説明

過給機及び過給機システム

【課題】容易に多段化可能な過給機を提供する。
【解決手段】インペラハウジング3bは、流体を内部に取込む吸入口3b1と、吸入口3b1から吸入された流体のうちインペラを通過した流体を排出する排出口3b2と、吸入口3b1から吸入された流体のうちインペラを通過しない流体を排出するバイパス排出口3b4と、流体を内部に取込むと共に取込まれた当該流体をインペラを通過させることなく排出口3b2に送るためのバイパス吸入口3b3とを備え、吸入口3b1が同一形状の他のインペラハウジング3bが有するバイパス排出口3b4に対して、排出口3b2が当該他のインペラハウジング3bが有するバイパス吸入口3b3に対して、同時に連通可能に形状設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機及び過給機システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の過給機を多段に接続することにより、高圧過給やターボラグの低減を実現する過給機システムが用いられている。
例えば、特許文献1には、同一容量の過給機を3つ備える過給機システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3709592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の過給機システムにおいては、過給機同士の接続が複雑なものであり、特に、並列に複数の過給機が接続される場合には、配管が複雑化する傾向が強い。したがって、従来の過給機システムは、過給機同士の接続が複雑化することによって信頼性の確保に大きな労力を割く必要が生じ、容易に多段の過給機システムを採用することはできなかった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、容易に多段化可能な過給機を提供し、さらには信頼性に優れた過給機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、インペラと当該インペラを収容するインペラハウジングとを備える過給機であって、上記インペラハウジングは、流体を内部に取込む吸入口と、上記吸入口から吸入された流体のうち上記インペラを通過した流体を排出する排出口と、上記吸入口から吸入された流体のうち上記インペラを通過しない流体を排出するバイパス排出口と、流体を内部に取込むと共に取込まれた当該流体を上記インペラを通過させることなく上記排出口に送るためのバイパス吸入口とを備え、上記吸入口が同一形状の他のインペラハウジングが有する上記バイパス排出口に対して、上記排出口が当該他のインペラハウジングが有する上記バイパス吸入口に対して、同時に連通可能に形状設定されている。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記インペラハウジングが、上記吸入口が設けられる第1当接部と、上記第1当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に上記吸入口と連通可能な位置に上記バイパス排出口が設けられる第2当接部と、上記排出口が設けられる第3当接部と、上記第3当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に上記排出口と連通可能な位置に上記バイパス吸入口が設けられる第4当接部とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記第1当接部と上記第3当接部とが一体化されて形成される第1フランジ部と、上記第2当接部と上記第4当接部とが一体化されて形成される第2フランジ部とを備えるという構成を採用する。

第4の発明は、上記第3の発明において、上記インペラハウジングにて、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部との間に位置する中央部が屈曲され、上記第1フランジ部に対して上記第2フランジ部が傾斜されているという構成を採用する。
【0010】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記インペラの上流側に配置され、上記インペラへの流体供給の調整を行うバルブを備えるという構成を採用する。
【0011】
第6の発明は、上記吸入口と上記バイパス排出口とが連通され、上記排出口と上記バイパス吸入口とが連通されて連結される複数の上記第1〜第5いずれかの発明である過給機を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の過給機によれば、インペラハウジングが吸入口及び排出口の他に、吸入口から吸入された流体のうちインペラを通過しない流体を排出するバイパス排出口と、流体を内部に取込むと共に取込まれた当該流体を前記インペラを通過させることなく排出口に送るためのバイパス吸入口とを備えている。
そして、本発明の過給機においては、インペラハウジングの吸入口が、他の過給機が備える同一形状のインペラハウジング(他のインペラハウジング)のバイパス排出口に対して連通可能とされており、これと同時に、本発明の過給機が備えるインペラハウジングの排出口が、他の過給機が備える同一形状のインペラハウジングのバイパス吸入口と連通可能とされている。
つまり、本発明の過給機によれば、本発明の過給機同士を接続する場合に、これらの過給機が備えるインペラハウジングの間に別途配管を配設する必要なく接続することができる。
【0013】
そして、本発明の過給機同士が上述のように接続された場合には、一方の過給機(第1の過給機と称する)が備えるインペラハウジングの吸入口から吸入された流体を、この過給機が備えるインペラを通過させることなく、他方の過給機(第2の過給機)が備えるインペラハウジングの吸入口に流入させることができる。また、第2の過給機のインペラを通過した流体を、第1の過給機が備えるインペラハウジングを介することで、第1の過給機のインペラを通過した流体と纏めて第1の過給機の排出口から排出することができる。
このため、本発明の過給機によれば、複雑に配管を引き回すことなく、容易に並列接続することができる。
【0014】
したがって、本発明の過給機によれば、容易に接続することができ、容易に多段化することができる。そして、このような本発明の過給機が複数接続されてなる過給機システムは、過給機同士を接続する配管を少なくでき、接合箇所が少なくて信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における過給機の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における過給機が複数接続された過給機システムの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における過給機が複数接続された過給機システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る過給機及び過給機システムの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本実施形態における過給機1の斜視図であり、(a)が一方側から見た斜視図であり、(b)が反対側から見た斜視図である。
また、図2は、本実施形態における過給機1が複数(本実施形態においては4つ)接続された過給機システム100の斜視図である。
また、図3は、上記過給機システム100の模式図である。
【0018】
本実施形態の過給機1は、図3に示すように、エンジンEに対して接続されており、エンジンEから排出された排気ガスに含まれるエネルギを回転動力として回収、この回転動力を用いて空気を圧縮してエンジンEに供給するものである。そして、図1〜図3に示すように、本実施形態の過給機1は、コンプレッサ2と、タービン3と、軸部4と、バルブ駆動用アクチュエータ5とを備えている。
【0019】
コンプレッサ2は、外部から供給される空気を圧縮するものであり、コンプレッサインペラ2a(図3参照)と、当該コンプレッサインペラ2aを収容するコンプレッサハウジング2bとを有している。
【0020】
コンプレッサハウジング2bは、例えば、アルミニウム等の金属材料から形成されており、吸入口2b1と、排出口2b2と、バイパス吸入口2b3と、第1フランジ部2b4と、第2フランジ部2b5とを備えている。
【0021】
吸入口2b1は、コンプレッサハウジング2bの内部に空気(流体)を取込むための開口である。なお、図3に示すように、吸入口2b1とコンプレッサインペラ2aとの間には、コンプレッサインペラ2a側から吸入口2b1への空気の逆流を防止するための逆止弁2cが設置されている。
排出口2b2は、吸入口2b1から吸入されてコンプレッサインペラ2aを通過した空気を排出する開口である。
バイパス吸入口2b3は、他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの排出口2b2から排出された空気を取込むと共に取込まれた空気をコンプレッサインペラ2aを通過させることなく排出口2b2に送るための開口である。
第1フランジ部2b4は、排出口2b2が設けられており、他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5と同一の形状を有しており、不図示のボルト等によって他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5と締結可能とされている。
第2フランジ部2b5は、上述のように、他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4と締結可能に構成されており、当該第1フランジ部2b4と締結された際に排出口2b2と連通可能な位置にバイパス吸入口2b3が設けられている。
【0022】
なお、第1フランジ部2b4と、第2フランジ部2b5とは、コンプレッサインペラ2aを囲う中央部を挟んで、コンプレッサハウジング2bの両端に配置されており、互いの当接面が略反対側を向いて配置されている。
そして、第1フランジ部2b4の位置及び角度は、他の過給機1が第1フランジ部2b4側に取り付けられた場合に、第1フランジ部2b4が他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5と当接可能に設定されている。
また、第2フランジ部2b5の位置及び角度は、他の過給機1が第2フランジ部2b5側に取り付けられた場合に、第2フランジ部2b5が他の過給機1が備えるコンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4と当接可能に設定されている。
つまり、第1フランジ部2b4と第2フランジ部2b5との配置関係は、本実施形態の過給機1が他の過給機1と接続された際に、接続された側において互いが当接する関係に設定されている。
【0023】
タービン3は、エンジンEから供給される排気ガスに含まれるエネルギを回転動力に変換するものであり、タービンインペラ3a(図3参照)と、当該タービンインペラ3aを収容するタービンハウジング3bとを有している。なお、タービンインペラ3aが本発明のインペラに相当し、タービンハウジング3bが本発明のインペラハウジングに相当する。
【0024】
タービンハウジング3bは、例えば、鋳鉄等の金属材料から形成されており、吸入口3b1と、排出口3b2と、バイパス吸入口3b3と、バイパス排出口3b4と、第1フランジ部3b5と、第2フランジ部3b6とを備えている。
【0025】
吸入口3b1は、タービンハウジング3bの内部に排気ガス(流体)を取込むための開口である。
排出口3b2は、吸入口3b1から吸入された排気ガスのうち、タービンインペラ3aを通過した排気ガスを排出するための開口である。
バイパス吸入口3b3は、他の過給機1が備えるタービンハウジング3bの排出口3b2から排出された排気ガスを取込むと共に取込まれた排気ガスをタービンインペラ3aを通過させることなく排出口3b2に送るための開口である。
バイパス排出口3b4は、吸入口3b1から吸入された排気ガスのうち、インペラを通過しない排気ガスを排出するための開口である。
なお、吸入口3b1に繋がる内部流路は、図3に示すように、タービンハウジング3bの内部において2又に分岐されており、一方がタービンインペラ3aに繋がり、他方がバイパス排出口3b4に繋がっている。そして、タービンインペラ3aの上流側には、当該タービンインペラ3aへの排気ガスの供給状態を調節する開閉バルブ3c(バルブ)が設置されている。
【0026】
第1フランジ部3b5は、吸入口3b1及び排出口3b2が設けられており、他の過給機1が備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6と同一の形状を有しており、不図示のボルト等によって他の過給機1が備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6と締結可能とされている。
【0027】
第2フランジ部3b6は、バイパス吸入口3b3及びバイパス排出口3b4が設けられており、上述のように、他の過給機1が備える第1フランジ部3b5と締結可能に構成されている。
【0028】
第2フランジ部3b6に設けられるバイパス吸入口3b3及びバイパス排出口3b4は、第2フランジ部3b6が他の過給機1が備える第1フランジ部3b5と締結された際に、他の過給機1の第1フランジ部3b5に形成された吸入口3b1及び排出口3b2と連通可能な位置に設けられている。具体的には、バイパス吸入口3b3が他の過給機1の排出口3b2と連通する位置に設けられ、バイパス排出口3b4が他の過給機1の吸入口3b1と連通する位置に設けられている。
【0029】
第1フランジ部3b5と、第2フランジ部3b6とは、タービンインペラ3aを囲うと共に屈曲した中央部3b7を挟んで、タービンハウジング3bの両端に配置されており、互いの当接面が略反対側を向くと共に、第1フランジ部3b5に対して第2フランジ部3b6が傾斜されて配置されている。
そして、第1フランジ部3b5の位置及び角度は、他の過給機1のタービンハウジング3bが第1フランジ部3b5側に取り付けられた場合に、第1フランジ部3b5が他の過給機1が備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6と当接可能に設定されている。
また、第2フランジ部3b6の位置及び角度は、他の過給機1のタービンハウジング3bが第2フランジ部3b6側に取り付けられた場合に、第2フランジ部3b6が他の過給機1が備えるタービンハウジング3bの第1フランジ部3b5と当接可能に設定されている。
つまり、第1フランジ部3b5と第2フランジ部3b6との配置関係は、本実施形態の過給機1が他の過給機1と接続された際に、接続された側において互いが当接する関係に設定されている。
【0030】
このように本実施形態の過給機1においては、タービンハウジング3bは、吸入口3b1が同一形状の他の過給機1のタービンハウジング3bが有するバイパス排出口3b4に対して、排出口3b2が同一形状の他の過給機1のタービンハウジング3bが有するバイパス吸入口3b3に対して同時に連通可能に形状設定されている。
【0031】
なお、第1フランジ部3b5は、本発明における、吸入口が設けられた第1当接部と、排出口が設けられた第3当接部とが一体化されて形成されたものである。
また、第2フランジ部3b6は、本発明における、第1当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に吸入口と連通可能な位置にバイパス排出口が設けられる第2当接部と、第3当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に排出口と連通可能な位置にバイパス吸入口が設けられる第4当接部とが一体化されて形成されたものである。
そして、本発明の過給機においては、例えば、第1フランジ部3b5を第1当接部と第3当接部とに分離し、第2フランジ部3b6を第2当接部と第4当接部とに分離することも可能である。
【0032】
軸部4は、コンプレッサ2とタービン3とを接続するものであり、コンプレッサインペラ2aとタービンインペラ3aとを連結するシャフト4a(図3参照)と、当該シャフト4aを収容する軸部ハウジングとを備えている。
【0033】
バルブ駆動用アクチュエータ5は、タービンインペラ3aの上流側に配置された開閉バルブ3cに連結されており、開閉バルブ3cを開閉駆動するための動力源となるものである。
【0034】
そして、本実施形態においては、図2及び図3に示すように、過給機システム100は、上述の過給機1を4つ備えている。なお、以下の説明においては、4つの過給機1を説明の便宜上、エンジンE側から第1の過給機1A、第2の過給機1B、第3の過給機1C、第4の過給機1Dと称する。
【0035】
図3に示すように、第1の過給機1Aは、コンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4に形成された排出口2b2がエンジンEの吸気管E1に連通されており、タービンハウジング3bの第1フランジ部3b5に形成された吸入口3b1がエンジンEの排気管E2と連通されると共に排出口3b2が車両外部に繋がる排気管Xに連通されている。
【0036】
また、第1の過給機1AのエンジンEと反対側には第2の過給機1Bが接続されている。より詳細には、図2に示すように、第1の過給機1Aが備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5が第2の過給機1Bが備えるコンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4と当接して締結されている。また、第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6が第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bの第1フランジ部3b5と当接して締結されている。
これによって、図3に示すように、第1の過給機1Aが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3が第2の過給機1Bの排出口2b2と連通され、第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3bのバイパス排出口3b4が第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bの吸入口3b1と連通され、第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3が第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2と連通されている。
【0037】
第2の過給機1BのエンジンEと反対側には第3の過給機1Cが接続されている。より詳細には、図2に示すように、第2の過給機1Bが備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5が第3の過給機1Cが備えるコンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4と当接して締結されている。また、第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6が第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bの第1フランジ部3b5と当接して締結されている。
これによって、図3に示すように、第2の過給機1Bが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3が第3の過給機1Cの排出口2b2と連通され、第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bのバイパス排出口3b4が第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bの吸入口3b1と連通され、第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3が第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2と連通されている。
【0038】
第3の過給機1CのエンジンEと反対側には第4の過給機1Dが接続されている。より詳細には、図2に示すように、第3の過給機1Cが備えるコンプレッサハウジング2bの第2フランジ部2b5が第4の過給機1Dが備えるコンプレッサハウジング2bの第1フランジ部2b4と当接して締結されている。また、第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bの第2フランジ部3b6が第4の過給機1Dが備えるタービンハウジング3bの第1フランジ部3b5と当接して締結されている。
これによって、図3に示すように、第3の過給機1Cが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3が第4の過給機1Dの排出口2b2と連通され、第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bのバイパス排出口3b4が第4の過給機1Dが備えるタービンハウジング3bの吸入口3b1と連通され、第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3が第4の過給機1Dが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2と連通されている。
【0039】
第4の過給機1DのエンジンEと反対側には、他の過給機が備えられていない。そして、第4過給機1Dが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3は閉塞されており、また第4過給機1Dが備えるバイパス吸入口3b3とバイパス排出口3b4とは開閉バルブ6が内部に設置されたバイパス流路7で接続されている。
【0040】
なお、図3に示すように、各コンプレッサハウジング2bの吸入口2b1は、3又に分岐された分岐管Yと接続されており、分岐管Yを介して各コンプレッサ2に空気が供給される。この分岐管Yは、例えば、プラスチック材料によって形成されている。
【0041】
このように本実施形態の過給機システム100は、同一容量の過給機1を複数備えて構成されている。
1つの過給機1のタービン3の作動レンジは、エンジンEから過給機システム100に供給される排気ガスが最も少ない状態であっても、タービンインペラ3aが回転駆動可能に設定されている。つまり、過給機1は、エンジンEに許容されるターボラグの時間以下で動作可能なイナーシャの小さなタービン動翼を有するタービンインペラ3aを備えている。
【0042】
そして、エンジンEから過給機システム100に供給される排気ガスの流量が1つの過給機1の作動レンジを超えた場合に、当該作動レンジを超える排気ガスが順次、他の過給機1に供給される。このため、過給機システム100に備えられる過給機1の数は、エンジンEから排気される排気ガスの流量が最も多い場合に、全ての排気ガスの過給機1の作動レンジ内で分配可能に設定されている。これによって、チョーク及びオーバーブーストを防止することができる。
つまり、本実施形態の過給機システム100は、エンジンEから排気される排気ガスの流量が最も少ない場合でも作動可能な過給機1を、エンジンEから排気される排気ガスの流量が最も多い場合にチョーク及びオーバーブーストしない数だけ備えている。
【0043】
なお、本実施形態の過給機システム100によれば、過給機1の数を自由に変更可能であり、自由にワイドレンジ化することができる。このため、各過給機1の作動レンジを狭くして過給機1を高圧力比に対応可能なものとし、この過給機1を多数備えることで、本実施形態の過給機システム100を高圧過給に対応させることも可能である。
【0044】
次に、このように構成された本実施形態における過給機1(第1の過給機1A〜第4の過給機1D)及び過給機システム100の動作について説明する。
【0045】
本実施形態の過給機システム100においては、不図示の制御部がエンジンEの状態を監視しており、エンジンEから排気される排気ガスの流量に応じて、第1の過給機1A〜第4の過給機1Dが備える開閉バルブ3cを制御する。
より詳細には、エンジンEから排気される排気ガスの流量が多くなるに連れて、多くの開閉バルブ3cが開放される。すなわち、エンジンEから排気される排気ガスの流量が最も少ない状態では第1の過給機1Aの開閉バルブ3cのみが開放され、排気ガスの流量が多くなるに連れて第2の過給機1Bの開閉バルブ3c及び第3の過給機1Cの開閉バルブ3cが順次開放され、排気ガスの流量が最も多い状態では第1の過給機1A〜第4の過給機1Dの全ての開閉バルブ3cが開放される。なお、上述の第1の過給機1A〜第4の過給機1Dが備える開閉バルブ3cの開放タイミングは一例であり、開放の順序や開放される開閉バルブ3cの数は、エンジンEに求められる出力等に応じて変化可能である。
バイパス流路7に設置された開閉バルブ6は、緊急用の開閉バルブ6であり、エンジンEから排出される排気ガスの流量が予期せずに増量したり、過給機1の動作不良が生じたりした場合に、排気ガスを逃がす必要が生じた際に開放される。つまり、開閉バルブ6は、通常時は閉鎖されている。
そして、以下の動作説明では、エンジンEから排気される排気ガスの流量が最も多い状態、すなわち、第1の過給機1A〜第4の過給機1Dが備える全ての開放バルブ3cが開放された状態について説明する。
【0046】
エンジンEから排気管E2を介して排気ガスが排出されると、排出された排気ガスは、第1の過給機1Aの吸入口3b1に流入する。
吸入口3b1に流入した排気ガスは、第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3b内に取込まれ、一部がタービンインペラ3aに供給されてタービンインペラ3aを回転駆動させて通過し、残りがタービンインペラ3aを通過することなくバイパス排出口3b4から第2の過給機1Bに供給される。
【0047】
第1の過給機1Aが備えるタービンインペラ3aを通過した排気ガスは、バイパス吸入口3b3を介して第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2から流入した排気ガスと合流されて第1の過給機1Aの排出口3b2から排気管Xに排気される。
【0048】
第1の過給機1Aにおいてタービンインペラ3aが回転駆動されると、シャフト4aで連結されたコンプレッサインペラ2aが回転駆動する。
このように第1の過給機1Aのコンプレッサインペラ2aが回転駆動すると、分岐管Yを介して吸入口2b1からコンプレッサハウジング2b内に取込まれた空気が圧縮される。そして、圧縮された空気は、バイパス吸入口2b3を介して第2の過給機1Bが備えるコンプレッサハウジング2bの排出口2b2から流入した圧縮空気と合流されて第1の過給機1Aの排出口2b2から吸気管E1を介してエンジンEに供給される。
【0049】
また、上述のように、第2の過給機1Bの吸入口3b1に第1の過給機1Aのバイパス排出口3b4から排気ガスが流入すると、吸入口3b1に流入した排気ガスは、第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3b内に取込まれ、一部がタービンインペラ3aに供給されてタービンインペラ3aを回転駆動させて通過し、残りがタービンインペラ3aを通過することなくバイパス排出口3b4から第3の過給機1Cに供給される。
【0050】
第2の過給機1Bが備えるタービンインペラ3aを通過した排気ガスは、バイパス吸入口3b3を介して第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2から流入した排気ガスと合流されて第2の過給機1Bの排出口3b2から第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3に供給される。
【0051】
第2の過給機1Bにおいてタービンインペラ3aが回転駆動されると、シャフト4aで連結されたコンプレッサインペラ2aが回転駆動する。
このように第2の過給機1Bのコンプレッサインペラ2aが回転駆動すると、分岐管Yを介して吸入口2b1からコンプレッサハウジング2b内に取込まれた空気が圧縮される。そして、圧縮された空気は、バイパス吸入口2b3を介して第3の過給機1Cが備えるコンプレッサハウジング2bの排出口2b2から流入した圧縮空気と合流されて第2の過給機1Bの排出口2b2から第1の過給機1Aが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3に供給される。
【0052】
また、上述のように、第3の過給機1Cの吸入口3b1に第2の過給機1Bのバイパス排出口3b4から排気ガスが流入すると、吸入口3b1に流入した排気ガスは、第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3b内に取込まれ、一部がタービンインペラ3aに供給されてタービンインペラ3aを回転駆動させて通過し、残りがタービンインペラ3aを通過することなくバイパス排出口3b4から第4の過給機1Dに供給される。
【0053】
第3の過給機1Cが備えるタービンインペラ3aを通過した排気ガスは、バイパス吸入口3b3を介して第4の過給機1Dが備えるタービンハウジング3bの排出口3b2から流入した排気ガスと合流されて第3の過給機1Cの排出口3b2から第2の過給機1Bが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3に供給される。
【0054】
第3の過給機1Cにおいてタービンインペラ3aが回転駆動されると、シャフト4aで連結されたコンプレッサインペラ2aが回転駆動する。
このように第3の過給機1Cのコンプレッサインペラ2aが回転駆動すると、分岐管Yを介して吸入口2b1からコンプレッサハウジング2b内に取込まれた空気が圧縮される。そして、圧縮された空気は、バイパス吸入口2b3を介して第4の過給機1Dが備えるコンプレッサハウジング2bの排出口2b2から流入した圧縮空気と合流されて第3の過給機1Cの排出口2b2から第2の過給機1Bが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3に供給される。
【0055】
また、上述のように、第4の過給機1Dの吸入口3b1に第3の過給機1Cのバイパス排出口3b4から排気ガスが流入すると、吸入口3b1に流入した排気ガスは、第4の過給機1Dが備えるタービンハウジング3b内に取込まれ、バイパス流路7の開閉バルブ6が閉鎖されているために全量がタービンインペラ3aに供給されてタービンインペラ3aを回転駆動させて通過する。
【0056】
第4の過給機1Dが備えるタービンインペラ3aを通過した排気ガスは、第4の過給機1Dの排出口3b2から第3の過給機1Cが備えるタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3に供給される。
【0057】
第4の過給機1Cにおいてタービンインペラ3aが回転駆動されると、シャフト4aで連結されたコンプレッサインペラ2aが回転駆動する。
このように第4の過給機1Dのコンプレッサインペラ2aが回転駆動すると、分岐管Yを介して吸入口2b1からコンプレッサハウジング2b内に取込まれた空気が圧縮される。そして、圧縮された空気は、第4の過給機1Dの排出口2b2から第3の過給機1Cが備えるコンプレッサハウジング2bのバイパス吸入口2b3に供給される。
【0058】
以上のような本実施形態の過給機1によれば、タービンハウジングが3bが吸入口3b1及び排出口3b2の他に、吸入口3b1から吸入された排気ガスのうちタービンインペラ3aを通過しない排気ガスを排出するバイパス排出口3b4と、排気ガスを内部に取込むと共に取込まれた当該排気ガスを前記タービンインペラ3aを通過させることなく排出口3b2に送るためのバイパス吸入口3b3とを備えている。
そして、本実施形態の過給機1においては、タービンハウジング3bの吸入口3b1が、他の過給機1が備える同一形状のタービンハウジング3bのバイパス排出口3b4に対して連通可能とされており、これと同時に、本実施形態の過給機1が備えるタービンハウジング3bの排出口3b2が、他の過給機1が備える同一形状のタービンハウジング3bのバイパス吸入口3b3と連通可能とされている。
つまり、本実施形態の過給機1によれば、本実施形態の過給機1同士を接続する場合に、これらの過給機1が備えるタービンハウジング3bの間に別途配管を配設する必要なく接続することができる。
【0059】
そして、本実施形態の過給機1同士が上述のように接続された場合には、一方の過給機(例えば、第1の過給機1A)が備えるタービンハウジング3bの吸入口3b1から吸入された排気ガスを、この過給機1Aが備えるタービンインペラ3aを通過させることなく、他方の過給機(例えば、第2の過給機1B)が備えるタービンハウジング3bの吸入口3b1に流入させることができる。また、第2の過給機1Bのタービンインペラ3aを通過した排気ガスを、第1の過給機1Aが備えるタービンハウジング3bを介することで、第1の過給機1Aのタービンインペラ3aを通過した排気ガスと纏めて第1の過給機1Aの排出口3b2から排出することができる。
このため、本実施形態の過給機1によれば、複雑に配管を引き回すことなく、容易に並列接続することができる。
【0060】
したがって、本実施形態の過給機1によれば、容易に接続することができ、容易に多段化することができる。そして、このような本実施形態の過給機1が複数接続されてなる過給機システム100は、過給機1同士を接続する配管を少なくでき、接合箇所が少なくて信頼性の高いものとなる。
【0061】
また、本実施形態の過給機1においては、タービンハウジング3b同士の接続の際に、本発明の第1当接部及び第3当接部が一体化された第1フランジ部3b5と、第2当接部及び第4当接部とが一体化された第2フランジ部3b6とが当接される。
このため、タービンハウジング3b同士を面接触させることができ、確実にタービンハウジング3b同士を接続することができる。
【0062】
また、本実施形態の過給機1においては、第1当接部及び第3当接部が第1フランジ部3b5として一体化され、第2当接部及び第4当接部とが第2フランジ部3b6として一体化されている。
このため、吸入口3b1と排出口3b2との位置関係、及び、バイパス吸入口3b3とバイパス排出口3b4との位置関係とを確実に確保することができる。
【0063】
また、本実施形態の過給機1においては、タービンハウジング3bにて、第1フランジ部3b5と第2フランジ部3b6との間に位置する中央部3b7が屈曲され、第1フランジ部3b5に対して第2フランジ部3b6が傾斜されている。
このため、本実施形態の過給機1を複数接続した場合には、図2に示す、本実施形態の過給機システム100のように、外形形状が湾曲する。よって、過給機システム100の全長を短く抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態の過給機1においては、タービンインペラ3aの上流側に配置され、タービンインペラ3aへの排気ガス供給の調節を行う開閉バルブ3cを備えている。
このため、過給機システム100においては、各過給機1に供給される排気ガスの流量を任意に調節することが可能となる。
【0065】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、本発明のインペラハウジングがタービンハウジング3bである構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、本発明のインペラハウジングをコンプレッサハウジングとする構成を採用することも可能である。
この場合には、分岐管Yが設置されることはなく、コンプレッサハウジングに対して、バイパス排出口が設けられることとなる。
【0067】
また、上記実施形態では、タービンハウジング3bにおいて、第1フランジ部3b5及び第2フランジ部3b6の当接面が面一の平面である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1フランジ部3b5及び第2フランジ部3b6の当接面側に段差を形成しても良い。
これによって、第1フランジ部3b5と第2フランジ部3b6とが当接する際に、ずれることを抑止することが可能となる。
【0068】
また、上記実施形態においては、第1フランジ部3b5と第2フランジ部3b6とを当接させることによって、吸入口3b1とバイパス排出口3b4とを接続し、排出口3b2とバイパス吸入口3b3とを連通する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、フランジ部を形成することなく、例えば、吸入口3b1を有する配管をバイパス排出口3b4を有する配管に挿し込むあるいは逆とすることによって、吸入口3b1とバイパス排出口3b4とを接続するようにしても良い。
また、排出口3b2を有する配管とバイパス吸入口3b3を有する配管に挿し込むあるいは逆とすることによって、排出口3b2とバイパス吸入口3b3とを接続するようにしても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、タービンハウジング3bにおいて、第1フランジ部3b5と第2フランジ部3b6とに挟まれる中央部3b7が屈曲され、第1フランジ部3b5に対して第2フランジ部3b6が傾斜された構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、中央部3b7が屈曲していない形状を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1……過給機、2……コンプレッサ、2a……コンプレッサインペラ、2b……コンプレッサハウジング、2b1……吸入口、2b2……排出口、2b3……バイパス吸入口、2b4……第1フランジ部、2b5……第2フランジ部、2c……逆止弁、3……タービン、3a……タービンインペラ(インペラ)、3b……タービンハウジング(インペラハウジング)、3b1……吸入口、3b2……排出口、3b3……バイパス吸入口、3b4……バイパス排出口、3b5……第1フランジ部、3b6……第2フランジ部、3b7……中央部、3c……開閉バルブ(バルブ)、4……軸部、5……バルブ駆動用アクチュエータ、6……開閉バルブ、7……バイパス流路、100……過給機システム、E……エンジン、E1……吸気管、E2……排気管、X……排気管、Y……分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと当該インペラを収容するインペラハウジングとを備える過給機であって、
前記インペラハウジングは、
流体を内部に取込む吸入口と、
前記吸入口から吸入された流体のうち前記インペラを通過した流体を排出する排出口と、
前記吸入口から吸入された流体のうち前記インペラを通過しない流体を排出するバイパス排出口と、
流体を内部に取込むと共に取込まれた当該流体を前記インペラを通過させることなく前記排出口に送るためのバイパス吸入口とを備え、
前記吸入口が同一形状の他のインペラハウジングが有する前記バイパス排出口に対して、前記排出口が当該他のインペラハウジングが有する前記バイパス吸入口に対して、同時に連通可能に形状設定されている
ことを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記インペラハウジングは、
前記吸入口が設けられる第1当接部と、
前記第1当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に前記吸入口と連通可能な位置に前記バイパス排出口が設けられる第2当接部と、
前記排出口が設けられる第3当接部と、
前記第3当接部と当接可能な形状を有すると共に当接時に前記排出口と連通可能な位置に前記バイパス吸入口が設けられる第4当接部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の過給機。
【請求項3】
前記第1当接部と前記第3当接部とが一体化されて形成される第1フランジ部と、前記第2当接部と前記第4当接部とが一体化されて形成される第2フランジ部とを備えることを特徴とする請求項2記載の過給機。
【請求項4】
前記インペラハウジングにて、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に位置する中央部が屈曲され、前記第1フランジ部に対して前記第2フランジ部が傾斜されていることを特徴とする請求項3記載の過給機。
【請求項5】
前記インペラの上流側に配置され、前記インペラへの流体供給の調整を行うバルブを備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の過給機。
【請求項6】
前記吸入口と前記バイパス排出口とが連通され、前記排出口と前記バイパス吸入口とが連通されて連結される複数の請求項1〜5いずれかに記載の過給機を備えることを特徴とする過給機システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate