説明

道路標示シート

【課題】雨水などに濡れても滑りにくい道路標示シートを提供する。
【解決手段】可撓性を有する基材と、この基材の上面に設けて道路標示を描く標示シートとを備えさせ、この標示シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとを配合させた結合材に、ワックスと、少なくとも着色材と反射材とを含む添加材とを配合させたシート組成物を溶融させてシート状に成形させる。
前記シート組成物を溶融させてシート状に成形させるので、標示シートが濡れても高い滑り抵抗値を有し、上方を通過する車両のタイヤが滑りにくくなされる。
また、反射材を含むので、ヘッドライトなどを点灯している車両などからの視認性が良好となされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の場所で一時的に仮設して路面標示を行うため等に用いられる道路標示シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路工事や事故現場などにおいて、その手前に看板や三角コーンなどを設置して走行車両の運転手に対し、情報提供や、注意、減速を促す方法がよく用いられているが、別の方法として路面標示を仮設させる方法についても提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、工事箇所手前の路面に着脱自在に設置可能で、運転者の視線方向を前方からそらすことなく、進行方向の状況を把握できることにより、準備行動がとれ予防保全的運転を可能にすることを特徴とする仮設用路面標示シート、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−074023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、ゴム質材性のベースシート上にゴムチップ材製の弾性シートを設けて仮設用路面標示シートを形成する構成が記載されているが、ゴム質のシートは水に濡れると滑りやすくなるという問題点が考えられる。
【0006】
そこで本発明は、雨水などに濡れても滑りにくい道路標示シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路標示シートは、路面上に載置されて使用される道路標示シートであって、
可撓性を有する基材と、該基材の上面に設けられて道路標示を描く標示シートとを備え、
該標示シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとが配合された結合材に、ワックスと、少なくとも着色材と反射材とを含む添加材とが配合されたシート組成物が溶融されてシート状に成形されたものであることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路標示シートによれば、可撓性を有する基材と、この基材の上面に設けられて道路標示を描く標示シートとを備え、この標示シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとを配合させた結合材に、ワックスと、少なくとも着色材と反射材とを含む添加材とを配合させたシート組成物を溶融させてシート状に成形させるので、標示シートが濡れても高い滑り抵抗値を有し、上方を通過する車両のタイヤが滑りにくくなされる。
また、反射材を含むので、ヘッドライトなどを点灯している車両などからの視認性が良好となされる。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとを配合させた結合材に、ワックスと反射材を含む添加材を配合させて標示シートを設けるので、前記結合材によって反射材が標示シートに強固に固定され、道路標示シートの使用の過程における反射材の標示シートからの脱落が抑制され良好な視認性を継続的に得ることができる。
【0009】
また、前記標示シートを、複数の表示領域が平面状に組み合わされて立体図形を描くように形成させ、前記各表示領域における明度の差によって、前記立体図形の陰影が表現されるようにすれば、標示シートの図形があたかも立体的に盛り上がった道路標示として視認されて、車両の運転手等が直感的に減速するようになされるため、走行車両に減速を促す道路標示シートとして良好に用いることができるので、好ましい。
【0010】
また、前記標示シートを複数枚形成させ、各標示シートをそれぞれ前記複数の表示領域を構成するように設ければ、基材上に前記の立体図形の道路標示を容易に形成させることができるので、好ましい。
また、前記各標示シートを、隣接して配置させた標示シート同士の上下方向の重なりがないように前記基材上に設けると共に、前記各標示シートが、この各標示シートにより形成される前記立体図形の外周縁の少なくとも一部をそれぞれ構成するように設ければ、前記各標示シートがそれぞれ外周縁方向へ移動するように基材が変形して各標示シートへの負荷を軽減させ、各標示シートの割れや破れなどの損傷を抑制させるので好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る道路標示シートによれば、雨水などに濡れても滑りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る道路標示シートの実施の一形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面の概要を表す図である。
【図3】図1の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
【図4】図2の道路標示シートに力がかかったときの変形状態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る道路標示シートの実施の他の一形態を示す平面図である。
【図6】図5の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
【図7】本発明に係る道路標示シートの実施の他の一形態を示す平面図である。
【図8】図7の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
本実施形態の道路標示シートは、3つの表示領域a、b、cが平面状に組み合わされて立体図形を描くように配置されて設けられている。前記各表示領域a〜cは、明度が異なるように、それぞれ異なる色調に設けられており、相隣る表示領域の明度差が陰影として表現され得る位置関係で配置されている。
ここで、相隣る表示領域の明度差が陰影として表現され得る位置関係とは、もともと前記の立体図形が立体を等角画法や傾斜画法などにより平面的に表したものであり、各表示領域a〜cの明度が同じでも色相が異なれば意識的に見れば立体として視認されないでもないが、より容易に立体として視認されるように、丁度光線があたかも前記立体図形からなる仮想立体の一方向から照射して陰影が生じているが如く、前記立体図形の各表示領域a〜cの明度差を陰影として表現させた如き配置になっている位置関係を意味する。
【0014】
図1の道路標示シートは、左斜面部分を構成する表示領域bを白色(マンセルによる明度は約9)に形成し、正面部分を構成する表示領域cを黄色(マンセルによる明度は約7)に形成し、右斜面部分を構成する表示領域aを青色(マンセルによる明度は約5)に形成することで、三角状の立体図形を形成させている。従って各表示領域a〜cの明度は、白色が最も高く、黄色、青色の順に低くなることから、表示領域bの左斜面部分を最高にして、正面部分、右斜面部分の順に濃くなっているように視認されることから、丁度光線があたかも三角状に盛り上がった仮想立体の左前方上から照射し、正面部分、右斜面部分の順に暗くなっているように見えるようになされている。
また、各表示領域の明度差は、本形態の如くマンセル値で2程度以上とするのが好ましく、これにより明度差が小さくなるにつれて陰影として視認されにくくなる。
【0015】
このように明度が異なる複数の表示領域を形成し、これらが立体図形を平面的に表すように配置し、しかも相隣る各表示領域間の明度差が陰影として表現され得るような位置関係で配置した道路標示は、平面状に各表示領域が配置されたものであるが、陰影を有する立体図形であるため、あたかも立体的に盛り上がった道路標示として視認され、視認性が向上する。
【0016】
図2は図1のA−A断面の概要を表す図であり、図3は図1の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図であり、図3は図1の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
1は基材である。
基材1は、可撓性を有するシート形状もしくはプレート形状に形成され、路面Gに載置されたときにその表面の凹凸にある程度追随して変形する程度の柔軟性を有している。
具体的には、本実施形態の基材1は弾性材料によって形成されており、道路標示シート上を車両などが踏み越えたときなどに、上面からかかった力によって変形しても、その後に元の形状に復元するように形成されている。基材1の材料としては、エラストマー等の合成樹脂やゴムなどの弾性材料を好適に用いることができ、本実施形態の基材1は、クロロプレンゴムを用いて形成している。
また、基材1の厚みは、2mm〜10mm程度が好ましく、厚みが2mm未満の場合は車両に踏みつけられたとき等に破損しやすくなされ、厚みが10mmを超えると、車両に踏みつけられたときの衝撃が大きくなり設置場所からの位置ずれ等の問題が生じやすくなる。
本実施形態の基材1は、縦長の五角形に形成され、その形状が前記の立体図形の外形と同一に形成されている。
【0017】
3a、3b、3cは標示シートである。
標示シート3a〜3cは可撓性を有するシート形状に個別に形成され、それぞれが前記各表示領域a〜cを構成するように配置されて基材1の上面に固定されている。
標示シート3a〜3cはシート片31a〜31cと、その裏面に設けられた粘着剤層32とを備えており、プライマー2を塗布した基材1の上面にそれぞれ貼り付けられて固定されている。
【0018】
前記各シート片31a〜31cは、シート組成物で形成されており、このシート組成物はエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下EVAと記載)とロジンとを配合した結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とを配合させて形成させている。シート片31a〜31cは、前記のシート組成物を加熱して溶融させ、均一に混合させた後にシート状に成形させている。
また、シート片31a〜31cは、それぞれ添加材に異なる着色材を配合させ、その色調を異ならせて前記各表示領域a〜cを構成可能に形成させている。
【0019】
EVAは各シート片31a〜31cに柔軟性、耐衝撃性、耐久性を付与するために使用されるものであるが、EVA中の酢酸ビニル含有量が15重量%未満になると柔軟性が低下し、40重量%を超えると耐熱性、耐摩耗性が低下するので、酢酸ビニル含有量は15重量%以上40重量%以下の範囲内にするのが好ましい。
【0020】
ロジンとしては天然のロジン、テルペン樹脂の他に、合成のロジン様化合物、例えば石油樹脂、クマロン樹脂、キシレンホルマリン樹脂、インデン樹脂等が同様に使用でき、さらにこのロジンに水素添加したもの、グリセリン、グリコール類等でエステル化したもの、ホルムアルデヒド、アミンもしくは不飽和酸例えばマレイン酸等で変性したものも好ましく使用できる。これらのロジンは一種に限らず、二種以上併用しても良い。尚、ロジンを多価アルコールとエステル化する際にマレイン酸を加えて同時に加熱反応させてなるロジン変性マレイン酸樹脂とテルペン樹脂は、他のロジンに比べてEVAに対して相溶性があり、しかも耐候性、耐熱性が良好で本シート片31a〜31cを用いた道路標示シートを路面に載置して使用した場合に脆化したり、変色したりしないので好ましい。
【0021】
本実施形態の各シート片31a〜31cのシート組成物の配合を説明すると、結合材として酢酸ビニル含有量が28重量%のEVA240重量部と天然ロジン100重量部とを配合し、ワックスとしてポリエチレンワックス11重量部とエチレンビスステアリン酸アマイド6重量部とを配合し、添加材として粒度の小さな炭酸カルシウム110重量部、粒度の大きな炭酸カルシウム330重量部、再帰反射性を有する反射材として機能させるガラスビーズ160重量部、着色材43.4重量部を配合し、前記の結合材、ワックス、添加材をそれぞれ全量配合させて、基材組成物1000.4重量部を作成した。
各シート片31a〜31cは、このシート組成物を130〜180℃に加熱して溶融させ、均一に混合させた後にシート上に成形させて冷却固化させて、それぞれ形成されている。
尚、上記の粒度の小さな炭酸カルシウムとは95重量%以上が325meshの標準ふるいを通過するように粒度が調整された炭酸カルシウムであり、粒度の大きな炭酸カルシウムとは95重量%以上が28meshの標準ふるいを通過し80meshの標準ふるい上に残るように粒度が調整された炭酸カルシウムである。(以下、上記の配合のシート組成物を用いて形成した各シート片を実施例1とする)
【0022】
本実施形態の各シート片31a〜31cは、そのシート組成物中にEVAが含有されることで良好な柔軟性が付与されており、路面上に本発明の道路標示シートを載置させたとき、路面の凹凸に基材1が追随して撓み変形した場合に、各シート片31a〜31cに割れや破断などが生じにくくなされる。また、道路標示シートを路面から回収する際に、これを巻き取る場合においても、割れや破断などが生じにくくなされる。
各シート片31a〜31cは、シート組成物中のEVAの含有量が20重量%を下回ると柔軟性が低下し破断などの可能性が大きくなるので、シート組成物中のEVA含有量が20重量%以上とするのが好ましく、24重量%以上とするのがより好ましい。
また、シート組成物中のEVA含有量が40重量%を上回ると各シート片31a〜31cの粘着性が大きくなり、表面への汚れの付着などの恐れが大きくなるので、40重量%以下にするのが好ましく、30重量%以下にするのがより好ましい。
【0023】
本実施形態の各標示シート3a〜3cにそれぞれ設けられた粘着剤層32は、感圧型粘着剤を付着させて層状に形成させてものである。
本実施形態の各標示シート3a〜3cは、あらかじめ合成ゴム系やウレタン系のプライマー2を塗布した基材1の上面へ貼着させた後、ローラープレスなどによって上下方向から押圧して圧着させて道路標示シートを形成させている。
粘着剤層32の形成に用いる感圧型粘着剤の材質は、各シート片31a〜31cを基材1へ圧着固定できればよく、例えばアクリル共重合樹脂や、ゴム系粘着剤等の公知の粘着剤を用いることができ、本実施形態ではゴム系粘着剤を用いて粘着剤層32を形成させている。
また、各標示シート3a〜3cの圧着方法はローラープレスに限るものではなく、基材1上面に貼着された各標示シート3a〜3cの上方からハンマーなどで叩いて圧着させてもよく、他の方法を用いても良い。
【0024】
本実施形態の各標示シート3a〜3cは、立体図形状を構成する各表示領域a〜cを構成するように配置されて基材1へ圧着固定されているが、図2に示すように、相隣る標示シートと縁が接する内縁Xにおいて、各標示シート3a〜3cはそれぞれ上下方向に重ならず、縁を突き合わせるように配置されている。
このように内縁Xを設けることで、路面に載置した道路標示シート上を車両などが踏みつける等して基材1が変形したときに、内縁Xにおいて隣接して配置された各標示シートの縁が離間してそれぞれ基材1の変形に追随して移動できるので、各標示シートへの負荷が軽減し、基材1の変形に伴う各標示シート3a〜3cの損傷を抑制できる。
図4は図2の道路標示シートに力がかかったときの変形状態の一例を示す断面図である。
【0025】
また、本実施形態の各標示シート3a〜3cは、この各標示シート3a〜3cにより形成される立体図形の外周縁の少なくとも一部をそれぞれ構成するようにそれぞれ形成され、配置されている。路面に載置した道路標示シート上を車両などが踏みつける等したとき、基材1は押しつぶされるようにして外側方向へ変形することが多いが、上記のように各標示シート3a〜3cを設けることで、各標示シート3a〜3cはそれぞれ外周縁F方向へ移動するようにして基材1の変形に追随することができるので、各標示シート3a〜3cへの負荷が軽減し、基材1の変形に伴う各標示シート3a〜3cの損傷を抑制できる。
【0026】
本実施形態の道路標示シートは、各標示シート3a〜3cによって、明度が3段階に異なる立体図形の各表示領域a〜cを構成するように設けられているが、これに限るものではなく、明度が2段階に異なる表示領域を構成するように設けてもよく、明度が4段階以上に異なる表示領域を構成するように設けてもよい。
【0027】
前記シート片の実施例と、シート形状のクロロプレンゴムにより形成された前記基材1との、湿潤状態での滑り抵抗値の測定を行った結果を説明する。
シート片の実施例1のサンプルは、前記の配合のシート組成物を前記の方法によりシート形状に成形して形成している。
シート片の実施例2のサンプルは、前記の配合のシート組成物にガラスビーズを混入させない点のみが実施例1と異なる事項である。
比較例1のサンプルは、基材1を材料であるクロロプレンゴムをシート形状に形成させたものである。
【0028】
湿潤状態での滑り抵抗値は、作成した前記各サンプルをそれぞれ平面な試験台上に貼着し、その上面を湿潤状態とさせた後、ポータブルスキッドテスター(英国道路交通研究所開発。WF Stanley社製)を用いて滑り抵抗値(BPN値)の測定を行ったものである。
【0029】
各サンプルの滑り抵抗値の測定の結果、実施例1が47BPN、実施例2が28BPN、比較例1が23BPNという測定値が得られた。
道路標示シートの上面に前記のシート片31a〜31cを配置させて形成させることで、ゴムを用いて形成させるよりも、湿潤状体において滑りにくく設けることができる。
また、実施例2のように、シート組成物にガラスビーズを含有させずに各シート片を形成させても、ゴムを用いて形成させるよりも、湿潤状体において滑りにくく設けることができる。
また、シート組成物中にガラスビーズを混入させることで、湿潤状態での滑り抵抗を良好にできると共に、照射された光を光源方向へ反射させる再帰反射性をシート片に備えさせることができるので、昼間のみならず夜間の道路標示シートの視認性を高めることができるので好ましい。
また、前記のシート組成物から形成させた各シート片によって各標示シートを形成させることで、前記シート組成物を130〜170℃程度の温度で溶融させてシート状に成形できるため、着色材やガラスビーズなどの添加材の配合を調整させて所望の色調のシート片を容易に形成できるので好ましい。
【0030】
図5は本発明に係る道路標示シートの実施の他の一形態を示す平面図であり、図6は図5の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
本実施形態の道路標示シートは、基材1を図1の実施形態より大きな長方形に形成させ、その上面に立体図形を描く表示領域a〜cの周囲を囲う枠形状の表示領域dを設け、この表示領域dを構成する標示シート3dを基材1の上面に固定させている点が図1に示す道路標示シートと異なる事項である。
【0031】
具体的には、本実施形態の道路標示シートの表示領域a、b、cは、前記の実施形態と同様に平面状に組み合わされて立体図形を描くように配置されて設けられており、前記各表示領域a〜cは図1に示す実施形態と同じ形状と色調に形成され、詳細には、図1〜4に示す標示シート3a〜3cを基材1の上面中央付近に固定させて形成されている。
前記枠部分を構成する表示領域dを構成する標示シート3dは、前記標示シート3a〜3cの固定されている範囲以外の基材1の上面を覆うような形状に形成され、他の標示シート3a〜3cと同様に、その下面に粘着剤層32を備え、プライマー2を塗布した基材1の上面に貼り付けられて固定されている。
尚、標示シート3dは、他の各標示シート3a〜3cとそれぞれ上下方向に重ならず、縁を突き合わせるように配置されている。
また、標示シート3dは、前記各標示シート3a〜3cと同様の配合のシート組成物から形成され、その着色材の配合によって茶色(マンセルによる明度は約3)の色調に形成されており、具体的には前記標示領域a〜cの中で最も明度の低い右斜面部分を構成する表示領域aの青色(マンセルによる明度は約5)よりも更にマンセル値で2程度低い色調に形成されている。
【0032】
本実施形態の道路標示シートは、表示領域a〜cが、これらより明度の低い色調に形成された表示領域dによって囲われるので、明度の低い暗い色調に形成されたアスファルト舗装等の路面や、明度の高い明るい色調に形成されたコンクリート舗装等の路面等、あらゆる色調の路面に道路標示シートを載置させても、表示領域dの中で表示領域a〜cが描く立体図形が立体的に視認されるようになされる。
【0033】
本実施形態の道路標示シートは、各表示領域a〜cにより立体図形を描くように形成されているが、これを構成する各標示シート3a〜3cの縁は、全て相隣る標示シートの縁と接している。このため、路面に載置した道路標示シート上を車両等が踏みつける等して基材1が変形したとき、各標示シート3a〜3cは、その縁が隣接する標示シートの縁に押圧されて、各標示シート3a〜3cによって形成される立体図形の外周縁方向への移動が抑制され、基材1の変形による各標示シート3a〜3cへの力の負荷が緩和されにくい。
【0034】
本実施形態の道路標示シートは、各表示領域a〜cを囲う枠形状の表示領域dを、各標示シート3a〜3cと同様のシート形状に形成された標示シート3dによって形成させているが、その方法はこれに限るものではない。例えば、基材1の少なくとも上面を前記標示シート3dに対応した色調に形成させ、基材1上面の各表示領域a〜cの外側部分には他の標示シートを固定させずに基材1の上面の色調によって表示領域dを構成させてもよい。このように道路標示シートを設けることで、各標示シート3a〜3cが、これらによって形成される立体図形の外周縁の少なくとも一部をそれぞれ構成するように設けられる。
このように設けることで、路面に載置した道路標示シート上を車両などが踏みつける等して基材1が押しつぶされるようにして外側方向へ変形したとき、各標示シート3a〜3cがそれぞれ外周縁F方向へ移動するようにして基材1の変形に追随することができるので、各標示シート3a〜3cへの負荷が軽減し、基材1の変形に伴う各標示シート3a〜3cの損傷を抑制できる。
【0035】
図7は本発明に係る道路標示シートの実施の他の一形態を示す平面図であり、図8は図7の道路標示シートを各部材に分解した状態を示す図である。
本実施形態の道路標示シートは、5つの表示領域e、f、g、h、iが平面状に組み合わされて立体図形を描くように配置されて設けられている。前記各表示領域e〜iは、明度が異なるように、それぞれ異なる色調に設けられており、相隣る表示領域の明度差が陰影として表現され得る位置関係で配置されている。
【0036】
本実施形態の道路標示シートは、左斜面部分を構成する表示領域gを白色(マンセルによる明度は約9)に形成し、前斜面部分を構成する表示領域fを黄色(マンセルによる明度は約7)に形成し、上面部分を構成する表示領域eを青色(マンセルによる明度は約5)に形成し、後斜面部分を構成する表示領域iを茶色(マンセルによる明度は約3)に形成し、右斜面部分を構成する表示領域hを黒色(マンセルによる明度は約1)に形成することで、四角状の立体図形を形成させている。従って各表示領域e〜iの明度は、白色が最も高く、黄色、青色、茶色、黒色の順に低くなることから、表示領域gの左斜面部分を最高にして、前斜面部分、上面部分、後斜面部分、右斜面部分の順に濃くなっているように視認されることから、丁度光線があたかも四角状に盛り上がった仮想立体の左前方上から照射し、前斜面部分、上面部分、後斜面部分、右斜面部分の順に暗くなっているように見えるようになされている。
【0037】
また、各表示領域e〜iは、前記の実施形態と同様に複数の標示シートが平面状に組み合わされて立体図形を描くように配置されて設けられており、前記各表示領域e、f、g、h、iはそれぞれ標示シート3e、3f、3g、3h、3iにより形成されている。
また、各標示シート3e〜3iは、前記の実施形態と同様にシート片と、その下面に設けられた粘着材層から形成されており、本実施形態の各標示シート3e〜3iのシート片は、前記の実施形態と同様の配合のシート組成物から形成され、含有する着色材の配合の調整によって前記の色調にそれぞれ形成されている。
そして、各標示シート3e〜3iは、相隣る標示シートとそれぞれ上下方向に重ならず、縁を突き合わせるように配置されて、長方形の薄板形状に形成されたクロロプレンゴムからなる基材1の上面を覆うようにそれぞれ固定されている。
【0038】
本実施形態の各標示シート3f〜3iは、各標示シートによって形成される立体図形の外周縁の一部をそれぞれ構成するように設けられており、路面に載置した道路標示シート上を車両などが踏みつける等して基材1が押しつぶされるようにして外側方向へ変形したとき、各標示シート3f〜3iはそれぞれ前記外周縁方向へ移動するようにして基材1の変形に追随することができるので、各標示シート3f〜3iへの負荷が軽減し、基材1の変形に伴う各標示シート3f〜3iの損傷を抑制できる。
本実施形態の標示シート3eは、その縁が全て相隣る標示シートの縁と接している。このため、上記のように基材1が変形したとき、標示シート3eは、その縁が隣接する標示シートの縁に押圧されて、各標示シートによって形成される立体図形の外周縁方向への移動が抑制され、基材1の変形による力の負荷が緩和されにくい。
【符号の説明】
【0039】
1 基材
2 プライマー
3a〜3i 標示シート
31a、31b、31c シート片
32 粘着剤層
G 路面
F 外周縁
X 内縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上に載置されて使用される道路標示シートであって、
可撓性を有する基材と、該基材の上面に設けられて道路標示を描く標示シートとを備え、
該標示シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとが配合された結合材に、ワックスと、少なくとも着色材と反射材とを含む添加材とが配合されたシート組成物が溶融されてシート状に成形されたものであることを特徴とする道路標示シート。
【請求項2】
前記標示シートは、複数の表示領域が平面状に組み合わされた立体図形を描くように形成され、前記各表示領域における明度の差によって、前記立体図形の陰影が表現されるようになされていることを特徴とする請求項1に記載の道路標示シート。
【請求項3】
前記標示シートは複数枚形成され、各標示シートがそれぞれ前記複数の表示領域を構成するように設けられており、
前記各標示シートは、隣接して配置された標示シート同士の上下方向の重なりがないように前記基材上に設けられると共に、
前記各標示シートが、該各標示シートにより形成される前記立体図形の外周縁の少なくとも一部をそれぞれ構成するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の道路標示シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112153(P2012−112153A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261039(P2010−261039)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】