説明

金属検出システム

【課題】 被検出体の形状に関わらずゴム製品の内部に混入した金属異物を安定して検出できる金属検出システムを提供する。
【解決手段】 ゴム製品生産工程において生産されたゴム製品6の搬送ベルトコンベア4上に該ゴム製品6内部に混入した金属異物7を検出する金属検出装置2を配置して、搬送されたゴム製品6を連続的に金属異物7の検出を行う金属検出システム1であって、金属検出装置2のゴム製品搬送方向上流側の搬送ベルトコンベア5に、ゴム製品6内部に混入した金属異物7に磁気を帯びさせる着磁装置3を設け、金属検出装置2による金属異物7の検出する前に、該着磁装置3により金属異物7に帯磁させることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属検出システムに係り、特に、ゴム製品に混入した金属異物を検出する金属検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料品、食料品、生肉等の様々な生産工場において、生産工程の最後に検査工程を設け、検査工程において、金属検出装置を用いて生産品の中に金属異物が混入しているか否かを検査して、金属異物が混入した生産品を出荷前に排除するようにしていることは周知である(特許文献1を参照)。
【0003】
従来の金属検出装置では、金属検出のメカニズムから、製品の厚さ方向、幅方向に対してセンサからの距離に応じて検出精度が変化するという特徴を有している。衣料品や食料品等の小さい被検査体の場合は、検査位置がある程度特定されるため、安定した検査を行うことができる。
【特許文献1】特開2004−151064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然ゴム(TSR:Technical Standard Rubber)の加工工場で、ゴム製品を出荷する場合は、内部に金属異物がどのような状態(姿勢や位置)で混入しているか解からないために、金属異物を正確に検出することは難しいという問題があった。
【0005】
例えば、ゴム製品で、外観形状が40cm(縦)×80cm(横)×20cm(高さ)の矩形柱状で、重量が35kg程度の被検査体の場合、金属異物の検出精度は、Fe系において、長さが2mm以下の金属片や直径が2mm以下の球形の金属体では安定せず、検出不可のとなる場合があった。
【0006】
すなわち、金属検出装置の検出レベルは、金属異物の形状、配向性(配置された向き)等によって検出レベルが異なり、さらにゴム製品に混入した金属異物の位置(検出される位置)によっても検出感度が大きく異なる。
【0007】
従って、大容量(大型)のゴム製品における金属異物の検査は、上述したように混入した金属異物の形状、配向、位置などによって、同じ様な金属異物であっても、検出結果にばらつきが生じるという問題点があった。
【0008】
そこで、金属検出装置により金属異物を確実に検出するために、検出感度を高めることが考えられるが、検出感度を高める程アルファ・ミスが増大するため、実作業において安定生産ができなくなるという問題が新たに生じる。
【0009】
また、被検査体を小型化することで金属検出装置による検出レベルを安定させて、検出精度の向上を図ることが考えられるが、被検査体の形状や大きさ等が制限されるため、実生産には向かないという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであって、被検出体の形状に関わらずゴム製品の内部に混入した金属異物を安定して検出できる金属検出システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明に係る金属検出システムの構成は、次の通りである。
【0012】
請求項1に記載した金属検出システムは、天然ゴム工場におけるゴム製品の生産工程において生産されたゴム製品の搬送経路上に該ゴム製品内部に混入した金属異物を検出する金属検出手段を配置して、搬送されたゴム製品を連続的に金属異物の検出を行う金属検出システムであって、前記金属検出手段のゴム製品搬送方向上流側に、ゴム製品内部に混入した金属異物に磁気を帯びさせる着磁手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に記載した金属検出システムは、請求項1に記載の構成に加えて、前記着磁手段を、前記金属検出手段と別体で設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した発明によれば、ゴム製品の加工工場において生産されたゴム製品の搬送経路上に該ゴム製品内部に混入した金属異物を検出する金属検出手段を配置して、搬送されたゴム製品を連続的に金属異物の検出を行う金属検出システムであって、前記金属検出手段のゴム製品搬送方向上流側に、ゴム製品内部に混入した金属異物に磁気を帯びさせる着磁手段を設けたことで、前記金属検出手段による金属異物の検出前に、前記着磁手段により金属異物を帯磁させて、検金属検出手段の検出レベルを上げることなく金属異物の検出を容易にして、ゴム製品などの被検出体の形状に関わることなく安定した金属検出を実現できるという効果を奏し得る。
【0015】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記着磁手段を、前記金属検出手段と別体で設けたことで、着磁手段の形状や大きさに拘わらずに金属検出手段を構成でき、また、逆に金属検出手段の構成に拘わらず着磁手段を設置できるので、容易に従来の金属検出システムに展開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜3は本発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明の一実施形態に係る金属検出システムの構成を示す側面図、図2は前記金属検出システムの構成を示す平面図、図3は図1のA矢視図であって前記金属検出システムを構成する着磁装置の構成を示す概略図である。
【0017】
本実施形態は、図1に示すように、ゴム製品生産工程におけるゴム製品6の搬送ベルトコンベア(搬送経路)4上に金属検出装置(金属検出手段)2を配置して該ゴム製品内部に混入した金属異物7を検出する金属検出システム1において、金属検出装置2よりゴム製品搬送方向上流側の搬送ベルトコンベア5上に、ゴム製品6内部に混入した金属異物7に磁気を帯びさせる着磁装置(着磁手段)3を設け、金属検出装置2によって金属異物7の検出が行われる前に、着磁装置3によって金属異物7を帯磁させるようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
この金属検出システム1は、図示しないゴム製品生産ラインの最終工程に設けられ、生産されたゴム製品6内に金属異物7が含まれているか否かを検査するものであって、金属異物が含まれていた場合は、別工程の図示しない不良製品排除手段、または人手によって生産ラインから摘出するようにされている。
【0019】
金属検出装置2は、内部に設けられた検出コイル21に高周波交流磁界を発生させ、この検出コイル21内を通過するゴム製品6が通過する際に、該ゴム製品6内部に金属異物が混入していた場合に生じる鉄損の変化を検出することによって金属異物を感知するようにしたものである。
【0020】
着磁装置3は、搬送ベルトコンベア5のゴム製品搬送経路の一部を包囲するように配置されて、ゴム製品搬送方向に対して略直角方向に磁場を形成して、該搬送ベルトコンベア5により搬送されてきたゴム製品6が該着磁装置3内を通過する時に、該ゴム製品6内部に金属異物7が混入していた場合、該金属異物7が着磁されるようになっている。
【0021】
搬送ベルトコンベア5の搬送方向下流側には、金属検出装置2の内を通って配置される搬送ベルトコンベア4が配置され、着磁装置3を通過したゴム製品6を連続的に金属検出工程に導入するようになっている。
【0022】
以上のように構成したので、本実施形態によれば、従来のゴム製品生産ラインの最終工程に位置する検査工程において、簡単な構成で金属検出システムを構築できる。
【0023】
また、本実施形態によれば、着磁装置3により金属異物7に帯磁させることで、金属検出装置2によって金属異物7を検出し易くなるので、被検出体の形状や大きさに拘わらずゴム製品の内部に混入された金属異物を安定して検出できる。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、金属検出装置2と着磁装置3とを別体で構成したので、従来の金属検出システムに容易に展開させることができるとともに、色々な装置レイアウトが可能となる。
【0025】
尚、本実施形態では、金属検出装置2により高周波交流磁界を発生させて金属異物による鉄損の変化を検知することにより該金属異物を検出するようにしているが、本発明は、金属異物を検出する方式に限定されるものではなく、帯磁した金属異物を検出可能なものであれば金属検出手段として適用可能である。
【0026】
次に、本実施形態に係る金属検出システムによる金属検出結果を、実施例に基づき説明する。
図4は、本発明に係る金属検出システムを用いて複数の金属異物を検出した実施例とその比較例の結果を示す評価表である。
【0027】
以下に示す実施例に用いられる被検査体たるゴム製品は、材質がゴム材で、重量:約35kg,形状:40cm(縦)×80cm(横)×20cm(高さ)のゴム製品6である。
このゴム製品6の略中央部(検出条件としては最も検出し難い位置)にそれぞれ異なった条件(形状、重量、向き)の金属異物を混入させて、金属検出システム1による金属検出を行った。
【0028】
尚、以下に示す実施例1〜4の金属異物は、全て着磁されたものであり、それぞれの実施例に対する比較例1〜4の金属異物は、全て着磁されていないものである。以下にそれぞれの詳細を示す。
【0029】
実施例1は、材質:Fe,形状:球形,重量:25mgの金属異物を混入させ、着磁したものである。
比較例1は、実施例1と同じ金属異物を混入させて、着磁を行わなかったものである。
【0030】
実施例2は、材質:Fe,形状:縦長矩形状,重量:25mg,長さ:4mmの金属異物をゴム製品搬送方向に対して略平行に配置して、着磁したものである。
比較例2は、実施例2と同じように金属異物を混入させて、着磁を行わなかったものである。
【0031】
実施例3は、材質:Fe,形状:横長矩形状,重量:25mg,長さ:4mmの金属異物をゴム製品搬送方向に対して略直角に配置して、着磁したものである。
比較例3は、実施例3と同じように金属異物を混入させて、着磁を行わなかったものである。
【0032】
実施例4は、材質:SUS,形状:横長矩形状,重量:25mg,長さ:4mmの金属異物をゴム製品搬送方向に対して略直角に配置して、着磁したものである。
比較例4は、実施例4と同じように金属異物を混入させて、着磁を行わなかったものである。
【0033】
上述した実施例1〜4及び比較例1〜4の金属検出装置による検出結果は、図4に示すように、比較例1〜4の金属異物は、Fe、SUSの何れも検出されなかったが、実施例1〜4の金属異物はFe、SUSの何れも全て検出された。すなわち、上述した金属検出システム1による検出結果によれば、同じ条件(形状、重量、混入姿勢)であっても、着磁することによって検出レベルが格段に向上させることができる。
【0034】
以上により、本発明に係る金属検出システムによれば、形状、重量、混入姿勢に依ることなく、小さな金属異物であっても検出レベルを向上させて、検出することができるので、金属異物の混入したゴム製品を確実に摘出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る金属検出システムの構成を示す側面図である。
【図2】前記金属検出システムの構成を示す平面図である。
【図3】図1のA矢視図であって、前記金属検出システムを構成する着磁装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明に係る金属検出システムを用いて複数の金属異物を検出した実施例とその比較例の結果を示す評価表である。
【符号の説明】
【0036】
1 金属検出システム
2 金属検出装置
3 着磁装置
4,5 搬送ベルトコンベア
6 ゴム製品
7 金属異物
21 検出コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム工場におけるゴム製品の生産工程において生産されたゴム製品の搬送経路上に該ゴム製品内部に混入した金属異物を検出する金属検出手段を配置して、搬送されたゴム製品を連続的に金属異物の検出を行う金属検出システムであって、
前記金属検出手段のゴム製品搬送方向上流側に、ゴム製品内部に混入した金属異物に磁気を帯びさせる着磁手段を設けたことを特徴とする金属検出システム。
【請求項2】
前記着磁手段は、前記金属検出手段と別体で設けられたことを特徴とする請求項1に記載の金属検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−300813(P2006−300813A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124958(P2005−124958)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】