金属管柱
【課題】開口部に繰り返し作用する応力を分散させ、最低限の開口寸法を確保するとともに、静的荷重に対する剛性を確保し、さらに、補強部材が交通の支障とならないように、容易かつ経済的に補強部材が設けられた開口部を有する金属管柱を提供する。
【解決手段】金属管本体の管体4と、その外周面8aに形成された開口部10とを備える金属管柱1において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺11と、その両側辺11から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部12とを有する開口部10と、開口部10の両側辺11の一部又は全部から、金属管本体の内部の中空部7に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材9とを備え、両側辺11から連続する部分における上端部12の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいものとなっている。
【解決手段】金属管本体の管体4と、その外周面8aに形成された開口部10とを備える金属管柱1において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺11と、その両側辺11から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部12とを有する開口部10と、開口部10の両側辺11の一部又は全部から、金属管本体の内部の中空部7に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材9とを備え、両側辺11から連続する部分における上端部12の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいものとなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路照明、交通信号機、電光式道路標識等の設置に用いられる金属管柱に関し、特に金属管本体の外周面に開口部を備える金属管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路照明等に用いられる金属管柱には、内部に配電盤や制御盤等の電気機器等を取り付ける必要があるため、その金属管柱の基部付近の側壁には開口部が形成され、その開口部を塞ぐための蓋が取り付けられているのが通常である。
【0003】
道路照明等に用いられる金属管柱の側壁に開口部が設けられると、開口部が設けられた箇所において、金属管柱の管軸垂直方向の断面に欠損が生じるため、その箇所における金属管柱の管軸垂直方向の断面性能が低下する。そして、照明設備や金属管柱の自重等による曲げ荷重等によって大きな静的荷重が金属管柱に負荷されるが、この断面性能の低下によって、この静的荷重に対する金属管柱の剛性が低下することとなる。
【0004】
他方で、道路照明等に用いられる金属管柱の内部に設置される電気機器等は、開口部を介して設置、点検、交換等なされるため、電気機器等の形状及び寸法に応じて、電気機器等の操作や出し入れに必要となる最低限の開口寸法を確保しなければならない。
【0005】
そこで、道路照明等に用いられる金属管柱の側壁の開口部において、最低限の開口寸法を確保するとともに、金属管柱の静的荷重に対する剛性を確保することを目的として、特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成が、従来から提案されている。この特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成は、道路照明等に用いられる金属管柱の側壁の開口部の全周に亘って金属管柱の外面側に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等を設けるものである。そして、この特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成によると、最低限の開口寸法を確保しながら、開口部が設けられた箇所における金属管柱の管軸垂直方向の断面性能の低下を抑制することができ、金属管柱の静的荷重に対する剛性を確保することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、金属管柱の外面側に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等を設けると、これらの補強部材が金属管柱の外側に突出するため、金属管柱の付近を通行する車両や歩行者に接触するおそれがあり、交通に支障が生じるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、その開口部の湾曲した部分に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等の補強部材を設けるためには、金属管本体の外周面を湾曲させて折り曲げる加工や、その湾曲した部分に湾曲した補強部材を溶接する工程が必要となる。そして、その湾曲した部分を折り曲げる加工や溶接には高度な技術を要することから、開口部の湾曲した部分に補強部材を設ける加工は、直線部に補強部材を設ける加工と比較して難度が高く、加工に要する費用も高額になるという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、その開口部の全周に亘って補強部材が設けられることで、直線部のみに補強部材が設けられる場合と比較して、補強部材として用いられる鉄鋼材料等の使用量も多くなり、経済性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−38311号公報
【特許文献2】特開2004−92254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、開口部に繰り返し作用する応力を分散させ、最低限の開口寸法を確保するとともに、静的荷重に対する剛性を確保し、さらに、補強部材が交通の支障とならないように、容易かつ経済的に補強部材が設けられた開口部を有する金属管柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願請求項1に記載の金属管柱は、金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部とを有する開口部と、上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、上記両側辺から連続する部分における上記上端部の曲率は、上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいことを特徴とする。
【0012】
本願請求項2に記載の金属管柱は、請求項1に記載の金属管柱において、上記開口部は、その両側辺から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部を有することを特徴とする。
【0013】
本願請求項3に記載の金属管柱は、金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、管軸垂直方向外側に湾曲された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部及び管軸方向下方に湾曲された下端部を有する開口部と、上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、上記両側辺から連続する部分における上記上端部及び上記下端部の曲率は、その連続する部分における上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく、上記上端部及び上記下端部の曲率は、上記両側辺の曲率以上の大きさであることを特徴とする。
【0014】
本願請求項4に記載の金属管柱は、請求項1〜3のうち何れか1項に記載の金属管柱において、金属管本体の外周面における上記開口部の管軸方向上方に、上記外周面の外側に向けて凸状に設けられた凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属管柱は、その側壁に形成された開口部において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部の両側辺から連続する部分における曲率が、両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されることにより、開口部に繰り返し作用する応力を分散させることが可能となる。また、開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材を備えることにより、最低限の開口寸法を確保するとともに、静的荷重に対する剛性を確保し、さらに、補強部材が交通の支障とならないように、容易かつ経済的に補強部材を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した道路照明等に用いられる金属管柱の側面方向の全体図(a)と、背面方向の全体図(b)である。
【図2】本発明を適用した金属管柱の基部付近の外周面に形成された開口部の正面図である。
【図3】本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図(a)と、一つの実施例のA−A断面図(b)である。
【図4】本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。
【図5】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図6】図5に示す本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図である。
【図7】図5に示す本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。
【図8】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図9】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図10】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図11】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図12】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部を覆うようにして蓋を取り付けてボルトで固定した正面図(a)と、開口部に嵌合させた蓋をボルトで固定した正面図(b)である。
【図13】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部を覆うようにして蓋を取り付けてボルトで固定した金属管柱の管軸垂直方向のA−A断面図(a)と、開口部に嵌合させた蓋をボルトで固定した金属管柱の管軸垂直方向のA−A断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態として、道路照明等に用いられる金属管柱について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1(a)は、道路照明等に用いられる金属管柱1の側面方向の全体図であり、図1(b)は、背面方向の全体図である。図2及び図5は、金属管柱1の基部2付近の外周面8aに形成された開口部10の正面図である。図3及び図6は、金属管柱1の開口部10が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図である。図4及び図7は、金属管柱1の開口部10が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。ここで、図2乃至図4は補強部材9を溶接したものであり、図5乃至図7は側壁8を折り曲げて補強部材9としたものである。
【0019】
金属管柱1は、基部2において地盤3に建て込まれ、基部2から金属管本体の管体4が上方に延伸され、管体4の先端の頭頂部5に照明設備6が設けられることにより構成されている。
【0020】
管体4は、金属管柱1の内側に中空部7を形成する側壁8を有する。管体4は、側壁8によって外周面8aが形成されている。管体4は、基部2付近の外周面8aに、補強部材9が設けられた開口部10が形成されている。管体4の管軸垂直方向の断面形状は円形であるが、これに限らず、正方形、長方形、六角形、八角形等でもよい。管体4の材質は、特に制約はないが、鋼管、ステンレス鋼管、アルミニウム管等が望ましい。
【0021】
開口部10は、管軸方向に直線状に延伸された両側辺11と、両側辺11から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部12と、両側辺11から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部13を有する。
【0022】
両側辺11から連続する部分における上端部12の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されている。例えば、上端部12は、半楕円弧状に形成される。ここで、半楕円弧とは、半円弧が金属管柱1の管軸垂直方向に扁平されたものであり、金属管柱1の管軸方向に長軸を有する楕円を短軸で二等分した半楕円のうち、いずれか一方の半楕円の円周をいう。
【0023】
両側辺11から連続する部分における下端部13の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されている。例えば、下端部13は、半楕円弧状に形成される。下端部13の形状は、これに限らず、如何なるものであってもよい。例えば、図8は、本発明を適用した金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。下端部13は、図8に示すように、管軸方向下方に湾曲された半円弧状に形成されてもよい。また、下端部13は、両側辺11の下端において連続する直線状に形成されてもよい。
【0024】
両側辺11は、管軸垂直方向外側に湾曲され、上端部12と下端部13の曲率を、両側辺11の曲率以上の大きさとする構成としてもよい。例えば、図9及び図10は、本発明を適用した金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。開口部10は、楕円弧状に形成されることとなる。ここで、図9は補強部材9を溶接したものであり、図10は側壁8を折り曲げて補強部材9としたものである。
【0025】
補強部材9は、開口部10の両側辺11から中空部7に向けて内側のみに凸状に設けられている。補強部材9は、図6に示すように側壁8を折り曲げて加工したものを用いてもよく、図3に示すように金属板を溶接したもの、厚肉部材を溶接したもの、金属板や厚肉部材を圧接等により接合したものを用いてもよい。補強部材9は、側壁8そのものを部分的に厚く補強したものを用いてもよい。補強部材9は、扁平な平板状のものや、一部が湾曲したり切り欠かれている平板状のものを用いてもよい。補強部材9は、円形、楕円形、L形、H形、矩形、三角形、多角形、コ字形等のいかなる形状で、金属、木材、樹脂等のいかなる材質からなる部材を用いてもよい。補強部材9は、金属管柱1の内壁14と金属板等の補強部材9とで形成される間隙に、厚肉溶接や追加補強用の金属、木材、樹脂等の切片を用いてもよい。
【0026】
補強部材9は、両側辺11を同一平面に有する平坦面15に対して垂直に設けられている。これに限らず、平坦面15に対する補強部材9の角度θは、適宜変更することができる。平坦面15に対する補強部材9の角度θは、例えば、補強部材9が内壁14に近接するように内壁14側に傾斜するものであってもよいし、補強部材9が平坦面15側に傾斜するものであってもよい。
【0027】
補強部材9の上端は、両側辺11と上端部12との境界となる点である上端点16まで延伸しないように、両側辺11の一部からのみ設けられてもよい。補強部材9の下端は、両側辺11と下端部13との境界となる点である下端点17まで延伸しないように、両側辺11の一部からのみ設けられてもよい。これに限らず、補強部材9は、両側辺11の一部からのみならず、上端点16から下端点17に亘って、両側辺11の全部から設けられてもよい。補強部材9は、両側辺11の管軸方向中央を中心として途切れることなく連続して設けられている。これに限らず、補強部材9は、それぞれの側辺18から断続的に設けられてもよい。補強部材9は、両側辺11のうち、いずれか一方の側辺18のみから設けられてもよい。
【0028】
外周面8aは、開口部10の管軸方向上方に、側壁8の外側に向けて凸状に設けられた凸部19を備えてもよい。図11は、凸部19を備えた金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。凸部19は、管軸方向上方に湾曲されてもよく、管軸方向上方に向けて凸となる頂点を有する山状に形成されてもよい。凸部19は、円形断面、楕円形断面、L形断面、矩形断面、三角形断面、多角形断面、コ字形断面等の部材を溶接、圧接等により接合して用いることもできる。凸部19は、側壁8を外側に向けて凸状に隆起させて用いることもできる。
【0029】
図12は、開口部10に蓋20を取り付け、ボルト21によって固定した金属管柱1の正面図である。図12(a)は、開口部10を覆うようにして蓋20を取り付けてボルト21で固定したものであり、図12(b)は、開口部10に嵌合させた蓋20をボルト21で固定したものである。図13(a)は、開口部10を覆うようにして蓋20を取り付けた金属管柱1の管軸垂直方向のA−A断面図であり、図13(b)は、開口部10に蓋20を嵌合させた金属管柱1の管軸垂直方向のA−A断面図である。なお、図12(a)は、開口部10の上端部12及び開口部10の下端部13の付近において蓋20をボルト21で係止するものであるが、図13(a)に示すように、開口部10の両側辺11の付近で係止させてもよい。また、図12(b)に示すように、開口部10に蓋20を嵌合させる場合は、蓋20と開口部10とが接触する部分にパッキン等を介在させてもよい。蓋20の係止には、ボルト21を用いるほかにリベット等を用いることもできる。
【0030】
次に、本発明を適用した金属管柱1の作用について説明する。一般には、道路照明等に用いられる金属管柱1に、車両の通行等によって日常的に発生する交通振動等に起因する応力が繰り返し作用する。開口部10が設けられることで側壁8の一部には欠損が生じるため、交通振動等に起因して繰り返し作用する応力が開口部10に集中する。開口部10の上端部12を半円弧状とした場合は、上端点16における両側辺11と上端部12との曲率の差が大きいため、開口部10に繰り返し作用する応力は、曲率の差が大きい上端点16に集中する。開口部10の下端部13を半円弧状とした場合は、下端点17における両側辺11と下端部13との曲率の差が大きいため、開口部10に繰り返し作用する応力のうち、特に曲げ応力が、曲率の差が大きい下端点17に集中する。
【0031】
本発明では、図2及び図5に示すように、上端部12を、半楕円弧状等とすることによって、上端点16における両側辺11と上端部12との曲率の差を小さくすることができる。よって、曲率が変化する上端点16での応力集中を回避することができ、金属管柱1に繰り返し作用する応力を、開口部10において広い範囲で分散させることができる。
【0032】
本発明では、図2及び図5に示すように、下端部13を半楕円弧状等とすることによって、下端点17における両側辺11と下端部13との曲率の差を小さくすることができる。よって、曲率が変化する下端点17での応力集中を回避することができ、金属管柱1に繰り返し作用する応力のうち、特に曲げ応力を、開口部10において広い範囲で分散させることができる。
【0033】
また、開口部10の有効高さLを一定にした場合において、下端部13を半円弧状とするときは、下端部13を半楕円弧状等としたときと比較して、直線状等に形成された両側辺11の延長が長くなる。よって、開口部10において大きい開口面積を確保することができ、大きな電気機器等の設置、交換等が可能となる。開口部10の有効高さLを一定にした場合において、下端部13を両側辺11の下端において連続する直線状とするときは、下端部13を半円弧状としたときや下端部13を半楕円弧状等としたときと比較して、直線状等に形成された両側辺11の延長が長くなる。よって、開口部10において大きい開口面積を確保することができ、大きな電気機器等の設置、交換等が可能となる。
【0034】
補強部材9を開口部10の両側辺11から設けることで、管軸垂直方向の断面性能が向上し、管体4や頭頂部5の自重等によって金属管柱1に負荷される静的荷重に対抗するために必要となる剛性を確保することができる。補強部材9を設ける際に、側壁8を折り曲げて加工することで、補強部材9と側壁8が一体化するため、高い剛性を確保することができる。
【0035】
補強部材9を設ける際に、図6に示すように側壁8を折り曲げて加工することで、加工前の既存の側壁8を利用して、他の材料を必要とせずに、容易に設けることができる。補強部材9として、図3に示すように金属板を溶接したものや、金属管柱1の内壁14と金属板等の補強部材9とで形成される間隙に、溶接部材を充填させる厚肉溶接や追加補強用の金属、木材、樹脂等の切片を用いることで、補強部材9の取り付けの施工性の向上を図ることができる。
【0036】
開口部10の両側辺11から中空部7に向けて内側のみに凸状に補強部材9が設けられ、金属管柱1の外側に補強部材9が突出していないため、補強部材9が金属管柱1の付近を通行する車両や歩行者に接触するおそれがなくなる。
【0037】
両側辺11を同一平面に有する平坦面15に対して垂直に補強部材9を設けることで、補強部材9が内壁14に近接するように内壁14側に傾斜する場合と比較して、管軸垂直方向の高い断面性能を確保することができる。補強部材9が平坦面15側に傾斜する場合は、さらに高い管軸垂直方向の断面性能を確保することができるが、平坦面15側に傾斜した補強部材9が障害となって、開口部10の有効な開口面積が減少する。補強部材9が内壁14側に傾斜して内壁14に近接する場合は、補強部材9を平坦面15に対して垂直に設ける場合に比較して、金属管柱1の内壁14と補強部材9とで形成される間隙が減少するため、中空部7の有効体積を多く確保することができる。
【0038】
両側辺11の上端点16及び下端点17まで延伸しないように補強部材9を設けることで、曲率の差が生じることで応力が集中し易い上端点16又は下端点17から、補強部材9に応力が伝達することを回避することができる。両側辺11の管軸方向中央を中心として途切れることなく連続して補強部材9を設けることで、補強部材9を断続的に設ける場合と比較して、補強部材9による静的荷重に対抗するための高い剛性を確保することができる。金属管柱1に対して負荷される静的荷重の管軸方向より偏芯する場合にも、それぞれの側辺18から設けられる補強部材9の延長、奥行き及び位置を適宜変更して調整することができる。また、補強部材9に電気機器等を取り付けることができるように、補強部材9の延長、奥行き及び位置を設定することができる。上端点16から下端点17に亘って、両側辺11の全部から補強部材9を設けた場合は、両側辺11の一部から補強部材9を設けた場合と比較して、静的荷重に対抗するための剛性を向上させることができる。
【0039】
一般に、湾曲した部分を折り曲げたり溶接等する場合は、直線状の部分を折り曲げたり溶接等する場合と比較して高度な技術を要する。本発明では、両側辺11の直線部からのみ補強部材9を設け、上端部12及び下端部13の湾曲した部分には補強部材9を設けなくともよい構成としているため、湾曲した部分の加工が必ずしも必要とはならない。直線状の部分においてのみ補強部材9が加工される場合は、加工が容易となるとともに、加工に要する費用は低額となる。両側辺11においてのみ補強部材9を設けるため、上端部12及び下端部13においても補強部材9を設けられる場合と比較して、補強部材9として用いられる鉄鋼材料等の使用量を少なくすることができ、経済性を向上させることができる。
【0040】
本発明では、図9及び図10に示すように、補強部材9が湾曲した両側辺11から設けられた場合であっても、両側辺11の曲率が上端部12及び下端部13の曲率より小さい。よって、補強部材9が両側辺11からのみ設ける場合は、曲率の大きい上端部12及び下端部13からのみ設ける場合と比較して、加工が容易となるとともに、加工に要する費用は低額となる。
【0041】
金属管柱1の開口部10には、通常時は蓋20が取り付けられ、金属管柱1の内側が保護されている。金属管柱1の中空部7において電気機器等を設置、点検、交換等する際に蓋20が取り外され、開口部10において金属管柱1の中空部7が露出される。雨天時に蓋20が取り外される場合には、金属管柱1の外表面を流れる雨滴が、開口部10を通して金属管柱1の中空部7に入るおそれがある。本発明では、図11に示すように、外周面8aにおける開口部10の管軸方向上方において、側壁8の外側に向けた凸部19を設けることができる。これにより、雨滴の流下方向を開口部10から逸らせることができ、開口部10を通して金属管柱1の中空部7に雨滴が入ることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 金属管柱
2 基部
3 地盤
4 管体
5 頭頂部
6 照明設備
7 中空部
8 側壁
8a 外周面
9 補強部材
10 開口部
11 開口部の両側辺
12 開口部の上端部
13 開口部の下端部
14 内壁
15 開口部の平坦面
16 上端点
17 下端点
18 開口部の側辺
19 凸部
20 蓋
21 ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路照明、交通信号機、電光式道路標識等の設置に用いられる金属管柱に関し、特に金属管本体の外周面に開口部を備える金属管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路照明等に用いられる金属管柱には、内部に配電盤や制御盤等の電気機器等を取り付ける必要があるため、その金属管柱の基部付近の側壁には開口部が形成され、その開口部を塞ぐための蓋が取り付けられているのが通常である。
【0003】
道路照明等に用いられる金属管柱の側壁に開口部が設けられると、開口部が設けられた箇所において、金属管柱の管軸垂直方向の断面に欠損が生じるため、その箇所における金属管柱の管軸垂直方向の断面性能が低下する。そして、照明設備や金属管柱の自重等による曲げ荷重等によって大きな静的荷重が金属管柱に負荷されるが、この断面性能の低下によって、この静的荷重に対する金属管柱の剛性が低下することとなる。
【0004】
他方で、道路照明等に用いられる金属管柱の内部に設置される電気機器等は、開口部を介して設置、点検、交換等なされるため、電気機器等の形状及び寸法に応じて、電気機器等の操作や出し入れに必要となる最低限の開口寸法を確保しなければならない。
【0005】
そこで、道路照明等に用いられる金属管柱の側壁の開口部において、最低限の開口寸法を確保するとともに、金属管柱の静的荷重に対する剛性を確保することを目的として、特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成が、従来から提案されている。この特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成は、道路照明等に用いられる金属管柱の側壁の開口部の全周に亘って金属管柱の外面側に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等を設けるものである。そして、この特許文献1及び特許文献2に開示される補強部材の構成によると、最低限の開口寸法を確保しながら、開口部が設けられた箇所における金属管柱の管軸垂直方向の断面性能の低下を抑制することができ、金属管柱の静的荷重に対する剛性を確保することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、金属管柱の外面側に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等を設けると、これらの補強部材が金属管柱の外側に突出するため、金属管柱の付近を通行する車両や歩行者に接触するおそれがあり、交通に支障が生じるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、その開口部の湾曲した部分に補強用枠体や長円形の鉄鋼部材等の補強部材を設けるためには、金属管本体の外周面を湾曲させて折り曲げる加工や、その湾曲した部分に湾曲した補強部材を溶接する工程が必要となる。そして、その湾曲した部分を折り曲げる加工や溶接には高度な技術を要することから、開口部の湾曲した部分に補強部材を設ける加工は、直線部に補強部材を設ける加工と比較して難度が高く、加工に要する費用も高額になるという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1及び特許文献2に開示される金属管柱のように、その開口部の全周に亘って補強部材が設けられることで、直線部のみに補強部材が設けられる場合と比較して、補強部材として用いられる鉄鋼材料等の使用量も多くなり、経済性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−38311号公報
【特許文献2】特開2004−92254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、開口部に繰り返し作用する応力を分散させ、最低限の開口寸法を確保するとともに、静的荷重に対する剛性を確保し、さらに、補強部材が交通の支障とならないように、容易かつ経済的に補強部材が設けられた開口部を有する金属管柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願請求項1に記載の金属管柱は、金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部とを有する開口部と、上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、上記両側辺から連続する部分における上記上端部の曲率は、上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいことを特徴とする。
【0012】
本願請求項2に記載の金属管柱は、請求項1に記載の金属管柱において、上記開口部は、その両側辺から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部を有することを特徴とする。
【0013】
本願請求項3に記載の金属管柱は、金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、管軸垂直方向外側に湾曲された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部及び管軸方向下方に湾曲された下端部を有する開口部と、上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、上記両側辺から連続する部分における上記上端部及び上記下端部の曲率は、その連続する部分における上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく、上記上端部及び上記下端部の曲率は、上記両側辺の曲率以上の大きさであることを特徴とする。
【0014】
本願請求項4に記載の金属管柱は、請求項1〜3のうち何れか1項に記載の金属管柱において、金属管本体の外周面における上記開口部の管軸方向上方に、上記外周面の外側に向けて凸状に設けられた凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属管柱は、その側壁に形成された開口部において、管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部の両側辺から連続する部分における曲率が、両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されることにより、開口部に繰り返し作用する応力を分散させることが可能となる。また、開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材を備えることにより、最低限の開口寸法を確保するとともに、静的荷重に対する剛性を確保し、さらに、補強部材が交通の支障とならないように、容易かつ経済的に補強部材を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した道路照明等に用いられる金属管柱の側面方向の全体図(a)と、背面方向の全体図(b)である。
【図2】本発明を適用した金属管柱の基部付近の外周面に形成された開口部の正面図である。
【図3】本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図(a)と、一つの実施例のA−A断面図(b)である。
【図4】本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。
【図5】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図6】図5に示す本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図である。
【図7】図5に示す本発明を適用した金属管柱の開口部が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。
【図8】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図9】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図10】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図11】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部について、一つの実施例の正面図である。
【図12】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部を覆うようにして蓋を取り付けてボルトで固定した正面図(a)と、開口部に嵌合させた蓋をボルトで固定した正面図(b)である。
【図13】本発明を適用した金属管柱の基部付近の側壁に形成された開口部を覆うようにして蓋を取り付けてボルトで固定した金属管柱の管軸垂直方向のA−A断面図(a)と、開口部に嵌合させた蓋をボルトで固定した金属管柱の管軸垂直方向のA−A断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態として、道路照明等に用いられる金属管柱について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1(a)は、道路照明等に用いられる金属管柱1の側面方向の全体図であり、図1(b)は、背面方向の全体図である。図2及び図5は、金属管柱1の基部2付近の外周面8aに形成された開口部10の正面図である。図3及び図6は、金属管柱1の開口部10が形成されている箇所における管軸垂直方向のA−A断面図である。図4及び図7は、金属管柱1の開口部10が形成されている箇所における管軸方向のB−B断面図である。ここで、図2乃至図4は補強部材9を溶接したものであり、図5乃至図7は側壁8を折り曲げて補強部材9としたものである。
【0019】
金属管柱1は、基部2において地盤3に建て込まれ、基部2から金属管本体の管体4が上方に延伸され、管体4の先端の頭頂部5に照明設備6が設けられることにより構成されている。
【0020】
管体4は、金属管柱1の内側に中空部7を形成する側壁8を有する。管体4は、側壁8によって外周面8aが形成されている。管体4は、基部2付近の外周面8aに、補強部材9が設けられた開口部10が形成されている。管体4の管軸垂直方向の断面形状は円形であるが、これに限らず、正方形、長方形、六角形、八角形等でもよい。管体4の材質は、特に制約はないが、鋼管、ステンレス鋼管、アルミニウム管等が望ましい。
【0021】
開口部10は、管軸方向に直線状に延伸された両側辺11と、両側辺11から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部12と、両側辺11から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部13を有する。
【0022】
両側辺11から連続する部分における上端部12の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されている。例えば、上端部12は、半楕円弧状に形成される。ここで、半楕円弧とは、半円弧が金属管柱1の管軸垂直方向に扁平されたものであり、金属管柱1の管軸方向に長軸を有する楕円を短軸で二等分した半楕円のうち、いずれか一方の半楕円の円周をいう。
【0023】
両側辺11から連続する部分における下端部13の曲率は、両側辺11の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく形成されている。例えば、下端部13は、半楕円弧状に形成される。下端部13の形状は、これに限らず、如何なるものであってもよい。例えば、図8は、本発明を適用した金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。下端部13は、図8に示すように、管軸方向下方に湾曲された半円弧状に形成されてもよい。また、下端部13は、両側辺11の下端において連続する直線状に形成されてもよい。
【0024】
両側辺11は、管軸垂直方向外側に湾曲され、上端部12と下端部13の曲率を、両側辺11の曲率以上の大きさとする構成としてもよい。例えば、図9及び図10は、本発明を適用した金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。開口部10は、楕円弧状に形成されることとなる。ここで、図9は補強部材9を溶接したものであり、図10は側壁8を折り曲げて補強部材9としたものである。
【0025】
補強部材9は、開口部10の両側辺11から中空部7に向けて内側のみに凸状に設けられている。補強部材9は、図6に示すように側壁8を折り曲げて加工したものを用いてもよく、図3に示すように金属板を溶接したもの、厚肉部材を溶接したもの、金属板や厚肉部材を圧接等により接合したものを用いてもよい。補強部材9は、側壁8そのものを部分的に厚く補強したものを用いてもよい。補強部材9は、扁平な平板状のものや、一部が湾曲したり切り欠かれている平板状のものを用いてもよい。補強部材9は、円形、楕円形、L形、H形、矩形、三角形、多角形、コ字形等のいかなる形状で、金属、木材、樹脂等のいかなる材質からなる部材を用いてもよい。補強部材9は、金属管柱1の内壁14と金属板等の補強部材9とで形成される間隙に、厚肉溶接や追加補強用の金属、木材、樹脂等の切片を用いてもよい。
【0026】
補強部材9は、両側辺11を同一平面に有する平坦面15に対して垂直に設けられている。これに限らず、平坦面15に対する補強部材9の角度θは、適宜変更することができる。平坦面15に対する補強部材9の角度θは、例えば、補強部材9が内壁14に近接するように内壁14側に傾斜するものであってもよいし、補強部材9が平坦面15側に傾斜するものであってもよい。
【0027】
補強部材9の上端は、両側辺11と上端部12との境界となる点である上端点16まで延伸しないように、両側辺11の一部からのみ設けられてもよい。補強部材9の下端は、両側辺11と下端部13との境界となる点である下端点17まで延伸しないように、両側辺11の一部からのみ設けられてもよい。これに限らず、補強部材9は、両側辺11の一部からのみならず、上端点16から下端点17に亘って、両側辺11の全部から設けられてもよい。補強部材9は、両側辺11の管軸方向中央を中心として途切れることなく連続して設けられている。これに限らず、補強部材9は、それぞれの側辺18から断続的に設けられてもよい。補強部材9は、両側辺11のうち、いずれか一方の側辺18のみから設けられてもよい。
【0028】
外周面8aは、開口部10の管軸方向上方に、側壁8の外側に向けて凸状に設けられた凸部19を備えてもよい。図11は、凸部19を備えた金属管柱1の基部2付近の側壁8に形成された開口部10について、一つの実施例の正面図である。凸部19は、管軸方向上方に湾曲されてもよく、管軸方向上方に向けて凸となる頂点を有する山状に形成されてもよい。凸部19は、円形断面、楕円形断面、L形断面、矩形断面、三角形断面、多角形断面、コ字形断面等の部材を溶接、圧接等により接合して用いることもできる。凸部19は、側壁8を外側に向けて凸状に隆起させて用いることもできる。
【0029】
図12は、開口部10に蓋20を取り付け、ボルト21によって固定した金属管柱1の正面図である。図12(a)は、開口部10を覆うようにして蓋20を取り付けてボルト21で固定したものであり、図12(b)は、開口部10に嵌合させた蓋20をボルト21で固定したものである。図13(a)は、開口部10を覆うようにして蓋20を取り付けた金属管柱1の管軸垂直方向のA−A断面図であり、図13(b)は、開口部10に蓋20を嵌合させた金属管柱1の管軸垂直方向のA−A断面図である。なお、図12(a)は、開口部10の上端部12及び開口部10の下端部13の付近において蓋20をボルト21で係止するものであるが、図13(a)に示すように、開口部10の両側辺11の付近で係止させてもよい。また、図12(b)に示すように、開口部10に蓋20を嵌合させる場合は、蓋20と開口部10とが接触する部分にパッキン等を介在させてもよい。蓋20の係止には、ボルト21を用いるほかにリベット等を用いることもできる。
【0030】
次に、本発明を適用した金属管柱1の作用について説明する。一般には、道路照明等に用いられる金属管柱1に、車両の通行等によって日常的に発生する交通振動等に起因する応力が繰り返し作用する。開口部10が設けられることで側壁8の一部には欠損が生じるため、交通振動等に起因して繰り返し作用する応力が開口部10に集中する。開口部10の上端部12を半円弧状とした場合は、上端点16における両側辺11と上端部12との曲率の差が大きいため、開口部10に繰り返し作用する応力は、曲率の差が大きい上端点16に集中する。開口部10の下端部13を半円弧状とした場合は、下端点17における両側辺11と下端部13との曲率の差が大きいため、開口部10に繰り返し作用する応力のうち、特に曲げ応力が、曲率の差が大きい下端点17に集中する。
【0031】
本発明では、図2及び図5に示すように、上端部12を、半楕円弧状等とすることによって、上端点16における両側辺11と上端部12との曲率の差を小さくすることができる。よって、曲率が変化する上端点16での応力集中を回避することができ、金属管柱1に繰り返し作用する応力を、開口部10において広い範囲で分散させることができる。
【0032】
本発明では、図2及び図5に示すように、下端部13を半楕円弧状等とすることによって、下端点17における両側辺11と下端部13との曲率の差を小さくすることができる。よって、曲率が変化する下端点17での応力集中を回避することができ、金属管柱1に繰り返し作用する応力のうち、特に曲げ応力を、開口部10において広い範囲で分散させることができる。
【0033】
また、開口部10の有効高さLを一定にした場合において、下端部13を半円弧状とするときは、下端部13を半楕円弧状等としたときと比較して、直線状等に形成された両側辺11の延長が長くなる。よって、開口部10において大きい開口面積を確保することができ、大きな電気機器等の設置、交換等が可能となる。開口部10の有効高さLを一定にした場合において、下端部13を両側辺11の下端において連続する直線状とするときは、下端部13を半円弧状としたときや下端部13を半楕円弧状等としたときと比較して、直線状等に形成された両側辺11の延長が長くなる。よって、開口部10において大きい開口面積を確保することができ、大きな電気機器等の設置、交換等が可能となる。
【0034】
補強部材9を開口部10の両側辺11から設けることで、管軸垂直方向の断面性能が向上し、管体4や頭頂部5の自重等によって金属管柱1に負荷される静的荷重に対抗するために必要となる剛性を確保することができる。補強部材9を設ける際に、側壁8を折り曲げて加工することで、補強部材9と側壁8が一体化するため、高い剛性を確保することができる。
【0035】
補強部材9を設ける際に、図6に示すように側壁8を折り曲げて加工することで、加工前の既存の側壁8を利用して、他の材料を必要とせずに、容易に設けることができる。補強部材9として、図3に示すように金属板を溶接したものや、金属管柱1の内壁14と金属板等の補強部材9とで形成される間隙に、溶接部材を充填させる厚肉溶接や追加補強用の金属、木材、樹脂等の切片を用いることで、補強部材9の取り付けの施工性の向上を図ることができる。
【0036】
開口部10の両側辺11から中空部7に向けて内側のみに凸状に補強部材9が設けられ、金属管柱1の外側に補強部材9が突出していないため、補強部材9が金属管柱1の付近を通行する車両や歩行者に接触するおそれがなくなる。
【0037】
両側辺11を同一平面に有する平坦面15に対して垂直に補強部材9を設けることで、補強部材9が内壁14に近接するように内壁14側に傾斜する場合と比較して、管軸垂直方向の高い断面性能を確保することができる。補強部材9が平坦面15側に傾斜する場合は、さらに高い管軸垂直方向の断面性能を確保することができるが、平坦面15側に傾斜した補強部材9が障害となって、開口部10の有効な開口面積が減少する。補強部材9が内壁14側に傾斜して内壁14に近接する場合は、補強部材9を平坦面15に対して垂直に設ける場合に比較して、金属管柱1の内壁14と補強部材9とで形成される間隙が減少するため、中空部7の有効体積を多く確保することができる。
【0038】
両側辺11の上端点16及び下端点17まで延伸しないように補強部材9を設けることで、曲率の差が生じることで応力が集中し易い上端点16又は下端点17から、補強部材9に応力が伝達することを回避することができる。両側辺11の管軸方向中央を中心として途切れることなく連続して補強部材9を設けることで、補強部材9を断続的に設ける場合と比較して、補強部材9による静的荷重に対抗するための高い剛性を確保することができる。金属管柱1に対して負荷される静的荷重の管軸方向より偏芯する場合にも、それぞれの側辺18から設けられる補強部材9の延長、奥行き及び位置を適宜変更して調整することができる。また、補強部材9に電気機器等を取り付けることができるように、補強部材9の延長、奥行き及び位置を設定することができる。上端点16から下端点17に亘って、両側辺11の全部から補強部材9を設けた場合は、両側辺11の一部から補強部材9を設けた場合と比較して、静的荷重に対抗するための剛性を向上させることができる。
【0039】
一般に、湾曲した部分を折り曲げたり溶接等する場合は、直線状の部分を折り曲げたり溶接等する場合と比較して高度な技術を要する。本発明では、両側辺11の直線部からのみ補強部材9を設け、上端部12及び下端部13の湾曲した部分には補強部材9を設けなくともよい構成としているため、湾曲した部分の加工が必ずしも必要とはならない。直線状の部分においてのみ補強部材9が加工される場合は、加工が容易となるとともに、加工に要する費用は低額となる。両側辺11においてのみ補強部材9を設けるため、上端部12及び下端部13においても補強部材9を設けられる場合と比較して、補強部材9として用いられる鉄鋼材料等の使用量を少なくすることができ、経済性を向上させることができる。
【0040】
本発明では、図9及び図10に示すように、補強部材9が湾曲した両側辺11から設けられた場合であっても、両側辺11の曲率が上端部12及び下端部13の曲率より小さい。よって、補強部材9が両側辺11からのみ設ける場合は、曲率の大きい上端部12及び下端部13からのみ設ける場合と比較して、加工が容易となるとともに、加工に要する費用は低額となる。
【0041】
金属管柱1の開口部10には、通常時は蓋20が取り付けられ、金属管柱1の内側が保護されている。金属管柱1の中空部7において電気機器等を設置、点検、交換等する際に蓋20が取り外され、開口部10において金属管柱1の中空部7が露出される。雨天時に蓋20が取り外される場合には、金属管柱1の外表面を流れる雨滴が、開口部10を通して金属管柱1の中空部7に入るおそれがある。本発明では、図11に示すように、外周面8aにおける開口部10の管軸方向上方において、側壁8の外側に向けた凸部19を設けることができる。これにより、雨滴の流下方向を開口部10から逸らせることができ、開口部10を通して金属管柱1の中空部7に雨滴が入ることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 金属管柱
2 基部
3 地盤
4 管体
5 頭頂部
6 照明設備
7 中空部
8 側壁
8a 外周面
9 補強部材
10 開口部
11 開口部の両側辺
12 開口部の上端部
13 開口部の下端部
14 内壁
15 開口部の平坦面
16 上端点
17 下端点
18 開口部の側辺
19 凸部
20 蓋
21 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、
管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部とを有する開口部と、
上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、
上記両側辺から連続する部分における上記上端部の曲率は、上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいこと
を特徴とする金属管柱。
【請求項2】
上記開口部は、その両側辺から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の金属管柱。
【請求項3】
金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、
管軸垂直方向外側に湾曲された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部及び管軸方向下方に湾曲された下端部を有する開口部と、
上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、
上記両側辺から連続する部分における上記上端部及び上記下端部の曲率は、その連続する部分における上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく、上記上端部及び上記下端部の曲率は、上記両側辺の曲率以上の大きさであること
を特徴とする金属管柱。
【請求項4】
金属管本体の外周面における上記開口部の管軸方向上方に、上記外周面の外側に向けて凸状に設けられた凸部を備えること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の金属管柱。
【請求項1】
金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、
管軸方向に向けて略直線状に延伸された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部とを有する開口部と、
上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、
上記両側辺から連続する部分における上記上端部の曲率は、上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さいこと
を特徴とする金属管柱。
【請求項2】
上記開口部は、その両側辺から連続するように管軸方向下方に湾曲された下端部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の金属管柱。
【請求項3】
金属管本体と、その外周面に形成された開口部とを備える金属管柱において、
管軸垂直方向外側に湾曲された両側辺と、その両側辺から連続するように管軸方向上方に湾曲された上端部及び管軸方向下方に湾曲された下端部を有する開口部と、
上記開口部の両側辺の一部又は全部から、金属管本体の内部に向けて内側のみに凸状に設けられた補強部材とを備え、
上記両側辺から連続する部分における上記上端部及び上記下端部の曲率は、その連続する部分における上記両側辺の間隔と等しい直径の円弧の曲率より小さく、上記上端部及び上記下端部の曲率は、上記両側辺の曲率以上の大きさであること
を特徴とする金属管柱。
【請求項4】
金属管本体の外周面における上記開口部の管軸方向上方に、上記外周面の外側に向けて凸状に設けられた凸部を備えること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の金属管柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−53487(P2013−53487A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193545(P2011−193545)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
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