説明

通気性を有する靴底を備えた靴

【課題】靴内部の熱気による足の蒸れを軽減すべく、通気性が高く、排水性を高め、さらに履き心地を損なわない靴を提案する。
【解決手段】ミッドソール4下面の前足側踏みつけ部分に、横溝8と縦溝9を設け、横溝8と縦溝9が連通し、横溝8がミッドソール4の左右側面まで達し、通気用の開口6に連通する。さらに横溝8はミッドソール4の両側面から横幅方向中心部分にかけて溝が深くなるよう形成されている。またアウトソール5上面の前足側踏みつけ部分には突起条11が設けられ、突起条11は横溝8および縦溝9に沿うように上方に突出しており、横溝8と縦溝9と突起条11により構成される通気孔がアーチ状となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性を有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通気性を有する靴底を備えた靴については多数提案されている。例えば特許文献1には、弾性を有する靴底の内面側の少なくとも前足側踏み付け部位と土踏まず部位にわたるほぼ一定深さの凹部を設け、前記凹部には多数の貫通孔を備え且つ下面に多数の突起を備えた弾性を有するシートにより通気室を形成し、前記土踏まず部位において接地面から前記通気室に連通する通気孔を設け、前記踏み付け部位において前記凹部と接地面との間に前記凹部に連通する空間部を設けた、通気性を有する靴が記載されている。
【0003】
また特許文献2では、靴底の上面に凹部が形成され、該凹部の底面に横溝が形成され、該横溝は前記靴底の側面に形成された通気孔と連通され、前記凹部に弾力性を有するブロック体がはめ込まれ、該ブロック体の上部が前記靴底の上面よりも上方に突出し、前記ブロック体に縦孔が形成され、前記凹部の底面状に荷重がかかったときに前記ブロック体が前記横溝に入り込むことを防ぐための支持シートが配され、該支持シートは通気性を有し、前記縦穴および支持シートを通じて靴内部と前記横溝が連通され、前記ブロック体に荷重がかかったときに前記縦穴が変形して、前記通気孔と靴内部との間で空気の流出入が生じることで、通気性を有する靴が記載されている。
【特許文献1】特開2005−230255号
【特許文献2】特開2006−320657号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、空気の流入および排出が靴底下面に設けられた通気用の開口からのみとなり、十分な通気性を得ることができない。また靴底下面に通気用の開口を配するため、雨の中を歩行する際に、靴底下面より簡単に水が流入し、防水シートが水を吸い込み、すぐに機能を果たなくなる。さらに靴底下面に通気用の開口を配する構造であるため、地面に落ちている小石等をポンプ室に入り込まないようメッシュを靴底に設けなければならず、コストが増大する。
【0005】
特許文献2の構造では、靴底のアウトソール側に横溝を備えており、さらに空気の通り道である当該横溝が地面に水平に設けられているため、雨の中を歩行する際に、アウトソール側面に設けられた通気孔から該横溝に水が流入しやすく、また排水されにくい。そのため、雨の中を歩行する際などは、靴内に水が入り込み靴内が蒸れる結果となる。また小石等が該通気孔より横溝に入り込んだ場合にも小石が排出されない。さらには、ミッドソールの底面が面一で形成されているため、歩行時に通気孔より流入する空気が少なく、また踏み込み時に流入した空気が全体に分散し、空気の排出も少なく、十分な通気性を得ることができない。
【0006】
本発明は上記に鑑み、空気の流入・排出機能を高め、高い通気性を確保するだけでなく、水分の流入を軽減し、排水性を高めた靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る靴は、ミッドソールおよびアウトソールを有する靴底を備えた靴であって、ミッドソール下面側の少なくとも前足側踏みつけ部分に横溝が形成されており、前記横溝は前記ミッドソール一方側面から他方側面まで連通し、両側面から横幅方向中心にかけて溝が深くなるよう構成され、前記ミッドソールは厚み方向に貫通し、前記横溝に連通する貫通孔を備え、前記アウトソール上面側の少なくとも前足側踏みつけ部分に前記横溝との間に隙間を残した状態で嵌合する第一の突起条を設け、この第一の突起条が前記横溝に沿うように側面から横幅方向中心にかけて高く形成されていることを特徴とする。
【0008】
この請求項1によれば、ミッドソール下面側に設けられた横溝が、前記ミッドソール一方側面から他方側面まで連通し、横幅方向中心部からミッドソール両側面にかけて下向きに傾斜しており、前記アウトソール上面側に設けられた第一の突起条が前記横溝に沿うように側面側から横幅方向中心部にかけて高くなるよう形成されているため、空気の通り道(以下、通気孔という。)が靴底の横幅方向中心が両側面に比し高い位置となる。そのため、アウトソール側に横溝および通気孔の開口が配される場合に比し、通気用の開口がより高い位置にあるため、靴内に水が流入しにくい。さらに通気孔が靴底の横幅方向中心を両側面に比し高い位置となるよう構成されているため、水が靴内に流入しにくく、排水もされやすい。それ以外にも、通気用の開口が靴底底面に設けられている靴に比して、地面の小石などが通気用の開口から通気孔内に入りづらく、小石の入り込みを防止するためのメッシュ布等が不要でコストもかからない。
【0009】
また本発明では、空気の導入口である靴底側面の通気用の開口から靴内までの経路が短いため、靴内への空気の流入がスムーズにでき、高い通気性が期待できる。
【0010】
請求項2に係る靴は、前記横溝が複数設けられ、これらの横溝に直交し、前記横溝どうしを連通させる縦溝を有し、同縦溝との間に隙間を残した状態で嵌合する第二の突起条が前記アウトソールに設けられていることを特徴とする。
【0011】
この請求項2によれば、前記横溝のみを前記ミッドソール下面に設けた場合に比し、縦溝を設けることで、通気孔が広くなり靴底内に取り入れられる空気量が増加し、高い通気性が期待できる。
【0012】
請求項3に係る靴は、前記ミッドソール上面側の少なくとも前足側踏みつけ部分に凹部が設けられ、前記貫通孔が前記凹部に連通することを特徴とする。
【0013】
この請求項3によれば、前記ミッドソール上面側に設けられた前記凹部により空間ができ、靴底内に取り入れられる空気量がさらに増加し、より高い通気性が期待できる。なお前記凹部は例えばつま先部分など他の部分を含む大きさで設けたり、複数箇所に設けたりすることができる。
【0014】
請求項4に係る靴は、前記凹部に通気性を有するクッション材を配することを特徴とする。
【0015】
この請求項4によれば、歩行の際の踏み込み時に前記クッション材が圧縮され、足を持ち上げた時には前記クッション材が復元するというポンプ作用によって、空気の流入・排出が行われることで、靴の通気性を高めることができる。
【0016】
請求項5に係る靴は、前記クッション材の下面に、空気を通し水を通さない通気防水シートを備えることを特徴とする。
【0017】
この請求項5によれば、靴内への空気の流入を確保したまま、水の流入を確実に防止することができる。
【0018】
請求項6に係る靴は、アッパーと前記ミッドソールとの間に、前記クッション材に相対する位置に前記クッション材に対応する形状の開口部を設け、同開口部に通気性素材を貼り付けた中底を有することを特徴とする。
【0019】
この請求項6によれば、前記中底をそのまま用いる場合や前記中底に小孔を複数設けた場合に比し、靴内とクッション材との間で空気が流通しやすく靴内の通気性をより向上することが可能である。
【0020】
請求項7に係る靴は、前記前足側踏みつけ部分と同様の構成で踵部分が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この請求項7によれば、前足側踏み付け部のみに空気を流入・排出するための構造を設けた場合に比して、靴内の通気性をさらに高めることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、靴底側面に設けられた通気用の開口を介して靴内への空気流入・排出が可能であり、高い通気性を得ることができる。また、靴底内の通気孔が中央部より両側面に向けそれぞれ下向きに傾斜が付けられているため、排水性能が高く、水の流入を最小限に抑えることができるという効果を得られる。また靴内に設けられたクッション材を歩行時に踏み付けることで、前記クッション材がポンプの役割をし、さらに高い通気性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。図1〜図7は、本発明にかかる靴の実施形態を示すものである。図1は、本発明にかかる靴の斜視図である。図2は本発明にかかる靴の靴底ミッドソール部分の下面を一方側面の上方から斜めに見下ろした斜視図である。図3は、同靴底ミッドソール部分の上面を上方から斜めに見下ろした斜視図である。図4は、同靴底ミッドソール部分のA−A’断面図である。図5は、同靴底アウトソール部分の上面からの斜視図である。図6は、本発明にかかる靴のB−B’断面図である。図7は、本発明にかかる靴の構造を部品ごとに分解した斜視図である。
【0024】
図1に示すとおり、靴1はアッパー2と靴底3と中底16と中敷18より構成され、靴底3はミッドソール4とアウトソール5により構成されており、ミッドソール4の下面とアウトソール5の上面が接着されている。またアッパー2は中底16に吊り込まれたのち、ミッドソール4の上面に接着され、靴底3と一体となり靴1を構成している。
【0025】
図2および図3に示すように、ミッドソール4下面の前足側踏みつけ部分には、横溝8と縦溝9が設けられており、横溝8と縦溝9は連通している。また横溝8はミッドソール4の左右側面にまで達し、通気用の開口6に連通する。さらに横溝8はミッドソール4の両側面から横幅方向中心部にかけて溝が漸次深くなるよう形成されており、アーチ状の通気孔を構成する(図4参照)。このように、横幅方向中央部から両側面にかけてそれぞれ下向きに傾斜をもたせたアーチ状の通気孔とすることで、水平の通気孔である場合に比して、排水性を高めること及び水の流入を最小限に抑えることができるのである。また通気用の開口6を靴底3の側面に設けているため、通気用の開口6が靴底底面に設けられている場合に比して、靴内への水の流入を軽減することができ、靴の寿命が延びる。
【0026】
横溝8と縦溝9の各交差部分には、ミッドソール4の下面から、ミッドソール4の上面に形成した凹部7に貫通する、貫通孔10が設けられている(図6参照)。
【0027】
図5に示すように、アウトソール5の上面の前足側踏みつけ部分には突起条11が設けられ、突起11は第一の突起条(横方向の突起)12と第二の突起条(縦方向の突起)13より構成されている。また突起条11はミッドソール4の下面に設けられた横溝8および縦溝9に沿うように上方に突出しており、ミッドソール4とアウトソール5を貼り合わせた際に、溝8,9と突起条11により構成される通気孔の高さ寸法が略均一となるように、突起条11の突出寸法を定めている。具体的には、横方向の突起条12については、アウトソール5の両側面から横幅方向中心部にかけて、突出寸法が漸次大きくなるように形成されている。
【0028】
図6および図7に示すように、ミッドソール4の上面に設けた凹部7の平面形状に対応する形状であって、空気を通し、水を通さない特殊な通気防水シート14を凹部7の底面に貼り付けている。
【0029】
通気防水シート14の上面には、通気性のある連続気泡のスポンジ素材のクッション材15が配されている。なおクッション材15の形状は、平面形状が通気防水シート14と同一又は一回り小さい形状であって、高さが凹部7の高さ寸法と略同一又はそれよりも大きな寸法であり、凹部7に嵌め込み配置されている。またクッション材15の材質は、スポンジ素材に限定されるものではなく、通気性を有する弾性素材であればよい。
【0030】
中底16は、クッション材15と相対する部分に開口部が設けられ、その開口部には、たとえばメッシュ構造の不織布などの通気性のある素材を用いた通気性シート17が貼り付けられている。
【0031】
また中敷18は、通気性のある素材により形成され、通気性シート17の上に配されている。
【0032】
なお図8に示すように、前記の通気性および排水性を高めた構造は、前足側踏みつけ部分にのみ備えられたものに限定されるものでなはく、前足側踏みつけ部分以外にも踵部分に同様の構造を備えることも可能である。
【0033】
このように踵部分にも前記構造を備えることによって、前足側踏みつけ部分および踵部分からの通気が可能となり、さらに通気性を高めた靴を提供することができる。
(実施例1)
本発明にかかる靴は、上記のように横溝8と縦溝9および横方向の突起条12と縦方向の突起条13を備える場合に限定されるものでなく、縦溝9および縦方向の突起条13を有さず横溝8および横方向の突起条12のみを有し、通気孔が横方向のみに広がる構造とし、貫通孔10を横溝8に均等に配する構成としても、本発明の通気・排水効果を達成することができる(図9(a)、図9(b)参照)。
(実施例2)
また通気孔をアーチ形状とする場合以外にも、横溝8がミッドソール4の両側面から横幅方向中心部にかけて溝が直線的に漸次深くなるよう形成され、横方向の突起条12について、アウトソール5の両側面から横幅方向中心部にかけて、突出寸法が直線的に漸次大きくなるように形成されており、通気孔が横幅方向中心を頂点とし、両側面側に下向きに直線的に傾斜している形状としてもよい(図10(a)参照)。
(実施例3)
さらに実施例2以外でも、通気孔が横幅方向中心から両側面にかけ、下向きの階段状とする形状としてもよい(図10(b)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる靴の斜視図である。
【図2】本発明にかかる靴の靴底ミッドソール部分の下面を一方側面の上方から斜めに見下ろした斜視図である。
【図3】本発明にかかる靴の靴底ミッドソール部分の上面を上方から斜めに見下ろした斜視図である。
【図4】本発明にかかる靴の靴底ミッドソール部分のA−A’断面図である。
【図5】本発明にかかる靴の靴底アウトソール部分の上面からの斜視図である。
【図6】本発明にかかる靴のB−B’断面図である。
【図7】本発明にかかる靴の構造を部品ごとにばらした斜視図である。
【図8】(a)本発明にかかる靴の通気・排水構造を前足側踏みつけ部分および踵部分に配した靴の靴底ミッドソール部分の斜視図である。
【0035】
(b)本発明にかかる靴の通気・排水構造を前足側踏みつけ部分および踵部分に配した靴の靴底アウトソール部分の斜視図である。
【図9】(a)本発明にかかる靴の通気孔が横幅方向のみに備えた実施例1の靴の靴底ミッドソール部分の下面を一方側面の上方から斜めに見下ろした斜視図である。
【0036】
(b)本発明にかかる靴の通気孔が横幅方向のみに備えた実施例1の靴の靴底アウトソール部分の上面を上方から斜めに見下ろした斜視図である。
【図10】(a)本発明にかかる実施例2の通気孔を有する靴のB−B’断面図である。
【0037】
(b)本発明にかかる実施例3の通気孔を有する靴のB−B’断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 靴
2 アッパー
3 靴底
4 ミッドソール
5 アウトソール
6 通気用の開口
7 凹部
8 横溝
9 縦溝
10 貫通孔
11 突起条
12 横方向の突起条
13 縦方向の突起条
14 通気防水シート
15 クッション材
16 中底
17 通気性シート
18 中敷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッドソールおよびアウトソールを有する靴底を備えた靴であって、
ミッドソール下面側の少なくとも前足側踏みつけ部分に横溝が形成されており、前記横溝は前記ミッドソール一方側面から他方側面まで連通し、両側面から横幅方向中心にかけて溝が深くなるよう構成され、
前記ミッドソールは、厚み方向に貫通し前記横溝に連通する貫通孔を備え、
前記アウトソール上面側に前記横溝との間に隙間を残した状態で嵌合する第一の突起条を設け、この第一の突起条が前記横溝に沿うように側面から横幅方向中心にかけて高く形成されていることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記横溝が複数設けられ、これらの横溝に直交して前記横溝どうしを連通させる縦溝を有し、
同縦溝との間に隙間を残した状態で嵌合する第二の突起条が前記アウトソール上面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の靴。
【請求項3】
前記ミッドソール上面側の少なくとも前足側踏みつけ部分に凹部が設けられ、
前記貫通孔が前記凹部に連通することを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の靴。
【請求項4】
前記凹部に通気性を有するクッション材を配することを特徴とする請求項3記載の靴。
【請求項5】
前記クッション材の下面に、空気を通し水を通さない通気防水シートを備えることを特徴とする請求項4記載の靴。
【請求項6】
アッパーと前記ミッドソールとの間に、前記クッション材に相対する位置に前記クッション材に対応する形状の開口部を設け、同開口部に通気性素材を貼り付けた中底を有することを特徴とする請求項5記載の靴。
【請求項7】
前記前足側踏みつけ部分と同様の構成で踵部分が形成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−63727(P2010−63727A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234218(P2008−234218)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【特許番号】特許第4307514号(P4307514)
【特許公報発行日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(502223552)株式会社 あとりえ岡田 (3)
【Fターム(参考)】