説明

道路構造

【課題】歩道と縁石との境界部分の雑草発生及び歩道の浸水を有効に防止することができ、施工が容易で、自然環境との調和性にも優れた道路構造を提供する。
【解決手段】道路構造1は、車道2と歩道3との境界に沿って配列された縁石4と歩道3との間の地盤8に形成された溝部9内に、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を打設して形成された多孔質層5と、多孔質層5上に形成された植生層6と、を備えている。植生層6は、歩道3及び縁石4の長手方向に沿ってベルト状に形成され、植生層6において生育する植物7によって緑化領域17が形成されている。また、歩道3の上面は、前記混練物を地盤8の表面8aに打設して形成された多孔質層3aによって舗装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道と歩道の境界に沿って配列された縁石と、当該歩道と、の間に形成される道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路の車道と歩道との境界に沿って配列された縁石と、当該歩道と、の隙間には雑草が生育することが多いので、これを防止するため、従来、様々な方式の防草構造あるいは防草工法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1記載の「車・歩道境界における雑草の生育防止構造」は、歩車道境界ブロック(縁石)と歩道との境界部分の歩道側のアスファルトを掘削して形成されたベース部に空練りモルタルを敷き、この空練りモルタル上に防草ブロックを載置するとともに、この防草ブロックと歩車道境界ブロックとをエポキシ樹脂系接着剤を介して接着した後、前記ベース部を修復する、というものである。
【0004】
特許文献2記載の「道路等の雑草生育防止工法」は、道路舗装と縁石に生じた隙間に生えた雑草、コケ、ゴミを除去し、マスキングテープで養生を行った後、前記隙間に、プライマーを塗布し、所定のシーリング材を流し込んで、固化させる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−90189号公報
【特許文献2】特開2005−83140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の「車・歩道境界における雑草の生育防止構造」は、空練りモルタル、防草ブロック及びエポキシ樹脂系接着剤などの資材を必要とし、作業工程も煩雑であるため、施工に多くの労力と時間を要する。また、施工後の車・歩道境界付近の外観は、元のアスファルト舗装状態と同じとなるため、自然環境との調和性は良好でなく、排水性が向上することもない。
【0007】
一方、特許文献2記載の「道路等の雑草生育防止工法」は、舗装部分を掘削したり、防草ブロックを用いたりする作業は不要であるが、道路舗装と縁石との隙間にシーリング材を流し込む工程や、固化前のシーリング材の表面を鏝で均したりする工程は熟練作業者が行う必要があるので、施工は容易でない。また、前記隙間へのシーリング材の充填不足や充填不良が生じると、雑草生育防止機能が大幅に低下する。さらに、隙間に流し込まれたシーリング材の表面は、乾燥固化後も目立つので、自然環境との調和性も良くない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、歩道と縁石との境界部分の雑草発生及び歩道の浸水を有効に防止することができ、施工が容易で、自然環境との調和性にも優れた道路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の道路構造は、車道と歩道との境界に配列された縁石と前記歩道との間に、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を打設して形成された多孔質層と、前記多孔質層上に形成された植生層と、を備えたことを特徴とする。ここで、植生層とは、植物が生育可能な土壌環境を備えた領域をいう。
【0010】
このような構成とすれば、縁石と歩道との間に前記混練物を打設して形成された多孔質層は、セメント系固化剤によって固化され、アスファルト舗装程度の硬さとなるため、雑草の種子が飛来しても活着し難く、前記多孔質層下方の地盤中に存在する雑草種子の発芽も硬質の多孔質層によって遮られるので、歩道と縁石との境界部分での雑草発生を防止することができる。
【0011】
また、縁石と歩道との間に打設された混練物の固化過程において、団粒化剤に含まれるイオンの作用により、土質材とセメント系固化剤の粒子とが混練物中に立体的な団粒構造を形成し、この団粒構造中に連続した空隙が発生するため、固化後の多孔質層は透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好となる。
【0012】
従って、植生層に植物の種を播いたり苗を植えたりすれば、当該植生層及びその下方の多孔質層中の水分や養分を吸収して植物が生長、繁茂していき、やがて植生層の上面が植物によって被われた状態となることにより、緑化領域が形成される結果、自然環境との調和性に優れた道路構造が得られる。また、雨天時などに、歩道から植生層に流れ込んだ雨水は、透水性を有する多孔質層を通過して速やかに地盤中へ浸透するので、歩道の浸水を防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の道路構造は、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水を混ぜ合わせた混練物を、縁石と歩道との間に打設して形成した多孔質層上に、植生層を形成するだけで構築することができるので、施工も容易である。
【0014】
ここで、前記縁石と前記歩道との間の地盤に設けた溝部内に前記植生層を形成することが望ましい。このような構成とすれば、植生層が溝部内に保持された状態となり、植生層を構成する培土や養分の流亡を防止することができるので、植生層の安定性がさらに向上する。
【0015】
一方、前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることが望ましい。このような団粒化剤を使用すれば、前記混練物の固化中に強固な団粒構造が生じ、透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性が良好で、強度と耐久性に優れた多孔質層が形成されるので、多孔質層の耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、歩道と縁石との境界部分の雑草発生及び歩道の浸水を有効に防止することができ、施工が容易で、自然環境との調和性にも優れた道路構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である道路構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す道路構造の車歩道横断方向における垂直断面図である。
【図3】図2に示す道路構造を構成する植栽層の素材である混練物の製造工程を示す図である。
【図4】図2に示す道路構造の施工手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1,図2に示すように、本実施形態の道路構造1は、車道2と歩道3との境界に沿って配列された縁石4と歩道3との間の地盤8に形成された溝部9内に、後述する土質材10、セメント系固化剤11、団粒化剤14及び水の混練物15を打設して形成された多孔質層5と、多孔質層5上に形成された植生層6と、を備えている。植生層6は、歩道3及び縁石4の長手方向に沿ってベルト状に形成され、植生層6において生育する多数の植物7によって緑化領域17が形成されている。また、歩道3の上面は、前記混練物15を地盤8の表面8aに打設して形成された多孔質層3aによって舗装されている。
【0019】
ここで、図3,図4に基づいて、道路構造1の施工手順について説明する。図3に示すように、土質材10及びセメント系固化剤11をミキサ12に投入して、十分に撹拌、混合する。ミキサ12は、モータ13などを動力源とする一般的な撹拌混合機を用いることができる。土質材10としては、真砂土、シラス、焼却灰あるいは当該道路構造1の施工予定現場である地盤8から採取した土砂などを使用することができる。なお、土質材10の代わりに、若しくは土質材10と併せて、瓦の廃材、ガラスの廃材あるいは溶融スラグの粉砕物を使用することもできる。
【0020】
土質材10とセメント系固化剤11とが均一に混合されたら、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む団粒化剤14及び水を添加し、さらに撹拌、混練することによって混練物15を形成する。なお、撹拌混合手段は限定しないので、前述したミキサ12の代わりにバックホウを用いて混合することもできる。
【0021】
本実施形態において、混練物15を構成する各成分の混合比率は次の通りであるが、これに限定するものではない。
土質材10:1000kg〜1500kg
セメント系固化剤11:100kg〜200kg
団粒化剤14:1リットル〜10リットル
水:適量(混練物15の流動性や固さなどを確認しながら添加量を調整する。)
【0022】
一方、図4(a)に示すように、施工現場である、車道2と歩道3との境界に配列された縁石4と歩道3との間の地盤8に、歩道3及び縁石4の長手方向に延びる溝部9を形成する。この場合、溝部9の縁石4側の上縁部9aと、縁石4の溝部9側の下縁部4aとを略同じ位置に設けるか、若しくは下縁部4aよりも歩道3寄りに上縁部9aを設けることができる。溝部8の垂直断面形状は四角形状であるが、これに限定しないので、U字形状とすることもできる。
【0023】
次に、図4(b)に示すように、図3に示す混練工程で得られた混練物15を、溝部9内に打設して固化させることにより、図4(c)に示すように、溝部9内に多孔質層5を形成する。混練物15の打設工法は限定しないが、例えば、モルタル吹き付け用ポンプ(図示せず)に接続されたモルタル吹き付けガン18を用いて施工することができる。本実施形態では、地盤8の歩道3側の表面8aと、多孔質層5の表面5aとが略同一面をなす程度まで混練物15を溝部9内に打設しているが、これに限定しないので、混練物15の打設量を増減させ、多孔質層5の厚さを調整することができる。また、本実施形態では、図4(b)に示すように、歩道3部分の地盤8の表面8a上に、混練物15を打設することにより、歩道3上面の舗装となる多孔質層3aを形成している。
【0024】
混練物15の打設後、15時間程度養生して、多孔質層3a,5が十分に固化したら、図4(c)に示すように、多数の植物苗7aが植栽されたマット状の植生層6を多孔質層5の表面5a上に載置する。この後、日数が経過すると、植物苗7aが生育していき、やがて図1,図2に示すように、歩道3と縁石4との間に、歩道3の長手方向に沿ってベルト状に連続した緑化領域17が形成され、道路構造1が完成する。
【0025】
図4に示すように、道路構造1においては、混練物15に含まれるセメント系固化剤11の作用により、溝部9内に形成された多孔質層5はアスファルト舗装程度に硬くなる。また、施工後、日数が経過すると、図2に示すように、植物7が植生層6の表面を覆うように繁茂するとともに、植物苗7aの根7cが多孔質層5を貫通して地盤8中深く張り、植生層6が溝部9内に固着された状態となる。従って、多孔質層5の表面5aに雑草の種子が飛来しても活着し難く、地盤8中に存在する雑草種子の発芽も硬質の多孔質層5によって遮られるので、歩道3と縁石4との境界部分における雑草の発生を防止することができる。
【0026】
また、図4(b),(c)に示すように、混練物15を打設した後で固化前の混練物15中においては、団粒化剤14(図3参照)に含まれるイオンの作用により土質材10とセメント系固化剤11の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、この団粒構造中に連続した空隙が発生するため、固化後の多孔質層5,3aは透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好となる。従って、植生層6内の植物7の生育に好適な状態が形成され、多孔質層5,3a下方の地盤8中の生物や細菌類に悪影響を及ぼすことがなく、周囲の自然環境とも調和する。また、植生層6は溝部9内に保持された状態となるため、植生層6を構成する培土や養分が風雨などによって流亡するのを防止することができ、植生層6の安定性及び耐久性の向上に有効である。
【0027】
また、植生層6の植物苗7aは、当該植生層7及びその下方の多孔質層5中の水分や養分を吸収して生長、繁茂していき、やがて図1,2に示すように、植生層6の上面全体が植物7によって被われた状態となり、緑化領域17が形成されるため、周囲の景観や自然環境との調和性に優れた道路構造1が得られる。また、雨天時などに、歩道3に降った雨水は、そのまま多孔質層3aを通過し、若しくは植生層6に流れ込んで多孔質層5を通過して地盤8中へ浸透するので、歩道3や緑化領域17の浸水を防止することができる。
【0028】
さらに、土質材10、セメント系固化剤11、団粒化剤14及び水を混ぜ合わせた混練物15を、歩道3と縁石4との間の溝部9内に打設して多孔質層5を形成した後、多孔質層5上に植生層6を形成するだけで、道路構造10を構築することができるので、施工は容易である。また、固化後の歩道3側の多孔質層3aの表面には、前述した団粒構造に基づく適度の凹凸が形成されるので足が滑り難く、安全に歩行することができる。
【0029】
一方、団粒化剤14として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものを使用したことにより、混練物15の固化中に強固な団粒構造が形成されるので、前述したように、多孔質層3a,5は透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性が良好で、強度及び耐久性に優れている。
【0030】
なお、植生層6は、図4に示すものに限定しないので、例えば、多孔質層5上に培土を打設した後に、当該培土中に植物の苗を植えたり、種を播いたりする方法、あるいは植物の種を混入した培土を多孔質層5上に打設する方法などを採用することができる。また、図1に示す植物7の種類も特に限定しないので、施工現場の状況(地形、地質や気候など)に応じて決めることができるが、例えば、クラピア、イワダレソウ、芝などの地被植物類が好適である。さらに、溝部9や緑化領域17の列数や幅、長さなども限定しないので、施工現場の状況に応じて設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の道路構造は、車道と歩道の境界に沿って配列された縁石と歩道との間の防草手段として、一般道路において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 道路構造
2 車道
3 歩道
3a,5 多孔質層
4 縁石
4a 下縁部
5a,8a 表面
6 植生層
7 植物
7a 植物苗
7c 根
8 地盤
9 溝部
9a 上縁部
10 土質材
11 セメント系固化剤
12 ミキサ
13 モータ
14 団粒化剤
15 混練物
17 緑化領域
18 モルタル吹き付けガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道と歩道との境界に配列された縁石と前記歩道との間に、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を打設して形成された多孔質層と、前記多孔質層上に形成された植生層と、を備えたことを特徴とする道路構造。
【請求項2】
前記縁石と前記歩道との間の地盤に設けた溝部内に前記多孔質層を形成したことを特徴とする請求項1記載の道路構造。
【請求項3】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載の道路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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