説明

野菜を与えるウニの養殖方法

【課題】ウニの稚苗を籠に入れて野菜を飼料として与えることでウニの摂餌行動が活発に促進されて、ウニの成育がよく、籠より取り出したウニを養魚の生簀に入れ網に付着している海藻類や貝類をも摂餌させて、収穫が容易で早期に出荷し、野菜と海草と貝類の成分を併せ持った肉質のウニを提供することを可能とする。
【解決手段】海中のイカダに付けたブイにロープを繋いで海中に吊るした籠にウニの稚苗を入れ、多種類の野菜例えばレタス、キャベツ、白菜、ミズナ、セロリ、ネギ、おお菜、ダイコンの葉、イタドリの葉、ナスの葉、タマネギの葉、ニンジンの葉、エンドウの葉、ピーマンの葉等の葉を与えてウニの摂餌行動を活発に促進させて、籠より生育中のウニを取り出して養魚用生簀に入れ網に付着した海草類、貝類を摂餌させることにより生簀を清掃させて養育したウニを収穫して早期に出荷する野菜によるウニの養殖方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籠の中にウニの稚苗を入れ、調達が容易な野菜を飼料として与えて生育を促進させて、野菜の葉に含まれている豊富な栄養成分を含有している肉質のウニの養殖方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産動物の飼料中で、特許文献1には従来の飼料にお茶類、きのこ類、炭類、海藻類、野菜類、甲殻類を粉末及び微粉末にして実施例としてブリの飼料に混合させることが記載されている。又特許文献2には植物活性酵素を海水に溶解して、真珠母貝に摂餌する方法が記載されている。特許文献3には水産動物にウド、カブ、キャベツ、シソ、シュンギク、ダイコン、ニラ又はワサビの水または含水アルコール抽出物を飼料に添加することにより当該飼料の水産動物に対する摂餌活性が高まることが公開されている。野菜の一部を、或いは野菜を野菜汁或いは抽出物等に加工したものを水産動物飼料に混和するか、他の適当な担体に混和或いは吸収させることが記載されている。これらの摂餌方法或いは水産動物飼料は加工工程を経て養殖現場で容易に摂餌させる利点があるので、真珠母貝、ドジョウ、クロアワビ、ブリなど採算性のよい高級魚の飼料として実用に共されている。
実用の飼料は、野菜の加工工程を経て魚介類の飼料になるものである。
【0003】
しかし、ウニの養殖のために前記加工された飼料を稚苗に与えて養育するときには採算性がよくない。なぜなら、比較的広い養殖海域に飼料は拡散するためにウニがそれを食べるために周辺の海域へ拡散してゆく餌を求めて移動することになる。この理由によりウニを放流により養殖するために、人工的な飼料を与えることは非効率的で採算割れを生じるため行われていない。ウニの養殖方法として加工飼料を稚苗を放流している海域に投与して生育し、その海域のウニを探して収穫して、需要者に提供するために市場へ供給することは労力的にも経済的にも非常に困難である。ウニに与えられた飼料が海域より拡散するのを防止できない以上供給飼料対ウニの収穫量の効果は低いものになる。
【0004】
従って、従来のウニの養殖方法は一定海域にウニの稚苗を放流して自然の中で海藻類を飼料として生育させて、潜水してウニを探して収穫する養殖方法のみであった。この養殖方法をとる限り、放流された稚苗が摂餌するためにその海域へウニの飼料を投与することは飼料が拡散して失われるものが多いために行われていない。
従来の養殖方法は、もっぱら自然の海底に生育して流れるおそれがないワカメなどの海藻類を摂餌させて、そこで成長したウニを海中に潜って収穫するという労力が多いものである。更に自然の海底にある海草を摂餌するために十分に栄養を補給されないままウニの成長が遅くなるという欠点があった。
【0005】
この結果、ウニは稚苗を放流した海底の海藻類を摂餌するのみでは十分な栄養を得ることができず自然の餌を求めて周辺の海域へ拡散していくので、収穫期にウニは発見されることもなくなり収穫に時間と労力を要したり、収穫量が低下したりするなどの問題があった。
【0006】
この改善策として、魚類の場合には養殖は筏に付けたブイを浮体にして網で囲った生簀を使用し網の中で魚類を養殖する方法があるが、ウニに関するかぎりこの方法は行われていなかった。なぜなら、ウニの摂餌行動が緩やかで海底に生えている海藻類を摂餌するものであるから、流れ易いペレット状に加工してある人口飼料を与えても魚類の様に機敏に摂餌することはできないためである。
【特許文献1】特開2003−310175号公報
【特許文献2】特開平10−191825号公報
【特許文献3】特許番号第3692158号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、一定の養殖海域にウニの稚苗を放流してその海域の海底に成長しているワカメ、ヒジキ等、海草を稚苗に摂餌させて育成し、成長したウニを収穫して出荷する従来のウニの養殖方法において、放流された一定の海域に生えている海草も量が限られており、ウニの稚苗が成長するにつれて、より豊富な摂餌のために周辺の海域に拡散してゆくことになる。自然に生育するウニと養殖ウニが混在して一緒に成育し養殖ウニを識別することができない。このために周辺の海中にウニが拡散した状態で海域に潜ってウニを探し当てられないものも多くあり、ウニが自然の中で失われてゆく確率が高く、収穫期に成長した養殖ウニを海底で早期に採集して完全に出荷することができないことがウニの養殖事業を効率よく行う上で障害となる点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生育した養殖ウニを海中に潜らなくても早期に採集することを可能とするために海中に吊るした籠の中に稚苗を入れて、ウニの飼料として多種類の野菜を投与して摂餌させ、更に生育中のウニを籠の中より取り出して生簀に移して生簀の網に付着した海草、貝類を摂餌させて早期に生育させることを最も主要な特徴とする。籠中のウニは与えられた多種類の野菜、例えばレタス、キャベツ、白菜、ミズナ、セロリ、ネギ、おお菜、ダイコンの葉、イタドリの葉、ナスの葉、タマネギの葉、ニンジンの葉、エンドウの葉、ピーマンの葉等野菜の葉を摂餌して生育し、ウニは与えられる野菜の葉を食べるとビタミン類、ミネラル類等、野菜の葉に豊富に含まれている栄養成分を摂取して、ウニの生育率がよく、野菜の葉を多く摂餌させたウニは豊富なビタミン類、ミネラル類を含有する肉質を持ち、海草や貝類の成分も併せ持った肉質のウニを早期に出荷することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウニの養殖方法は、自然界のウニとは、ブイに繋いで海中に吊るした籠若しくは生簀の網で区画して養殖される。籠の中にウニの稚苗を入れてそこに野菜を与えて生育させる。この方法により、ウニを一定海域に放流せず、畑で収穫され捨てられる半端もの野菜をウニの養育餌料として再生する利用することにより野菜の新たな利用が可能であり、ある時期に成育したウニを収穫する際に海中に潜らなくても籠及び生簀の網の中から採集できる。養殖海域に潜って目視で探しながらウニを収穫する従来の方法に比較して、収穫の労力を軽減して早期に出荷をすることが可能になる。籠と生簀の中でウニを養殖することにより野菜と海草と貝類を接餌し、豊富な成分を併せ持った肉質のウニを提供することを可能とするという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
籠の中に入れたウニの飼料として野菜を与え、自然界のウニと区画された籠や生簀内でウニの養殖をした公開例はなく、その場合に籠の中では、籠の中に入れた野菜の成分がウニの摂餌行動を活発に促して生育を促進する効果がある。更にその生育過程のウニをイカダに設置した生簀の網の中に移し変えて生育させることにより、イカダの網に付着した海草類、貝類をも食べ尽くして、同時に生簀網の清掃を行い新しい海水を生簀の中に還流させることができる。このようにして野菜と海草と貝類の成分を共に含有する肉質のウニを生育することができる。籠の中で稚苗の段階で豊富な種類の野菜を与えられて成育したウニは、生育が早く、ウニの収穫を行うことが容易で、出荷期が早くなる。このようにして野菜と海草と貝類の栄養分を含有する肉質のウニを提供する養殖方法を実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明養殖方法によりウニを籠の中に入れ野菜を飼料として養殖する実施方法を示す1実施例の斜視図であって、図2は籠の中に入れた養育過程のウニを取り出して養魚をするための生簀に移して網を清掃するために利用する実施方法を示す斜視図である。1は網、 2,2aはイカダ、3は生簀、4は野菜、5,5aは網や籠を海中に吊るして浮体となるブイ、 6は養育中のウニ、7はウニの稚苗を入れる籠である。
【0012】
図1の実施例は、イカダ2のブイ5にロープで繋いだ籠7の中にウニ6の稚苗を入れ、籠7の中に飼料の野菜4を与えて3年間養育する。稚苗から養育を初めて3年目にウニはそれを籠から取り出して出荷できるまでに成長し、収穫作業はイカダ2の上で籠からウニを取り出して容易に行うことができる。
図2は籠7の中で養育している生育中のウニ6を生育段階で取り出してブイ5aで浮かべたイカダ2aに設置した生簀3に移して、養育と網を掃除する目的で実施する方法を示した。図2に示した生簀3の中では魚を養殖すると共に生簀の網に付着している海藻類或いは藤壺などの貝類をウニ6に摂餌させて養育することができると同時にその網に付着している海藻類或いは藤壺などの貝類を摂餌させることにより網の清掃をすることもできる。
本発明のウニの養殖方法によれば、籠7や生簀3の網の中で成育中のウニは散逸による個数の減少が無く、稚苗の放流による従来の養殖方法に比べてウニの生産が増量できる。従来の方法は一定の養殖海域にウニを放流して生育させるため、稚苗の散逸が生じるが、この方法に比べると本発明は籠或いは生簀の網の中で養育されるウニの拡散や散逸のおそれはなく、収穫量が多く、養殖ウニの収穫作業が容易である。籠や生簀に入れたウニが散逸しないので稚苗数の減少が斃死を原因とする以外にない。野菜を飼料にすることにより旺盛な摂餌効果があり、成長が早く、豊富な野菜を摂餌することにより斃死率が低く、ウニの養殖漁業の生産効率が高くなる。ウニを野菜で養殖する方法は、採算割れが発生しない養殖業が実施できることが期待できる。

【産業上の利用可能性】
【0013】
多量に廃棄される野菜屑が出る野菜等農産物市場や、価格の暴落により出荷されることがなくなった野菜畑に残されている野菜屑を利用してウニの飼料として使用することができるほか、ウニの飼料として使用される野菜に何ら加工をすることなく一枚貝、巻貝、なまこなどの軟体動物も成育可能であるので野菜の用途を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ウニの養殖方法の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】生簀に入れたウニの養殖方法の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0015】
1 網
2,2a イカダ
3 生簀
4 野菜
5,5a ブイ
6 ウニ
7 籠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に配置したブイに設置されたイカダの前記ブイにロープで繋いだ籠の中でウニを稚苗より養育するために、前記籠の中にウニの稚苗と飼料として野菜を入れて養育し、豊富な種類の野菜の葉に豊富に含まれるビタミン類、ミネラル類を摂餌させてウニの成育を促進させることを特徴とする野菜を与えるウニの養殖方法。
【請求項2】
請求項1に記載の籠の中で養育中のウニを取り出して、海中に配置したブイを浮体とするイカダに設置された網で囲まれている生簀の中に前記籠より取り出したウニを移し入れて、生簀の網に新しい海流の還流を妨げている海草や藤壺などの貝類を摂餌させて生簀の網をウニに清掃させることを特徴とする野菜を与えるウニの養殖方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236230(P2007−236230A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60352(P2006−60352)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(506077902)株式会社 MITA (1)
【Fターム(参考)】