説明

通電加熱装置

【課題】簡便な構成で、しかも、容器内の処理対象物の全体を確実に攪拌しながら加熱して、処理対象物の品質を向上する。
【解決手段】容器1内に対を成す電極部2,3が設けられ、当該対を成す電極部2,3間に電圧を印加して容器1内に収容された処理対象物Wを通電加熱する通電加熱装置であって、容器1が有底円筒形状に形成され、容器1の中心軸X周りで回転して容器1内の処理対象物Wを攪拌する攪拌部材12を備え、対を成す電極部2,3のそれぞれが、容器1の中心軸Xを含む平面Zを挟んだ両側に、容器1の内周面1dとの間にそれぞれ隙間Aを形成した状態で配置され、対を成す電極部2,3のそれぞれが、容器1の中心軸X周りで複数に分割され、当該分割された各電極2a,2b,2c,2dの隣接間及び各電極3a,3b,3c,3dの隣接間に処理対象物Wが移動可能な間隙Cを形成して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に対を成す電極部が設けられ、当該対を成す電極部間に電圧を印加して容器内に収容された処理対象物を通電加熱する通電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる通電加熱装置は、容器内に設けられた対を成す電極部間に電圧を印加して、当該対を成す電極部間に存在する処理対処物自身の電気抵抗により発熱させるジュール加熱(直接通電加熱)を行うことで、処理対象物を加熱するように構成されている(例えば、特許文献1及び2)。このような処理対象物としては、例えば、カスタードクリームやホワイトソース等の液状の流動性食品材料や、水にPVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性ポリマーを含む固液混合液等、比較的粘性が高い(加熱に伴い粘性が高くなるものを含む)粘性材料が例示できる。
【0003】
かかる通電加熱装置として、例えば、特許文献1には、合成樹脂等の電気絶縁性物質を用いて有底円筒形状に形成された容器内に、対を成す電極部として、容器の内周面を構成するように容器の内周面側に全周に亘って貼り付けられた外側電極部と、容器の上方から挿入され、容器の中心に配設された円筒状の内側電極部とが設けられた構成が開示されている。この通電加熱装置では、外側電極部と内側電極部との間の距離を全周に亘って同一距離とすることができ、これら電極部間に存在する処理対象物を均一に通電加熱できるとされている。
【0004】
また、かかる通電加熱装置として、例えば、特許文献2には、合成樹脂等の電気絶縁性物質を用いて有底円筒形状に形成された容器内に、対を成す電極部として、容器の内周面を構成するように容器の内周面側に全周に亘って貼り付けられた外側電極部と、容器の上方から挿入され、容器の中心から所定距離だけ外側電極部側に偏移した位置にある円筒状の内側電極部とが設けられた構成が開示されている。この通電加熱装置では、内側電極部が容器の中心周りに公転して、処理対象物を均一に通電加熱しながら攪拌を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315549号公報
【特許文献2】特開2003−157956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された通電加熱装置では、導電性金属からなる外側電極部は合成樹脂等からなる容器の内周側に貼り付けられているが、一般に合成樹脂と金属との接着は困難であり、当該接着部分のシール機能を長期間維持させることは困難である。また、外側電極部は、電流が流れるため、容器の内周側で、しかも、容器の上端部分(合成樹脂部分)よりも下方側に配設されるが、このように容器の外部から奥まった箇所にある外側電極部に電流を供給する通電コードを接続するためには、複雑な構成を採用する必要があるとともに、接続部分にシール機能を持ったシール部材を配設する必要がある。
従って、これら通電加熱装置では、電極部の接着やシール構造等において装置構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
一方で、通電加熱装置として、電極部を容器に貼り付けずに、対と成る電極部の両方を、容器内に配設する構成を採用することも考えられている。例えば、図6に示すように、有底円筒形状の容器60の上方から対と成る電極部(一方側電極部61、他方側電極部62)を当該容器60内に挿入し、一方側電極部61と他方側電極部62とを、容器60の中心軸Xを含む平面Zを挟んだ両側に配置した通電加熱装置100が例示できる。これら一方側電極部61及び他方側電極部62のそれぞれは、容器60内に挿入された状態で容器60の中心軸Xに沿う方向に長尺な板状の電極であり、容器60の内周面60aに沿って円弧状に湾曲した形状に構成される。
【0008】
この通電加熱装置100では、対と成る電極部61,62を容器60内に配設する際においてシール等を必要としないため、装置構成が比較的簡便となる。しかしながら、対と成る電極部61,62のそれぞれが容器60の内周面60aに沿って円弧状に湾曲した板状に構成されているため、容器60内に挿入配置された状態では、対と成る電極部61,62の外周面61a,62aと容器60の内周面60aとの間(容器60の内周面60aよりも内径側)には隙間Aが生じることとなる。この場合、対と成る電極部61,62間に電圧を印加しても当該隙間Aに存在する処理対象物Wには電流が流れないため、当該処理対象物Wを加熱することができず、容器60内の処理対象物Wには非加熱部分と加熱部分とが存在してしまい、製品の品質が低下する虞がある。
【0009】
また、この通電加熱装置100に、容器60内において当該容器60の中心軸X周りで回転する攪拌部材63を設け、対と成る電極部61,62間の処理対象物Wを攪拌する構成とすることも考えられている。しかしながら、上述のとおり、対と成る電極部61,62が容器60の内周面60aに沿って円弧状に湾曲した板状に構成されているため、攪拌部材63により処理対象物Wを攪拌しても、上記隙間Aに存在する処理対象物Wは攪拌されずに滞留し、滞留した処理対象物Wは非加熱部分として残留してしまうこととなる。すなわち、図6の矢印で示すように、処理対象物Wは中心軸Xを中心とする渦状に攪拌されるが、一方側電極部61や他方側電極部62の上流側端部61b,62b近傍では、処理対象物Wが隙間Aに入り込まずに中心軸X側に移動して渦状に攪拌されるため、上記隙間A内や上流側端部61b,62b近傍に処理対象物Wが滞留し、残留するのである。特に、当該処理対象物Wの粘度が高い場合や上記隙間Aの間隔が狭い場合等には、上記隙間Aに処理対象物Wがより滞留し易くなる虞がある。
さらに、容器60内を洗浄する場合において攪拌部材63を回転させたとしても、洗浄用の流体を上記隙間Aに十分に通流させることが困難となるため、当該隙間A内や上流側端部61b,62b近傍に残留した処理対象物Wを確実に洗い落とすことができず未洗浄状態となったり、或いは確実に洗浄するために多大な労力が必要となる問題がある。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構成で、しかも、容器内の処理対象物の全体を確実に攪拌しながら加熱して、処理対象物の品質を向上できる通電加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る、容器内に対を成す電極部が設けられ、当該対を成す電極部間に電圧を印加して前記容器内に収容された処理対象物を通電加熱する通電加熱装置の特徴構成は、
前記容器が有底円筒形状に形成され、前記容器の中心軸周りで回転して前記容器内の処理対象物を攪拌する攪拌部材を備えるとともに、
前記対を成す電極部のそれぞれが、前記容器の中心軸を含む平面を挟んだ両側に、前記容器の内周面との間にそれぞれ隙間を形成した状態で配置され、
前記対を成す電極部のそれぞれが、前記容器の中心軸周りで複数に分割され、当該分割された各電極の隣接間に前記処理対象物が移動可能な間隙を形成して配置される点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、容器内の処理対象物が攪拌部材により容器の中心軸周りで攪拌された際には、処理対象物を、強制的に、分割された各電極の隣接間に形成された間隙を介して、各電極の外側と容器の内周面との間に形成された隙間に移動させることができ、これら隙間に存在する処理対象物を流動化することができる。従って、これら隙間に存在する処理対象物の滞留が防止され、容器内に存在する処理対象物の全体が、対を成す電極部間において加熱及び攪拌が繰り返されることとなり、上記隙間に存在する処理対象物が未加熱状態で残留することを確実に防止することができる。
【0013】
また、対を成す電極部を容器に貼り付けることなく容器の内周面に対して隙間を形成した状態で容器内に配設する構成を採用することができるとともに、電極部に電流を通流するための通電コード等を設置する際には、容器内の処理対象物と接触しないようにするためのシール部材等を設ける必要が無くなるので、非常に簡便な構成とすることができる。
さらには、容器内の洗浄の際に攪拌部材を回転させることにより、各電極の外側と容器の内周面との間の隙間に、上記各電極の隣接間の間隙を介して洗浄用の液体を確実に通流させることができ、容器内、特に上記隙間の洗浄を確実且つ容易に行うことができる。
【0014】
よって、仮に処理対象物の粘度が比較的高い場合であっても、簡便な構成で、しかも、容器内の処理対象物の全体を確実に攪拌しながら加熱して、処理対象物の品質を向上することができる。
【0015】
本発明に係る通電加熱装置の更なる特徴構成は、前記各電極が柱状の長尺部材で構成され、前記長尺部材のそれぞれの軸芯が前記容器の中心軸と平行となるように、前記容器の上方から前記容器内に挿入して配置される点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、柱状の長尺部材で構成された各電極の全てを、長尺部材のそれぞれの軸芯が容器の中心軸と平行となるように、容器の上方から容器内に挿入して配置することができるので、これら電極の容器内への配設は、非常に容易に、且つ簡便に行うことができる。
また、各電極はそれぞれ柱状に形成されているので、容器内に配設された状態において、これら各電極は容器の径方向に厚みを有することとなる。そのため、容器の中心軸周りで回転する攪拌部材により処理対象物が攪拌されることで、これら各電極は攪拌される処理対象物に対して邪魔板として機能することとなり、処理対象物の攪拌を促進することができる。加えて、各電極の隣接間に形成される間隙が、容器の径方向に厚みを有することとなるので、上記邪魔板による処理対象物の攪拌の促進とも相俟って、これら間隙に移動させられる処理対象物の量が増大して、各電極の外側と容器の内周面との間に形成される隙間に、より多くの処理対象物が移動することとなる。従って、攪拌部材が回転することにより生じる容器の中心軸周りでの処理対象物の渦状の流動を、より促進することができる。
【0017】
本発明に係る通電加熱装置の更なる特徴構成は、前記対を成す電極部のそれぞれを構成する前記各電極が、前記容器の中心軸を含む平面に対して対称となるように、前記容器の中心軸を中心とする円周上に湾曲配置される点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、各電極は、容器の中心軸からの距離が同一となるように当該中心軸を中心とする同一円周上に湾曲配設されるため、容器の中心軸周りで回転する攪拌部材の回転半径を、各電極に接触しない状態で、かつ可能な限り大きく設定することができる。従って、容器の外形を大きくすること無く、攪拌部材が回転することにより生じる容器の中心軸周りでの処理対象物の渦状の流動を、より一層促進することができる。
【0019】
本発明に係る通電加熱装置の更なる特徴構成は、前記各電極に流れる電流が同一値となるように、電流印加部が前記対を成す電極部間に電圧を印加する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、例えば、対を成す電極部を構成する各電極間の距離(容器の中心軸を含む平面を挟んだ両側に配置される各電極間の距離)が相互に異なる等の各電極の配置関係による影響等に基づいて、各電極に流れる電流が相互に異なる値となることが想定される場合であっても、電流印加部が、各電極に流れる電流が同一値となるように、電極部間に電圧を印加することができる。
これにより、各電極の配置を変更等したとしても、電極部間に存在する処理対象物に電流値が同一の電流を確実に流すことができ、処理対象物の均一な通電加熱を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】通電加熱装置の概略側面視図
【図2】攪拌タンクの横断面視図
【図3】攪拌タンク及び通電加熱機構を示す概略構成図
【図4】別実施形態に係る攪拌タンクの横断面視図
【図5】別実施形態に係る攪拌タンクの横断面視図
【図6】従来の通電加熱装置における容器の横断面視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図3に基づいて、本発明の通電加熱装置50の実施の形態を説明する。
【0023】
通電加熱装置50は、図1に示すように、内部に処理対象物Wを収容する攪拌タンク1(容器の一例)と、攪拌タンク1内に設けられる一方側電極部2,他方側電極部3(対を成す電極部)間に電圧を印加して、攪拌タンク1内に収容された処理対象物Wを通電加熱する通電加熱機構Hと、攪拌タンク1内の処理対象物Wを攪拌する攪拌機構Kと、攪拌タンク1等を支持する支持基台Bとを備える。
すなわち、通電加熱装置50は、攪拌タンク1内に収容された処理対象物Wを、一方側電極部2と他方側電極部3との間に電圧を印加することで処理対象物W自身の電気抵抗により発熱させて加熱しながら、攪拌機構Kにより攪拌することにより、処理対象物Wの加熱処理,溶解処理を行うことができるように構成されている。
【0024】
なお、このような処理対象物Wとしては、例えば、カスタードクリームやホワイトソース等の液状の流動性食品材料や、水にPVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性ポリマーを含む固液混合液等、比較的粘性が高い(加熱に伴い粘性が高くなるものを含む)粘性材料が例示できるが、以下では、処理対象物Wとして、水にPVAを含む固液混合液を用いている。
以下、通電加熱装置50の各部の構成について説明する。
【0025】
支持基台Bは、図1に示すように、側面視で概略コ字形状に形成され、攪拌タンク1を載置して支持可能な下部基台30と、攪拌タンク1の上部に配設される蓋体4を上下方向に移動可能な移動機構(図示せず)が配設された上部基台31と、下部基台30に連接され上部基台31を支持する柱部32とを備えて構成される。
【0026】
攪拌タンク1は、有底円筒形状に形成され、電気絶縁性及び耐熱性を備えた樹脂で構成されている。攪拌タンク1の上部には、処理対象物Wを投入可能な開口部1aが形成され、当該開口部1aを開放及び閉鎖自在な円板状の蓋体4が配設されている。攪拌タンク1の底部の中心部には、加熱処理,溶解処理された処理対象物Wを排出する排出口1bが設けられ、開閉弁1cを介して外部へ排出可能に構成されている。なお、本実施例では、攪拌タンク1の内径は、約312mmとされている。
【0027】
蓋体4の中心部には、上方側に突出する円筒状のボス部4aが形成され、当該ボス部4aの内径側には、後述する攪拌機構Kの駆動軸10を挿通する貫通孔4bが設けられている。また、蓋体4の外周部には、一方側電極部2及び他方側電極部3を取付ける複数の取付部4c(例えば、8つ)が配設されている。各取付部4cには、蓋体4の上面と下面とを貫通する電極用貫通孔4dが設けられ、当該電極用貫通孔4dに一方側電極部2,他方側電極部3において縮径された上端部を挿入して、一方側電極部2及び他方側電極部3を蓋体4に垂下状態で取付け固定可能に構成されている。なお、電極用貫通孔4dと一方側電極部2及び他方側電極部3の上端部との接触部分には、電気絶縁性の絶縁ブッシュ(図示せず)が設けられ、蓋体4と一方側電極部2及び他方側電極部3との間での絶縁が図られている。
【0028】
さらに、蓋体4においてボス部4aよりも外周側には、攪拌タンク1内の処理対象物Wの温度を計測可能な管状の測熱抵抗体からなる温度センサ5が配設され、検出温度を後述する制御部21に出力可能に構成されている(図3参照)。
【0029】
攪拌機構Kは、駆動軸10を回転駆動させる駆動モータ11と、駆動軸10の下部に配設された平板状の攪拌羽根12(攪拌部材の一例)とを備える。
駆動モータ11は、蓋体4の貫通孔4bに駆動軸10を挿通した状態で、固定ブラケット13を介して締結ボルト(図示せず)により蓋体4の上面に固定されている。駆動軸10は、攪拌タンク1の中心軸Xと同軸で回転可能に構成され、処理対象物Wの種類、通電加熱機構Hにより印加される電圧、一方側電極部2及び他方側電極部3の配置等に応じて、適切な回転数で回転するように設定されている。例えば、本実施例では、駆動軸10の回転数は、一分間に60回転の回転数に設定されている。
【0030】
平板状に形成された攪拌羽根12は概略長方形状に形成され、その長手方向を駆動軸10に沿わせ、短手方向を駆動軸10の回転半径方向に沿わせた状態で、駆動軸10の下部(駆動軸10の略下半分の部分)に配設されている。短手方向における攪拌羽根12の下部両側部14は、駆動軸10の下端よりも若干下方に延出するように配設されている。また、攪拌羽根12には、平板状に形成された厚み方向に貫通する長方形状の攪拌口15が、短手方向において駆動軸10に対して対称となる位置に二対(合計、4つ)設けられている。なお、本実施例では、攪拌羽根12の短手方向の長さ(回転半径)が、約60mmとなるように形成されている。
従って、攪拌羽根12は、駆動モータ11により攪拌タンク1の中心軸X周りで回転駆動されることで、図1及び図2に示すように、攪拌タンク1内において、処理対象物Wを中心軸X周りで渦状に流動させるとともに、当該中心軸X近傍では底部に向かい、順次、底部では攪拌タンク1の内周面1dに、内周面1dでは上部に、上部では中心軸X側に向かうように循環流動させることができる。
【0031】
通電加熱機構Hは、図1〜図3(特に、図3)に示すように、攪拌タンク1内に対向配置される一方側電極部2及び他方側電極部3と、一方側電極部2及び他方側電極部3間に電圧を印加する電圧印加部20とを備える。電圧印加部20は、支持基台Bの上部基台31に配設される。なお、電圧印加部20に電流を通電する電源Sとしては、商用電源や高周波電源等、特に制限されないが、本実施例では、商用電源の三相交流電源(200V)を用いた。
【0032】
一方側電極部2は、複数本の円柱状(柱状の一例)の長尺部材で構成され、本実施例では、4本の長尺部材(以下、各一方側電極2a,2b,2c,2dと記載する場合がある)で構成されている。同様に、他方側電極部3も、複数本の円柱状(柱状の一例)の長尺部材で構成され、本実施例では、4本の長尺部材(各他方側電極3a,3b,3c,3dと記載する場合がある)で構成されている。各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの上端に配設される通電端子(図示せず)が、蓋体4に垂下状態で取付けられた状態において当該蓋体4の上面から突出した状態となり、後述する電気回路を介して電源Sに接続される。一方側電極部2及び他方側電極部3は、上述のように電源Sとして三相交流電源を用いた場合に腐食を防止するため、チタン電極に導電性のアルミニウムが溶射されて形成されている。なお、本実施例では、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dとして、外径が約30mmの円柱状の長尺部材を用いた。
【0033】
ここで、図1に示すように、長手部材で構成される一方側電極部2及び他方側電極部3は、攪拌タンク1の縦断面視において、攪拌タンク1の上方から開口部1aを介して挿入され、長手部材の軸芯が攪拌タンク1の中心軸Xと平行となるように配置されて、当該長手部材の下端が攪拌タンク1の内周面1dにおける鉛直部分の下端付近に位置するように配置されるが、攪拌タンク1の横断面視における、一方側電極部2及び他方側電極部3の配設位置について説明を加える。当該配置位置は、図2及び図3に示すように、攪拌タンク1の横断面視において、一方側電極2と他方側電極3とが、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zを挟んだ両側に配設され、一方側電極部2の外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間に隙間Aを形成し、他方側電極部3の外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間に隙間Aをそれぞれ形成した状態で配置されている。なお、本実施例では、当該隙間Aは約7mmに設定されている。
【0034】
そして、攪拌タンク1の横断面視において、各一方側電極2a,2b,2c,2dが、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間に処理対象物Wが移動可能な間隙Cを形成するように、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする円周上に湾曲配置されている。同様に、攪拌タンク1の横断面視において、各他方側電極3a,3b,3c,3dが、各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に処理対象物Wが移動可能な間隙Cを形成するように、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする円周上に湾曲配置されている。
【0035】
従って、一方側電極部2は、攪拌タンク1の中心軸X周りで複数の各一方側電極2a,2b,2c,2dに分割され、他方側電極部3は、攪拌タンク1の中心軸X周りで複数の各他方側電極3a,3b,3c,3dに分割されて配置されている。また、図3に示すように、一方側電極2aと当該一方側電極2aに対して対を成す他方側電極3aとからなる第1電極対T1、一方側電極2bと当該一方側電極2bに対して対を成す他方側電極3bとからなる第2電極対T2、一方側電極2cと当該一方側電極2cに対して対を成す他方側電極3cとからなる第3電極対T3、一方側電極2dと当該一方側電極2dに対して対を成す他方側電極3dとからなる第4電極対T4が形成されている。よって、図2及び図3に示すように、これら各電極対を構成する各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dは、攪拌タンク1の横断面視において、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Z(図3において破線で示す)に対してそれぞれ対称となるように、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする同一円周上に湾曲配置される。なお、本実施例では、攪拌タンク1の横断面視において、攪拌タンク1の中心軸Xから各一方側電極2a,2b,2c,2dの軸芯及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの軸芯までの距離は、約134mmに設定される。
【0036】
なお、本実施例では、図2及び図3に示すように、各一方側電極2a,2b,2c,2dは、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して当該中心軸X周りで反時計回りに45度回転させた位置に一方側電極2aが配置され、当該位置から中心軸X周りで反時計回りに30度ずつ角度を空けて、その他の一方側電極2b,2c,2dがそれぞれ等間隔に配置されるように構成されている。同様に、各他方側電極3a,3b,3c,3dは、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して当該中心軸X周りで時計回りに45度回転させた位置に他方側電極3aが配置され、当該位置から中心軸X周りで時計回りに30度ずつ角度を空けて、その他の他方側電極3b,3c,3dがそれぞれ等間隔に配置されるように構成されている。従って、本実施例では、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間や各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に形成される間隙Cの距離は、約50mmに設定されている。
【0037】
電圧印加部20は、図3に示すように、一方側電極部2及び他方側電極部3間に電圧を印加可能で、さらに、各電極対に対して個別に電圧を印加可能に構成され、主として制御部21を備えた電気回路により構成されている。本実施例では、第1電極対T1及び第4電極対T4のそれぞれに対して所定の第1電圧を印加し、第2電極対T2及び第3電極対T3のそれぞれに対して所定の第2電圧(第1電圧とは異なる電圧)を印加する場合について説明する。
【0038】
具体的には、図3に示すように、電源Sに接続された分電盤22の一方の端子に第1絶縁トランス23の一方の端子を接続し、当該第1絶縁トランス23の一方の端子に第1電極対T1の一方側電極2a及び第4電極対T4の一方側電極2dを並列に接続する。同様に、電源Sに接続された分電盤22の他方の端子に第1絶縁トランス23の他方の端子を接続し、当該第1絶縁トランス23の他方の端子に第1電極対T1の他方側電極3a及び第4電極対T4の他方側電極3dを並列に接続する。
また、電源Sに接続された分電盤22の一方の端子に第2絶縁トランス24の一方の端子を接続し、当該第2絶縁トランス24の一方の端子に第2電極対T2の一方側電極2b及び第3電極対T3の一方側電極2cを並列に接続する。同様に、電源Sに接続された分電盤22の他方の端子に第2絶縁トランス24の他方の端子を接続し、当該第2絶縁トランス24の他方の端子に第2電極対T2の他方側電極3b及び第3電極対T3の他方側電極3cを並列に接続する。なお、分電盤22の一方の端子と他方の端子との電位差は、例えば、約400Vとされている。
【0039】
ここで、第1絶縁トランス23及び第2絶縁トランス24の変圧特性は、各電極対間の距離(攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zを挟んだ両側に配置される各電極間の距離)等の配置や処理対象物Wの特性等の条件を勘案して、各電極2a,2b,2c,2d、3a,3b,3c,3dに流れる電流が略同一値となるように予め設定されている。なお、本実施例では、一方側電極2bと他方側電極3bとの間(第2電極対T2間)及び一方側電極2cと他方側電極3cとの間(第3電極対T3間)のそれぞれの距離(約240mm)は、一方側電極2aと他方側電極3aとの間(第1電極対T1間)及び一方側電極2dと他方側電極3dとの間(第4電極対T4間)のそれぞれの距離(約170mm)よりも長いので、第2電極対T2間及び第3電極対T3間にそれぞれ印加する第2電圧を、第1電極対T1間及び第4電極対T4間にそれぞれ印加する第1電圧よりも大きくして、各電極2a,2b,2c,2d、3a,3b,3c,3dに流れる電流が略同一値となるように適切に設定されている。
【0040】
また、第1絶縁トランス23と分電盤22との間には、第1絶縁トランス23に供給される電力を計測して制御部21に計測結果を出力する第1電力計測部25を備える。また、電源Sからの電流を制御部21からの指令に基づいて遮断する第1サイリスタ26を、分電盤22の一方の端子と第1電力計測部25との間に備える。同様に、第2絶縁トランス24と分電盤22との間には、第2絶縁トランス24に供給される電力を計測して制御部21に計測結果を出力する第2電力計測部27を備える。また、電源Sからの電流を制御部21からの指令に基づいて遮断する第2サイリスタ28を、分電盤22の一方の端子と第2電力計測部27との間に備える。これにより、制御部21は、温度センサ5からの検出温度に基づいて、電源Sからの電流を各別に遮断できるとともに、確実に遮断できているか否かを確認することができる。
【0041】
次に、通電加熱装置50を用いて、処理対象物Wを加熱処理,溶解処理する運転動作について説明する。
まず、下部基台30に載置された状態の攪拌タンク1内に、攪拌タンク1の開口部1aを介して処理対象物WであるPVA粉末を所定量投入する。上部基台31に設けられた移動機構を作動させ、攪拌機構K並びに一方側電極部2及び他方側電極部3が取付け固定された蓋体4を、攪拌タンク1の開口部1aを閉塞するように載置してクランプ部材(図示せず)により固定する。そして、駆動軸10の回転駆動を開始することで、攪拌タンク1の中心軸X周りで回転可能に配設された攪拌羽根12の回転を開始する。具体的には、制御部21が駆動モータ11に駆動開始指令を出力して、駆動軸10に設けられた攪拌羽根12を攪拌タンク1の中心軸X周りで一分間当たり60回転の回転数で回転させる。この状態で、蓋体4に設けられた給水口(図示せず)から水を所定量供給する。
【0042】
次に、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zを挟んで対向する位置に配設された一方側電極部2と他方側電極部3との間の通電を開始する。具体的には、制御部21は、第1サイリスタ26及び第2サイリスタ28に接続指令を出力して、電源Sから電流を通電させ、第1電極対T1間及び第4電極対T4間へは第1電圧の印加、第2電極対T2間及び第3電極対T3間へは第2電圧の印加を開始させる。
【0043】
これにより、図2及び図3に示すように、攪拌タンク1内の処理対象物Wは、中心軸X周りで渦状に流動するとともに、中心軸X近傍では底部に向かい、順次、底部では攪拌タンク1の内周面1dに、内周面1dでは上部に、上部では中心軸X側に向かうように循環流動する。この処理対象物Wの流動に伴い、当該処理対象物Wは、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間に形成された間隙C及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に形成された間隙Cに強制的に移動する。そして、これら間隙Cを介して、各一方側電極2a,2b,2c,2dの外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間の隙間A及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間の隙間Aに、処理対象物Wを移動させることで、これら隙間Aに存在する処理対象物Wが流動化する。従って、これら隙間Aに存在する処理対象物Wの滞留が防止され、攪拌タンク1内に存在する処理対象物Wの全体が、一方側電極部2及び他方側電極部3間(各電極対間)において加熱及び攪拌が繰り返されることとなり、上記隙間Aに存在する処理対象物Wが未加熱状態で残留することを確実に防止することができる。
【0044】
特に、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dはそれぞれ柱状に形成されているので、攪拌タンク1内に配設された状態において、これら電極は攪拌タンク1の径方向に厚みを有することとなる。これにより、攪拌タンク1の中心軸X周りで回転する攪拌羽根12により処理対象物Wが攪拌されることで、これら電極は攪拌される処理対象物Wに対して邪魔板として機能する。従って、処理対象物Wの攪拌を促進することができる。また、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に形成される間隙Cが、攪拌タンク1の径方向に厚みを有することとなるので、上記邪魔板による処理対象物Wの攪拌の促進とも相俟って、これら間隙Cに移動させられる処理対象物Wの量が増大して、各一方側電極2a,2b,2c,2dの外側と攪拌タンク1の内周面1a及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの外側と攪拌タンク1の内周面1aとの間に形成される隙間Aに、より多くの処理対象物Wが移動することとなる。従って、攪拌羽根12が回転することにより生じる攪拌タンク1の中心軸X周りでの処理対象物Wの渦状の流動を、より促進することができる。
【0045】
また、円柱状の長尺部材で構成された各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの全てを、長尺部材のそれぞれの軸芯が攪拌タンク1の中心軸Xと平行となるように、攪拌タンク1の上方から攪拌タンク1内に挿入して配置するだけでよいので、これら電極の攪拌タンク1内への配設は、非常に容易に、且つ簡便に行うことができる。
【0046】
一方、攪拌タンク1内の処理対象物Wを攪拌しながら加熱している状態では、各電極に流れる電流は略同一値となるため、処理対象物Wは均一に加熱される。また、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dは、円柱状に形成されているので、各電極間での通電は全円周上から偏りなく行われ電流の流れに広がりが生じ易く、通電面積が広くなって、処理対象物Wの均一な加熱をより確実に実現することができる。
【0047】
そして、処理対象物Wの攪拌及び加熱を継続し、温度センサ5から制御部21に入力された検出温度が、処理対象物Wの加熱処理及び溶解処理が終了したと判断できる所定温度(例えば、約90℃)となった場合には、当該所定温度を所定時間(例えば、5分)維持した後、制御部21は、第1サイリスタ26及び第2サイリスタ28に接続解除指令を出力し、各電極対への電力の供給を停止する。そして、制御部21は、開閉弁1cを開いて、加熱処理及び溶解処理が完了した処理対象物Wを外部に排出する。
【0048】
その後、攪拌タンク1内に残留した処理対象物Wを洗浄する際には、開閉弁1cを閉じた状態で攪拌タンク1内に洗浄用の液体を導入し、攪拌羽根12を回転させることで、一方側電極部2の外側と攪拌タンク1の内周面1d及び他方側電極部3の外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間の隙間Aに、上記各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3d間の間隙Cを介して洗浄用の液体を確実に通流させることができ、攪拌タンク1内、特に上記隙間Aの洗浄を確実且つ容易に行うことができる。この際には、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dは、円柱状に構成されているため、処理対象物Wが付着しても洗浄用の液体により処理対象物Wが剥離しやすくなる利点がある。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dを、柱形状の一例として円柱状の長手部材で構成したが、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間や各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に処理対象物Wが移動可能な間隙Cを形成可能な構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、多角柱状の長手部材で構成することができ、より具体的には、図4に示すように、四角柱状の長手部材で構成することもできる。
【0050】
(2)上記実施形態では、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dを、柱形状の一例として円柱状の長手部材で構成し、攪拌タンク1の横断面視において、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して対称となるように、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする同一円周上に湾曲配置した。しかしながら、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間や各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に処理対象物Wが移動可能な間隙Cを形成可能な構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。
例えば、図5に示すように、各一方側電極2a,2b,2c,2d及び各他方側電極3a,3b,3c,3dとを四角柱状の長手部材で構成し、これら各一方側電極2a,2b,2c,2dと各他方側電極3a,3b,3c,3dとが、攪拌タンク1の横断面視において、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Z(図5において破線で示す)に対して対称となるように、当該平面Zに対して平行な直線上に配置してもよい。これにより、各一方側電極2a,2b,2c,2dと各他方側電極3a,3b,3c,3dとのそれぞれが、一対一で対応するように対を成す電極対が複数形成され、各電極対における各一方側電極(例えば、一方側電極2a)と各他方側電極(例えば、他方側電極3a)との距離が同一となり、各電極対の間に同一の電圧を印加した場合でも、各電極に略同一値の電流を流すことができ、処理対象物Wの通電加熱を均一に行うことができる。
また、各一方側電極2a,2b,2c,2dや各他方側電極3a,3b,3c,3dを円周上に湾曲配置する際には、例えば、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする円周上ではなく、別の箇所を中心とする円の円周上にそれぞれ湾曲配置してもよく、また、例えば、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とするが、当該中心軸Xからの距離が互いに異なる(異なる半径)円周上にそれぞれ湾曲配設してもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、各一方側電極2a,2b,2c,2dの隣接間に形成される間隙C、及び各他方側電極3a,3b,3c,3dの隣接間に形成される間隙Cをそれぞれ等間隔となるように形成したが、当該間隙Cに処置対象物Wを良好に移動可能な構成であれば、相互に異なる間隔を備えるように形成してもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では、4つの各一方側電極2a,2b,2c,2dを一方側電極部2とし、4つの各他方側電極3a,3b,3c,3dを他方側電極部3とした例を説明したが、複数の電極を一方側電極部2とし、当該一方側電極部2に対応する複数の電極を他方側電極部3とする構成であれば、それら電極数の多少については特に制限されず、採用することができる。
【0053】
(5)上記実施形態では、電圧印加部20が、第1電極対T1及び第4電極対T4を所定の第1電圧とし、第2電極対T2及び第3電極対T3を所定の第2電圧として、各電極に流れる電流を略同一値となるように構成したが、電流値にこだわらずに、各電極対に印加する電圧を略同一値に設定してもよい。
また、上記実施形態では、電源Sとして三相交流電源を用いたが、直流電源を採用してもよい。直流電源を用いた場合には、電圧の印加方向を所定時間毎に変更するように構成してもよい。
【0054】
(6)上記実施形態では、攪拌機構Kの攪拌部材として攪拌口15等を備えた平板状の攪拌羽根12を採用したが、特にこの構成に限定されるものではなく、攪拌タンク1内の処理対象物Wを十分に攪拌できる構成であれば、その他の構成の攪拌羽根や攪拌部材を採用することができる。また、攪拌タンク1の底部付近でのみ回転する攪拌羽根を採用してもよい。
【0055】
(7)上記実施形態では、処理対象物Wの排出口を、攪拌タンク1の底部に設けたが、特にこの構成に制限されるものではなく、例えば、蓋体4の導管を挿管して、当該導管を介して攪拌タンク1の上部から排出する構成としてもよい。また、上記実施形態では、図示しない移動機構により蓋体4を攪拌タンク1に対して上下方向に相対移動させたが、蓋体4に対して攪拌タンク1を上下方向に相対移動させる構成としてもよい。
【0056】
(8)上記実施形態では、処理対象物Wとして水にPVA粉体(水溶性ポリマー)を混合した固液混合液を用いて、加熱処理及び溶解処理を行うように構成したが、これに限らず、比較的粘性の高い粘性材料であるカスタードクリームやホワイトソース等の液状の流動性食品材料を用いて、加熱処理及び溶解処理、或いは殺菌等の加熱処理のみを行う構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、簡便な構成で、しかも、容器内の処理対象物の全体を確実に攪拌しながら加熱して、処理対象物の品質を向上できる通電加熱装置として良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 攪拌タンク(容器)
1d 内周面
2 一方側電極部(対を成す電極部)
2a,2b,2c,2d 各一方側電極
3 他方側電極部(対を成す電極部)
3a,3b,3c,3d 各他方側電極
12 攪拌羽根(攪拌部材)
20 電圧印加部
50 通電加熱装置
A 隙間
C 間隙
X 攪拌タンクの中心軸
Z 攪拌タンクの中心軸を含む平面
W 処理対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に対を成す電極部が設けられ、当該対を成す電極部間に電圧を印加して前記容器内に収容された処理対象物を通電加熱する通電加熱装置であって、
前記容器が有底円筒形状に形成され、前記容器の中心軸周りで回転して前記容器内の処理対象物を攪拌する攪拌部材を備えるとともに、
前記対を成す電極部のそれぞれが、前記容器の中心軸を含む平面を挟んだ両側に、前記容器の内周面との間にそれぞれ隙間を形成した状態で配置され、
前記対を成す電極部のそれぞれが、前記容器の中心軸周りで複数に分割され、当該分割された各電極の隣接間に前記処理対象物が移動可能な間隙を形成して配置される通電加熱装置。
【請求項2】
前記各電極が柱状の長尺部材で構成され、前記長尺部材のそれぞれの軸芯が前記容器の中心軸と平行となるように、前記容器の上方から前記容器内に挿入して配置される請求項1に記載の通電加熱装置。
【請求項3】
前記対を成す電極部のそれぞれを構成する前記各電極が、前記容器の中心軸を含む平面に対して対称となるように、前記容器の中心軸を中心とする円周上に湾曲配置される請求項2に記載の通電加熱装置。
【請求項4】
前記各電極に流れる電流が同一値となるように、電流印加部が前記対を成す電極部間に電圧を印加する請求項1〜3の何れか一項に記載の通電加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84348(P2012−84348A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228886(P2010−228886)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】