説明

選択方法

本発明は形質転換された植物細胞を作製する方法に関する。より具体的には、本方法は、植物プラスチドを標的とし、選択遺伝子、例えば、イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)、及びトランスジーンを含む、形質転換カセットによる植物細胞の形質転換を含む。形質転換されたプラスチドの選択後、リコンビナーゼの発現を植物細胞中で誘導し、これにより、プラスチドからの選択遺伝子の切り出し及びプラスチド中でのトランスジーンの発現がもたらされる。本発明はまた、形質転換カセットを含む細胞及び植物体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形質転換された植物細胞を作製する方法に関する。より具体的には、本方法は、植物プラスチドを標的とし、選択遺伝子、例えば、イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)、及びトランスジーンを含む、形質転換カセットによる植物細胞の形質転換を伴う。形質転換されたプラスチドの選択後、リコンビナーゼの発現を植物細胞中で誘導し、これにより、プラスチドからの選択遺伝子の切り出し及びプラスチド中でのトランスジーンの発現がもたらされる。本発明はまた、形質転換カセットを含む細胞及び植物体を提供する。
【背景技術】
【0002】
農業における遺伝子組み換え(GM)食用作物の使用は、急速に増大しており、2005年には約14兆ポンドの世界市場を示している。しかしながら、科学者、政治家、規制当局及び一般大衆の間では、いわゆる「スーパーウィード(superweed)」を生み出す、GM作物から他の植物種への花粉によるトランスジーンの伝播のリスクに対する懸念の増大が存在している。
【0003】
今日の農業において使用されている全ての商業的GM作物は、所望の形質、例えば、病気、昆虫、過酷な環境条件に対する抵抗性、並びに、ビタミン含有量、風味、及び保存時間の増大等、を付与するトランスジーンを含む遺伝子操作された核ゲノムを含む。しかしながら、核のトランスジーンにはいくつかの深刻な問題が存在する。核のトランスジーンは、花粉によって広がり、通常は低レベルで発現され、サイレンシング(シャットダウン)されていることが多い。また、核のトランスジーンは、個別にのみ発現され得るので、生化学的経路を操作することが非常に困難である。核のトランスジーンに関連する問題の解決方法の一つは、植物のプラスチドゲノム中にトランスジーンを挿入することである。
【0004】
プラスチドは植物に固有の細胞小器官である。各植物細胞は、約100のプラスチドを含み、そのそれぞれが約100のゲノムを含む。このことは、実際には、ある遺伝子がプラスチドゲノム中に挿入された場合に、各植物細胞は、多くても2〜3コピーのその遺伝子を含み得る植物の核の形質転換と比較して、約10,000コピーのその遺伝子を含むことを意味する。
【0005】
プラスチド中でのトランスジーンの発現は、核における遺伝子発現と比較して多くの利点を有する:(i)トランスジーンが花粉によって広がらない;(ii)タンパク質が高レベルまで(細胞タンパク質全体の47%まで)発現される;(iii)プラスチドに含有されていることにより、タンパク質の「毒性」効果が低下している;(iv)複数遺伝子の同時発現が生化学的経路の操作を可能にする;及び、(v)遺伝子サイレンシングが除かれる。プラスチドの遺伝子操作は明確な原理を有し、又、環境リスクをほとんど伴わずに高レベルで、潜在的に任意のタンパク質を作製することができることから、実際に適用される用途を有し、これにより、食物ワクチン、生物医薬及び農業的価値を有する製品を製造する可能性が開ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、トランスジーンによって形質転換されるプラスチドを選択するために使用される、唯一信頼し得る選択システムは、スペクチノマイシン等の抗生物質の使用に基づく。かかる選択システムの欠点は、このシステムが、スペクチノマイシンに対して抵抗性を示す自然発生的なリボソーム変異体をも選択し得ることである。このことは、関与する時間的スケールを考えると、大きな問題である。
【0007】
本発明は、プラスチド中のある遺伝子、例えば、イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)遺伝子(サイトカイニン生合成)、の過剰発現に基づいた、プラスチド形質転換のための選択及び再生システムに基づく。このシステムは、プラスチド中のサイトカイニン産生に起因して、サイトカイニンを欠く培地上で、形質転換されたプラスチドを含む細胞を直接選択することを可能にする。したがって、このシステムは、自然発生的なスペクチノマイシン変異体が示す問題及びGMO中の抗生物質抵抗性遺伝子の使用に関する懸念を克服し得る、抗生物質を含まない選択及び再生システムを提供する。
【0008】
IPTは植物の核の形質転換における選択可能なマーカーとしてこれまでに使用されているが(例えば、欧州特許出願第1 069 855号)、プラスチドの形質転換におけるその使用はこれまでに示唆されていない。当業者であれば、プラスチドが、自身のゲノム及び代謝を有する、植物細胞内の半自律的細胞小器官であるという事実を認識するであろう。したがって、プラスチド選択遺伝子を選択する基準は、ゲノム選択遺伝子を選択するための基準とは異なる。
【0009】
成体植物の植物ホルモン生合成ポリペプチドの過剰な発現は正常でない発達をもたらすという事実から、植物ホルモン生合成遺伝子は選択後に除去され、初期再生が起こる。植物ホルモン生合成遺伝子の除去後には、対象となるトランスジーン(対象となるポリペプチドを発現する)のみが活性化されるので、選択及び再生時のトランスジーン発現による任意の有害事象も除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明は、形質転換された植物細胞の作製方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、この遺伝子構築物は、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
この形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
この切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び/又は、抗生物質に対する抵抗性を付与するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得る、
工程を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、工程:(ii)植物ホルモン生合成ポリペプチド又は抗生物質を欠く培地において形質転換された植物細胞を選択する工程、をさらに含む。
【0012】
その他の実施形態において、本発明は、工程:(iii)植物細胞中でリコンビナーゼを発現させる工程であって、このリコンビナーゼが、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識するものである工程、をさらに含む。
【0013】
本発明の方法は、形質転換及び再生し得る全ての植物に適している。植物は、単子葉植物であっても、又は双子葉植物であってもよい。
【0014】
好適な植物の例は、穀類(イネ、コムギ、オオムギ、オートムギ、ソルガム、トウモロコシ)、マメ科植物(アルファルファ、レンティル、ピーナッツ、エンドウ、ダイズ)、油糧作物(ヤシ、ヒマワリ、ココナッツ、カノーラ、オリーブ)、市場用作物(綿、サトウキビ、キャッサバ)、野菜作物(ジャガイモ、トマト、ニンジン、サツマイモ、テンサイ、カボチャ、キュウリ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、サヤインゲン、キャベツ、セロリ、タマネギ、ニンニク)、果実類/樹木及びナッツ類(バナナ、ブドウ、メロン、マスクメロン、スイカ、イチゴ、オレンジ、リンゴ、マンゴー、アボカド、モモ、グレープフルーツ、パイナップル、メープル、アーモンド)、飲料用作物(コーヒー、茶、カカオ)、及び材木用樹木(オーク、クログルミ、スズカケノキ)である。好ましくは、植物は、タバコ又はレタスである。
【0015】
形質転換される植物細胞は、例えば、個々の細胞、解離した形態若しくは解離していない形態の細胞群、又は植物組織の部分又は植物の部分等の任意の便利な形態で使用し得る。無傷の植物から除去した葉の中に存在する細胞が好ましい。活発に生長している葉を使用するのが好ましい。
【0016】
用語「プラスチド」は、真核植物の細胞質中に見られ、DNAを含み、二重膜により境界されており、一般的タイプ、すなわち、プロプラスチドから発生する、全ての細胞小器官を網羅することが意図される。プラスチドは、色素及び/又は貯蔵物質を含有し得る。
【0017】
プラスチドの例としては、葉緑体、白色体、アミロプラスト、エチオプラスト、クロモプラスト、エライオプラスト及びジェロントプラストが挙げられる。
【0018】
好ましくは、プラスチドは、緑色プラスチドであり、最も好ましくは、葉緑体である。
【0019】
本明細書において使用する場合、用語「遺伝子構築物」とは、特定のエレメント及びカセットを含む核酸分子のことをいう。遺伝子構築物は、例えば、ベクター又はプラスミドの形態であってもよい。遺伝子構築物はまた、その操作及び再生を可能にする他のエレメント、例えば、複製開始点、選択エレメント、及び多重クローニング部位を含んでもよい。一般的に、遺伝子構築物は、二本鎖核酸分子、好ましくはdsDNA分子であり得る。
【0020】
第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であるものである。
【0021】
植物細胞中への遺伝子構築物による形質転換の際、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、選択されたプラスチド又はプラスチドのゲノム中の対応する配列と再結合し、選択されたプラスチド又はプラスチドのゲノム中への形質転換カセットの挿入を生じる。
【0022】
相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列は、形質転換カセットが、1つ又はそれ以上の選択されたプラスチドを特異的に標的とするように、選択される。特に、相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列は、植物の核ゲノム中に形質転換カセットが組み込まれない又は実質的に組み込まれないように、選択される。このことは、植物の核ゲノム中に存在する配列を避けることにより行ってもよい。当業者であれば、標準的手段により、例えば、標識した配列プローブによる核ゲノムのサザンブロッティングにより、又は配列分析により、特定の配列が核ゲノム中に存在するかしないかを容易に検出し得るであろう。
【0023】
上記とは別に、選択された挿入部位が細胞にとって致死的でない、すなわち、それにより細胞死がもたらされないかぎり、プラスチドゲノムから任意の配列を用いることができる。好ましくは、挿入部位は、プラスチド遺伝子のコード領域に存在しない。
【0024】
効率的な相同組み換えを可能とするために、第1及び第2の相同組み換えエレメントの配列の方向は、プラスチドゲノム中における方向と同じである必要がある。
【0025】
形質転換カセットをプラスチドゲノムに対して標的とさせるために、第1及び第2の相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列は、選択された植物プラスチドのゲノム中における配列と同じ又は実質的に同じである必要がある。
【0026】
本発明との関連において、用語「実質的に同一である」とは、第1及び第2の相同組み換え配列のヌクレオチド配列が、独立して、形質転換されるプラスチド中に存在する配列と、95%よりも高く、好ましくは98%よりも高く又は99%よりも高く、特に好ましくは100%同じであることを意味する。パーセント配列同一性は、初期パラメーター、例えば、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5を用いて、クラスターアラインメント法を使用して決定することができる。
【0027】
同様に、第1及び第2の相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列は、好ましくは、選択された植物の核ゲノム中の配列と同じ又は実質的に同じである必要はない。このことに関して、用語「実質的に同一である」とは、第1及び第2の相同組み換え配列のヌクレオチド配列が、独立して、形質転換される植物の核ゲノム中に存在する配列と、50%未満、より好ましくは70%未満又は90%未満同じであることを意味する。パーセント配列同一性は、初期パラメーター、例えば、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5を用いて、クラスターアラインメント法を使用して決定することができる。
【0028】
好ましくは、第1及び第2の相同組み換え配列の長さは、独立して、それぞれ50〜1500ヌクレオチド、好ましくは約150、約1000又は約1200ヌクレオチドの長さであり得る。
【0029】
プラスチドゲノム中の第1及び第2の相同組み換え配列間の距離は、0〜4000ヌクレオチド又はそれ以上であり得る。好ましくは、この距離は、約1〜100、100〜500、500〜1000又は1000〜3000ヌクレオチドである。
【0030】
第1及び第2の相同組み換え間に含まれる遺伝子エレメント(すなわち、遺伝子エレメント(a)〜(d))の全長は、好ましくは、4000ヌクレオチド未満である。
【0031】
好ましくは、第1の相同組み換え配列は、タバコ(Nicotiana tabacum)(寄託番号Z00044)葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド104091−105380であり;及び/又は、第2の相同組み換え配列は、タバコ(Nicotiana tabacum)(寄託番号Z00044)葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド105381−106370である。
【0032】
さらに他の実施形態において、第1の相同組み換え配列は、好ましくは、タバコ(Nicotiana tabacum)(寄託番号Z00044)葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド102925−101857であり;及び/又は、第2の相同組み換え配列は、タバコ(Nicotiana tabacum)(寄託番号Z00044)葉緑体ゲノムDNAのヌクレオチド100933−100130である。
【0033】
形質転換カセットプロモーター(a)は、選択された植物プラスチド中で機能し得るものである必要がある。プロモーターは、切り出しカセットが切り出されるとトランスジーンの転写を開始し得るものであり;切り出しカセットが自身のプロモーターを含まない場合に、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の転写を開始し得るものである。プロモーターは、例えば、植物又は細菌の遺伝子に由来するものであり得る。好ましくは、プロモーターは植物特異的である。
【0034】
好適なプロモーターの例としては、PsbA、RbcL及びPrrnプロモーターが挙げられる。
【0035】
好ましくは、プロモーターは、Prrnプロモーターである(例えば、プラスチドのリボソームRNA(rrn)のオペロンプロモーター(nt 59034〜59303、寄託番号Z00044 タバコ(Nicotiana tabacum)葉緑体ゲノムDNA)。
【0036】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。このことにより、選択遺伝子の誘導可能な、制御された発現が可能となる。例えば、誘導性プロモーターは、IPTGによって誘導可能であり得る(例えば、PrrnLプロモーター)。
【0037】
あるいは、プロモーターは、高発現レベルプロモーターである。
【0038】
切り出しカセットは、第1の部位特異的組み換えエレメント;任意に、第2のプロモーター;植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;ターミネーター配列;及び、第2の部位特異的組み換えエレメントを含む。
【0039】
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、リコンビナーゼによって産生される部位特異的リコンビナーゼにより認識及び/又は結合され得るヌクレオチドの配列である。部位特異的組み換えエレメントは、切り出しカセット中の遺伝子エレメント、例えば、エレメント(b2)(使用する場合には)、(b3)、(b4)、任意のその他の所望のエレメントと隣接する必要がある。第1及び第2の組み換えエレメントの配列は、互いに同じ又は実質的に同じであり得;又、互いを比較して、同方向であり得る(例えば、両方とも5’−3’又は両方とも3’−5’)。
【0040】
リコンビナーゼがCreである場合、部位特異的組み換え配列は、好ましくは、lox配列である。部位特異的lox組み換え部位は、34bpの配列であり;これらは、Creリコンビナーゼポリペプチドの結合部位として機能する。野生型lox配列が好ましい(Zuo J,Niu QW,Moeller SG,Chua NH(2001)Chemical−regulated,site−specific DNA excision in transgenic animals.Nat.Biotechnol.19,157−161)。
【0041】
切り出しカセットプロモーターは、存在する場合、選択された植物プラスチド中で機能し得るものである必要がある。プロモーターは、植物ホルモン生合成遺伝子の転写を開始し得るものである。プロモーターは、植物又は細菌の遺伝子に由来するものであり得る。好ましくは、プロモーターは植物特異的である。好適なプロモーターの例としては、PsbA、RbcL及びPrrnプロモーターが挙げられる。好ましくは、プロモーターは、Prrnプロモーターである(例えば、プラスチドのリボソームRNA(rrn)のオペロンプロモーター(nt 59034〜59303、寄託番号Z00044 タバコ(Nicotiana tabacum)葉緑体ゲノムDNA)。
【0042】
植物ホルモン生合成ポリペプチドは、選択マーカーとして機能し、これにより、形質転換カセットによって形質転換される植物細胞の選択が可能となる。植物ホルモン生合成ポリペプチドは、植物サイトカイニン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の合成に関与するか、又は、植物サイトカイニン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の産生若しくは代謝を調節するポリペプチドであってもよい。
【0043】
好ましくは、植物ホルモン生合成ポリペプチドは、サイトカイニン生合成に関与する酵素であるIPT(イソペンテニルトランスフェラーゼ)である。IPTヌクレオチド配列は、任意の好適な供給源に由来してもよい。核遺伝子は葉緑体中においては最大レベルまで発現され得ないことから、コドン使用頻度を理由に、細菌のIPT遺伝子が好ましい。
【0044】
好ましくは、IPTヌクレオチド配列は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来である。
【0045】
切り出しカセットターミネーターは、切り出しカセットの切り出し前の、トランスジーンの未成熟な発現を防ぐ。形質転換される植物細胞中において認識されるのであれば、このために、任意のターミネーターを使用することができる。ターミネーターは、特に、植物性のターミネーター又は細菌性のターミネーターであり得る。
【0046】
好適なターミネーターの例としては、rrn、psbA、rbcL及びT7のターミネーターが挙げられる。
【0047】
好ましいターミネーターは、TrbcLターミネーターである(例えば、リブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt 102539〜102685、寄託番号Z00044 タバコ(Nicotiana tabacum)葉緑体ゲノムDNA)。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、切り出しカセット中において使用されるプロモーター及びターミネーターは、同じプラスチド遺伝子に由来しない。本発明との関連において、用語「トランスジーン」(すなわち、エレメント(c))は、プラスチドのゲノム中に導入される核酸分子のことをいうために使用される。トランスジーンは、例えば、ペプチド又はポリペプチドをコードする、ゲノムDNA、cDNA又は合成核酸分子;mRNA、tRNA又はリボザイムをコードする核酸分子;或いは、任意のその他の核酸分子であり得る。
【0049】
トランスジーンの例としては、抗体、抗生物質、除草剤、ワクチン抗原、酵素、酵素阻害剤及びデザインペプチドをコードするものが挙げられる。
【0050】
単一又は多重抗原を、ウイルス、細菌、真菌又はその他の病原体から作製し得る。抗原は、単一ユニットとして、又は、例えば、広域スペクトルのワクチン開発のために、複数の抗原の多重ユニットとして発現させてもよい。
【0051】
酵素は、化粧品における使用のために製造してもよい(例えば、スーパーオキシド・ジスムターゼ、ペルオキシダーゼ等)。酵素はまた、洗剤組成物における使用のために製造してもよい。
【0052】
本発明は、特に、特定の活性を有するタンパク質/酵素、例えば、免疫反応を促進するための免疫刺激物質(例えば、インターフェロン);及び、成長因子(例えば、形質転換成長因子−β(TGF−β))、骨形成タンパク質(BMP)、神経栄養因子(NGF、BDNF、NT3)、線維芽細胞成長因子(FGF)、タンパク分解酵素(パパイン、ブロメライン)、及び食品補助酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)の産生に関する。
【0053】
本発明はまた、生物的及び非生物的ストレス、例えば、塩類及び金属に対して、植物をより抵抗させる、プラスチド中のタンパク質/酵素の産生又は過剰発現に関する。この例としては、将来の植え付けのために農業的に重要な地域において、過剰な金属を取り除くための、鉄(Fe)とキレートを形成するトランスプラストミック(transplastomic)植物の作出が挙げられる。
【0054】
本発明はさらに、プラスチド中での脂肪酸生合成を改変するポリペプチドをコードするトランスジーンの使用に関する。
【0055】
1つ又はそれ以上のトランスジーンを形質転換カセット中に挿入してもよい。好ましくは、トランスジーン配列は連続的である。
【0056】
トランスジーン配列はさらに、対象となるポリペプチドと融合したタンパク質精製タグをコードしてもよい。タンパク質精製タグの例としては、N−末端インフルエンザ血球凝集素−HA−エピトープ(HA)及び6ヒスチジンアミノ酸(HIS6)の配列が挙げられる。
【0057】
一旦、切り出しカセットが切り出されたら、第1のプロモーターは、トランスジーンの発現を促進することができ、これにより、プラスチド中でのトランスジーン産物の蓄積をもたらし得る。トランスジーン産物は、任意の適当な手段により、植物細胞から精製又は単離することができる。
【0058】
形質転換カセットターミネーター(遺伝子エレメント(d))は、トランスジーンの発現を停止させる。形質転換される植物細胞中で認識されるのであれば、このために任意のターミネーターを使用することができる。ターミネーターは、特に、植物のターミネーターであっても、又は細菌のターミネーターであってもよい。
【0059】
好適なターミネーターの例としては、TrbcL又はTspbA ポリA付加配列が挙げられる。
【0060】
好ましいターミネーターは、psbA ポリA付加配列である。
【0061】
形質転換カセットにおいて、エレメントは、好ましくは、(a)、(b)、(c)、(d)の順番で、機能し得るように連結されている。
【0062】
切り出しカセットにおいて、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、任意のプロモーター(存在する場合)、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及びターミネーターエレメントに隣接する必要がある。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及びターミネーターエレメントは、形質転換カセットのプロモーターに対して下流(すなわち、3’側)であり得、そして、このプロモーターは、植物ホルモン生合成ポリペプチドの発現を促進し得る。
【0064】
このように、本発明のいくつかの実施形態において、形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)以下を含む、切り出しカセット:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
ここで、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、リコンビナーゼにより認識され得る;
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を、5’−3’方向で上記において特定した順番で機能し得るように連結して含む。
【0065】
本発明のこの実施形態において、第1のプロモーターは、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、図3〜4に示されるようなもの)の発現を促進し得る。切り出しカセットの除去後、第1のプロモーターは、トランスジーンの発現を促進する。
【0066】
本発明の他の実施形態において、切り出しカセットは、第1のプロモーター、トランスジーン及び第1のターミネーターエレメントの順番に対して逆方向で存在し得る。この実施形態において、切り出しカセットの発現される部分は、第1のプロモーター、トランスジーン及び第1のターミネーターエレメントをコードするヌクレオチド鎖と相補的であり、逆方向である、ヌクレオチド鎖中に存在し得る。
【0067】
かかる実施形態において、切り出しカセットは、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を促進し得る第2のプロモーターを含み得る。
【0068】
本発明のこの実施形態において、形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、ここで(a)、(b)、(c)及び(d)は、5’−3’方向で上記において特定した順番で機能し得るように連結しており、
切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、ここで、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、リコンビナーゼにより認識され得;かつ、
切り出しカセットの部分は機能し得るように連結しており、切り出しカセットは、(a)、(c)及び(d)に対して逆方向である。
【0069】
この実施形態において、第2のプロモーターは、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、図5〜6に示されるようなもの)の発現を促進する。切り出しカセットの除去後、第1のプロモーターは、トランスジーンの発現を促進する。
【0070】
形質転換カセットは、本明細書において特定された部分(a)〜(d)に限定されない。形質転換カセットは、トランスジーンの発現レベルを増大させるために、例えば、5’−UTRをさらに含んでもよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態において、形質転換カセットは、第2の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、抗生物質抵抗性遺伝子、好ましくは、スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(例えば、aadA遺伝子)をさらに含む。このポリペプチドは、抗生物質スペクチノマイシンに対する抵抗性を付与する。スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、形質転換カセット中のプロモーターのうちの一つの下流に配置され得る。この配列は、例えば、第1のプロモーターの下流に配置して、機能し得るように連結してもよく;又は、植物ホルモン生合成ポリペプチド(例えば、IPT)をコードするヌクレオチド配列の下流に配置して、機能し得るように連結してもよく;又は、植物ホルモン生合成ポリペプチド(例えば、IPT)をコードするヌクレオチド配列の上流に配置して、機能し得るように連結してもよい。
【0072】
さらに他の実施形態において、形質転換カセットは、第2の選択可能なマーカー遺伝子を含まず、且つ/又は、抗生物質に対する抵抗性を付与するヌクレオチド配列を含まない。
【0073】
いくつかの実施形態において、形質転換カセットは、さらにカセット挿入部位を監視するために、好ましくは、適当なプロモーター(例えば、T7又はTt7)の制御下で、LacI遺伝子をさらに含む。
【0074】
形質転換カセットのプラスチドへの送達の成功後、植物ホルモンサイトカイニンを欠く培地上で、形質転換された細胞を選択する。通常、サイトカイニン及びオーキシンを添加することにより、植物は再生される。形質転換されたプラスチドは、IPT及びしたがってサイトカイニンを産生し得るので、オーキシンのみ存在する条件のもと、植物を選択し、再生させることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態において、この方法は、工程:(iii)植物細胞中でリコンビナーゼを発現させる工程であって、リコンビナーゼが、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識するものである工程、をさらに含む。
【0076】
リコンビナーゼは、部位特異的リコンビナーゼである。部位特異的リコンビナーゼは、部位特異的組み換えエレメントと結合し、かつ、部位特異的組み換えエレメントの近くの核酸分子において交差イベントを誘導し得るポリペプチドである。本発明において、リコンビナーゼの発現は、プラスチドゲノムからの切り出しカセットの切り出しを生じる。
【0077】
本発明との関連において、リコンビナーゼは、切り出しカセット中に存在する第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントと結合することができ、標準的な様式で切り出しカセットの切り出しを生じ得るものである。
【0078】
部位特異的組み換えエレメント/部位特異的リコンビナーゼの例としては、Cre−lox、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisae)由来のFLP−FRPシステム(O’Gorman S,Fox DT,Wahl GM.(1991)、哺乳動物細胞における、リコンビナーゼが媒介する遺伝子の活性化及び部位特異的組み込み、Science.25,1351−1555)、バクテリオファージMu由来のGIN/gixシステム(Maeser S and Kahmann R.(1991)、ファージMu由来のGinリコンビナーゼは、植物プロトプラストにおいて、部位特異的組み換えに対する触媒作用を及ぼすことができる、Mol Gen Genet.230,170−176)、又は、ジゴサッカロミセス・ロキシィ(Zygosaccharomyces rouxii)由来のR/RSシステム(Onouchi H,Yokoi K,Machida C,Matsuzaki H,Oshima Y,Matsuoka K,Nakamura K,Machida Y.(1991)、タバコ細胞中における、ジゴサッカロミセス・ロキシィの効率的な部位特異的組み換えの実施、Nucleic Acids Res.19,6373−6378.)が挙げられる。
【0079】
リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを、好ましくは、植物特異的イントロンを含んでもよい。かかるイントロンの存在は、原核生物、例えば、細菌におけるリコンビナーゼポリペプチドの発現を抑制し得る。
【0080】
好ましい組み換え部位は、リコンビナーゼCreと組み合わせてloxである。好ましくは、使用されるリコンビナーゼ配列は、CreポリペプチドをコードするcDNA配列である。
【0081】
好ましくは、リコンビナーゼによって、プラスチドゲノムから、全ての又は実質的に全ての切り出しカセットが切り出される。しかしながら、当業者であれば、1つ又はそれ以上の組み換えエレメントの配列のうちのいくつか又は全てがプラスチドゲノム中に残り得ることを理解するであろう。
【0082】
リコンビナーゼは、任意の好適な手段により、細胞中で発現され得る。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、植物細胞は、核ゲノム中に組み込まれる発現可能な構築物をすでに含むものであり、この場合、発現可能な構築物は、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列(機能し得るように連結しており、すなわち、インフレームである)を含む。発現可能な構築物は、例えば、相同組み換えにより、核ゲノム中に導入されている。そのような場合、リコンビナーゼは、誘導性プロモーターの制御下にある必要がある。かかる誘導性プロモーターは、構築物と共に導入してもよいし、又は、内因性の誘導性プロモーターの隣に組み込ませてもよい。
【0084】
リコンビナーゼをコードする、核に位置する配列を含む植物は、交配させることにより所望の群から選び出すことができ、この場合、この配列は、この形質の分離により、失われているかもしれない。
【0085】
本発明の他の実施形態において、植物細胞は、所望のプラスチドゲノム中に組み込まれる発現可能な構築物をすでに含むものであり、この場合、発現可能な構築物は、リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。発現可能な構築物は、例えば、相同組み換えにより、プラスチドゲノム中に導入されている。そのような場合、リコンビナーゼは、誘導性プロモーターの制御下にある必要がある。かかる誘導性プロモーターは、構築物と共に導入してもよいし、又は、内因性の誘導性プロモーターの隣に組み込ませてもよい。
【0086】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、工程(iii)は、以下の工程:
(iii)植物細胞中に存在するリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結した誘導性プロモーターから、植物細胞中でリコンビナーゼの発現を誘導する工程であって、リコンビナーゼが、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識するものである工程、を含む。
【0087】
好ましくは、リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結した誘導性プロモーターは、植物細胞の核ゲノム中に存在する。
【0088】
その他の好ましい実施形態において、リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結した誘導性プロモーターは、植物細胞のプラスチドゲノム中に存在する。
【0089】
本発明のさらに他の実施形態において、植物細胞は、工程(i)の前、工程(i)と同時、又は工程(i)の後;又は工程(ii)の前、工程(ii)と同時、又は工程(ii)の後のいずれかにおいて、リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結したプロモーターを含むリコンビナーゼベクターにより植物細胞を形質転換する。
【0090】
リコンビナーゼベクターは、下流にあるリコンビナーゼの発現を促進し得るプロモーターエレメントを含む核酸ベクターである。ベクターは好ましくは、リコンビナーゼが、プラスチド中でのみ若しくは実質的にプラスチド中でのみ発現されるか、又は、プラスチドを特異的に若しくは実質的に特異的に標的とするように、設計される。
【0091】
リコンビナーゼベクター中のプロモーターは、形質転換される植物細胞中で機能し得るものである必要がある。プロモーターは、例えば、植物又は細菌の遺伝子に由来するものであり得る。好ましくは、プロモーターは植物特異的又はプラスチド特異的である。最も好ましくは、プロモーターはXVE等の誘導性プロモーターである(Zuo J,Niu QW,Chua NH.(2000)Technical advance:エストロゲン受容体に基づくトランスアクチベーターXVEは、トランスジェニック植物において誘導性遺伝子発現を高度に媒介する.Plant J. 24, 265−273.)。
【0092】
本発明との関連において、用語「植物特異的」とは、植物に特異的であること又は実質的に植物に特異的であることを意味する。同様に、「プラスチド特異的」とは、プラスチドに対して特異的であること又は実質的に特異的であることを意味する。
【0093】
プロモーターは誘導性プロモーターであっても誘導性プロモーターでなくてもよい。選択(工程(ii))の前又は間に、リコンビナーゼベクターが植物細胞に導入される場合、プロモーターは誘導性であることが好ましい。植物中で機能し得る誘導性プロモーターの例としては、光誘導性プロモーター、金属誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター及びその他の環境誘導性プロモーターが挙げられる。
【0094】
好ましくは、プロモーターは、誘導性プロモーターであり、例えば、XVEプロモーター(Zuo J,Niu QW,Chua NH.(2000) Technical advance:エストロゲン受容体に基づくトランスアクチベーターXVEは、トランスジェニック植物において誘導性遺伝子発現を高度に媒介する.Plant J.24,265−273.)又はlacプロモーターである。
【0095】
本発明の一実施形態において、リコンビナーゼベクターは、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結したプロモーターを含む。

【0096】
発現すると、リコンビナーゼポリペプチドと機能し得るように連結したプラスチドを標的とする輸送ペプチドを含むポリペプチド産物が産生される。この実施形態において、プロモーターはプラスチド特異的であってもプラスチド特異的でなくてもよい。
【0097】
本発明との関連において、用語「プラスチドを標的とする輸送ペプチド」とは、リコンビナーゼポリペプチドがプラスチドを特異的な様式又は実質的に特異的な様式で標的とし得るペプチド配列を意味する。発現すると、リコンビナーゼポリペプチドが産生され、プラスチドを標的とする輸送ペプチドによってプラスチド中に特異的に輸送される。
【0098】
プラスチドを標的とする輸送ペプチドの例としては、プラスチド標的タンパク質由来のプラスチドを標的とする輸送ペプチドが挙げられる。
【0099】
好ましくは、プラスチドを標的とする輸送ペプチドは、リコンビナーゼポリペプチドが葉緑体を標的とし得るものである。
【0100】
最も好ましくは、プラスチドを標的とする輸送ペプチドは、ストローマプラスチド標的タンパク質由来のプラスチドを標的とする輸送ペプチドである。
【0101】
プラスチドを標的とする輸送ペプチドの具体的な例としては、以下のもの:AtABC1からの輸送ペプチド(Simon Geir Moeller,Tim Kunkel and Nam−Hai Chua.(2001)“A plastidic ABC protein involved in intercompartmental communication of light signaling”,Genes and Dev.15,90−103.);AtMinE1からの輸送ペプチド(Jodi Maple,Nam−Hai Chua and Simon Geir Moeller(2002)“The topological specificity factor AtMinE1 is required for correct plastid division site placement in Arabidopsis”,Plant J. 31,269−277);及び巨大葉緑体1からの輸送ペプチド(Jodi Maple,Makoto T.Fujiwara,Nobutaka Kitahata,Tracey Lawson,Neil Baker,Shigeo Yoshida and Simon Geir Moeller(2004)”GIANT CHLOROPLAST 1 is essential for correct plastid division in Arabidopsis”.Current Biology.14,776−781))が挙げられる。
【0102】
最も好ましくは、リコンビナーゼベクターは、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びCREリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結したXVEプロモーターを含む。
【0103】
リコンビナーゼベクターはまた、形質転換された細胞の選択を可能とするために、その他のエレメント、例えば、nptII遺伝子(カナマイシン抵抗性)を含んでもよい。
【0104】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、工程(iii)は、以下の工程:
(iii)プロモーター、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むリコンビナーゼベクターによって植物細胞を形質転換する工程であって、リコンビナーゼが、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識するものである工程、を含む。
【0105】
特に好ましくは、本発明の工程(iii)は、以下の工程:
(iii)プロモーター、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むリコンビナーゼベクターによって植物細胞を形質転換する工程であって、プロモーターが、植物細胞中で、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列の発現を促進することができ、植物細胞中で発現した際、リコンビナーゼポリペプチドが輸送ペプチドによりプラスチドを標的とする工程、を含む。
【0106】
より好ましくは、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0107】
当業者であれば、核酸ベクターを用いて植物細胞を形質転換する多数の方法を知っているであろう。これらの方法としては、プロトプラスト中への直接的DNA取り込み、プロトプラストへのPEGによる取り込み、微粒子ボンバードメントエレクトロポレーション、DNAのマイクロインジェクション、組織外植片又は細胞への微粒子ボンバードメント、植物組織への真空浸入、及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)によるT−DNAが媒介する植物組織の形質転換等が挙げられる。
【0108】
選択されたプラスチドを含む植物細胞の形質転換のために、任意の上記の適当な方法を使用することができる。
【0109】
遺伝子構築物がプラスチドを標的とするためには、微粒子銃形質転換が好ましい。この方法は、核酸ベクターによって被覆された金粒子(微小発射体)の植物組織のプラスチド中への発射、次いで、形質転換されたプラスチドの選択及び植物の再生を含む。好ましくは、植物組織は植物の葉であるが、イネの形質転換に関しては、カルスを使用することもできる。
【0110】
本発明の方法は、好ましくは、植物細胞中において、リコンビナーゼの発現を誘導するさらなる工程も含む。
【0111】
この工程は、リコンビナーゼベクター/発現可能な構築物及び形質転換カセットの両方が植物細胞中に現れた後に行われる。好ましくは、この工程は、植物ホルモンサイトカイニンを欠く培地上における植物細胞の選択後に行われる。
【0112】
リコンビナーゼの発現は、リコンビナーゼベクター中に存在するプロモーター若しくは内因性のプロモーター又は発現可能な構築物の活性化をもたらす誘導物質を適用することにより、誘導してもよい。リコンビナーゼポリペプチドが発現されると、次に、それは、切り出しカセット中の第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントと結合し、それにより、カセットの切り出しが生じる。(当業者には理解されるように、部位特異的組み換えエレメントのうちの一つ及びいくつかの隣接する配列は、プラスチドゲノム中に残っていてもよい)。
【0113】
一旦、植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列がプラスチドゲノムから除去されたならば、次に、形質転換カセット中に存在するプロモーターは、下流にあるトランスジーンの発現を指示することができ、それにより、対象のポリペプチドが産生される。
【0114】
一般的に、植物は、サイトカイニン(シュート形成)及びオーキシン(根形成)の存在下で、再生される。IPT遺伝子(サイトカイニンを産生する)を含む植物を再生する場合、適当な細胞/組織(例えば、葉片)を、オーキシンのみ(根再生のため)を含む培地上に置くが、IPT遺伝子が存在することからシュート再生は起こる。
【0115】
本発明はまた、トランスジーン産物の製造方法を提供し、この方法は、本明細書において上記された、形質転換された植物細胞の作製方法を含み、プラスチドからのトランスジーン産物の精製工程をさらに含む。
【0116】
本発明の特に好ましい実施形態は、形質転換された植物細胞の作製方法を含み、この方法は、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、この遺伝子構築物が、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはlox部位であり、リコンビナーゼはCreである工程、を含む。
【0117】
本発明のさらに特に好ましい実施形態は、形質転換された植物細胞の作製方法を含み、この方法は、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、この遺伝子構築物が、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)ポリペプチドがIPTである植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントがリコンビナーゼにより認識され得る工程、を含む。
【0118】
本発明のさらに特に好ましい実施形態は、形質転換された植物細胞の作製方法を含み、この方法は、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、この遺伝子構築物が、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)ポリペプチドがIPTである植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはlox部位であり、リコンビナーゼはCreである工程、を含む。
【0119】
本発明のさらに特に好ましい実施形態は、形質転換された植物細胞の作製方法を含み、この方法は、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、この遺伝子構築物が、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
形質転換カセットは、以下:
(a)当該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)ポリペプチドがIPTである植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはlox部位であり、リコンビナーゼはCreである工程、
(ii)IPTを欠く培地において形質転換植物細胞を選択する工程、及び
(iii)プラスチドゲノムから切り出しカセットの切り出しをもたらすレベルで、植物細胞中でCreリコンビナーゼを発現させる工程、を含む。
【0120】
本発明はまた、本明細書において規定される形質転換カセット、及び本明細書において規定されるリコンビナーゼベクターを提供する。
【0121】
本発明はさらに、本発明の形質転換カセットを含む植物細胞、本発明のリコンビナーゼベクターを含む植物細胞、並びに、本発明の形質転換カセット及びリコンビナーゼベクターを含む植物細胞を提供する。
【0122】
本発明はさらに、本発明の形質転換カセットを含むトランスジェニック植物、本発明のリコンビナーゼベクターを含むトランスジェニック植物、並びに、本発明の形質転換カセット及びリコンビナーゼベクターを含むトランスジェニック植物を提供する。
【0123】
本発明はさらに、本発明の形質転換カセットを含む植物種子、本発明のリコンビナーゼベクターを含む植物種子、並びに、本発明の形質転換カセット及びリコンビナーゼベクターを含む植物種子を提供する。
【0124】
本発明はさらに、本発明の形質転換カセットを含む植物プラスチド、本発明のリコンビナーゼベクターを含む植物プラスチド、並びに、本発明の形質転換カセット及びリコンビナーゼベクターを含む植物プラスチドを提供する。
【0125】
さらに、本発明は、本発明の方法を用いて得ることができる又は得られた植物細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】IPT遺伝子の切除及びYFP遺伝子の活性化の全体的な原理を示す概略図である。再生後のCREにより介在されるIPT切除を可能にする2つのlox部位に挟まれた、IPT遺伝子を含むpPTI001−YFP部位。IPT遺伝子の除去が同時にトランスジーン(YFP)の活性化をもたらす。
【0127】
【図2】CREがpPTI001−YFP中のIPTカセットの切除を引き起こすことを示す図である。pPTI001−YFPベクターを含むE. coli DH5α細胞の明視野(A)及び蛍光(B)画像。pPTI001−YFP及びpER10−TP.CREベクター(図1)の両方を含むE. coli DH5α細胞の明視野(C)及び蛍光(D)イメージ。CREにより引き起こされるpPTI001−YFPにおけるIPTカセットの切除は、PrrnプロモーターからのYFPの構成的発現をもたらす(E)。TrbcL及びTpsbAターミネーターを橋渡しするプライマーを用いた、pPTI001−YFPベクター中の、CREにより引き起こされるIPTカセットの切除の、PCRによる確認(図3)。M:分子量マーカー。
【0128】
【図3】(A) pPTI001及び(B)pPTI001−YFPベクターの概略図である。HOM1:相同組み換え配列(nt104091−105380、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);YFP:黄色蛍光タンパク質;TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM2:相同組み換え配列(nt105381−106370、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。
【0129】
【図4】タンパク質精製タグを含む修飾pPTI001−YFPベクター(pPTI001ベクターシリーズ)の概略図である。(A)N−末端側インフルエンザヘマグルチニン−HA−エピトープタグ(HA3)を含むpPTI001a−YFP、pPTI001−YFP(B)6個のN−末端側ヒスチジンアミノ酸(HIS6)を含むpPTI001b−YFP、pPTI001−YFP(C)C末端側インフルエンザヘマグルチニン−HA−エピトープタグ(HA3)を含むpPTI001c−YFP、pPTI001−YFP(D)6個のC末端側ヒスチジンアミノ酸(HIS6)を含むpPTI001d−YFP、pPTI001−YFP(C)pPTI001c−YFP及び(D)pPTI001d−YFPにおいてYFPから下流のクローニング部位としてEcoRVを用いることを可能にするために、IPTのDNA配列を修飾して、ヌクレオチドの519番目(開始コドンにおけるアデニンを+1として)の位置におけるアデニンをグアニジンに変化させ、それにより内因性のEcoRV部位を除去した。
【0130】
【図5】(A)pPTI002及び(B)pPTI002−YFPベクターの概略図である。HOM1:相同組み換え配列(nt104091−105380、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);YFP:黄色蛍光タンパク質;TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM2:相同組み換え配列(nt105381−106370、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。ベクターシリーズpPTI002(図6も参照されたい)の構築は、CREに介在される切除の前にPrrnプロモーターから対象のトランスジーン(この場合YFP)までの発現に漏れがないように助けることを目的とする。このことは、図2に示すように、現実の問題となるとは思われないが、我々はIPT遺伝子及びYFP遺伝子を逆方向に配置している。
【0131】
【図6】タンパク質精製タグを含む修飾pPTI002−YFPベクター(pPTI002ベクターシリーズ)の概略図である。(A)N−末端側インフルエンザヘマグルチニン−HA−エピトープタグ(HA)を含むpPTI002a−YFP、pPTI002−YFP(B)6個のN−末端側ヒスチジンアミノ酸(HIS6)を含むpPTI002b−YFP、pPTI002−YFP(C)C末端側インフルエンザヘマグルチニン−HA−エピトープタグ(HA)を含むpPTI002c−YFP、pPTI002−YFP(D)6個のC末端側ヒスチジンアミノ酸(HIS6)を含むpPTI002d−YFP、pPTI002−YFP(C)pPTI002c−YFP及び(D)pPTI002d−YFPにおいてYFPから下流のクローニング部位としてEcoRVを用いることを可能にするために、IPTのDNA配列を修飾して、ヌクレオチドの519番目(開始コドンにおけるアデニンを+1として)の位置におけるアデニンをグアニジンに変化させ、それにより内因性のEcoRV部位を除去した。
【0132】
【図7】pER10/TPCREの概略図である。XVEは、TP−CRE(CREに融合した輸送ペプチド)の発現を促進する誘導性プロモーターとして作用する。このトランスジーンの選択は、nptll遺伝子により付与されるカナマイシン耐性による。
【0133】
【図8】IPT選択可能マーカーを用いた陽性トランスプラストミック植物の選択及び再生A)サイトカイニン非存在下での新たなシュートの存在を示す、プラスチド形質転換後の第一ラウンドの選択。B)Aで示された最初の形質転換体からの第二ラウンドの選択。C)CREの浸潤及びGFP活性化に用いられるトランスプラストミックタバコ植物体の再生(図10)。
【0134】
【図9】タバコプラスチドゲノム中へのトランスジーン挿入の確認相同組み換え部位におけるタバコ葉緑体ゲノムへのpPTI001/YFPの挿入を、タバコ葉緑体ゲノムの隣接領域におけるプライマー及びカセット内のTrbcLターミネーターにアニールするプライマーを用いて確認した。レーンは:WT、野生型;#1、再生体1;#2、再生体2;M、マーカー、を示す。
【0135】
【図10】タバコ葉細胞におけるYFPの発現誘導pER10/TP.CREの浸潤及び誘導後に蛍光顕微鏡により分析した、pPTI001/YFP形質転換カセットを包含するトランスプラストミックタバコ葉再生体。再構成したYFP蛍光体(YFP)及び葉緑素の自己蛍光(Chlorophyll)の共焦点画像を、Volocity IIソフトウェアを用いて落射蛍光顕微鏡により補足した。スケールバー=5μm。
【0136】
【図11】プラスチド形質転換ベクターpPTI005:HOM1:相同組み換え配列(nt104091−105380、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);PpsbA:プラスチド性psbAプロモーター;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;T7:T7転写ターミネーター配列:Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM2:相同組み換え配列(nt105381−106370、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。
【0137】
【図12】プラスチド形質転換ベクターpPTI007:HOM3:相同組み換え配列(nt102925−101857、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);PpsbA:プラスチド性psbAプロモーター;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;T7:T7転写ターミネーター配列:Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM4:相同組み換え配列(nt100933−100130、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。
【0138】
【図13】プラスチド形質転換ベクターpPTI008:HOM3:相同組み換え配列(nt102925−101857、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM4:相同組み換え配列(nt100933−100130、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。IPT.aadAカセットはオペロンとして再構築される。IPT及びaadA遺伝子の両方に先立ち、シャイン−ダルガノ配列及び6個の塩基対スペーサーが配置される。
【0139】
【図14】プラスチド形質転換ベクターpPTI009:HOM3:相同組み換え配列(nt102925−101857、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM4:相同組み換え配列(nt100933−100130、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。IPT.aadAカセットは融合タンパク質として発現される。IPTa遺伝子に先立ち、シャイン−ダルガノ配列及び6個の塩基対スペーサーが配置され、2つのオープンリーディングフレームは8個のグリシンからなるリンカー配列により分離される。
【0140】
【図15】プラスチド形質転換ベクターpinPTI各pPTIベクターは、構成的に発現されるLad遺伝子を含む。pPTI003を例として示す。修飾Prrnプロモーター(PrrnL)はIPT.aadAカセットの上流に挿入され、IPT.aadAカセットの誘導性かつ制御された発現を可能にする。(A)IPT.aadAカセットの上流のPrrnプロモーター配列及び修飾PrrnLプロモーターの制御下でLadオープンリーディングフレームを含むpind2PTI、pPTI。(B)IPT.aadAカセットの上流のT7プロモーター配列及び修飾PrrnLプロモーターの制御下でLac1オープンリーディングフレームを含むpind2PTI、pPTI。HOM1:相同組み換え配列(nt104091−105380、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM2:相同組み換え配列(nt105381−106370、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。IPT.aadAカセットはオペロンとして再構築される。IPT及びaadA遺伝子の両方に先立ち、シャイン−ダルガノ配列及び6個の塩基対スペーサーが配置される。
【0141】
【図16】プラスチド形質転換ベクターpPTI+各pPTIベクターは、最終的により高レベルの外来タンパク質を発現するように、修飾Prrn−trbcL(Prrnプロモーター及びrbcL 5’翻訳制御領域からなるPrrnプロモーター構築物)を含むように修飾するものとする。pPTI003を例として示す。HOM1:相同組み換え配列(nt104091−105380、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);Prrn−t:プラスチド性リボソームRNA(rrn)オペロンプロモーター(nt59034−59303、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)及びrbcL 5’翻訳制御領域;IPT:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;aadA:スペクチノマイシンアデニルトランスフェラーゼ遺伝子;TrbcL:リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ ポリA付加配列(nt102539−102685、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA);TpsbA:psbA ポリA付加配列;HOM2:相同組み換え配列(nt105381−106370、寄託番号Z00044 タバコ葉緑体ゲノムDNA)。IPT.aadAカセットはオペロンとして再構築される。IPT及びaadA遺伝子の両方に先立ち、シャイン−ダルガノ配列及び6個の塩基対スペーサーが配置される。
【実施例1】
【0142】
遺伝子カセットの左右に、タバコ由来の葉緑体ゲノムから得た1289bpの相同組み換え配列(104091−105380nt)及び989bpの相同組み換え配列(105381−106370 nt)(Shinozaki K, Ohme M3 Tanaka M, Wakasugi T, Hayashida N, Matsubayashi T, Zaita N, Chunwongse J, Obokata J, Yamaguchi−Shinozaki K, Ohto C, Torazawa K, Meng BY, Sugita M5 Deno H, Kamogashira T, Yamada K, Kusuda J, Takaiwa F, Kato A, Tohdoh N, Shimada H, Sugiura M. (1986) The complete nucleotide sequence of the tobacco chloroplast genome: its gene organization and expression. EMBO J. 5, 2043−2049.)を用いて、プラスチド形質転換ベクターpPTI001及びpPTI002を、図3及び図5に詳しく示されるように構築した。タバコ葉緑体DNA由来の、より短い相同組み換え配列(長さ157及び143bp)も使用され、3倍増大したプラスチド形質転換効率を示した。
【0143】
概念を検証する目的で、黄色蛍光タンパク質(YFP)レポーター遺伝子をpPTI001及びpPTI002へとクローニングし、pPTI001−YFP(図3)及びpPTI002−YFP(図5)を作製した。これらのベクターを次いで、付表1に詳述されるようにタバコ葉へとボンバードメントした。形質転換実験のためには、形質転換効率を上げる目的で、マゼンタボックス中で用いる代わりに、温室中で生育させた植物体から採取した葉を使用した。葉を10%のSuper Bleach Sterilizer(Coventry)で10分間滅菌し、滅菌水を用いて3回洗浄した。葉を次いで、ボンバードメントのためのプレートに適合するように切断した。これらの戦略の後、形質転換効率は10倍近く上昇した。
【0144】
pPTI001及びpPTI002ベクターシリーズは、バクテリア中でも機能を有するため、我々は、CREにより介在されるIPT遺伝子の切除が最終的に大腸菌(E. coli)細胞中でYFP遺伝子の活性化及びYFP蛍光をもたらすか否かについて試験した。システムの原理を示す概略図を、図1に示す。化学的にコンピテントなE. coli DH5α細胞を成育させ、構成的にTP.CRE融合タンパク質を発現するベクターpER10−TP.CREを用いて形質転換させ、スペクチノマイシンを含有するLB培地上で選択した。次いで、pER10−TP.CREベクターを含む化学的にコンピテントなE. coli DH5α細胞を作製し、pPTI001−YFPを用いて形質転換を行った。両ベクターを含む細胞を、スペクチノマイシン及びクロラムフェニコールを含むLB培地上で選択した。単独のコロニーをスペクチノマイシン及びクロラムフェニコールを含むLB培地へと接種し、OD600が0.4となるまで生育させて、YFP(エキサイター、HQ500/20、エミッター、S535/30)蛍光に対するフィルターを備えたNikon TE−2000U倒立蛍光顕微鏡及びHamamatsu Orca ER1394冷却CCDカメラにて、YFPの発現を解析した。Openlabソフトウェア(Improvision)を用いて画像を捕捉した。E. coli細胞と、IPTカセット領域を橋渡しするプライマーであるTrbcL−F及びTpsbA−Rにより得られたプラスミドDNAにおいて、PCRにてIPTの切除を確認した。図2は、CREの添加前にはIPT遺伝子の切除が見られず(図2A及び2E)、一方、CREの添加後にはIPT遺伝子が分子レベルで除去され(図2E)、YFPの発現を導く(図2D)ことを示す。
【実施例2】
【0145】
植物の発達において有害な影響を伴うタンパク質の発現
植物中の外来タンパク質の高レベルな発現は、毒性効果によって植物の発達に有害な影響を及ぼし得る。記載されるシステムは、プラスチドゲノム中にトランスジーンの挿入を組み合わせることにより、これを克服し、有害な効果は、CRE/loxに介在される組み換えによってIPT選択可能マーカー遺伝子が除去されるまでは休止状態にある。
【0146】
pPTI001又はpPTI002ベクターの1つへ、pPTI001ベクターシリーズにおいてはTrbcL及びTspbA ポリA付加配列の間へ、又はpPTI002ベクターシリーズにおいてはPrrnプロモーター及びTspbA ポリA付加配列の間へと、「植物毒性」タンパク質をコードするトランスジーンが挿入され(図3及び5)、構築物は付表1に示すプロトコールを用いてプラスチドへと形質転換され、続いてサイトカイニンに介在される選択及び再生に供される。ひとたび再生されれば、CREにより介在される組み換えによってIPT遺伝子は除去され、トランスジーンが活性化されて、初期の植物体再生における悪影響を最小化する方向に導く。ひとたび発現されれば、組換えタンパク質を、図4及び図6中に示されるpPTI001又はpPTI002ベクターシリーズのいずれかの中に存在する親和性タグを用いて精製してもよい。
【実施例3】
【0147】
プラスチド中で役割を有するタンパク質の発現
プラスチドは、植物の発達の間に不可欠な役割を果たし、従って、植物体の生長、発達における正の効果を有し、及び/又は全体として植物に対し修飾された特性を与えるであろうプラスチド内のタンパク質(植物の又は非植物の)を発現することには関心が持たれている。選択可能なマーカー遺伝子としてのIPTが(一般的なスペクチノマイシン選択可能マーカー遺伝子と同様に)自然発生的なリボソーム変異体の生成を導かないという事実とあわせ、プラスチド中のトランスジーンの高い発現レベルによって、本発明はこの適用に関し理想的なシステムを提供する。
【0148】
pPTI001又はpPTI002ベクターの1つへ、pPTI001ベクターシリーズにおいてはTrbcL及びTspbA ポリA付加配列の間へ、又はpPTI002ベクターシリーズにおいてはPrrnプロモーター及びTspbA ポリA付加配列の間へとトランスジーンが挿入され(図3及び5)、構築物は付表1に示すプロトコールを用いてプラスチドへと形質転換され、続いてサイトカイニンに介在される選択及び再生に供される。ひとたび再生されれば、CREにより介在される組み換えによってIPT遺伝子は除去され、トランスジーンが活性化されて、初期の植物体再生における悪影響を最小化する方向に導く。
【実施例4】
【0149】
真核細胞タンパク質の高レベル発現
不溶性及び/又は翻訳後修飾の欠如に起因して、バクテリアの系における真核生物タンパク質の発現に伴う課題がしばしば存在する。同様に、哺乳動物細胞中で真核生物タンパク質を発現することは、高い費用及び大きな労働力を要する。本システムは、IPTマーカー遺伝子による選択及びトランスジーンの活性化を用いて、プラスチド中で真核生物タンパク質を発現させるために使用され得る。実施例2及び3に記載する通り、上述のような形質転換、選択及び再生によって、真核生物のタンパク質をコードする任意の遺伝子を、pPTI001シリーズ又はpPTI002シリーズの1つ又は全部のベクターへと挿入してもよい。再生に次いで、下流の適用のため、発現されたタンパク質を、図4及び図6中に示される親和性タグを用いて精製してもよい。
発現されるであろう可能性を有する真核生物タンパク質ファミリーの非限定的なリストには、抗体、酵素、酵素阻害剤及びデザインペプチドを含む。
【実施例5】
【0150】
原核細胞タンパク質の高レベル発現
プラスチドの内部共生的な起源により、プラスチド中で真核生物のタンパク質を発現することが可能である。実施例2及び3に記載するように、上述のような形質転換、選択及び再生によって、原核タンパク質をコードする任意の遺伝子をpPTI001シリーズ又はpPTI002シリーズの1つ又は全部のベクターへと挿入してもよい。再生に次いで、下流の適用のため、発現されたタンパク質を、図4及び図6中に示される親和性タグを用いて精製してもよい。
【実施例6】
【0151】
同一のプロモーターからの複数のタンパク質の協調的発現
プラスチドの内部共生的な起源により、プラスチド中でオペロン様の遺伝子構造を発現することが可能である。実施例2及び3に記載するように、上述のような形質転換、選択及び再生によって、原核タンパク質をコードする任意の遺伝子をpPTI001シリーズ又はpPTI002シリーズの1つ又は全部のベクターへと挿入してもよい。再生に次いで、下流の適用のため、発現されたタンパク質を、図4及び図6中に示される親和性タグを用いて精製してもよい。
このことは、単独のプロモーターの制御下での、複数のタンパク質の協調的かつ同時の発現をもたらす。実施例2及び3に記載する通り、先に記載するような形質転換、選択及び再生によって、原核生物起源及び真核生物起源(又はそれらの混合)の両方のタンパク質をコードする複数の遺伝子を、pPTI001シリーズ又はpPTI002シリーズの1つ又は全部のベクターへと挿入してもよい。
【実施例7】
【0152】
タバコプラスチドにおけるpPTI001/YFPからのYFPの発現
pPTI001/YFPベクターをタバコ葉細胞中へとボンダードメントし、オーキシンのみを含む培地、及び全てのホルモンを欠く培地上で再生体を選択した。再生体が得られ(図8)、土壌へと移植する前に根の形成を誘導するために、オーキシンを含む2次選択培地へと移された。タバコプラスチドゲノム中の形質転換カセットの取り込みを、ベクター特異的なプライマー及びタバコ葉緑体ゲノムの隣接領域におけるプライマーを用いたPCRにより確認した(図9)。再生された植物体から得た葉に、誘導にひき次いでTP.CRE融合体を発現するバイナリーベクターであるpER10/TP.CREを浸潤させた。72時間後、GFP蛍光葉緑体を含む細胞を蛍光顕微鏡で示すことにより、浸潤された組織を分析した(図10)。
【実施例8】
【0153】
付加的な及び新規なプラスチド形質転換ベクター
選択及び再生システムを最適化するために、さらなる新規なシリーズのプラスチド形質転換ベクターが構築されている。以下の修飾及び付加がなされている:
1)二重選択の目的のためのIPT遺伝子に加えたaadA遺伝子の包含
2)より効率的な相同組み換え及びトランスジーンの挿入を増加させ得る、新たな相同組み換え部位(HOM3及びHOM4)の包含
3)IPTG誘導性プロモーターの包含
4)より高い発現レベルのための、修飾Prrnプロモーターの包含
ベクターの詳細を図11〜16に示す。例示された全てのベクターは、IPT選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0154】
付表1
葉緑体の形質転換のためのプロトコール
【0155】
時間的経過
標準的手順により、3〜5ヶ月間で形質転換植物が作製される。
・最初のシュート(first shoot)へのボンバードメント(bombardment):3〜8週間
・同種植物体の二次培養作製:3〜4週間
・分析に先立ち、土壌において生育:1〜2週間
【0156】
装置設定
ヘリウムガン Biorad PDS 1000
・破壊ディスクPSI:1100
・キャップ部を保持する破壊ディスクと、カバー部上のマクロキャリアとの間のギャップ:1/4’’
・停止スクリーン支持部下のスペーサーリング:2
・マクロキャリア起動アセンブリのレベル:1(上部から)
・ペトリ皿ホルダーのレベル:4(上部から)
・真空流入速度:最大
・真空開放速度:真空流入速度を近似するように開放を弱める。
【0157】
ストック溶液
・2.5M CaCl オートクレーブ又はフィルターで滅菌する
・滅菌水中の1M スペルミジン遊離塩基
・dH
・dHO又は1X TE中、1μg/μlのDNA
・100%エタノール
・70%エタノール
【0158】
消耗品
・1100 psi 破壊ディスク
・停止スクリーン
・マクロキャリア
・金粒子
【0159】
DNA−金粒子混合物の調製
・ストック用として、50mgの金粒子を1mlの無水エタノール中に懸濁する。
・0.25mlの金ストック懸濁液を取り、5秒間微小遠心を行う。エタノールを除去してから、無菌の蒸留水で3回洗浄し、洗浄の間に3分間微小遠心を行う。
・金を0.25mlのdHO中に再懸濁する。
・50μlの一定分量の金−HO懸濁液をエッペンドルフチューブ中に入れる。
・各エッペンドルフ中に以下を連続して添加する:
1μg/μlの10μlのDNA
50μlの2.5M CaCl
20μlの0.1M スペルミジン遊離塩基
・最大スピードで5分間ボルテックスする。
・200μlの無水エタノールを各チューブに添加する。
・微小遠心管中で、3000rpm、2秒間回転させる。
・出来る限り上清を除去し、沈殿物を無水エタノール中で洗浄してから、3000rpmにて2秒間微小遠心を行う。
・沈殿物を30μlの無水エタノール中に再懸濁させる(4〜5回分のボンバードメント用となる)。混合物を氷上で保存する。
【0160】
微粒子銃及び消耗品の調製
・70%エタノール又は70%イソプロパノールを用いて、銃の真空チャンバ及び表面を滅菌する。
・70%エタノール中で10分間、破壊ディスク及びマクロキャリアホルダーを滅菌する。フード内で風乾させる。
・微量の水を全て除去するために、マクロキャリアを無水エタノール中に浸漬させる。フード内で風乾させる。
・ヘリウムタンクを開放する。ヘリウムタンク調節装置を1300psiに設定する(又は、破壊ディスクの出力に関しては200psiに設定する)。
【0161】
ボンバードメント
・マクロキャリアをそのホルダー中に固定する。
・マクロキャリアの中心上に、5μlの金−DNA混合物をピペットで載せる。混合物は、大きな塊を少なくして、均等に広げる必要がある。
・破壊ディスクをホルダーリング内に配置し、リングをヘリウムバレルに締め付ける。
・停止スクリーンと、金−DNAを含むマクロキャリア(ホルダー内)を、保持アセンブリ内に配置し、圧下させる。
・アセンブリを真空チャンバ内のレベル1(上部から1番目)に配置する。
・サンプルをレベル4に配置する。ペトリ皿の蓋を取る。
・真空ポンプを開ける。
・Hgで27〜29まで真空で引く。
・破壊ディスクが破壊するまで、発射ボタンを押し続ける。
・真空を開放し、サンプルを取り出す。
・破壊ディスク、マクロキャリア及び停止スクリーンを取り出す。
・所望である場合、繰り返す。
・実験の終わりに、ヘリウムタンクを止める。銃の中を真空にし、残っているヘリウムを銃から開放させ、次に、ヘリウム調節装置を止める。
【0162】
ボンバードメントを成功させるカギは通常、マクロキャリア上に粒子を広げることにある。エタノール/金/DNA混合物を、マクロキャリアの中心上に迅速に広げる必要がある。得られる展開物は、均等に広げられた非常に細かい少量の粒子であり、大きな塊をほとんど含まない必要がある。塊は細胞死を増加した。
【0163】
それぞれ30μlの金−DNA混合物は、4回又は5回のボンバードメントを可能にする。残りの混合物は通常、良好な結果のためには、密度が濃すぎる。
【0164】
タバコ調製用及び再生用培地
MS: MS塩類及びビタミン類(1X)
30g/l ショ糖
6g/l フィトアガー
pH5.8 オートクレーブ
RMOP:MS塩類(1X)
1mg/l BAP
0.1mg/l NAA
1mg/l チアミン
100mg/l イノシトール
30g/l ショ糖
6g/l フィトアガー
pH5.8 オートクレーブ
RMOP−BAP
pH5.8 オートクレーブ
MS+ MS培地
1mg/l IBA(インドール−3−酪酸)
2μM 17−β−エストラジオール
pH5.8 オートクレーブ
【0165】
組織培養
・タバコ植物は、MS培地を含むマゼンタ箱中において、無菌技法を用いて大量増殖させられる。
・広げられた葉を切り取り、葉の裏側を上にしてワットマン紙上に置き、RMOP培地上に置く。ろ紙の上で、ボンバードメント前に葉をわずかに乾燥させる(1〜2時間)。各ボンバードメントにより、9cmペトリ皿の約1/3を覆っている1〜3枚の葉を処理することができる。
・ボンバードメント後、プレートを密閉し、葉を、12:12の光周期、24℃の条件の下に、2日間置く。
・2日後、葉を約5mmの小片に細かく切り、BAPを欠くRMOP培地上に、葉の裏側を上にして置く。
・3〜8週間で、退色した外植片から緑色のシュートを回収することができる。
・これらのシュートからの葉を細かく切り(2mm)、同じ選択培地中で約4週間二次培養する。
・最初に二次培養したシュートから、典型的には4つのシュートが回収される。これらを、MS培地+1mg/l IBA及び2μM 17−β−エストラジオールを含むチューブ中に植え付ける。
・植え付けたシュートを、単離後約3〜5週間後に土壌に移す。植物体を標準的なタバコの条件(16:8の光周期、25℃)において生育させる。
【0166】
注記
1.タバコの葉を、ボンバードメントのために、完全に平らに置く必要はない。
2.タバコの葉は、ろ紙上で2日後にその膨圧を失う。これで良い。
3.最少量の移送を行う。実施の必要がある最大量の移送は、以下の通りである:
a.MS中で生育させた植物から葉を切り取る。葉をRMOP上のろ紙上に置く。
b.ボンバードメントしてから2日後、葉移植片をRMOP−BAP上に置く。
c.3〜8週間後、緑色のシュート(green shoot)から葉を除去し、切断し、次に、RMOP−BAPに移す。
d.4つの芽を回収し、個々のチューブに入ったMS+1mg/l IBA+2μM 17−β−エストラジオール中に移す。
4.平均的実験に関する形質転換頻度は、1回のボンバードメントあたり、1.5個の安定的に形質転換された植物から0.3個の安定的に形質転換された植物までのどこかである。
【0167】
タバコ葉緑体の形質転換のための培地
名称 組成 容器 時間
MSS: MS塩及びビタミン類(1X) マゼンタ箱
30g/l ショ糖
6g/l フィトアガー
pH5.8
オートクレーブ
MFB MS塩(1X) ペトリ皿(9cm) 2日間
1mg/l BAP
0.1mg/l NAA
1mg/l チアミン
100mg/l イノシトール
30g/l ショ糖
6g/l フィトアガー
pH5.8
オートクレーブ
MTS MFB(BAP欠如) 深いペトリ皿 3〜10週間
MFR MSS マゼンタ箱 3〜5週間
1mg/l IBA(インドール−3−酪酸)
2μM 17−β−エストラジオール
注記: 1.MFB:ボンバードメント用培地
2.MTS:トランスジェニック選択用培地
3.MFR:発根用培地
4.時間:タバコの葉を培地中に入れておく時間
5.この時間は2回目の選択時間を含む

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形質転換された植物細胞の作製方法であって、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、該遺伝子構築物は、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、該第1及び第2の相同組み換えエレメントは、該形質転換カセットの、該植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
該形質転換カセットは、以下:
(a)該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
該切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
該第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得る、
前記工程、を含む前記作製方法。
【請求項2】
以下の工程:
(ii)植物ホルモン生合成ポリペプチドを欠く培地において形質転換された植物細胞を選択する工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
(iii)植物細胞中でリコンビナーゼを発現させる工程であって、該リコンビナーゼは、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識するものである工程、
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントがlox部位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記リコンビナーゼがCreリコンビナーゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物ホルモン生合成ポリペプチドが、植物サイトカイニン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の合成に関与するか、又は、植物サイトカイニン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の産生若しくは代謝を調節するポリペプチドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物ホルモン生合成ポリペプチドがIPT(イソペンテニルトランスフェラーゼ)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又はそれ以上のトランスジーンのうちの少なくとも1つが、抗体、抗生物質、除草剤、ワクチン抗原、酵素、酵素阻害剤又はデザインペプチドをコードする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記形質転換カセットが、1つ又はそれ以上の選択されたプラスチドを特異的に標的とするように、前記相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列が選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記植物の核ゲノム中に形質転換カセットが組み込まれない又は実質的に組み込まれないように、前記相同組み換えエレメントのヌクレオチド配列が選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)が、前記植物細胞中に存在するリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結した誘導性プロモーターから、植物細胞中でのリコンビナーゼの発現を誘導する工程、を含み、該リコンビナーゼが、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントを認識する、請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)が、工程(i)の前、工程(i)と同時、又は工程(i)の後;又は工程(ii)の前、工程(ii)と同時、又は工程(ii)の後のいずれかにおいて、リコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結したプロモーターを含むリコンビナーゼベクターにより前記植物細胞を形質転換する工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記リコンビナーゼベクターが、プラスチドを標的とする輸送ペプチド及びリコンビナーゼをコードするヌクレオチド配列と機能し得るように連結しているプロモーターを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチドを標的とする輸送ペプチドが、前記リコンビナーゼを葉緑体へと標的化させ得るものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と第2のターミネーターエレメントが第1のプロモーターの下流に存在し、該第1のプロモーターは、該植物ホルモン生合成ポリペプチドの発現を促進し得る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記形質転換カセットが、以下:
(a)前記植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)以下を含む、切り出しカセット:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
ここで、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、リコンビナーゼにより
認識され得る;
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を、5’−3’方向で上記において特定した順番で機能し得るように連結して含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記切り出しカセットが、第1のプロモーター、トランスジーン及び第1のターミネーターエレメントに対して逆方向であり、該切り出しカセットが、前記植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を促進し得る第2のプロモーターを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記形質転換カセットが、以下:
(a)前記植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、ここで(a)、(b)、(c)及び(d)は、5’−3’方向で上記において
特定した順番で機能し得るように連結されており、
該切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、ここで、第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントは、
リコンビナーゼにより認識され得;かつ、
該切り出しカセットの部分(b1)〜(b5)は機能し得るように連結しており、該切り出しカセットは、(a)、(c)及び(d)に対して逆方向である、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
形質転換された植物細胞の作製方法であって、以下の工程:
(i)遺伝子構築物を用いて植物細胞を形質転換する工程であって、該遺伝子構築物は、形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含み、該第1及び第2の相同組み換えエレメントは、該形質転換カセットの、該植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
該形質転換カセットは、以下:
(a)該植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
該切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)ポリペプチドがIPTである植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードする
ヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
該第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得、該第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはlox部位であり、該リコンビナーゼはCreである、
前記工程、を含む前記作製方法。
【請求項21】
工程(ii)IPTを欠く培地において形質転換された植物細胞を選択する工程、及び工程(iii)プラスチドゲノムから切り出しカセットの切り出しをもたらすレベルで、植物細胞中でCreリコンビナーゼを発現させる工程、をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記形質転換カセットが、抗生物質に対する抵抗性を付与するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗生物質がスペクチノマイシンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記植物が単子葉植物又は双子葉植物である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記植物が、穀類(イネ、コムギ、オオムギ、オートムギ、ソルガム、トウモロコシ)、マメ科植物(アルファルファ、レンティル、ピーナッツ、エンドウ、ダイズ)、油糧作物(ヤシ、ヒマワリ、ココナッツ、カノーラ、オリーブ)、市場用作物(綿、サトウキビ、キャッサバ)、野菜作物(ジャガイモ、トマト、ニンジン、サツマイモ、テンサイ、カボチャ、キュウリ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、サヤインゲン、キャベツ、セロリ、タマネギ、ニンニク)、果実類/樹木及びナッツ類(バナナ、ブドウ、メロン、マスクメロン、スイカ、イチゴ、オレンジ、リンゴ、マンゴー、アボカド、モモ、グレープフルーツ、パイナップル、メープル、アーモンド)、飲料用作物(コーヒー、茶、カカオ)、及び材木用樹木(オーク、クログルミ、スズカケノキ)からなる群より選択される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記植物がタバコ又はレタスである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記植物細胞が、個々の細胞、解離した形態若しくは解離していない形態の細胞群、又は植物組織の部分又は植物の部分である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記植物細胞が植物の葉中に存在する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記プラスチドが、葉緑体、白色体、アミロプラスト、エチオプラスト、クロモプラスト、エライオプラスト及びジェロントプラストから選択される、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記プラスチドが緑色プラスチドである、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記プラスチドが葉緑体である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1及び/又は第2のプロモーターが、PsbA、RbcL又はPrrnプロモーターである、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1及び/又は第2のターミネーターが、rrn、psbA、rbcL又はT7ターミネーターである、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法により得られた又は得ることができる形質転換された植物細胞。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法を含み、前記トランスジーン産物を精製又は単離、及び任意にパッケージングする工程をさらに含む、トランスジーン産物の作製方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法により得られた又は得ることができる精製された又は単離されたトランスジーン産物。
【請求項37】
形質転換カセットに隣接する第1及び第2の相同組み換えエレメントを含む遺伝子構築物であって、該第1及び第2の相同組み換えエレメントは、形質転換カセットの、植物細胞中に存在する少なくとも1つのプラスチドのゲノムへの組み込みが指示可能であり、
該形質転換カセットは、以下:
(a)植物細胞中で機能し得る第1のプロモーター、
(b)切り出しカセット、
(c)1つ又はそれ以上のトランスジーン、
(d)第1のターミネーターエレメント、
を含み、
該切り出しカセットは、以下:
(bl)第1の部位特異的組み換えエレメント、
(b2)任意の第2のプロモーター、
(b3)植物ホルモン生合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(b4)第2のターミネーターエレメント、
(b5)第2の部位特異的組み換えエレメント、
を含み、
該第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントはリコンビナーゼにより認識され得る、
前記遺伝子構築物。
【請求項38】
前記第1及び第2の部位特異的組み換えエレメントがlox部位である、請求項37に記載の遺伝子構築物。
【請求項39】
前記リコンビナーゼがCreリコンビナーゼである、請求項37又は38に記載の遺伝子構築物。
【請求項40】
前記植物ホルモン生合成ポリペプチドが、植物サイトカイン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の合成に関与するか、又は、植物サイトカイン若しくはオーキシン若しくはその他の植物成長調節因子の産生若しくは代謝を調節するポリペプチドである、請求項37〜39のいずれか1項に記載の遺伝子構築物。
【請求項41】
前記植物ホルモン生合成ポリペプチドがIPT(イソペンテニルトランスフェラーゼ)である、請求項40に記載の遺伝子構築物。
【請求項42】
請求項37〜41のいずれか1項に記載の遺伝子構築物を含む植物細胞。
【請求項43】
請求項37〜41のいずれか1項に記載の遺伝子構築物を含む植物体。
【請求項44】
請求項37〜41のいずれか1項に記載の遺伝子構築物を含む植物種子。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−512737(P2010−512737A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540859(P2009−540859)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004782
【国際公開番号】WO2008/071973
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509168737)
【Fターム(参考)】