運航支援装置及び船
【課題】十分な燃料消費量の低減をすることができる運航支援装置及び船を提供する。
【解決手段】船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信装置11と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段とを備えるものである。
【解決手段】船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信装置11と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段とを備えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の運航を支援する運航支援装置に関し、特に、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮した船の運航を支援する運航支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船の運航支援装置として、例えば、潮流データと風速データとを含む物理的データが、環境変化により変動したときには、現在位置の船位に基づいて、運航スケジュールが自動的に修正される、というものがある。このようなものにおいては、「燃費削減の点で最適制御の運航を実現する。」とされている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、「海象情報に含まれる風Wの風向、風速および波Xの波高、波周期、波向、ならびに海・潮流Yの流向、流速の各データに応じ、船舶2の運航限界を考慮しながら船速舵角制御を行い、舵角制御には当て舵の量も自動的に配慮される」というものがある。このようなものにおいては、「A港からB港へ到る航路が危険海域を回避するように選択されるとともに、同航路に沿い予め多数の通過点が選択され、しかも現在の位置および時刻からB港への到着時刻に見合うように海象情報などに配慮して各通過点ごとに船舶の通過予定時刻、航海速度および舵角の設定が順次自動的に行われるので、経験の浅い船長でも安全に且つ予定時刻どおりに船舶の運航を行うことができる。」とされている(特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、喫水等を考慮した船舶の運航管理が行われ、また、経年劣化も考慮する船舶の運航管理が行われる、というものがある。このようなものにおいては、「実際の船舶の運行データに基づいて推定された精度の高い船舶の運行管理情報を提供するので、最適な船舶の運行を実現させることができる」とされている(特許文献3参照)。
【0005】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、気象および海象の変化に基づいた外乱を考慮して運航スケジュールが作成されるというものがある。このようなものにおいては、「目的港への到着時刻を許容誤差内に納めるための制御が的確に行われるようになり、これに伴い主機関の燃料消費も適切に抑制できるようになって、排気ガスによる環境負荷を低減させる効果も得られる」とされている(特許文献4参照)。
【0006】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、海気象データに基づいて船速、燃料消費量及びシーマージンに関する予測データを生成し、その予測データに基づいて燃料消費量及び航行時間を最適にする航路を探索するというものがある。このようなものにおいては、「少なくとも船速、燃料消費量及びシーマージンに基づく予測データにより、ある海域から目的地までの最適航路を探索し、表示装置が最適航路に基づいた航路図を表示するようにしたので、例えば、運航者は、探索された最適航路を参照して航路計画の立案、修正等を行うことができ、経済的な航海を実現することができる。」とされている(特許文献5参照)。
【0007】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、海流を考慮して最短時間となる航路を決定するというものがある。このようなものにおいては、「船舶上で最適航路を演算する際に、海流予測データを考慮して各通過点の位置を改訂することができ、これにより、通過点間の通過時間が最短となる航路を、最適航路として求めることができる。このため、航海時間の短縮や消費燃料の節約等の多くの効果を得ることができる。」とされている(特許文献6参照)。
【0008】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、「対象となる船舶毎の船体運動の特性と気象・海象条件を考慮して最適航路の計算を行う。」というものがある。このようなものにおいては、「最適航路計算や運航管理の精度も著しく向上できる。」とされている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−25914号公報(段落[0019]、[0033])
【特許文献2】特開2005−162117号公報(段落[0006]、[0016])
【特許文献3】特開2006−193124号公報(段落[0019]、[0021]、及び[0036])
【特許文献4】特開2007−045388号公報(段落[0009]、[0013])
【特許文献5】特開2007−057499号公報(段落[0014]、[0025]、及び[0026])
【特許文献6】特開2007−245935号公報(段落[0010]、[0039])
【特許文献7】特開2009−286230号公報(段落[0034]、[0073])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の船(船舶)の運航支援装置(特許文献1〜7)においては、船上側で行われる場合、最適航路の評価計算は、複数の航路から最適解を探索するパラメータを指定することにより行われていた。このとき、指定したパラメータは、運航者が経験的に決定する固定値であった。一方、陸上側で行われる場合、最適航路の評価計算は、船舶の運航前に行われていた。それらのことから、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適航路の評価計算を動的に行うものではなかった。そのことにより、固定値として指定されたパラメータに対して行われた最適航路の評価計算、あるいは、陸上側で船舶の運航前の最適航路の評価計算は、実際の航行時のおける状況を反映しない結果となるため、大きく外れたものとなった。その結果、十分な燃料消費量(以下、燃費とする)の低減効果が得られていないという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃費が最小となる状態を動的に評価できる運航支援装置及び船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の運航支援装置は、船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信手段と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定手段を備え、前記最適航路推定手段は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、算出した前記航路点間の燃費を累積加算することで前記航海出発点から前記航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、前記全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、前記全体の航路を最適航路と決定する、ことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の運航支援装置は、表示手段と、前記最適航路推定手段で決定した前記最適航路の情報を取得して保持し、保持した前記最適航路の情報を前記表示手段に表示させる航路情報収録手段とを備える、ことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の運航支援装置は、前記航路情報収録手段から前記船の前記最適航路の情報を取得する船舶自動運航手段をさらに備え、前記船舶自動運航手段は、前記航路情報収録手段から取得した前記船の前記最適航路の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定手段を備え、前記最適喫水推定手段は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、算出した前記航路点間の燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、前記航路点間の喫水を前記航路点間の最適喫水と決定する、ことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の運航支援装置は、前記最適喫水推定手段により決定された前記船の前記最適喫水の情報を取得する積み付け計算手段をさらに備え、前記積み付け計算手段は、前記最適喫水の情報に基づいて、バラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得手段を有し、前記船舶自動運航手段は、前記船体積み付け情報取得手段で取得したバラストタンクに関する情報、前記航路情報収録手段から取得した前記最適航路の情報、及び前記積み付け計算手段で取得した前記最適喫水の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記航海出発点から前記航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象記憶手段と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正手段とを備え、前記個船性能修正手段は、前記遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記平水中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、前記遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記波浪中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、前記遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記風中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新する、ことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記航海出発点から前記航海到着点における前記船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能記憶手段と、前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能、並びに前記船舶性能記憶手段で記憶した前記船体抵抗係数と前記伴流係数に基づいて、前記船の経年劣化を評価する運航性能評価手段とを備え、前記運航性能評価手段は、時系列に対する前記船体抵抗係数と前記伴流係数の変化に基づいて経年劣化を評価する、ことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の船は、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の運航支援装置と、前記運航支援装置からの制御指令に基づいて、当該船に搭載されたエンジンを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の運航支援装置は、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃費が最小となる状態を動的に評価できるため、十分な燃費の低減をすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における船舶の運航支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図3】本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図4】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図6】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その3)である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1における各喫水状態の定性的詳細の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1における各喫水状態の定量的詳細の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1における経時的な外乱(風・波)強さの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1における船体喫水状態最適化による航海燃費係数比較評価の計算例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2における船舶の運航支援装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る船舶の運航支援装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における船舶の運航支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
なお、船舶の運航支援装置の各機能をハードウェアで実現するか、ソフトウェアで実現するかは問わない。つまり、本明細書の各ブロック図は、ハードウェアのブロック図と考えても、ソフトウェアによる機能ブロック図と考えてもよい。
【0026】
ただし、以降で説明する各種データベースについては、半導体記憶装置や磁気記憶装置等で形成されるものとする。
【0027】
船上には、モニタリング装置1、運航データ蓄積装置2、個船性能入力データベース3、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、最適航路/喫水評価データベース7、個船性能データベース8、運航性能評価装置9、運航性能評価データベース10、通信装置11、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24等が設けられている。
【0028】
なお、「モニタリング装置1、運航データ蓄積装置2、個船性能入力データベース3、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、最適航路/喫水評価データベース7、個船性能データベース8、運航性能評価装置9、運航性能評価データベース10、通信装置11、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24」は、本発明における「最適状態推定手段」に相当する。
【0029】
なお、「個船性能データベース8」は、本発明における「個船性能記憶手段」に相当する。
【0030】
なお、「遭遇海気象データベース21」は、本発明における「遭遇海気象記憶手段」に相当する。
【0031】
一方、陸上には、通信装置12及び陸上データ蓄積装置15等が設けられている。
【0032】
また、陸上には、海気象予報データベース13及び外部機関の装置14(例えば、気象庁に設置されているスーパーコンピュータ)等が設けられている。
【0033】
まず、船上に設けられる装置について説明する。
【0034】
モニタリング装置1は、例えば、船舶の運航時の船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを取得する。また、モニタリング装置1は、例えば、船舶の運航時の船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを時系列連続で計測し、一定時間毎に計測データの統計的データ解析処理を行う。
【0035】
ここで、モニタリング装置1が取得するデータについて説明する。
【0036】
船舶性能のデータは、船舶の個船性能を評価し、かつ運航実績の評価を行うために必要となる各種データのことである。船舶性能のデータは、例えば、方位、対地船速、針路、対水船速、推進軸回転数、推進軸馬力、斜航角、舵角、船体運動、及び加速度等が含まれる。
【0037】
遭遇海気象のデータは、船舶の航行時の周囲の海気象計測データのことである。遭遇海気象のデータは、例えば、風速、風向き、波パワースペクトル、波高、波周期、及び波向き等が含まれる。
【0038】
位置情報のデータは、船舶の航行時の位置等の計測データのことである。位置情報のデータは、例えば、緯度、経度、及び時刻等が含まれる。
【0039】
喫水・排水量のデータは、船舶の航行時の船体喫水、排水量のデータのことである。喫水・排水量のデータは、例えば、船首喫水量、船体中央喫水量、船尾喫水量、及び排水量等が含まれる。
【0040】
次いで、上記で述べた船上に設けられる他の装置について説明する。
【0041】
運航データ蓄積装置2には、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24等が設けられている。また、運航データ蓄積装置2は、モニタリング装置1や他の関連する船内に設置されている装置とデータの送受信をする通信機器(図示せず)を設けており、モニタリング装置1が取得した船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを各データベースに蓄積する。
【0042】
なお、「船舶性能データベース22」は、本発明における「船舶性能記憶手段」に相当する。
【0043】
個船性能入力データベース3は、例えば、指定された船体喫水量、船舶の開発及び設計時に想定される特定の排水量・喫水状態等の値を格納する。そのため、個船性能入力データベース3は、実際の運航状態での排水量・喫水状態に対応した個船性能データを格納していない。
【0044】
個船性能修正装置4は、運航データ蓄積装置2に格納されている各種データと、個船性能入力データベース3に格納されている各種データとに基づいて、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいて遭遇海気象の外乱影響を考慮した個船性能データを作成する。
【0045】
具体的には、まず、個船性能修正装置4は、モニタリング装置1で取得された各種データを用い、予め定めてある海気象条件に関する閾値に対し、その条件を満たす平穏と判断される海気象での計測データを抽出する。
【0046】
次に、個船性能修正装置4は、抽出されたデータと、個船性能入力データベース3に格納され、かつ予め設定されている個船性能入力データとに基づいて、実船尺度影響の修正を含む所要の修正を行い、実際の運航状態の平水中性能個船データを作成する。
【0047】
また、個船性能修正装置4は、遭遇海気象計測データに基づいて評価された航行時の平水中抵抗値と、船舶性能のデータの計測値より推定された全抵抗値との差より、平水中抵抗成分以外の合計抵抗値を算出する。次いで、算出された平水中抵抗成分以外の合計抵抗値と、各種遭遇海気象の計測値(例えば、風速、風向き、及び波パワースペクトル等)とに基づいて、予め入力された個船性能入力データをチューニングする。これにより、遭遇海気象に起因する各種外乱抵抗成分を推定するための高精度な個船性能データを作成する。すなわち、実際の運航状態の風中性能個船データを作成する。
【0048】
また、個船性能修正装置4は、モニタリング装置1で計測された船舶性能のデータのうち、船体運動や加速度の計測データと、各種遭遇海気象の計測値(例えば、風速、風向き、及び波パワースペクトル等)とに基づいて、予め入力された船体運動及び加速度に関する個船性能入力データをチューニングする。これにより、船体運動の推定精度が高くなる。このようにして、波浪中での船体運動に起因する外乱抵抗成分を推定するための高精度な個船性能データを作成する。すなわち、実際の運航状態の波浪中性能個船データを作成する。
【0049】
また、個船性能修正装置4は、運航データ蓄積装置2で蓄積された喫水・排水量の状態毎に、作成された個船性能データを整理する。次いで、個船性能修正装置4は、喫水及び排水量と、個船性能データの各要素データとの関係を算出する。これにより、任意の喫水・排水量の状態について個船性能データの高精度な推定を行う。すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データの各要素データと、喫水・排水量の状態との関連付けを行う。
【0050】
このように、個船性能修正装置4は、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを作成し、作成したそれらのデータの中の各要素データと喫水・排水量の状態との関連付けを行う。なお、以後において、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを統合して言うときには、各種の個船性能データと総称する。
【0051】
なお、「個船性能修正装置4」は、本発明における「個船性能修正手段」に相当する。
【0052】
最適喫水推定装置5は、各種の個船性能データと、外部機関の装置14より入手する海気象予報データとに基づいて、船舶の最適運航航路を算定する。具体的には、最適喫水推定装置5は、個船性能修正装置4で作成された各種の個船性能データと、陸上より送信される海気象予報データとに基づいて、予め作成された航海の評価指標となるパラメータを求める。そのようなパラメータは、例えば、航海時間、航海距離、及び航海燃費等のことである。そして、最適喫水推定装置5は、これらのパラメータを最小化する最適喫水を算出する。
【0053】
なお、「最適喫水推定装置5」は、本発明における「最適喫水推定手段」に相当する。
【0054】
最適航路推定装置6は、各種の個船性能データと、外部機関の装置14より入手する海気象予報データとに基づいて、航行時の排水量・喫水状態を算定する。具体的には、最適航路推定装置6は、個船性能修正装置4で作成された各種の個船性能データと、陸上より送信される海気象予報データとに基づいて、予め作成された航海の評価指標となるパラメータを求める。そのようなパラメータは、例えば、航海時間、航海距離、及び航海燃費等のことである。そして、最適航路推定装置6は、これらのパラメータを最小化する最適航路を算出する。
【0055】
なお、「最適航路推定装置6」は、本発明における「最適航路推定手段」に相当する。
【0056】
運航性能評価装置9は、各種の個船性能データと、モニタリング装置1により取得された運航時の位置情報と、モニタリング装置1により取得された遭遇海気象とに基づいて、運航実績を解析する。具体的には、運航性能評価装置9は、個船性能修正装置4で算出された各種の個性性能データの平水中性能個船データに対して、平水中性能の時系列変化を解析する。これにより、運航性能評価装置9は、平水中性能の経年劣化及び汚損影響を評価する。また、運航性能評価装置9は、平水中性能以外である波浪中性能や風中性能についても同様にその時系列変化を解析し、波浪中性能の経年劣化及び汚損影響、並びに風中性能の経年劣化及び汚損影響を評価する。
【0057】
なお、「運航性能評価装置9」は、本発明における「運航性能評価手段」に相当する。
【0058】
通信装置11は、運航データ蓄積装置2が蓄積したデータと、最適喫水推定装置5により求められた最適喫水に関するデータと、最適航路推定装置6により求められた最適航路に関するデータと、運航性能評価装置9により求められたデータとを陸上へ送信する。
【0059】
なお、「通信装置11」は、本発明における「通信手段」に相当する。
【0060】
次に、陸上に設けられた各種装置について説明する。
【0061】
通信装置12は、最適航路の推定や最適喫水の推定等に用いられる海気象予報データを陸上から船舶に送信する。
【0062】
陸上データ蓄積装置15は、通信装置11により陸上へ送信された各種データを蓄積する。具体的には、陸上データ蓄積装置15は、モニタリング装置1、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、及び運航性能評価装置9等で取得して作成された各種データを、通信装置12を介して入手して蓄積し、データベースを作成する。そして、このようにして作成されたデータベースのデータは、陸上の運航関係者16、17、18やその他の関係者が容易にアクセス可能な状態で設定されている。
【0063】
なお、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、及び最適航路推定装置6は、これらを一つの組として、最適航路評価データと最適喫水評価データを作成するものである。そして、そのような評価データの作成は常に所定の間隔で行われている。
【0064】
また、海気象が一定とみなせる時間は、おおむね30分間程度である。そのため、運航データ蓄積装置が保有する遭遇海気象データについては、30分程度の間隔でデータを作成する。すなわち、30分間の船上での遭遇海気象計測データより、適当な統計解析の手法を用いて、30分間の遭遇海気象の代表値、例えば平均風速、有義波高などを算出する。ただし、このような設定については、ユーザ側で適宜変更可能である。
【0065】
また、ここでの最適航路評価データと最適喫水評価データは予測値であり、この予測値に基づいて、適宜陸上側で管理者が評価に使ってもよい。
【0066】
また、このような予測値を利用するタイミングとしては、波が荒れた場合に適用すればよく、波が荒れていないような平穏な状態であれば航路や喫水を変更する必要はない。つまり、予測した結果、そのときに波が荒れていれば航路や喫水をその都度修正し、そのときに波が荒れていなければ航路と喫水を現状のままとすればよい。このように船舶側で動的に最適航路や最適喫水を修正できるため、燃費の悪化を抑えた船舶の運航が可能となる。
【0067】
海気象の理想的な状態としては、波も風もない状態が船舶にとって一番燃費のいい状態である。そして、評価された燃費等が所定の閾値を超えたときには、燃費が悪い状態となるので、そのときに、最新の評価データに基づいて航路や喫水等を変更する。
【0068】
具体的には、波が荒れていなければ、喫水を浅く保つようにする。このようにすることで燃費の悪化を抑えることができる。
【0069】
そして、波が荒れてきたら、評価データに基づいて喫水を、適当な時間間隔でステップ状に変更する。つまり、喫水を深めていく。換言すれば、船舶を評価データに基づいて海に対して沈めていく。このとき、バラストタンク(図示せず)に海水を入れて、バラストタンク内の海水量を調整することにより、喫水を変更する。そして、バラストタンクへの注水量と、バラストタンクからの排水量を調整しながら喫水を調整していくのである。その注水量と排水量の計算は常に自動で行われ、実際の注水等の操作はその自動計算された結果に基づいて運航者が行う。
【0070】
以上の構成を前提にして、船舶の運航支援装置の処理について図面を用いて説明する。
【0071】
図2は、本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図3は、本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【0072】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した最適航路を算出することを想定する。そして、以降の最適航路を算出する処理については、最適航路推定装置6が処理を実行する。
【0073】
なお、以降の処理は、船舶の航海前に1回行い、後は気象データが更新されるごとに行う。つまり、航海中においては、気象データが更新されるごとに、船体状態を設定し、最適航路を計算し直す。ただし、気象等の状態が変化したらその都度計算する。
【0074】
(ステップS101)
最適航路推定装置6に船体喫水及び排水量が入力される。このときに入力される船体喫水及び排水量は、例えば、個船性能データベース8や喫水・排水量データベース24等に予め格納された値を最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して船体喫水及び排水量が入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0075】
(ステップS102)
最適航路推定装置6は、船体状態を設定する。具体的には、船体喫水及び排水量が入力されると、最適航路推定装置6は、個船性能入力データベース3に予め格納されている離散的なマトリックス状のデータを参照する。このマトリックス状のデータは、船舶の建造時に決定される個船データである。そして、入力されたデータに基づいてマトリックス状のデータの補間処理を行う。その補間処理の結果、船体状態が設定されるのである。このとき、補間処理は任意の補間方法で行えばよく、例えば、線形補間等により補間処理が実行される。そして、最適航路推定装置6は、補間したデータを船体状態として出力する。なお、ここでいう出力とは、紙による印字と図示しない記録媒体等に一次記憶させることとを含むものであり、以後の説明における出力も同様とするが、以後においては紙による印字の説明は省略する。また、言うまでもないことであるが、紙による印字だけにして、その都度印字内容を運航者が最適航路推定装置6に入力してもよい。あるいは、記録媒体等に一次記憶させるだけにして、運航者を介さずに全て自動計算させてもよい。その場合において、記録媒体等は各種計算をするときのデータ参照用一次記憶装置として用いられることとしてもよい。
【0076】
(ステップS103)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている平水中性能個船データを取得する。
【0077】
(ステップS104)
最適航路推定装置6は、取得した平水中性能個船データに基づいて平水中性能を推定する。
【0078】
(ステップS105)
最適航路推定装置6は、推定した平水中性能特性(船体状態対応)データを、図示しない記録媒体等(以下、記録媒体と称する)に供給する。記録媒体は、供給された平水中性能特性データを記憶する。
【0079】
(ステップS106)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている波浪中性能個船データを取得する。
【0080】
(ステップS107)
最適航路推定装置6は、取得した波浪中性能個船データに基づいて波浪中性能を推定する。
【0081】
(ステップS108)
最適航路推定装置6は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0082】
(ステップS109)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている風中性能個船データを取得する。
【0083】
(ステップS110)
最適航路推定装置6は、取得した風中性能個船データに基づいて風中性能を推定する。
【0084】
(ステップS111)
最適航路推定装置6は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能個船データを記憶する。
【0085】
(ステップS112)
最適航路推定装置6は、航海条件を設定する。ここで設定する航海条件とは、例えば、始点、終点、及び日時のことである。つまり、始点とは航海出発点のことであり、終点とは航海到着点のことであり、日時とは始点から終点までにかかる時間や日数のことである。
【0086】
(ステップS113)
最適航路推定装置6は、安全制約条件を設定する。ここで設定する安全制約条件とは、例えば、遭遇海象や船体運動のことである。また、安全制約条件の設定とは、船舶の運航の際、危険領域を避けるように航路を設定することであり、閾値として遭遇海象や船体運動を設定するものである。そのような閾値が設定されたら、次に海気象データを入力して、船舶の運航する領域を設定する。その際、例えば、船舶が貴重な荷物を積んでいるときには、船舶の揺れを抑えられる領域を設定し、大型船舶のときには、高い波高に通常耐えられるので、そういったことを考慮して領域を設定する。また、船体運動とはいわゆる船の重心まわりの6自由度の剛体運動、具体的には、上下揺れ、左右揺れ、前後揺れ、縦揺れ、横揺れ、及び船首揺れでの6種の運動に起因するものであり、これらの運動の変位、速度、加速度、及びそれらに起因する船上での局所的な運動や水面と船体間の相対運動、例えば、海水打ち込み、プロペラレーシング、船底露出などをさし、安全制約条件ではこれらの船体運動諸様相に関して制約条件を設定する。
【0087】
(ステップS114)
最適航路推定装置6は、航海参照速力を設定する。ここで設定する航海参照速力とは、例えば、ある排水量・喫水状態にて風、波、潮流などの外乱の影響を受けない状態で、所定のエンジンの回転数や馬力の状態で、船舶が航行しうる速力のことである。なお、航海参照速力の設定においては、航海条件で日時を求めないときに求めるようにしてもよい。
【0088】
(ステップS115)
最適航路推定装置6は、初期航路を設定する。なお、初期航路の設定とは、最適航路とされる船舶の通過点を決めることである。すなわち、船舶の途中経路点を求めることである。決定方法は任意であり、例えば、経験的に運航者が決めた通過点を設定するようにしてもよい。そのため、通過点としての経路点数はさまざまな場合が存在する。例えば、運航時に必ず通過しないといけない所があれば、そこは必然的に設定される。また、季節によって、北回りで運航させたり、南周りで運航させるようにしてもよい。そのときには、例えば、季節風等を考慮することによる燃費の改善を考慮した航路であってもよい。そのような航路の決定は一般的に船長が行うものであり、船長が決めた航路と自動計算による求められた最適航路とを比較し、航路の修正が行われるようにしてもよい。
【0089】
なお、設定した初期航路は、図示しない端末等のモニターに航路が海図上に表示され、その航路に対する燃費、航海時間等が表示される。なお、ここでの端末はデスクトップ型パーソナルコンピュータであってもよく、ラップトップ型パーソナルコンピュータであってもよい。また、そのような端末は、携帯端末等であってもよい。
【0090】
(ステップS116)
最適航路推定装置6には、海気象予報データが入力される。このときに入力される海気象予報データは、例えば、海気象予報データベース13に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して海気象予報データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0091】
(ステップS117)
最適航路推定装置6は、設定した初期航路及び入力された海気象予報データに基づいて、航路点遭遇海気象条件を設定する。なお、最適航路は経緯度線で一定間隔で定義される海気象予報データの定義点を結ぶように設定される。具体的には、海気象予報データの定義点ごとに、船舶の性能、船舶に搭載されるエンジンの性能、及び所定の船速等に基づいて計算処理がなされる。そして、そのような処理を航路点ごと、すなわち、中継地点ごとに繰り返すのである。
【0092】
(ステップS118)
最適航路推定装置6は、ステップS108で記憶した波浪中性能特性データ及び設定した航路点遭遇海気象条件に基づいて、波浪中応答を計算する。
【0093】
(ステップS119)
最適航路推定装置6は、波浪中外力データ及び運動値データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された波浪中外力データ及び運動値データを記憶する。なお、設定した航路点遭遇海気象条件は、航路点で遭遇する海象条件を意味するものである。
【0094】
(ステップS120)
最適航路推定装置6は、ステップS111で記憶した風中性能特性データに基づいて風中流体力を計算する。
【0095】
(ステップS121)
最適航路推定装置6は、計算した風中流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中流体力データを記憶する。なお、設定した航路点遭遇海気象条件は、航路点で遭遇する気象条件を意味するものである。
【0096】
なお、ここでの波浪中応答や風中流体力の計算については順不同である。
【0097】
(ステップS122)
最適航路推定装置6には、潮流予報データが入力される。このときに入力される潮流予報データは、例えば、海気象予報データベース13に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接、最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して潮流予報データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0098】
なお、潮流予報データは、例えば、1週間に一回の割合で更新されるデータである。また、潮流予報データは、当然のこととして、場所が変われば潮流も変わる。すなわち、潮流予報データは場所による違いは大きい。そのため、最適航路推定装置6は、場所ごとに潮流予報データを取得する。具体的には、船舶が赤道より上方を航海するときには、最適航路推定装置6は、その領域の潮流予報データを衛星通信等を介して取得する。もちろん、最適航路推定装置6は、全地球の潮流予報データを取得してもよい。このように、船上側で動的に最新の潮流予報データを取得し、それに基づいて以降の評価計算が行われるため、精度の高い評価計算を行うことができる。
【0099】
(ステップS123)
最適航路推定装置6は、入力された潮流予報データに基づいて、航路点遭遇潮流条件を設定する。
【0100】
(ステップS124)
最適航路推定装置6は、ステップS105で記憶した平水中性能特性データ及び設定した航路点遭遇潮流条件に基づいて、潮流流体力を計算する。
【0101】
(ステップS125)
最適航路推定装置6は、計算した潮流流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された潮流流体力データを記憶する。設定した航路点遭遇潮流条件は、航路点で遭遇する潮流条件を意味するものである。
【0102】
(ステップS126)
最適航路推定装置6は、ステップS105で記憶した平水中性能特性データ、ステップS119で記憶した波浪中外力データ及び運動値データ、ステップS121で記憶した風中流体力データ、及びステップS125で記憶した潮流流体力データに基づいて、船体抵抗を計算する。なお、船体抵抗では、造波抵抗、摩擦抵抗、造渦抵抗、及び風圧抵抗等が計算されることになるが、ここでは、波浪、風、潮流、平水中(船舶を走らせたときに相当する)といった4成分のカテゴリーごとにこれらの抵抗を計算し、計算後にこれらの4成分を統合する。
【0103】
(ステップS127)
最適航路推定装置6は、計算した船体抵抗データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された船体抵抗データを記憶する。なお、ここでの船体抵抗データは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0104】
(ステップS128)
最適航路推定装置6は、船体自航状態を計算する。具体的には、プロペラの回転数を計算する。これはステップS126で求めた抵抗の計算結果に基づいて算出される。次いで、プロペラの回転数が定まったら、最適航路推定装置6は、そのプロペラの回転数に必要な主機の回転数(以下、回転数とする)と主機の馬力(以下、馬力とする)を求め、そのときの船速を計算する。
【0105】
(ステップS129)
最適航路推定装置6は、計算した船速、回転数、及び馬力に関するデータを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された船速、回転数、及び馬力に関するデータを記憶する。なお、ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0106】
(ステップS130)
最適航路推定装置6には、主機燃費特性データが入力される。このときに入力される主機燃費特性データは、例えば、船舶性能データベース22に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接、最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して主機燃費特性データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0107】
なお、主機とは、船の推進力を生み出すエンジンのことである。そして、主機燃費特性とは、主機の回転数や馬力に対する燃費のことであり、主機の仕様に基づいて決まるものである。
【0108】
(ステップS131)
最適航路推定装置6は、入力された主機燃費特性データに基づいて、主機の燃費を計算する。
【0109】
(ステップS132)
最適航路推定装置6は、計算した主機燃費データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された主機燃費データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0110】
(ステップS133)
最適航路推定装置6は、航路の累積燃費を計算する。具体的には、最適航路推定装置6は、上記で説明したように一定の経度緯度間隔で求めた航路点間ごとの燃費を累積することにより航路の累積燃費を求める。
【0111】
(ステップS134)
最適航路推定装置6は、航路の終点に到達したか否かを判定し、航路の終点に到達しないと判定された場合、ステップS135へ進み、航路の終点に到達したと判定された場合、ステップS136へ進む。すなわち、最適航路推定装置6は、上記の手順で求めた最適航路の先端が予め定められた航路点の終点に到達したか否かを判定する。
【0112】
(ステップS135)
最適航路推定装置6は、次の航路点へ進んだ後、ステップS120へ戻る。
【0113】
(ステップS136)
最適航路推定装置6は、航路の燃費を算出する。具体的には、ステップS133で計算した累積燃費がここでいう航路の燃費に相当することとなる。より具体的には、ステップS133における累積燃費の計算は、ステップS134での判定処理で、航路の終点に到達するまで実行されるこことなる。すなわち、航路の始点から航路の終点までの航路の燃費の総和がここでいう航路の燃費となる。そのため、累積燃費の最終的な値を取得することにより、航路の燃費を求めることとなる。そして、そのように取得した航路の燃費はステップS137における現航路の燃費である。つまり、現航路の燃費とは、現在定めた航路全体の燃費のことである。
【0114】
なお、ステップS137における最小航路の燃費は、デフォルト値としては、後述するようなダミーデータでよく、以後、ステップS137の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費として更新される。そして、最小燃費の航路においても同様に、デフォルト値としては、ダミーデータでよく、以後、ステップS137の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費であると共に、そのときの航路、すなわち、現航路が最小燃費の航路として更新される。
【0115】
(ステップS137)
最適航路推定装置6は、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいか否かを判定し、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいと判定された場合、ステップS138へ進み、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さくないと判定された場合、ステップS140へ進む。すなわち、最適航路推定装置6は、今まで評価した中で最小の燃費と比較する。そのため、最適航路推定装置6は、燃費をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0116】
(ステップS138)
最適航路推定装置6は、現航路の燃費を最小航路の燃費に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適航路推定装置6は、それを新たな最小航路の燃費に設定するのである。
【0117】
(ステップS139)
最適航路推定装置6は、現航路を最小燃費の航路に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適航路推定装置6は、それを新たな最小燃費の航路に設定するのである。そのため、最適航路推定装置6は、航路をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0118】
(ステップS140)
最適航路推定装置6は、航路の判定は終了であるか否かを判定し、航路の判定は終了でないと判定された場合、ステップS141へ進み、航路の判定は終了であると判定された場合、ステップS142へ進む。
【0119】
(ステップS141)
最適航路推定装置6は、航路を変更した後、ステップS120へ戻る。
【0120】
(ステップS142)
最適航路推定装置6は、最小燃費の航路を決定し、個船性能を考慮した最適航路算出処理は終了する。
【0121】
なお、航路の評価は取得した全データに対して最初から総当たりで行うのではなく、ある程度絞りこみ、その範囲のデータに対して総当たりで行ってもよい。そのときには、最短距離に近いところから順に評価していけばよい。ただし、外乱がなければ最短距離が航路としては望ましいため、最適航路の決定は外乱と距離とのトレードオフとなる。いずれにしても、ある程度絞りこんでから評価計算を行うため、船舶側で動的にかつ実時間で評価計算を行うことができるのである。
【0122】
なお、ステップS101乃至ステップS142の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0123】
また、このような処理により、個船性能を考慮した最適航路を算出することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0124】
また、このような処理により、船上側で動的に実時間で評価計算を行うことができる。
【0125】
よって、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船舶側で最適航路の評価計算を動的に行うことができる。
【0126】
図4は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図5は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。図6は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その3)である。
【0127】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した最適喫水を算出することを想定する。そして、以降の最適喫水を算出する処理については、最適喫水推定装置5が処理を実行する。
【0128】
なお、以降の処理は、船舶の航海前に1回行い、後は気象データが更新されるごとに行う。つまり、気象データが更新されるごとに、船体状態を設定し、最適喫水を計算し直す。ただし、気象等の状態が変化したらその都度計算される。
【0129】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0130】
また、個船性能に基づく最適航路算出処理との主な相違点は、図3に示されるステップS132とステップS133との間に、図5に示されるステップS233〜ステップS237の喫水変更の繰り返し処理を加えた点である。すなわち、航路点間で定めた区間ごとに喫水を修正し、それに基づいて最適燃費を求める点である。
【0131】
(ステップS201)
最適喫水推定装置5に船体喫水及び排水量が入力される。
【0132】
(ステップS202)
最適喫水推定装置5は、入力された船体状態の初期設定をする。ここでの初期設定とは、排水量及び喫水の上限値と下限値のことである。
【0133】
(ステップS203)
最適喫水推定装置5は、航海条件を設定する。ここでの航海条件とは、始点、終点、及び日時のことである。
【0134】
(ステップS204)
最適喫水推定装置5は、安全制約条件を設定する。ここでの安全制約条件とは、遭遇海象及び船体運動を考慮した条件のことである。
【0135】
(ステップS205)
最適喫水推定装置5は、航海参照速力を設定する。ここで設定することは、回転数と馬力である。
【0136】
(ステップS206)
最適喫水推定装置5は、初期航路を設定する。
【0137】
(ステップS207)
最適喫水推定装置5には、海気象予報データが入力される。
【0138】
(ステップS208)
最適喫水推定装置5は、入力された海気象予報データに基づいて、航路点遭遇海気象条件を設定する。
【0139】
(ステップS209)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0140】
(ステップS210)
最適喫水推定装置5は、ステップS209で取得した平水中性能個船データに基づいて、平水中性能を推定する。
【0141】
(ステップS211)
最適喫水推定装置5は、推定した平水中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中性能特性データを記憶する。
【0142】
(ステップS212)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から風中性能個船データを取得する。
【0143】
(ステップS213)
最適喫水推定装置5は、ステップS212で取得した風中性能個船データに基づいて、風中性能を推定する。
【0144】
(ステップS214)
最適喫水推定装置5は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性データを記憶する。
【0145】
(ステップS215)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から波浪中性能個船データを取得する。
【0146】
(ステップS216)
最適喫水推定装置5は、ステップS215で取得した波浪中性能個船データに基づいて、波浪中性能を推定する。
【0147】
(ステップS217)
最適喫水推定装置5は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0148】
(ステップS218)
最適喫水推定装置5は、波浪中応答を計算する。
【0149】
(ステップS219)
最適喫水推定装置5は、計算した波浪中外力データ及び運動値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中外力データ及び運動値データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海象下を考慮したものである。
【0150】
(ステップS220)
最適喫水推定装置5は、ステップS214で記憶した風中性能特性データに基づいて、風中流体力を計算する。
【0151】
(ステップS221)
最適喫水推定装置5は、計算した風中流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中流体力データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇気象下を考慮したものである。
【0152】
(ステップS222)
最適喫水推定装置5に潮流予報データが入力される。
【0153】
(ステップS223)
最適喫水推定装置5は、航路点遭遇潮流条件を設定する。
【0154】
(ステップS224)
最適喫水推定装置5は、ステップS211で記憶した平水中性能特性データ及び設定した航路点遭遇潮流条件に基づいて、潮流流体力を計算する。
【0155】
(ステップS225)
最適喫水推定装置5は、計算した潮流流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された潮流流体力データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇潮流下を考慮したものである。
【0156】
(ステップS226)
最適喫水推定装置5は、ステップS211で記憶した平水中性能特性データ、ステップS219で記憶した波浪中外力データ及び運動値データ、ステップS221で記憶した風中流体力データ、及びステップS225で記憶した潮流流体力データに基づいて、船体抵抗を計算する。
【0157】
(ステップS227)
最適喫水推定装置5は、計算した船体抵抗データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された船体抵抗データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0158】
(ステップS228)
最適喫水推定装置5は、船体自航状態を計算する。
【0159】
(ステップS229)
最適喫水推定装置5は、計算した船速、回転数、及び馬力に関するデータを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された船速、回転数、及び馬力に関するデータを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0160】
(ステップS230)
最適喫水推定装置5には、主機燃費特性データが入力される。
【0161】
(ステップS231)
最適喫水推定装置5は、入力された主機燃費特性データに基づいて、主機の燃費を計算する。
【0162】
(ステップS232)
最適喫水推定装置5は、計算した主機燃費データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された主機燃費データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0163】
(ステップS233)
最適喫水推定装置5は、区間燃費が最小燃費よりも小さいか否かを判定し、区間燃費が最小燃費よりも小さいと判定されたときには、ステップS234へ進み、区間燃費が最小燃費よりも小さくないと判定されたときには、ステップS236へ進む。すなわち、1つ1つの航路点で区切られた区間ごとに計算された燃費と最小燃費とを比較することで、区間燃費が最小燃費であるか判定し、それに基づいて喫水を変更するか否かを判定する。
【0164】
換言すれば、最適航路は区間燃費を始点から終点まで累積したもので判定するのに対し、最適喫水は区間燃費ごとに判定する。
【0165】
(ステップS234)
最適喫水推定装置5は、現喫水の燃費を最小燃費と設定する。
【0166】
(ステップS235)
最適喫水推定装置5は、現喫水を区間最適喫水と設定する。
【0167】
(ステップS236)
最適喫水推定装置5は、喫水の変更は終了したか否かを判定する。喫水の変更は終了していないと判定された場合、ステップS237へ進み、喫水の変更は終了したと判定された場合、ステップS238へ進む。
【0168】
(ステップS237)
最適喫水推定装置5は、船体の喫水を変更した後、ステップS210へ戻る。
【0169】
(ステップS238)
最適喫水推定装置5は、航路の累積燃費を計算する。
【0170】
(ステップS239)
最適喫水推定装置5は、航路の終点に到達したか否かを判定し、航路の終点に到達していないと判定された場合、ステップS240へ進み、航路の終点に到達したと判定された場合、ステップS241へ進む。
【0171】
(ステップS240)
最適喫水推定装置5は、次の航路点へ進んだ後、ステップS208へ戻る。
【0172】
(ステップS241)
最適喫水推定装置5は、航路の燃費を算出する。具体的には、ステップS238で計算した累積燃費がここでいう航路の燃費に相当することとなる。より具体的には、ステップS238における累積燃費の計算は、ステップS239での判定処理で、航路の終点に到達するまで実行されるこことなる。すなわち、航路の始点から航路の終点までの航路の燃費の総和がここでいう航路の燃費となる。そのため、累積燃費の最終的な値を取得することにより、航路の燃費を求めることとなる。そして、そのように取得した航路の燃費はステップS242における現航路の燃費である。つまり、現航路の燃費とは、現在定めた航路全体の燃費のことである。
【0173】
なお、ステップS242における最小航路の燃費は、デフォルト値としては、後述するようなダミーデータでよく、以後、ステップS242の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費として更新される。そして、最小燃費の航路においても同様に、デフォルト値としては、ダミーデータでよく、以後、ステップS242の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小の航路の燃費であると共に、そのときの航路、すなわち、現航路が最小燃費の航路として更新される。
【0174】
(ステップS242)
最適喫水推定装置5は、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいか否かを判定し、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいと判定された場合、ステップS243へ進み、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さくないと判定された場合、ステップS245へ進む。すなわち、最適喫水推定装置5は、今まで評価した中で最小の燃費と比較する。そのため、最適喫水推定装置5は、燃費をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0175】
(ステップS243)
最適喫水推定装置5は、現航路の燃費を最小航路の燃費に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適喫水推定装置5は、それを新たな最小航路の燃費に設定するのである。
【0176】
(ステップS244)
最適喫水推定装置5は、現航路を最小燃費の航路に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適喫水推定装置5は、それを新たな最小燃費の航路に設定するのである。そのため、最適喫水推定装置5は、航路をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0177】
(ステップS245)
最適喫水推定装置5は、航路の判定は終了であるか否かを判定し、航路の判定は終了でないと判定された場合、ステップS246へ進み、航路の判定は終了であると判定された場合、ステップS247へ進む。
【0178】
(ステップS246)
最適喫水推定装置5は、航路を変更した後、ステップS208へ戻る。
【0179】
(ステップS247)
最小燃費の航路を決定し、個船性能に基づく最適喫水算出処理は終了する。
【0180】
なお、ステップS201乃至ステップS247の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0181】
また、このような処理により、個船性能を考慮しつつ、航路点間で定めた区間ごとに喫水を修正し、それに基づいて最適燃費を求めることができる。それにより、最適な喫水状態を考慮して最適航路の評価計算を行うことができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0182】
また、このような処理により、船舶側で動的に実時間で評価計算を行うことができる。
【0183】
よって、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船舶側で最適航路の評価計算を動的に行うことができる。
【0184】
図7は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図8は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【0185】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを再度最新の運航状態に更新する処理について説明する。
【0186】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0187】
なお、以降のモニタリングデータを用いた個船性能修正処理については、個船性能修正装置4が処理を実行する。
【0188】
(ステップS301)
個船性能修正装置4に船体喫水及び排水量が入力される。
【0189】
(ステップS302)
個船性能修正装置4は、入力された船体喫水及び排水量に基づいて船体状態を設定する。
【0190】
(ステップS303)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0191】
(ステップS304)
個船性能修正装置4は、取得した平水中性能個船データに基づいて、平水中性能を推定する。
【0192】
(ステップS305)
個船性能修正装置4は、推定した平水中性能データに基づいて、平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを作成し、作成した平水中船体抵抗要素データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素データを記憶する。
【0193】
(ステップS306)
個船性能修正装置4は、推定した平水中性能データに基づいて、平水中船体自航要素(船体状態対応)データを作成し、作成した平水中船体自航要素データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体自航要素データを記憶する。
【0194】
(ステップS307)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から波浪中性能個船データを取得する。
【0195】
(ステップS308)
個船性能修正装置4は、取得した波浪中性能個船データに基づいて、波浪中性能を推定する。
【0196】
(ステップS309)
個船性能修正装置4は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0197】
(ステップS310)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から風中性能個船データを取得する。
【0198】
(ステップS311)
個船性能修正装置4は、取得した風中性能個船データに基づいて風中性能を推定する。
【0199】
(ステップS312)
個船性能修正装置4は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性データを記憶する。
【0200】
(ステップS313)
個船性能修正装置4は、遭遇海気象データベース21から気象モニタリングデータを取得する。なお、気象モニタリングデータは、船舶運航時のデータであり、時系列で記録されている。
【0201】
(ステップS314)
個船性能修正装置4は、取得した気象モニタリングデータに基づいて平穏海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は平穏な海気象のときの日時と場所である。つまり、このようにすることで、日時に対応する平穏時のデータを取得できるようにする。すなわち、日時に対応して海気象と船舶の各種パラメータが記録されているため、その中から平穏時のデータを取得することにより、例えば、時間を検索パラメータとして、そのときの回転数を検索することができる。
【0202】
(ステップS315)
個船性能修正装置4は、ステップS303で取得した平水中性能個船データに基づいて、推進器の単独特性を入力する。
【0203】
(ステップS316)
個船性能修正装置4は、船舶性能データベース22から性能モニタリングデータを取得する。なお、性能モニタリングデータは、船舶運航時のデータであり、時系列で記録されている。
【0204】
(ステップS317)
個船性能修正装置4は、抽出した平穏海気象条件、入力した推進器の単独特性データ、及び取得した性能モニタリングデータに基づいて、推進器の作動点を解析する。
【0205】
(ステップS318)
個船性能修正装置4は、解析により得られたデータとして、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記録媒体に供給する。記録媒体は、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記憶する。
【0206】
なお、トルクは力と距離の外積で求められるが、実際にはトルクは推進器回転数の2乗と推進器直径の5乗の外積にトルク係数を掛け合わせることにより求められるものであり、そのときのトルク係数を推力のためのパラメータとして利用する。
【0207】
また、伴流は船を追いかけて進む流れのことであり、例えば、10ノットの速さの船のその伴流が2ノットであるとすれば、プロペラの前進速度は8ノットとなる。そして、伴流係数は、伴流の速度を船の速度で除した値であり、伴流係数の値を知ることができれば、プロペラの前進速度は、「1−伴流係数」の値に船の速度を乗算することにより求めることができる。
【0208】
また、伴流係数の値は、船の大きさ、船尾付近の形状、プロペラと船体の相互関係位置、及びプロペラの直径等で変化するものである。
【0209】
すなわち、推力係数、トルク係数及び伴流係数は、船舶の性能計算に重要なパラメータとして利用される。
【0210】
(ステップS319)
個船性能修正装置4は、ステップS305で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS306で記憶した平水中船体自航要素データ、記憶した推力係数、トルク係数及び伴流係数に基づいて、平水中性能を解析する。
【0211】
(ステップS320)
個船性能修正装置4は、解析した平水中性能に基づいて、平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び平水中の船体自航要素の修正値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び平水中の船体自航要素の修正値データを記憶する。
【0212】
(ステップS321)
個船性能修正装置4は、記憶した平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び記憶した平水中の船体自航要素の修正値データに基づいて平水中性能を修正する。
【0213】
(ステップS322)
個船性能修正装置4は、修正した平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された、修正した平水中船体抵抗要素データを記憶する。
【0214】
(ステップS323)
個船性能修正装置4は、修正した平水中船体自航要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された、修正した平水中船体自航要素データを記憶する。
【0215】
(ステップS324)
個船性能修正装置4は、ステップS313で取得した気象モニタリングデータ及び修正した平水中性能データに基づいて、風支配海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は風支配海気象における日時、場所、及び風況である。なお、風況とは、風速と風向のことである。すなわち、海気象の中で、まず風の影響が支配的なところを抽出する。
【0216】
(ステップS325)
個船性能修正装置4は、ステップS316で取得した性能モニタリングデータ、ステップS309で記憶した波浪中性能特性データ、ステップS312で記憶した風中性能特性データ、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、風圧抵抗成分を抽出する。
【0217】
(ステップS326)
個船性能修正装置4は、風中性能を解析する。具体的には、風の抵抗係数を縦軸とし、風向角を横軸とした特性曲線に同定させていくことで風中性能を解析する。つまり、モニタリングデータに同定させることにより、風中性能特性修正値を算出する。
【0218】
(ステップS327)
個船性能修正装置4は、算出した風中性能特性修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性修正値データを記憶する。
【0219】
(ステップS328)
個船性能修正装置4は、取得した気象モニタリングデータ及び記憶した風中性能特性修正値データに基づいて、波支配海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は波支配海気象における日時、場所、及び風況である。
【0220】
(ステップS329)
個船性能修正装置4は、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、ステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データ、ステップS327で記憶した風中性能特性修正値データ、及びステップS316で取得した性能モニタリングデータに基づいて、波浪中抵抗成分を抽出する。
【0221】
なお、ステップS319で平水中性能を解析し、ステップS326で風中性能を解析し、ステップS331で波浪中性能を解析したが、この順番で行うことが重要である。それは、船舶の性能に対する実海域航行時の平均的な影響力は、概ね、平水、風、波の順で小さくなるからである。したがって、平水中と風についての修正値を先に決め、その後に波についての修正値を決めた方が精度よく計算できる。また、波浪中性能を解析する前には、ステップS329で波浪中抵抗成分を抽出し、ステップS330で波浪中運動成分を抽出している。このように抵抗と運動の両方のパラメータについて評価することにより船舶が被る影響を精度良く計算できることとなる。
【0222】
(ステップS330)
個船性能修正装置4は、波浪中運動成分を抽出する。
【0223】
(ステップS331)
個船性能修正装置4は、波浪中性能を解析する。この場合においてもモニタリングデータに同定させることにより、波浪中性能特性修正値(船体状態対応)を算出する。
【0224】
なお、実海域で遭遇する波は、広範囲の向きと周期の成分を含み、規則的ではない。そのため、ステップS331においては、複数の波パワースペクトルの内、特に顕著な周期と向きで同定を実行することとする。
【0225】
(ステップS332)
個船性能修正装置4は、算出した波浪中性能特性修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性修正値を記憶する。
【0226】
(ステップS333)
個船性能修正装置4は、取得した波浪中性能個船データ及び記憶した波浪中性能特性修正値データに基づいて、波浪中個船データを修正する。
【0227】
(ステップS334)
個船性能修正装置4は、修正した波浪中性能個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0228】
(ステップS335)
個船性能修正装置4は、ステップS310で取得した風中性能個船データ及びステップS327で記憶した風中性能特性修正値データに基づいて、風中個船データを修正する。
【0229】
(ステップS336)
個船性能修正装置4は、修正した風中個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0230】
(ステップS337)
個船性能修正装置4は、ステップS303で取得した平水中性能個船データ、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、平水中個船データを修正する。
【0231】
(ステップS338)
個船性能修正装置4は、修正した平水中性能個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0232】
このようにして、モニタリングデータを用いた個船性能修正処理は終了する。
【0233】
なお、ステップS301乃至ステップS338の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0234】
また、このような処理により、モニタリングデータを用いた個船性能データを作成することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0235】
また、このような処理により、貨物を積載した状態を模擬して試運転を行うことができないようなコンテナ船やばら積み船において、高い精度で最適航路の評価を行うことができるようになる。
【0236】
図9は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理の詳細を示すフローチャートである。
【0237】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された平水中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した経年劣化を算出することを想定する。
【0238】
なお、ここでいう経年劣化とは、運航中に船舶の表面に付着した海洋生物などによって船体抵抗やプロペラの主要推力発生に要するトルクが増加したことなどにより、燃費が悪くなっている状態を意味する。
【0239】
なお、平水中性能の例について説明するが、波浪中性能及び風中性能についても同様の手順で求めることができる。
【0240】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0241】
なお、以降のモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理については、運航性能評価装置9が処理を実行する。
【0242】
(ステップS401)
運航性能評価装置9に船体喫水及び排水量が入力される。
【0243】
(ステップS402)
運航性能評価装置9は、入力された船体喫水及び排水量に基づいて船体状態を設定する。
【0244】
(ステップS403)
運航性能評価装置9は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0245】
(ステップS404)
運航性能評価装置9は、取得した平水中性能個船データに基づいて平水中性能を推定する。
【0246】
(ステップS405)
運航性能評価装置9は、推定した平水中性能の内、平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素を記憶する。
【0247】
(ステップS406)
運航性能評価装置9は、推定した平水中性能の内、平水中船体自航要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体自航要素データを記憶する。
【0248】
(ステップS407)
運航性能評価装置9は、評価経年期間を設定する。ここでの評価経年期間とは、船舶の就航後における年数のことである。
【0249】
(ステップS408)
運航性能評価装置9は、遭遇海気象データベース21から気象モニタリングデータを取得する。
【0250】
(ステップS409)
運航性能評価装置9は、取得した気象モニタリングデータに基づいて、平穏海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は平穏海気象における日時及び場所である。
【0251】
(ステップS410)
運航性能評価装置9は、ステップS403で取得した平水中性能個船データに基づいて、推進器の単独特性を入力する。
【0252】
(ステップS411)
運航性能評価装置9は、船舶性能データベース22から性能モニタリングデータを取得する。
【0253】
(ステップS412)
運航性能評価装置9は、入力された推進器の単独特性データ及び取得した性能モニタリングデータに基づいて、推進器作動点を解析する。
【0254】
(ステップS413)
運航性能評価装置9は、解析結果に基づいて、データとして、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された推力係数、トルク係数及び伴流係数を記憶する。
【0255】
(ステップS414)
運航性能評価装置9は、ステップS405で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS406で記憶した平水中船体自航要素データ、並びに記憶した推力係数、トルク係数及び伴流係数に基づいて、平水中性能を解析する。
【0256】
(ステップS415)
運航性能評価装置9は、解析結果に基づいて、平水中船体抵抗要素の修正値データ及び平水中船体自航要素の修正値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素の修正値データ及び平水中船体自航要素の修正値データを記憶する。
【0257】
(ステップS416)
運航性能評価装置9は、記憶した平水中船体抵抗要素の修正値データ及び記憶した平水中船体自航要素の修正値データに基づいて、平水中性能を修正する。
【0258】
(ステップS417)
運航性能評価装置9は、修正した平水中船体抵抗要素修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素修正値データを記憶する。
【0259】
(ステップS418)
運航性能評価装置9は、修正した平水中船体自航要素修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中自航要素修正値データを記憶する。
【0260】
(ステップS419)
運航性能評価装置9は、ステップS405で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS406で記憶した平水中船体自航要素データ、ステップS417で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS418で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、経年劣化を評価し、平水中性能経年劣化データを作成する。例えば、船体抵抗係数や伴流係数等の変化率を時系列で評価することにより、平水中性能の時系列に対する経年劣化データを作成する。
【0261】
(ステップS420)
運航性能評価装置9は、作成した平水中性能経年劣化データを運航性能評価データとして運航性能評価データベース10に格納する。
【0262】
なお、ステップS401乃至ステップS420の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0263】
また、このような処理により、実際の運航に基づいた船舶の経年劣化を評価することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0264】
また、このような処理により、船舶の経年劣化を評価することができるので、適宜必要に応じて、プロペラを洗浄したり、船舶の表面を再度塗装し直す等の処置をすることができる。それにより、次回運航時には、経年劣化が原因による燃費の悪さを改善することができる。
【0265】
次に、以上の処理に基づいて、船体喫水状態を最適化した場合における航海燃費の比較評価の一例について図10〜図13を用いて説明する。
【0266】
図10は、本発明の実施の形態1における各喫水状態の定性的詳細の一例を示す図である。図11は、本発明の実施の形態1における各喫水状態の定量的詳細の一例を示す図である。図12は、本発明の実施の形態1における経時的な外乱(風・波)強さの一例を示す図である。図13は、本発明の実施の形態1における船体喫水状態最適化による航海燃費係数比較評価の計算例を示す図である。
【0267】
図10に示されるように、2つの喫水状態を想定する。
【0268】
具体的には、外乱無で燃費が最小となり、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない状態を喫水状態1と称し、本ケース外乱下で燃費が最小となる状態を喫水状態2と称する。
【0269】
なお、本ケース外乱下とは、図12に示される外乱に対して本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用したことを想定したものである。いずれにおいても、以後の説明で用いる喫水状態1とは、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない場合を想定し、以後の説明で用いる喫水状態2とは、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用した場合を想定する。
【0270】
次に、図11に示されるように、喫水状態を具体的に想定する。なお、図11に示される喫水状態は所定の期間に対する平均値である。
【0271】
具体的には、図11に示されるように、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない喫水状態1の内、外乱無の航海平均における燃費係数を100とし、喫水状態1(外乱無し)と称し、外乱有の航海平均における燃費係数を194とし、喫水状態1(外乱有り・航海平均)と称する。また、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用する喫水状態2の内、外乱無の航海平均における燃費係数を120とし、喫水状態2(外乱無し)と称し、外乱有の航海平均における燃費係数を176とし、喫水状態2(外乱有り・航海平均)と称する。なお、図11においては、航海平均の用語については省略するものとする。
【0272】
次いで、図12に示されるように、日時に対する外乱強さを想定し、その想定された外乱強さを考慮した燃費係数は、図13に示されるようになる。ここでの外乱強さとは、風や波等の強さのことである。
【0273】
日時に対する燃費係数の曲線が図13に示されている。図13に示されるように、喫水状態1の曲線100、喫水状態2の曲線101、喫水状態1(外乱無し)の曲線102、喫水状態2(外乱無し)の曲線103、喫水状態1(外乱有り・航海平均)の曲線104、喫水状態2(外乱有り・航海平均)の曲線105が示されている。
【0274】
このように、外乱がある場合においては、本実施の形態の船舶の運航支援装置の処理を適用した方が、航海平均における燃費係数を18だけ低減できることがわかる。
【0275】
このように、従来技術においては、最適航路を推定する際、個船性能は類似船のデータに基づく近似値、または試運転状態での計測値に基づく推定値等、実船の運航状態に対応しないデータが用いられていた。そのため、経年劣化や汚損影響、積荷状態の違い等が適切に評価されていなかった。そのため、最適航路の推定精度が悪化していた。
【0276】
これに対して、本実施の形態では、実際の運航状態のモニタリングデータに基づき遭遇海気象の外乱影響を考慮して個船性能データを作成し、それを用いて最適航路の評価を行っている。そのため、従来技術では十分に考慮されていなかった様々な影響因子を考慮することができる。それにより、本発明では、高精度な最適航路及び最適喫水状態を提供することができる。
【0277】
また、本実施の形態では、最適航路の推定の際、航海燃費を評価関数として最適化を行ってもよい。そのため、運航時の喫水状態の最適化により、従来技術よりも航海燃費のさらなる低減を可能とする航路及び喫水状態を提示することができる。そして、提示された航路と喫水状態とに基づいて船舶を運航させることにより、二酸化炭素の排出を削減することができる。そのため、地球温暖化を防止に寄与することができる。
【0278】
以上のように、本実施の形態においては、船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信装置11と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段とを備えるようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0279】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定装置6を備え、最適航路推定装置6は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした航路点の全てに対して、海気象データ、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航路点間の燃費を算出し、算出した航路点間の燃費を累積加算することで航海出発点から航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、全体の航路を最適航路と決定するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適航路を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0280】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定装置5を備え、最適喫水推定装置5は、船上で利用されるものであり、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした航路点の全てに対して、海気象データ、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航路点間の燃費を算出し、算出した航路点間の燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、航路点間の喫水を航路点間の最適喫水と決定するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適喫水を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0281】
また、本実施の形態においては、最適状態推定装置は、船に配置され、航海出発点から航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象データベース21と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、遭遇海気象データベース21で記憶した遭遇海気象データ、個船性能データベース8で記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正装置4とを備え、個船性能修正装置4は、遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、平水中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新し、遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、波浪中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新し、遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、風中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したモニタリングデータを用いた個船性能データを作成することができる。そして、この個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮した最適航路の評価を行うことができる。
【0282】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、航海出発点から航海到着点における船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能データベース22と、遭遇海気象データベース21で記憶した遭遇海気象データ、個船性能データベース8で記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能、並びに船舶性能データベース22で記憶した船体抵抗係数と伴流係数に基づいて、船の経年劣化を評価する運航性能評価装置9とを備え、運航性能評価装置9は、時系列に対する船体抵抗係数と伴流係数の変化に基づいて、経年劣化を評価するようにしたので、実際の運航に基づいた船舶の経年劣化を評価することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。また、船舶の経年劣化を評価することができるので、適宜必要に応じて、プロペラを洗浄したり、船舶の表面を再度塗装し直す等の処置をすることができる。それにより、次回運航時には、経年劣化が原因による燃費の悪さを改善することができる。
【0283】
実施の形態2.
図14は、本発明の実施の形態2における船舶の運航支援装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
【0284】
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0285】
実施の形態1との相違点は、船上において、最適航路評価データベース30、航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、最適喫水評価データベース33、積み付け計算装置34、船体積み付けデータベース35、及び機関制御室40が設けられている点である。
【0286】
最適航路推定装置6は、最適航路評価データベース30と、最適喫水評価データベース33と、それぞれ接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。
【0287】
航路情報収録装置31は、最適航路評価データベース30と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、航路情報収録装置31は、最適航路推定装置6で作成され、最適航路評価データベース30に格納されている最適航路評価データを取得する。これにより、船上の船舶運航者は、最適航路評価データを図示しない船舶運航用モニター等に容易に表示することができ、また、修正等の管理をすることができる。
【0288】
なお、「航路情報収録装置31」は、本発明における「航路情報収録手段」に相当する。
【0289】
なお、「船舶運航用モニター」は、本発明における「表示手段」に相当する。
【0290】
船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31が保持している最適航路評価データを利用することにより、船舶に対して最適航路上を船舶に搭載されたエンジンを機関制御室40で制御することにより自動的に航行させることができる。
【0291】
なお、「船舶自動運航装置32」は、本発明における「船舶自動運航手段」に相当する。
【0292】
なお、「機関制御室40」は、本発明における「制御手段」に相当する。
【0293】
積み付け計算装置34は、最適喫水評価データベース33と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、積み付け計算装置34は、最適航路推定装置6で作成され、最適喫水評価データベース33に格納されている最適喫水評価データを取得する。そして、積み付け計算装置34は、取得した最適喫水評価データに基づいて、最適喫水状態となる貨物や最適喫水状態となるバラスト等の積み付けに関する情報を計算する。これにより、船上のユーザーは、最適喫水状態となる貨物や最適喫水状態となるバラスト等の積み付けに関する情報を取得することができる。例えば、最適喫水状態のときのバラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得装置(図示せず)により、適宜それらの情報の取得が可能である。
【0294】
なお、「船体積み付け情報取得装置」は、本発明における「船体積み付け情報取得手段」に相当する。
【0295】
また、積み付け計算装置34は、船体積み付けデータベース35と接続されており、通信機器(図示せず)により、船体積み付けデータベース35と各種データの送受信可能である。これにより、積み付け計算装置34にて計算された積み付けに関する情報は適宜船体積み付けデータベース35に格納される。
【0296】
なお、「積み付け計算装置34」は、本発明における「積み付け計算手段」に相当する。
【0297】
このように、最適喫水推定装置5及び最適航路推定装置6により作成された各種データを船上で通常使用される航海用装置が取得する。航海用装置は、具体的には、航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、及び積み付け計算装置34のことである。航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、及び積み付け計算装置34がそのような各種データを取得し、適宜所定の演算を行う。
【0298】
これにより、船上の船舶運航者が容易に最適喫水状態を設定することができる。そのため、船舶は最適航路上を運航することができる。それにより、船舶の燃費を低減した運航を行うことができる。
【0299】
なお、本明細書において、各処理の詳細を記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0300】
以上のように、本実施の形態においては、船舶運航用モニターと、最適航路推定装置6で決定した最適航路の情報を取得して保持し、保持した最適航路の情報を船舶運航用モニターに表示させる航路情報収録装置31とを備えるようにしたので、船上の船舶運航者は、最適航路評価データを図示しない船舶運航用モニター等に容易に表示することができ、また、修正等の管理をすることができる。
【0301】
また、本実施の形態においては、航路情報収録装置31から船の最適航路の情報を取得する船舶自動運航装置32をさらに備え、船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31から取得した船の最適航路の情報に基づいて、船舶に搭載されたエンジンを制御する機関制御室40に対する制御指令を送信するようにしたので、船舶に搭載されたエンジンを機関制御室40で制御することにより最適航路上を運航することができる。それにより、自動的に航行させることができる。
【0302】
また、本実施の形態においては、最適喫水推定装置5により決定された船の最適喫水の情報を取得する積み付け計算装置34をさらに備え、積み付け計算装置34は、最適喫水の情報に基づいてバラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得装置を有し、船舶自動運航装置32は、船体積み付け情報取得装置で取得したバラストタンクに関する情報、航路情報収録装置31から取得した最適航路の情報、及び積み付け計算装置34で取得した最適喫水の情報に基づいて、船に搭載されたエンジンを制御する機関制御室40に対する制御指令を送信するようにしたので、最適喫水状態のときのバラストタンクに関する情報を適宜取得し、取得結果に基づいて船を運航させることができる。
【符号の説明】
【0303】
1 モニタリング装置、2 運航データ蓄積装置、3 個船性能入力データベース、4 個船性能修正装置、5 最適喫水推定装置、6 最適航路推定装置、7 最適航路/喫水評価データベース、8 個船性能データベース、9 運航性能評価装置、10 運航性能評価データベース、11、12 通信装置、13 海気象予報データベース、14 外部機関の装置、15 陸上データ蓄積装置、16、17、18 運航関係者、21 遭遇海気象データベース、22 船舶性能データベース、23 位置情報データベース、24 喫水・排水量データベース、30 最適航路評価データベース、31 航路情報収録装置、32 船舶自動運航装置、33 最適喫水評価データベース、34 積み付け計算装置、35 船体積み付けデータベース、40 機関制御室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の運航を支援する運航支援装置に関し、特に、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮した船の運航を支援する運航支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船の運航支援装置として、例えば、潮流データと風速データとを含む物理的データが、環境変化により変動したときには、現在位置の船位に基づいて、運航スケジュールが自動的に修正される、というものがある。このようなものにおいては、「燃費削減の点で最適制御の運航を実現する。」とされている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、「海象情報に含まれる風Wの風向、風速および波Xの波高、波周期、波向、ならびに海・潮流Yの流向、流速の各データに応じ、船舶2の運航限界を考慮しながら船速舵角制御を行い、舵角制御には当て舵の量も自動的に配慮される」というものがある。このようなものにおいては、「A港からB港へ到る航路が危険海域を回避するように選択されるとともに、同航路に沿い予め多数の通過点が選択され、しかも現在の位置および時刻からB港への到着時刻に見合うように海象情報などに配慮して各通過点ごとに船舶の通過予定時刻、航海速度および舵角の設定が順次自動的に行われるので、経験の浅い船長でも安全に且つ予定時刻どおりに船舶の運航を行うことができる。」とされている(特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、喫水等を考慮した船舶の運航管理が行われ、また、経年劣化も考慮する船舶の運航管理が行われる、というものがある。このようなものにおいては、「実際の船舶の運行データに基づいて推定された精度の高い船舶の運行管理情報を提供するので、最適な船舶の運行を実現させることができる」とされている(特許文献3参照)。
【0005】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、気象および海象の変化に基づいた外乱を考慮して運航スケジュールが作成されるというものがある。このようなものにおいては、「目的港への到着時刻を許容誤差内に納めるための制御が的確に行われるようになり、これに伴い主機関の燃料消費も適切に抑制できるようになって、排気ガスによる環境負荷を低減させる効果も得られる」とされている(特許文献4参照)。
【0006】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、海気象データに基づいて船速、燃料消費量及びシーマージンに関する予測データを生成し、その予測データに基づいて燃料消費量及び航行時間を最適にする航路を探索するというものがある。このようなものにおいては、「少なくとも船速、燃料消費量及びシーマージンに基づく予測データにより、ある海域から目的地までの最適航路を探索し、表示装置が最適航路に基づいた航路図を表示するようにしたので、例えば、運航者は、探索された最適航路を参照して航路計画の立案、修正等を行うことができ、経済的な航海を実現することができる。」とされている(特許文献5参照)。
【0007】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、海流を考慮して最短時間となる航路を決定するというものがある。このようなものにおいては、「船舶上で最適航路を演算する際に、海流予測データを考慮して各通過点の位置を改訂することができ、これにより、通過点間の通過時間が最短となる航路を、最適航路として求めることができる。このため、航海時間の短縮や消費燃料の節約等の多くの効果を得ることができる。」とされている(特許文献6参照)。
【0008】
また、従来の船の運航支援装置として、例えば、「対象となる船舶毎の船体運動の特性と気象・海象条件を考慮して最適航路の計算を行う。」というものがある。このようなものにおいては、「最適航路計算や運航管理の精度も著しく向上できる。」とされている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−25914号公報(段落[0019]、[0033])
【特許文献2】特開2005−162117号公報(段落[0006]、[0016])
【特許文献3】特開2006−193124号公報(段落[0019]、[0021]、及び[0036])
【特許文献4】特開2007−045388号公報(段落[0009]、[0013])
【特許文献5】特開2007−057499号公報(段落[0014]、[0025]、及び[0026])
【特許文献6】特開2007−245935号公報(段落[0010]、[0039])
【特許文献7】特開2009−286230号公報(段落[0034]、[0073])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の船(船舶)の運航支援装置(特許文献1〜7)においては、船上側で行われる場合、最適航路の評価計算は、複数の航路から最適解を探索するパラメータを指定することにより行われていた。このとき、指定したパラメータは、運航者が経験的に決定する固定値であった。一方、陸上側で行われる場合、最適航路の評価計算は、船舶の運航前に行われていた。それらのことから、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適航路の評価計算を動的に行うものではなかった。そのことにより、固定値として指定されたパラメータに対して行われた最適航路の評価計算、あるいは、陸上側で船舶の運航前の最適航路の評価計算は、実際の航行時のおける状況を反映しない結果となるため、大きく外れたものとなった。その結果、十分な燃料消費量(以下、燃費とする)の低減効果が得られていないという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃費が最小となる状態を動的に評価できる運航支援装置及び船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の運航支援装置は、船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信手段と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定手段を備え、前記最適航路推定手段は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、算出した前記航路点間の燃費を累積加算することで前記航海出発点から前記航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、前記全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、前記全体の航路を最適航路と決定する、ことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の運航支援装置は、表示手段と、前記最適航路推定手段で決定した前記最適航路の情報を取得して保持し、保持した前記最適航路の情報を前記表示手段に表示させる航路情報収録手段とを備える、ことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の運航支援装置は、前記航路情報収録手段から前記船の前記最適航路の情報を取得する船舶自動運航手段をさらに備え、前記船舶自動運航手段は、前記航路情報収録手段から取得した前記船の前記最適航路の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定手段を備え、前記最適喫水推定手段は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、算出した前記航路点間の燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、前記航路点間の喫水を前記航路点間の最適喫水と決定する、ことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の運航支援装置は、前記最適喫水推定手段により決定された前記船の前記最適喫水の情報を取得する積み付け計算手段をさらに備え、前記積み付け計算手段は、前記最適喫水の情報に基づいて、バラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得手段を有し、前記船舶自動運航手段は、前記船体積み付け情報取得手段で取得したバラストタンクに関する情報、前記航路情報収録手段から取得した前記最適航路の情報、及び前記積み付け計算手段で取得した前記最適喫水の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記航海出発点から前記航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象記憶手段と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正手段とを備え、前記個船性能修正手段は、前記遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記平水中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、前記遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記波浪中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、前記遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記風中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新する、ことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の運航支援装置においては、前記最適状態推定手段は、前記船に配置され、前記航海出発点から前記航海到着点における前記船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能記憶手段と、前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能、並びに前記船舶性能記憶手段で記憶した前記船体抵抗係数と前記伴流係数に基づいて、前記船の経年劣化を評価する運航性能評価手段とを備え、前記運航性能評価手段は、時系列に対する前記船体抵抗係数と前記伴流係数の変化に基づいて経年劣化を評価する、ことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の船は、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の運航支援装置と、前記運航支援装置からの制御指令に基づいて、当該船に搭載されたエンジンを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の運航支援装置は、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃費が最小となる状態を動的に評価できるため、十分な燃費の低減をすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における船舶の運航支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図3】本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図4】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図6】本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その3)である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1における各喫水状態の定性的詳細の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1における各喫水状態の定量的詳細の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1における経時的な外乱(風・波)強さの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1における船体喫水状態最適化による航海燃費係数比較評価の計算例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2における船舶の運航支援装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る船舶の運航支援装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における船舶の運航支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
なお、船舶の運航支援装置の各機能をハードウェアで実現するか、ソフトウェアで実現するかは問わない。つまり、本明細書の各ブロック図は、ハードウェアのブロック図と考えても、ソフトウェアによる機能ブロック図と考えてもよい。
【0026】
ただし、以降で説明する各種データベースについては、半導体記憶装置や磁気記憶装置等で形成されるものとする。
【0027】
船上には、モニタリング装置1、運航データ蓄積装置2、個船性能入力データベース3、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、最適航路/喫水評価データベース7、個船性能データベース8、運航性能評価装置9、運航性能評価データベース10、通信装置11、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24等が設けられている。
【0028】
なお、「モニタリング装置1、運航データ蓄積装置2、個船性能入力データベース3、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、最適航路/喫水評価データベース7、個船性能データベース8、運航性能評価装置9、運航性能評価データベース10、通信装置11、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24」は、本発明における「最適状態推定手段」に相当する。
【0029】
なお、「個船性能データベース8」は、本発明における「個船性能記憶手段」に相当する。
【0030】
なお、「遭遇海気象データベース21」は、本発明における「遭遇海気象記憶手段」に相当する。
【0031】
一方、陸上には、通信装置12及び陸上データ蓄積装置15等が設けられている。
【0032】
また、陸上には、海気象予報データベース13及び外部機関の装置14(例えば、気象庁に設置されているスーパーコンピュータ)等が設けられている。
【0033】
まず、船上に設けられる装置について説明する。
【0034】
モニタリング装置1は、例えば、船舶の運航時の船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを取得する。また、モニタリング装置1は、例えば、船舶の運航時の船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを時系列連続で計測し、一定時間毎に計測データの統計的データ解析処理を行う。
【0035】
ここで、モニタリング装置1が取得するデータについて説明する。
【0036】
船舶性能のデータは、船舶の個船性能を評価し、かつ運航実績の評価を行うために必要となる各種データのことである。船舶性能のデータは、例えば、方位、対地船速、針路、対水船速、推進軸回転数、推進軸馬力、斜航角、舵角、船体運動、及び加速度等が含まれる。
【0037】
遭遇海気象のデータは、船舶の航行時の周囲の海気象計測データのことである。遭遇海気象のデータは、例えば、風速、風向き、波パワースペクトル、波高、波周期、及び波向き等が含まれる。
【0038】
位置情報のデータは、船舶の航行時の位置等の計測データのことである。位置情報のデータは、例えば、緯度、経度、及び時刻等が含まれる。
【0039】
喫水・排水量のデータは、船舶の航行時の船体喫水、排水量のデータのことである。喫水・排水量のデータは、例えば、船首喫水量、船体中央喫水量、船尾喫水量、及び排水量等が含まれる。
【0040】
次いで、上記で述べた船上に設けられる他の装置について説明する。
【0041】
運航データ蓄積装置2には、遭遇海気象データベース21、船舶性能データベース22、位置情報データベース23、及び喫水・排水量データベース24等が設けられている。また、運航データ蓄積装置2は、モニタリング装置1や他の関連する船内に設置されている装置とデータの送受信をする通信機器(図示せず)を設けており、モニタリング装置1が取得した船舶性能、遭遇海気象、位置情報、及び喫水・排水量等のデータを各データベースに蓄積する。
【0042】
なお、「船舶性能データベース22」は、本発明における「船舶性能記憶手段」に相当する。
【0043】
個船性能入力データベース3は、例えば、指定された船体喫水量、船舶の開発及び設計時に想定される特定の排水量・喫水状態等の値を格納する。そのため、個船性能入力データベース3は、実際の運航状態での排水量・喫水状態に対応した個船性能データを格納していない。
【0044】
個船性能修正装置4は、運航データ蓄積装置2に格納されている各種データと、個船性能入力データベース3に格納されている各種データとに基づいて、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいて遭遇海気象の外乱影響を考慮した個船性能データを作成する。
【0045】
具体的には、まず、個船性能修正装置4は、モニタリング装置1で取得された各種データを用い、予め定めてある海気象条件に関する閾値に対し、その条件を満たす平穏と判断される海気象での計測データを抽出する。
【0046】
次に、個船性能修正装置4は、抽出されたデータと、個船性能入力データベース3に格納され、かつ予め設定されている個船性能入力データとに基づいて、実船尺度影響の修正を含む所要の修正を行い、実際の運航状態の平水中性能個船データを作成する。
【0047】
また、個船性能修正装置4は、遭遇海気象計測データに基づいて評価された航行時の平水中抵抗値と、船舶性能のデータの計測値より推定された全抵抗値との差より、平水中抵抗成分以外の合計抵抗値を算出する。次いで、算出された平水中抵抗成分以外の合計抵抗値と、各種遭遇海気象の計測値(例えば、風速、風向き、及び波パワースペクトル等)とに基づいて、予め入力された個船性能入力データをチューニングする。これにより、遭遇海気象に起因する各種外乱抵抗成分を推定するための高精度な個船性能データを作成する。すなわち、実際の運航状態の風中性能個船データを作成する。
【0048】
また、個船性能修正装置4は、モニタリング装置1で計測された船舶性能のデータのうち、船体運動や加速度の計測データと、各種遭遇海気象の計測値(例えば、風速、風向き、及び波パワースペクトル等)とに基づいて、予め入力された船体運動及び加速度に関する個船性能入力データをチューニングする。これにより、船体運動の推定精度が高くなる。このようにして、波浪中での船体運動に起因する外乱抵抗成分を推定するための高精度な個船性能データを作成する。すなわち、実際の運航状態の波浪中性能個船データを作成する。
【0049】
また、個船性能修正装置4は、運航データ蓄積装置2で蓄積された喫水・排水量の状態毎に、作成された個船性能データを整理する。次いで、個船性能修正装置4は、喫水及び排水量と、個船性能データの各要素データとの関係を算出する。これにより、任意の喫水・排水量の状態について個船性能データの高精度な推定を行う。すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データの各要素データと、喫水・排水量の状態との関連付けを行う。
【0050】
このように、個船性能修正装置4は、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを作成し、作成したそれらのデータの中の各要素データと喫水・排水量の状態との関連付けを行う。なお、以後において、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを統合して言うときには、各種の個船性能データと総称する。
【0051】
なお、「個船性能修正装置4」は、本発明における「個船性能修正手段」に相当する。
【0052】
最適喫水推定装置5は、各種の個船性能データと、外部機関の装置14より入手する海気象予報データとに基づいて、船舶の最適運航航路を算定する。具体的には、最適喫水推定装置5は、個船性能修正装置4で作成された各種の個船性能データと、陸上より送信される海気象予報データとに基づいて、予め作成された航海の評価指標となるパラメータを求める。そのようなパラメータは、例えば、航海時間、航海距離、及び航海燃費等のことである。そして、最適喫水推定装置5は、これらのパラメータを最小化する最適喫水を算出する。
【0053】
なお、「最適喫水推定装置5」は、本発明における「最適喫水推定手段」に相当する。
【0054】
最適航路推定装置6は、各種の個船性能データと、外部機関の装置14より入手する海気象予報データとに基づいて、航行時の排水量・喫水状態を算定する。具体的には、最適航路推定装置6は、個船性能修正装置4で作成された各種の個船性能データと、陸上より送信される海気象予報データとに基づいて、予め作成された航海の評価指標となるパラメータを求める。そのようなパラメータは、例えば、航海時間、航海距離、及び航海燃費等のことである。そして、最適航路推定装置6は、これらのパラメータを最小化する最適航路を算出する。
【0055】
なお、「最適航路推定装置6」は、本発明における「最適航路推定手段」に相当する。
【0056】
運航性能評価装置9は、各種の個船性能データと、モニタリング装置1により取得された運航時の位置情報と、モニタリング装置1により取得された遭遇海気象とに基づいて、運航実績を解析する。具体的には、運航性能評価装置9は、個船性能修正装置4で算出された各種の個性性能データの平水中性能個船データに対して、平水中性能の時系列変化を解析する。これにより、運航性能評価装置9は、平水中性能の経年劣化及び汚損影響を評価する。また、運航性能評価装置9は、平水中性能以外である波浪中性能や風中性能についても同様にその時系列変化を解析し、波浪中性能の経年劣化及び汚損影響、並びに風中性能の経年劣化及び汚損影響を評価する。
【0057】
なお、「運航性能評価装置9」は、本発明における「運航性能評価手段」に相当する。
【0058】
通信装置11は、運航データ蓄積装置2が蓄積したデータと、最適喫水推定装置5により求められた最適喫水に関するデータと、最適航路推定装置6により求められた最適航路に関するデータと、運航性能評価装置9により求められたデータとを陸上へ送信する。
【0059】
なお、「通信装置11」は、本発明における「通信手段」に相当する。
【0060】
次に、陸上に設けられた各種装置について説明する。
【0061】
通信装置12は、最適航路の推定や最適喫水の推定等に用いられる海気象予報データを陸上から船舶に送信する。
【0062】
陸上データ蓄積装置15は、通信装置11により陸上へ送信された各種データを蓄積する。具体的には、陸上データ蓄積装置15は、モニタリング装置1、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、最適航路推定装置6、及び運航性能評価装置9等で取得して作成された各種データを、通信装置12を介して入手して蓄積し、データベースを作成する。そして、このようにして作成されたデータベースのデータは、陸上の運航関係者16、17、18やその他の関係者が容易にアクセス可能な状態で設定されている。
【0063】
なお、個船性能修正装置4、最適喫水推定装置5、及び最適航路推定装置6は、これらを一つの組として、最適航路評価データと最適喫水評価データを作成するものである。そして、そのような評価データの作成は常に所定の間隔で行われている。
【0064】
また、海気象が一定とみなせる時間は、おおむね30分間程度である。そのため、運航データ蓄積装置が保有する遭遇海気象データについては、30分程度の間隔でデータを作成する。すなわち、30分間の船上での遭遇海気象計測データより、適当な統計解析の手法を用いて、30分間の遭遇海気象の代表値、例えば平均風速、有義波高などを算出する。ただし、このような設定については、ユーザ側で適宜変更可能である。
【0065】
また、ここでの最適航路評価データと最適喫水評価データは予測値であり、この予測値に基づいて、適宜陸上側で管理者が評価に使ってもよい。
【0066】
また、このような予測値を利用するタイミングとしては、波が荒れた場合に適用すればよく、波が荒れていないような平穏な状態であれば航路や喫水を変更する必要はない。つまり、予測した結果、そのときに波が荒れていれば航路や喫水をその都度修正し、そのときに波が荒れていなければ航路と喫水を現状のままとすればよい。このように船舶側で動的に最適航路や最適喫水を修正できるため、燃費の悪化を抑えた船舶の運航が可能となる。
【0067】
海気象の理想的な状態としては、波も風もない状態が船舶にとって一番燃費のいい状態である。そして、評価された燃費等が所定の閾値を超えたときには、燃費が悪い状態となるので、そのときに、最新の評価データに基づいて航路や喫水等を変更する。
【0068】
具体的には、波が荒れていなければ、喫水を浅く保つようにする。このようにすることで燃費の悪化を抑えることができる。
【0069】
そして、波が荒れてきたら、評価データに基づいて喫水を、適当な時間間隔でステップ状に変更する。つまり、喫水を深めていく。換言すれば、船舶を評価データに基づいて海に対して沈めていく。このとき、バラストタンク(図示せず)に海水を入れて、バラストタンク内の海水量を調整することにより、喫水を変更する。そして、バラストタンクへの注水量と、バラストタンクからの排水量を調整しながら喫水を調整していくのである。その注水量と排水量の計算は常に自動で行われ、実際の注水等の操作はその自動計算された結果に基づいて運航者が行う。
【0070】
以上の構成を前提にして、船舶の運航支援装置の処理について図面を用いて説明する。
【0071】
図2は、本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図3は、本発明の実施の形態1における個船性能を考慮した最適航路算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【0072】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した最適航路を算出することを想定する。そして、以降の最適航路を算出する処理については、最適航路推定装置6が処理を実行する。
【0073】
なお、以降の処理は、船舶の航海前に1回行い、後は気象データが更新されるごとに行う。つまり、航海中においては、気象データが更新されるごとに、船体状態を設定し、最適航路を計算し直す。ただし、気象等の状態が変化したらその都度計算する。
【0074】
(ステップS101)
最適航路推定装置6に船体喫水及び排水量が入力される。このときに入力される船体喫水及び排水量は、例えば、個船性能データベース8や喫水・排水量データベース24等に予め格納された値を最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して船体喫水及び排水量が入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0075】
(ステップS102)
最適航路推定装置6は、船体状態を設定する。具体的には、船体喫水及び排水量が入力されると、最適航路推定装置6は、個船性能入力データベース3に予め格納されている離散的なマトリックス状のデータを参照する。このマトリックス状のデータは、船舶の建造時に決定される個船データである。そして、入力されたデータに基づいてマトリックス状のデータの補間処理を行う。その補間処理の結果、船体状態が設定されるのである。このとき、補間処理は任意の補間方法で行えばよく、例えば、線形補間等により補間処理が実行される。そして、最適航路推定装置6は、補間したデータを船体状態として出力する。なお、ここでいう出力とは、紙による印字と図示しない記録媒体等に一次記憶させることとを含むものであり、以後の説明における出力も同様とするが、以後においては紙による印字の説明は省略する。また、言うまでもないことであるが、紙による印字だけにして、その都度印字内容を運航者が最適航路推定装置6に入力してもよい。あるいは、記録媒体等に一次記憶させるだけにして、運航者を介さずに全て自動計算させてもよい。その場合において、記録媒体等は各種計算をするときのデータ参照用一次記憶装置として用いられることとしてもよい。
【0076】
(ステップS103)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている平水中性能個船データを取得する。
【0077】
(ステップS104)
最適航路推定装置6は、取得した平水中性能個船データに基づいて平水中性能を推定する。
【0078】
(ステップS105)
最適航路推定装置6は、推定した平水中性能特性(船体状態対応)データを、図示しない記録媒体等(以下、記録媒体と称する)に供給する。記録媒体は、供給された平水中性能特性データを記憶する。
【0079】
(ステップS106)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている波浪中性能個船データを取得する。
【0080】
(ステップS107)
最適航路推定装置6は、取得した波浪中性能個船データに基づいて波浪中性能を推定する。
【0081】
(ステップS108)
最適航路推定装置6は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0082】
(ステップS109)
最適航路推定装置6は、個船性能データベース8に格納されている風中性能個船データを取得する。
【0083】
(ステップS110)
最適航路推定装置6は、取得した風中性能個船データに基づいて風中性能を推定する。
【0084】
(ステップS111)
最適航路推定装置6は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能個船データを記憶する。
【0085】
(ステップS112)
最適航路推定装置6は、航海条件を設定する。ここで設定する航海条件とは、例えば、始点、終点、及び日時のことである。つまり、始点とは航海出発点のことであり、終点とは航海到着点のことであり、日時とは始点から終点までにかかる時間や日数のことである。
【0086】
(ステップS113)
最適航路推定装置6は、安全制約条件を設定する。ここで設定する安全制約条件とは、例えば、遭遇海象や船体運動のことである。また、安全制約条件の設定とは、船舶の運航の際、危険領域を避けるように航路を設定することであり、閾値として遭遇海象や船体運動を設定するものである。そのような閾値が設定されたら、次に海気象データを入力して、船舶の運航する領域を設定する。その際、例えば、船舶が貴重な荷物を積んでいるときには、船舶の揺れを抑えられる領域を設定し、大型船舶のときには、高い波高に通常耐えられるので、そういったことを考慮して領域を設定する。また、船体運動とはいわゆる船の重心まわりの6自由度の剛体運動、具体的には、上下揺れ、左右揺れ、前後揺れ、縦揺れ、横揺れ、及び船首揺れでの6種の運動に起因するものであり、これらの運動の変位、速度、加速度、及びそれらに起因する船上での局所的な運動や水面と船体間の相対運動、例えば、海水打ち込み、プロペラレーシング、船底露出などをさし、安全制約条件ではこれらの船体運動諸様相に関して制約条件を設定する。
【0087】
(ステップS114)
最適航路推定装置6は、航海参照速力を設定する。ここで設定する航海参照速力とは、例えば、ある排水量・喫水状態にて風、波、潮流などの外乱の影響を受けない状態で、所定のエンジンの回転数や馬力の状態で、船舶が航行しうる速力のことである。なお、航海参照速力の設定においては、航海条件で日時を求めないときに求めるようにしてもよい。
【0088】
(ステップS115)
最適航路推定装置6は、初期航路を設定する。なお、初期航路の設定とは、最適航路とされる船舶の通過点を決めることである。すなわち、船舶の途中経路点を求めることである。決定方法は任意であり、例えば、経験的に運航者が決めた通過点を設定するようにしてもよい。そのため、通過点としての経路点数はさまざまな場合が存在する。例えば、運航時に必ず通過しないといけない所があれば、そこは必然的に設定される。また、季節によって、北回りで運航させたり、南周りで運航させるようにしてもよい。そのときには、例えば、季節風等を考慮することによる燃費の改善を考慮した航路であってもよい。そのような航路の決定は一般的に船長が行うものであり、船長が決めた航路と自動計算による求められた最適航路とを比較し、航路の修正が行われるようにしてもよい。
【0089】
なお、設定した初期航路は、図示しない端末等のモニターに航路が海図上に表示され、その航路に対する燃費、航海時間等が表示される。なお、ここでの端末はデスクトップ型パーソナルコンピュータであってもよく、ラップトップ型パーソナルコンピュータであってもよい。また、そのような端末は、携帯端末等であってもよい。
【0090】
(ステップS116)
最適航路推定装置6には、海気象予報データが入力される。このときに入力される海気象予報データは、例えば、海気象予報データベース13に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して海気象予報データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0091】
(ステップS117)
最適航路推定装置6は、設定した初期航路及び入力された海気象予報データに基づいて、航路点遭遇海気象条件を設定する。なお、最適航路は経緯度線で一定間隔で定義される海気象予報データの定義点を結ぶように設定される。具体的には、海気象予報データの定義点ごとに、船舶の性能、船舶に搭載されるエンジンの性能、及び所定の船速等に基づいて計算処理がなされる。そして、そのような処理を航路点ごと、すなわち、中継地点ごとに繰り返すのである。
【0092】
(ステップS118)
最適航路推定装置6は、ステップS108で記憶した波浪中性能特性データ及び設定した航路点遭遇海気象条件に基づいて、波浪中応答を計算する。
【0093】
(ステップS119)
最適航路推定装置6は、波浪中外力データ及び運動値データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された波浪中外力データ及び運動値データを記憶する。なお、設定した航路点遭遇海気象条件は、航路点で遭遇する海象条件を意味するものである。
【0094】
(ステップS120)
最適航路推定装置6は、ステップS111で記憶した風中性能特性データに基づいて風中流体力を計算する。
【0095】
(ステップS121)
最適航路推定装置6は、計算した風中流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中流体力データを記憶する。なお、設定した航路点遭遇海気象条件は、航路点で遭遇する気象条件を意味するものである。
【0096】
なお、ここでの波浪中応答や風中流体力の計算については順不同である。
【0097】
(ステップS122)
最適航路推定装置6には、潮流予報データが入力される。このときに入力される潮流予報データは、例えば、海気象予報データベース13に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接、最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して潮流予報データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0098】
なお、潮流予報データは、例えば、1週間に一回の割合で更新されるデータである。また、潮流予報データは、当然のこととして、場所が変われば潮流も変わる。すなわち、潮流予報データは場所による違いは大きい。そのため、最適航路推定装置6は、場所ごとに潮流予報データを取得する。具体的には、船舶が赤道より上方を航海するときには、最適航路推定装置6は、その領域の潮流予報データを衛星通信等を介して取得する。もちろん、最適航路推定装置6は、全地球の潮流予報データを取得してもよい。このように、船上側で動的に最新の潮流予報データを取得し、それに基づいて以降の評価計算が行われるため、精度の高い評価計算を行うことができる。
【0099】
(ステップS123)
最適航路推定装置6は、入力された潮流予報データに基づいて、航路点遭遇潮流条件を設定する。
【0100】
(ステップS124)
最適航路推定装置6は、ステップS105で記憶した平水中性能特性データ及び設定した航路点遭遇潮流条件に基づいて、潮流流体力を計算する。
【0101】
(ステップS125)
最適航路推定装置6は、計算した潮流流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された潮流流体力データを記憶する。設定した航路点遭遇潮流条件は、航路点で遭遇する潮流条件を意味するものである。
【0102】
(ステップS126)
最適航路推定装置6は、ステップS105で記憶した平水中性能特性データ、ステップS119で記憶した波浪中外力データ及び運動値データ、ステップS121で記憶した風中流体力データ、及びステップS125で記憶した潮流流体力データに基づいて、船体抵抗を計算する。なお、船体抵抗では、造波抵抗、摩擦抵抗、造渦抵抗、及び風圧抵抗等が計算されることになるが、ここでは、波浪、風、潮流、平水中(船舶を走らせたときに相当する)といった4成分のカテゴリーごとにこれらの抵抗を計算し、計算後にこれらの4成分を統合する。
【0103】
(ステップS127)
最適航路推定装置6は、計算した船体抵抗データを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された船体抵抗データを記憶する。なお、ここでの船体抵抗データは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0104】
(ステップS128)
最適航路推定装置6は、船体自航状態を計算する。具体的には、プロペラの回転数を計算する。これはステップS126で求めた抵抗の計算結果に基づいて算出される。次いで、プロペラの回転数が定まったら、最適航路推定装置6は、そのプロペラの回転数に必要な主機の回転数(以下、回転数とする)と主機の馬力(以下、馬力とする)を求め、そのときの船速を計算する。
【0105】
(ステップS129)
最適航路推定装置6は、計算した船速、回転数、及び馬力に関するデータを記録媒体に供給する。記録媒体は供給された船速、回転数、及び馬力に関するデータを記憶する。なお、ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0106】
(ステップS130)
最適航路推定装置6には、主機燃費特性データが入力される。このときに入力される主機燃費特性データは、例えば、船舶性能データベース22に予め格納されたデータを最適航路推定装置6が取得してもよい。あるいは、運航者により、直接、最適航路推定装置6の図示しない入力端末を介して主機燃費特性データが入力されてもよい。いずれにおいても、入力方法は限定されるものではない。
【0107】
なお、主機とは、船の推進力を生み出すエンジンのことである。そして、主機燃費特性とは、主機の回転数や馬力に対する燃費のことであり、主機の仕様に基づいて決まるものである。
【0108】
(ステップS131)
最適航路推定装置6は、入力された主機燃費特性データに基づいて、主機の燃費を計算する。
【0109】
(ステップS132)
最適航路推定装置6は、計算した主機燃費データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された主機燃費データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下における航海に基づいたものである。
【0110】
(ステップS133)
最適航路推定装置6は、航路の累積燃費を計算する。具体的には、最適航路推定装置6は、上記で説明したように一定の経度緯度間隔で求めた航路点間ごとの燃費を累積することにより航路の累積燃費を求める。
【0111】
(ステップS134)
最適航路推定装置6は、航路の終点に到達したか否かを判定し、航路の終点に到達しないと判定された場合、ステップS135へ進み、航路の終点に到達したと判定された場合、ステップS136へ進む。すなわち、最適航路推定装置6は、上記の手順で求めた最適航路の先端が予め定められた航路点の終点に到達したか否かを判定する。
【0112】
(ステップS135)
最適航路推定装置6は、次の航路点へ進んだ後、ステップS120へ戻る。
【0113】
(ステップS136)
最適航路推定装置6は、航路の燃費を算出する。具体的には、ステップS133で計算した累積燃費がここでいう航路の燃費に相当することとなる。より具体的には、ステップS133における累積燃費の計算は、ステップS134での判定処理で、航路の終点に到達するまで実行されるこことなる。すなわち、航路の始点から航路の終点までの航路の燃費の総和がここでいう航路の燃費となる。そのため、累積燃費の最終的な値を取得することにより、航路の燃費を求めることとなる。そして、そのように取得した航路の燃費はステップS137における現航路の燃費である。つまり、現航路の燃費とは、現在定めた航路全体の燃費のことである。
【0114】
なお、ステップS137における最小航路の燃費は、デフォルト値としては、後述するようなダミーデータでよく、以後、ステップS137の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費として更新される。そして、最小燃費の航路においても同様に、デフォルト値としては、ダミーデータでよく、以後、ステップS137の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費であると共に、そのときの航路、すなわち、現航路が最小燃費の航路として更新される。
【0115】
(ステップS137)
最適航路推定装置6は、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいか否かを判定し、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいと判定された場合、ステップS138へ進み、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さくないと判定された場合、ステップS140へ進む。すなわち、最適航路推定装置6は、今まで評価した中で最小の燃費と比較する。そのため、最適航路推定装置6は、燃費をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0116】
(ステップS138)
最適航路推定装置6は、現航路の燃費を最小航路の燃費に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適航路推定装置6は、それを新たな最小航路の燃費に設定するのである。
【0117】
(ステップS139)
最適航路推定装置6は、現航路を最小燃費の航路に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適航路推定装置6は、それを新たな最小燃費の航路に設定するのである。そのため、最適航路推定装置6は、航路をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0118】
(ステップS140)
最適航路推定装置6は、航路の判定は終了であるか否かを判定し、航路の判定は終了でないと判定された場合、ステップS141へ進み、航路の判定は終了であると判定された場合、ステップS142へ進む。
【0119】
(ステップS141)
最適航路推定装置6は、航路を変更した後、ステップS120へ戻る。
【0120】
(ステップS142)
最適航路推定装置6は、最小燃費の航路を決定し、個船性能を考慮した最適航路算出処理は終了する。
【0121】
なお、航路の評価は取得した全データに対して最初から総当たりで行うのではなく、ある程度絞りこみ、その範囲のデータに対して総当たりで行ってもよい。そのときには、最短距離に近いところから順に評価していけばよい。ただし、外乱がなければ最短距離が航路としては望ましいため、最適航路の決定は外乱と距離とのトレードオフとなる。いずれにしても、ある程度絞りこんでから評価計算を行うため、船舶側で動的にかつ実時間で評価計算を行うことができるのである。
【0122】
なお、ステップS101乃至ステップS142の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0123】
また、このような処理により、個船性能を考慮した最適航路を算出することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0124】
また、このような処理により、船上側で動的に実時間で評価計算を行うことができる。
【0125】
よって、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船舶側で最適航路の評価計算を動的に行うことができる。
【0126】
図4は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図5は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。図6は、本発明の実施の形態1における個船性能に基づく最適喫水算出処理の詳細を示すフローチャート(その3)である。
【0127】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した最適喫水を算出することを想定する。そして、以降の最適喫水を算出する処理については、最適喫水推定装置5が処理を実行する。
【0128】
なお、以降の処理は、船舶の航海前に1回行い、後は気象データが更新されるごとに行う。つまり、気象データが更新されるごとに、船体状態を設定し、最適喫水を計算し直す。ただし、気象等の状態が変化したらその都度計算される。
【0129】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0130】
また、個船性能に基づく最適航路算出処理との主な相違点は、図3に示されるステップS132とステップS133との間に、図5に示されるステップS233〜ステップS237の喫水変更の繰り返し処理を加えた点である。すなわち、航路点間で定めた区間ごとに喫水を修正し、それに基づいて最適燃費を求める点である。
【0131】
(ステップS201)
最適喫水推定装置5に船体喫水及び排水量が入力される。
【0132】
(ステップS202)
最適喫水推定装置5は、入力された船体状態の初期設定をする。ここでの初期設定とは、排水量及び喫水の上限値と下限値のことである。
【0133】
(ステップS203)
最適喫水推定装置5は、航海条件を設定する。ここでの航海条件とは、始点、終点、及び日時のことである。
【0134】
(ステップS204)
最適喫水推定装置5は、安全制約条件を設定する。ここでの安全制約条件とは、遭遇海象及び船体運動を考慮した条件のことである。
【0135】
(ステップS205)
最適喫水推定装置5は、航海参照速力を設定する。ここで設定することは、回転数と馬力である。
【0136】
(ステップS206)
最適喫水推定装置5は、初期航路を設定する。
【0137】
(ステップS207)
最適喫水推定装置5には、海気象予報データが入力される。
【0138】
(ステップS208)
最適喫水推定装置5は、入力された海気象予報データに基づいて、航路点遭遇海気象条件を設定する。
【0139】
(ステップS209)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0140】
(ステップS210)
最適喫水推定装置5は、ステップS209で取得した平水中性能個船データに基づいて、平水中性能を推定する。
【0141】
(ステップS211)
最適喫水推定装置5は、推定した平水中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中性能特性データを記憶する。
【0142】
(ステップS212)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から風中性能個船データを取得する。
【0143】
(ステップS213)
最適喫水推定装置5は、ステップS212で取得した風中性能個船データに基づいて、風中性能を推定する。
【0144】
(ステップS214)
最適喫水推定装置5は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性データを記憶する。
【0145】
(ステップS215)
最適喫水推定装置5は、個船性能データベース8から波浪中性能個船データを取得する。
【0146】
(ステップS216)
最適喫水推定装置5は、ステップS215で取得した波浪中性能個船データに基づいて、波浪中性能を推定する。
【0147】
(ステップS217)
最適喫水推定装置5は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0148】
(ステップS218)
最適喫水推定装置5は、波浪中応答を計算する。
【0149】
(ステップS219)
最適喫水推定装置5は、計算した波浪中外力データ及び運動値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中外力データ及び運動値データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海象下を考慮したものである。
【0150】
(ステップS220)
最適喫水推定装置5は、ステップS214で記憶した風中性能特性データに基づいて、風中流体力を計算する。
【0151】
(ステップS221)
最適喫水推定装置5は、計算した風中流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中流体力データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇気象下を考慮したものである。
【0152】
(ステップS222)
最適喫水推定装置5に潮流予報データが入力される。
【0153】
(ステップS223)
最適喫水推定装置5は、航路点遭遇潮流条件を設定する。
【0154】
(ステップS224)
最適喫水推定装置5は、ステップS211で記憶した平水中性能特性データ及び設定した航路点遭遇潮流条件に基づいて、潮流流体力を計算する。
【0155】
(ステップS225)
最適喫水推定装置5は、計算した潮流流体力データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された潮流流体力データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇潮流下を考慮したものである。
【0156】
(ステップS226)
最適喫水推定装置5は、ステップS211で記憶した平水中性能特性データ、ステップS219で記憶した波浪中外力データ及び運動値データ、ステップS221で記憶した風中流体力データ、及びステップS225で記憶した潮流流体力データに基づいて、船体抵抗を計算する。
【0157】
(ステップS227)
最適喫水推定装置5は、計算した船体抵抗データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された船体抵抗データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0158】
(ステップS228)
最適喫水推定装置5は、船体自航状態を計算する。
【0159】
(ステップS229)
最適喫水推定装置5は、計算した船速、回転数、及び馬力に関するデータを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された船速、回転数、及び馬力に関するデータを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0160】
(ステップS230)
最適喫水推定装置5には、主機燃費特性データが入力される。
【0161】
(ステップS231)
最適喫水推定装置5は、入力された主機燃費特性データに基づいて、主機の燃費を計算する。
【0162】
(ステップS232)
最適喫水推定装置5は、計算した主機燃費データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された主機燃費データを記憶する。ここで記憶するデータは、航路点遭遇海気象及び潮流下を考慮したものである。
【0163】
(ステップS233)
最適喫水推定装置5は、区間燃費が最小燃費よりも小さいか否かを判定し、区間燃費が最小燃費よりも小さいと判定されたときには、ステップS234へ進み、区間燃費が最小燃費よりも小さくないと判定されたときには、ステップS236へ進む。すなわち、1つ1つの航路点で区切られた区間ごとに計算された燃費と最小燃費とを比較することで、区間燃費が最小燃費であるか判定し、それに基づいて喫水を変更するか否かを判定する。
【0164】
換言すれば、最適航路は区間燃費を始点から終点まで累積したもので判定するのに対し、最適喫水は区間燃費ごとに判定する。
【0165】
(ステップS234)
最適喫水推定装置5は、現喫水の燃費を最小燃費と設定する。
【0166】
(ステップS235)
最適喫水推定装置5は、現喫水を区間最適喫水と設定する。
【0167】
(ステップS236)
最適喫水推定装置5は、喫水の変更は終了したか否かを判定する。喫水の変更は終了していないと判定された場合、ステップS237へ進み、喫水の変更は終了したと判定された場合、ステップS238へ進む。
【0168】
(ステップS237)
最適喫水推定装置5は、船体の喫水を変更した後、ステップS210へ戻る。
【0169】
(ステップS238)
最適喫水推定装置5は、航路の累積燃費を計算する。
【0170】
(ステップS239)
最適喫水推定装置5は、航路の終点に到達したか否かを判定し、航路の終点に到達していないと判定された場合、ステップS240へ進み、航路の終点に到達したと判定された場合、ステップS241へ進む。
【0171】
(ステップS240)
最適喫水推定装置5は、次の航路点へ進んだ後、ステップS208へ戻る。
【0172】
(ステップS241)
最適喫水推定装置5は、航路の燃費を算出する。具体的には、ステップS238で計算した累積燃費がここでいう航路の燃費に相当することとなる。より具体的には、ステップS238における累積燃費の計算は、ステップS239での判定処理で、航路の終点に到達するまで実行されるこことなる。すなわち、航路の始点から航路の終点までの航路の燃費の総和がここでいう航路の燃費となる。そのため、累積燃費の最終的な値を取得することにより、航路の燃費を求めることとなる。そして、そのように取得した航路の燃費はステップS242における現航路の燃費である。つまり、現航路の燃費とは、現在定めた航路全体の燃費のことである。
【0173】
なお、ステップS242における最小航路の燃費は、デフォルト値としては、後述するようなダミーデータでよく、以後、ステップS242の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小航路の燃費として更新される。そして、最小燃費の航路においても同様に、デフォルト値としては、ダミーデータでよく、以後、ステップS242の処理のときに、現航路の燃費と比較し、最小航路の燃費に対して現航路の燃費の方が小さければ、それが新たな最小の航路の燃費であると共に、そのときの航路、すなわち、現航路が最小燃費の航路として更新される。
【0174】
(ステップS242)
最適喫水推定装置5は、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいか否かを判定し、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さいと判定された場合、ステップS243へ進み、現航路の燃費が最小航路の燃費より小さくないと判定された場合、ステップS245へ進む。すなわち、最適喫水推定装置5は、今まで評価した中で最小の燃費と比較する。そのため、最適喫水推定装置5は、燃費をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0175】
(ステップS243)
最適喫水推定装置5は、現航路の燃費を最小航路の燃費に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適喫水推定装置5は、それを新たな最小航路の燃費に設定するのである。
【0176】
(ステップS244)
最適喫水推定装置5は、現航路を最小燃費の航路に設定する。すなわち、現航路の燃費の方が今までよりも低い燃費となるため、最適喫水推定装置5は、それを新たな最小燃費の航路に設定するのである。そのため、最適喫水推定装置5は、航路をこの処理の最初に比較するときには、例えば、ダミーデータとして大きい値を利用してもよい。
【0177】
(ステップS245)
最適喫水推定装置5は、航路の判定は終了であるか否かを判定し、航路の判定は終了でないと判定された場合、ステップS246へ進み、航路の判定は終了であると判定された場合、ステップS247へ進む。
【0178】
(ステップS246)
最適喫水推定装置5は、航路を変更した後、ステップS208へ戻る。
【0179】
(ステップS247)
最小燃費の航路を決定し、個船性能に基づく最適喫水算出処理は終了する。
【0180】
なお、ステップS201乃至ステップS247の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0181】
また、このような処理により、個船性能を考慮しつつ、航路点間で定めた区間ごとに喫水を修正し、それに基づいて最適燃費を求めることができる。それにより、最適な喫水状態を考慮して最適航路の評価計算を行うことができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0182】
また、このような処理により、船舶側で動的に実時間で評価計算を行うことができる。
【0183】
よって、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船舶側で最適航路の評価計算を動的に行うことができる。
【0184】
図7は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。図8は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能修正処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【0185】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された各種の個船性能データ、すなわち、平水中性能個船データ、波浪中性能個船データ、及び風中性能個船データを再度最新の運航状態に更新する処理について説明する。
【0186】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0187】
なお、以降のモニタリングデータを用いた個船性能修正処理については、個船性能修正装置4が処理を実行する。
【0188】
(ステップS301)
個船性能修正装置4に船体喫水及び排水量が入力される。
【0189】
(ステップS302)
個船性能修正装置4は、入力された船体喫水及び排水量に基づいて船体状態を設定する。
【0190】
(ステップS303)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0191】
(ステップS304)
個船性能修正装置4は、取得した平水中性能個船データに基づいて、平水中性能を推定する。
【0192】
(ステップS305)
個船性能修正装置4は、推定した平水中性能データに基づいて、平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを作成し、作成した平水中船体抵抗要素データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素データを記憶する。
【0193】
(ステップS306)
個船性能修正装置4は、推定した平水中性能データに基づいて、平水中船体自航要素(船体状態対応)データを作成し、作成した平水中船体自航要素データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体自航要素データを記憶する。
【0194】
(ステップS307)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から波浪中性能個船データを取得する。
【0195】
(ステップS308)
個船性能修正装置4は、取得した波浪中性能個船データに基づいて、波浪中性能を推定する。
【0196】
(ステップS309)
個船性能修正装置4は、推定した波浪中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性データを記憶する。
【0197】
(ステップS310)
個船性能修正装置4は、個船性能データベース8から風中性能個船データを取得する。
【0198】
(ステップS311)
個船性能修正装置4は、取得した風中性能個船データに基づいて風中性能を推定する。
【0199】
(ステップS312)
個船性能修正装置4は、推定した風中性能特性(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性データを記憶する。
【0200】
(ステップS313)
個船性能修正装置4は、遭遇海気象データベース21から気象モニタリングデータを取得する。なお、気象モニタリングデータは、船舶運航時のデータであり、時系列で記録されている。
【0201】
(ステップS314)
個船性能修正装置4は、取得した気象モニタリングデータに基づいて平穏海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は平穏な海気象のときの日時と場所である。つまり、このようにすることで、日時に対応する平穏時のデータを取得できるようにする。すなわち、日時に対応して海気象と船舶の各種パラメータが記録されているため、その中から平穏時のデータを取得することにより、例えば、時間を検索パラメータとして、そのときの回転数を検索することができる。
【0202】
(ステップS315)
個船性能修正装置4は、ステップS303で取得した平水中性能個船データに基づいて、推進器の単独特性を入力する。
【0203】
(ステップS316)
個船性能修正装置4は、船舶性能データベース22から性能モニタリングデータを取得する。なお、性能モニタリングデータは、船舶運航時のデータであり、時系列で記録されている。
【0204】
(ステップS317)
個船性能修正装置4は、抽出した平穏海気象条件、入力した推進器の単独特性データ、及び取得した性能モニタリングデータに基づいて、推進器の作動点を解析する。
【0205】
(ステップS318)
個船性能修正装置4は、解析により得られたデータとして、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記録媒体に供給する。記録媒体は、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記憶する。
【0206】
なお、トルクは力と距離の外積で求められるが、実際にはトルクは推進器回転数の2乗と推進器直径の5乗の外積にトルク係数を掛け合わせることにより求められるものであり、そのときのトルク係数を推力のためのパラメータとして利用する。
【0207】
また、伴流は船を追いかけて進む流れのことであり、例えば、10ノットの速さの船のその伴流が2ノットであるとすれば、プロペラの前進速度は8ノットとなる。そして、伴流係数は、伴流の速度を船の速度で除した値であり、伴流係数の値を知ることができれば、プロペラの前進速度は、「1−伴流係数」の値に船の速度を乗算することにより求めることができる。
【0208】
また、伴流係数の値は、船の大きさ、船尾付近の形状、プロペラと船体の相互関係位置、及びプロペラの直径等で変化するものである。
【0209】
すなわち、推力係数、トルク係数及び伴流係数は、船舶の性能計算に重要なパラメータとして利用される。
【0210】
(ステップS319)
個船性能修正装置4は、ステップS305で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS306で記憶した平水中船体自航要素データ、記憶した推力係数、トルク係数及び伴流係数に基づいて、平水中性能を解析する。
【0211】
(ステップS320)
個船性能修正装置4は、解析した平水中性能に基づいて、平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び平水中の船体自航要素の修正値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び平水中の船体自航要素の修正値データを記憶する。
【0212】
(ステップS321)
個船性能修正装置4は、記憶した平水中の船体抵抗要素の修正値データ及び記憶した平水中の船体自航要素の修正値データに基づいて平水中性能を修正する。
【0213】
(ステップS322)
個船性能修正装置4は、修正した平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された、修正した平水中船体抵抗要素データを記憶する。
【0214】
(ステップS323)
個船性能修正装置4は、修正した平水中船体自航要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された、修正した平水中船体自航要素データを記憶する。
【0215】
(ステップS324)
個船性能修正装置4は、ステップS313で取得した気象モニタリングデータ及び修正した平水中性能データに基づいて、風支配海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は風支配海気象における日時、場所、及び風況である。なお、風況とは、風速と風向のことである。すなわち、海気象の中で、まず風の影響が支配的なところを抽出する。
【0216】
(ステップS325)
個船性能修正装置4は、ステップS316で取得した性能モニタリングデータ、ステップS309で記憶した波浪中性能特性データ、ステップS312で記憶した風中性能特性データ、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、風圧抵抗成分を抽出する。
【0217】
(ステップS326)
個船性能修正装置4は、風中性能を解析する。具体的には、風の抵抗係数を縦軸とし、風向角を横軸とした特性曲線に同定させていくことで風中性能を解析する。つまり、モニタリングデータに同定させることにより、風中性能特性修正値を算出する。
【0218】
(ステップS327)
個船性能修正装置4は、算出した風中性能特性修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された風中性能特性修正値データを記憶する。
【0219】
(ステップS328)
個船性能修正装置4は、取得した気象モニタリングデータ及び記憶した風中性能特性修正値データに基づいて、波支配海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は波支配海気象における日時、場所、及び風況である。
【0220】
(ステップS329)
個船性能修正装置4は、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、ステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データ、ステップS327で記憶した風中性能特性修正値データ、及びステップS316で取得した性能モニタリングデータに基づいて、波浪中抵抗成分を抽出する。
【0221】
なお、ステップS319で平水中性能を解析し、ステップS326で風中性能を解析し、ステップS331で波浪中性能を解析したが、この順番で行うことが重要である。それは、船舶の性能に対する実海域航行時の平均的な影響力は、概ね、平水、風、波の順で小さくなるからである。したがって、平水中と風についての修正値を先に決め、その後に波についての修正値を決めた方が精度よく計算できる。また、波浪中性能を解析する前には、ステップS329で波浪中抵抗成分を抽出し、ステップS330で波浪中運動成分を抽出している。このように抵抗と運動の両方のパラメータについて評価することにより船舶が被る影響を精度良く計算できることとなる。
【0222】
(ステップS330)
個船性能修正装置4は、波浪中運動成分を抽出する。
【0223】
(ステップS331)
個船性能修正装置4は、波浪中性能を解析する。この場合においてもモニタリングデータに同定させることにより、波浪中性能特性修正値(船体状態対応)を算出する。
【0224】
なお、実海域で遭遇する波は、広範囲の向きと周期の成分を含み、規則的ではない。そのため、ステップS331においては、複数の波パワースペクトルの内、特に顕著な周期と向きで同定を実行することとする。
【0225】
(ステップS332)
個船性能修正装置4は、算出した波浪中性能特性修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された波浪中性能特性修正値を記憶する。
【0226】
(ステップS333)
個船性能修正装置4は、取得した波浪中性能個船データ及び記憶した波浪中性能特性修正値データに基づいて、波浪中個船データを修正する。
【0227】
(ステップS334)
個船性能修正装置4は、修正した波浪中性能個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0228】
(ステップS335)
個船性能修正装置4は、ステップS310で取得した風中性能個船データ及びステップS327で記憶した風中性能特性修正値データに基づいて、風中個船データを修正する。
【0229】
(ステップS336)
個船性能修正装置4は、修正した風中個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0230】
(ステップS337)
個船性能修正装置4は、ステップS303で取得した平水中性能個船データ、ステップS322で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS323で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、平水中個船データを修正する。
【0231】
(ステップS338)
個船性能修正装置4は、修正した平水中性能個船データ修正値を個船性能データベース8に格納する。
【0232】
このようにして、モニタリングデータを用いた個船性能修正処理は終了する。
【0233】
なお、ステップS301乃至ステップS338の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0234】
また、このような処理により、モニタリングデータを用いた個船性能データを作成することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0235】
また、このような処理により、貨物を積載した状態を模擬して試運転を行うことができないようなコンテナ船やばら積み船において、高い精度で最適航路の評価を行うことができるようになる。
【0236】
図9は、本発明の実施の形態1におけるモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理の詳細を示すフローチャートである。
【0237】
ここでは、予め実際の運航状態が反映された平水中性能個船データに基づいて、個船性能を考慮した経年劣化を算出することを想定する。
【0238】
なお、ここでいう経年劣化とは、運航中に船舶の表面に付着した海洋生物などによって船体抵抗やプロペラの主要推力発生に要するトルクが増加したことなどにより、燃費が悪くなっている状態を意味する。
【0239】
なお、平水中性能の例について説明するが、波浪中性能及び風中性能についても同様の手順で求めることができる。
【0240】
また、以降の処理において、個船性能に基づく最適航路算出処理と同一の処理内容については概略だけの説明にする。
【0241】
なお、以降のモニタリングデータを用いた個船性能の経年劣化評価処理については、運航性能評価装置9が処理を実行する。
【0242】
(ステップS401)
運航性能評価装置9に船体喫水及び排水量が入力される。
【0243】
(ステップS402)
運航性能評価装置9は、入力された船体喫水及び排水量に基づいて船体状態を設定する。
【0244】
(ステップS403)
運航性能評価装置9は、個船性能データベース8から平水中性能個船データを取得する。
【0245】
(ステップS404)
運航性能評価装置9は、取得した平水中性能個船データに基づいて平水中性能を推定する。
【0246】
(ステップS405)
運航性能評価装置9は、推定した平水中性能の内、平水中船体抵抗要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素を記憶する。
【0247】
(ステップS406)
運航性能評価装置9は、推定した平水中性能の内、平水中船体自航要素(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体自航要素データを記憶する。
【0248】
(ステップS407)
運航性能評価装置9は、評価経年期間を設定する。ここでの評価経年期間とは、船舶の就航後における年数のことである。
【0249】
(ステップS408)
運航性能評価装置9は、遭遇海気象データベース21から気象モニタリングデータを取得する。
【0250】
(ステップS409)
運航性能評価装置9は、取得した気象モニタリングデータに基づいて、平穏海気象条件を抽出する。ここでの抽出する条件は平穏海気象における日時及び場所である。
【0251】
(ステップS410)
運航性能評価装置9は、ステップS403で取得した平水中性能個船データに基づいて、推進器の単独特性を入力する。
【0252】
(ステップS411)
運航性能評価装置9は、船舶性能データベース22から性能モニタリングデータを取得する。
【0253】
(ステップS412)
運航性能評価装置9は、入力された推進器の単独特性データ及び取得した性能モニタリングデータに基づいて、推進器作動点を解析する。
【0254】
(ステップS413)
運航性能評価装置9は、解析結果に基づいて、データとして、推力係数、トルク係数及び伴流係数を記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された推力係数、トルク係数及び伴流係数を記憶する。
【0255】
(ステップS414)
運航性能評価装置9は、ステップS405で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS406で記憶した平水中船体自航要素データ、並びに記憶した推力係数、トルク係数及び伴流係数に基づいて、平水中性能を解析する。
【0256】
(ステップS415)
運航性能評価装置9は、解析結果に基づいて、平水中船体抵抗要素の修正値データ及び平水中船体自航要素の修正値データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素の修正値データ及び平水中船体自航要素の修正値データを記憶する。
【0257】
(ステップS416)
運航性能評価装置9は、記憶した平水中船体抵抗要素の修正値データ及び記憶した平水中船体自航要素の修正値データに基づいて、平水中性能を修正する。
【0258】
(ステップS417)
運航性能評価装置9は、修正した平水中船体抵抗要素修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中船体抵抗要素修正値データを記憶する。
【0259】
(ステップS418)
運航性能評価装置9は、修正した平水中船体自航要素修正値(船体状態対応)データを記録媒体に供給する。記録媒体は、供給された平水中自航要素修正値データを記憶する。
【0260】
(ステップS419)
運航性能評価装置9は、ステップS405で記憶した平水中船体抵抗要素データ、ステップS406で記憶した平水中船体自航要素データ、ステップS417で記憶した平水中船体抵抗要素修正値データ、及びステップS418で記憶した平水中船体自航要素修正値データに基づいて、経年劣化を評価し、平水中性能経年劣化データを作成する。例えば、船体抵抗係数や伴流係数等の変化率を時系列で評価することにより、平水中性能の時系列に対する経年劣化データを作成する。
【0261】
(ステップS420)
運航性能評価装置9は、作成した平水中性能経年劣化データを運航性能評価データとして運航性能評価データベース10に格納する。
【0262】
なお、ステップS401乃至ステップS420の処理を、シリアルに実行しても、パラレルに実行してもよいことは勿論である。
【0263】
また、このような処理により、実際の運航に基づいた船舶の経年劣化を評価することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。
【0264】
また、このような処理により、船舶の経年劣化を評価することができるので、適宜必要に応じて、プロペラを洗浄したり、船舶の表面を再度塗装し直す等の処置をすることができる。それにより、次回運航時には、経年劣化が原因による燃費の悪さを改善することができる。
【0265】
次に、以上の処理に基づいて、船体喫水状態を最適化した場合における航海燃費の比較評価の一例について図10〜図13を用いて説明する。
【0266】
図10は、本発明の実施の形態1における各喫水状態の定性的詳細の一例を示す図である。図11は、本発明の実施の形態1における各喫水状態の定量的詳細の一例を示す図である。図12は、本発明の実施の形態1における経時的な外乱(風・波)強さの一例を示す図である。図13は、本発明の実施の形態1における船体喫水状態最適化による航海燃費係数比較評価の計算例を示す図である。
【0267】
図10に示されるように、2つの喫水状態を想定する。
【0268】
具体的には、外乱無で燃費が最小となり、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない状態を喫水状態1と称し、本ケース外乱下で燃費が最小となる状態を喫水状態2と称する。
【0269】
なお、本ケース外乱下とは、図12に示される外乱に対して本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用したことを想定したものである。いずれにおいても、以後の説明で用いる喫水状態1とは、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない場合を想定し、以後の説明で用いる喫水状態2とは、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用した場合を想定する。
【0270】
次に、図11に示されるように、喫水状態を具体的に想定する。なお、図11に示される喫水状態は所定の期間に対する平均値である。
【0271】
具体的には、図11に示されるように、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用しない喫水状態1の内、外乱無の航海平均における燃費係数を100とし、喫水状態1(外乱無し)と称し、外乱有の航海平均における燃費係数を194とし、喫水状態1(外乱有り・航海平均)と称する。また、本発明の船舶の運航支援装置の処理を適用する喫水状態2の内、外乱無の航海平均における燃費係数を120とし、喫水状態2(外乱無し)と称し、外乱有の航海平均における燃費係数を176とし、喫水状態2(外乱有り・航海平均)と称する。なお、図11においては、航海平均の用語については省略するものとする。
【0272】
次いで、図12に示されるように、日時に対する外乱強さを想定し、その想定された外乱強さを考慮した燃費係数は、図13に示されるようになる。ここでの外乱強さとは、風や波等の強さのことである。
【0273】
日時に対する燃費係数の曲線が図13に示されている。図13に示されるように、喫水状態1の曲線100、喫水状態2の曲線101、喫水状態1(外乱無し)の曲線102、喫水状態2(外乱無し)の曲線103、喫水状態1(外乱有り・航海平均)の曲線104、喫水状態2(外乱有り・航海平均)の曲線105が示されている。
【0274】
このように、外乱がある場合においては、本実施の形態の船舶の運航支援装置の処理を適用した方が、航海平均における燃費係数を18だけ低減できることがわかる。
【0275】
このように、従来技術においては、最適航路を推定する際、個船性能は類似船のデータに基づく近似値、または試運転状態での計測値に基づく推定値等、実船の運航状態に対応しないデータが用いられていた。そのため、経年劣化や汚損影響、積荷状態の違い等が適切に評価されていなかった。そのため、最適航路の推定精度が悪化していた。
【0276】
これに対して、本実施の形態では、実際の運航状態のモニタリングデータに基づき遭遇海気象の外乱影響を考慮して個船性能データを作成し、それを用いて最適航路の評価を行っている。そのため、従来技術では十分に考慮されていなかった様々な影響因子を考慮することができる。それにより、本発明では、高精度な最適航路及び最適喫水状態を提供することができる。
【0277】
また、本実施の形態では、最適航路の推定の際、航海燃費を評価関数として最適化を行ってもよい。そのため、運航時の喫水状態の最適化により、従来技術よりも航海燃費のさらなる低減を可能とする航路及び喫水状態を提示することができる。そして、提示された航路と喫水状態とに基づいて船舶を運航させることにより、二酸化炭素の排出を削減することができる。そのため、地球温暖化を防止に寄与することができる。
【0278】
以上のように、本実施の形態においては、船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信装置11と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段とを備えるようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0279】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定装置6を備え、最適航路推定装置6は、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした航路点の全てに対して、海気象データ、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航路点間の燃費を算出し、算出した航路点間の燃費を累積加算することで航海出発点から航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、全体の航路を最適航路と決定するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適航路を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0280】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、通信装置11で取得した海気象データ、個船性能データベース8に記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航海での燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定装置5を備え、最適喫水推定装置5は、船上で利用されるものであり、予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、仮決めした航路点の全てに対して、海気象データ、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、航路点間の燃費を算出し、算出した航路点間の燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、航路点間の喫水を航路点間の最適喫水と決定するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したパラメータを用いた評価でありつつ、船上側で最適喫水を動的に評価できる。それにより、十分な燃費の低減をすることができる。
【0281】
また、本実施の形態においては、最適状態推定装置は、船に配置され、航海出発点から航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象データベース21と、平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能データベース8と、遭遇海気象データベース21で記憶した遭遇海気象データ、個船性能データベース8で記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正装置4とを備え、個船性能修正装置4は、遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、平水中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新し、遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、波浪中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新し、遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、風中性能を修正し、修正結果を個船性能データベース8に記憶することで個船性能を更新するようにしたので、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮したモニタリングデータを用いた個船性能データを作成することができる。そして、この個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮した最適航路の評価を行うことができる。
【0282】
また、本実施の形態においては、最適状態推定手段は、船に配置され、航海出発点から航海到着点における船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能データベース22と、遭遇海気象データベース21で記憶した遭遇海気象データ、個船性能データベース8で記憶した、平水中性能、波浪中性能、及び風中性能、並びに船舶性能データベース22で記憶した船体抵抗係数と伴流係数に基づいて、船の経年劣化を評価する運航性能評価装置9とを備え、運航性能評価装置9は、時系列に対する船体抵抗係数と伴流係数の変化に基づいて、経年劣化を評価するようにしたので、実際の運航に基づいた船舶の経年劣化を評価することができる。すなわち、実際の運航状態のモニタリングデータに基づいた個船性能データを用いることにより、実海域航行時の遭遇海気象下を考慮して最適航路の評価を行うことができるため、十分な燃費の低減をすることができる。また、船舶の経年劣化を評価することができるので、適宜必要に応じて、プロペラを洗浄したり、船舶の表面を再度塗装し直す等の処置をすることができる。それにより、次回運航時には、経年劣化が原因による燃費の悪さを改善することができる。
【0283】
実施の形態2.
図14は、本発明の実施の形態2における船舶の運航支援装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
【0284】
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0285】
実施の形態1との相違点は、船上において、最適航路評価データベース30、航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、最適喫水評価データベース33、積み付け計算装置34、船体積み付けデータベース35、及び機関制御室40が設けられている点である。
【0286】
最適航路推定装置6は、最適航路評価データベース30と、最適喫水評価データベース33と、それぞれ接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。
【0287】
航路情報収録装置31は、最適航路評価データベース30と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、航路情報収録装置31は、最適航路推定装置6で作成され、最適航路評価データベース30に格納されている最適航路評価データを取得する。これにより、船上の船舶運航者は、最適航路評価データを図示しない船舶運航用モニター等に容易に表示することができ、また、修正等の管理をすることができる。
【0288】
なお、「航路情報収録装置31」は、本発明における「航路情報収録手段」に相当する。
【0289】
なお、「船舶運航用モニター」は、本発明における「表示手段」に相当する。
【0290】
船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31が保持している最適航路評価データを利用することにより、船舶に対して最適航路上を船舶に搭載されたエンジンを機関制御室40で制御することにより自動的に航行させることができる。
【0291】
なお、「船舶自動運航装置32」は、本発明における「船舶自動運航手段」に相当する。
【0292】
なお、「機関制御室40」は、本発明における「制御手段」に相当する。
【0293】
積み付け計算装置34は、最適喫水評価データベース33と接続されており、互いに各種データの送受信可能な通信機器(図示せず)が設けられている。また、積み付け計算装置34は、最適航路推定装置6で作成され、最適喫水評価データベース33に格納されている最適喫水評価データを取得する。そして、積み付け計算装置34は、取得した最適喫水評価データに基づいて、最適喫水状態となる貨物や最適喫水状態となるバラスト等の積み付けに関する情報を計算する。これにより、船上のユーザーは、最適喫水状態となる貨物や最適喫水状態となるバラスト等の積み付けに関する情報を取得することができる。例えば、最適喫水状態のときのバラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得装置(図示せず)により、適宜それらの情報の取得が可能である。
【0294】
なお、「船体積み付け情報取得装置」は、本発明における「船体積み付け情報取得手段」に相当する。
【0295】
また、積み付け計算装置34は、船体積み付けデータベース35と接続されており、通信機器(図示せず)により、船体積み付けデータベース35と各種データの送受信可能である。これにより、積み付け計算装置34にて計算された積み付けに関する情報は適宜船体積み付けデータベース35に格納される。
【0296】
なお、「積み付け計算装置34」は、本発明における「積み付け計算手段」に相当する。
【0297】
このように、最適喫水推定装置5及び最適航路推定装置6により作成された各種データを船上で通常使用される航海用装置が取得する。航海用装置は、具体的には、航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、及び積み付け計算装置34のことである。航路情報収録装置31、船舶自動運航装置32、及び積み付け計算装置34がそのような各種データを取得し、適宜所定の演算を行う。
【0298】
これにより、船上の船舶運航者が容易に最適喫水状態を設定することができる。そのため、船舶は最適航路上を運航することができる。それにより、船舶の燃費を低減した運航を行うことができる。
【0299】
なお、本明細書において、各処理の詳細を記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0300】
以上のように、本実施の形態においては、船舶運航用モニターと、最適航路推定装置6で決定した最適航路の情報を取得して保持し、保持した最適航路の情報を船舶運航用モニターに表示させる航路情報収録装置31とを備えるようにしたので、船上の船舶運航者は、最適航路評価データを図示しない船舶運航用モニター等に容易に表示することができ、また、修正等の管理をすることができる。
【0301】
また、本実施の形態においては、航路情報収録装置31から船の最適航路の情報を取得する船舶自動運航装置32をさらに備え、船舶自動運航装置32は、航路情報収録装置31から取得した船の最適航路の情報に基づいて、船舶に搭載されたエンジンを制御する機関制御室40に対する制御指令を送信するようにしたので、船舶に搭載されたエンジンを機関制御室40で制御することにより最適航路上を運航することができる。それにより、自動的に航行させることができる。
【0302】
また、本実施の形態においては、最適喫水推定装置5により決定された船の最適喫水の情報を取得する積み付け計算装置34をさらに備え、積み付け計算装置34は、最適喫水の情報に基づいてバラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得装置を有し、船舶自動運航装置32は、船体積み付け情報取得装置で取得したバラストタンクに関する情報、航路情報収録装置31から取得した最適航路の情報、及び積み付け計算装置34で取得した最適喫水の情報に基づいて、船に搭載されたエンジンを制御する機関制御室40に対する制御指令を送信するようにしたので、最適喫水状態のときのバラストタンクに関する情報を適宜取得し、取得結果に基づいて船を運航させることができる。
【符号の説明】
【0303】
1 モニタリング装置、2 運航データ蓄積装置、3 個船性能入力データベース、4 個船性能修正装置、5 最適喫水推定装置、6 最適航路推定装置、7 最適航路/喫水評価データベース、8 個船性能データベース、9 運航性能評価装置、10 運航性能評価データベース、11、12 通信装置、13 海気象予報データベース、14 外部機関の装置、15 陸上データ蓄積装置、16、17、18 運航関係者、21 遭遇海気象データベース、22 船舶性能データベース、23 位置情報データベース、24 喫水・排水量データベース、30 最適航路評価データベース、31 航路情報収録装置、32 船舶自動運航装置、33 最適喫水評価データベース、34 積み付け計算装置、35 船体積み付けデータベース、40 機関制御室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信手段と、
平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段と、を備えることを特徴とする運航支援装置。
【請求項2】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での前記燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定手段を備え、
前記最適航路推定手段は、
予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、
仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、
算出した前記航路点間の燃費を累積加算することで前記航海出発点から前記航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、
前記全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、前記全体の航路を最適航路と決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運航支援装置。
【請求項3】
表示手段と、
前記最適航路推定手段で決定した前記最適航路の情報を取得して保持し、保持した前記最適航路の情報を前記表示手段に表示させる航路情報収録手段とを備える、ことを特徴とする請求項2に記載の運航支援装置。
【請求項4】
前記航路情報収録手段から前記船の前記最適航路の情報を取得する船舶自動運航手段をさらに備え、
前記船舶自動運航手段は、
前記航路情報収録手段から取得した前記船の前記最適航路の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とする請求項3に記載の運航支援装置。
【請求項5】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での前記燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定手段を備え、
前記最適喫水推定手段は、
予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、
仮決めした前記航路点の全てに対して、
前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の前記燃費を算出し、算出した前記航路点間の前記燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、前記航路点間の喫水を前記航路点間の最適喫水と決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の運航支援装置。
【請求項6】
前記最適喫水推定手段により決定された前記船の前記最適喫水の情報を取得する積み付け計算手段をさらに備え、
前記積み付け計算手段は、
前記最適喫水の情報に基づいて、バラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得手段を有し、
前記船舶自動運航手段は、
前記船体積み付け情報取得手段で取得したバラストタンクに関する情報、前記航路情報収録手段から取得した前記最適航路の情報、及び前記積み付け計算手段で取得した前記最適喫水の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項7】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記航海出発点から前記航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象記憶手段と、
平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、
前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正手段とを備え、
前記個船性能修正手段は、
前記遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記平水中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、
前記遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記波浪中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、
前記遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記風中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新する、ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項8】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記航海出発点から前記航海到着点における前記船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能記憶手段と、
前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能、並びに前記船舶性能記憶手段で記憶した前記船体抵抗係数と前記伴流係数に基づいて、前記船の経年劣化を評価する運航性能評価手段とを備え、
前記運航性能評価手段は、
時系列に対する前記船体抵抗係数と前記伴流係数の変化に基づいて、経年劣化を評価する、ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の運航支援装置と、
前記運航支援装置からの制御指令に基づいて、当該船に搭載されたエンジンを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする船。
【請求項1】
船舶航行時の周囲の海気象データを取得する通信手段と、
平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での燃料消費量である燃費が最小となる状態を推定する最適状態推定手段と、を備えることを特徴とする運航支援装置。
【請求項2】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での前記燃費が最小となる状態としての最適航路を推定する最適航路推定手段を備え、
前記最適航路推定手段は、
予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、
仮決めした前記航路点の全てに対して、前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の燃費を算出し、
算出した前記航路点間の燃費を累積加算することで前記航海出発点から前記航海到着点までの全体の航路の燃費を算出し、
前記全体の航路の燃費が予め設定された最小航路の燃費より小さいとき、前記全体の航路を最適航路と決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運航支援装置。
【請求項3】
表示手段と、
前記最適航路推定手段で決定した前記最適航路の情報を取得して保持し、保持した前記最適航路の情報を前記表示手段に表示させる航路情報収録手段とを備える、ことを特徴とする請求項2に記載の運航支援装置。
【請求項4】
前記航路情報収録手段から前記船の前記最適航路の情報を取得する船舶自動運航手段をさらに備え、
前記船舶自動運航手段は、
前記航路情報収録手段から取得した前記船の前記最適航路の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とする請求項3に記載の運航支援装置。
【請求項5】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記通信手段で取得した前記海気象データ、前記個船性能記憶手段に記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、航海での前記燃費が最小となる状態としての最適喫水を推定する最適喫水推定手段を備え、
前記最適喫水推定手段は、
予め設定された航海条件に基づいて、航海出発点と航海到着点とを含む初期航路及び前記初期航路内で複数の通過地点である航路点を仮決めし、
仮決めした前記航路点の全てに対して、
前記海気象データ、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、前記航路点間の前記燃費を算出し、算出した前記航路点間の前記燃費が予め設定された最小燃費より小さいとき、前記航路点間の喫水を前記航路点間の最適喫水と決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の運航支援装置。
【請求項6】
前記最適喫水推定手段により決定された前記船の前記最適喫水の情報を取得する積み付け計算手段をさらに備え、
前記積み付け計算手段は、
前記最適喫水の情報に基づいて、バラストタンクに関する情報を取得する船体積み付け情報取得手段を有し、
前記船舶自動運航手段は、
前記船体積み付け情報取得手段で取得したバラストタンクに関する情報、前記航路情報収録手段から取得した前記最適航路の情報、及び前記積み付け計算手段で取得した前記最適喫水の情報に基づいて、前記船に搭載されたエンジンを制御する制御手段に対する制御指令を送信する、ことを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項7】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記航海出発点から前記航海到着点の運航時に船舶が遭遇した遭遇海気象データを時系列で記憶する遭遇海気象記憶手段と、
平水の影響下での船の平水中性能、波浪の影響下での船の波浪中性能、及び風の影響下での船の風中性能のそれぞれの個船性能を記憶する個船性能記憶手段と、
前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能に基づいて、個船性能を修正する個船性能修正手段とを備え、
前記個船性能修正手段は、
前記遭遇海気象データから、平水の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記平水中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、
前記遭遇海気象データから、波浪の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記波浪中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新し、
前記遭遇海気象データから、風の影響下の気象条件を抽出したとき、抽出結果に基づいて、前記風中性能を修正し、修正結果を前記個船性能記憶手段に記憶することで前記個船性能を更新する、ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項8】
前記最適状態推定手段は、
前記船に配置され、
前記航海出発点から前記航海到着点における前記船の船体抵抗係数と伴流係数を時系列で記憶する船舶性能記憶手段と、
前記遭遇海気象記憶手段で記憶した前記遭遇海気象データ、前記個船性能記憶手段で記憶した、前記平水中性能、前記波浪中性能、及び前記風中性能、並びに前記船舶性能記憶手段で記憶した前記船体抵抗係数と前記伴流係数に基づいて、前記船の経年劣化を評価する運航性能評価手段とを備え、
前記運航性能評価手段は、
時系列に対する前記船体抵抗係数と前記伴流係数の変化に基づいて、経年劣化を評価する、ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の運航支援装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の運航支援装置と、
前記運航支援装置からの制御指令に基づいて、当該船に搭載されたエンジンを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする船。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−107488(P2013−107488A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253671(P2011−253671)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(502116922)ジャパンマリンユナイテッド株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(502116922)ジャパンマリンユナイテッド株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
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