説明

透視性発光シートおよびその製造方法

【課題】暗所でも視認性の高い透視性シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1透明基材21と、第1透明電極層22と、透明絶縁層23とを積層してなる第1電極積層体2と、第2透明基材31と、第2透明電極層32とを積層してなる第2電極積層体3と、第1電極積層体2と第2電極積層体3との間に設けられたドット部4(発光層41と、誘電体層42と、透視制御層43とを積層してなる)とを備えた透視性発光シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透視性を有し、電圧の印加により発光する発光シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1及び特許文献2に示すように、透視性を有し、シート両面に異なる画像を持たせた特殊装飾材が知られている。
【0003】
特許文献1では、ベース上に透明な紫外線硬化型インキ層を設け、この紫外線硬化型インキ層の上に第一絵柄層、ベタ隠蔽層、第二絵柄層、透明接着層を設けることにより転写箔を作製し、そして被転写体に転写箔を重ね合わせて熱圧プレスした後、この転写箔を剥離することにより、所望の微細パターンで積層体を基材上に残存させた装飾材を得ている。
【0004】
特許文献2では、ベースに透明な剥離ニス層を設け、この剥離ニス層の上に第一絵柄層、ベタ隠蔽層、第二絵柄層、透明接着層を設けて転写箔を得て、次に基材に非接着インキ層を設けて、被転写体とする。そしてこの転写箔を被転写体に転写して中間構造体を得て、得られた中間構造体にシートを重ね合わせた後、このシートを剥離することにより、所望の微細パターンで積層体を基材上に残存させた装飾材を得ている。
【特許文献1】特開平5−92694号公報
【特許文献2】特開平5−92695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような特殊装飾材は、昼間または照明下においてのみ認識できるものであり、暗所での視認性が極めて悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、暗所でも視認性の高い透視性シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間に設けられた、ドット状、網状またはストライプ状の発光層と、前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間における少なくとも前記発光層以外の部分に設けられた透明絶縁層とを備えたことを特徴とする透視性発光シートを提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)に係る透視性発光シートは、発光層がドット状、網状またはストライプ状であるため、透視性を有する。また、当該透視性発光シートは、電圧の印加によりドット状、網状またはストライプ状の発光層を発光させることによって、暗所でも視認性の高いものとなる。さらに、暗所でも、昼間または照明下においても、意図的な電源のON/OFFによる発光の有無により、異なった装飾性が発揮される。さらにまた、透明絶縁層の存在により、第1透明電極層と第2透明電極層とのショートが防止され、発光の駆動安定性が高いものとなっている。
【0009】
上記発明(発明1)において、前記第1透明電極層および前記第2透明電極層は、前記発光シートの略全面にわたって形成されていてもよい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1)においては、ドット状、網状またはストライプ状の透視制御層または装飾層がさらに設けられていてもよい(発明3)。透視制御層および装飾層は、第1透明電極層および第2透明電極層の間に設けられてもよいし、それら電極層の外側に設けられてもよい。
【0011】
透視制御層が設けられることにより、得られる透視性発光シートは、一方の面側からは当該シートの向こう側が透視し難く、他方の面側からは当該シートの向こう側が透視し易い片面透視性を有することとなる。さらに、当該透視性発光シートを暗所と明所との境界に設置したときには、透視制御層側から当該透視性発光シートの向こう側(暗所であっても明所であっても)を透視することができる。また、装飾層が設けられることにより、得られる透視性発光シートの一方の面側からの装飾性と、他方の面側からの装飾性とを異ならせることができる。
【0012】
上記発明(発明3)においては、前記発光層と、前記透視制御層または装飾層とは、平面視において同じ位置に設けられていてもよい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明4)において、前記透視制御層または装飾層は、前記透視性発光シートの一方の面側から前記発光層が見えなくなる大きさおよび形状であってもよい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1〜5)においては、前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間において、前記発光層に対応する部分には、さらに誘電体層が設けられていることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1〜6)において、前記第1透明電極層の外側および/または前記第2透明電極層の外側には、透明基材が積層されていてもよい(発明7)。
【0016】
第2に本発明は、第1透明基材上に第1透明電極層を形成し、第2透明基材上に第2透明電極層を形成し、前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか上に、透明絶縁層を形成し、前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側に、ドット状、網状またはストライプ状の発光層を形成し、得られた前記第1透明電極層側の第1積層体と前記第2透明電極層側の第2積層体とを互いに接着することを特徴とする透視性発光シートの製造方法を提供する(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)においては、前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側に、さらにドット状、網状またはストライプ状の透視制御層または装飾層を形成してもよい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明8,9)においては、前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側であって、前記発光層に対応する部分に、さらに誘電体層を形成することが好ましい(発明10)。
【0019】
上記発明(発明8〜10)においては、前記のいずれかの層に粘着性を付与し、前記粘着性を有する層によって、前記第1透明電極層側の第1積層体と前記第2透明電極層側の第2積層体とを接着することが好ましい(発明11)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の透視性発光シートは、発光層がドット状、網状またはストライプ状であるため、透視性を有する。この透視性は、当該透視性発光シートを暗所と明所との境界に設置したときにも得ることができる。また、本発明の透視性発光シートは、電圧の印加によりドット状、網状またはストライプ状の発光層を発光させることによって、暗所でも視認性の高いものとなる。さらに、暗所でも、昼間または照明下においても、意図的な電源のON/OFFによる発光の有無により、異なった装飾性が発揮される。さらにまた、透明絶縁層の存在により、第1透明電極層と第2透明電極層とのショートが防止され、発光の駆動安定性が高いものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る透視性発光シート1の断面図であり、図2は、同実施形態に係る透視性発光シートの部分拡大断面図であり、図3は、同実施形態に係る透視性発光シート1の表面図であり、図4は、同実施形態に係る透視性発光シート1の裏面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る透視性発光シート1は、図中上から順に、第1透明基材21と、第1透明電極層22と、透明絶縁層23とを積層してなる第1電極積層体2と、図中下から順に、第2透明基材31と、第2透明電極層32とを積層してなる第2電極積層体3と、第1電極積層体2と第2電極積層体3との間に設けられたドット部4とを備えて構成される。
【0023】
図2に示すように、ドット部4は、図中上から順に、発光層41と、誘電体層42と、透視制御層43とを積層して構成される。なお、透視制御層43は、後述するように、装飾層であってもよい。
【0024】
図1では、複数のドット部4の相互間は空隙になっているが、ドット部4は極薄なため、実際は、透明絶縁層23と第2透明電極層32とはドット部4のない部分にて接触していることが多い。
【0025】
ここで、本実施形態では、図中、第1透明基材21の上面を透視性発光シート1の表面といい、第2透明基材31の下面を透視性発光シート1の裏面というものとする。
【0026】
第1透明基材21および第2透明基材31の材料は、透明であって、かつ、第1透明電極層22および第2透明電極層32を保持することができるものであれば特に限定されることなく、透視性発光シート1の使用目的に応じて適宜選択される。かかる第1透明基材21および第2透明基材31の材料としては、ガラスを板状としたガラス板や、合成樹脂をフィルム状または板状とした合成樹脂基材が挙げられる。透視性発光シート1が任意の対象物に貼付される場合には、柔軟性を有する合成樹脂基材であることが好ましい。
【0027】
合成樹脂基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂;ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の成分を含む熱可塑性エラストマーなどの樹脂からなるフィルムが挙げられる。上記の中でも、コストや汎用性の点から、ポリエステル、ポリアミド等が好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0028】
第1透明基材21および第2透明基材31の厚さは、透視性が発揮されれば特に限定されることなく、透視性発光シート1の使用目的に応じて適宜決定され、通常は1μm〜50mmであり、好ましくは5μm〜10mmである。透視性発光シート1が任意の対象物に貼付される場合には、10〜200μmが実用的で好ましい。
【0029】
本実施形態における第1透明電極層22および第2透明電極層32は、それぞれ第1透明基材21および第2透明基材31の略全面に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ドット部4を通るように網状またはストライプ状に形成されていてもよい。ストライプ状の場合、第1透明電極層22および第2透明電極層32は、平面視で、互いに平行になるように設けられてもよいし、互いに交差するように設けられてもよい。
【0030】
第1透明電極層22および第2透明電極層32の材料としては、透明であって、かつ、発光層41を発光させることができれば特に限定されず、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化膜の薄膜;貴金属の超薄膜;ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーなどの有機薄膜が挙げられる。
【0031】
第1透明電極層22および第2透明電極層32の厚さは、10〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましく、20〜200nmであることが特に好ましい。
【0032】
透明絶縁層23は、第1透明電極層22と第2透明電極層32とのショートを防止し、透視性発光シート1における発光の駆動安定性を向上させるものである。本実施形態における透明絶縁層23は、第1透明基材21の略全面に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドット部4以外の面のみに(パターン状に)形成されてもよい。また、透明絶縁層23は、第1透明基材21側ではなく、第2透明電極層32側に形成されてもよい。
【0033】
透明絶縁層23の材料としては、透明であって、ドット部4以外の部分において第1透明電極層22と第2透明電極層32とがショートしない程度の絶縁性を示し、かつ、発光層41の発光を妨げなければ特に限定されず、例えば、Y、Al、SiO、Si、Ta、PbTiO、BaTa、SrTiO等の無機材料;硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の各種有機高分子材料などが挙げられる。
【0034】
透明絶縁層23の厚さは、絶縁性および発光層41の発光を考慮すると、50nm〜100μmであることが好ましく、200nm〜50μmであることがより好ましく、200nm〜30μmであることが特に好ましい。
【0035】
本実施形態におけるドット部4は、図3および図4に示すように、ドット状に設けられている。図3および図4に示すドット部4の形状は円形であるが、これに限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形、星型等であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、第1電極積層体2と第2電極積層体3との間にドット状のドット部4が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドット部4の替わりに網状またはストライプ状のものが設けられていてもよい。かかる形状であっても、透視性は確保される。
【0037】
ドット部4は、ランダムではなく、所定のパターンで設けられていることが好ましく、例えばマトリックス状に等間隔に設けられていることが好ましい。配列の具体例としては、並列状、千鳥状、縞状、同心円状等が挙げられ、中でも並列状または千鳥状が好ましい。ドット部4がこのように設けられることにより、発光層41の視認性および透視性発光シート1の透視性が優れたものとなる。
【0038】
発光層41は、透視性発光シート1において発光する部分であり、この発光層41を発光させることにより、透視性発光シート1は暗所でも視認性の高いものとなる。
【0039】
発光層41の大きさ(直径)は、透視性発光シート1の大きさや使用目的・使用場所によって異なるが、発光層41が視認されるためには、通常0.1〜50mmであり、好ましくは0.5〜10mmである。また、発光層41の相互間の間隔(中心間の距離)は、透視性を確保するためには、通常0.1〜50mmであり、好ましくは0.5〜10mmである。透視性発光シート1における発光層41の面積比は、透視性を確保するために、20〜70%であることが好ましく、特に30〜50%であることが好ましい。
【0040】
発光層41の各ドットは、異なる色または発光色で形成されていてもよく、これにより、所定の絵柄や文字、記号等を表示することができる。本実施形態では、図3に示すように、「1」の文字が表示されるように、発光層41のドットが色分けされている。
【0041】
なお、発光層41が網状の場合には、網の線幅は、通常1〜100mmであり、好ましくは2〜50mmである。網の空隙部の大きさは、通常1〜10000mmであり、好ましくは4〜2500mmである。発光層41がストライプ状の場合には、ストライプの線幅は、通常1〜100mmであり、好ましくは2〜50mmである。ストライプの相互間の間隙部の幅は、通常1〜100mmであり、好ましくは2〜50mmである。
【0042】
発光層41の材料としては、EL(Electroluminescence)材料のように電圧の印加(電位差の発生)により発光する材料であれば特に限定されず、例えば、ZnS:Cu、ZnS:Mn等の無機EL材料;アルミニウム・キノリノール錯体、芳香族ジアミン誘導体(例えば、トリフェニルジアミン誘導体)等の低分子型有機EL材料;ポリフェニレンビニレン等の高分子型有機EL材料などが挙げられる。発光層41の厚さは、通常0.1〜100μmである。
【0043】
誘電体層42は、発光層41の発光効率を高めるために設けられているが、本発明では誘電体層42は省略されてもよい。また、本実施形態では、誘電体層42は、発光層41と透視制御層43との間に設けられているが、これに限定されるものではなく、第1電極積層体2(透明絶縁層23)と発光層41との間、または第2電極積層体3(第2透明電極層32)と透視制御層43との間に設けられてもよい。
【0044】
なお、例えば誘電体層42に粘着性を付与すれば、第1電極積層体2に発光層41を形成した第1積層体と、第2電極積層体3に透視制御層43および誘電体層42を形成した第2積層体とを、あるいは、第1電極積層体2に発光層41および誘電体層42を形成した第1積層体と、第2電極積層体3に透視制御層43を形成した第2積層体とを、誘電体層42を介して接着することができる(図5,図6参照)。
【0045】
誘電体層42は、発光層41に対する透視制御層43の色(暗色または濃色)の影響を低減させることのできる色、例えば、白色等であることが好ましい。これにより、発光層41をより明るく発光させることができる。
【0046】
誘電体層42の材料としては、高誘電体材料が好ましく、例えば、チタン酸バリウム、酸化シリコン、窒化シリコン、アンチモンドープ酸化スズ、酸化イットリウム等が挙げられる。誘電体層42の厚さは、通常0.1〜100μmである。
【0047】
透視制御層43は、透視性発光シート1の裏面からの透視性を制御する層である。この透視制御層43が、光を比較的反射・拡散せずに吸収し易い色、例えば、黒、茶、紺、紫、青等の暗色または濃色からなると、透視性発光シート1の裏面側から、ドット部4の隙間を通して向こう側が透視し易いものとなる。
【0048】
透視制御層43の各ドットは、異なる色で形成されていてもよく、これにより、透視性発光シート1の裏面において、所定の絵柄や文字、記号等を表示することができる。
【0049】
透視制御層43の材料としては、光を比較的反射・拡散せずに吸収し易いものであればよいが、本実施形態では、透視制御層43は、第1透明電極層22と第2透明電極層32との間にて発光層41と平面視において同じ位置にあるため、導電性を有するものが好ましい。透視制御層43に導電性を付与することにより、透視制御層43の存在により発光層41の発光効率が低下することを防止することができる。かかる透視制御層43の材料としては、例えば、銀フィラーやカーボンブラックを高分子樹脂に分散させた導電性組成物、ポリアセチレン等の高分子材料にハロゲン系材料をドープさせた導電性高分子などを使用することができる。
【0050】
なお、透視制御層43は、第1透明電極層22と第2透明電極層32との間ではなく、第2透明基材31の表面(透視性発光シート1の裏面)または第2透明基材31と第2透明電極層32との間に設けられてもよい。この場合には、透視制御層43の材料は導電性を有する必要はなく、例えば、既存の樹脂材料、顔料、染料等を使用することができる。
【0051】
本実施形態における透視制御層43は、図1〜図4に示すように、透視性発光シート1において、発光層41に対応する位置(平面視において同じ位置)にドット状に設けられている。この透視制御層43は、透視性発光シート1の裏面側から発光層41が見えなくなる大きさおよび形状であることが好ましく、発光層41よりわずかに大きい大きさおよび形状であることが特に好ましい。透視制御層43がこのように設けられることにより、発光層41が発光する光が透視性発光シート1の裏面側に漏れなくなる。
【0052】
透視性発光シート1の裏面における透視制御層43の面積比は、透視性を確保するために、20〜70%であることが好ましく、特に30〜50%であることが好ましい。
【0053】
透視制御層43の厚さは、特に限定されないが、通常1〜100μmであり、好ましくは10〜50μmである。
【0054】
ここで、透視制御層43は、ドット状ではなく、網状またはストライプ状に形成されてもよい。この場合、網状またはストライプ状の透視制御層43は、発光層41が透視性発光シート1の裏面側から見えなくなる線幅およびピッチであることが好ましい。透視制御層43がこのように設けられることにより、発光層41が発光する光が透視性発光シート1の裏面側に漏れなくなる。ただし、透視制御層43は、透視性発光シート1に透明部分が存在するように設ける必要がある。
【0055】
また、透視制御層43は、発光層41とは異なる位置に設けられてもよいし、大きさおよび/または形状が発光層41と異なっていてもよい。さらには、透視制御層43の替わりに、装飾層が設けられてもよい。装飾層は、透視性を制御することを目的とするものではなく、透視性発光シート1の裏面側の装飾を主目的とするものであり、色や形態は限定されない。この装飾層は、発光層(第2の発光層)であってもよい。透視制御層43が上記のように設けられることにより、または透視制御層43の替わりに装飾層が設けられることにより、透視性発光シート1の裏面において、透視性発光シート1の表面とは異なる絵柄や文字、記号等を表示することができる。
【0056】
透視性発光シート1は、例えば、次のようにして製造することができる(図5参照)。最初に、第1透明基材21上に第1透明電極層22を形成し、その第1透明電極層上22に透明絶縁層23を形成し、第1電極積層体2を得る。また、第2透明基材31上に第2透明電極層32を形成し、第2電極積層体3を得る。
【0057】
第1透明電極層22、透明絶縁層23および第2透明電極層32は、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の物理的蒸着法;熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法等の化学的気相成長法;またはバインダー等に分散した所望の成分を印刷もしくは塗布する方法などによって形成することができる。
【0058】
次に、第1電極積層体2の透明絶縁層23上の所定の位置にドット状の発光層41を形成し、第1積層体5を得る。また、第2電極積層体3の第2透明電極層32上の所定の位置に、ドット状の透視制御層43を形成し、その透視制御層43上にドット状の誘電体層42を形成し、第2積層体6を得る。
【0059】
発光層41の材料として無機EL材料を使用する場合には、スパッタリングにより、または発光材料を含有する液体を塗布もしくは印刷することにより、発光層41を形成することができる。発光層41の材料として有機EL材料を使用する場合には、真空蒸着法、インクジェット法等により発光層41を形成することができる。
【0060】
透視制御層43は、光を吸収し易い色のインキまたは塗料を印刷または塗布することにより形成することができる。また、誘電体層42は、スパッタリングによって、または誘電材料を含有する液体を塗布もしくは印刷することにより形成することができる。
【0061】
発光層41、透視制御層43および誘電体層4の形成には、穴あき状のマスキング材を適宜使用することができる。また、上記の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の汎用の印刷方法を用いることができる。
【0062】
最後に、図5に示すように、発光層41と誘電体層42とを合わせるようにして、第1積層体5と第2積層体6とを接着することにより、透視性発光シート1を得る。第1積層体5と第2積層体6とを接着するためにも、本実施形態では、誘電体層42または発光層41に粘着性を付与することが好ましい。
【0063】
粘着性を有する誘電体層42または発光層41は、例えば、上記の誘電体材料または発光材料と粘着剤との混合物を使用することにより形成することができる。粘着剤としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。
【0064】
ここで、上記実施形態では、誘電体層42は、透視制御層43上に形成したが、図6に示すように、発光層41上に形成してもよい。この場合には、誘電体層42と透視制御層43とを合わせるようにして、第1積層体5と第2積層体6とを接着することにより、透視性発光シート1を得る。第1積層体5と第2積層体6とを接着するためにも、誘電体層42または透視制御層43に粘着性を付与することが好ましい。粘着性を有する透視制御層43は、例えば、上記の透視制御材料と粘着剤との混合物を使用することにより形成することができる。
【0065】
また、図7に示すように、発光層41、誘電体層42および透視制御層43(ドット部4)は、全て第2電極積層体3側に設けてもよい。この場合には、透明絶縁層23と発光層41とを合わせるようにして、第1積層体5と第2積層体6とを接着することにより、透視性発光シート1を得る。第1積層体5と第2積層体6とを接着するためにも、発光層41または透明絶縁層23に粘着性を付与することが好ましい。粘着性を有する透明絶縁層23は、例えば、上記の絶縁材料と粘着剤との混合物を使用することにより形成することができる。
【0066】
さらに、図8に示すように、発光層41、誘電体層42および透視制御層43(ドット部4)は、全て第1電極積層体2側に設けてもよい。この場合には、透視制御層43と第2透明電極層32とを合わせるようにして、第1積層体5と第2積層体6とを接着することにより、透視性発光シート1を得る。第1積層体5と第2積層体6とを接着するためにも、透視制御層43に粘着性を付与することが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る透視性発光シート1は、図1に示すように、第1透明電極層22と第2透明電極層32に電圧を印加することにより、ドット状の発光層41を発光させることができる。これにより、透視性発光シート1は、暗所でも視認性の高いものとなる。また、昼間または照明下において、発光層41を発光させることにより、透視性発光シート1の表面側から見ると、当該透視性発光シート1の向こう側が透視し難く、透視性発光シート1の裏面側から見ると、透視制御層43の効果により、当該透視性発光シート1の向こう側が透視し易いものとなる。さらには、暗所でも、昼間または照明下でも、意図的な電源のON/OFFによる発光の有無により、異なった装飾性が発揮される。さらにまた、透視性発光シート1を暗所と明所との境界に設置したときには、透視性発光シート1の裏面側から見ると、透視制御層43の効果により、当該透視性発光シート1の向こう側を透視することができる。この透視性は、透視性発光シート1の表面を暗所側、裏面を明所側とした場合であっても、透視性発光シート1の表面を明所側、裏面を暗所側とした場合であっても、得られるものである。
【0068】
以上説明した透視性発光シート1は、例えば、商業ビルや自動車の窓等に貼付される広告媒体等として用いられ、夜間でも広告媒体等として有用である。透視性発光シート1は、透明な粘着剤や粘着シートを別途使用して被着体に貼付してもよいし、透視性発光シート1が自己接着性を有するものであれば、その自己接着性を利用して被着体に貼付してもよい。
【0069】
なお、上記実施形態に係る透視性発光シート1は、粘着剤層を備えていないが、第1透明基材21の表面(透視性発光シート1の表面)または第2透明基材31の表面(透視性発光シート1の裏面)に透明な粘着剤層を設けてもよい。粘着剤層上には、所望により公知の剥離材が積層されていてもよい。
【0070】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができるが、透視性発光シート1が屋外等で使用される場合には、耐候性を有するアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0071】
粘着剤層の厚さは、通常は1〜300μm、好ましくは5〜100μm程度であるが、透視性発光シート1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0072】
また、第1透明基材21の表面(透視性発光シート1の表面)において、ドット部4に対応する部分に、所望の印刷を施してもよい。この場合に発光層41を発光させると、印刷による文字や画像がバックライトにより光って見えるような効果が得られる。
【0073】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
例えば、第1透明基材21および/または第2透明基材31は省略されてもよいし、第1透明基材21の外側(透視性発光シート1の表面)および/または第2透明基材31の外側(透視性発光シート1の裏面)にはコート層が設けられていてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
第1透明基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,ルミラー)を用意し、巻き取り式スパッタ装置を用いて、ライン速度0.2m/min、アルゴン・酸素雰囲気下、チャンバー内圧力2.0×10-1Paにて、円筒型ITOターゲットに直流1500Wの電力を印加し、第1透明基材上にITOからなる第1透明電極層(厚さ50nm)を形成した。また、第2透明基材としても、同じく厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製,ルミラー)を用意し、上記と同様にして第2透明基材上にITOからなる第2透明電極層(厚さ50nm)を形成した。
【0077】
一方、チタン酸バリウム分散樹脂(藤倉化成社製,ドータイトFEL−615)100質量部と、アクリル酸エステル共重合樹脂(n−ブチルアクリレート/アクリル酸=90/10,重量平均分子量:70万)70質量部とを混合し、粘着性を有する誘電体材料を得た。
【0078】
次に、巻き取り式スパッタ装置を用いて、ライン速度0.2m/min、アルゴン・酸素雰囲気下、チャンバー内圧力2.0×10-1Paにて、円筒型Siターゲットに直流2500Wの電力を印加し、上記第1透明電極層上に透明絶縁層として厚さ100nmのSiOの層を全面に形成した。そして、その透明絶縁層上に、硫化亜鉛からなる発光色が緑色の発光材料(藤倉化成社製,ドータイトFEL−190)および硫化亜鉛からなる発光色が白色の発光材料(発光粉体(オスラムシルバニア社製,GGS72)に有機樹脂(藤倉化成社製,ドータイトXB−9010)を質量比1:1で混合したもの)をスクリーン印刷(図3参照)し、膜厚50μm、ドット径2mm、ドットピッチ(中心間の距離)5mmの発光層を、縦10個×横10個、総ドット数100個を形成し、第1積層体を得た。
【0079】
別に、上記第2透明電極層上に、チタン酸バリウムからなる黒色のインキ(藤倉化成社製,ドータイトFEL−198)をスクリーン印刷し、膜厚20μm、ドット径3mm、ドットピッチ(中心間の距離)5mmの透視制御層を、縦10個×横10個、総ドット数100個形成した。さらに、その透視制御層上に、上記で得られた誘電体材料をスクリーン印刷し、膜厚30μm、ドット径3mm、ドットピッチ5mmの誘電体層を、縦10個×横10個、総ドット数100個形成し、第2積層体を得た。
【0080】
得られた第1積層体と第2積層体とを、発光層と誘電体層(粘着性を有する)とを合わせるようにして接着し、これを透視性発光シートとした。
【0081】
〔実施例2〕
巻き取り式スパッタ装置を用いて、ライン速度0.2m/min、アルゴン・窒素雰囲気下、チャンバー内圧力2.0×10-1Paにて、円筒型Siターゲットに直流2500Wの電力を印加し、第1透明電極層上に透明絶縁層としてSiOの層の代わりに厚さ100nmのSiの層を形成する以外、実施例1と同様にして透視性発光シートを作製した。
【0082】
〔実施例3〕
巻き取り式スパッタ装置を用いて、ライン速度0.2m/min、アルゴン雰囲気下、チャンバー内圧力2.0×10-1Paにて、円筒型Taターゲットに直流2000Wの電力を印加し、第1透明電極層上に透明絶縁層としてSiOの層の代わりに厚さ100nmのTaの層を形成する以外、実施例1と同様にして透視性発光シートを作製した。
【0083】
〔実施例4〕
マイヤーバー(No.10)を用いて、UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業社製,ビームセット577)を第1透明電極層上に塗布した後、その塗布膜を照度240W、光量100mJ/cmの紫外線照射により硬化させ、厚さ5μmの透明絶縁層を形成して、これをSiOの層に代えた以外、実施例1と同様にして透視性発光シートを作製した。
【0084】
〔実施例5〕
マイヤーバー(No.10)を用いてポリエステル系樹脂(東洋モートン社製,AD−76R34)を第1透明電極層上に塗布し、厚さ5μmの透明絶縁層を形成して、これをSiOの層に代えた以外、実施例1と同様にして透視性発光シートを作製した。
【0085】
〔比較例1〕
実施例1において透明絶縁層を設けないこと以外、実施例1と同様にして透視性発光シートを作製した。
【0086】
〔試験例〕
(1)装飾性および片面透視性の確認
実施例および比較例で得られた透視性発光シートの第1透明電極層および第2透明電極層に、200V、800Hzの交流電圧を印加し、ドット状の発光層を発光させた。その結果、各透視性発光シートは、発光による装飾性を有し、夜間でも視認性に優れていた。また、各透視性発光シートは、非発光面側からは透視性を有するが、発光面側からは透視しにくい効果を有することが確認された。
【0087】
(2)駆動安定性試験
実施例および比較例で得られた透視性発光シートの第1透明電極層および第2透明電極層に、200V、800Hzの交流電圧を印加し、ドット状の発光層を発光させた。このとき、ショートによって発光しなくなったドット数(ショートドット数)を観察し、ショート率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1から明らかなように、透明絶縁層を有する透視性発光シートではショートがなく、全ての発光層が発光した。かかる透視性発光シートは、発光の駆動性が安定しており、かつ、暗所においても視認性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の透視性発光シートは、商業ビルや自動車の窓等に貼付される広告媒体等として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態に係る透視性発光シートの断面図である。
【図2】同実施形態に係る透視性発光シートの部分拡大断面図である。
【図3】同実施形態に係る透視性発光シートの表面図である。
【図4】同実施形態に係る透視性発光シートの裏面図である。
【図5】同実施形態に係る透視性発光シートの一製造例を示す図である。
【図6】同実施形態に係る透視性発光シートの他の製造例を示す図である。
【図7】同実施形態に係る透視性発光シートの他の製造例を示す図である。
【図8】同実施形態に係る透視性発光シートの他の製造例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1…透視性発光シート
2…第1電極積層体
21…第1透明基材
22…第1透明電極層
23…透明絶縁層
3…第2電極積層体
31…第2透明基材
32…第2透明電極層
4…ドット部
41…発光層
42…誘電体層
43…透視制御層
5…第1積層体
6…第2積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間に設けられた、ドット状、網状またはストライプ状の発光層と、
前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間における少なくとも前記発光層以外の部分に設けられた透明絶縁層と
を備えたことを特徴とする透視性発光シート。
【請求項2】
前記第1透明電極層および前記第2透明電極層は、前記発光シートの略全面にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透視性発光シート。
【請求項3】
ドット状、網状またはストライプ状の透視制御層または装飾層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の透視性発光シート。
【請求項4】
前記発光層と、前記透視制御層または装飾層とは、平面視において同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の透視性発光シート。
【請求項5】
前記透視制御層または装飾層は、前記透視性発光シートの一方の面側から前記発光層が見えなくなる大きさおよび形状であることを特徴とする請求項3または4に記載の透視性発光シート。
【請求項6】
前記第1透明電極層および前記第2透明電極層の間において、前記発光層に対応する部分には、さらに誘電体層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透視性発光シート。
【請求項7】
前記第1透明電極層の外側および/または前記第2透明電極層の外側には、透明基材が積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透視性発光シート。
【請求項8】
第1透明基材上に第1透明電極層を形成し、
第2透明基材上に第2透明電極層を形成し、
前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか上に、透明絶縁層を形成し、
前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側に、ドット状、網状またはストライプ状の発光層を形成し、
得られた前記第1透明電極層側の第1積層体と前記第2透明電極層側の第2積層体とを互いに接着する
ことを特徴とする透視性発光シートの製造方法。
【請求項9】
前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側に、さらにドット状、網状またはストライプ状の透視制御層または装飾層を形成することを特徴とする請求項8に記載の透視性発光シートの製造方法。
【請求項10】
前記第1透明電極層または前記第2透明電極層のいずれか側であって、前記発光層に対応する部分に、さらに誘電体層を形成することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の透視性発光シートの製造方法。
【請求項11】
前記のいずれかの層に粘着性を付与し、前記粘着性を有する層によって、前記第1透明電極層側の第1積層体と前記第2透明電極層側の第2積層体とを接着することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の透視性発光シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−223023(P2009−223023A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67858(P2008−67858)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】