説明

連動式引戸の跳ね返り防止装置

【課題】 連動式引戸の跳ね返りを防止できる連動式引戸の跳ね返り防止装置を提供する。
【解決手段】 建物開口部の上枠7に設けられた2本のハンガーレールと、上枠7の内側および外側に配置した2枚の内外の引戸9a,9bと、引戸9a,9bの各上部にそれぞれ取付けられた戸車プレート13,14と、各戸車プレート13,14に取付けられ、前記ハンガーレールにそれぞれ移動自在に吊設された戸車と、内側引戸9aの上部に取付けられ、周面が外側引戸9bの戸車プレート14に摺接するとともに、上枠7に摺接する縦軸17回りに水平回転自在な連動ローラ18と、を備えた連動式引戸において、外側引戸9bの戸車プレート14の長手方向一端側に、外側引戸9bの全閉時に連動ローラ18の周面一部が落込み係合する凹欠部23を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立物置など建物の開口部に設けられた連動式引戸が開閉時に跳ね返って半開き状態になったり、自然に開いたりするのを防止できるようにした連動式引戸の跳ね返り防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組立物置等の開口部に設けられた連動式引戸は上部に戸車を設け、この戸車を開口部の上枠のハンガーレールに移動自在に吊設させることにより、引戸を摩擦抵抗少なくしてスムーズに開閉できるようにしている。しかし、引戸の滑りが良すぎるため,勢いよく閉めた場合引戸が開口部の柱に当たり跳ね返って半開き状態になったり、自然に開いたりすることがある。
この対策として、引戸を閉めると自動的に仮ロックできるラッチ機構を付けたものがある。また、引戸のレールの一部に凹部を設け、引戸を閉めた時に戸車が前記凹部に落込んで停止するもの、あるいはレールの一部に凸部を設け、引戸の全閉直前に戸車が前記凸部を乗り越えるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)などがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−146850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、引戸にラッチ機構を付けるものでは、構造が複雑でコストが高くなり、また部材の寸法精度も求められるなどの難点がある。また、引戸を閉めた時に戸車がレールの凹部に落込んで停止するものでは引戸が全閉時に若干傾き、この傾きにより隙間を生じる。引戸の全閉直前に戸車がレールの凸部を乗り越えるようにしたものでは、引戸が全閉直前に若干傾いて全閉作動の円滑性を欠くという問題がある。さらに、引戸の全閉直前に戸車がレールの凸部を乗り越えるようにして引戸の不用意な開きを規制するものでは、凸部が高いと脱輪し、低いと引戸の不用意な開き規制効力を失うという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、連動ローラを用いる連動式引戸において、連動ローラを利用することにより簡単な手段でもって連動式引戸の跳ね返りを防止できる連動式引戸の跳ね返り防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物開口部の内外側壁部を有する上枠の内部に設けられた2本のハンガーレールと、前記上枠の内側および外側に配置した2枚の内外の引戸と、内外の引戸の各上部にそれぞれ取付けられた帯長形状の戸車プレートと、前記各戸車プレートに取付けられ、前記各ハンガーレールにそれぞれ移動自在に吊設された戸車と、内側引戸の上部に取付けられ、周面が前記外側引戸の戸車プレートに摺接するとともに、前記上枠の内側壁部に摺接する縦軸回りに水平回転自在な連動ローラと、を備えた連動式引戸において、前記外側引戸の戸車プレートの長手方向一端側、もしくは該戸車プレートの長手方向一端側に対応する前記上枠の内側壁部の長手方向中間部に、外側引戸の全閉時に前記連動ローラの周面一部が落込み係合する凹欠部を設けていることに特徴を有するものである。
【0007】
この場合において、前記外側引戸の戸車プレートの長手方向他端側、もしくは該戸車プレートの長手方向他端側に対応する前記上枠の内側壁部の長手方向端部側にも、外側引戸の全開時に前記連動ローラの周面一部が落込み係合する凹欠部を設けることができる。
また、前記連動ローラは、前記外側引戸の戸車プレートと前記上枠の内側壁部との間で揺動軸回りに内外方向に揺動自在で、かつ常に前記凹欠部を有する戸車プレートもしくは上枠に対し押付け付勢されるばねを備えることができる。
【発明の効果】
【0008】
外側引戸の全閉時には連動ローラの周面一部が外側引戸の戸車プレートの長手方向一端側もしくは該戸車プレートの長手方向一端側に対応する上枠の内側壁部の長手方向中間部に設けた凹欠部に落込み係合することにより、引戸の跳ね返りを防止できる。
【0009】
戸車プレートの長手方向一端側に凹欠部を設けるにあたっては該戸車プレートのプレス加工時にその長手方向一端側を段押しするだけで簡単かつ低コストで加工することができる。
【0010】
連動ローラが摺接する戸車プレートもしくは上枠に凹欠部を設けるため、前述した従来のように戸車が転動するレール自体に凹部や凸部を設けるもののごとき全閉時に引戸が傾いて隙間を生じたり、全閉直前に引戸が傾いて全閉作動の円滑性を欠いたりするなどの問題はなく、引戸を傾けることなく、またスムーズに全閉することができる。
【0011】
外側引戸の戸車プレートの長手方向他端側もしくは該戸車プレートの長手方向他端側に対応する上枠の長手方向端部側にも、外側引戸の全開時に連動ローラの周面一部が落込み係合する凹欠部を設けることにより、引戸の全閉時および全開時の双方において引戸の跳ね返りを防止できる。
また、連動ローラは、外側引戸の戸車プレートと上枠の内側壁部との間で揺動軸回りに内外方向に揺動自在で、かつ常に凹欠部を有する戸車プレートもしくは上枠に対し押付け付勢されるばねを備えることにより、連動ローラを凹欠部に確実に落し込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明に係る連動式引戸の跳ね返り防止装置が組み込まれた組立物置の斜視図、図2は図1の要部縦断側面図、図3の(a)は図1の連動式引戸の全閉状態を示す要部横断平面図、(b)は図1の連動式引戸の全開状態を示す要部横断平面図、図4は図3(a)に示す戸車プレートの凹欠部の斜視図、図5は図4におけるA−A線断面図、図6は図4におけるB−B線断面図、図7は図4におけるC−C線断面図、図8の(a)は連動式引戸の全閉状態を示す概略平面図、(b)は連動式引戸の全開状態を示す概略平面図、(c)は連動式引戸の開き途上の状態を示す概略平面図である。
【0013】
図1、図2において、1は組立式の物置、2は物置1の四隅部に立設した柱、3は柱2,2間に立設した間柱、4は物置1の左側面、図外の右側面および後側面に張設した壁面パネル、5は屋根板、6は物置1の前面の開口部、7は開口部6の上枠、8は開口部6の下枠、9は開口部6の上下枠7,8間の内側および外側に配置された内外の引戸9a,9bからなる連動式引戸であり、内外の引戸9a,9bは全開状態で開口部6の右端に固定された袖壁10の前側に重なって収納される(図8(b)参照)。
【0014】
次に、連動式引戸9、および外側の引戸9bの移動に連動して内側の引戸9aを移動させる連動機構について、図2、図3(a)(b)を参照にして説明する。開口部6において断面溝形で内外壁部7a,7bを有する上枠7の溝内部には内外2本のハンガーレール11,12が左右方向にわたって固定されている。内側の引戸9aおよび外側の引戸9bの各上部の後面には帯長形状の戸車プレート13,14の幅方向下端側がそれぞれ各引戸幅方向にわたって取付けられている。各戸車プレート13,14の幅方向上端部には、内外のハンガーレール11,12にそれぞれ移動自在に吊設される戸車15,16が回転自在に軸支されている。なお、引戸9a,9bの各下端部は、下枠8に配設した図外の下レールに左右方向に移動案内される。
【0015】
図2、図3(a)(b)に示すように、内側引戸9aの幅方向一側面の上部には縦軸17回りに水平回転自在な連動ローラ18が取付けられ、この連動ローラ18はこれの周面が外側引戸9bの戸車プレート14の幅方向中間部後面の摺接部141および上枠7の内側壁部7a前面の摺接部71に対し摺接するように設置される。
図2、図3(a)(b)に示すように、連動ローラ18は縦筒体19内においてばね20により常に押上げ付勢されるよう支持された縦軸17の縦筒体19から突出した上端部に取付けられる。図3(a)(b)に示すように、縦筒体19はその円周一部から張り出す張出部19aを有し、この張出部19aを内側引戸9aの一側面の上部に固定したブラケット21に垂直な揺動軸22回りに内外方向に揺動自在に取付けている。
【0016】
図2に示すように、連動ローラ18の周面が摺接する外側引戸9bの戸車プレート14の摺接部141と上枠7の内側壁部7aの摺接部71とは互いに上向き方向に狭まるよう傾斜する傾斜面に形成される。連動ローラ18は、上述のように常にばね20で押上げ付勢されているため、連動ローラ18の周面は戸車プレート14の摺接部141および上枠7の内側壁部7aの摺接部71に対しばね20の力により押付けられた状態にあり、これにより連動ローラ18は外側引戸9bの戸車プレート14の摺接部141および上枠7の内側壁部7aの摺接部71に対し常に確実に摺接し、また、加工および組立てのばらつきにより摺接部141,71間の寸法が多少変わっても調整する必要はなく、両引戸9a,9bのがたつきもなくなる。
【0017】
このように連動ローラ18を備えた連動式引戸9は、図3(a)、図8(a)に示す両引戸9a,9bの全閉状態から図8(c)のように外側引戸9bを開方向、すなわち右方向に移動させると、これの移動に伴って外側引戸9bの戸車プレート14の摺接部141および上枠7の摺接部71に摺動する連動ローラ18が縦軸17回りに水平回転しながら外側引戸9bの移動方向と同じ方向へ移動する。このとき連動ローラ18の移動距離は外側引戸9bの戸車プレート14の移動距離Lに対してL/2だけ移動する。したがって、外側引戸9bの移動距離に対し、内側引戸9aがその半分の移動距離だけ連動して移動し、最終的に図3(b)、図8(b)のように両引戸9a,9bが重なって袖壁10の前方に収納される全開状態になる。
【0018】
本発明は、このような連動式引戸9において、図3(a)に示すように、外側引戸9bの戸車プレート14の摺接部141の長手方向一端側に、外側引戸9bの全閉時に連動ローラ18の周面一部が落込み係合する凹欠部23を設けていることに特徴を有する。
【0019】
戸車プレート14に対する凹欠部23の加工は、たとえば、図4〜図7に示すようように、連動ローラ18の円周一部が落込み係合する形状に加工されるが、この加工は板金製の戸車プレート14を所定の断面形状にプレス加工する時にその長手方向一端側を段押しするだけで簡単かつ低コストで加工できる。なお、凹欠部23の一端には連動ローラ18が落ち込む直前に乗り越える断面山形の凸部24を設けておくと、連動ローラ18が落込み後不用意に戻ることなく落込み係合状態を確実に保持できる。
【0020】
連動ローラ18は、揺動軸22にばね25(図3(a)参照)を装着し、このばね25で連動ローラ18を常に揺動軸22中心に戸車プレート14の摺接部141に対し押付け付勢することによって連動ローラ18が外側引戸9bの全閉時に凹欠部23に確実に落込むようにしている。
【0021】
しかるときは、外側引戸9bが図3(a)、図8(a)のように全閉した時には連動ローラ18の周面一部が外側引戸9bの戸車プレート14の長手方向一端側に設けた凹欠部23に落込み係合するため、外側引戸9bが開口部6の左端の柱2(図1参照)に当たって跳ね返るのを防止できる。
【0022】
他の実施例として、凹欠部23は戸車プレート14に設けるに代えて、図3(a)中に二点鎖線で示すように前記戸車プレート14の長手方向一端側に対応する上枠7の内側壁部7aの長手方向中間部に設けることもできる。この場合においては、連動ローラ18はばね25で常に揺動軸22中心に上枠7の摺接部71に対し押付け付勢されるようにする。
このように、凹欠部23は連動ローラ18が摺接する戸車プレート14もしくは上枠7に設けるため、前述した従来のように戸車が転動するレール自体に凹部や凸部を設けるもののごとき全閉時に引戸が傾いて隙間を生じたり、全閉直前に引戸が傾いて全閉作動の円滑性を欠いたりするなどの問題はなく、連動式引戸9を傾けることなく、またスムーズに全閉することができる。
【0023】
外側引戸9bの全閉時のみならず、外側引戸9bが全開する時にも開口部6の右端の柱2に当たって跳ね返るのを防止するためには、図3(b)に示すように、外側引戸9bの戸車プレート14の長手方向他端側、または該戸車プレート14の長手方向他端側に対応する上枠7の内側壁部7aの長手方向端部側にも、外側引戸9bの全開時に連動ローラ18の周面一部が落込み係合する凹欠部26を設ける。これにより、連動式引戸9の全閉時および全開時の双方において連動式引戸9の跳ね返りを防止できることになる。なお、この凹欠部26の一端にも、上記凹欠部23の場合と同様に、連動ローラ18が落ち込む直前に乗り越える断面山形の凸部27を設けておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す連動式引戸の跳ね返り防止装置が組み込まれた組立物置の斜視図である。
【図2】図1の要部縦断側面図である。
【図3】(a)は図1の連動式引戸の全閉状態を示す要部横断平面図、(b)は図1の連動式引戸の全開状態を示す要部横断平面図である。
【図4】図3に示す戸車プレートの凹欠部の斜視図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【図7】図4におけるC−C線断面図である。
【図8】(a)は内外の引戸の全閉状態を示す概略平面図、(b)は内外の引戸の全開状態を示す概略平面図、(c)は内外の引戸の開き途上の状態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0025】
6 開口部
7 上枠
7a 上枠の内側壁部
9 連動式引戸
9a 内側の引戸
9b 外側の引戸
11,12 ハンガーレール
13,14 戸車プレート
17 縦軸
18 連動ローラ
22 揺動軸
23,26 凹欠部
25 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部の内外側壁部を有する上枠の内部に設けられた2本のハンガーレールと、前記上枠の内側および外側に配置した2枚の内外の引戸と、内外の引戸の各上部にそれぞれ取付けられた帯長形状の戸車プレートと、前記各戸車プレートに取付けられ、前記各ハンガーレールにそれぞれ移動自在に吊設された戸車と、内側引戸の上部に取付けられ、周面が前記外側引戸の戸車プレートに摺接するとともに、前記上枠の内側壁部に摺接する縦軸回りに水平回転自在な連動ローラと、を備えた連動式引戸において、
前記外側引戸の戸車プレートの長手方向一端側、もしくは該戸車プレートの長手方向一端側に対応する前記上枠の内側壁部の長手方向中間部に、外側引戸の全閉時に前記連動ローラの周面一部が落込み係合する凹欠部を設けていることを特徴とする、連動式引戸の跳ね返り防止装置。
【請求項2】
前記外側引戸の戸車プレートの長手方向他端側、もしくは該戸車プレートの長手方向他端側に対応する前記上枠の内側壁部の長手方向端部側にも、外側引戸の全開時に前記連動ローラの周面一部が落込み係合する凹欠部を設けている、請求項1記載の連動式引戸の跳ね返り防止装置。
【請求項3】
前記連動ローラが、前記外側引戸の戸車プレートと前記上枠の内側壁部との間で揺動軸回りに内外方向に揺動自在で、かつ常に前記凹欠部を有する戸車プレートもしくは上枠に対し押付け付勢されるばねを備えている、請求項1又は2記載の連動式引戸の跳ね返り防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−161354(P2006−161354A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352722(P2004−352722)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000006910)株式会社淀川製鋼所 (34)