説明

重合カテキン含有飲料

【課題】高濃度で重合カテキンを含有する飲料において生じる苦味、渋味を低減する。
【解決手段】0.1000重量%以上の濃度で重合カテキンを含有する飲料に高甘味度甘味料を配合する。甘味料としては、重合カテキンの生理効果であるリパーゼ阻害活性をもたらすことを目的とした飲料には、その摂取カロリーが低くなるように甘味料を選択するのが好ましい。好ましい高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、ステビア甘味料、スクラロース、アセスルファムKまたはアリテームが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合カテキンが強化された飲料に関し、より詳細には、高甘味度甘味料を添加することにより呈味が改善された重合カテキンが強化された飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、ポリフェノールの生理効果が注目され、ポリフェノールが強化された飲料が開発されている。例えば、ポリフェノールの一つであるカテキン類について、コレステロール上昇作用やアミラーゼ活性阻害作用などが知られ、これらを強化した飲料も開発されている。そして、これらカテキン類配合飲料について、高濃度に配合すると苦味又は渋味を有することから、飲みやすい飲料とするために、苦味又は渋味を低減させる方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、渋味を呈する食品にアスパルテームと甘味の閾値以下の量の甘味剤を配合することにより渋味をマスキングすることが開示されている。特許文献2には、苦渋味を感じる程度のポリフェノール(例えば、紅茶ポリフェノール、緑茶ポリフェノール、リンゴポリフェノール)と、当該苦渋味を緩和する程度の高甘味度甘味料及び/又は糖アルコールを添加した紅茶飲料が開示されている。特許文献3には、お茶飲料の渋味を低減し、かつコク味を付与する方法として、味質改善剤としてステビア抽出物を使用することが開示されている。特許文献4には、高濃度のカテキン類を含有する容器詰飲料で、苦味、渋味が低減され長期間の飲用に適した飲料として、特定量の(A)非重合カテキン類、(B)キナ酸又はその塩、(C)甘味料、(D)ナトリウムイオン、(E)カリウムイオンを含有し、(B)/(A)が0.0001〜0.5であり、シュウ酸含有量が(A)に対して重量比で0.06以下である容器詰飲料が開示されている。
【0004】
最近、茶由来の重合カテキンの生理効果が着目され、そのリパーゼ阻害作用についての報告がなされており、重合カテキンを強化した飲料についての開示がなされている(特許文献5)。この文献には、ウーロン茶を単純に濃度を濃くすると、苦味・渋味の増加及びカフェインの増量により飲料としては適さないこと、これに対して、ウーロン茶に含まれる重合カテキンを多く含む高分子ポリフェノール画分を単離して飲食品に添加した場合には飲食品の香味を損なうことなく、中性脂肪の上昇を抑える効果が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開平10−262600号公報
【特許文献2】特開2007−117087号公報
【特許文献3】特開2005−278467号公報
【特許文献4】特許第3590050号公報
【特許文献5】国際公開公報WO2005/077384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、重合カテキンは、非重合カテキンやその他ポリフェノールと比較して苦味又は渋味が少ないが、本発明者らの検討によると、重合カテキンの生理効果を期待して、高濃度(0.1000重量%以上)で配合した場合に、重合カテキン由来の苦味、渋味により、飲用に不都合が生じることがわかった。
【0006】
本発明は、このように高濃度で重合カテキンを含有する飲料において生じる苦味、渋味を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、0.1000重量%以上の濃度で重合カテキンを含有する飲料に高甘味度甘味料を配合することで、重合カテキンの苦味、渋味を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.0.1000重量%以上の重合カテキンと、当該重合カテキン由来の苦味及び/又は渋味を低減する濃度の高甘味度甘味料とを含有する飲料;
2.非重合カテキンが0.0100重量%未満である、1に記載の飲料;
3.重合カテキンがウーロン茶由来のものである、1又は2に記載の飲料;
4.容器詰め飲料である、1〜3のいずれか1項に記載の飲料;
5.高甘味度甘味料を用いることを特徴とする、重合カテキンの苦味及び/又は渋味を低減する方法;
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、苦味・渋味を殆ど又は全く伴うことなく、高濃度の重合カテキンを摂取することを可能とする。従って、香味を損なうことなくさまざまな有益な効果を発揮しうる、重合カテキンが強化された飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、高濃度で重合カテキンを含有する飲料に、高甘味度甘味料を添加することで、重合カテキンの苦味、渋味を低減することを特徴とする。
(重合カテキン)
本明細書における「重合カテキン」とは、以下の条件のHPLCにより分析される成分で、テアフラビン(栗田リサーチセンター製)と同じ溶出時間(参考溶出時間:24min.)のピークとなる成分である(図1参照)。
【0011】
HPLCの条件:
・カラム:TSK-gel ODS-80TsQA(4.6mmφx150mm、東ソー株式会社)
・移動相:A: 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=900:100:0.5
B: 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=200:800:0.5
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;分析開始から5分後まではB液0%、
5分から11分まででB液8%、
11分から21分まででB液10%、
21分から22分まででB液100%、
22分から30分まで100%保持、
30分から31分までで0%
・検出:A280nm (データ採取時間は30分)、ピーク面積で定量。
・注入量:10μL
・標準物質:ウーロンホモビスフラバンB(略記:OHBF-B)
重合カテキンの量は、標準物質としてOHBF−Bを用い、検量線を作成することにより求められる。なお、標準物質であるOHBF−Bは、例えば、Chem. Pharm. Bull 37(12), 3255-3563(1989)に記載の方法や特開2005−336117号公報の実施例3の方法に従って合成したもの(好ましくは純度98%以上の純度まで精製したもの) 、茶葉より単離したものなどを用いることができる。
【0012】
この重合カテキンとしては、非重合のカテキン類((+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−カテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート)が、茶由来酵素、酵素、光等により複数個連結した構造を持つものが例示でき、具体的にはテアルビジン等の慣用名で呼ばれている重合ポリフェノール、式(1)のエピガロカテキンガレート二量体、
【0013】
【化1】

【0014】
式(2)のエピガロカテキンガレート三量体、
【0015】
【化2】

【0016】
式(3)のエピガロカテキンの二量体、
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立してHまたはガロイル基である。)
式(4)のエピガロカテキンの三量体
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立してHまたはガロイル基である。)
式(5)のウーロンテアニン-3'-O-ガレート
【0021】
【化5】

【0022】
等の重合ポリフェノールが挙げられる。
尚、非重合カテキンとは、カテキン類((+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−カテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート)の重合していない単量体のものをいう。
【0023】
本発明の重合カテキンは、茶葉を溶媒抽出することにより得られる。原料となる茶葉としては、不発酵茶である緑茶、半発酵茶であるウーロン茶、発酵茶である紅茶のうち1種類以上を用いることができるが、なかでも、重合カテキンを多く含有する半発酵茶又は発酵茶の茶葉、特にウーロン茶の茶葉を用いるのがよい。抽出溶媒としては、水または熱水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルなどが用いられ、これらのうちの1種類を、もしくは2種類以上の混合物を用いて抽出することができる。この茶葉の溶媒抽出物は、重合カテキンとしてそのまま用いてもよいし、濃縮又は精製して用いてもよい。
【0024】
非重合のカテキンやカフェインは苦渋味を有するため、その配合量が大きくなると、飲食品自体の呈味を損なうことがあるが知られている。したがって、本発明の重合カテキンとしては、上記の茶葉抽出物から非重合のカテキン及び/又はカフェインを選択的に除去する処理を行って得られる溶媒抽出物或いはその濃縮物又は精製物を用いるのが好ましい。この非重合のカテキン及び/又はカフェインを選択的に除去する処理を行って得られる溶媒抽出物としては、WO2005/077384号公報に記載の非重合のカテキンの4倍以上の濃度で重合カテキンを含有するもの等が例示される。本発明者らの検討によると、重合カテキンを高濃度で含有する飲料において、非重合のカテキンが0.0150重量%以上(好ましくは0.010重量%以上)になると、苦味、渋味を顕著に感じる。したがって、本発明の飲料が非重合のカテキンを含有する場合には、その濃度は0.010重量%未満であることが好ましい。
【0025】
本発明において飲料に用いる重合カテキンの形態は特に限定されず、液状でも、噴霧乾燥や凍結粉砕などにより粉末化されたものであってもよい。
(高甘味度甘味料)
本発明においては、甘味料を添加することが重合カテキンの苦味、渋味を低減するのに重要である。
【0026】
甘味料としては、甘味を感じるものであれば特に制限されないが、重合カテキンの生理効果であるリパーゼ阻害活性をもたらすことを目的とした飲料を摂取する際には、その摂取カロリーが低くなるように甘味料を選択するのが好ましい。したがって、砂糖に比べて強い甘味を有する(例えば砂糖の100倍以上の甘味を有する)高甘味度甘味料が好適に用いられる。
【0027】
高甘味度甘味料としては、天然又は合成の高甘味度甘味料が使用でき、例としては、ペプチド系甘味料、例えばアスパルテーム、アリテーム等;配糖体系甘味料、例えばステビア甘味料(ステビア抽出物およびステビアを酵素処理してブドウ糖を付加した酵素処理ステビアおよびステビアの甘味成分の中で最も甘味質のよいレバウディオサイドAを含む)、カンゾウ抽出物等;蔗糖誘導体、例えばスクラロース等;合成甘味料、例えばアセスルファムK、サッカリン等が挙げられる。好ましい高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、ステビア甘味料、スクラロース、アセスルファムKまたはアリテームが挙げられる。また、ネオテームなど2007年9月現在日本で未認可の甘味料や将来新たに開発される甘味料に関しても、本発明に用いられる甘味料として挙げられる。本発明に用いられる甘味料は、単独でまたは2種類以上を組合せて用いてもよい。なお、高甘味度甘味料は、砂糖と比較して、甘味や苦味が後を引き、後味が好ましくない場合があることが知られているが、本発明の高濃度の重合カテキンを含有する飲料では、重合カテキンの苦味や渋味が低減されるとともに、高甘味度甘味料特有の好ましくない異味や後味が低減されることも特徴である。
(重合カテキン含有飲料)
本発明の飲料は、苦味や渋味が感じられる濃度の重合カテキンと、その苦味や渋味を低減する濃度の高甘味度甘味料とを含有する。重合カテキンの苦味や渋味が感じられる濃度とは、具体的には、0.1000重量%以上であり、濃度の増加に伴い苦味・渋味が高まる。したがって、本発明は、重合カテキンを0.1000重量%以上含有する飲料を対象とする。
【0028】
高甘味度甘味料の濃度は、重合カテキン含有飲料に求められる甘さの質や甘味料の甘味度等により適宜決定すればよいが、重合カテキンの苦味や渋味を改善する目的で配合するならば、その濃度は、通常、重合カテキンを100重量部として、10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部、より好ましくは25〜55重量部である。
【0029】
本発明の高濃度で重合カテキンを含有する飲料には、上記重合カテキンと高甘味度甘味料の他、酸味料、甘味料、果汁、香料、その他添加物等を、必要に応じて配合することができる。
【0030】
本発明の飲料は、リパーゼ阻害活性等の生理効果を有する飲料であるから、継続して摂取できる形態であることが好ましく、容器詰飲料とすることが好ましい。容器としては、特に限定されるものではなく、紙パック、ペットボトル、缶、瓶等を例示できる。
【0031】
なお、本発明の飲料を容器詰飲料とする場合、リパーゼ阻害活性を期待して、1日あたりの重合カテキンの摂取量が200mg以上、好ましくは250mg以上となるように、設計することが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
製造例1 重合カテキンの製造
温水(95℃)に0.15重量%の重曹を添加した重曹液7800kgを用いて、600kgのウーロン茶葉に抽出処理を施し、ウーロン茶抽出液約7000kgを得た。この抽出液の液温を60-65℃に保持しながら、400kgの粒状活性炭(クラレ社製GW-H32/60)に通液して非重合カテキン、カフェインを除去し、重合カテキン濃縮液を得た。この重合カテキン濃縮液を減圧濃縮し、Brix11の重合カテキン含有ウーロン茶濃縮エキス(以下、「重合カテキンエキス」という)約900kgを得た。得られた重合カテキンエキス中の重合カテキンをHPLCで測定した。HPLCの測定条件は以下のとおり。
HPLCの条件:
・カラム:TSK-gel ODS-80TsQA(4.6mmφx150mm、東ソー株式会社)
・移動相:A液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=900:100:0.5
B液 水:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=200:800:0.5
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;分析開始から5分後まではB液0%、
5分から11分まででB液8%、
11分から21分まででB液10%、
21分から22分まででB液100%、
22分から30分まで100%保持、
30分から31分までで0%
・検出:A280nm (データ採取時間は30分)、ピーク面積で定量。
・注入量:10μL
・標準物質:ウーロンホモビスフラバンB(略記:OHBF-B)
分析結果を図1に示す。重合カテキンエキス中の重合カテキン濃度は重量基準として12000ppmであり、非重合カテキン濃度、カフェイン濃度は、それぞれ800ppm、20ppmであった。
【0033】
実施例1
製造例1で得られた重合カテキンエキスを用いて、重合カテキン濃度が重量基準として1000ppmとなる水溶液を調製した。このとき非重合カテキンの濃度は、重量基準として66.7ppmであった。これにアスパルテーム(パルスイートダイエット:味の素株式会社)を0.025または0.05重量%(それぞれ甘味度として5または10)添加し、5人のパネラーによる官能評価を行った。また、製造例1で得られた重合カテキンエキスからHPLCで重合カテキンのピーク(溶出時間:約25分)を分取して得られた重合カテキンを、上記の飲料に添加して、重合カテキン濃度が重量基準として2000ppmとなる水溶液も調製し、同様に官能評価を行った。このときの非重合カテキンの濃度は、重量基準として70ppmであった。
【0034】
評価は、アスパルテームを加えていない1000ppm又は2000ppmの重合カテキン水溶液を対照として、どちらが好ましいかを評価した。結果を表1に示す。表1はアスパルテームを添加した飲料の方が対照よりも好ましいと回答したパネラーの人数を表す。表より明らかなとおり、すべてのパネラーが、対照と比べ、アスパルテームを添加した飲料の方が飲みやすく、重合カテキン高含有飲料の苦味や渋味が低減されていると回答した。また、苦味や渋味の低減だけでなく、後味がさっぱりしている(後味のキレが良い)と評価したパネラーもいた。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、重合カテキンのHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1000重量%以上の重合カテキンと、当該重合カテキン由来の苦味及び/又は渋味を低減する濃度の高甘味度甘味料とを含有する飲料。
【請求項2】
非重合カテキンが0.0100重量%未満である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
重合カテキンがウーロン茶由来のものである、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
容器詰め飲料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
高甘味度甘味料を用いることを特徴とする、重合カテキンの苦味及び/又は渋味を低減する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−65872(P2009−65872A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235806(P2007−235806)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】