説明

重荷重用空気入りラジアルタイヤ

【課題】本発明の目的は、タイヤの耐偏磨耗性と操縦安定性とを両立させた、重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【解決手段】本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスの径方向外側に、1層以上のベルト補強層、2層以上の傾斜ベルト層及び、トレッドを順に備え、ベルト補強層のタイヤ幅方向の幅は、トレッド幅TWの80%以上であり、傾斜ベルト層のうち少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅は、ベルト補強層のいずれのベルト補強層よりタイヤ幅方向の幅より大きく、タイヤにトレッド端より径方向内側、且つ径方向最外側の傾斜ベルト層より径方向外側において、タイヤ周方向に延びる2つ以上のサイプを設け、当該サイプの各々は、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大負荷重量を荷重した際に閉塞することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りラジアルタイヤ、特に、耐偏磨耗性と操縦安定性とを両立させた重荷重用空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック及びバス用タイヤ、建設車両用タイヤなどの重荷重用の空気入りラジアルタイヤにおいて、磨耗性能を向上させるための様々な工夫がなされている。
特に、タイヤの耐磨耗性と耐偏磨耗性とを共に向上させる手法として、例えば、特許文献1には、タイヤのカーカスの径方向外側に、ベルト補強層と傾斜ベルト層とを順に配置したタイヤが記載されている。
【0003】
上記の構造によると、まず傾斜ベルト層によって、タイヤ周方向及び幅方向からなる面におけるトレッドゴムの面内せん断剛性を高めて、タイヤの耐磨耗性を向上させることができる。
また、これと共に、タイヤ周方向に延びるコードからなるベルト補強層によって、トレッドゴムの径方向への成長を抑制して、トレッドゴムの径成長量をタイヤ幅方向に均一化し、タイヤの耐偏磨耗性を向上させることができる。
この構造は、近年のタイヤの偏平化、高重量化に対して、タイヤの形状保持や耐久性の観点からも有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−184371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のタイヤは、ベルト補強層によって補強された部分の接地長が他の部分と比べて小さくなり、タイヤの接地面積が減少するため、操縦安定性が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、タイヤの耐偏磨耗性と操縦安定性とを両立させた重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。
その結果、発明者は、上述のベルト補強層と傾斜ベルト層とを備えた重荷重用タイヤにおいて、まずベルト補強層及び傾斜ベルト層のタイヤ幅方向の幅を広幅化することにより、タイヤ幅方向の広範囲にて、タイヤの耐偏磨耗性をより向上させることができることを知見した。
【0008】
また、発明者は、上記したベルト補強層及び傾斜ベルト層のタイヤ幅方向の幅を広幅化したタイヤは、接地端部付近における磨耗量が大きいことを見出した。
発明者は、このことが当該端部付近の対応位置にまでベルト補強層が延びていないためこの位置での接地圧が低下し、これにより、タイヤが転動中に、トレッドゴムにタイヤの回転方向とは反対向きのせん断変形が生じて、引きずり磨耗を招くことによるものであることを知見した。
そこで、発明者は、トレッドゴムに、回転方向と同じ向きのせん断変形を与えることで上記反対向きのせん断変形と相殺することができることに着目し、タイヤの適切な位置に複数のサイプを設けることが有効であることの新規知見を得た。
【0009】
さらに、発明者は、上記のサイプをタイヤの荷重時に閉塞する形状にすることにより、タイヤの幅方向端部付近の剛性の過度の低下を抑制し、タイヤの操縦安定性の低下を抑制することができることも併せて見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づくものであり、その要旨構成は、以下の通りである。
(1)一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスの径方向外側に、1層以上のベルト補強層、2層以上の傾斜ベルト層及び、トレッドを順に備える、重荷重用空気入りラジアルタイヤであって、
前記ベルト補強層の少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅は、トレッド幅TWの80%以上であり、
前記傾斜ベルト層のうち少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅は、前記2層以上のベルト補強層のいずれのベルト補強層よりタイヤ幅方向の幅より大きく、
前記タイヤはサイドウォール部において、トレッド端より径方向内側、且つ径方向最内側の傾斜ベルト層より径方向外側において、タイヤ周方向に延びる2つ以上のサイプを備え、
前記2つ以上のサイプの各々は、前記タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に閉塞することを特徴とする、重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
ここで、「規定リム」とは所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)のことであり、規定内圧とは同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことである。
また、最大荷重とは、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。
かかる産業規格については、タイヤが生産もしくは使用される地域においてそれぞれ有効な規格が定められており、これらの規格は、例えば、アメリカ合衆国では“The Tire and Rim Association Inc. Year Book”(デザインガイドを含む)により、欧州では、“The European Tire and Rim Technical Organization Standards Manual”により、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”によりそれぞれ規定されている。
【0011】
(2)タイヤ周上の任意の幅方向断面において、前記2つ以上のサイプの断面積の総和が20mm2以上である、上記(1)に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【0012】
(3)前記2つ以上のサイプの各々は、開口幅が3mm以下である、上記(1)又は(2)に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【0013】
(4)前記2つ以上のサイプの各々は、開口幅が1.5mm以上3mm以下であり、深さが1.5 mm以上3mm以下である、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【0014】
(5)前記サイプの少なくとも1つが、トレッド端から径方向内側3mm以内に位置する、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タイヤの耐偏磨耗性と操縦安定性とを両立させた重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかるタイヤの幅方向概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【図5】比較例にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【図6】比較例にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【図7】従来例にかかるタイヤの幅方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の重荷重用空気入りタイヤ(以下、タイヤと称する)について詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤの幅方向断面図であり、タイヤ赤道面CLを境界とする半部のみを概略的に示している。図2は、図1に示すタイヤのトレッド端TE付近の様子を示す幅方向部分断面図である。
図1、2は、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態としたときのタイヤの様子を示している。
図1に示すように、本発明のタイヤは、慣例に従い、一対のビード部(図示例ではビードコア1)にトロイダル状に跨るカーカス2の径方向外側に、1層以上のベルト補強層3、2層以上からなる傾斜ベルト4及び、トレッド5を順に備える。
図示例では、ベルト補強層3は、ベルト補強層3a、3bの2層からなり、各層はタイヤ周方向に対して0°〜30°の角度で傾斜して延びるコードからなる。例えば、コードは非伸張性のスチールコードを用いることができる。また、コードは直線状でもよく、あるいは、例えば波型に型付けを施したコード(以下、波型コードという)のような迂曲したコードでもよい。
さらに、図示例では、傾斜ベルト4は、傾斜ベルト層4a、4bの2層からなり、層間で互いに交差するコードからなる。例えば、傾斜ベルトのコードは、タイヤ周方向に対し、40°〜70°の角度で傾斜して直線状に延びる。
なお、図示例では、傾斜ベルト層4aは、径方向にはほとんど変位せずに延びている。
【0018】
ここで、本発明のタイヤにおいては、ベルト補強層3の少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅が、トレッド幅TWの80%以上である。
また、傾斜ベルト層4のうち、少なくとも1層のベルト層のタイヤ幅方向の幅は、ベルト補強層3のいずれの層のタイヤ幅方向の幅より大きい。図示例では、傾斜ベルト層4aのタイヤ幅方向の幅が、ベルト補強層3のいずれの層のタイヤ幅方向の幅より大きい。
【0019】
さらに、図1、2に示すタイヤは、トレッド端TEより径方向内側、且つ傾斜ベルト層4aより径方向外側において、タイヤ周方向に延びる3つの細溝状のサイプ6が設けられている。図示例では、サイプ6は、幅方向断面において、半楕円状の形状である。
このように、本発明のタイヤにあっては、トレッド端より径方向内側、且つ径方向最外側の傾斜ベルト層より径方向外側において、タイヤ周方向に延びる2つ以上のサイプを備えることが肝要である。
また、上記2つ以上のサイプの各々は、上記タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に閉塞することが肝要である。
以下、本発明の作用効果について説明する。
【0020】
本発明によれば、まず、ベルト補強層の各層のタイヤ幅方向の幅が、トレッド幅TWの80%以上であることにより、トレッド踏面の接地圧をタイヤ幅方向の広範囲にて均一にすることができる。このため、タイヤの耐偏磨耗性を向上させることができる。
また、本発明のタイヤは、傾斜ベルト層のうち少なくとも1層のベルト層のタイヤ幅方向の幅が周方向ベルト層のいずれの層のタイヤ幅方向の幅より大きいため、上述した面内せん断剛性を幅方向の広い範囲にて高めて、タイヤの耐磨耗性を向上させることができる。
【0021】
さらに、本発明のタイヤにおいては、トレッド端より径方向内側、且つ径方向最内側の傾斜ベルト層より径方向外側において、タイヤ周方向に延びる2つ以上のサイプを備えるため、特に上記最大幅傾斜ベルト層の端部より幅方向外側において、トレッドゴムが径方向に押しつぶされる変形を増大する。これにより、ゴムの非圧縮性によってトレッドゴムのタイヤ周方向の変形が増大して、タイヤ回転方向のせん断変形が増大する。その結果、上述した引きずり磨耗によるタイヤ回転方向とは反対方向のせん断変形を相殺し、上記最大幅傾斜ベルト層端部より外側の接地圧の低下を抑制して、タイヤの耐偏磨耗性を向上させることができる。
【0022】
ここで、上記各サイプは、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に閉塞、すなわち、サイプ壁同士が接触するため、タイヤの転動時において、トレッド端付近のトレッドゴムの過剰な変形を抑制し、タイヤの操縦安定性の低下を抑制することができる。
このことは、特に、大きな横力が発生する車両旋回時における、トレッドゴムの大きな変形に対して有効である。
【0023】
上記サイプは、タイヤ周上の任意の幅方向断面において、2つ以上のサイプの断面積の総和が20mm2以上であることが好ましい。
20mm2以上とすることにより、上述のトレッドゴムが径方向に押しつぶされる変形を増大させる効果がより発揮できるからである。
また、ショルダー端部の磨耗ボリュームを確保するため、80mm2以下とすることが好ましい。
なお、各サイプはタイヤ一周上にわたって連続していなくてもよく、不連続な部分があっても良い。
【0024】
さらに、上記サイプの各々は、開口幅を1.5 mm以上3mm以下とすることが好ましい。1.5mm以上とすることで、上述のトレッドゴムが径方向に押しつぶされる変形を増大させる効果がより発揮できるからであり、一方で、3mm以下とすることで、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に確実に閉塞しやすくなるためである。
また、上記サイプの各々の深さを1.5mm以上3mm以下とすることが好ましい。1.5mm以上とすることで、上述のトレッドゴムが径方向に押しつぶされる変形を増大させる効果がより発揮できるからであり、一方で、3mm以下とすることで、タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に確実に閉塞しやすくなるためである。
【0025】
また、上記サイプの少なくとも1つが、トレッド端から径方向内側10mm以内に位置することが好ましい。トレッド端に近い位置にサイプを位置させることで、上述したトレッド端付近の剛性を適度に低下させる効果を確実にするためである。
ここで、「位置する」とは、少なくとも1つのサイプ全体がトレッド端から径方向内側10mm以内に位置することを意味する。
なお、サイプの形状は、サイプの底部に向かってサイプの幅が漸減することもできるが、底部における幅が開口部における幅より広い、いわゆる袋状でもよい。
また、サイプの底部におけるクラックの発生を防止するため、サイプの底部は角部を有さずに、曲率を有する形状とすることが好ましい。サイプは、例えば、底部が湾曲した断面半楕円状の細溝状、断面フラスコ状などの形状とすることができる。
【0026】
ところで、本発明のタイヤは、ベルト補強層3の少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅が、タイヤ幅の70%以上、より好ましくは75%以上で、90%以下であることが好ましい。
なぜなら、70%以上とすることでトレッド踏面の接地圧をタイヤ幅方向の広範囲にて均一にすることができ、タイヤの耐偏磨耗性を向上させることができるからである。また、75%以上とすることで、この効果がより発揮できる。
一方で、90%以下とすることで、耐久性を確保することができるからである。
ここで、ベルト補強層の幅を70%以上とする場合には、荷重時にベルト補強層の端部には、大きな層間せん断歪みが発生する。この場合、ベルト端部を起点とするセパレーションを防止するため、ベルト補強層の端部と隣接する傾斜ベルト層4aとの間は3mm以上の層間間隔を設けることが好ましい。
また、図2に示すように、ベルト補強層3bの端部と、傾斜ベルト層4aの端部との間に、ベルト補強層3bのコーティングゴムより軟らかい層間ゴム7を配設することが好ましい。
この層間ゴム7のモジュラス(100%伸張時モジュラス)は5MPa以下であることが好ましい。100%伸張時モジュラスとは、JISK6251(2004年度)に準拠して、所定の温度、周波数、歪の条件の下で動的歪を与えた際の動的応力を計測することにより算出した値である。
【0027】
ここで、ベルト補強層3bに隣接する傾斜ベルト層4aは、ベルト補強層3bよりタイヤ幅方向の幅が5mm以上大きいことが好ましく、10mm以上大きいことがより好ましい。幅方向に広範囲で面内せん断剛性を高めてタイヤの耐磨耗性を向上させることができるからである。
さらに、傾斜ベルト層4aの径方向外側に配置される傾斜ベルト層4bの端部は、傾斜ベルト層4aの端部より5mm以上幅方向内側であることが好ましく、10mm以上幅方向内側であることがより好ましい。ベルト端が幅方向内側であるほど、耐久性を確保しやすいからである。
一方で、傾斜ベルト層4bの端部は、傾斜ベルト層4aの端部より幅方向内側30mm以下であることが好ましい。タイヤの耐偏磨耗性を確保するためである。
なお、上述の面内せん断剛性を高めるために、傾斜ベルト層は、層間で互いに交差していることが好ましい。また、傾斜ベルト層は、タイヤ周方向に対し、40°以上の角度で傾斜して延びるコードからなることが好ましく、コードが50°以上の角度で傾斜して延びていることがより好ましい。40°以上とすることで、ベルト補強層との間のせん断歪みを低減して、タイヤの早期の故障を防止でき、50°以上とすることで、よりこの効果が得られるからである。
一方で、圧縮歪みによるコード折れ性を確保するため、傾斜ベルト層のコードの周方向に対する傾斜角度は、70°以下とすることが好ましい。
【0028】
また、図2に示すように、傾斜ベルト層4aの端部の径方向内側への落ち込みを防止して、製品タイヤの所期した形状を確保するため、クッションゴム8を配設することが好ましい。このクッションゴム8は、傾斜ベルト層4aの端部の径方向内側、且つベルト補強層3a、3bの端部に隣接する領域に配置するのが好ましい。クッションゴムとしては、上記100%伸張時モジュラスが1.5〜6.5MPaのゴムを用いることができる。
【実施例】
【0029】
本発明の効果を確かめるため、本発明にかかる発明例タイヤ1〜5と、比較例にかかるタイヤ1〜3を試作した。また、従来例タイヤを用意した。
発明例タイヤ1〜5は、表1、2に示すように、本発明に従う適切な幅方向の幅を有する、2層のベルト補強層及び2層の傾斜ベルトを有し、さらに本発明に従う周上に連続するサイプを有する。
また、比較例1に係るタイヤは、サイプを備えておらず、周方向ベルト層及び傾斜ベルト層の幅方向の幅が発明例タイヤと異なっている。
さらに、比較例2、3に係るタイヤは、サイプではなく、図6に示す、断面略半円状の凹部9を有する点で各発明例タイヤと異なっている。
加えて、従来例タイヤは、サイプを備えておらず、周方向ベルト層及び傾斜ベルト層の幅方向の幅が発明例及び比較例タイヤと大幅に異なっている。
各タイヤの諸元は、表1、2に示してある。
【0030】
ここで、表1において、「角度」とはタイヤ周方向に対する傾斜角度であり、2つの傾斜ベルト層4a、4bは、互いに交差する。「幅」とはタイヤ幅方向の幅である。「比」とは、タレッド幅に対するベルト補強層の幅方向の幅の割合を百分率で表すものである。
また、「3b−4a」とは、ベルト補強層3bと傾斜ベルト層4aとの層間間隔(mm)であり、「4a−4b」とは、傾斜ベルト層間の間隔(mm)である。
さらに、「3bの端部での厚さ」とは、ベルト補強層3bの端部での層間ゴムの厚さ(mm)である。なお、「100%モジュラス」とは、上述の100%伸張時モジュラスを意味する。
【0031】
また、表2において、「サイプ」とは、トレッド端より径方向内側、且つ傾斜ベルト層4aより径方向外側のタイヤ外面にサイプを有することを意味する。同様に、「凹部」とは、トレッド端より径方向内側、且つ傾斜ベルト層4aより径方向外側のタイヤ外面に凹部を有することを意味する。
ここで、「細溝状」とは、サイプが断面半楕円状の細溝状であることを意味し、「フラスコ状」とは、サイプが幅方向断面にてフラスコ状であることを意味し、「半円状」とは、凹部が幅方向断面にて半円状であることを意味する。
さらに、「N/A」とは、各タイヤがサイプや凹部を有しないために、該当する項目に当てはまらないことを示している。
「面積」は幅方向の断面積であり、サイプの断面積は、複数のサイプの断面積の総和である。「タイヤ表面からの深さ」とは、サイプや凹部のタイヤ表面(開口部)から底部までの深さであり、「開口幅」とは、サイプや凹部の開口部の幅を意味する。
なお、発明例が有するサイプは全てトレッド端から径方向内側10mm以内に位置する。また、比較例が有する凹部もトレッド端から径方向内側10mm以内に位置する(凹部全体がトレッド端から径方向内側10mm以内に位置する)。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
上記各タイヤの性能を評価するため、タイヤサイズ495/45R22.5の各タイヤをリムサイズ17.00×22.5のリムに組み込み、内圧を900kPaとし、最大荷重(56.9kN)を負荷し、以下の試験を行った。
《耐偏磨耗性》
60km/hの速度でドラム走行させ、一定時間後のトレッド端部の磨耗量を測定した。
試験結果を表2に示している。表2において、試験結果は、従来例を100とした指数で表し、数値が大きい方の磨耗量が少なく、耐偏磨耗性に優れていることを示す。
《操縦安定性》
60km/hでスラローム走行を実施し、ドライバーによる感応評価を行った。評価は、5点満点で行い、表2のその結果を示している。数値は大きい方の感応が良く、操縦安定性に優れていることを示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3に示すように、発明例1〜5にかかるタイヤはいずれも従来例にかかるタイヤより耐偏磨耗性に優れていることがわかる。
比較例2、3にかかるタイヤが従来例にかかるタイヤより操縦安定性が低下しているのに対し、発明例1〜5にかかるタイヤは、従来タイヤと同等の操縦安定性を維持している。
また、発明例1〜5にかかるタイヤは、比較例1にかかるタイヤより大幅に耐偏磨耗性に優れている。
【符号の説明】
【0037】
1 ビードコア
2 カーカス
3 ベルト補強層
4 傾斜ベルト層
5 トレッド
6 サイプ
7 層間ゴム
8 クッションゴム
9 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスの径方向外側に、1層以上のベルト補強層、2層以上の傾斜ベルト層及び、トレッドを順に備える、重荷重用空気入りラジアルタイヤであって、
前記ベルト補強層の少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅は、トレッド幅TWの80%以上であり、
前記傾斜ベルト層のうち少なくとも1層のタイヤ幅方向の幅は、前記2層以上のベルト補強層のいずれのベルト補強層よりタイヤ幅方向の幅より大きく、
前記タイヤはサイドウォール部において、トレッド端より径方向内側、且つ径方向最内側の傾斜ベルト層より径方向外側において、タイヤ周方向に延びる2つ以上のサイプを備え、
前記2つ以上のサイプの各々は、前記タイヤを規定リムに組み込み、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した際に閉塞することを特徴とする、重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周上の任意の幅方向断面において、前記2つ以上のサイプの断面積の総和が20mm2以上である、請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記2つ以上のサイプの各々は、開口幅が3mm以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記2つ以上のサイプの各々は、開口幅が1.5mm以上3mm以下であり、深さが1.5mm以上3mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記サイプの少なくとも1つが、トレッド端から径方向内側3mm以内に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107426(P2013−107426A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252005(P2011−252005)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)