説明

運転指導装置

【課題】運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる運転指導装置を提供する。
【解決手段】適正度診断部14が、運転中に、直前の運転挙動ごとに当該運転挙動の適正度を判定し、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知するので、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。また、総合適正度診断部15が、一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその診断結果を報知するので、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対して安全運転、経済運転およびスムーズ運転などの運転を診断するための運転指導装置に関し、特に運転挙動の適正度に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者が実際に車両を運転した運転操作に関するデータを取得し、その結果を診断することによって、運転者の安全運転技術や経済運転技術などの向上に役立たせる運転指導装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この運転指導装置は、一般に車載本体部が車両に搭載され、車載本体部が、車両の加速度を検知する加速度センサ、車両の位置を検知するGPSセンサ、車両の運転状況を撮像する撮像装置などをもち、この加速度データ、GPSデータや運転画像データを含む運転挙動の検知データを取得するセンサ部、得られた運転挙動の検知データを記録するメモリーカードを有する。通常、運転管理センターなどの別の場所に設置されたパーソナルコンピュータ(PC)を用いて、メモリーカードに記録されたデータに基づき分析されて、当該運転挙動が診断される。
【特許文献1】特許第3044025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来では、車両の運転終了したあと所定時間経過後に当該運転挙動が診断されるため、運転挙動時における具体的な状況や運転操作内容について運転者の記憶が薄れ、運転指導が十分に効果的にならないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決して、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる運転指導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にかかる運転指導装置は、少なくとも車両の加速度を検知する加速度センサをもち、車両における運転挙動のデータであって加速度データを含む検知データを取得するセンサ部、得られた運転挙動の検知データを一時的に記憶するバッファメモリ、表示部および各部を制御する制御ユニットを有する車載本体部が車両に搭載されてなり、この運転挙動の検知データに基づいて当該車両の運転操作を指導する運転指導装置であって、
前記制御ユニットは適正度診断部を備え、この適正度診断部は、予め運転挙動の検知データごとにそれぞれ適正度の判定基準となる複数の診断基準レベルを記憶する診断基準記憶手段と、直前の運転挙動ごとに、前記バッファメモリから出力されたデータと記憶された診断基準レベルとを比較して当該運転挙動の適正度を判定して診断結果を出力する適正度判定手段とを備えて、前記表示部が、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知するものである。
【0007】
この構成によれば、運転中に、直前の運転挙動ごとに当該運転挙動の適正度を判定し、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知するので、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。
【0008】
好ましくは、運転挙動の適正度が危険挙動または経済挙動の適正度である。危険挙動とは適宜定めたもので安全運転のために好ましくない挙動をいい、経済挙動とは適宜定めたもので一定距離の走行に必要な燃料消費量で表した場合に好ましい挙動をいう。
【0009】
好ましくは、さらに、前記制御ユニットは総合適正度診断部を備え、この総合適正度診断部は、一連の運転挙動について前記適正診断部の複数の診断結果を累計して記憶する診断累計記憶手段と、予め累計された診断結果ごとにそれぞれ総合適正度の判定基準となる複数の総合診断基準レベルを記憶する総合診断基準記憶手段と、一連の運転挙動が終了するときに、累計された診断結果と記憶された総合診断基準レベルとを比較して、総合的な運転挙動の総合適正度を判定してその総合診断結果を出力する総合適正度判定手段とを備え、前記表示部は、前記一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその総合診断結果を報知する。したがって、一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその診断結果を報知するので、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。
【0010】
好ましくは、前記一連の運転挙動の終了が、一日の運転挙動の終了である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る運転指導装置を示す概略構成図である。本装置は、車両に搭載されて当該車両の運転挙動の検知データを得る車載本体部(レコーダ部)1と、このレコーダ部1で得られたデータを解析する解析部2とを備えている。レコーダ部1は、車両の運転状況を撮影するCCDカメラ3、加速度データを検知する加速度センサ4、車両位置を検知するGPS5、およびウインカー、ドア、エンジン回転数、ギア、速度などの車両情報を検出する車両情報センサ6を含むセンサ部Sと、装置全体を制御する制御ユニット(CPU)7と、バッファメモリ8と、表示部(状態表示器)9と、レコーダ部1に抜き差し可能に設けられたメモリーカード(またはメモリー)のような記録媒体10とを備えている。
【0012】
前記レコーダ部1には、状態表示器9として、診断レベル表示の視覚検知用に例えば赤色、黄色、緑色に発光する3個のLED、聴覚検知用にスピーカが設けられている。このレコーダ部1は運転者が運転中にLEDの視覚検知やスピーカからの聴覚検知ができるように車両内の前方上部に位置する例えばルームミラーやサンバイザーの近傍などに設置される。前記メモリーカード10には、時刻、速度、加速度、GPS、ウインカー、エンジン回転数、ドア開閉、アクセル開度などのデータが記憶される。
【0013】
前記レコーダ部1の制御ユニット(CPU)7は診断部12を備え、図2に示すように、この診断部12は、センサ部Sからの運転挙動の検知データを信号処理する信号処理部24、得られた運転挙動の検知データを一時的に記憶するバッファメモリ25、適正度診断部14および総合適正度診断部15を備えている。
【0014】
前記適正度診断部14は、予め運転挙動の検知データごとにそれぞれ適正度の判定基準となる複数の診断基準レベルを記憶する診断基準記憶手段31と、直前の運転挙動ごとに、バッファメモリ25から出力されたデータと記憶された診断基準レベルとを比較して当該運転挙動の適正度を判定して診断結果を出力する適正度判定手段32とを備えている。前記表示部9が、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知する。
【0015】
前記総合適正度診断部15は、一連の運転挙動について前記適正診断部の複数の診断結果を累計して記憶する診断累計記憶手段41と、予め累計された診断結果ごとにそれぞれ総合適正度の判定基準となる複数の総合診断基準レベルを記憶する総合診断基準記憶手段42と、一連の運転挙動が終了するときに、累計された診断結果と記憶された総合診断基準レベルとを比較して、総合的な運転挙動の総合適正度を判定してその総合診断結果を出力する総合適正度判定手段43とを備えて、前記表示部9は、前記一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその総合診断結果を報知する。
【0016】
なお、図1の解析部2はパーソナルコンピュータ(PC)からなり、そのROMやRAMなどに解析ソフトが格納され、メモリーカード10に記録されたデータから複数人の運行データが蓄積されるデータベース21を有し、この蓄積されたデータを使用して行う運行記録報告日報の作成部、運転の良否診断部、事故時の自車の挙動解析部の各部のほかに、道路情報の分析部22を有している。
【0017】
以下、図3のフローチャートにより、適正度診断部14および総合適正度診断部15の動作を説明する。
まず、運転者が運転操作したときの、カメラ映像、加速度センサ、GPS、ウインカーなどの運転挙動の検知データが信号処理部24で処理されて収集される(ステップS1)。つぎに、このデータが一時的にバッファメモリ8に書き込まれる(例えば、20秒間ループ)(ステップS2)。データの予備加工(ノイズ除去、圧縮処理等)がされ、収集されたデータにトリガーをかけて記録するためのトリガー条件の演算処理(危険度、時刻、タイマーなど)が行われる(ステップS3)。
【0018】
その一方、適正度診断部14は、信号処理部24で処理されたデータをバッファメモリ25で一時的に記憶させたのち、例えば加速度センサ4による前後、左右の加速度のデータ(G表示)により、直前の運転挙動(急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル)について診断する。ここではデータのG表示に比例して診断レベルが決定される。そして、運転挙動直後に状態表示器9に以下の運転挙動の適正度の診断結果が表示(報知)される(ステップS4)。
【0019】
・ 診断基準レベルの0.3Gを超える場合、適正度が「危険」レベルと診断されて、赤色のLEDのフラッシング、ブザーおよびCCDカメラ3の映像の録画(例えば、前後20秒間)が行われる。
・0.3G以下の場合、適正度が「警告」レベルと診断されて、赤色のLEDが点灯する。
・0.2G以下の場合、適正度が「注意」レベルと診断されて、黄色のLEDが点灯する。
・0.1G以下の場合、適正度が「安全」レベルと診断されて、緑色のLEDが点灯する。
【0020】
つぎに、測定終了したか否か確認され(ステップS5)、測定終了していなければ、トリガー条件をみたすか否かが確認されて(ステップS6)、トリガー条件をみたせば、該データがメモリーカード10に書き込まれ、状態表示器9で「書き込み中」が表示される(ステップS7)。ステップS6でトリガー条件をみたさなければ、ステップS1に戻って、再びデータが収集される。ステップS5で測定終了していれば、以下のように、総合適正度診断部15により総合診断され、この結果が表示される。そして、終了条件に応じて記録、測定が終了する(ステップS8)。
【0021】
前記総合適正度診断では、1日の運転業務、例えば、レコーダ部1の電源ONからOFFまで、または午前8時から午後5時までの運転終了時に、その間の適正度診断部14の診断結果を累計し、全体的な運転挙動を直ちに診断して、運転終了直後にレコーダ部1の状態表示器9に総合適正度を出力する。例えば、上記各運転挙動直後の適正度診断において、1日に「危険」、「警告」、「注意」の診断レベルのうち総合診断基準レベルの3回以上出た場合、総合適正度を判定してそのうち危険度の高い方のLEDを10秒間点滅させるとともに、スピーカからブザーをならして表示する。
【0022】
また、上記運転挙動の適正度診断に際して、CCDカメラ3により、前記0.3Gを超える場合、危険画像として危険発生前後の連続映像がメモリーカード10に記録されるので、事故時の解析が容易になる。これとともに、CCDカメラ3により、例えば1分毎のように間欠的に撮影した画像(写真)が記録されるので、効率的にビジュアルで通常の運転傾向を把握でき、間欠記録なのでメモリーカード10の記録量も節約できる。
【0023】
この例では、加速度センサ4による前後、左右の加速度のデータにより急アクセルなどの危険度についての適正度を診断しているが、そのほかに以下の適正度診断が例示される。
・タイミング連動診断では、例えばポンピングブレーキのようなブレーキ時における加減速度、加減速時間を計測したデータを、事前に登録した車両の速度と停止までの時間における警告、注意、安全領域を示す基準プロファイルと照合して、運行データがどの領域に一番多く存在したかで危険度の適正度を診断する。
・地図情報連動診断では、ディジタル地図データから読み出した、または事前に登録した交差点やカーブ、歩道の位置と、上記タイミング連動診断とを用いて、例えば、交差点の30m手前でウインカーを出したかで危険度の適正度を診断する。
【0024】
なお、この実施形態では、運転挙動のうち危険挙動の適正度を診断しているが、危険挙動に代えて経済挙動(エコロジー)やスムーズ挙動の適正度などを診断してもよい。
【0025】
こうして、本発明では、適正度診断部14が、運転中に、直前の運転挙動ごとに当該運転挙動の適正度を判定し、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知するので、従来のように運転挙動の終了後の所定時間経過後に運転挙動を診断するのに比べて運転挙動の記憶も鮮明であり、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。また、総合適正度診断部15が、一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその診断結果を報知するので、やはり運転者の運転挙動の記憶も鮮明であり、運転者の運転挙動を適切なタイミングで診断することにより、効果的な運転指導が可能となる。
【0026】
なお、この実施形態では、診断部12は適正度診断部14および総合適正度診断部15を有しているが、総合適正度診断部15を省略してもよい。
【0027】
なお、この運転指導装置を用いて、自動車教習所のような運転教習場所で運転中に運転挙動の適正度を診断して運転指導を行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転指導装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の診断部を示す構成図である。
【図3】診断部の動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0029】
1:車載本体部(レコーダ部)
2:解析部
3:CCDカメラ
4:加速度センサ
5:GPSセンサ
9:表示部
12:診断部
14:適正度診断部
15:総合適正度診断部
25:バッファメモリ
31:診断基準記憶手段
32:適正度判定手段
41:診断累計記憶手段
42:総合診断基準記憶手段
43:総合適正度判定手段
S:センサ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両の加速度を検知する加速度センサをもち、車両における運転挙動のデータであって加速度データを含む検知データを取得するセンサ部、得られた運転挙動の検知データを一時的に記憶するバッファメモリ、表示部および各部を制御する制御ユニットを有する車載本体部が車両に搭載されてなり、この運転挙動の検知データに基づいて当該車両の運転操作を指導する運転指導装置であって、
前記制御ユニットは適正度診断部を備え、この適正度診断部は、
予め運転挙動の検知データごとにそれぞれ適正度の判定基準となる複数の診断基準レベルを記憶する診断基準記憶手段と、
直前の運転挙動ごとに、前記バッファメモリから出力されたデータと記憶された診断基準レベルとを比較して当該運転挙動の適正度を判定して診断結果を出力する適正度判定手段とを備えて、
前記表示部が、当該運転挙動直後に、当該運転挙動の適正度についてその診断結果を報知する、
運転指導装置。
【請求項2】
請求項1において、運転挙動の適正度が危険挙動の適正度である運転指導装置。
【請求項3】
請求項1において、運転挙動の適正度が経済挙動の適正度である運転指導装置。
【請求項4】
請求項1において、さらに、前記制御ユニットは総合適正度診断部を備え、この総合適正度診断部は、
一連の運転挙動について前記適正診断部の複数の診断結果を累計して記憶する診断累計記憶手段と、
予め累計された診断結果ごとにそれぞれ総合適正度の判定基準となる複数の総合診断基準レベルを記憶する総合診断基準記憶手段と、
一連の運転挙動が終了するときに、各々累計された診断結果と記憶された総合診断基準レベルとを比較して、総合的な運転挙動の総合適正度を判定してその総合診断結果を出力する総合適正度判定手段とを備え、
前記表示部は、前記一連の運転挙動の終了直後に、当該運転挙動の総合適正度についてその総合診断結果を報知する、
運転指導装置。
【請求項5】
請求項1において、前記一連の運転挙動の終了が、一日の運転挙動の終了である運転指導装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−188476(P2007−188476A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314375(P2006−314375)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】