金型装置
【課題】 パンチに十分な量の潤滑剤を付着させた状態で被加工材を成形することができ、且つ、供給された潤滑油の圧力により被加工材が変形することを防止し得る金型装置を提供すること。
【解決手段】 金型装置1は、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持するリリーフ弁33を備える。このリリーフ弁33は、潤滑油路121内の潤滑油圧力が被加工材Wが塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力P0以下であるときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを遮断し、潤滑油路121内の潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを許容することにより、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持する。
【解決手段】 金型装置1は、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持するリリーフ弁33を備える。このリリーフ弁33は、潤滑油路121内の潤滑油圧力が被加工材Wが塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力P0以下であるときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを遮断し、潤滑油路121内の潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを許容することにより、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金型装置に関する。本発明は特に、金型のパンチを潤滑するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス成形等に用いられる金型装置は、被加工材を保持するダイスと、被加工材に成形圧力を作用させるパンチとを備える。ダイスに保持された被加工材にパンチから成形圧力を加えることにより被加工材が成形される。
【0003】
パンチによる被加工材の成形を数多く行うほどパンチが摩耗していく。パンチの摩耗量を減らしてパンチを長寿命化させるため、一般にパンチに潤滑油を付着させた状態で被加工材を成形する。潤滑油が付着したパンチで被加工材を成形することにより、被加工材の成形時にパンチが潤滑されてパンチの摩耗量が低下する。パンチへの潤滑油の供給構造に関する種々の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1は、ダイスに保持された被加工材をダイスとストリッパープレートとで挟持し、その状態で、ストリッパープレートに形成された貫通孔に挿通されたパンチを貫通孔から突出させることにより、被加工材を打ち抜き加工する打ち抜き加工用プレス金型を開示する。特許文献1に記載された打ち抜き加工用プレス金型によれば、ストリッパープレートの貫通孔を構成する壁面にリング状の潤滑油路が形成される。この潤滑油路に潤滑油が供給されることにより、貫通孔を挿通するパンチの側周面に潤滑油が供給される。
【0005】
特許文献2は、パンチの先端面(下面)に潤滑油を供給するためのエアブロー装置を開示する。特許文献2によれば、上面に被加工材を保持するダイスの下方部に抜きカス排出孔が形成され、この抜きカス排出孔内に潤滑油成分からなるオイルミストがエアブロー装置により供給される。パンチにより被加工材が打ち抜かれたときにパンチの先端面(下面)が抜きカス排出孔内のオイルミストに浸されることによりパンチの先端面(下面)に潤滑油が供給される。
【0006】
特許文献3は、被加工材のプレス加工時に、パンチと被加工材との間に潤滑油を好適に供給することができるプレス金型を開示する。特許文献3に記載のプレス金型によれば、上型と下型との間に挟持された被加工材がストリッパープレートによって昇降可能に覆われたパンチによりプレス加工される。ストリッパープレートにはパンチの周囲を覆う内周面の全周に亘って油溜め部がその下方に開口して形成されている。油溜め部に供給された潤滑油はプレス加工時にパンチの側周と被加工材とが当接する箇所に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−277661号公報
【特許文献2】特開2001−71061号公報
【特許文献3】特開2007−7692号公報
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1および特許文献3に記載されたプレス金型によれば、潤滑油がパンチの側周面に付着する。パンチの側周面に付着した潤滑油は、パンチで被加工材を打ち抜く時に被加工材にしごかれる。このため潤滑油が十分にパンチの先端(歯先)に行き渡らない。したがって、パンチ(特に被加工材と接触して被加工材をせん断する加工点であるパンチの先端)に十分な量の潤滑油を付着させた状態で被加工材を成形することができない。それゆえに、パンチの摩耗(特にパンチの先端の摩耗)量はそれほど低下しない。
【0009】
特許文献2に記載されたエアブロー装置によれば、パンチの先端に潤滑油が供給される。しかし、パンチの先端面が被加工材と接触したときに、パンチの先端面に付着した潤滑油がパンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められる。パンチの先端面と被加工材との間に潤滑油が閉じ込められたままパンチにより被加工材を加圧すると、閉じ込められた潤滑油に大きな圧力が作用する。大きな潤滑油圧力が被加工材に作用することにより、被加工材はパンチの先端でせん断されるときに変形する。斯かる変形により被加工材の成形精度が悪化する。
【0010】
この場合、被加工材をダイスとストリッパープレートで挟むとともに、パンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められた潤滑油を排出するための排出溝をストリッパープレートに形成することにより、閉じ込められた潤滑油を排出溝を介して外部に排出することができる。このため被加工材に高い潤滑油圧力が作用することを防止することができる。しかし、このような排出溝をストリッパープレートに形成した場合、被加工材の成形時にパンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められた潤滑油が成形圧力により全て排出溝側に押し出されてしまい、被加工材の成形時にパンチの先端に付着すべき潤滑油が欠乏する。このためパンチの摩耗(特にパンチの先端の摩耗)量はそれほど低下しない。
【0011】
本発明は、パンチに十分な量の潤滑剤を付着させた状態で被加工材を成形することができ、且つ、供給された潤滑油の圧力により被加工材が変形することを防止し得る金型装置を提供することを目的とする。
【0012】
(課題を解決するための手段)
本発明は、被加工材を保持するダイスと、前記ダイスに保持された被加工材に当接する当接面と、前記当接面に開口した貫通孔とを有し、前記当接面が前記ダイスに保持された被加工材に当接することにより、被加工材を前記ダイスとの間に挟持するストリッパープレートと、前記ストリッパープレートの前記貫通孔に挿通されるパンチであって、被加工材に当接可能な先端面を有し、被加工材が前記ダイスと前記ストリッパープレートで挟持されているときにおける前記貫通孔内での前記先端面の配置状態が、前記貫通孔内に埋没した埋没状態から前記貫通孔から突出した突出状態に変化することにより、前記先端面から被加工材に成形圧力を作用させるパンチと、潤滑油が流通する通路であって、前記ストリッパープレートに形成され、前記貫通孔内での前記パンチの前記先端面の配置状態が前記埋没状態であるときに前記貫通孔を構成する壁面と前記パンチの前記先端面とで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間に連通する潤滑油路と、前記潤滑油溜め空間内の圧力が被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力以下であるときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを遮断し、前記潤滑油溜め空間内の圧力が前記設定圧力を越えたときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを許容することにより、前記潤滑油溜め空間内の圧力を前記設定圧力以下の圧力に維持する圧力調整部材と、を備える金型装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、ダイスとストリッパープレートとにより被加工材が挟持された状態で、ストリッパープレートに形成された貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態から突出状態に変化することにより、パンチの先端面が被加工材に当接し、被加工材に成形圧力が作用して被加工材が成形される。また、貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態であるとき形成される空間であって、貫通孔を構成する壁面とパンチの先端面とで囲まれる潤滑油溜め空間は、被加工材がダイスとストリッパープレートとで挟持されているときに被加工材で塞がれる。このとき潤滑油路から潤滑油を潤滑油溜め空間に流すことにより、潤滑油が潤滑油溜め空間内に溜まる。
【0014】
また、被加工材をダイスとストリッパープレートとで挟持したときにおけるストリッパープレートに形成された貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態から突出状態に変化する過程で、潤滑油溜め空間内の容積は減少するとともに潤滑油溜め空間内の潤滑油がパンチにより圧縮される。このため潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力および潤滑油溜め空間に連通した潤滑油路内の潤滑油圧力が上昇する。潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力は圧力調整部材によって設定圧力以下の圧力に維持される。上記設定圧力は、被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められている。このため潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力の上昇によって被加工材が変形することが防止される。
【0015】
さらに、パンチで潤滑油溜め空間内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間内の潤滑油にパンチから受ける成形圧力に対抗する設定圧力が作用している。このため、潤滑油溜め空間内の潤滑油は該空間の容積減少に伴い徐々に潤滑油路側に排出されていくものの、パンチの先端面が被加工材に当接する直前まで潤滑油が潤滑油溜め空間に残留する。残留した潤滑油がパンチの先端面に付着し、その状態でパンチによる被加工材の成形が開始される。被加工材の成形中にはパンチの先端面に付着した潤滑油が徐々にパンチの側周面側に押し出される。このようなパンチの先端面から側周面への潤滑油の流れにより被加工材の成形中にパンチの先端が潤滑され続ける。すなわち、本発明によれば、パンチによって被加工材が成形される直前まで潤滑油溜め空間内に潤滑油が適量残留し、残留した潤滑油が被加工材の成形中にパンチの先端を流れることによりパンチの先端が潤滑される。その結果、パンチの先端部の摩耗量を減らすことができる。
【0016】
このように、本発明の金型装置によれば、被加工材の成形時にパンチを十分に潤滑することができるとともに、潤滑油の圧力上昇によって被加工材が変形することを防止することができる。
【0017】
前記潤滑油路は、前記貫通孔の軸方向に沿って前記貫通孔を構成する壁面に形成され前記当接面に開口する溝部を有するものであるのがよい。これによれば、ストリッパープレートの貫通孔の軸方向に沿って形成された溝部に潤滑油が供給されることにより、貫通孔内を移動するパンチの側周面にも潤滑剤を供給することができる。
【0018】
この場合、前記潤滑油路は、一端が前記溝部に連通し他端が前記ストリッパープレートの外壁に開口する通路部をさらに有するのがよい。これによれば、潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力が設定圧力を越えたときに、潤滑油溜め空間内の潤滑油が、溝部および溝部に連通しストリッパープレートの外壁に開口する通路部を経由して、外部に排出される。
【0019】
また、本発明の金型装置は、一端が潤滑油を貯留する潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油排出通路をさらに備えるのがよい。そして、前記圧力調整部材は前記潤滑油排出通路の途中に介装されているのがよい。
【0020】
また、前記圧力調整部材は、前記潤滑油路内の圧力が前記設定圧力以下であるときに閉弁し前記設定圧力を越えたときに開弁するリリーフ弁であるのがよい。これによれば、市販されているリリーフ弁を用いることにより、簡単に、本発明の金型装置を作製することができる。
【0021】
また、本発明の金型装置は、一端が前記潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油供給通路と、潤滑油供給通路の途中に介装され、潤滑油を前記潤滑油供給通路を介して前記潤滑油路に供給するための駆動ポンプを備えるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る金型装置の断面図である。
【図2】ストリッパープレートとダイス付近の詳細を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】被加工材載置工程を表す図である。
【図6】被加工材挟持工程を表す図である。
【図7】潤滑油供給工程を表す図である。
【図8】加圧工程を表す図である。
【図9】成形工程の開始時を表す図である。
【図10】成形工程の中間時を表す図である。
【図11】成形工程の終了時を表す図である。
【図12】パンチ引き上げ工程を表す図である。
【図13】初期位置復帰工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る金型装置の断面図である。図1に示すように、この金型装置1は、上型部10と、下型部20と、潤滑油供給・排出装置30とを備える。
【0024】
上型部10は、上側プレート部11と、ストリッパープレート12と、複数のポール13と、複数のスプリング14と、パンチ15とを備える。上側プレート部11は、第1プレート11a、第2プレート11bおよび第3プレート11cを備える。第1プレート11aの下方に第2プレート11bが重なり、第2プレート11bの下方に第3プレート11cが重なるように、これらのプレートが積層配置されている。また、これらのプレートは一体的に各プレートの積層面と直交する方向(図においては上下方向)に移動可能であるように、ボルト等の締結部材で連結される。なお、各プレートを図1の水平方向に沿って切断した断面形状は、それぞれ矩形形状である。また、第2プレート11bおよび第3プレート11cの中心部分にそれぞれ貫通孔が形成されている。第2プレート11bに形成された貫通孔の径は第3プレート11cに形成された貫通孔の径よりも大きい。これらの貫通孔が同軸配置するように、第2プレート11bと第3プレート11cが積層される。
【0025】
パンチ15は、円柱状の支持部15aと、この支持部15aの端面(図において下面)から同軸的に延設されたパンチ部15bを有する。パンチ部15bの径は支持部15aの径よりも小さい。また、支持部15aの高さは第2プレート11bの厚さと等しい。支持部15aの図において下面が、第2プレート11bに形成された貫通孔と第3プレート11cに形成された貫通孔との境界に形成される段差部分に係止され、且つ支持部15aの図において上面が第1プレート11aの下面で抑えられることにより、パンチ15が上側プレート部11に固定される。
【0026】
ストリッパープレート12は上側プレート部11の下方に配置され、図1の水平方向に切断した断面形状が矩形形状である。ストリッパープレート12の中心部分にはパンチ用貫通孔12aが形成されている。また、ストリッパープレート12の四隅付近には、ポール用貫通孔12bがそれぞれ形成されている。
【0027】
ポール13は、第3プレート11cの四隅付近に固定される。ポール13は第3プレート11cの下面から下方に向けて棒状に延設される。ポール13の下方部分はストリッパープレート12に形成されたポール用貫通孔12bにストリッパープレート12の上面側から進入している。図1に示すように、ポール用貫通孔12bの上側部分の径は下側部分の径よりも小さく、そのため径の小さい上側部分(小径部分)と径の大きい下側部分(大径部分)との境界部分に段差が形成される。また、ポール13の先端(下端)には径外方に広がる拡径部13aが形成されている。拡径部13aが、ポール用貫通孔12b内でポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止されることにより、ストリッパープレート12がポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられる。このときストリッパープレート12に形成されているパンチ用貫通孔12aが、第2プレート11bおよび第3プレート11cにそれぞれ形成されている貫通孔と同軸配置するように、ストリッパープレート12が上側プレート部11の下方に配置される。
【0028】
スプリング14は各ポール13に巻回されている。各スプリング14の図1において上端が第3プレート11cの下面に固定(又は係止)され、各スプリング14の図1において下端がストリッパープレート12の上面に固定(又は係止)される。各スプリング14は、各ポール13に巻回された状態で常に伸長力を発生している。このためストリッパープレート12は、スプリング14により上側プレート部11から離間する方向に付勢される。この場合において、ポール13の先端に形成された拡径部13aがポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止されることによって、ストリッパープレート12がスプリング14の付勢力でポール13から抜け落ちることが防止される。
【0029】
下型部20は、ダイス21とベースプレート22とを備える。ベースプレート22の上面にダイス21が固定される。ダイス21の図において上面に被加工材Wが載置される。ダイス21の中心部に打ち抜き用貫通孔21aが形成される。打ち抜き用貫通孔21aがストリッパープレート12に形成されているパンチ用貫通孔12aと同軸配置するように、ストリッパープレート12に対するダイス21の位置が決められている。
【0030】
図2は、ストリッパープレート12とダイス21付近の詳細を示す断面図である。また、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。図2に示すように、ストリッパープレート12には、潤滑油が流通する潤滑油路121が形成されている。潤滑油路121は、溝部121aと通路部121bとを有する。
【0031】
図2および図4に示すように、溝部121aは、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aを構成する壁面に形成される。溝部121aは、図2においてパンチ用貫通孔12aの上下方向中心部付近に位置する上端部Uから下方に延びて形成され、その下端はストリッパープレート12の下面12eに開口する。本実施形態においては、パンチ用貫通孔12aの周方向に沿って複数本(本実施形態では4本)の溝部121aが等間隔(本実施形態では90°間隔)に形成される。
【0032】
図3に示すように、通路部121bは、その一端が溝部121aの上端部Uに連通し、他端がストリッパープレート12の外壁に形成された外部開口12cに連通する。上述のように複数の溝部121aがパンチ用貫通孔12aの周方向に沿って形成されている。したがって、通路部121bは、外部開口12cと複数の溝部121aの上端部Uとをそれぞれ連通するように、途中で分岐している。
【0033】
図1に示すように、潤滑油供給・排出装置30は、配管部31と、タンク(潤滑油貯留槽)32と、リリーフ弁(圧力調整部材)33と、駆動ポンプ34と、逆止弁35とを備える。配管部31は、潤滑油排出管31aと、潤滑油供給管31bと、共通管31cを有する。
【0034】
タンク32には潤滑油が貯留されている。このタンク32に潤滑油排出管31aの一端および潤滑油供給管31bの一端が連通される。潤滑油排出管31aの他端と潤滑油供給管31bの他端は合流点Cで合流する。この合流点Cに共通管31cの一端が連通する。共通管31cの他端は、ストリッパープレート12に形成されている外部開口12cに連通する。したがって、潤滑油排出管31aおよび潤滑油供給管31bは、共通管31cを介してストリッパープレート12に形成された潤滑油路121の通路部121bに連通する。
【0035】
潤滑油排出管31aの途中にリリーフ弁33が介装される。リリーフ弁33は第1ポート33aと第2ポート33bを有する。リリーフ弁33の設定圧力P0は、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力に設定される。第2ポート33b側から受ける圧力が設定圧力P0以下である場合はリリーフ弁33は閉弁する。第2ポート33b側から受ける圧力が設定圧力P0を越えた場合にリリーフ弁33が開弁する。リリーフ弁33が閉弁しているときには第2ポート33bから第1ポート33aに向かう流体の流れが遮断され、リリーフ弁33が開弁しているときには第2ポート33bから第1ポート33aに向かう流れが許容される。なお、リリーフ弁33は、第1ポート33a側から第2ポート33b側への流体の流れを遮断するように構成されている。
【0036】
潤滑油供給管31bの途中に駆動ポンプ34および逆止弁35が介装される。駆動ポンプ34は、潤滑油供給管31b内の流体が一端側(タンク32側)から他端側(合流点C側)に向かうように駆動される。また、逆止弁35は、合流点C側から駆動ポンプ34側に向かう流体の流れを遮断する。
【0037】
上記構造の金型装置1において、被加工材Wの成形方法(プレス方法)を各工程に分けて説明する。図5〜図13は、各工程における金型装置1の状態を示す図である。
【0038】
(被加工材載置工程)
まず、図5に示すように、上型部10が初期位置に位置している金型装置1に被加工材Wを載置する。上型部10が図5に示す初期位置に位置しているときには、上型部10と下型部20は離間している。このためダイス21の上面とストリッパープレート12の下面12eとの間に空隙が形成され、この空隙から被加工材Wがストリッパープレート12とダイス21との間に投入される。そして、被加工材Wがダイス21の所定位置に載置される。
【0039】
上型部10の位置が初期位置であるときには、ストリッパープレート12がスプリング14の付勢力を受けることにより、ポール13の拡径部13aがポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止される。このような状態でストリッパープレート12が上側プレート部11に吊り下げられる。
【0040】
また、上型部10の位置が初期位置であるときには、パンチ15のパンチ部15bの先端部分(下方部分)がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内に挿通されている。このときパンチ15(パンチ部15b)の先端面15cがパンチ用貫通孔12a内に埋没するように、すなわち先端面15cがパンチ用貫通孔12aから突出しないように、パンチ15がパンチ用貫通孔12aに対して配置される。このようなパンチ15の先端面15cのパンチ用貫通孔12aに対する配置状態を、本実施形態では「埋没状態」と呼ぶ。「埋没状態」では、パンチ15の先端面15cの直下に、先端面15cとパンチ用貫通孔12aを構成する壁面とで囲まれた空間が形成される。本実施形態ではこの空間を、「潤滑油溜め空間S」と呼ぶ。潤滑油溜め空間Sは、パンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aの壁面に形成されている溝部121a内の空間に連通する。したがって、潤滑油溜め空間Sは、溝部121a、通路部121b、共通管31cを介して潤滑油排出管31aの途中に介装されたリリーフ弁33の第2ポート33b側に連通する。つまり、潤滑油溜め空間S内の圧力が、リリーフ弁33の第2ポート33b側に伝達される。
【0041】
なお、上型部10の位置が初期位置であるときにおける、パンチ15の先端面15cの高さ位置(図5における上下方向に沿った位置)は、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aの壁面に形成された溝部121aの上端部Uの高さ位置よりも低い。
【0042】
(被加工材挟持工程)
次に、図6に示すように上側プレート部11を下降させる。上側プレート部11の下降に伴い、上側プレート部11に固定されたパンチ15、ポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられているストリッパープレート12も下降する。ストリッパープレート12が所定量下降すると、ストリッパープレート12の下面12eがダイス21に載置された被加工材Wの上面に当接する。これにより被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持される。被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持されることにより、被加工材Wの成形時における被加工材Wの動きが抑えられる。またこのとき、潤滑油溜め空間Sの開口面が被加工材Wの上面で塞がれる。
【0043】
(潤滑油供給工程)
次いで、上側プレート部11の下降を一旦停止し、駆動ポンプ34を作動させる。駆動ポンプ34の作動によって、図7に示すように、タンク32内に貯留されている潤滑油が潤滑油供給管31bおよび共通管31cを介してストリッパープレート12に形成されている外部開口12cから潤滑油路121の通路部121bおよび溝部121aに供給され、さらに溝部121aから潤滑油溜め空間S内に供給される。溝部121aはパンチ用貫通孔12aの軸方向に沿って形成されているので、この溝部121a内の潤滑油によってパンチ15のパンチ部15bの側面が潤滑される。なお、上側プレート部11の初期位置からの下降ストロークを検知するセンサ(例えば回転角センサ)が金型装置1に設けられているとよい。上記のセンサでストリッパープレート12の下面12eが被加工材Wの上面に当接するタイミングを検知することにより、駆動ポンプ34の作動開始タイミングの適正化を図ることができる。
【0044】
(加圧工程)
潤滑油溜め空間Sおよび潤滑油路121内の空間を潤滑油で満たした後に、駆動ポンプ34の作動を停止する。その後、上側プレート部11の下降を再開する。上側プレート部11の下降の再開時には、ストリッパープレート12は被加工材Wに接触しているのでそれ以上下降することはできない。したがって、上側プレート部11はストリッパープレート12に対して相対的に下降する。このため上側プレート部11に固定されたパンチ15がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内を下降する。パンチ用貫通孔12a内でのパンチ15の下降により、図8に示すようにパンチ15の先端面15cの直下に形成されている潤滑油溜め空間Sの容積が減少するとともに該空間S内の潤滑油が圧縮されて潤滑油圧力が上昇する。潤滑油圧力の上昇は、溝部121a内の潤滑油、通路部121b内の潤滑油、共通管31c内の潤滑油を介して潤滑油排出管31aに介装されたリリーフ弁33の第2ポート33b側に伝達される。
【0045】
リリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力が設定圧力P0以下であるときに閉弁する。リリーフ弁33が閉弁している場合、潤滑油溜め空間S内の潤滑油が潤滑油路121に向かう流れが遮断される。また、リリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに開弁する。リリーフ弁33が開弁している場合、潤滑油溜め空間S内の潤滑油が潤滑油路121に向かう流れが許容される。このような第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力に応じたリリーフ弁33の開閉作動によって、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が設定圧力P0以下に維持される。ここで、パンチ15の成形圧力は設定圧力P0よりも大きいので、パンチ15の先端面15cが潤滑油溜め空間S内の潤滑油を圧縮しているときには潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力はリリーフ弁33の開閉作動によって設定圧力P0にほぼ等しい圧力に維持される。また、潤滑油供給管31bには逆止弁35が介装されているため、潤滑油路121から共通管31cに排出される潤滑油は合流点Cから潤滑油供給管31b側には流れず潤滑油排出管31a側に流れる。
【0046】
パンチ15により潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が被加工材Wに作用する。また、上述のように潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力は設定圧力P0に維持されている。設定圧力P0は、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力である。したがって、このような設定圧力P0が被加工材Wに作用しても、被加工材Wは変形しない。また、潤滑油溜め空間S内の潤滑油には、パンチ15から受ける成形圧力に対抗する設定圧力P0が作用しているので、潤滑油溜め空間S内の潤滑油は該空間Sの容積減少とともに押し出されて潤滑油路121側に排出されていくものの、パンチ15の先端面15cが被加工材Wに当接する直前まで潤滑油溜め空間Sに残留する。
【0047】
(成形工程)
上側プレート部11をさらに下降させると、図9に示すようにパンチ15の先端面15cが被加工材Wの上面に接触する。この状態からさらに上側プレート部11を下降させると、図10に示すように、パンチ15の先端面15cがストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aから突出する。図10に示すようなパンチ15の先端面15cのパンチ用貫通孔12aに対する配置状態を、本実施形態では「突出状態」と呼ぶ。突出状態では、パンチ15の先端面15cから被加工材Wに成形圧力が作用し、この成形圧力によって被加工材Wが塑性変形される。すなわち、パンチ用貫通孔12aに対すパンチ15の先端面15cの配置状態が「埋没状態」から「突出状態」に変化することにより、パンチ15の先端面15cから被加工材Wに成形圧力が作用されて、被加工材Wが成形される。
【0048】
図9に示すように、パンチ15により被加工材Wの成形が開始されるときに、潤滑油溜め空間S内に残留していた潤滑油がパンチ15の先端面15cに付着している。また、図10に示すように、パンチ15による被加工材Wの成形中には、パンチ15の先端面15cに付着した潤滑油が徐々にパンチ15の側周面側に押し出されていく。このようなパンチ15の先端面15cからパンチ15の側周面への潤滑油の流れ(染み出し)によって、被加工材Wの成形中におけるパンチ15の先端が常時潤滑され続ける。特にパンチ15の先端面15cの周縁のエッジ部分(被加工材Wと接触して被加工材Wをせん断する加工点)が潤滑され続ける。すなわち、本実施形態によれば、パンチ15によって被加工材Wが成形される直前まで潤滑油溜め空間S内に潤滑油が適量残留し、残留した潤滑油が被加工材Wの成形中にパンチ15の先端を潤滑する。このためパンチ15の先端の摩耗量を減らすことができる。
【0049】
上側プレート部11がさらに下降すると、図11に示すように被加工材Wがパンチ15で打ち抜かれる。打ち抜かれた部分はダイス21に形成された打ち抜き用貫通孔21aを落下して外部に排出される。
【0050】
(パンチ引き上げ工程)
被加工材Wを打ち抜いた後に、上側プレート部11が上方に移動する。このときストリッパープレート12がスプリング14の付勢力で抑えられている間はストリッパープレート12は上方移動できない。したがって、この間は上側プレート部11の上方移動に伴いパンチ15がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内を相対的に上方移動する。そして、図12に示すように、パンチ15の先端面15cがストリッパープレート12の下面よりも高い位置まで上昇すると、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aに形成されている溝部121aが大気に連通する。このため溝部121aおよび通路部121b内に残留している潤滑油が打ち抜き用貫通孔21aを落下する。落下した潤滑油は所定の手段でタンク32に回収される。
【0051】
(初期位置復帰工程)
上側プレート部11の上方移動によって、やがてポール13の拡径部13aがストリッパープレート12のポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止される。その後、さらに上側プレート部11が上昇すると、ストリッパープレート12はポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられた状態で上方移動する。そして、図13に示すように上型部10が初期位置に復帰する。以上の工程を経て、被加工材Wがプレス成形される。
【0052】
以上のように、本実施形態の金型装置1は、被加工材Wを保持するダイス21と、ダイス21に保持された被加工材Wに当接する下面12eと、下面12eに開口したパンチ用貫通孔12aとを有し、下面12eがダイス21に保持された被加工材Wに当接することにより、被加工材Wをダイス21との間に挟持するストリッパープレート12と、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aに挿通されるパンチ15とを備える。また、パンチ15は、被加工材Wに当接可能な先端面15cを有し、被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持されているときにおけるパンチ用貫通孔12a内での先端面15cの配置状態が埋没状態から突出状態に変化することにより、先端面15cから被加工材Wに成形圧力を作用させる。
【0053】
また、ストリッパープレート12には、パンチ用貫通孔12a内でのパンチ15の先端面15cの配置状態が埋没状態であるときにパンチ用貫通孔12aを構成する壁面とパンチ15の先端面15cとで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間Sに連通する潤滑油路121が形成される。
【0054】
そして、本実施形態の金型装置1は、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持するリリーフ弁33を備える。このリリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力が被加工材Wが塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力P0以下であるときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを遮断し、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを許容することにより、パンチ15で潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときにおける潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0に維持する。
【0055】
本実施形態の金型装置1によれば、リリーフ弁33の作動により潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力である設定圧力P0に維持されるため、潤滑油溜め空間S内の潤滑油の圧力上昇に起因した被加工材Wの変形を効果的に防止することができる。さらに、パンチ15で潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間S内の潤滑油にパンチ15から受ける成形圧力に対抗する設定圧力P0が作用しているので、潤滑油溜め空間S内の潤滑油はパンチ15から受ける成形圧力に対抗しながら潤滑油路121側に徐々に排出される。このためパンチ15の先端面15cが被加工材に当接する直前まで潤滑油が潤滑油溜め空間Sに残留する。残留した潤滑油がパンチ15の先端面15cに付着し、その状態でパンチ15による被加工材Wの成形が開始される。被加工材Wの成形中にはパンチ15の先端面15cに付着した潤滑油が徐々にパンチ15の側周面側に染み出すように押し出される。この染み出すような潤滑油の流れによりパンチ15の先端が潤滑され続ける。よって、パンチ15の先端の摩耗量を減らすことができる。
【0056】
また、潤滑油路121は、パンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aを構成する壁面に形成されストリッパープレート12の下面12eに開口する溝部121aを有する。この溝部121aに潤滑油が供給されることにより、パンチ用貫通孔12a内を移動するパンチ15の側周面にも潤滑剤を供給することができる。
【0057】
また、潤滑油路121は、一端が溝部121aに連通し他端がストリッパープレート12の外壁に開口する通路部121bを有する。このため、ストリッパープレート12の外壁に開口する通路部121bおよびこの通路部121bに連通する溝部121aを経由して、外部から潤滑油を潤滑油溜め空間S内に供給し、且つ、被加工材Wの成形時に潤滑油溜め空間S内の潤滑油を外部に排出することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、複数の溝部121aをパンチ用貫通孔12aの周方向に沿って形成した例を示したが、1本の溝部が形成されていても良い。また、パンチ用貫通孔12aの全周に亘って溝部に相当する構成が形成されていても良い。また、上記実施形態では共通管31cを介してストリッパープレート12に形成された外部開口12cから潤滑油を供給および排出する例を示したが、潤滑油を供給するための専用の経路と潤滑油を排出するための専用の経路を別々に設けても良い。さらに、上記実施形態では、上下に型が開閉する金型装置を例に本発明を説明したが、金型装置の型開閉方向は任意である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…金型装置、10…上型部、11…上側プレート部、12…ストリッパープレート、12a…パンチ用貫通孔、12c…外部開口、12d…上端部、12e…下面(当接面)、121…潤滑油路、121a…溝部、121b…通路部、15…パンチ、15a…支持部、15b…パンチ部、15c…先端面、20…下型部、21…ダイス、22…ベースプレート、30…潤滑油供給・排出装置、31…配管部、31a…潤滑油排出管(潤滑油排出通路)、31b…潤滑油供給管(潤滑油供給通路)、31c…共通管、32…リザーバタンク(潤滑油貯留槽)、33…リリーフ弁(圧力調整部材)、33a…第1ポート、33b…第2ポート、34…駆動ポンプ、P0…設定圧力、S…潤滑油溜め空間、W…被加工材
【技術分野】
【0001】
本発明は金型装置に関する。本発明は特に、金型のパンチを潤滑するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス成形等に用いられる金型装置は、被加工材を保持するダイスと、被加工材に成形圧力を作用させるパンチとを備える。ダイスに保持された被加工材にパンチから成形圧力を加えることにより被加工材が成形される。
【0003】
パンチによる被加工材の成形を数多く行うほどパンチが摩耗していく。パンチの摩耗量を減らしてパンチを長寿命化させるため、一般にパンチに潤滑油を付着させた状態で被加工材を成形する。潤滑油が付着したパンチで被加工材を成形することにより、被加工材の成形時にパンチが潤滑されてパンチの摩耗量が低下する。パンチへの潤滑油の供給構造に関する種々の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1は、ダイスに保持された被加工材をダイスとストリッパープレートとで挟持し、その状態で、ストリッパープレートに形成された貫通孔に挿通されたパンチを貫通孔から突出させることにより、被加工材を打ち抜き加工する打ち抜き加工用プレス金型を開示する。特許文献1に記載された打ち抜き加工用プレス金型によれば、ストリッパープレートの貫通孔を構成する壁面にリング状の潤滑油路が形成される。この潤滑油路に潤滑油が供給されることにより、貫通孔を挿通するパンチの側周面に潤滑油が供給される。
【0005】
特許文献2は、パンチの先端面(下面)に潤滑油を供給するためのエアブロー装置を開示する。特許文献2によれば、上面に被加工材を保持するダイスの下方部に抜きカス排出孔が形成され、この抜きカス排出孔内に潤滑油成分からなるオイルミストがエアブロー装置により供給される。パンチにより被加工材が打ち抜かれたときにパンチの先端面(下面)が抜きカス排出孔内のオイルミストに浸されることによりパンチの先端面(下面)に潤滑油が供給される。
【0006】
特許文献3は、被加工材のプレス加工時に、パンチと被加工材との間に潤滑油を好適に供給することができるプレス金型を開示する。特許文献3に記載のプレス金型によれば、上型と下型との間に挟持された被加工材がストリッパープレートによって昇降可能に覆われたパンチによりプレス加工される。ストリッパープレートにはパンチの周囲を覆う内周面の全周に亘って油溜め部がその下方に開口して形成されている。油溜め部に供給された潤滑油はプレス加工時にパンチの側周と被加工材とが当接する箇所に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−277661号公報
【特許文献2】特開2001−71061号公報
【特許文献3】特開2007−7692号公報
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1および特許文献3に記載されたプレス金型によれば、潤滑油がパンチの側周面に付着する。パンチの側周面に付着した潤滑油は、パンチで被加工材を打ち抜く時に被加工材にしごかれる。このため潤滑油が十分にパンチの先端(歯先)に行き渡らない。したがって、パンチ(特に被加工材と接触して被加工材をせん断する加工点であるパンチの先端)に十分な量の潤滑油を付着させた状態で被加工材を成形することができない。それゆえに、パンチの摩耗(特にパンチの先端の摩耗)量はそれほど低下しない。
【0009】
特許文献2に記載されたエアブロー装置によれば、パンチの先端に潤滑油が供給される。しかし、パンチの先端面が被加工材と接触したときに、パンチの先端面に付着した潤滑油がパンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められる。パンチの先端面と被加工材との間に潤滑油が閉じ込められたままパンチにより被加工材を加圧すると、閉じ込められた潤滑油に大きな圧力が作用する。大きな潤滑油圧力が被加工材に作用することにより、被加工材はパンチの先端でせん断されるときに変形する。斯かる変形により被加工材の成形精度が悪化する。
【0010】
この場合、被加工材をダイスとストリッパープレートで挟むとともに、パンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められた潤滑油を排出するための排出溝をストリッパープレートに形成することにより、閉じ込められた潤滑油を排出溝を介して外部に排出することができる。このため被加工材に高い潤滑油圧力が作用することを防止することができる。しかし、このような排出溝をストリッパープレートに形成した場合、被加工材の成形時にパンチの先端面と被加工材との間に閉じ込められた潤滑油が成形圧力により全て排出溝側に押し出されてしまい、被加工材の成形時にパンチの先端に付着すべき潤滑油が欠乏する。このためパンチの摩耗(特にパンチの先端の摩耗)量はそれほど低下しない。
【0011】
本発明は、パンチに十分な量の潤滑剤を付着させた状態で被加工材を成形することができ、且つ、供給された潤滑油の圧力により被加工材が変形することを防止し得る金型装置を提供することを目的とする。
【0012】
(課題を解決するための手段)
本発明は、被加工材を保持するダイスと、前記ダイスに保持された被加工材に当接する当接面と、前記当接面に開口した貫通孔とを有し、前記当接面が前記ダイスに保持された被加工材に当接することにより、被加工材を前記ダイスとの間に挟持するストリッパープレートと、前記ストリッパープレートの前記貫通孔に挿通されるパンチであって、被加工材に当接可能な先端面を有し、被加工材が前記ダイスと前記ストリッパープレートで挟持されているときにおける前記貫通孔内での前記先端面の配置状態が、前記貫通孔内に埋没した埋没状態から前記貫通孔から突出した突出状態に変化することにより、前記先端面から被加工材に成形圧力を作用させるパンチと、潤滑油が流通する通路であって、前記ストリッパープレートに形成され、前記貫通孔内での前記パンチの前記先端面の配置状態が前記埋没状態であるときに前記貫通孔を構成する壁面と前記パンチの前記先端面とで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間に連通する潤滑油路と、前記潤滑油溜め空間内の圧力が被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力以下であるときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを遮断し、前記潤滑油溜め空間内の圧力が前記設定圧力を越えたときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを許容することにより、前記潤滑油溜め空間内の圧力を前記設定圧力以下の圧力に維持する圧力調整部材と、を備える金型装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、ダイスとストリッパープレートとにより被加工材が挟持された状態で、ストリッパープレートに形成された貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態から突出状態に変化することにより、パンチの先端面が被加工材に当接し、被加工材に成形圧力が作用して被加工材が成形される。また、貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態であるとき形成される空間であって、貫通孔を構成する壁面とパンチの先端面とで囲まれる潤滑油溜め空間は、被加工材がダイスとストリッパープレートとで挟持されているときに被加工材で塞がれる。このとき潤滑油路から潤滑油を潤滑油溜め空間に流すことにより、潤滑油が潤滑油溜め空間内に溜まる。
【0014】
また、被加工材をダイスとストリッパープレートとで挟持したときにおけるストリッパープレートに形成された貫通孔に対するパンチの先端面の配置状態が埋没状態から突出状態に変化する過程で、潤滑油溜め空間内の容積は減少するとともに潤滑油溜め空間内の潤滑油がパンチにより圧縮される。このため潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力および潤滑油溜め空間に連通した潤滑油路内の潤滑油圧力が上昇する。潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力は圧力調整部材によって設定圧力以下の圧力に維持される。上記設定圧力は、被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められている。このため潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力の上昇によって被加工材が変形することが防止される。
【0015】
さらに、パンチで潤滑油溜め空間内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間内の潤滑油にパンチから受ける成形圧力に対抗する設定圧力が作用している。このため、潤滑油溜め空間内の潤滑油は該空間の容積減少に伴い徐々に潤滑油路側に排出されていくものの、パンチの先端面が被加工材に当接する直前まで潤滑油が潤滑油溜め空間に残留する。残留した潤滑油がパンチの先端面に付着し、その状態でパンチによる被加工材の成形が開始される。被加工材の成形中にはパンチの先端面に付着した潤滑油が徐々にパンチの側周面側に押し出される。このようなパンチの先端面から側周面への潤滑油の流れにより被加工材の成形中にパンチの先端が潤滑され続ける。すなわち、本発明によれば、パンチによって被加工材が成形される直前まで潤滑油溜め空間内に潤滑油が適量残留し、残留した潤滑油が被加工材の成形中にパンチの先端を流れることによりパンチの先端が潤滑される。その結果、パンチの先端部の摩耗量を減らすことができる。
【0016】
このように、本発明の金型装置によれば、被加工材の成形時にパンチを十分に潤滑することができるとともに、潤滑油の圧力上昇によって被加工材が変形することを防止することができる。
【0017】
前記潤滑油路は、前記貫通孔の軸方向に沿って前記貫通孔を構成する壁面に形成され前記当接面に開口する溝部を有するものであるのがよい。これによれば、ストリッパープレートの貫通孔の軸方向に沿って形成された溝部に潤滑油が供給されることにより、貫通孔内を移動するパンチの側周面にも潤滑剤を供給することができる。
【0018】
この場合、前記潤滑油路は、一端が前記溝部に連通し他端が前記ストリッパープレートの外壁に開口する通路部をさらに有するのがよい。これによれば、潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力が設定圧力を越えたときに、潤滑油溜め空間内の潤滑油が、溝部および溝部に連通しストリッパープレートの外壁に開口する通路部を経由して、外部に排出される。
【0019】
また、本発明の金型装置は、一端が潤滑油を貯留する潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油排出通路をさらに備えるのがよい。そして、前記圧力調整部材は前記潤滑油排出通路の途中に介装されているのがよい。
【0020】
また、前記圧力調整部材は、前記潤滑油路内の圧力が前記設定圧力以下であるときに閉弁し前記設定圧力を越えたときに開弁するリリーフ弁であるのがよい。これによれば、市販されているリリーフ弁を用いることにより、簡単に、本発明の金型装置を作製することができる。
【0021】
また、本発明の金型装置は、一端が前記潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油供給通路と、潤滑油供給通路の途中に介装され、潤滑油を前記潤滑油供給通路を介して前記潤滑油路に供給するための駆動ポンプを備えるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る金型装置の断面図である。
【図2】ストリッパープレートとダイス付近の詳細を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】被加工材載置工程を表す図である。
【図6】被加工材挟持工程を表す図である。
【図7】潤滑油供給工程を表す図である。
【図8】加圧工程を表す図である。
【図9】成形工程の開始時を表す図である。
【図10】成形工程の中間時を表す図である。
【図11】成形工程の終了時を表す図である。
【図12】パンチ引き上げ工程を表す図である。
【図13】初期位置復帰工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る金型装置の断面図である。図1に示すように、この金型装置1は、上型部10と、下型部20と、潤滑油供給・排出装置30とを備える。
【0024】
上型部10は、上側プレート部11と、ストリッパープレート12と、複数のポール13と、複数のスプリング14と、パンチ15とを備える。上側プレート部11は、第1プレート11a、第2プレート11bおよび第3プレート11cを備える。第1プレート11aの下方に第2プレート11bが重なり、第2プレート11bの下方に第3プレート11cが重なるように、これらのプレートが積層配置されている。また、これらのプレートは一体的に各プレートの積層面と直交する方向(図においては上下方向)に移動可能であるように、ボルト等の締結部材で連結される。なお、各プレートを図1の水平方向に沿って切断した断面形状は、それぞれ矩形形状である。また、第2プレート11bおよび第3プレート11cの中心部分にそれぞれ貫通孔が形成されている。第2プレート11bに形成された貫通孔の径は第3プレート11cに形成された貫通孔の径よりも大きい。これらの貫通孔が同軸配置するように、第2プレート11bと第3プレート11cが積層される。
【0025】
パンチ15は、円柱状の支持部15aと、この支持部15aの端面(図において下面)から同軸的に延設されたパンチ部15bを有する。パンチ部15bの径は支持部15aの径よりも小さい。また、支持部15aの高さは第2プレート11bの厚さと等しい。支持部15aの図において下面が、第2プレート11bに形成された貫通孔と第3プレート11cに形成された貫通孔との境界に形成される段差部分に係止され、且つ支持部15aの図において上面が第1プレート11aの下面で抑えられることにより、パンチ15が上側プレート部11に固定される。
【0026】
ストリッパープレート12は上側プレート部11の下方に配置され、図1の水平方向に切断した断面形状が矩形形状である。ストリッパープレート12の中心部分にはパンチ用貫通孔12aが形成されている。また、ストリッパープレート12の四隅付近には、ポール用貫通孔12bがそれぞれ形成されている。
【0027】
ポール13は、第3プレート11cの四隅付近に固定される。ポール13は第3プレート11cの下面から下方に向けて棒状に延設される。ポール13の下方部分はストリッパープレート12に形成されたポール用貫通孔12bにストリッパープレート12の上面側から進入している。図1に示すように、ポール用貫通孔12bの上側部分の径は下側部分の径よりも小さく、そのため径の小さい上側部分(小径部分)と径の大きい下側部分(大径部分)との境界部分に段差が形成される。また、ポール13の先端(下端)には径外方に広がる拡径部13aが形成されている。拡径部13aが、ポール用貫通孔12b内でポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止されることにより、ストリッパープレート12がポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられる。このときストリッパープレート12に形成されているパンチ用貫通孔12aが、第2プレート11bおよび第3プレート11cにそれぞれ形成されている貫通孔と同軸配置するように、ストリッパープレート12が上側プレート部11の下方に配置される。
【0028】
スプリング14は各ポール13に巻回されている。各スプリング14の図1において上端が第3プレート11cの下面に固定(又は係止)され、各スプリング14の図1において下端がストリッパープレート12の上面に固定(又は係止)される。各スプリング14は、各ポール13に巻回された状態で常に伸長力を発生している。このためストリッパープレート12は、スプリング14により上側プレート部11から離間する方向に付勢される。この場合において、ポール13の先端に形成された拡径部13aがポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止されることによって、ストリッパープレート12がスプリング14の付勢力でポール13から抜け落ちることが防止される。
【0029】
下型部20は、ダイス21とベースプレート22とを備える。ベースプレート22の上面にダイス21が固定される。ダイス21の図において上面に被加工材Wが載置される。ダイス21の中心部に打ち抜き用貫通孔21aが形成される。打ち抜き用貫通孔21aがストリッパープレート12に形成されているパンチ用貫通孔12aと同軸配置するように、ストリッパープレート12に対するダイス21の位置が決められている。
【0030】
図2は、ストリッパープレート12とダイス21付近の詳細を示す断面図である。また、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。図2に示すように、ストリッパープレート12には、潤滑油が流通する潤滑油路121が形成されている。潤滑油路121は、溝部121aと通路部121bとを有する。
【0031】
図2および図4に示すように、溝部121aは、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aを構成する壁面に形成される。溝部121aは、図2においてパンチ用貫通孔12aの上下方向中心部付近に位置する上端部Uから下方に延びて形成され、その下端はストリッパープレート12の下面12eに開口する。本実施形態においては、パンチ用貫通孔12aの周方向に沿って複数本(本実施形態では4本)の溝部121aが等間隔(本実施形態では90°間隔)に形成される。
【0032】
図3に示すように、通路部121bは、その一端が溝部121aの上端部Uに連通し、他端がストリッパープレート12の外壁に形成された外部開口12cに連通する。上述のように複数の溝部121aがパンチ用貫通孔12aの周方向に沿って形成されている。したがって、通路部121bは、外部開口12cと複数の溝部121aの上端部Uとをそれぞれ連通するように、途中で分岐している。
【0033】
図1に示すように、潤滑油供給・排出装置30は、配管部31と、タンク(潤滑油貯留槽)32と、リリーフ弁(圧力調整部材)33と、駆動ポンプ34と、逆止弁35とを備える。配管部31は、潤滑油排出管31aと、潤滑油供給管31bと、共通管31cを有する。
【0034】
タンク32には潤滑油が貯留されている。このタンク32に潤滑油排出管31aの一端および潤滑油供給管31bの一端が連通される。潤滑油排出管31aの他端と潤滑油供給管31bの他端は合流点Cで合流する。この合流点Cに共通管31cの一端が連通する。共通管31cの他端は、ストリッパープレート12に形成されている外部開口12cに連通する。したがって、潤滑油排出管31aおよび潤滑油供給管31bは、共通管31cを介してストリッパープレート12に形成された潤滑油路121の通路部121bに連通する。
【0035】
潤滑油排出管31aの途中にリリーフ弁33が介装される。リリーフ弁33は第1ポート33aと第2ポート33bを有する。リリーフ弁33の設定圧力P0は、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力に設定される。第2ポート33b側から受ける圧力が設定圧力P0以下である場合はリリーフ弁33は閉弁する。第2ポート33b側から受ける圧力が設定圧力P0を越えた場合にリリーフ弁33が開弁する。リリーフ弁33が閉弁しているときには第2ポート33bから第1ポート33aに向かう流体の流れが遮断され、リリーフ弁33が開弁しているときには第2ポート33bから第1ポート33aに向かう流れが許容される。なお、リリーフ弁33は、第1ポート33a側から第2ポート33b側への流体の流れを遮断するように構成されている。
【0036】
潤滑油供給管31bの途中に駆動ポンプ34および逆止弁35が介装される。駆動ポンプ34は、潤滑油供給管31b内の流体が一端側(タンク32側)から他端側(合流点C側)に向かうように駆動される。また、逆止弁35は、合流点C側から駆動ポンプ34側に向かう流体の流れを遮断する。
【0037】
上記構造の金型装置1において、被加工材Wの成形方法(プレス方法)を各工程に分けて説明する。図5〜図13は、各工程における金型装置1の状態を示す図である。
【0038】
(被加工材載置工程)
まず、図5に示すように、上型部10が初期位置に位置している金型装置1に被加工材Wを載置する。上型部10が図5に示す初期位置に位置しているときには、上型部10と下型部20は離間している。このためダイス21の上面とストリッパープレート12の下面12eとの間に空隙が形成され、この空隙から被加工材Wがストリッパープレート12とダイス21との間に投入される。そして、被加工材Wがダイス21の所定位置に載置される。
【0039】
上型部10の位置が初期位置であるときには、ストリッパープレート12がスプリング14の付勢力を受けることにより、ポール13の拡径部13aがポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止される。このような状態でストリッパープレート12が上側プレート部11に吊り下げられる。
【0040】
また、上型部10の位置が初期位置であるときには、パンチ15のパンチ部15bの先端部分(下方部分)がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内に挿通されている。このときパンチ15(パンチ部15b)の先端面15cがパンチ用貫通孔12a内に埋没するように、すなわち先端面15cがパンチ用貫通孔12aから突出しないように、パンチ15がパンチ用貫通孔12aに対して配置される。このようなパンチ15の先端面15cのパンチ用貫通孔12aに対する配置状態を、本実施形態では「埋没状態」と呼ぶ。「埋没状態」では、パンチ15の先端面15cの直下に、先端面15cとパンチ用貫通孔12aを構成する壁面とで囲まれた空間が形成される。本実施形態ではこの空間を、「潤滑油溜め空間S」と呼ぶ。潤滑油溜め空間Sは、パンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aの壁面に形成されている溝部121a内の空間に連通する。したがって、潤滑油溜め空間Sは、溝部121a、通路部121b、共通管31cを介して潤滑油排出管31aの途中に介装されたリリーフ弁33の第2ポート33b側に連通する。つまり、潤滑油溜め空間S内の圧力が、リリーフ弁33の第2ポート33b側に伝達される。
【0041】
なお、上型部10の位置が初期位置であるときにおける、パンチ15の先端面15cの高さ位置(図5における上下方向に沿った位置)は、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aの壁面に形成された溝部121aの上端部Uの高さ位置よりも低い。
【0042】
(被加工材挟持工程)
次に、図6に示すように上側プレート部11を下降させる。上側プレート部11の下降に伴い、上側プレート部11に固定されたパンチ15、ポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられているストリッパープレート12も下降する。ストリッパープレート12が所定量下降すると、ストリッパープレート12の下面12eがダイス21に載置された被加工材Wの上面に当接する。これにより被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持される。被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持されることにより、被加工材Wの成形時における被加工材Wの動きが抑えられる。またこのとき、潤滑油溜め空間Sの開口面が被加工材Wの上面で塞がれる。
【0043】
(潤滑油供給工程)
次いで、上側プレート部11の下降を一旦停止し、駆動ポンプ34を作動させる。駆動ポンプ34の作動によって、図7に示すように、タンク32内に貯留されている潤滑油が潤滑油供給管31bおよび共通管31cを介してストリッパープレート12に形成されている外部開口12cから潤滑油路121の通路部121bおよび溝部121aに供給され、さらに溝部121aから潤滑油溜め空間S内に供給される。溝部121aはパンチ用貫通孔12aの軸方向に沿って形成されているので、この溝部121a内の潤滑油によってパンチ15のパンチ部15bの側面が潤滑される。なお、上側プレート部11の初期位置からの下降ストロークを検知するセンサ(例えば回転角センサ)が金型装置1に設けられているとよい。上記のセンサでストリッパープレート12の下面12eが被加工材Wの上面に当接するタイミングを検知することにより、駆動ポンプ34の作動開始タイミングの適正化を図ることができる。
【0044】
(加圧工程)
潤滑油溜め空間Sおよび潤滑油路121内の空間を潤滑油で満たした後に、駆動ポンプ34の作動を停止する。その後、上側プレート部11の下降を再開する。上側プレート部11の下降の再開時には、ストリッパープレート12は被加工材Wに接触しているのでそれ以上下降することはできない。したがって、上側プレート部11はストリッパープレート12に対して相対的に下降する。このため上側プレート部11に固定されたパンチ15がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内を下降する。パンチ用貫通孔12a内でのパンチ15の下降により、図8に示すようにパンチ15の先端面15cの直下に形成されている潤滑油溜め空間Sの容積が減少するとともに該空間S内の潤滑油が圧縮されて潤滑油圧力が上昇する。潤滑油圧力の上昇は、溝部121a内の潤滑油、通路部121b内の潤滑油、共通管31c内の潤滑油を介して潤滑油排出管31aに介装されたリリーフ弁33の第2ポート33b側に伝達される。
【0045】
リリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力が設定圧力P0以下であるときに閉弁する。リリーフ弁33が閉弁している場合、潤滑油溜め空間S内の潤滑油が潤滑油路121に向かう流れが遮断される。また、リリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに開弁する。リリーフ弁33が開弁している場合、潤滑油溜め空間S内の潤滑油が潤滑油路121に向かう流れが許容される。このような第2ポート33b側に作用する潤滑油圧力に応じたリリーフ弁33の開閉作動によって、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が設定圧力P0以下に維持される。ここで、パンチ15の成形圧力は設定圧力P0よりも大きいので、パンチ15の先端面15cが潤滑油溜め空間S内の潤滑油を圧縮しているときには潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力はリリーフ弁33の開閉作動によって設定圧力P0にほぼ等しい圧力に維持される。また、潤滑油供給管31bには逆止弁35が介装されているため、潤滑油路121から共通管31cに排出される潤滑油は合流点Cから潤滑油供給管31b側には流れず潤滑油排出管31a側に流れる。
【0046】
パンチ15により潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が被加工材Wに作用する。また、上述のように潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力は設定圧力P0に維持されている。設定圧力P0は、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力である。したがって、このような設定圧力P0が被加工材Wに作用しても、被加工材Wは変形しない。また、潤滑油溜め空間S内の潤滑油には、パンチ15から受ける成形圧力に対抗する設定圧力P0が作用しているので、潤滑油溜め空間S内の潤滑油は該空間Sの容積減少とともに押し出されて潤滑油路121側に排出されていくものの、パンチ15の先端面15cが被加工材Wに当接する直前まで潤滑油溜め空間Sに残留する。
【0047】
(成形工程)
上側プレート部11をさらに下降させると、図9に示すようにパンチ15の先端面15cが被加工材Wの上面に接触する。この状態からさらに上側プレート部11を下降させると、図10に示すように、パンチ15の先端面15cがストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aから突出する。図10に示すようなパンチ15の先端面15cのパンチ用貫通孔12aに対する配置状態を、本実施形態では「突出状態」と呼ぶ。突出状態では、パンチ15の先端面15cから被加工材Wに成形圧力が作用し、この成形圧力によって被加工材Wが塑性変形される。すなわち、パンチ用貫通孔12aに対すパンチ15の先端面15cの配置状態が「埋没状態」から「突出状態」に変化することにより、パンチ15の先端面15cから被加工材Wに成形圧力が作用されて、被加工材Wが成形される。
【0048】
図9に示すように、パンチ15により被加工材Wの成形が開始されるときに、潤滑油溜め空間S内に残留していた潤滑油がパンチ15の先端面15cに付着している。また、図10に示すように、パンチ15による被加工材Wの成形中には、パンチ15の先端面15cに付着した潤滑油が徐々にパンチ15の側周面側に押し出されていく。このようなパンチ15の先端面15cからパンチ15の側周面への潤滑油の流れ(染み出し)によって、被加工材Wの成形中におけるパンチ15の先端が常時潤滑され続ける。特にパンチ15の先端面15cの周縁のエッジ部分(被加工材Wと接触して被加工材Wをせん断する加工点)が潤滑され続ける。すなわち、本実施形態によれば、パンチ15によって被加工材Wが成形される直前まで潤滑油溜め空間S内に潤滑油が適量残留し、残留した潤滑油が被加工材Wの成形中にパンチ15の先端を潤滑する。このためパンチ15の先端の摩耗量を減らすことができる。
【0049】
上側プレート部11がさらに下降すると、図11に示すように被加工材Wがパンチ15で打ち抜かれる。打ち抜かれた部分はダイス21に形成された打ち抜き用貫通孔21aを落下して外部に排出される。
【0050】
(パンチ引き上げ工程)
被加工材Wを打ち抜いた後に、上側プレート部11が上方に移動する。このときストリッパープレート12がスプリング14の付勢力で抑えられている間はストリッパープレート12は上方移動できない。したがって、この間は上側プレート部11の上方移動に伴いパンチ15がストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12a内を相対的に上方移動する。そして、図12に示すように、パンチ15の先端面15cがストリッパープレート12の下面よりも高い位置まで上昇すると、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aに形成されている溝部121aが大気に連通する。このため溝部121aおよび通路部121b内に残留している潤滑油が打ち抜き用貫通孔21aを落下する。落下した潤滑油は所定の手段でタンク32に回収される。
【0051】
(初期位置復帰工程)
上側プレート部11の上方移動によって、やがてポール13の拡径部13aがストリッパープレート12のポール用貫通孔12bに形成された段差部分に係止される。その後、さらに上側プレート部11が上昇すると、ストリッパープレート12はポール13を介して上側プレート部11に吊り下げられた状態で上方移動する。そして、図13に示すように上型部10が初期位置に復帰する。以上の工程を経て、被加工材Wがプレス成形される。
【0052】
以上のように、本実施形態の金型装置1は、被加工材Wを保持するダイス21と、ダイス21に保持された被加工材Wに当接する下面12eと、下面12eに開口したパンチ用貫通孔12aとを有し、下面12eがダイス21に保持された被加工材Wに当接することにより、被加工材Wをダイス21との間に挟持するストリッパープレート12と、ストリッパープレート12のパンチ用貫通孔12aに挿通されるパンチ15とを備える。また、パンチ15は、被加工材Wに当接可能な先端面15cを有し、被加工材Wがダイス21とストリッパープレート12で挟持されているときにおけるパンチ用貫通孔12a内での先端面15cの配置状態が埋没状態から突出状態に変化することにより、先端面15cから被加工材Wに成形圧力を作用させる。
【0053】
また、ストリッパープレート12には、パンチ用貫通孔12a内でのパンチ15の先端面15cの配置状態が埋没状態であるときにパンチ用貫通孔12aを構成する壁面とパンチ15の先端面15cとで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間Sに連通する潤滑油路121が形成される。
【0054】
そして、本実施形態の金型装置1は、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0以下の圧力に維持するリリーフ弁33を備える。このリリーフ弁33は、第2ポート33b側に作用する潤滑油溜め空間内の潤滑油圧力が被加工材Wが塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力P0以下であるときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを遮断し、潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が設定圧力P0を越えたときに潤滑油溜め空間Sから潤滑油路121に向かう流体の流れを許容することにより、パンチ15で潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときにおける潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力を設定圧力P0に維持する。
【0055】
本実施形態の金型装置1によれば、リリーフ弁33の作動により潤滑油溜め空間S内の潤滑油圧力が、被加工材Wが塑性変形しない上限圧力である設定圧力P0に維持されるため、潤滑油溜め空間S内の潤滑油の圧力上昇に起因した被加工材Wの変形を効果的に防止することができる。さらに、パンチ15で潤滑油溜め空間S内の潤滑油が圧縮されているときに、潤滑油溜め空間S内の潤滑油にパンチ15から受ける成形圧力に対抗する設定圧力P0が作用しているので、潤滑油溜め空間S内の潤滑油はパンチ15から受ける成形圧力に対抗しながら潤滑油路121側に徐々に排出される。このためパンチ15の先端面15cが被加工材に当接する直前まで潤滑油が潤滑油溜め空間Sに残留する。残留した潤滑油がパンチ15の先端面15cに付着し、その状態でパンチ15による被加工材Wの成形が開始される。被加工材Wの成形中にはパンチ15の先端面15cに付着した潤滑油が徐々にパンチ15の側周面側に染み出すように押し出される。この染み出すような潤滑油の流れによりパンチ15の先端が潤滑され続ける。よって、パンチ15の先端の摩耗量を減らすことができる。
【0056】
また、潤滑油路121は、パンチ用貫通孔12aの軸方向に沿ってパンチ用貫通孔12aを構成する壁面に形成されストリッパープレート12の下面12eに開口する溝部121aを有する。この溝部121aに潤滑油が供給されることにより、パンチ用貫通孔12a内を移動するパンチ15の側周面にも潤滑剤を供給することができる。
【0057】
また、潤滑油路121は、一端が溝部121aに連通し他端がストリッパープレート12の外壁に開口する通路部121bを有する。このため、ストリッパープレート12の外壁に開口する通路部121bおよびこの通路部121bに連通する溝部121aを経由して、外部から潤滑油を潤滑油溜め空間S内に供給し、且つ、被加工材Wの成形時に潤滑油溜め空間S内の潤滑油を外部に排出することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、複数の溝部121aをパンチ用貫通孔12aの周方向に沿って形成した例を示したが、1本の溝部が形成されていても良い。また、パンチ用貫通孔12aの全周に亘って溝部に相当する構成が形成されていても良い。また、上記実施形態では共通管31cを介してストリッパープレート12に形成された外部開口12cから潤滑油を供給および排出する例を示したが、潤滑油を供給するための専用の経路と潤滑油を排出するための専用の経路を別々に設けても良い。さらに、上記実施形態では、上下に型が開閉する金型装置を例に本発明を説明したが、金型装置の型開閉方向は任意である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…金型装置、10…上型部、11…上側プレート部、12…ストリッパープレート、12a…パンチ用貫通孔、12c…外部開口、12d…上端部、12e…下面(当接面)、121…潤滑油路、121a…溝部、121b…通路部、15…パンチ、15a…支持部、15b…パンチ部、15c…先端面、20…下型部、21…ダイス、22…ベースプレート、30…潤滑油供給・排出装置、31…配管部、31a…潤滑油排出管(潤滑油排出通路)、31b…潤滑油供給管(潤滑油供給通路)、31c…共通管、32…リザーバタンク(潤滑油貯留槽)、33…リリーフ弁(圧力調整部材)、33a…第1ポート、33b…第2ポート、34…駆動ポンプ、P0…設定圧力、S…潤滑油溜め空間、W…被加工材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を保持するダイスと、
前記ダイスに保持された被加工材に当接する当接面と、前記当接面に開口した貫通孔とを有し、前記当接面が前記ダイスに保持された被加工材に当接することにより、被加工材を前記ダイスとの間に挟持するストリッパープレートと、
前記ストリッパープレートの前記貫通孔に挿通されるパンチであって、被加工材に当接可能な先端面を有し、被加工材が前記ダイスと前記ストリッパープレートで挟持されているときにおける前記貫通孔内での前記先端面の配置状態が、前記貫通孔内に埋没した埋没状態から前記貫通孔から突出した突出状態に変化することにより、前記先端面から被加工材に成形圧力を作用させるパンチと、
潤滑油が流通する通路であって、前記ストリッパープレートに形成され、前記貫通孔内での前記パンチの前記先端面の配置状態が前記埋没状態であるときに前記貫通孔を構成する壁面と前記パンチの前記先端面とで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間に連通する潤滑油路と、
前記潤滑溜め空間内の圧力が被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力以下であるときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを遮断し、前記潤滑油溜め空間内の圧力が前記設定圧力を越えたときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを許容することにより、前記潤滑油溜め空間内の圧力を前記設定圧力以下の圧力に維持する圧力調整部材と、
を備える金型装置。
【請求項2】
請求項1記載の金型装置において、
前記潤滑油路は、前記貫通孔の軸方向に沿って前記貫通孔を構成する壁面に形成され前記当接面に開口する溝部を有する、金型装置。
【請求項3】
請求項2記載の金型装置において、
前記潤滑油路は、一端が前記溝部に連通し他端が前記ストリッパープレートの外壁に開口する通路部を有する、金型装置。
【請求項4】
請求項3記載の金型装置において、
一端が潤滑油を貯留する潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油排出通路をさらに備え、
前記圧力調整部材は前記潤滑油排出通路の途中に介装されている、金型装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の金型装置において、
前記圧力調整部材は、前記潤滑油路内の圧力が前記設定圧力以下であるときに閉弁し前記設定圧力を越えたときに開弁するリリーフ弁である、金型装置。
【請求項1】
被加工材を保持するダイスと、
前記ダイスに保持された被加工材に当接する当接面と、前記当接面に開口した貫通孔とを有し、前記当接面が前記ダイスに保持された被加工材に当接することにより、被加工材を前記ダイスとの間に挟持するストリッパープレートと、
前記ストリッパープレートの前記貫通孔に挿通されるパンチであって、被加工材に当接可能な先端面を有し、被加工材が前記ダイスと前記ストリッパープレートで挟持されているときにおける前記貫通孔内での前記先端面の配置状態が、前記貫通孔内に埋没した埋没状態から前記貫通孔から突出した突出状態に変化することにより、前記先端面から被加工材に成形圧力を作用させるパンチと、
潤滑油が流通する通路であって、前記ストリッパープレートに形成され、前記貫通孔内での前記パンチの前記先端面の配置状態が前記埋没状態であるときに前記貫通孔を構成する壁面と前記パンチの前記先端面とで囲まれた空間で形成される潤滑油溜め空間に連通する潤滑油路と、
前記潤滑溜め空間内の圧力が被加工材が塑性変形しない上限圧力として予め定められた設定圧力以下であるときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを遮断し、前記潤滑油溜め空間内の圧力が前記設定圧力を越えたときに前記潤滑油溜め空間から前記潤滑油路に向かう流体の流れを許容することにより、前記潤滑油溜め空間内の圧力を前記設定圧力以下の圧力に維持する圧力調整部材と、
を備える金型装置。
【請求項2】
請求項1記載の金型装置において、
前記潤滑油路は、前記貫通孔の軸方向に沿って前記貫通孔を構成する壁面に形成され前記当接面に開口する溝部を有する、金型装置。
【請求項3】
請求項2記載の金型装置において、
前記潤滑油路は、一端が前記溝部に連通し他端が前記ストリッパープレートの外壁に開口する通路部を有する、金型装置。
【請求項4】
請求項3記載の金型装置において、
一端が潤滑油を貯留する潤滑油貯留槽に連通し他端が前記ストリッパープレートに形成された前記通路部の他端に連通する潤滑油排出通路をさらに備え、
前記圧力調整部材は前記潤滑油排出通路の途中に介装されている、金型装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の金型装置において、
前記圧力調整部材は、前記潤滑油路内の圧力が前記設定圧力以下であるときに閉弁し前記設定圧力を越えたときに開弁するリリーフ弁である、金型装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−81968(P2013−81968A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221983(P2011−221983)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]