板は、ポリカーボネート樹脂からなる基板層と、この基板層の両面に被覆層の厚み(μm)×紫外線吸収剤濃度(重量%)=60〜600を満足する濃度で紫外線吸収剤を含むポリカーボネート樹脂からなる被覆層とから構成される防音壁用ポリカーボネート樹脂積層板であり、従前に用いられているアクリル樹脂を表面に被覆したポリカーボネート樹脂積層板と比べると、再溶融させて成形する際に、基板層のポリカーボネート樹脂と被覆層のアクリル樹脂とが非相容性のために発生する白濁が生じることなく、透明性、耐衝撃性、耐候性および難燃性に優れ、かつリサイクル使用しても透明性を損なわないポリカーボネート樹脂積層板となされている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−71832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の提案は、あくまでもポリカーボネート樹脂板のマテリアルリサイクルを想定したものであり、防音壁に用いられる透明パネルに関する総合的なリサイクルシステムを意図したものではない。
【0006】
本発明の目的は、取り外された既設の透光パネルを外観的にも機能的にも好ましい状態にして実用に供するようにする総合的な透光パネルのリサイクルシステムを目指した、透光パネルの作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る透光パネルの作成方法は、透光性合成樹脂板の周囲を枠材により枠組みされた透光パネルの作成方法であって、既設の透光パネルを枠材と透光性合成樹脂板とに分解し、分解した枠材と新品の透光性合成樹脂板又は他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせ、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既設の透光パネルを枠材と透光性合成樹脂板とに分解し、分解した枠材と新品の透光性合成樹脂板又は他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせ、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成するため、再利用可能な部材を廃棄することなく有効に用いることで、有限な資源の有効利用を実施し、省資源・エネルギーに貢献することができる。
【0009】
また本発明において、分解した枠材と他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせて、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成する場合において、分解した透光性合成樹脂板を、黄変度が日本工業規格JIS−K−7105に規定された測定で7以下であるものとしてよい。かようにすれば、作成された透光パネルを構成する透光性合成樹脂板を通して見える風景を曇りや色目の違和感無くほぼ自然のままに見ることができるものとなすことができる。
【0010】
更に本発明において、分解した枠材と他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせて、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成する場合において、分解した透光性合成樹脂板を、ポリカーボネート板とし、その分子量を20000以上のものとしてもよい。かようにすれば、紫外線等によって少なからず劣化した既設の透光パネルを分解したポリカーボネート板を用いて新たに作成した透光パネルであっても、機械的強度を満足し、衝撃により割れが発生することが殆どなく、再設置に耐え得る強度を有する透光パネルを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
すなわち、図1は本発明に係る透光パネルの作成方法の実施の一形態を示す説明図、図2イ)は本発明に係る透光パネルの作成方法における枠材の再利用可否を判断する流れを示すフロー図、図2ロ)は本発明に係る透光パネルの作成方法における透光性合成樹脂板の再利用可否を判断する流れを示すフロー図である。
【0012】
1は既設の透光パネルであり、2は既設の透光パネル1を構成する枠材、3は既設の透光パネル1を構成する透光性合成樹脂板である。枠材2は、好適には軽量且つ強度、耐食性に優れるアルミニウム合金や、その他、鉄等の金属やFRP樹脂等を用いた、断面円形、方形、多角形等の適宜形状の中空長尺型材から形成され、一側面には長さ方向に沿って開口部が形成され、前記透光性合成樹脂板3の端部が前記枠材2の開口部に挿入されて、透光性合成樹脂板3が枠材2に保持され、既設の透光パネル1が形成されるようになされている。
【0013】
前記透光性合成樹脂板3は一般には四角形状となされるが、その一辺のみが枠材1に保持されていてもよいし、上下又は左右の二辺が保持されていてもよく、又枠材2も四角形状に枠組みされ、透光性合成樹脂板3の四辺全てが枠材2により保持されていてもよい。
【0014】
前記透光性合成樹脂板3は、耐衝撃性にすぐれたポリカーボネート板が好適に用いられるが、アクリル樹脂や硬質のポリ塩化ビニル等、またはこれら等の複合体からなる適宜材質の透光性を有する合成樹脂板が用いられてよい。
【0015】
取り替え工事の際に取り外された既設の透光パネル1は分解されて、枠材2と透光性合成樹脂板3に分別される。そして、再利用可能な枠材2は、他の透光性合成樹脂板4と組み合わされて、その透光性合成樹脂板4の端部が枠材2の開口部に挿入・保持され、ブラインドリベットやネジ等適宜固定手段を用いて相互に固定し、新たな透光パネル5が作成される。使用される他の透光性合成樹脂板4は新品のもの、又は他の既設の透光パネルを分解して、選別の結果得られた使用の可能なものである。
【0016】
また、既設の透光パネル1を分解した透光性合成樹脂板3のうち、再利用可能なものは、他の枠材6と組み合わされて、透光性合成樹脂板3の端部がその枠材6の開口部に挿入・保持され、ブラインドリベットやネジ等適宜固定手段を用いて固定し、新たな透光パネル7が作成される。使用される他の枠材6は新品のもの、又は他の既設の透光パネルを分解して、選別の結果得られた使用の可能なものである。
【0017】
次いで、既設の透光パネル1を構成する枠材2と透光性合成樹脂板3との再利用可否を判断するフローについて説明する。まず図2イ)に示すように、枠材2については、変形・損傷の有無を確認(S1)する。そして、甚だしい変形・損傷が見られないものについては再利用し、それを用いて新たな透光パネルが組立て(S2)られ、甚だしい変形・損傷があるものについては、処理業者にて適切に処理(マテリアルリサイクル等)される。
【0018】
次に図2ロ)に示すように、透光性合成樹脂板3については、枠材2と同様に、変形・損傷の有無を確認(S3)する。そして、甚だしい変形・損傷があるものについては、処理業者にて適切に処理(マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル等)され、甚だしい変形・損傷が見られないものについては、日本工業規格JIS−K−7105に規定された黄変度測定(S4)を行う。
【0019】
そして、黄変度の測定値が7を超えるものについては、黄色が強く見えるため、透光性合成樹脂板2を通して見る風景の色目が実際と異なり、再利用には不適合と考えられ、黄変度の測定値が7以下のものを用いて新たな透光パネルを作成(S5)する。
【0020】
ここで、日本工業規格JIS−K−7105に規定された黄変度は、光電色彩計を用いて、試験片に標準の光を照射し、試験片の直径12mmの測定面積から透過する光を測定した三刺激値X,Y,Zから、次式によって算出される。
黄変度=100(1.28X−1.06Z)/Y−100(1.28X−1.06Z)/Y
(ここで、X,Y,Zは初期に測定した三刺激値を表す。)
【0021】
更に、上記黄変度測定に加えて、透光性合成樹脂板3の分子量測定を、再利用可否の判断に付加してもよい。曲げ強度、引張強度、衝撃強度と言った機械的強度と相関のある分子量を測定することで、透光性合成樹脂板3の機械的強度の面から再利用可否を判断できるため、より信頼性の高い部材を用いた透光パネルを作成することができ、好ましい。
【0022】
そして、透光性合成樹脂板3としてポリカーボネート板を用いる場合には、その分子量が20000を超えるポリカーボネート板であれば、衝撃を受けた際に割れ等の発生が低いと推定され、再利用に適していると考えられる。
【0023】
ここで、分子量の測定には、ゲル状の粒子を充填したカラムに高分子の希薄な溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの時間が異なることを利用した分子量の測定法であるGPC(Gel Permeation Chromatography)法が用いられる。すなわち、既設の透光パネル1を分解して透光性合成樹脂板3であるポリカーボネート板から分子量測定に必要な量の試料を採取し、その試料をメチレンクロライドやテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解させた溶液をカラムに流し、ポリカーボネート板の分子量を測定するのである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る透光パネルの作成方法は、既設の透光パネルを枠材と透光性合成樹脂板とに分解し、分解した枠材と新品の透光性合成樹脂板又は他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせ、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成するため、再利用可能な部材を廃棄することなく有効に用いることで、有限な資源の有効利用を実施し、省資源・エネルギーに貢献することができるリサイクルシステムを目指した透光パネルの作成方法として、好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る透光パネルの作成方法の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】イ)は本発明に係る透光パネルの作成方法における枠材の再利用可否を判断する流れを示すフロー図、ロ)は本発明に係る透光パネルの作成方法における透光性合成樹脂板の再利用可否を判断する流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0026】
1 透光パネル
2 枠体
3 透光性合成樹脂板
4 他の透光性合成樹脂板
5 新たな透光パネル
6 他の枠材
7 新たな透光パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性合成樹脂板の周囲を枠材により枠組みされた透光パネルの作成方法であって、既設の透光パネルを枠材と透光性合成樹脂板とに分解し、分解した枠材と新品の透光性合成樹脂板又は他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせ、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成することを特徴とする透光パネルの作成方法。
【請求項2】
分解した枠材と他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせて、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成する場合において、分解した透光性合成樹脂板は、黄変度が日本工業規格JIS−K−7105に規定された測定で7以下であることを特徴とする請求項1に記載の透光パネルの作成方法。
【請求項3】
分解した枠材と他の既設の透光パネルを分解した透光性合成樹脂板とを組み合わせて、若しくは分解した透光性合成樹脂板と新品の枠材又は他の既設の透光パネルを分解した枠材とを組み合わせて、新たな透光パネルを作成する場合において、分解した透光性合成樹脂板は、ポリカーボネート板からなり、その分子量は20000以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光パネルの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−239182(P2007−239182A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58858(P2006−58858)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】