説明

造形用平箔糸及びそれを用いたシート類の装飾方法

【課題】 織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等からなるシート類に導入されて、特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を生じる造形用平箔糸及びそれを用いたシート類の装飾方法を提供する。
【解決手段】 造形用平箔糸Ta1、Ta2は、糸幅方向W及び糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料からなる一方側に配設された基材層1と、前記基材層1表面に設けられた装飾層2と、前記装飾層2表面に設けられた保護塗膜3と、前記保護塗膜3に接着剤層4を介して設けられた、糸幅方向Wに熱収縮性を有し且つ糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料、若しくは糸幅方向W及び糸長さ方向Lに熱収縮性を有する材料からなる他方側に配設された基材層5とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等からなるシート類に導入されて特異な立体感及び光沢性を生じる造形用平箔糸及びそれを用いたシート類の装飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金銀糸等の装飾糸として、例えば、ポリエステルフィルム等からなる基材層と、該基材層表面に設けられた金属蒸着膜、ホログラム層その他の装飾層と、該装飾層表面に設けられた保護塗膜とからなる積層構成や該積層構成における前記保護塗膜表面に接着剤層を介して第二の基材層を設けてなる積層構成、さらにそれらを適宜変形した積層構成を有する平箔糸が広く知られている(特許文献1)。
【0003】
他方、より多様な装飾性を発揮させるために、前記のような平箔糸を、丸撚り、蛇腹撚り、羽衣撚り等の態様で芯糸に巻き付け、撚糸加工してなる撚金銀糸が多用されるが、該撚金銀糸の製造には前記芯糸への平箔糸の撚糸加工の工程が必要とされる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−92834号(撚り金銀糸)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記問題点に鑑み、織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等からなるシート類に製織、製編、刺繍、縫製、接着その他の手段により導入され、特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を生じる造形用平箔糸及びそれを用いたシート類の装飾方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する請求項1に係る発明の造形用平箔糸は、塗膜及び接着剤層を除く少なくとも2層の基材層を含む平箔糸であって、一方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されると共に、他方側に配設された基材層が糸幅方向に熱収縮性を有し且つ糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されたことを特徴としている。
【0007】
前記造形用平箔糸の構成によれば、前記造形用平箔糸が前記布地その他のシート類に製織、製編、刺繍、縫製、接着その他の手段により導入され、他方側に配設された基材層に糸幅方向の熱収縮を生じさせる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸における糸幅方向に熱収縮性を有する前記他方側に配設された基材層が、糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する前記一方側に配設された基材層よりも前記糸幅方向に大きく収縮するため、前記造形用平箔糸が、前記他方側に配設された基材層を内面にして前記糸幅方向に沿って湾曲変形するように付勢される。前記造形用平箔糸は、前記のような糸幅方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化によって、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈するようになり、さらに該造形用平箔糸が導入されたシート類に特異な立体感、凹凸感を与えることになる。
【0008】
また、前記造形用平箔糸における他方側に配設された基材層の材料の物性を一部変更した構成の造形用平箔糸は、請求項2に記載のように、塗膜及び接着剤層を除く少なくとも2層の基材層を含む平箔糸であって、一方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されると共に、他方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する材料から形成されたことを特徴としている。
【0009】
前記造形用平箔糸の構成によれば、前記造形用平箔糸が前記布地その他のシート類に製織、製編、刺繍、縫製その他の手段により導入され、他方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮を生じる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸における糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する前記他方側に配設された基材層が、糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する前記一方側に配設された基材層よりも前記糸幅方向及び糸長さ方向に大きく収縮するため、前記造形用平箔糸が、前記他方側に配設された基材層を内面にして前記糸幅方向及び糸長さ方向に沿って湾曲変形するように付勢される。前記造形用平箔糸は、請求項1に記載の前記造形用平箔糸の場合における既述のような糸幅方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化によるのみならず、糸長さ方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化もこれに加味されて、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないのみならず、請求項1に記載の前記造形用平箔糸の場合をも越えるような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈するようになり、さらに該造形用平箔糸が導入されたシート類に特異な立体感、凹凸感を与えることになる。
【0010】
前記の請求項1及び2に記載の一方側に配設された基材層を形成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルム及びポリエステル系フィルム、並びにポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムや前記プラスチックフィルムフィルムを積層したフィルム、並びに紙及びそれとプラスチックとの混抄フィルム等から選ばれた材料であって、糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有するものが好適に使用される。
【0011】
また、前記の請求項1に記載の他方側に配設された基材層を形成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルム及びポリエステル系フィルム、並びにポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムや前記プラスチックフィルムフィルムを積層したフィルム、並びに紙とプラスチックとの混抄フィルム等から選ばれた材料であって、糸幅方向に熱収縮性を有し且つ糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有するものが好適に使用される。
【0012】
また、前記の請求項2に記載の他方側に配設された基材層を形成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルム及びポリエステル系フィルム、並びにポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムや前記プラスチックフィルムフィルムを積層したフィルム、並びに紙とプラスチックとの混抄フィルム等から選ばれた材料であって、糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有するものが好適に使用される。
【0013】
前記の請求項1及び2に記載の造形用平箔糸における一方側に配設された、糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する基材層の熱収縮率、並びに請求項1に記載の造形用平箔糸における他方側に配設された、糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する基材層の熱収縮率に特別の限定はなく、また請求項1に記載の造形用平箔糸における他方側に配設された、糸幅方向に熱収縮性を有する基材層の熱収縮率、並びに請求項2に記載の造形用平箔糸における他方側に配設された、糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する基材層の熱収縮率にも特別の限定はない。
【0014】
要は、前記一方側に配設された基材層の熱収縮率と他方側に配設された基材層の熱収縮率との関係で、造形用平箔糸の所要温度での加熱処理により、前記他方側に配設された基材層が、前記一方側に配設された基材層よりも前記糸幅方向又は糸幅方向及び糸長さ方向に大きく収縮して、糸幅方向又は糸幅方向及び糸長さ方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化を生じるような基材層の熱収縮率の組合せが選択されればよい。前記を前提として、前記の糸長さ方向又は糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する基材層の熱収縮率は、例えば、100℃(30分間)の熱水加熱条件下で7%以下、特に3%以下であることが好ましく、また糸幅方向又は糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する基材層の熱収縮率は、例えば、100℃(30分間)の熱水加熱条件下で25%以上、特に35%以上であることが好ましい。
【0015】
前記造形用平箔糸の積層構成は、塗膜及び接着剤層を除く少なくとも2層の基材層を含むものである限り特別の制限はなく、従来公知の平箔糸と同様の積層構成であってもよい。前記造形用平箔糸は、例えば、一方側に配設された基材層と、前記基材層表面に設けられた金属蒸着膜、ホログラム層その他の装飾層と、前記装飾層表面に設けられた保護塗膜と、前記保護塗膜に接着剤層を介して設けられた他方側に配設された基材層とからなるものであってもよい。また、前記造形用平箔糸は、例えば、一方側に配設された基材層と、前記基材層表面に設けられた金属蒸着膜、ホログラム層その他の装飾層と、前記装飾層表面に設けられた保護塗膜とからなる一方の装飾積層体、及び他方側に配設された基材層と、前記基材層表面に設けられた金属蒸着膜、ホログラム層その他の装飾層と、前記装飾層表面に設けられた保護塗膜とからなる他方の装飾積層体が、両保護塗膜間において接着剤層を介して接着一体化されてなるものであってもよい。
【0016】
なお、前記基材層における金属蒸着層等の装飾層との対向面に該装飾層との親和性向上、着色その他の目的で樹脂塗膜が形成されてもよく、また前記基材層の片面や両面に着色その他の目的で樹脂塗膜が形成されていてもよい。
【0017】
前記構成の造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法は、請求項3に記載のように、シート類に請求項1に記載の造形用平箔糸を導入する工程と、前記造形用平箔糸が導入されたシート類を、該造形用平箔糸が糸幅方向に所要の湾曲変形を生じる温度で加熱処理を施す工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
前記構成によれば、請求項1に記載の造形用平箔糸は、これが前記布地その他のシート類に導入されて加熱処理されると、既述のように、糸幅方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化によって、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈し、前記シート類に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与することを可能にする。
【0019】
また、前記構成の造形用平箔糸を用いた別のシート類の装飾方法は、請求項4に記載のように、シート類に請求項2に記載の造形用平箔糸を導入する工程と、前記造形用平箔糸が導入されたシート類を、該造形用平箔糸が糸幅方向及び糸長さ方向に所要の湾曲変形を生じる温度で加熱処理を施す工程とを含むことを特徴としている。
【0020】
前記構成によれば、請求項2に記載の造形用平箔糸は、これが前記布地その他のシート類に導入されて加熱処理されると、既述のように、糸幅方向及び糸長さ方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化によって、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないのみならず、請求項1に記載の前記造形用平箔糸の場合をも越えるような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈し、前記シート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、さらに硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。
【0021】
前記シート類として、既述のように、例えば織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等が含まれ、該シート類への前記造形用平箔糸の導入手段として、例えば製織、製編、刺繍、縫製、接着その他の手段が挙げられる。前記織物への前記造形用平箔糸の導入に際しては、該造形用平箔糸が縦糸及び/緯糸として使用されてもよい。また、前記加熱処理は、湿熱法、乾熱法の何れであってもよい。
【0022】
請求項2に記載の前記造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法においては、既述のように、シート類に導入された造形用平箔糸は、該シート類の加熱処理によって糸幅方向及び糸長さ方向に所要の湾曲変形を生じており、その場合、該造形用平箔糸における一方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されると共に、他方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する材料から形成されている。従って、前記シート類の装飾方法により装飾されたシート類は、これを、導入された各造形用平箔糸が特に糸長さ方向に沿って更なる湾曲変形を呈するような所要の形状に保形しつつ前記の加熱処理温度を越える温度で加熱処理することにより、前記形状に固定することもできる。前記のようなシート類の形状固定は、例えば布地の折り目加工や身体補整下着等の形状保持に有用である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明の造形用平箔糸は、布地その他のシート類に導入されて所要温度で加熱処理されることにより、糸幅方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化を生じ、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈し、シート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与することを可能にする。
【0024】
請求項2に係る発明の造形用平箔糸は、布地その他のシート類に導入されて所要温度で加熱処理されることにより、糸幅方向及び糸長さ方向に沿った湾曲変形による断面形状及び表面形状の湾曲変化を生じ、矩形断面と平坦表面を有する通常の平箔糸には見られないのみならず、請求項1に記載の前記造形用平箔糸の場合をも越えるような特異な立体感と撚金銀糸に類似した特異な光沢性を呈し、シート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、さらに硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。
【0025】
請求項3に係る発明の造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法は、請求項1に係る発明の前記作用効果に基づき、布地その他のシート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、さらに硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。
【0026】
さらに、請求項4に係る発明の造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法は、請求項2に係る発明の前記作用効果に基づき、布地その他のシート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、さらに硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。また、前記装飾方法により装飾されたシート類は、これを、導入された各造形用平箔糸が特に糸長さ方向に沿って更なる湾曲変形を呈するような所要の形状に保形しつつ前記の加熱処理温度を越える温度で加熱処理することにより、前記形状に固定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る加熱処理前の造形用平箔糸を示し、(A)は厚さを誇張した糸幅方向断面図、(B)は厚さを誇張した糸長さ方向断面図である。
【図2】図2は、図1に示す積層構造を有する加熱処理後の造形用平箔糸を示し、(A)は糸幅方向に沿って湾曲変形した状態における厚さを誇張した糸幅方向断面図、(B)は厚さを誇張した糸長さ方向断面図である。
【図3】図3は、図1に示す積層構造を有する加熱処理後の造形用平箔糸を示し、(A)は糸幅方向に沿って湾曲変形した状態における厚さを誇張した糸幅方向断面図、(B)は糸長さ方向に沿って湾曲変形した状態における厚さを誇張した糸長さ方向断面図である。
【図4】図4は、本発明における、図1の実施例とは異なる積層構造を有する別の実施例に係る加熱処理前の造形用平箔糸を示し、(A)は厚さを誇張した糸幅方向断面図、(B)は厚さを誇張した糸長さ方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1において、造形用平箔糸Taは、糸幅方向W及び糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料からなる一方側に配設された基材層1と、前記基材層1表面に設けられた装飾層2と、前記装飾層2表面に設けられた保護塗膜3と、前記保護塗膜3に接着剤層4を介して設けられた、糸幅方向Wに熱収縮性を有し且つ糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料、若しくは糸幅方向W及び糸長さ方向Lに熱収縮性を有する材料からなる他方側に配設された基材層5とから構成されている。
【0029】
図1に示す積層構造の造形用平箔糸であって、他方側に配設された基材層5として糸幅方向Wに熱収縮性を有し且つ糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料が使用された造形用平箔糸Ta1が、他方側に配設された基材層5に糸幅方向Wの熱収縮を生じさせる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸Ta1が、図2(A)に示すように、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向Wに沿って湾曲変形するように付勢され、また図2(B)に示すように、糸長さ方向Lには殆ど又はまったく変形しない状態に維持される。
【0030】
従って、前記造形用平箔糸Ta1が織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等からなるシート類に製織、製編、刺繍、縫製、接着その他の手段により導入され、他方側に配設された基材層5が糸幅方向Wの熱収縮を生じる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸Ta1における糸幅方向Wに熱収縮性を有する前記他方側に配設された基材層5が、糸幅方向W及び糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する前記一方側に配設された基材層1よりも前記糸幅方向Wに大きく収縮するため、前記造形用平箔糸Ta1が、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向Wに沿って湾曲変形するように付勢され、それによってシート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。
【0031】
なお、前記造形用平箔糸Ta1における糸幅方向Wに沿った湾曲変形態様は、図2(A)に示された形態に限定されるものではなく、造形用平箔糸Ta1を構成する基材層1及び基材層5の各熱収縮特性、並びに加熱処理温度及び時間等に依存することは言うまでもない。
【0032】
また、図1に示す積層構造の造形用平箔糸であって、他方側に配設された基材層5として糸幅方向W及び糸長さ方向Lに熱収縮性を有する材料が使用された造形用平箔糸Ta2が、他方側に配設された基材層5が糸幅方向W及び糸長さ方向Lの熱収縮を生じる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸Ta2が、図3(A)に示すように、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向Wに沿って湾曲変形するように付勢され、また図3(B)に示すように、糸長さ方向Lにも湾曲変形するように付勢される。
【0033】
従って、前記造形用平箔糸Ta2が織物、編物、刺繍物、縫製物等の布地、皮革、紙、プラスチックシート等からなるシート類に製織、製編、刺繍、縫製、接着その他の手段により導入され、他方側に配設された基材層5に糸幅方向W及び糸長さ方向Lの熱収縮を生じさせる所要温度で加熱処理されると、前記造形用平箔糸Ta2における糸幅方向W及び糸長さ方向Lに熱収縮性を有する前記他方側に配設された基材層5が、糸幅方向W及び糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する前記一方側に配設された基材層1よりも前記糸幅方向W及び糸長さ方向Lに大きく収縮するため、前記造形用平箔糸Ta2が、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向W及び糸長さ方向Lに沿って湾曲変形するように付勢され、それによってシート類に特異な立体感、凹凸感を与えると共に創作性の高い造形や意匠を施すことを可能にし、硬仕上げ加工に代って又はそれを補完するように該シート類に所要の硬さや反発性等を付与する。
【0034】
なお、前記造形用平箔糸Ta2における糸幅方向W及び糸長さ方向Lに沿った湾曲変形態様は、図3(A)及び(B)に示された形態に限定されるものではなく、造形用平箔糸Ta2を構成する基材層1及び基材層5の各熱収縮特性、並びに加熱処理温度及び時間等に依存することは言うまでもない。
【0035】
図4に示す造形用平箔糸Tbは、図1に示す前記造形用平箔糸Taの積層構造を重ね合わせてなる積層構造を有し、糸幅方向W及び糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料からなる一方側に配設された基材層1と、前記基材層1表面に設けられた装飾層2と、前記装飾層2表面に設けられた保護塗膜3とからなる一方の装飾積層体、及び糸幅方向Wに熱収縮性を有し且つ糸長さ方向Lに低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料、若しくは糸幅方向W及び糸長さ方向Lに熱収縮性を有する材料からなる他方側に配設された基材層5と、前記基材層5表面に設けられた装飾層2と、前記装飾層2表面に設けられた保護塗膜3とからなる他方の装飾積層体が、両保護塗膜3間において接着剤層4を介して接着一体化されてなるものである。
【0036】
前記造形用平箔糸Tbについても、加熱処理されると、図2(A)及び(B)に示す状態と同様に、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向Wに沿って湾曲変形するように付勢されると共に糸長さ方向Lには変形しない状態に維持され、また図3(A)及び(B)に示す状態と同様に、前記他方側に配設された基材層5を内面にして前記糸幅方向W及び糸長さ方向Lに沿って湾曲変形するように付勢される。
【符号の説明】
【0037】
W 糸幅方向
L 糸長さ方向
Ta、Ta1、Ta2、Tb 造形用平箔糸
1 一方側に配設された基材層
2 装飾層
3 保護塗膜
4 接着剤層
5 他方側に配設された基材層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜及び接着剤層を除く少なくとも2層の基材層を含む平箔糸であって、一方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されると共に、他方側に配設された基材層が糸幅方向に熱収縮性を有し且つ糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されたことを特徴とする造形用平箔糸。
【請求項2】
塗膜及び接着剤層を除く少なくとも2層の基材層を含む平箔糸であって、一方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に低熱収縮性又は非熱収縮性を有する材料から形成されると共に、他方側に配設された基材層が糸幅方向及び糸長さ方向に熱収縮性を有する材料から形成されたことを特徴とする造形用平箔糸。
【請求項3】
請求項1に記載の造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法であって、シート類に請求項1に記載の造形用平箔糸を導入する工程と、前記造形用平箔糸が導入されたシート類を、該造形用平箔糸が糸幅方向に所要の湾曲変形を生じる温度で加熱処理を施す工程とを含むことを特徴とする造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法。
【請求項4】
請求項2に記載の造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法であって、シート類に請求項2に記載の造形用平箔糸を導入する工程と、前記造形用平箔糸が導入されたシート類を、該造形用平箔糸が糸幅方向及び糸長さ方向に所要の湾曲変形を生じる温度で加熱処理を施す工程とを含むことを特徴とする造形用平箔糸を用いたシート類の装飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100617(P2013−100617A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244718(P2011−244718)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(593160105)泉工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】