説明

部材締結具

【課題】対向するように配置された一対の登り梁の頂部を結合する際、その傾斜角度に依存することなく汎用的に使用可能で、しかも強度にも優れており、さらに大規模な建物にも対応できる部材締結具を提供すること。
【解決手段】一対の登り梁Ha,Hbの上端面にシャフト21を差し込み、固定ピン25を打ち込んでシャフト21を不動状態にし、登り梁Ha,Hbの係合溝52に主金具11を嵌め合わせた後、登り梁Ha,Hbに結合ピン24を打ち込んで、主金具11とシャフト21とを一体化する。これにより二本の登り梁Ha,Hbは一体化するため、シャフト21が埋め込まれている範囲で荷重を支持でき、結合ピン24の周囲に過度な荷重が作用しない。また副金具31は、通し孔16などによって簡単に組み付けられ、しかも棟木Ma,Mbは、隣接する登り梁Ha,Hbの間を結ぶ短尺で良いため、大規模な建物でも効率よく施工できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の屋根を構成する登り梁を結合するための部材締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法で屋根を構築する場合、屋根中央に棟木を配置して、また軒先付近に梁を配置して、この棟木と梁との間をタルキで結び、その上に野地板を張り付けて屋根全面を覆い、最後に瓦などの外装材を載せる方法が一般的である。この方法は、屋根に作用する荷重を多数の部材を介して支持しており、屋根の構造が比較的複雑になるため、屋根裏に小部屋や収納スペースを確保したい場合などには適していない。そのため屋根裏を有効に活用したい場合などには、タルキなどの代用として、屋根の傾斜方向に延びる登り梁を使用して、屋根裏構造の簡素化を図る場合がある。
【0003】
登り梁を使用した建物の骨格構造を図9に示す。この図のように屋根の頂部に棟木が水平に敷設されており、この棟木を頂点として屋根の傾斜に沿って登り梁が左右両側に配置されている。屋根に作用する荷重は、この登り梁が一括して受け止めるため、屋根裏の構造が簡素化され、屋根裏部屋などの設置が容易になるほか、天井を設けない吹き抜け構造にした場合、大断面の登り梁を下から視認できるため、建物の重厚感が演出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木造軸組工法は、設計の自由度が高く、需要者の様々な要望を実現しやすいという特徴があり、登り梁を使用する場合にも、その長さや傾斜角度を一定の範囲で自在に設定できる。しかし登り梁を結合するための連結金物は、傾斜角度に応じて形状が決められており汎用性に乏しく、都度専用品を製作する場合があり、費用の増加要因になっている。また登り梁は、建物の骨格を構成する重要な部材であり、積雪や暴風などにも耐えられる十分な強度が必要である。なお登り梁を結合する際の金具としては、以下の特許文献などが公開されている。
【特許文献1】特開平11−315582号公報
【特許文献2】特開2000−154599号公報
【0005】
そのほか図9のように、屋根の頂上に配置されている棟木は、屋根の両端を一本で結ぶ長さであることが好ましいが、公共施設や店舗などのような大規模な建物の場合、長尺の棟木の入手が困難であり、複数の棟木を継ぎ足して使用することになる。その場合、作業量の増加や局地的な強度の低下を招きやすい。
【0006】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、対向するように配置された一対の登り梁の頂部を結合する際、その傾斜角度に依存することなく汎用的に使用可能で、しかも強度にも優れており、さらに大規模な建物にも対応できる部材締結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、頂部を中心として対向するように配置される一対の登り梁の上端面同士を結合する部材締結具であり、一対の登り梁の上端面から、それぞれの軸線方向に延びる軸穴に埋め込まれ且つ固定ピンによって固定される少なくとも一対のシャフトと、各登り梁の上端部に形成された係合溝に跨って差し込まれる羽板を有する主金具と、各登り梁の側面から差し込まれ且つ前記羽板と前記シャフトとを貫通して一体化する結合ピンと、を備えていることを特徴とする部材締結具である。
【0008】
本発明は、屋根の頂部を中心として対向するように配置される二本の登り梁を締結するもので、両登り梁の上端面同士が接触している箇所に使用される。なお本発明で使用する棟木は、屋根の全幅を一本で結ぶ形態ではなく、隣接して配置される登り梁の間だけを結ぶ短いものであり、建物の大きさに合わせて使用本数だけを変えればよいので、長尺のものを用意する必要はない。
【0009】
シャフトは、登り梁の中に埋め込まれる円断面の棒材であり、鋼鉄などを素材とする。このシャフトを埋め込むため、登り梁の上端面を基点として、登り梁の長手方向に延びる円断面の軸穴を事前に形成する。軸穴は、シャフトを完全に埋没できるだけの長さが必要である。なおシャフトは、各登り梁について最低でも一本は使用する必要があり、また軸穴とシャフトとの直径は同一として、過大な隙間は設けない。
【0010】
固定ピンは、軸穴に埋め込まれたシャフトと登り梁とを貫通するように打ち込まれて、双方を一体化するものである。なお固定ピン自体は、汎用のドリフトピンであり、両端がやや先鋭になった単純な円柱形である。この固定ピンを通過させるため、シャフトの側面を貫通する固定孔が形成されており、また登り梁にも、軸穴に交差する止め孔が所定の位置に形成されており、シャフトを軸穴に差し込んでいき、止め孔と固定孔とが同心になった段階で固定ピンを打ち込む。なお固定ピンは、シャフトを固定する以外の用途はなく、シャフト一本当たりの使用数も限定はない。また止め孔については、登り梁の左右側面のほか、上面や底面を起点としてもよい。
【0011】
主金具は、対向する二本の登り梁を一体化するために使用され、少なくとも板状の羽板を有している必要がある。そしてこの羽板を差し込むため、各登り梁の上端面には、上面と底面とを貫きながら登り梁の長手方向に延びる係合溝が形成されている。なお羽板は、登り梁の形状に合わせて、中央部から両側面に向けて斜め下側に進む逆V字形となる。
【0012】
結合ピンは、登り梁の側面に打ち込まれて、羽板とシャフトとを貫通して、登り梁と主金具とシャフトとを一体化する。シャフトには、結合ピンを挿通するための連結孔が形成されており、また主金具の羽板には、保持孔が形成されており、さらに登り梁には、左右側面を貫通する結び孔が形成されている。これらを同心に揃えた後、登り梁の側面から結合ピンを打ち込むと、主金具とシャフトが登り梁と一体化する。なお結合ピンについては、一本のシャフトについて一本だけが使用される。
【0013】
このように構成することで、主金具と登り梁とがシャフトを介して一体化するため、登り梁に作用する荷重は、複数の固定ピンを介してシャフトに伝達する。さらにシャフトに作用する荷重は、結合ピンを介して直接的に主金具に伝達する。したがって登り梁に作用する荷重は、固定ピンの本数に応じて分散して主金具に伝達することができ、登り梁に局地的な過負荷が加わることを防止できる。またシャフトは、結合ピンを中心として自在に回転できるため、登り梁の傾斜角度に依存することなく使用できる。
【0014】
請求項2記載の発明は、頂部を中心として対向するように配置される一対の登り梁の上端面同士を結合すると共に、前記一対の登り梁の上端面同士の結合箇所の側面に一対の棟木を結合する部材締結具であり、一対の登り梁の上端面から、それぞれの軸線方向に延びる軸穴に埋め込まれ且つ固定ピンによって固定される少なくとも一対のシャフトと、各登り梁の上端部に形成された係合溝に跨って差し込まれる羽板を有する主金具と、各登り梁の側面から差し込まれ且つ前記羽板と前記シャフトとを貫通して一体化する結合ピンと、一対の登り梁の上端面同士の結合箇所の側面に跨って当接する前板と棟木の端面に形成された接合溝に差し込まれる側板とで構成される副金具と、前記副金具と棟木とを一体化するための係留ピンと、前記一対の登り梁の結合箇所の側面に対向して配置される一対の副金具を相互に締結する固定具と、を備えており、且つ前記主金具には、前記固定具を挿通するための通し孔が形成されていることを特徴とする部材締結具である。
【0015】
請求項2記載の発明において、主金具やシャフトなどについては、請求項1記載の発明と何ら変わりがない。しかし副金具は本項の最大の特徴であり、登り梁の両側面に接する棟木を締結するために使用され、登り梁の側面に密着する前板と、棟木の端面に形成された接合溝に差し込まれる側板とで構成され、対向する両登り梁を跨ぐように配置される。接合溝は、棟木の端面を起点として棟木の長手方向に切り込まれており、上面から底面まで途切れることはない。なお副金具の形状については、前板の両側面を直角に折り曲げて側板を形成したコの字形など、自在に選択できる。
【0016】
係留ピンは、副金具と棟木とを一体化するために使用され、棟木の側面から副金具の側板に向けて打ち込まれる。この係留ピンを通過させるため、側板を貫通する中孔などが形成されており、また棟木にも、接合溝に直交する横孔が所定の位置に形成されており、副金具の側板を接合溝に差し込んでいき、横孔と中孔とが同心になった段階で係留ピンを打ち込む。
【0017】
固定具は、登り梁の両側面に配置された一対の副金具を引き寄せて一体化するために使用され、ボルトとナットで構成される。一方の副金具の側板の間にボルトを差し込んでいき、その先端を対向する副金具に到達させた後、その先端にナットを螺合して締め上げると、左右両側の副金具が引き寄せられ、副金具の前板が登り梁に密着する。なお登り梁や主金具や副金具には、固定具を通過させるための孔を事前に形成する必要がある。
【0018】
このように構成することで、単に登り梁を締結するだけではなく、登り梁に対して直交する方向に延びる棟木も一体的に締結することが可能になる。しかも主金具や副金具は、据え付け前の段階で登り梁や棟木に取り付け可能で、施工性にも優れている。
【0019】
請求項3記載の発明は主金具の具体例を示すもので、前記主金具は、登り梁に形成された係合溝に差し込まれる二枚の羽板と、該二枚の羽板を結ぶ中板と、で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の部材締結具である。
【0020】
本発明による主金具は、二枚の羽板を平行に並べており、この二枚の羽板を中板によって結んでいる構造である。そのため羽板を差し込む係合溝は、軸穴を挟み込むように二列を平行に形成する必要があり、さらに中板を収容するため、登り梁の上端面を部分的に削り取った段部も必要になる。なお羽板については、原則として二枚とも同形状とするが、結合ピンの打ち込みなどに支障がなければ、個別に形状を変えても構わない。このように構成することで、主金具の強度を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明のように、頂部を中心として軒先に向けて延びる一対の登り梁を主金具やシャフトなどを介して締結することで、登り梁に作用する荷重は、シャフトを介して主金具に伝達されるため、シャフトが埋め込まれている広い範囲で荷重を受け止めることが可能になり、主金具を貫通している結合ピンと登り梁との間に過度な荷重が作用することを防止でき、強度に優れており信頼性も向上する。またシャフトは、登り梁の長手方向に埋め込まれた上、結合ピンだけを介して主金具と一体化している。そのため登り梁に作用する荷重は、登り梁の傾斜角度に影響を受けることなく主金具に伝達できる。したがって、主金具全体を登り梁の中に埋め込むことができるならば、傾斜角度に依存しない汎用的な使用が実現して、量産化などにより費用の軽減も実現する。しかも一対の登り梁の傾斜角度がそれぞれ異なる場合でも、主金具を部材内部に収容できるならば、何らの問題もなく使用できる。
【0022】
請求項2記載の発明のように、副金具を用いるほか、主金具に通し孔を形成するなどの対策によって、登り梁に交差する棟木も簡単な手順で据え付けが実現して、大規模な建物でも効率よく施工可能である。なお棟木は、隣接する登り梁の間だけを結ぶ長さがあればよく、建物の大きさに依存しないため、店舗や公共施設などの大規模な建物でも問題なく対応できる。また請求項3記載の発明のように、主金具に二枚の羽板を用いることで、より大きな荷重が作用した場合でも、万全の信頼性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明による部材締結具の全体構成を示す斜視図である。屋根の傾斜に沿って対向するように配置される二本の登り梁Ha,Hbは、屋根の頂部で端面同士が接触しており、この接触面を横から挟み込むように二本の棟木Ma,Mbが取り付けられる。二本の登り梁Ha,Hbの締結は、主金具11とシャフト21を中心として実現しており、そのうちの主金具11は、同形状の二枚の羽板12と、この羽板12の中央部に取り付けられて左右を結ぶ中板13とで構成され、上から見てH文字のような形状になっている。そして羽板12の両側部には、上辺を切り欠いた保持溝14が形成され、その真下に二個の保持孔15が形成され、いずれも結合ピン24を挿通するために使用される。そのため保持溝14および保持孔15は、左右両側の羽板12とも同心で形成される必要があり、さらに中央を基準として左右対称に配置されている。なお登り梁Hおよび棟木Mを個別に識別できるよう、一部符号の末尾に「a」または「b」を付与している。
【0024】
主金具11を組み込むため、登り梁Ha,Hbの端面周辺には各種の加工を事前に行う必要がある。そのうち二列の係合溝52は、羽板12を差し込むためのもので、登り梁Ha,Hbの上面と底面とを貫き、その長手方向に沿って延びており、羽板12の半分を確実に収容できる長さを有している。また主金具11の中板13を収容できるよう、二列の係合溝52に挟まれる範囲は、端面全体を削り込んで段部53を設けている。そのほか登り梁Ha,Hbに差し込まれた主金具11を固定するため、登り梁Ha,Hbに結合ピン24を打ち込む必要があり、登り梁Ha,Hbの側面には上下に並ぶ二個の結び孔56が加工されている。この結び孔56は、係合溝52と交差しながら反対面まで貫通しており、結合ピン24を摩擦だけで保持できる直径になっている。なお主金具11を係合溝52に差し込んだ際、上側の結び孔56は保持溝14の底部に重なり、また下側の結び孔56は下側の保持孔15と同心になる。そのため本図では上側の保持孔15は使用されない。
【0025】
登り梁Ha,Hbに作用する荷重を主金具11に伝達するのは結合ピン24だけではなく、シャフト21も使用される。シャフト21は鋼製の丸棒で、その側面を貫く連結孔22と固定孔23が形成されており、このいずれもピン類を差し込むためのものだが、用途はそれぞれ異なる。また登り梁Ha,Hbの端面には、二列の係合溝52の間にシャフト21を差し込むための軸穴51が上下に二列加工されており、この中にシャフト21の全体を埋め込んだ後、シャフト21を固定するため、登り梁Ha,Hbの上面や側面のほか底面(図示は省略)から固定孔23に向けて固定ピン25を打ち込む。そのため登り梁Ha,Hbの周囲には、所定の位置に止め孔57を加工しておく。なお止め孔57は、摩擦だけで固定ピン25を保持できる直径とするが、必ずしも反対面まで貫通している必要はない。
【0026】
シャフト21は、固定ピン25によって登り梁Ha,Hbと一体化されるだけではなく、主金具11とも一体化される。シャフト21の連結孔22は、結合ピン24を打ち込むために形成されており、連結孔22を結び孔56と同心に揃えて結合ピン24を打ち込むことで、シャフト21と主金具11とが一体化される。そのため登り梁Ha,Hbに作用する引張荷重は、複数の固定ピン25を介してシャフト21に伝達して、さらにシャフト21から結合ピン24を介して主金具11に伝達する。このように荷重の伝達にシャフト21が介在することで、登り梁Ha,Hbの局地に過度な荷重が作用することを防止でき、ヒビ割れなどの発生を抑えて信頼性を確実に維持できる。
【0027】
一本の登り梁(HaまたはHb)に打ち込むシャフト21は、最低でも一本は必要であり、またシャフト21を貫く固定ピン25の本数についても、一本以上であれば限定はない。当然ながらこれらの使用数は、登り梁Ha,Hbの断面寸法や予想される荷重などに応じて都度決定される。ただし結合ピン24については、一本のシャフト21当たり一本に限定される。
【0028】
本発明は、単に対向する登り梁Ha,Hbを締結するだけではなく、棟木Ma,Mbも一括して締結できることを特徴としている。棟木Ma,Mbの締結には副金具31を用いており、登り梁Ha,Hbの側面に一対の副金具31を配置して、双方の副金具31を引き寄せ合うことで固定している。副金具31は、鋼板をコ字状に折り曲げて形成したもので、中央の前板32と、この前板32の両側から直角方向に延びる側板33とで構成される。前板32は、登り梁Ha,Hbの側面に密着する部分であり、正確な位置決めができるよう円筒状のホゾ34が上下に二個形成されており、その内部はボルト40の頭部やナット41を収容できるよう空洞になっており、その中心にはボルト40を通過させるための丸孔35が形成されている。また側板33には、係留ピン38を通過させるための上溝36と中孔37が形成されているが、これらは従来の金物と同様である。
【0029】
ホゾ34を受け入れるため、登り梁Ha,Hbの両側面にはホゾ穴54が加工されている。このホゾ穴54の中心は、両登り梁Ha,Hbの境界に一致しているため、各々の端面に半円形の穴加工を行っている。さらにホゾ穴54の奥には、ボルト40が通過できるよう抜け穴55が加工されている。そしてホゾ穴54や抜け穴55に対応して、主金具11の中央にも通し孔16が形成されており、この通し孔16の付近では中板13が途切れている。また棟木Ma,Mbの端面周辺には、副金具31の前板32を収容するための凹部62と、側板33を差し込むための接合溝61が加工されている。
【0030】
対向する登り梁Ha,Hbが主金具11によって一体化した後、登り梁Ha,Hbの側面に副金具31の取り付けを行うが、この際はホゾ穴54の中にホゾ34を差し込んだ後、一方の副金具31aの方からボルト40を差し込んでいき、丸孔35や抜け穴55を経て反対側の副金具31bのホゾ34の中に到達させて、その先端にナット41を螺合すると、両副金具31a,31bが登り梁Ha,Hbに引き寄せられた状態で固定される。さらに棟木Ma,Mbの接合溝61に側板33を差し込んでから係留ピン38を打ち込むと、全ての締結が完了する。この係留ピン38を打ち込むため、棟木Ma,Mbの側面には横孔63が加工されている。なお本図では、登り梁Ha,Hbおよび棟木Ma,Mbが完全な対称形で配置されており、金具やピン類なども全て対称形で配置されている。
【0031】
図2は、図1に示す部材締結具を使用する際の手順を示しており、図2(A)はシャフト21を固定する段階で、図2(B)は主金具11を固定する段階である。本発明による部材締結具を実際に使用する際は、まず始めに各部材を所定の形状に加工する必要があり、次に、図2(A)のように登り梁Haの端面に形成された軸穴51aにシャフト21の先端を差し込んでいき、止め孔57aと固定孔23、結び孔56aと連結孔22とが同心になるまでシャフト21を埋め込む。その後、計四箇所に加工されている止め孔57aからシャフト21を貫通する固定ピン25を打ち込むと、固定ピン25は登り梁Haとの摩擦によって不動状態になり、固定ピン25を介して登り梁Haとシャフト21とが一体化する。ただしこの段階では、結び孔56aについては何らの作業も行わない。
【0032】
図2(B)は、図2(A)の次の段階であり、係合溝52aに主金具11の羽板12の左半分を差し込んで、羽板12の保持溝14を上側の結び孔56aと同心に合わせ、同時に下側の保持孔15を下側の結び孔56aと同心に合わせる。その後、両結び孔56aに結合ピン24を打ち込むと、登り梁Haと主金具11とが一体化するほか、主金具11とシャフト21とも結合ピン24を介して一体化する。なお図2の作業は、施工現場以外の製材段階でも実施できる。
【0033】
図3は、図2以降の手順を示しており、図3(A)は、両登り梁Ha,Hbを結合する直前の段階で、図3(B)は結合した後の段階である。図3(A)の登り梁Haは、図2(B)のように主金具11が固定されており、一方の登り梁Hbにも二本のシャフト21が埋め込まれており、固定ピン25によって登り梁Hbの中に固定されている。さらに上下に並んで二個加工されている結び孔56bのうち、上側だけ限定して結合ピン24を打ち込んでおく。その後、図3(A)のように、登り梁Haの上方に登り梁Hbを移動していき、登り梁Haから突出している羽板12の真上に、登り梁Hbの係合溝52bを一致させながら登り梁Hbを徐々に降下させていく。そうすると、羽板12が係合溝52bに差し込まれていき、登り梁Hbの上側の結び孔56bに打ち込まれている結合ピン24が、主金具11の左側の保持溝14で受け止められる。これによって登り梁Hbの仮置きは完了して、後は図3(B)のように、登り梁Hbの下側の結び孔56bに結合ピン24を打ち込むと、対向する登り梁Ha,Hbは、主金具11などを介して一体化する。
【0034】
図4は、図3の状態の後に棟木Ma,Mbを締結する手順を示している。登り梁Ha,Hbの両側面に形成されているホゾ穴54の中に副金具31のホゾ34を差し込んで、副金具31の前板32と登り梁Ha,Hbの側面とを密着させた後、一方の副金具31aの側板33の間からボルト40を差し込んでいき、その先端を対向する副金具31bのホゾ34内に到達させて、ここにナット41を螺合して締め上げると、両側の副金具31a,31bは登り梁Ha,Hbと一体化する。この作業と並行して、棟木Ma,Mbの側面に加工されている横孔63のうち、一番上の一箇所だけに係留ピン38を打ち込んでおく。そして棟木Ma,Mbを副金具31に差し込むと、この係留ピン38が副金具31の上溝36によって受け止められて、棟木Ma,Mbの仮置きが完了する。
【0035】
図5は、一連の手順の最終段階を示しており、図5(A)は棟木Ma,Mbを登り梁Ha,Hbに一体化する段階で、図5(B)は本発明の使用例である。棟木Ma,Mbの仮置きが完了した段階で、残りの横孔63に係留ピン38を打ち込むと、登り梁Ha,Hbと棟木Ma,Mbとが一体化して一連の作業が完了する。この図のように、締結作業が完了すると、各種金具やピンの端面だけが露見しており、何らの突出物もなく、屋根板などの敷設も容易に実施できる。そして本発明を利用して図5(B)のような屋根付近の骨格構造が構築可能であり、登り梁Ha,Hbと棟木Ma,Mbとを効率よく締結できる。
【0036】
図6は、本発明による部材締結具を用いて登り梁Ha,Hbと棟木Ma,Mbとを一体化した際の断面形状を示しており、図6(A)は登り梁Ha,Hbの中央断面図で、図6(B)は棟木Ma,Mbの中央断面図である。図6(A)のようにシャフト21は、登り梁Ha,Hbの中に埋め込まれており、固定ピン25によって締結されている。また結合ピン24は、主金具11とシャフト21との両方を貫いており、シャフト21に作用する荷重を直接的に主金具11に伝達する。なお図中の点線で示す主金具11の羽板12は、登り梁Ha,Hbよりも一回り小形化されており、登り梁Ha,Hbの傾斜角度が変わった場合でも、主金具11が外に飛び出すことはなく、角度の変化による影響を受けない。またシャフト21は、登り梁Ha,Hbの長手方向に埋め込まれており、しかも結合ピン24だけで主金具11と接続しており、登り梁Ha,Hbの傾斜角度に依存せず荷重の伝達ができる。
【0037】
また図6(B)のように、左右両側の副金具31a,31bはボルト40によって引き寄せられているが、このボルト40を通過させるため、主金具11の中板13は上下三枚に分割されており、さらに羽板12にも通し孔16が形成されている。なお副金具31のホゾ34は強度などの問題がなければ省略可能で、前板32を単純な平面状とすることもできる。
【0038】
図7は、本発明による部材締結具が、登り梁Ha,Hbの傾斜角度に対して柔軟に対応できることを示す登り梁の中央断面図であり、登り梁Ha,Hbの傾斜角度を左右で変えている。本図のように主金具11の形状を登り梁Ha,Hbよりも一回り小形化することで、登り梁Ha,Hbの角度が左右で異なる場合でも、主金具11が登り梁Ha,Hbから突出することはなく、しかもシャフト21は登り梁Ha,Hbの長手方向に埋め込まれるため、傾斜角度に影響を受けることもなく、結合ピン24を介して確実に荷重を伝達できる。
【0039】
図8は、図1とは別形態の部材締結具であり、主金具11’が、羽板12一枚だけで構成されている。図8(A)は全体を示す斜視図で、図8(B)は、主金具11’に対応するシャフト21’の形状を示している。図8(A)のように、主金具11’は、一枚の羽板12だけで構成されており、これを差し込むための係合溝52は、各登り梁Ha,Hbに一列だけが形成される。またシャフト21’には割り溝26が形成されており、この中に羽板12が差し込まれて、双方を貫通する結合ピン24を打ち込むと、対向する登り梁Ha,Hbが一体化する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による部材締結具の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す部材締結具を使用する際の手順を示しており、(A)はシャフトを固定する段階で、(B)は主金具を固定する段階である。
【図3】図2以降の手順を示しており、(A)は、両登り梁を結合する直前の段階で、(B)は結合した後の段階である。
【図4】図3の状態の後に棟木を締結する手順を示している。
【図5】一連の手順の最終段階を示しており、(A)は棟木を登り梁に一体化する段階で、(B)は本発明の使用例である。
【図6】本発明による部材締結具を用いて登り梁と棟木とを一体化した際の断面形状を示しており、(A)は登り梁の中央断面図で、(B)は棟木の中央断面図である。
【図7】本発明による部材締結具が、登り梁の傾斜角度に対して柔軟に対応できることを示す登り梁の中央断面図である。
【図8】図1とは別形態の部材締結具であり、主金具が羽板一枚だけで構成されている。(A)は全体を示す斜視図で、(B)はこの主金具に対応するシャフトの形状を示している。
【図9】一般的な登り梁と棟木の配置形態を示す斜視図で、屋根の頂部に沿って敷設されている棟木の両側面に登り梁が配置されている。
【符号の説明】
【0041】
11 主金具
12 羽板
13 中板
14 保持溝
15 保持孔
16 通し孔
21 シャフト
22 連結孔
23 固定孔
24 結合ピン
25 固定ピン
26 割り溝
31 副金具
32 前板
33 側板
34 ホゾ
35 丸孔
36 上溝
37 中孔
38 係留ピン
40 ボルト(固定具)
41 ナット(固定具)
51 軸穴
52 係合溝
53 段部
54 ホゾ穴
55 抜け穴
56 結び孔
57 止め孔
61 接合溝
62 凹部
63 横孔
Ha,Hb 登り梁
Ma,Mb 棟木


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部を中心として対向するように配置される一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面同士を結合する部材締結具であり、
一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面から、それぞれの軸線方向に延びる軸穴(51a,51b)に埋め込まれ且つ固定ピン(25)によって固定される少なくとも一対のシャフト(21)と、
各登り梁(Ha,Hb)の上端部に形成された係合溝(52a,52b)に跨って差し込まれる羽板(12)を有する主金具(11)と、
各登り梁(Ha,Hb)の側面から差し込まれ且つ前記羽板(12)と前記シャフト(21)とを貫通して一体化する結合ピン(24)と、
を備えていることを特徴とする部材締結具。
【請求項2】
頂部を中心として対向するように配置される一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面同士を結合すると共に、前記一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面同士の結合箇所の側面に一対の棟木(Ma,Mb)を結合する部材締結具であり、
一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面から、それぞれの軸線方向に延びる軸穴(51a,51b)に埋め込まれ且つ固定ピン(25)によって固定される少なくとも一対のシャフト(21)と、
各登り梁(Ha,Hb)の上端部に形成された係合溝(52a,52b)に跨って差し込まれる羽板(12)を有する主金具(11)と、
各登り梁(Ha,Hb)の側面から差し込まれ且つ前記羽板(12)と前記シャフト(21)とを貫通して一体化する結合ピン(24)と、
一対の登り梁(Ha,Hb)の上端面同士の結合箇所の側面に跨って当接する前板(32)と棟木(Ma,Mb)の端面に形成された接合溝(61a,61b)に差し込まれる側板(33)とで構成される副金具(31a,31b)と、
前記副金具(31a,31b)と棟木(Ma,Mb)とを一体化するための係留ピン(38)と、
前記一対の登り梁(Ha,Hb)の結合箇所の側面に対向して配置される一対の副金具(31a,31b)を相互に締結する固定具(40,41)と、
を備えており、
且つ前記主金具(11)には、前記固定具(40)を挿通するための通し孔(16)が形成されていることを特徴とする部材締結具。
【請求項3】
前記主金具(11)は、登り梁(Ha,Hb)に形成された係合溝(52a,52b)に差し込まれる二枚の羽板(12)と、該二枚の羽板(12)を結ぶ中板(13)と、で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の部材締結具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−261108(P2008−261108A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103084(P2007−103084)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】