説明

通気攪拌発酵槽

【課題】低液量からの通気攪拌を安定して実施することができると共に、発酵効率を高めることができる通気攪拌発酵槽を提供する。
【解決手段】円筒状の胴部12と該胴部12の上,下側に位置する蓋部13及び底部15を備えた槽本体11内に発酵液Sを充填し、この槽本体11の底部15の中央に配設された自吸式の攪拌翼18の回転で発酵液Sを通気攪拌するようにした通気攪拌発酵槽10において、槽本体11の胴部12の下側開口部12bと底部15の外周部15bとの間に、逆円錐台状の傾斜部14を連続して形成してある。この逆円錐台状の傾斜部14の元の円錐の頂角θは、例えば90°に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食酢用の深部発酵槽として用いて好適な通気攪拌発酵槽に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の通気攪拌発酵槽として、図6に示すものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この通気攪拌発酵槽1は、図6に示すように、発酵液Sを充填する直胴型の槽本体2を有している。この槽本体2は、円筒状の胴部2aと、この胴部2aの上,下側に位置する蓋部2b及び底部2cとを備えている。
【0004】
そして、槽本体2内に充填された発酵液Sは、上方に湾曲した皿状の底部2cの中央に配設されてモータ3の駆動軸4により回転する自吸式の攪拌翼(ローター)5により通気攪拌されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特公昭46−4157号公報
【0006】
【特許文献2】特開昭53−88397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の通気攪拌発酵槽1では、直胴型の槽本体2の底部2cが上方に湾曲した皿状になっているので、通気効率を高めるために自吸式の攪拌翼5の上方においてある程度の深さの液量が溜まるまで発酵液Sを充填しなければならず、低液量からの通気攪拌を安定して実施することは難しかった。
【0008】
また、図6に矢印で示すように、自吸式の攪拌翼5より吐出される気泡流が槽本体2の胴部2aに当たって、そのまま垂直に上昇するため、槽本体2内の発酵液Sの流れが悪くなり、発酵効率が悪かった(図4(b)参照)。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、低液量からの通気攪拌を安定して実施することができると共に、発酵効率を高めることができる通気攪拌発酵槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、円筒状の胴部と該胴部の上,下側に位置する蓋部及び底部を備えた槽本体内に発酵液を充填し、この槽本体の底部の中央に配設された攪拌翼の回転で前記発酵液を通気攪拌するようにした通気攪拌発酵槽において、前記槽本体の胴部の下端部と底部の外周部との間に断面逆ハ字状で円環状の傾斜部を連続して形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の通気攪拌発酵槽であって、前記傾斜部を逆円錐台状に形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載の通気攪拌発酵槽であって、前記逆円錐台状の傾斜部の元の円錐の頂角を60°〜120°に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、槽本体の胴部の下端部と底部の外周部との間に断面逆ハ字状で円環状の傾斜部を連続して形成したことにより、低液量からの通気攪拌を安定して実施することができ、発酵効率を高めることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、傾斜部を逆円錐台状に形成したことにより、攪拌翼より吐出される気泡流を逆円錐台状の傾斜部に沿って槽本体の全面に行き渡らせることができ、発酵効率を高めることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、逆円錐台状の傾斜部の元の円錐の頂角を60°〜120°に設定したことにより、発酵液の流れを良くすることができ、発酵効率をより一段と高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態の通気攪拌発酵槽を示す断面図、図2は同発酵槽の傾斜部の説明図、図3は同発酵槽の槽内液量と液高さの関係を示す説明図、図4(a)は同発酵槽の通気攪拌状態(発酵液の流れ)を示す説明図である。
【0018】
図1に示すように、通気攪拌発酵槽10は、食酢(酢酸)用の深部発酵槽として用いられるものであり、金属製の槽本体11を有している。この槽本体11は、金属製で円筒状の胴部12と、この胴部12の上側開口部12aを覆う下方に湾曲した金属製で皿状の蓋部13と、胴部12の下側開口部12bを覆う金属製で逆円錐台状の傾斜部14及び中央が窪んだ金属製の底部15を備えている。これら胴部12と蓋部13と傾斜部14及び底部15は溶接等の手段によりそれぞれ固着されている。また、傾斜部14には複数本の脚部16を取り付けてある。
【0019】
図1及び図2に示すように、槽本体11の傾斜部14は、正円錐を底部(底面)15に対して水平に切断した逆円錐台状(断面逆ハ字状で円環状)に形成してあり、胴部12の下側開口部(下端部)12bと底部15の外周部15bとの間に位置している。そして、これら胴部12の下側開口部12bと逆円錐台状の傾斜部14の上側周縁部14a及び該傾斜部14の下側周縁部14bと底部15の外周部15bは溶接等の手段によりそれぞれ固着されている。
【0020】
また、図2に示すように、逆円錐台状の傾斜部14の元の円錐の頂角θは例えば90°に設定してあり、逆円錐台状の傾斜部14の上辺部分の長さMは例えば3.6m(即ち、胴部12の直径は3.6m)に、下辺部分の長さNは例えば1.8mに、その高さHは例えば0.9mに、それぞれ設定してある。これにより、傾斜部14と底部15の交わる角度αは45°に設定してある。さらに、図1に示すように、胴部12の高さTは2.1mに設定してある。
【0021】
図1に示すように、槽本体11の底部15はその中央部分15aが下側に凹んでおり、その中央に連結部(シール部)17を介して自吸式の攪拌翼18を設置してある。この自吸式の攪拌翼18の中央には、モータ19の駆動軸19aの先端部を固定してある。このモータ19により、自吸式の攪拌翼18は例えば毎分800回転(rpm)で回転して、槽本体11内に充填された発酵液Sを通気攪拌するようになっている。即ち、自吸式の攪拌翼18は、回転することで羽根(翼)の裏側に負圧を発生させ、この負圧により外部から空気を吸い込ませ、その空気を羽根が発酵液Sに及ぼす剪断作用によって細分化し、さらに発酵液Sと共に吐出させて槽本体11内に分散させるものである。また、自吸式の攪拌翼18は、例えば直径0.3mのものを用いており、底部15の中心より例えば0.1m上に設置されている。
【0022】
また、図1に示すように、自吸式の攪拌翼18の上部中央には、連結部(シール部)20を介して外気を導入する空気導入管21を配置してある。また、連結部20には発酵液Sを充填する発酵液送入管22の排出口22aを対向させている。尚、槽本体11の胴部12及び傾斜部14内には、発酵液Sを冷却する複数の蛇管23を配置してある。また、蓋部13の中央には、排気用のマンホール部13aを設けてある。さらに、槽本体11の底部15には、発酵液Sを外部に排出する発酵液排出管(図示省略)を取り付けてある。
【0023】
以上実施形態の通気攪拌発酵槽10によれば、槽本体11の円筒状の胴部12の下側開口部12bと底部15の外周部15bとの間に逆円錐台状の傾斜部14を連続して形成すると共に、該逆円錐台状の傾斜部14の元の円錐の頂角を90°に設定したことにより、従来の直胴型で底部2cが皿状の通気攪拌発酵槽1と比較して同じ液位に達するまでの発酵液Sの充填液量は少なくて済む。即ち、従来の直胴皿型の通気攪拌発酵槽1の胴部2aの直径と本実施形態の逆円錐台型の通気攪拌発酵槽10の胴部12の直径を同径の3.6mとした場合に、図3に示すように、安定して通気可能になるのは、従来の直胴皿型の通気攪拌発酵槽1では0.75m3であるのに対し、本実施形態の逆円錐台型の通気攪拌発酵槽10では0.40m3であった。これにより、低液量からの通気攪拌を安定して実施することができる。
【0024】
また、自吸式の攪拌翼18より吐出される気泡流を逆円錐台状の傾斜部14に沿って槽本体11内の全面に行き渡らせることができ、発酵効率を高めることができる。即ち、従来の直胴皿型の通気攪拌発酵槽1では、自吸式の攪拌翼5から缶壁としての槽本体2の円筒状の胴部2aまでの距離が長かったが、本実施形態の逆円錐台型の通気攪拌発酵槽10では、自吸式の攪拌翼18から缶壁としての逆円錐台状の傾斜部14までの距離が短くなり、従来の直胴皿型の通気攪拌発酵槽1と比較して、自吸式の攪拌翼18より吐出される気泡流が缶壁まで到達し易くなり、酸欠領域を無くすことができると共に、発酵効率を高めることができる。また、自吸式の攪拌翼18の回転数を下げることも可能になり、モータ19の消費電力を減少させることができる。
【0025】
さらに、従来の直胴皿型の通気攪拌発酵槽1では、図4(b)に示すように、自吸式の攪拌翼5より吐出される気泡流が缶壁としての槽本体2の円筒状の胴部2aに当たって、そのまま垂直に上昇して発酵液Sの流れが悪かったが、本実施形態の逆円錐台型の通気攪拌発酵槽10では、図4(a)に示すように、自吸式の攪拌翼18より吐出される気泡流が逆円錐台状の傾斜部14に沿って流れるため、発酵液Sの流れが良くなり、発酵効率をより一段と高めることができる。
【0026】
尚、前記実施形態によれば、通気攪拌発酵槽10を食酢(酢酸)用の深部発酵槽として用いた場合について説明したが、食酢(酢酸)用以外の醸造用等の深部発酵槽として用いても良い。
【0027】
また、逆円錐台状の傾斜部14の元の円錐の頂角θを90°に設定したが、この円錐の頂角θは90°に限定されるものではなく、自吸式の攪拌翼18から吐出された気泡の自然な動きと対応する角度であれば、60°〜120°(好ましくは、80°〜100°)の範囲内でも良い。さらに、逆円錐台状の傾斜部14の上辺部分の長さMを3.6mに、下辺部分の長さNを1.8mにそれぞれ設定したが、上辺部分の長さMを1m〜2.5mの範囲内に、下辺部分の長さNを1.5m〜5mの範囲内にそれぞれ設定しても良い。
【0028】
さらに、前記実施形態によれば、槽本体11の傾斜部14を逆円錐台状に形成したものを用いたが、図5に示す変形例のように、外側に湾曲した断面逆ハ字状で円環状の傾斜部14′を用いても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の通気攪拌発酵槽を示す断面図である。
【図2】上記通気攪拌発酵槽の傾斜部の説明図である。
【図3】上記通気攪拌発酵槽の槽内液量と液高さの関係を示す説明図である。
【図4】(a)は上記通気攪拌発酵槽の通気攪拌状態(発酵液の流れ)を示す説明図、(b)は従来の通気攪拌発酵槽の通気攪拌状態(発酵液の流れ)を示す説明図である。
【図5】上記通気攪拌発酵槽の傾斜部の変形例を示す説明図である。
【図6】従来の通気攪拌発酵槽の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 通気攪拌発酵槽
11 槽本体
12 円筒状の胴部
12b 下側開口部(下端部)
13 蓋部
14 逆円錐台状(断面逆ハ字状で円環状)の傾斜部
14′ 断面逆ハ字状で円環状の傾斜部
15 底部
15b 外周部
18 自吸式の攪拌翼(攪拌翼)
S 発酵液
θ 傾斜部の元の円錐の頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部と該胴部の上,下側に位置する蓋部及び底部を備えた槽本体内に発酵液を充填し、この槽本体の底部の中央に配設された攪拌翼の回転で前記発酵液を通気攪拌するようにした通気攪拌発酵槽において、
前記槽本体の胴部の下端部と底部の外周部との間に断面逆ハ字状で円環状の傾斜部を連続して形成したことを特徴とする通気攪拌発酵槽。
【請求項2】
請求項1記載の通気攪拌発酵槽であって、
前記傾斜部を逆円錐台状に形成したことを特徴とする通気攪拌発酵槽。
【請求項3】
請求項2記載の通気攪拌発酵槽であって、
前記逆円錐台状の傾斜部の元の円錐の頂角を60°〜120°に設定したことを特徴とする通気攪拌発酵槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−136250(P2007−136250A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329081(P2005−329081)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【出願人】(301058333)株式会社ミツカンサンミ (13)
【Fターム(参考)】