説明

透水性の評価方法

【課題】ルジオン試験の後に連続して測定が可能で、短時間に現場で透水性を定量的に評価することが可能な透水性の評価方法を提供する。
【解決手段】透水試験装置1を用いて評価対象区間12に水を圧入し、所定の圧力にする。水の供給を停止すると同時に、バルブ7を閉じて評価対象区間12内を閉鎖する。評価対象区間12内の所定の圧力から所定の度合いだけ低下するまでの経過時間Ttを測定する。また、複数の透水係数Kcを設定し、これらの各透水係数Kcにおける評価対象区間内の圧力と経過時間Tcとの関係を算出して、所定の度合いだけ低下するまでの経過時間Tcと各透水係数Kcとの関係を図示する。経過時間Ttに対応する透水係数Kcを図から読み取り、この値を評価対象区間内の透水係数Ktとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原位置で地盤の透水性を評価可能な透水性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地盤にグラウトを注入する前はグラウト装置を用いてルジオン試験を実施し、その地盤の透水係数を算出する。そして、この透水係数に基づいて、グラウトの注入方法、注入量、注入材料等の仕様を決定する。
【0003】
しかし、ルジオン試験で水の注入量を測定できない場合は、0(ゼロ)ルジオンと判定して透水性の定量的な評価を行うことなくグラウトの仕様を決定していたために、最適なグラウト注入が行われていない可能性があるという問題点があった。
【0004】
そこで、例えば、非特許文献1には、ボーリング孔内の深度方向に所定の間隔で設置される2台のパッカーと、両パッカーにて閉鎖された評価対象区間内に水を供給するためのポンプと、ポンプから吐出される水を評価対象区間内に送給するための供給管と、ポンプから供給される水の注入量を測定するための流量計と、ポンプから供給される水の注入圧を測定するための圧力計と、評価対象区間を閉鎖するためのバルブとを備えた透水試験装置を用いて透水試験を実施し、上記評価対象区間内の透水係数を算出する方法が開示されている。この方法は、ポンプから上記評価対象区間内に水を注入して評価対象区間内を所定の圧力にした後、注水を停止すると同時にバルブを閉じて、上記評価対象区間内の圧力の経時変化を測定し、この測定結果に基づいて、専門の技術者が逆解析等の専用の解析ツールを用いて透水係数を算出するものである。
【非特許文献1】NAGRA TECHNICAL REPORT 93−38,Hydraulic Packer Testing in the Wellenberg Boreholes SB1 and SB2,Methods and Field Results,February 1994,Solexperts AG,Schwerzenbach
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記専用の解析ツールを用いて透水係数を算出する方法は2日程度の日数がかかるので、透水試験後に一旦作業を中止しなければならず作業効率が悪いという問題点があった。したがって、透水性を評価するためには、人件費及び設備費等のコストがかかるうえに、工期も長くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、ルジオン試験の後に連続して透水試験を実施可能で、かつ、現場で短時間に、透水性を定量的に評価可能な透水性の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の透水性の評価方法は、地盤に削孔されたボーリング孔内に設置される1以上のパッカーと、前記パッカーにて閉鎖された評価対象区間内に水を供給するためのポンプと、前記ポンプから吐出される水を前記評価対象区間内に送給するための供給管と、前記ポンプから供給される水の注入量を測定するための流量計と、前記ポンプから供給される水の注入圧を測定するための圧力計とから構成されるグラウト装置の前記供給管に前記評価対象区間を閉鎖するためのバルブが取り付けられた透水試験装置により、前記ポンプから前記評価対象区間内に水を圧入する圧入工程と、前記透水試験装置により、前記バルブを閉止した後、前記評価対象区間内の圧力が所定の度合いだけ低下するまでの経過時間を測定する測定工程と、前記評価対象区間内の圧力が所定の圧力から前記所定の度合いだけ低下するまでの経過時間と前記評価対象区間の透水係数との関係を算出する算出工程と、前記算出した経過時間と透水係数との関係に基づいて、前記測定した経過時間に対応する前記透水係数を前記評価対象区間の透水係数とする透水係数取得工程とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
本発明による透水性の評価方法によれば、透水試験を実施する評価対象区間内の圧力が所定の圧力から所定の度合いだけ低下するまでの経過時間とその評価対象区間の透水係数との関係を算出する算出工程と、グラウト装置にバルブを取り付けた透水試験装置のポンプから評価対象区間内に水を圧入する圧入工程と、バルブを閉止して、評価対象区間の圧力が所定の度合いだけ低下するまでの経過時間を測定する測定工程と、上記算出した透水係数と経過時間との関係に基づいて、測定した経過時間に対応する透水係数を評価対象区間の透水係数とする透水係数取得工程とを備えるために、評価対象区間の透水係数を算出することが可能となる。
【0009】
また、予め透水係数と経過時間との関係を算出した後に、現場で評価対象区間内の圧力が所定の度合いだけ低下するまでの経過時間を測定し、上記算出した透水係数と経過時間との関係に基づいて測定した結果に対応する透水係数を評価対象区間の透水係数とするために、短時間で透水係数を取得することが可能となる。したがって、透水試験終了後、直ちにグラウトの注入方法、注入量及び注入材料等の仕様を決定することができるとともに、グラウト注入作業を開始することが可能となる。そして、この透水係数に基づいて、グラウト注入作業を実施するために、グラウト注入対象地盤に最適なグラウトを施工することが可能となる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記圧入工程では、前記評価対象区間内の圧力が前記所定の圧力となるまで水を圧入することを特徴とする。
【0011】
本発明による透水係数の評価方法によれば、評価対象区間内の圧力を所定の圧力と同じにすることにより、測定工程にて測定した結果から算出工程にて算出された経過時間と透水係数との関係に基づいて直ちに透水性を評価でき、透水試験を効率的に実施することが可能となる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記算出工程では、前記評価対象区間内の透水係数を複数設定し、前記各透水係数に対応する前記評価対象区間内の圧力の経時変化をそれぞれ算出し、前記算出した圧力の経時変化に基づいて、前記評価対象区間内の圧力が前記所定の度合いだけ低下するまでの経過時間と前記各透水係数との関係を図示することを特徴とする。
【0013】
本発明による透水性の評価方法によれば、評価対象区間内の透水係数を複数設定し、これらの各透水係数に対応する評価対象区間内の圧力の経時変化をそれぞれ算出し、この算出した圧力の経時変化に基づいて、評価対象区間内の圧力が所定の度合いだけ低下するまでの経過時間と各透水係数との関係を図示するために、現場で測定した経過時間に対応する透水係数をこの図から読み取って評価対象区間の透水係数とすればよいので、目視で容易に透水係数を取得することが可能となる。また、透水係数を誰でも容易に取得することができ、透水性を評価するための専門の作業員及び専門の解析ツールを必要としないために、人件費及び設備費等のコストを削減することが可能となる。
【0014】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記圧入工程では、段階的に水の注入圧力を増加させるルジオン試験を実施することを特徴とする。
【0015】
本発明による透水性の評価方法によれば、ルジオン試験後に本発明による透水試験を実施する際は、透水試験装置の入れ替え作業を行うことなく、透水試験を実施することが可能となる。そして、透水試験終了後、透水試験装置を使用してグラウト注入作業を実施することができるために、透水試験装置をグラウト注入装置に入れ替える作業を行うことなくグラウト注入作業を実施することが可能となる。したがって、透水試験からグラウト注入までの一連の作業を効率的に実施することが可能となる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記ルジオン試験を実施して、このルジオン試験で透水係数を求められない場合に前記測定工程及び前記透水係数取得工程を実施することを特徴とする。
【0017】
本発明による透水性の評価方法によれば、従来のルジオン試験では透水性を評価することができなかった低透水区間の透水係数を取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の透水性の評価方法及び透水係数の算出方法を用いることにより、ルジオン試験では透水性を評価することができない低透水性地盤の透水性を定量的に短時間で評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る透水性の評価方法及び透水係数の算出方法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、透水試験装置1は、一般的なグラウト装置3にバルブ7を取り付けたものである。グラウト装置3は、ボーリング孔9内に設置されるパッカー11と、このパッカー11にて閉鎖された評価対象区間12内に水を供給するためのポンプ13と、ポンプ13から吐出される水を評価対象区間12内に送給するための供給管5と、ポンプ13から供給される水の注入量を測定するための流量計15と、ポンプ13から供給される水の注入圧を測定するための圧力計17とから構成される。
バルブ7を閉止すると供給管5内の水、気体等の流体の移動が抑止されて評価対象区間12が閉鎖される。
本実施形態において、パッカー11の下端からボーリング孔9の孔底までの長さ、ボーリング孔9の孔径はそれぞれ、例えば、5.0m、0.075mとした。
【0021】
この透水試験装置1を用いた評価対象区間12の透水性の評価方法について以下に説明する。
図2は、評価対象区間12の透水性評価方法のフローを示す図である。また、図3は、グラウト装置3を用いたルジオン試験時における評価対象区間12内の圧力経時変化を示す図である。なお、本実施形態においては、評価対象区間12内の静水圧が、例えば、0.4905MPaであったものとする。
【0022】
図2のステップS1において、図3に示すように、評価対象区間12内に注入する水の注入圧力を0.4905MPa(有効圧力0MPa)から2.4905MPa(有効圧力2.0MPa)まで段階的に増加させて評価対象区間12内の圧力を所定時間一定にするとともに、評価対象区間12内に注入する水の量を測定するルジオン試験を実施する。ルジオン試験は「地盤調査の方法と解説」(「地盤調査の方法と解説」社団法人地盤工学会、平成16年6月1日発行)に記載されている方法にしたがって行う。評価対象区間12内の圧力を一定状態にした各段階で水の注入量を測定できなかった場合は、最大注入圧力(2.4905MPa)の試験後にポンプ13を停止して水の供給を停止すると同時に、ステップS2において、バルブ7を閉じて(以下、シャットインという)評価対象区間12内を閉鎖する。
【0023】
なお、本実施形態においては、ルジオン試験の注入圧力を0.4905MPa(有効圧力0MPa)から2.4905MPa(有効圧力2.0MPa)までとしたが、この圧力の幅に限定されるものではなく、現場の地下水位等の条件により適宜変更する。
【0024】
次に、ステップS3において、シャットイン時の評価対象区間12内の圧力が2.4905MPaから所定の度合いだけ低下するまでの経過時間Ttを測定する。
【0025】
なお、ステップS1が本発明の圧入工程に相当し、ステップS2及びステップS3が本発明の測定工程に相当する。
【0026】
ここで、図4は、シャットイン後の評価対象区間12内の圧力の経時変化を示す図である。図4に示すように、シャットイン後の評価対象区間12内の圧力は、評価対象区間12内の水が少しずつ地盤内に浸透するために徐々に低下する。本実施形態においては、圧力計の特性を考慮して所定の度合いを有効圧力2.0MPaの90%として、評価対象区間12内の圧力が2.4905MPaから1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Ttを測定した。そして、測定した経過時間Ttに基づき、上記ルジオン試験前又は試験中に算出した経過時間Tcと透水係数Kcとの関係(ステップS4及びステップS5にて算出。詳細は後述する。)に基づいて、ステップS6において、評価対象区間12の透水係数Ktを求める。なお、ステップS6が本発明の透水係数取得工程に相当する。
【0027】
なお、本実施形態においては、所定の度合いを有効圧力の90%にした場合について説明したが、この値に限定されるものではなく、圧力の低下の度合いはシャットイン時の評価対象区間12内の圧力、地質状況、工期等の現場条件や圧力計の特性等の設備条件により適宜変更する。
【0028】
以下に、経過時間Tcと透水係数Kcとの関係を算出する方法について説明する。
ステップS4において、まず、地質調査結果、ボーリング孔9の掘削状況、ボーリング孔9内の水位回復状況等の現場状況に基づいて概略の透水係数Kcの値を推測し、この値を中心として10(m/s)程度の幅で最小値及び最大値を設定して、この最小値と最大値との間を等間隔に分割して複数の透水係数Kcを設定する。本実施形態においては、例えば、概略の透水係数Kcの値を5.0×10−8(m/s)と推測し、最小値を1.0×10−9(m/s)、最大値を1.0×10−6(m/s)と設定して、この間を0.5(m/s)間隔で分割して、1.0×10−9、5.0×10−9、1.0×10−8、5.0×10−8、1.0×10−7、5.0×10−7、1.0×10−6(m/s)の7通りの透水係数Kcを設定した。
【0029】
各透水係数Kcにおける評価対象区間12内の圧力と経過時間Tcとの関係を、浸透流の基礎方程式及びグラフィカル理論(GTFM−User DOCUMENTATION、Functional Description,Theoretical Development,and Software Architecture、FINAL Report、Version1.0、INTERA Consultants、22August1996)を利用して解析する。この解析には、図5に示した現場条件、解析条件等のパラメータを利用する。なお、図5に示した評価対象区間長、ボーリング孔半径、静水圧は実際の値を使用し、流れの次元、影響半径、評価対象区間圧縮率、非貯留係数は現場状況に応じて適宜推定する値である(図5)。また、評価対象区間12内の圧力値としてルジオン試験時の注入圧力の値を使用したが、これに限定されるものではなく、ルジオン試験時の有効圧力の値(例えば、本実施形態においては2.0MPa)を使用してもよい。
【0030】
図6は、各透水係数Kcにおける評価対象区間12内の圧力と経過時間Tcとの関係を算出した結果を示す図である。
図6に示すように、すべての透水係数Kcにおいて、シャットイン後の評価対象区間12内圧力は時間の経過とともに低下するが、所定の圧力値の低下に要する経過時間Tcは透水係数Kcにより異なる。したがって、所定の圧力値の低下に要する経過時間Tcを現場で測定し、この経過時間Tcに対応する透水係数Kcを求めることにより、評価対象区間12の透水性を評価することができる。
【0031】
そこで、ステップS5において、算出された評価対象区間12内の圧力と経過時間Tcとの関係に基づいて、評価対象区間12内の圧力が、シャットイン時の圧力2.4905MPaから1.8MPaだけ低下した0.6905MPaとなるまでの経過時間Tcと各透水係数Kcとの関係を求める。
【0032】
なお、ステップS4及びステップS5が本発明の算出工程に相当する。
求めた経過時間Tcと各透水係数Kcとの関係を紙やPC等の画面に出力し、この出力結果を参照して透水係数Ktを求める。ただし、求めた経過時間Tcと各透水係数Kcとの関係をコンピューターのメモリに格納し、経過時間Tcの値を入力すると、コンピューターにより、メモリに格納された関係を参照して透水係数Ktを求めるようにしてもよい。
【0033】
図7は、評価対象区間12内の圧力がシャットイン時の圧力から1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Tcと透水係数Kcとの関係の一例を出力した図である。
【0034】
図7に示すように、評価対象区間12内の圧力がシャットイン時の圧力から所定の度合いの90%である1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Tcは、透水係数Kcが小さくなるほど長くなっている。図中の透水係数Kcと経過時間Tcとの関係を示す点を接続する曲線は、最小自乗法等の一般的な近似方法にて算出する。
【0035】
上記ステップS6では、ステップS5で求めた図7に例示するような関係を参照して、経過時間Tcに対応する透水係数Kcを求め、この値を評価対象区間12内の透水係数Ktとする。図7の例において、例えば、経過時間Tcが800秒であったとすると、これに対応する透水係数Kcの値は1.0×10−9(m/s)であり、この値を評価対象区間12内の透水係数Ktとする。こうして求めた透水係数Ktに基づいて、グラウト材、注入量等を決定し、この透水試験装置1を用いてグラウト注入を実施する。
【0036】
また、本実施形態においては、説明を容易にするために、推定した透水係数Kcにおける評価対象区間12内の圧力と経過時間Tcとの関係を算出する工程、透水係数Kcと経過時間Tcとの関係を図示する工程をそれぞれステップS4、ステップS5としてステップS1〜S3の後に説明したが、これらの工程は、ステップS3で経過時間Ttを測定後、直ちにステップS6で透水係数Ktを導くために、予めステップS4及びステップS5の工程よりも前に終了しておくことが望ましい。
【0037】
さらに、本実施形態においては、7通りの透水係数Kcを用いて評価対象区間12内の圧力と経過時間Tcとの関係を算出する場合について説明したが、これらの透水係数Kcの値に限定されるものではなく、地質状況等の現場条件により適宜設定する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の透水性の評価方法によれば、透水試験を実施する評価対象区間12内の圧力である2.4905MPaから所定の度合いの90%である1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Tcとその評価対象区間12の透水係数Kcとの関係を算出する工程と、現場でグラウト装置3にバルブ7を取り付けた透水試験装置1を用いて透水試験を実施してその評価対象区間12の圧力である2.4905MPaから所定の度合いの90%である1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Ttを測定する工程と、上記算出した透水係数Kcと経過時間Tcとの関係に基づいて、現場で測定した経過時間Ttに対応する透水係数Kcを評価対象区間12の透水係数Ktとする工程とを備えるために、従来のルジオン試験では透水性を評価することができなかった低透水区間である評価対象区間12の透水係数Ktを算出することが可能となる。また、予め透水係数Kcと経過時間Tcとの関係を算出した後に、現場で経過時間Ttを測定し、上記算出した透水係数Kcと経過時間Tcとの関係に基づいて、測定した経過時間Ttに対応する透水係数Kcを評価対象区間の透水係数Ktとするために、短時間で透水係数Ktを取得することが可能となる。したがって、透水試験終了後、直ちにグラウトの注入方法、注入量及び注入材料等の仕様を決定することができるとともに、グラウト注入作業を開始することが可能となる。そして、この透水係数Ktに基づいて、グラウト注入作業を実施するために、グラウト注入対象地盤に最適なグラウトを施工することが可能となる。
【0039】
また、評価対象区間12内の透水係数Kcを7通り設定し、これらの各透水係数Kcに対応する評価対象区間12内の圧力の経時変化をそれぞれ算出し、この算出した圧力の経時変化に基づいて、経過時間Tcと各透水係数Kcとの関係を図示するために、現場で測定した経過時間Ttの結果に対応する透水係数Kcをこの図から読み取って評価対象区間12の透水係数Ktとすればよいので、目視で容易に透水係数Ktを取得することが可能となる。また、透水係数Ktを誰でも容易に取得することができ、透水性を評価するための専門の作業員及び専門の解析ツールを必要としないために、人件費及び設備費等のコストを削減することが可能となる。
【0040】
さらに、ルジオン試験での最後の注入圧力を、評価対象区間の経過時間Tcと透水係数Kcとを算出する際に使用した所定の圧力(本実施形態においては2.4905MPa)と同一としたので、ルジオン試験で透水係数を測定することができなかった場合には、ルジオン試験に引き続いて本発明の方法で透水性を評価でき、透水試験を効率的に実施することが可能となる。
【0041】
また、ルジオン試験後に本発明による透水試験を実施する際は、透水試験装置1の入れ替え作業を行う必要がない。そして、透水試験終了後、透水試験装置1を使用してグラウト注入作業を実施することができるために、透水試験装置1をグラウト注入装置に入れ替える作業を行うことなくグラウト注入作業を実施することが可能となる。したがって、透水試験からグラウト注入までの一連の作業を効率的に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る透水試験装置をボーリング孔に設置した状態を示す断面図である。
【図2】評価対象区間の透水性評価方法のフローを示す図である。
【図3】グラウト装置を用いたルジオン試験時における評価対象区間内の圧力経時変化を示す図である。
【図4】シャットイン後の評価対象区間内の圧力の経時変化を示す図である。
【図5】評価対象区間内の圧力の経時変化を算出する際に使用する現場条件、試験条件等のパラメータを示す図である。
【図6】各透水係数における評価対象区間内の圧力と経過時間との関係を算出した結果を示す図である。
【図7】評価対象区間12内の圧力がシャットイン時の圧力から1.8MPaだけ低下するまでの経過時間Tcと透水係数Kcとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 透水試験装置
3 グラウト装置
5 供給管
7 バルブ
9 ボーリング孔
11 パッカー
12 評価対象区間
13 ポンプ
15 流量計
17 圧力計
Tc、Tt 経過時間
Kc、Kt 透水係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の透水性の評価方法において、
地盤に削孔されたボーリング孔内に設置される1以上のパッカーと、前記パッカーにて閉鎖された評価対象区間内に水を供給するためのポンプと、前記ポンプから吐出される水を前記評価対象区間内に送給するための供給管と、前記ポンプから供給される水の注入量を測定するための流量計と、前記ポンプから供給される水の注入圧を測定するための圧力計とから構成されるグラウト装置の前記供給管に前記評価対象区間を閉鎖するためのバルブが取り付けられた透水試験装置により、前記ポンプから前記評価対象区間内に水を圧入する圧入工程と、
前記透水試験装置により、前記バルブを閉止した後、前記評価対象区間内の圧力が所定の度合いだけ低下するまでの経過時間を測定する測定工程と、
前記評価対象区間内の圧力が所定の圧力から前記所定の度合いだけ低下するまでの経過時間と前記評価対象区間の透水係数との関係を算出する算出工程と、
前記算出した経過時間と透水係数との関係に基づいて、前記測定した経過時間に対応する前記透水係数を前記評価対象区間の透水係数とする透水係数取得工程とを備えることを特徴とする透水性の評価方法。
【請求項2】
前記圧入工程では、前記評価対象区間内の圧力が前記所定の圧力となるまで水を圧入することを特徴とする請求項1に記載の透水性の評価方法。
【請求項3】
前記算出工程では、
前記評価対象区間内の透水係数を複数設定し、
前記各透水係数に対応する前記評価対象区間内の圧力の経時変化をそれぞれ算出し、
前記算出した圧力の経時変化に基づいて、前記評価対象区間内の圧力が前記所定の度合いだけ低下するまでの経過時間と前記各透水係数との関係を図示することを特徴とする請求項1又は2に記載の透水性の評価方法。
【請求項4】
前記圧入工程では、段階的に水の注入圧力を増加させるルジオン試験を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の透水性の評価方法。
【請求項5】
前記ルジオン試験を実施して、このルジオン試験で透水係数を求められない場合に前記測定工程及び前記透水係数取得工程を実施することを特徴とする請求項4に記載の透水性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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