説明

透光性導電性薄膜の作製方法

【課題】形成された透光性導電性薄膜におけるメッシュの線幅の変動を小さくすること。
【解決手段】透明支持体を挟んでハロゲン化銀感光性層とは反対側の最外層に中心平均粒径が0.1〜5μmのマット剤を含有するハロゲン化銀感光材料を用い、これをフォトマスクを介して露光して、現像、物理現像及び/またはメッキ処理することにより得られる透光性導電性薄膜を形成する透光性導電性薄膜の作製方法において、前記露光前に最外層に弾性シートを密着させることを特徴とする透光性導電性薄膜の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性導電性薄膜の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光性導電性薄膜は、近年の電子技術の進歩により様々な分野で使用されている。特に近年、その画像の鮮やかさから出荷数量が大きく伸びているプラズマディスプレイパネル(PDP)は、装置の構造上電磁波が発生するが、電磁波は人体への影響等を考慮し装置からの放出量を厳しく規制されている。従って、PDP装置は電磁波の漏洩防止を図る必要があり、電磁波防止フィルター(EMIフィルター)を付設することで電磁波の漏洩防止を図っている。
【0003】
ディスプレイ前面には画像を映し出すという、その特性から透明性の高いEMIフィルターが必要で、透明支持体に導電性メッシュを付加したEMIフィルターが採用されている。このEMIフィルターは必要な電磁波遮蔽能を有し、且つ非常に高い透明性を要求されるため30μm以下の線幅で形成された線を100〜500μmピッチで網目状に配したメッシュが採用されている。
【0004】
一般的にPDP前面用のEMIフィルターは、メッシュ状の繊維に導電性物質を付着させ透明基板上に載せたり、金属薄膜を付けた透明基板をエッチング加工してメッシュを作製したりして、透光性導電性薄膜を作製することで作製されている。近年では透過率を更に向上させる手段として細線化が検討され、ハロゲン化銀感光材料にメッシュ露光を行い、透光性導電性薄膜を作ることが考案されており、線幅は20μmから更には10μmへと細線化されている。
【0005】
このように線幅が細幅化されると、露光時のムラによる局部的な透過率の低下や電磁波遮蔽能の低下といった弊害が大きくなってくる。そのため、感光材料を画像状に露光する方法として、安価で出来るフォトマスクを利用した面露光で行う場合、密着性を上げる必要があった。
【0006】
そこで、密着性を上げる方法として、予め真空吸引してから露光する方法が記載されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、この方法では少しでも効果を上げるためには真空吸引をする時間を増やす必要があり、そのため生産性が低下する問題がある上に、真空吸引だけではどうしても中に空気が入り込んでしまい、十分な効果を発揮することができなかった。
【特許文献1】特開2007−41478号公報
【特許文献2】特開平09−269598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、フォトマスクとハロゲン化銀感光材料との密着性を上げることで、形成された透光性導電性薄膜におけるメッシュの線幅の変動を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0009】
1.透明支持体を挟んでハロゲン化銀感光性層とは反対側の最外層に中心平均粒径が0.1〜5μmのマット剤を含有するハロゲン化銀感光材料を用い、これをフォトマスクを介して露光して、現像、物理現像及び/またはメッキ処理することにより得られる透光性導電性薄膜を形成する透光性導電性薄膜の作製方法において、前記露光前に最外層に弾性シートを密着させることを特徴とする透光性導電性薄膜の作製方法。
【0010】
2.前記弾性シートのデュロメータ硬度がA10〜A60であることを特徴とする前記1に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。
【0011】
3.前記弾性シートをロール状のもので密着させることを特徴とする前記1または2に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。
【0012】
4.前記弾性シートを密着させた後、真空吸引して更に密着させることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、形成された透光性導電性薄膜におけるメッシュの線幅の変動を小さくすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
【0015】
本発明は、透明支持体を挟んでハロゲン化銀感光性層とは反対側の最外層に中心平均粒径が0.1〜5μmのマット剤を含有するハロゲン化銀感光材料(以後、単に感光材料とも言う)を用い、これをフォトマスクを介して露光して、現像、物理現像及び/メッキ処理することにより得られる透光性導電性薄膜を形成する透光性導電性薄膜の作製方法において、前記露光前に最外層に弾性シートを密着させることを特徴とする。
【0016】
従来、マスク露光の際にゴムシートを挟むことなく通常方法に従って真空吸引を行ってから露光していたが、密着性が悪く、遮蔽パターンの露光ムラが発生していた。この露光ムラは線幅が太い場合は問題が小さいが、線幅が細い場合は滲みにより遮蔽能が低下する原因となるため、密着ムラを改良する必要があった。そこで、真空吸引をしている間中、ローラーで上部から密着させるようにするものの、露光ムラ(遮蔽能ムラ)は解消できなかった。そこで、真空吸引前に硬度の低い弾性シートを挟んで、ローラーで予め中のエアを抜いてから真空吸引すると密着ムラが改良でき、露光ムラを改良することができた。
【0017】
更に感光材料を凹凸にするためにマット剤をハロゲン化銀感光性層とは支持体を挟んで反対側の最外層に添加することで、弾性シートへの貼りつきが軽減され、感光材料と弾性シートとの間に入り込んでしまった空気が抜けやすくなり、前述の効果との相乗で十分な効果を得ることが分かった。
【0018】
本発明に係る露光機は、所定の電磁波遮蔽パターンが形成されるマスク(フォトマスク、画像マスク)と感光材料とを密着させて電磁波遮蔽パターンを感光材料に焼き付ける密着焼付け装置で行うのが好ましく、更には露光前に真空にて吸引する装置が付いているものが好ましい。
【0019】
また、密着焼付け装置の簡単な構造としては、例えば、次のようなものが考えられる。内部に露光用光源が配置された筐体と、この筐体に設けられた透光板上に載置される、所定の画像パターンが形成された画像マスクがあり、感光材料を介して密着させるための蓋のようなものが付いている装置である。更に筐体と画像マスク、感光材料と蓋のようなもので囲まれた有効領域内を真空吸引するための減圧手段や押圧手段を備えることが好ましい。そのような場合は密着性を上げるためなら、蓋の材質は何でもよいが、例えば、弾性体であってもよい。
【0020】
また、このように蓋が弾性体の場合は、感光材料と蓋の間に本発明に記載されるように弾性シートを挟むのがよく、また蓋が弾性体の場合は弾性シートを挟んでもよく、また蓋が弾性シートに変わる構造であれば、それだけでもよい。なお、本発明で定義されるシートとは感光材料の全面を密着させる大きさ以上であればよく、必ずしも画像マスクと感光材料を覆い隠すような大きさでなくてもよい。更に、前述のように枠体にシート状に張られている状態であってもよい。
【0021】
本発明において、画像マスクと感光材料を密着させるローラーの材質はどんな材質でもよいが、平滑なものや硬いものが好ましい。また、ローラー密着させる位置として、画像マスクの上に置かれた感光材料の更に上に別途弾性シートを置いて、その上からローラー密着させてもよいし、前述のように枠体に張られた弾性シート状の蓋の場合は、その上からローラー密着させてもよい。
【0022】
本発明に係る弾性シートの材質は、大ひずみ弾性特性に優れると共に引っ張り永久ひずみ性が少ない材質が好ましく、例えば、クロロプレン系もしくはクロロエチレン系等の合成ゴムが挙げられる。また、弾性シートの厚みは通常の状態において、例えば、1〜3mmであることが好ましい。これにより確実に可変形性を有するものとして構成される。
【0023】
また、本発明に係る弾性シートはロール状であることが好ましく、デュロメータ硬度はA10〜A60、更に好ましくはA20〜A50である。なお、デュロメータ硬度はJIS−K−6253に記載されている方法で測定することができる。
【0024】
〔透明支持体〕
本発明に係る透明支持体は可視領域で透明性を有し、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、可撓性を有する樹脂フィルムは取り扱い性が優れており、ロールで取り扱うことができることなどから特に好ましく用いられる。
【0025】
透明性樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン酸樹脂、ポリエーテルスルフォン酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、等からなる厚さ30〜300μmの単層フィルムまたは前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0026】
〔ハロゲン化銀乳剤含有層〕
本発明に係る透光性導電性薄膜を形成するハロゲン化銀感光材料においては、後述する感光性ハロゲン化銀及びバインダーを含有するハロゲン化銀乳剤含有層が透明支持体上に設けられる。
【0027】
感光性ハロゲン化銀の含有量は、銀換算で0.05g/m2以上3g/m2未満である態様が好ましく、特に好ましくは銀換算で0.3g/m2以上1g/m2未満である態様である。感光性ハロゲン化銀の含有量が0.05g/m2未満の場合、電磁波遮蔽性能を十分に得ることが困難になりやすい。これは、後述する物理現像または金属メッキ処理の触媒となる現像銀核の量が不十分となり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるためと推定される。
【0028】
感光材料のバインダー量は10mg/m2以上0.2g/m2以下の場合が、導電性と被膜物性の両立という観点から特に好ましい態様である。バインダー量が10mg/m2未満の場合、バインダーに対するハロゲン化銀の量が相対的に多くなるため、被膜が脆弱になりやすく、十分な被膜強度を維持することが困難となる。また、バインダー量が0.2g/m2より多い場合には、感光性ハロゲン化銀粒子の粒子間距離が大きくなるため、現像銀ネットワークが形成されにくくなり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるとともに温度、湿度変化に対する耐久性も不十分となる。
【0029】
〔ハロゲン化銀粒子〕
本発明に係るハロゲン化銀感光材料において用いられるハロゲン化銀粒子の組成は、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものであってもよい。
【0030】
ハロゲン化銀粒子が現像され金属銀粒子になった後の表面比抵抗を下げ、電磁波を効率的に遮蔽するためには、現像銀粒子同士の接触面積ができるだけ大きくなる必要がある。そのためには表面積比を高めるためにハロゲン化銀粒子サイズが小さい程よいが、小さすぎる粒子は凝集して大きな塊状になりやすく、その場合接触面積は逆に少なくなってしまうので最適な粒子径が存在する。
【0031】
ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、球相当径で0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.3μmである。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径を表す。ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、ハロゲン化銀粒子の調製時の温度、pAg、pH、銀イオン溶液とハロゲン溶液の添加速度、粒子径コントロール剤(例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、テトラザインデン化合物類、核酸誘導体類、チオエーテル化合物類等)を適宜組み合わせて制御することができる。
【0032】
ハロゲン化銀乳剤を塗布するに際しては、塗布銀量(g/m2)を粒径(μm)で除した値が6以上25以下となる態様が好ましい。比較的粒径の小さい感光性ハロゲン化銀を多量に用いた場合にこの値が25より大きくなりやすく、この場合、フィルム断裁時のエッジ部分において、被膜からハロゲン化銀粒子の滑落などが生じやすくなる傾向にある。また、比較的粒径の大きい感光性ハロゲン化銀を少量用いた場合に、この値が6より小さくなりやすく、この場合、単位面積中の感光性ハロゲン化銀の粒子個数が少なくなるため、導電性が低下しやすい傾向となるためである。
【0033】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、3角形平板状、4角形平板状等)、8面体状、14面体状等、様々な形状であることができる。感度を高くするためにアスペクト比が2以上や4以上、更に8〜16であるような平板粒子も好ましく使用することができる。粒子サイズの分布には特に限定はないが、露光によるパターン形成時にパターンの輪郭をシャープに再現させ、高い導電性を維持しながら透明性を高めるという観点からは狭い分布が好ましい。感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0034】
変動係数=S/R
式中、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。
【0035】
ハロゲン化銀粒子は、更に他の元素を含有していてもよい。例えば、ハロゲン化銀乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特に鉄イオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオンやイリジウムイオン等の第8〜10族金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。
【0036】
これらの金属イオンは、塩や錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等を挙げることができる。具体的な化合物の例としては、臭化ロジウム酸カリウムやイリジウム酸カリウム等が挙げられる。
【0037】
ハロゲン化銀に含有される前記金属イオン化合物の含有率は、ハロゲン化銀1モル当たり10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることが更に好ましい。
【0038】
ハロゲン化銀粒子に上述の金属イオンを含有させるためには、ハロゲン化銀粒子形成工程において、該金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後等、物理熟成中の各工程における任意の場所で添加すればよい。また、添加においては、重金属化合物の溶液を粒子形成工程の全体、あるいは一部に亘って連続的に行うことができる。
【0039】
更に感度を向上させるため、ハロゲン化銀乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金、パラジウム、白金増感等の貴金属増感、無機イオウ、または有機イオウ化合物によるイオウ増感等のカルコゲン増感、塩化錫、ヒドラジン等還元増感等を利用することができる。
【0040】
また、ハロゲン化銀粒子には分光増感を施すことが好ましい。好ましい分光増感色素としては、シアニン、カルボシアニン、ジカルボシアニン、複合シアニン、ヘミシアニン、スチリル色素、メロシアニン、複合メロシアニン、ホロポーラー色素等を挙げることができ、当業界で用いられている分光増感色素を単用、あるいは併用して使用することができる。
【0041】
特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、及び複合メロシアニン色素である。これらの色素類には、その塩基性異節環核として、シアニン色素類に通常利用される核のいずれをも通用できる。即ち、ピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核及びこれらの核に脂環式炭化水素環が融合した核、及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ちインドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核等である。これらの核は、炭素原子上で置換されてもよい。
【0042】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核等の5から6員異節環核を適用することができる。
【0043】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組み合わせを用いてもよい。増感色素の組み合わせは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0044】
これらの増感色素をハロゲン化銀乳剤中に含有せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、プロパノール、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤へ添加してもよい。
【0045】
また、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22089号の各公報に記載のように、酸または塩基を共存させて水溶液としたり、米国特許第3,822,135号、同4,006,025号の各明細書に記載のようにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤へ添加してもよい。また、フェノキシエタノール等の実質上水と非混和性の溶媒に溶解した後、水または親水性コロイドに分散したものを乳剤に添加してもよい。特開昭53−102733号、同58−105141号の各公報に記載のように親水性コロイド中に直接分散させ、その分散物を乳剤に添加してもよい。
【0046】
〔バインダー〕
本発明に係るハロゲン化銀乳剤含有層において、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、且つハロゲン化銀粒子を支持体上に担持し、ハロゲン化銀乳剤含有層と支持体の接着性を確保する目的でバインダーを用いる。用いることができるバインダーには、特に制限がなく、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれも用いることができるが、現像性向上の観点からは、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0047】
感光材料にはバインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じてゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0048】
〔硬調化剤〕
本発明に係る透光性導電性薄膜においては、エッジが明瞭な導電性パターンを描くために、感光材料は硬調である態様が好ましく、その方法として、塩化銀含有量を高くして粒径の分布を狭くする方法、あるいはヒドラジン化合物やテトラゾリウム化合物を硬調化剤として使用することが好ましい。ヒドラジン化合物は−NHNH−基を有する化合物であり、代表的なものを下記一般式(1)で示す。
【0049】
一般式(1) T−NHNHCO−V、T−NHNHCOCO−V
式中、Tは各々置換されてもよいアリール基、ヘテロ環基を表す。Tで表されるアリール基はベンゼン環やナフタレン環を含むもので、この環は置換基を有してもよく、好ましい置換基として直鎖、分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ドデシル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数2〜21のメトキシ基、エトキシ基等)、脂肪族アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜21のアルキル基を持つ、アセチルアミノ基、ヘプチルアミノ基等)、芳香族アシルアミノ基等が挙げられ、これらの他に、例えば、上記のような置換または未置換の芳香族環が−CONH−、−O−、−SO2NH−、−NHCONH−、−CH2CH=N−、等の連結基で結合しているものも含む。Vは水素原子、置換されてもよいアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル、トリフロロメチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(ピリジル基、ピペリジル基、ピロリジル基、フラニル基、チオフェン基、ピロール基等)を表す。
【0050】
上述のヒドラジン化合物は、米国特許第4,269,929号明細書の記載を参考にして合成することができる。ヒドラジン化合物はハロゲン化銀粒子含有層中、またはハロゲン化銀粒子含有層に隣接する親水性コロイド層中、更にはは他の親水性コロイド層中に含有せしめることができる。
【0051】
特に好ましいヒドラジンの化合物を下記に挙げる。
【0052】
(H−1):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{〔4−(3−n−ブチルウレイド)フェニル〕}ヒドラジン
(H−2):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−3):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−4):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニルスルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(H−5):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−(4−クロロフェニル−4−フェニル−3−チア−ブタンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニル)ヒドラジン
(H−6):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジン
(H−7):1−(1−メチレンカルボニルピリジニウム)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジンクロライド。
【0053】
硬調化剤としてヒドラジンを使用するときに、ヒドラジンの還元作用を強化するためにアミン化合物またはピリジン化合物を好ましく用いることができる。ヒドラジン化合物の還元作用を促進するアミン化合物としては、分子中にピペリジン環またはピロリジン環が少なくとも1個、チオエーテル結合が少なくとも1個、エーテル結合が少なくとも2個あることが特に好ましい。
【0054】
ヒドラジンの還元作用を促進する化合物として、上述のアミン化合物の他にピリジニウム化合物やホスホニウム化合物も好ましく用いることができる。オニウム化合物は正電荷を帯びているため、負電荷に帯電しているハロゲン化銀粒子に吸着して、現像時の現像主薬からの電子注入を促進することにより硬調化を促進するものと考えられている。
【0055】
好ましいピリジニウム化合物は、特開平5−53231号、同6−242534号の各公報記載のビスピリジニウム化合物を参照することができる。特に好ましいピリジニウム化合物は、ピリジニウムの1位または4位で連結してビスピリジニウム体を形成しているものである。塩としては、ハロゲンアニオンとして塩素イオンや臭素イオン等が好ましく、他に4フッ化ほう素イオン、過塩素酸イオン等が挙げられるが、塩素イオンまたは4フッ化ほう素イオンが好ましい。
【0056】
ヒドラジン化合物、アミン化合物、ピリジニウム化合物、及びテトラゾリウム化合物はハロゲン化銀1モル当たり1×10-6〜5×10-2モル含有するのが好ましく、特に1×10-4〜2×10-2モルが好ましい。これらの化合物の添加量を調節して、硬調化度γを6以上にすることは容易である。
【0057】
これらの化合物は、ハロゲン化粒子を含む層または他の親水性コロイド層に添加して使用する。水溶性の場合には水溶液にして、水不溶性の場合にはアルコール類、エステル類、ケトン類等の水に混和しうる有機溶媒の溶液としてハロゲン化銀粒子溶液または親水性コロイド溶液に添加すればよい。また、これらの有機溶媒に溶けないときには、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等で0.01〜10μmの大きさの微粒子にして添加することができる。
【0058】
微粒子分散の方法は、写真添加剤である染料の固体分散の技術を好ましく応用することができる。例えば、ボールミル、遊星回転ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル等の分散機を使用して所望の粒子径にすることができる。分散時に界面活性剤を使用すると分散後の安定性を向上させることができる。
【0059】
〔マット剤〕
透明支持体を挟んでハロゲン化銀感光性層とは反対側の最外層に含有するマット剤の中心平均粒径は好ましくは0.5〜1.5μmであり、付量は好ましくは0.5〜3mg/m2、更に好ましくは1〜2mg/m2である。
【0060】
本発明に有用なマット剤は、無機微粒子でも有機高分子微粒子でもよいが、無機微粒子がより好ましい。
【0061】
本発明に有用な無機微粒子のマット剤としては、化学大辞典9(共立出版)312頁(昭和43年縮刷版第4刷)に記載されている無機化合物の構造のものを使用することができるが、例えば、無機微粒子としてはCaCO3、CaSO4、ZnS、BaSO4、MgCO3、CaF2、ZnO、ZnCO3、TiO2、SnO2、SiO2、Al23等を挙げることができ、これらの複合金属化合物であってもよい。
【0062】
例えば、SiO2はオルトケイ酸エチル(Si(OC254)を加水分解して含水シリカ(Si(OH)4)をつくり、更に含水シリカ単分散球とし、この含水シリカ単分散球を脱水化処理してシリカ結合を3次元的に成長させたものに形成することによって、シリカマット剤を作ることができる。本発明においては、特にシリカによるマット剤が好ましい。
【0063】
本発明に係るマット剤は、表面がアルコキシドで修飾されている無機微粒子であることが好ましい。このために、表面をアルコールで処理した無機微粒子が有用である。表面がアルコキシドが修飾されている無機微粒子は、水とアルコール中で合成後及び/または合成過程である粒径に達したところで中断させた後の乾燥工程で、例えば、300℃程度の温度を経て形成されたものである。また、無機微粒子形成後にアルコールを加え、300℃程度で処理してもよい。
【0064】
このように本発明に有用なマット剤は湿式で形成された無機微粒子で、形成後マット剤表面にアルコールが残存するものである。例えば、市販品のマット剤として、シーホスターKE−P50、同KE−P20、同KE−P30、同KE−40、同KE−50、同KE−P70、同KE−80、同KE−90、同KE−P100、同KE−P150(いずれも日本触媒(株)製)等を挙げることができる。また、同KE−E20、同KE−E30、同KE−E40、同KE−E50、同KE−E70、同KE−E80、同KE−E90、同KE−E150等(いずれも日本触媒(株)製)も挙げることができる。
【0065】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等を挙げることができるが、好ましくはメタノール及びエタノールであり、より好ましくはメタノールである。
【0066】
また、本発明において、前記無機微粒子(前記化学大辞典のもの)のマット剤の表面をメチル基、エチル基、プロピル基等が表面に存在するように表面処理したもの、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン等のカップリング剤、更にこれらの一部加水分解した化合物で、また上記メチル基、オクチルシランあるいはトリチルシリル基等で表面処理したもの、更に表面を化学修飾して疎水性基を表面に有するようにしてもよい。
【0067】
また、粒子製造時に触媒等が微量粒子表面に吸着や結合をしていてもよく、有機物で処理する場合の処理剤としては特に制限なく使用できる。
【0068】
また、上記マット剤は非多孔質のものが好ましく、非多孔質のマット剤ならば制限なく使用できるが、使用するバインダーとの相互作用が働くようなものを選ぶのがよい。しかも、吸水性の小さいものがよい。また、万が一搬送中に脱落した場合、あるいは砕けた場合でも、それらのマット剤同士が凝集し難いものが好ましい。
【0069】
本発明に有用な所望の粒子径を得るために、従来から知られている粒子調製法を用いることもでき、例えば、粉砕処理、分級操作等を施すことにより所望の平均粒経、粒度分布を調整できる。また、多孔質、非多孔質粒子についても、特開昭52−52876号公報の方法等、従来から知られている方法で得ることができる。
【0070】
また、マット剤として、有機高分子マット剤、特に架橋性高分子マット剤も好ましく使用できる。架橋性高分子マット剤は高弾性を有し、しかも砕け難いものであれば制限なく使用することができるが、硬い方が好ましい。例えば、メチルメタクリレート(主成分)/アルキルアクリレート/エチレングリコールジアクリレートの共重合体、あるいはスチレン(主成分)/アルキルアクリレート/ジビニルベンゼン共重合体等を挙げることができる。
【0071】
〔露光〕
本発明の対象となる露光に用いられる光源としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、電子線、X線等の放射線等が挙げられるが、紫外線または近赤外線を用いることが好ましい。更に露光には広い波長分布を有する光源を利用してもよく、波長分布の狭い光源を用いてもよい。
【0072】
可視光線は必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種または2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色あるいは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0073】
また、露光は種々のレーザービームを用いて行うこともできる。例えば、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、更にKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。
【0074】
レーザー光源としては、具体的には紫外半導体、青色半導体レーザー、緑色半導体レーザー、赤色半導体レーザー、近赤外レーザー等が好ましく用いられる。
【0075】
ハロゲン化銀乳剤含有層を画像状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた集光式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、面々接触露光、近接場露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。露光に用いられるレーザーの出力は、ハロゲン化銀粒子の感度、露光スピード、装置の光学系により異なるが、概ね数十μW〜5W程度である態様が好ましい。
【0076】
〔現像処理〕
本発明に係る透光性導電性薄膜に用いられるハロゲン化銀乳剤含有層を有する感光材料は露光した後、現像処理が行われる。現像処理は発色現像主薬を含有しない、所謂黒白現像処理であることが好ましい。
【0077】
現像処理液としては、現像主薬としてハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。また、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等レダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することもできる。
【0078】
また、現像処理液には、保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を適宜使用できる。
【0079】
現像処理で用いられる現像処理液は、画質を向上させる目的で画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチルベンゾトリアゾール等の含窒素ヘテロ環化合物を挙げることができる。
【0080】
露光後に行われる現像処理は、定着前物理現像を含むこともできる。ここで言う定着前物理現像とは、後述の定着処理を行う前に露光により潜像を有するハロゲン化銀粒子の内部以外から銀イオンを供給し、現像銀を補強するプロセスのことを示す。
【0081】
現像処理液から銀イオンを供給するための具体的な方法としては、例えば、予め現像処理液中に硝酸銀等を溶解しておき銀イオンを溶かしておく方法、あるいは現像液中にチオ硫酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のようなハロゲン化銀溶剤を溶解しておき、現像時に未露光部のハロゲン化銀を溶解させ、潜像を有するハロゲン化銀粒子の現像を補力する方法等が挙げられる。現像液中に予めハロゲン化銀溶剤を溶解しておく処方を用いた方が、未露光部でのカブリ発生によるフィルムの透過率低下を抑制できるため好ましい。
【0082】
現像処理においては、露光されたハロゲン化銀粒子の現像終了後に、未露光部分のハロゲン化銀粒子を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を行う。定着処理は、ハロゲン化銀粒子を用いた写真フィルムや印画紙等で用いられる定着液処方を用いることができる。定着処理で使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として、硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。
【0083】
定着剤の保恒剤としては、現像処理液で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0084】
続いて行う水洗工程に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール,2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0085】
これらの現像工程は、処理対象となるフィルムを連続的に搬送する機構を有する装置で行われることが処理効率の観点から好ましい。また、処理を行う装置に循環装置や濾過装置、更には補充装置を備えることは、仕上がり品質向上の観点から好ましい態様である。
【0086】
〔物理現像処理〕
本発明の対象となる透光性導電性薄膜に用いられるハロゲン化銀乳剤含有層を有する感光材料は、上述の現像処理によって形成された現像銀同士の接触を補助し、導電性を高めるために物理現像処理を行うことが好ましい。本発明において物理現像処理とは、現像処理中、あるいは処理後に予め感光材料中に含有されていない導電性物質源を外部から供給し、導電性を高める処理のことを指す。物理現像処理は、潜像を有するハロゲン化銀乳剤を含有する感光材料を銀イオンあるいは銀錯イオンと還元剤を含有する処理液に浸漬することで、これを施すことができる。
【0087】
物理現像の現像開始点が潜像核だけでなく、現像銀が物理現像開始点となった場合についても物理現像と定義される。銀イオンあるいは銀錯イオンの供給源は特に限定されるものではないが、硝酸銀水溶液などが好ましく用いられる。
【0088】
還元剤についても特に限定されるものではないが、ハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等、更にはアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等を用いることができる。
【0089】
また、物理現像液には錯化剤、pH緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤等を単独、または複数組み合わせて用いることもできる。
【0090】
物理現像処理においては、物理像液中に発生する過剰な金属銀を取り除きフィルムへの汚れ付着を防止するため物理現像液を入れた槽内の処理液を循環させる循環装置と、該循環装置に連結され過剰に生成したこれら銀粒子を除去するためのフィルトレーション装置を具備する構造が好ましく用いられる。
【0091】
その際、銀粒子を除去するため使用するフィルターは0.1〜30μmのメッシュであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜10μmである。また、循環量については、一定時間内の液循環量が物理現像液の総液量に対して0.05〜2.0Round/minであることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0Round/minである。Round/minは、1分当たりのタンク容量(物理現像液の総液量)に対する処理液の循環量の比率を指す。
【0092】
また、物理現処理は銀イオンと還元剤が混合されると時間の経過と共に還元された金属銀が生成し活性度が下がってくるので、時間の経過または処理したフィルムの量に合わせて、銀イオン、還元剤、その他構成成分等を単独または複数組み合わせて補充することは、連続処理においても活性度を維持し、仕上がり品質を均一に保つ観点から好ましい態様である。
【0093】
〔メッキ処理〕
メッキ処理には従来公知の種々のメッキ方法を用いることができ、例えば、電解メッキ及び無電解メッキを単独、あるいは組み合わせて実施することができる。中でも、メッキ効率が高く、不要な部分へのメッキ付着による透過率の低下が発生しにくい電解メッキを好ましく用いることができる。
【0094】
電解メッキに用いることができる金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、錫、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができるが、メッキ処理が比較的容易であり、且つ高い導電性を得やすいという観点から、電解銅メッキを用いることが特に好ましい。
【0095】
物理現像または金属メッキにより付与された金属量が、感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10倍以上100倍以下である態様が好ましい。この値は、物理現像または金属メッキを施す前後において、感光材料中に含有される金属を、例えば、蛍光X線分析などで定量することによって求めることができる。
【0096】
物理現像または金属メッキにより付与された金属量が、感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10倍未満である場合、導電性がやや低下する傾向となりやすく、また100倍より大きい場合には、導電性パターン部以外の不要な部分への金属析出による透過率の低下が生じやすい傾向となる。
【0097】
なお、物理現像及び/メッキ処理という記載は、物理現像またはメッキ処理の少なくとも一方の処理でもよいし、物理現像及びメッキ処理の両方を含んでもよいことを意味するが、物理現像及びメッキ処理の両方の処理を施すことが好ましい。
【0098】
〔酸化処理〕
本発明に係る透光性導電性薄膜に用いられるハロゲン化銀乳剤含有層を有する感光材料は、現像処理あるいは物理現像またはメッキ処理後に酸化処理を行うことができる。酸化処理により、不要な金属成分をイオン化して溶解除去することが可能となり、フィルムの透過率をより高めることが可能となる。
【0099】
酸化処理に用いる処理液としては、例えば、Fe(III)イオンを含む水溶液を用いて処理する方法、あるいは過酸化水素、過硫酸塩、過硼酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、過ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、有機過酸化物等の過酸化物を含む水溶液を用いて処理する方法など、従来公知の酸化剤を含有する処理液を用いることができる。酸化処理は、現像処理終了後からメッキ処理前の間に行われる態様が、短時間処理で効率的に透過率向上を行うことができるため好ましい態様であり、特に好ましくは物理現像終了後に行う態様である。
【0100】
〔黒化処理〕
本発明に係る透光性導電性薄膜に用いられるハロゲン化銀乳剤含有層を有する感光材料は、フィルム表面での外光反射を防止するという観点から、金属メッキ処理終了後に黒化処理を施すことが好ましい。このような黒化処理を施した透光性導電性薄膜を、例えば、PDPなどのディスプレイに用いた場合、外光反射によるコントラストの低下を軽減できるとともに、非使用時の画面の色調を黒く高品位に保つことができ好ましい。
【0101】
黒化処理の方法としては特に制限はなく、既知の手法を適宜、単独あるいは組み合わせて用いることができる。例えば、導電性パターンの最表面が金属銅からなる場合には、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムを含んでなる水溶液に浸漬して酸化処理する方法、あるいはピロリン酸銅、ピロリン酸カリウム、アンモニアを含んでなる水溶液に浸漬し、電解メッキを行うことにより、黒化処理する方法などを好ましく用いることができる。
【0102】
また、導電性パターンの最表層がニッケル−リン合金被膜からなる場合は、塩化銅(II)または硫酸銅(II)、塩化ニッケルまたは硫酸ニッケル、及び塩酸を含有する酸性黒化処理液中に浸漬する方法を好ましく用いることができる。
【0103】
また、上述の方法以外にも、表面を微粗面化する方法によっても黒化処理が可能であるが、高い導電性を維持するという観点からは、表面の微粗面化よりも酸化による黒化処理の方法が好ましい。
【0104】
〔透光性導電性薄膜の構成〕
本発明に係る透光性導電性薄膜は、高い透光性と高い電磁波遮蔽性能を付与するために、格子状の細線パターンを露光により描画し、次いで現像処理等を行うことで導電性の金属パターンを形成することが好ましい。上記導電性金属パターンとしては、直交するメッシュパターンである態様が好ましく、線幅は30μm以下、線間隔は100μm以上であることが好ましい。
【0105】
また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては線幅は30μmより広い部分を有していてもよい。また、画像を目立たせなくする観点からは導電性金属部の線幅は18μm未満が好ましく、15μm未満がより好ましく、14μm未満が更に好ましく、10μm未満が最も好ましい。
【0106】
導電性金属部は可視光透過率の点から開口率は85%以上が好ましく、90%以上が更に好ましく、92%以上が最も好ましい。開口率とはメッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は90%である。
【0107】
〔電磁波遮蔽層以外の機能性層〕
本発明に係る透光性導電性薄膜を、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)用の光学フィルターと組み合わせて使う場合には、ハロゲン化銀粒子層の下に近赤外吸収染料を含む層である近赤外線吸収層を設けることも好ましい。場合によっては近赤外線吸収層を支持体に対して、ハロゲン化銀粒子層のある側の反対側に設けることもできるし、ハロゲン化銀粒子層側と反対側の両方に設けてもよい。ハロゲン化銀を含むハロゲン化銀粒子層と支持体との間に近赤外線吸収層を設けること、あるいはハロゲン化銀粒子層からみて支持体の反対側に近赤外線吸収層を設けることができるが、支持体の一方側にすると同時に塗布ができるので前者の方が好ましい。
【0108】
近赤外線吸収染料の具体例としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物等が挙げられる。PDP用光学フィルターで近赤外線吸収能が要求されるのは、主として熱線吸収や電子機器のノイズ防止である。このためには、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素が好ましく、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、スクワリウム化合物系が特に好ましい。
【0109】
近赤外線吸収染料としては、ジイモニウム化合物は、IRG−022、IRG−040(以上、日本化薬株式会社製)、ニッケルジチオール錯体化合物は、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、SIR−152、SIR−162(以上、三井化学株式会社製)、フタロシアニン系化合物は、IR−10,IR−12(以上、日本触媒株式会社製)等の市販品を利用することができる。
【0110】
上記近赤外線吸収染料は、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルブチルケトン等のケトン溶媒、ジメチルスルホオキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルエーテル、トルエン等有機溶解して使用するか、後述する微粒子化機械で平均粒子径0.01〜10μmの微粒子にして塗布することが好ましく、添加量としては光学濃度が極大波長で0.05〜3.0濃度の範囲で使用するのが好ましい。
【0111】
なお、近赤外線吸収能を有する色素を色調補正層に含有させる場合、上記の色素のうちいずれか1種類を含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0112】
本発明に係る透光性導電性薄膜を、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)用の光学フィルターと組み合わせて使う場合には、PDPに用いられるネオンガスの輝線発光による色再現性の低下を防ぐために、この対策として595nm付近の光を吸収する色素を含有する態様が好ましい。
【0113】
このような特定波長を吸収する色素としては具体的には、例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系等の周知の有機顔料及び有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐候性が良好であることからフタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましく用いられる。
【0114】
透光性導電性薄膜をディスプレイ画面の保護等を目的として用いる場合には、反射防止層を設けることが好ましい。反射防止層としては、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に薄膜積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に薄膜積層させる方法等を用いることができる。
【0115】
前記透光性導電性薄膜において、導電性金属パターンを有する層に対して支持体を挟んだ反対側に反射防止層を形成する場合には、最初に反射防止層を形成した後に、プロテクトフィルムを貼り合わせ、その後導電性パターン層を形成する態様が好ましい。導電性パターンを先に形成した後に反射防止層を形成する場合、反射防止層と支持体の接着性を向上させるために行うプラズマ処理やコロナ処理の効率が低下しやすい傾向にあるため、反射防止層を最初に形成する態様が好ましい。
【0116】
また、反射防止層を先に形成した場合、該層が現像及びメッキ処理などにより劣化することを防止するという観点から、予めプロテクトフィルムを貼り合わせた後、導電性パターン層を形成する態様が好ましい。
【0117】
プロテクトフィルムは、一般的に市販されているプロテクトフィルムを用いることができるが、導電性パターン形成のための感光性ハロゲン化銀乳剤層を塗工しやすくするという観点から、フィルムの厚さは10μm以上100μm以下が好ましく、特に好ましくは20μm以上60μm以下である。10μm未満の場合、フィルムの剛性が著しく低下するためプロテクトフィルムの貼り合わせの作業効率が低下しやすく、また100μmより厚い場合、フィルムの巻き取り時に巻き取り皺などの故障が発生しやすくなるためである。
【0118】
プロテクトフィルムに用いられる粘着剤の種類には特に制限はないが、反射防止フィルムを変質させることなく、また剥離時に反射防止フィルムにダメージを与えないものが好ましく用いられる。このような観点から、アクリル系またはシリコン系の粘着剤が好ましく用いられる。また、その粘着力としては0.08〜0.6N/25mmであるものが好ましく用いられる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
実施例1
〔透光性導電性薄膜1の作製〕
《支持体の作製》
100μmの二軸延伸PET支持体の両面に12W・min/m2のコロナ放電処理を施し、下引き塗布液B−1を乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、その上に12W・min/m2のコロナ放電処理を施し、下引き塗布液B−2を乾燥膜厚0.06μmになるように塗布した。
【0121】
〈下引き塗布液B−1〉
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%) 50g
化合物(UL−1) 0.2g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレン尿素) 0.05g
水で仕上げる 1000ml
〈下引き塗布液B−2〉
ゼラチン 10g
化合物(UL−1) 0.2g
化合物(UL−2) 0.2g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
硬膜剤(UL−3) 1.0g
水で仕上げる 1000ml
【0122】
【化1】

【0123】
《ハロゲン化銀乳剤の調製》
反応容器内で下記溶液−Aを34℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて高速に撹拌しながら、硝酸(濃度6%)を用いてpHを2.95に調整した。引き続き、ダブルジェット法を用いて下記溶液−Bと下記溶液−Cを一定の流量で8分6秒間かけて添加した。添加終了後に、炭酸ナトリウム(濃度5質量%)を用いてpHを5.90に調整し、続いて下記溶液−Dと溶液−Eを添加した。
【0124】
〈溶液−A〉
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 18.7g
塩化ナトリウム 0.31g
下記溶液−I 1.59ml
純水 1246ml
〈溶液−B〉
硝酸銀 169.9g
硝酸(濃度6質量%) 5.89ml
純水にて317.1mlに仕上げる。
【0125】
〈溶液−C〉
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 5.66g
塩化ナトリウム 58.8g
臭化カリウム 13.3g
下記溶液−I 0.65ml
下記溶液−II 2.72ml
純水にて317.1mlに仕上げる。
【0126】
〈溶液−D〉
2−メチル−4ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン 0.56g
純水 112.1ml
〈溶液−E〉
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 3.96g
下記溶液−I 0.40ml
純水 128.5ml
〈溶液−I〉
界面活性剤:ポリイソプロピレンポリエチレンオキシジコハク酸エステルナトリウム塩の10質量%メタノール溶液
〈溶液−II〉
六塩化ロジウム錯体の10質量%水溶液
上記操作終了後に、常法に従い40℃にてフロキュレーション法を用いて脱塩及び水洗処理を施し、溶液−Fと防バイ剤を加えて60℃で良く分散し、40℃にてpHを5.90に調整して、最終的に臭化銀を10モル%含む平均粒子径0.09μm、変動係数10%の塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。
【0127】
〈溶液−F〉
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 16.5g
純水 139.8ml
《感光材料(片面)の作製》
上述のように下引層を施した支持体上に、前述のように調製したハロゲン化銀乳剤を0.5g/m2の塗布銀量となるように塗布を行った後、乾燥して感光材料を作製した。なお、感光材料の作製においては、硬膜剤(テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)をゼラチン1g当たり50mgの比率となるようにして添加した。
【0128】
また、塗布助剤として、界面活性剤(スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム)を添加し、表面張力を調整した。更に銀とゼラチンの質量比が0.5となるようにゼラチン量を調整した。ここで言う銀とゼラチンの質量比とは、塗工されているハロゲン化銀と等モルの銀の質量を塗工されているゼラチンの質量で除した値であり、前記塗布銀量は用いたハロゲン化銀乳剤の量を等モルの銀に換算した値で示した。
【0129】
《ハロゲン化銀乳剤層とは反対側のマット剤を含有する層の作製》
上記感光材料(片面)とは反対側の面に下記の下引層下層塗布液b−1を乾燥膜厚0.10μmになるように塗布した後、140℃で乾燥し、続いて下引層上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.05μmになるように塗布した後、ガイドロールで搬送しながら140℃で乾燥した。これを更にガイドロールで搬送しながら125℃で2分間熱処理し、室温に冷却してそれぞれを巻き取り、マット剤を含有する層を作製した。
【0130】
〈下引層下層塗布液b−1〉
アクリル系ポリマーラテックスC−1(固形分30%)25.6g、アクリル系ポリマーラテックスC−2(固形分30%)6.4g、SnO2ゾル(固形分10%)154g、化合物(UL−1)0.5g蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。なお、SnO2ゾルは、特開平10−59720号公報に記載の方法で合成したものである。
【0131】
(アクリル系ポリマーラテックスC−1の合成)
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、純水1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(スチレン14.3g、グリシジルメタクリレート28.5g、n−ブチルアクリレート26.5g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度30質量%のアクリル系ポリマーラテックスC−1を得た。
【0132】
(アクリル系ポリマーラテックスC−2の合成)
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、純水1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(スチレン19.3g、n−ブチルアクリレート7.1g、t−ブチルアクリレート25.0g、2−ヒドロキシメタクリレート20.0g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度30質量%のアクリル系ポリマーラテックスC−2を得た。
【0133】
〈下引層上層塗布液b−2〉
変性水性ポリエステルB−1(固形分濃度が18質量%)56.0g、化合物(UL−1)0.1g、シリカ(平均粒径1μm)0.3g、蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0134】
(変性水性ポリエステルB−1溶液の調製)
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、下記水性ポリエステルA−1溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−1溶液を調製した。
【0135】
(水性ポリエステルA−1の合成)
重縮合用の反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。
【0136】
その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し、最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、水性ポリエステルA−1を得た。水性ポリエステルA−1の固有粘度は0.33であった。
【0137】
(水性ポリエステルA−1溶液の調製)
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記水性ポリエステルA−1を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、15質量%の水性ポリエステルA−1溶液を調製した。
【0138】
《透光性導電性薄膜の作製》
上記方法により作製したハロゲン化銀感光材料に対して、露光機としてFL3S(ウシオ・ライティング株式会社製)を用い、図1に示すようにして、−20kPaの真空吸引圧力で60秒真空吸引した後、10秒間、線幅5μm・線ピッチ250μm、バイアス角40°、メッシュ交差角90のマスク画像を介して水銀灯光源で露光した。露光機の密着蓋が弾性シートになっている。
【0139】
露光を行ったハロゲン化銀感光材料をコニカミノルタエムジー株式会社製CDM−681現像剤、及びCFL−891定着剤を用いて、各々35℃、30秒の処理を行い、流水で90秒水洗した後、下記処方の物理現像液で30℃、10分間処理し、流水で90秒水洗した後、乾燥した。
【0140】
〈物理現像液処方〉
〔A液〕
純水 1000ml
クエン酸一水塩 20.57g
リン酸水素2ナトリウム 1.43g
ハイドロキノン 10.00g
28%アンモニア 3.12g
〔B液〕
純水 20ml
硝酸銀 0.77g
A液にB液を加え使用液とする。
【0141】
次いで、上記現像済みフィルムに対し下記メッキ液を用いて20℃で6.5A/dm2の電流を流し、電解銅メッキを行い、電磁波遮蔽能を有する縦800mm、横1200mmの透光性導電性薄膜1を作製した。
【0142】
〈メッキ液処方〉
純水 1000ml
硫酸銅5水塩 200g
硫酸(98%) 50g
塩酸(37%) 1g
〔透光性導電性薄膜2の作製〕
透光性導電性薄膜1の作製の作製において、平均粒径1μmのシリカの代わりに、平均粒径6μmのシリカを用いた以外は、同様にして透光性導電性薄膜2を作製した。
【0143】
〔透光性導電性薄膜3の作製〕
透光性導電性薄膜1の作製の作製において、平均粒径1μmのシリカを用いない以外は、同様にして透光性導電性薄膜3を作製した。
【0144】
〔線幅の変動幅評価〕
上記で作製した透光性導電性薄膜1、2、3について、100mm四方に裁断し、その中心にあるメッシュの線幅を測定し、測定した96点の上限値と下限値との差で表現した。つまり、この値が大きいほど変動幅が大きいことを示す。結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
表1より、本発明の透光性導電性薄膜1は、比較の透光性導電性薄膜2、3に対して、線幅の変動が小さいことが分かる。
【0147】
実施例2
実施例1で作製した透光性導電性薄膜1のハロゲン化銀感光材料を用いて、硬度A40、硬度A5及び硬度A90のゴムシートを図1の密着蓋とハロゲン化銀感光材料の間に入れて、ローラーで均一に密着させて、露光し、更に同様の処理を行って、透光性導電性薄膜4、5、6を作製した。実施例1と同様に線幅の変動幅評価を行った。
【0148】
【表2】

【0149】
表2より、透光性導電性薄膜4は最も良好な結果であり、透光性導電性薄膜5、6は実施例1の比較の透光性導電性薄膜2、3より良好であるが、ゴムシートの硬度のために透光性導電性薄膜4より劣る結果であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明に係るハロゲン化銀感光材料の露光を示す模式図である。
【符号の説明】
【0151】
1 密着蓋
2 ハロゲン化銀感光材料
3 フォトマスク
4 マット剤を含有する最外層
5 透明支持体
6 ハロゲン化銀乳剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体を挟んでハロゲン化銀感光性層とは反対側の最外層に中心平均粒径が0.1〜5μmのマット剤を含有するハロゲン化銀感光材料を用い、これをフォトマスクを介して露光して、現像、物理現像及び/またはメッキ処理することにより得られる透光性導電性薄膜を形成する透光性導電性薄膜の作製方法において、前記露光前に最外層に弾性シートを密着させることを特徴とする透光性導電性薄膜の作製方法。
【請求項2】
前記弾性シートのデュロメータ硬度がA10〜A60であることを特徴とする請求項1に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。
【請求項3】
前記弾性シートをロール状のもので密着させることを特徴とする請求項1または2に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。
【請求項4】
前記弾性シートを密着させた後、真空吸引して更に密着させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光性導電性薄膜の作製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−64654(P2009−64654A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231249(P2007−231249)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】