説明

部材取付構造

【課題】車体に対する被取付部材の接触による異音の発生を抑制できる部材取付構造を得。
【解決手段】車体の取付片22とストッパー14の間にはキャップ16が配置される。キャップ16の平板部38はリブ30と取付片22間でこれら双方に接触し、立設部40は、ベース板28と補強リブ52及び接触片26に接触し、ストッパー片48は係止孔24と係止片32の間に嵌合されて、これらに接触する。取付片22とストッパー14との隙間にキャップ16が食い込んで、取付片22とストッパー14との直接的な相対移動が抑えられるので、取付片22とストッパー14との接触や擦れに起因する異音の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材取付構造に関し、さらに詳しくは、車体の開口部内に被取付部材を取り付けるための部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に開口部内には、たとえばウインドガラス等の被取付部材が取り付けられる。このような被取付部材の取付構造として、特許文献1には、ウインドガラスに貼着されるガラスストッパーの脚体のツメ部を、車体の取付孔へ係止させてウインドガラスの浮き上がりを防止する構成が記載されている。ウインドガラスは、接着剤により車体に取り付けられる。
【0003】
ところで、特許文献1の構成では、接着剤が硬化した後もガラスストッパーが除去されずにウインドガラスに貼着されたままとなるため、ガラスストッパーと取付孔との相対移動による接触や摩擦(擦れ)で異音を発生させてしまうおそれがある。
【特許文献1】特開平8−310233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車体に対する被取付部材の相対移動による異音の発生を抑制できる部材取付構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車体の開口部内に配置される被取付部材と、前記被取付部材に固定されると共に、車体に形成された被係止部に係止されて被取付部材を前記開口部内に保持する保持部材と、前記保持部材と前記被係止部の間で、これらが非接触となるように配置されるスペーサ部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
したがって、被取付部材が車体の開口部内に配置された状態で、保持部材が被係止部に係止されて、被取付部材が開口部内に保持される。このとき、保持部材と車体の間には、これらが保持部材と被係止部とが非接触となるようにスペーサ部材が配置されている。保持部材と被係止部とは、相対移動した場合であっても接触しないので、異音の発生が抑制される。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記スペーサ部材が、前記保持部材と前記被係止部の双方に接触してこれらの相対移動を制限可能とされていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明において、スペーサ部材は、保持部材と被係止部とを非接触とすればその作用としては十分であるが、請求項2に記載のように、保持部材と被係止部の双方に接触して相対移動を制限すれば、より確実に、これらの接触を防止して異音の発生を抑制できる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記スペーサ部材が、前記保持部材よりも軟質とされていることを特徴とする。
【0010】
これにより、スペーサ部材を保持部材と同程度の硬度あるいは高い硬度にした構成と比較して、スペーサ部材が被係止部に接触することによる異音の発生を効果的に抑制可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記被取付部材が前記開口部内に接着剤により取り付けられるガラスであることを特徴とする。
【0012】
したがって、接着剤を使用して、開口部にガラスを容易に取り付けできる。接着剤が硬化するまでの間は、保持部材によってガラスが開口部内に保持され、ガラスの浮き上がり等が防止される。接着剤硬化後であっても、スペーサ部材によって保持部材と被係止部との接触が防止され、異音の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、車体に対する被取付部材の相対移動による異音の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2には、本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するストッパー14及びキャップ16が示されている。また、図3には、キャップ16が一部を破断した状態で拡大して示されている。図4及び図5に示すように、本実施形態の部材取付構造では、自動車の車体パネル12の開口部20に、被取付部材であるウインドシールドガラス18を接着剤54によって取り付ける場合に適用される。本実施形態では、ストッパー14及びキャップ16はいずれも樹脂製とされているが、キャップ16にはストッパー14よりも軟質な樹脂が使用されている。
【0015】
図4及び図5に示すように、開口部20の開口縁部20Eからは、取り付け状態のウインドシールドガラス18と平行になるように、取付片22が延出されている。取付片22の中央には係止孔24が形成されており、後述するように係止片32が係止されるようになっている。また、取付片22の先端部は、ウインドシールドガラス18に向かって斜めに立ち上げられた接触片26とされている。接触片26は同じく後述するように、キャップ16に接触する。
【0016】
図1及び図2に示すように、ストッパー14は、ウインドシールドガラス18に溶着されるベース板28を有している。ベース板28は長尺の板状に形成されており、一方の面には、超音波溶着用のPVCシート(図示省略)が溶着され、あるいは両面テープ(図示省略)等が貼付けられ、ウインドシールドガラス18に取り付けられる。この反対面には、ベース板28から垂直に、かつベース板28の長手方向と同方向に沿ってリブ30が立設されており、さらに、リブ30の長手方向中央からは、係止片32が延出されている。
【0017】
係止片32は、先端に形成されたテーパー面34と、このテーパー面34の反対側に形成された係合面36と、を有している。図4及び図5に示すように、係止片32は係止孔24に挿入されて係止されるが、挿入時にテーパー面34が係止孔24の孔縁に当たって係止片32を係止孔24内の係止位置へガイドする。なお、リブ30とベース板28の間には、係止片32に対応する位置に補強リブ52が形成されており、係止片32が補強されている。
【0018】
図3にも詳細に示すように、取付片22とストッパー14の間に配置されるキャップ16は、端面が略L字状に形成されており、平板部38と、この平板部38から立設された立設部40とを有している。キャップ16の中央には略U字状のスリット42が形成されて、このスリット42の内側部分44と外側部分46とが構成されている。内側部分44の先端には、キャップ16が取付片22とストッパー14の間に配置された状態でウインドシールドガラス18から離間する方向へ延出されたストッパー片48が形成されている。ストッパー片48は、係止孔24と係止片32の間に嵌合されるようになっている。
【0019】
また、ストッパー片48と、外側部分46の間には、挿入部50が構成されており、図1及び図4にも示すように、係止片32が挿入部50に挿入される。
【0020】
図5に示すように、キャップ16が取付片22とストッパー14の間に配置された状態では、平板部38はリブ30と取付片22間でこれら双方に接触している。また、立設部40は、ベース板28と補強リブ52及び接触片26に接触している。
【0021】
次に、本実施形態に係るストッパー14及びキャップ16を使用して、ウインドシールドガラス18を車体パネル12の開口部20に取り付ける方法、及び本実施形態の部材取付構造の作用を説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、キャップ16の挿入部50にストッパー14の係止片32を挿入し、キャップ16をストッパー14に嵌合させて組み付ける。挿入時にはキャップ16の内側部分44がテーパー面34に押されて撓むことで挿入部50が広げられるので、係止片32を挿入可能となる。嵌合状態では、キャップ16のストッパー片48がストッパー14の係合面36に対向するので、キャップ16はストッパー14から不用意に抜けなくなるが、完全に固定されることはなく、フローティングしている。
【0023】
また、これと前後して、ストッパー14のベース板28をウインドシールドガラス18に超音波溶着し、ストッパー14をウインドシールドガラス18に固定しておく。ストッパー14のウインドシールドガラス18への固定は、キャップ16の組み付け後であっても組み付け前であってもよい。
【0024】
次に、ウインドシールドガラス18の所定位置に接着剤を塗布した後、ウインドシールドガラス18を車体パネル12の開口部20内に配置して、ストッパー14の係止片32を取付片22の係止孔24に挿入する。挿入時には、テーパー面34が開口部20の開口縁部20Eに当たって所定の抵抗が生じるが、係止片32が係止孔24を貫通して係合面36が開口部20を抜け出ると、この抵抗が無くなる。このように、挿入時には所定の節度感が生じるので、挿入作業が容易になり、組み付け確認もしやすくなっている。
【0025】
係止片32の係止孔24への挿入が完了すると、ストッパー14は係止孔24に係止されるので、ウインドシールドガラス18はストッパー14によって、開口部20内に保持される。図4及び図5に示すように、キャップ16が取付片22とストッパー14の間に配置され、平板部38はリブ30と取付片22間でこれら双方に接触した状態となる。また、立設部40は、ベース板28と補強リブ52及び接触片26に接触する。さらに、ストッパー片48も、係止孔24と係止片32の間に嵌合されている。この状態で、接着剤が硬化することにより、ウインドシールドガラス18の開口部20内への取り付けが完了する。
【0026】
そして本実施形態では、ウインドシールドガラス18の取付後においても、取付片22とストッパー14との隙間にキャップ16が食い込んでいる。すなわち、立設部40は、ベース板28と補強リブ52及び接触片26に接触しており、また、ストッパー片48も、係止孔24と係止片32の間に嵌合されている。これにより、取付片22(車体パネル12)とストッパー14との相対移動が抑制される。たとえば、取付片22にわずかな捩れが生じた場合等であっても、取付片22(車体パネル12)とストッパー14との相対移動をキャップ16が吸収する。これにより、ストッパー14が取付片22に接触しなくなるので、接触や擦れに起因する異音の発生が抑制される。特に、ストッパー14が車体パネル12に対して相対移動すると、車体パネル12の塗料とストッパー14との摩擦によって異音が生じるおそれがあるが、本実施形態では、車体パネル12とストッパー14との相対移動が抑制されているので、車体パネル12に塗布された塗料の種類に関わらず、異音の発生を抑制できる。
【0027】
なお、このように、ストッパー14と取付片22との相対移動による異音の発生を抑制できれば、ストッパー14は取付片(車体パネル12)に対して相対移動不能に固定されている必要はなく、所定範囲内で相対移動してもよい。本実施形態では、図4に示す矢印M1方向及びM2方向へわずかに相対移動可能とし、組み付け時の作業性を高めている。
【0028】
ストッパー14及びキャップ16の材質や物性も特に限定されないが、本実施形態のように、キャップ16をストッパー14よりも相対的に軟質な材料で成形すると、キャップ16が車体パネル12に接触したときの異音の発生も防止でき、好ましい。
【0029】
また、上記実施形態では、本発明の被取付部材としてウインドシールドガラス18を挙げたが、被取付部材はこれに限定されず、他のガラスであってもよい。さらには、ガラスに限らず、たとえば板状部材(ボード)を車体に取り付ける場合にも、本発明の部材取付構造を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するストッパーとキャップを嵌合状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するストッパーとキャップを非嵌合状態で示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するキャップを示す一部破断斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するストッパーとキャップを車体パネルの開口部に適用した状態を示す一部破断斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の部材取付構造を構成するストッパーとキャップを車体パネルの開口部に適用した状態を示す図4のV−V線断面図である。
【符号の説明】
【0031】
12 車体パネル
14 ストッパー(保持部材)
16 キャップ(スペーサ部材)
18 ウインドシールドガラス(被取付部材)
20 開口部
20E 開口縁部
22 取付片
24 係止孔(被係止部)
26 接触片
28 ベース板
30 リブ
32 係止片
34 テーパー面
36 係合面
38 平板部
40 立設部
42 スリット
44 内側部分
46 外側部分
48 ストッパー片
50 挿入部
52 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部内に配置される被取付部材と、
前記被取付部材に固定されると共に、車体に形成された被係止部に係止されて被取付部材を前記開口部内に保持する保持部材と、
前記保持部材と前記被係止部の間で、これらが非接触となるように配置されるスペーサ部材と、
を有することを特徴とする部材取付構造。
【請求項2】
前記スペーサ部材が、前記保持部材と前記被係止部の双方に接触してこれらの相対移動を制限可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の部材取付構造。
【請求項3】
前記スペーサ部材が、前記保持部材よりも軟質とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部材取付構造。
【請求項4】
前記被取付部材が前記開口部内に接着剤により取り付けられるガラスであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の部材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−283929(P2007−283929A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114316(P2006−114316)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(598059675)株式会社ヴイテック (14)