説明

釣り用リールのハンドル組立体

【課題】 釣り用リールのハンドル組立体において、把手軸とハンドルアームとのがたつきを防止する。
【解決手段】 ハンドル組立体4は、ハンドル軸の先端に基端が装着されハンドル軸と交差する方向に延びるハンドルアーム71と、ハンドルアーム71の先端に固定される把手軸72と、把手軸72に回転自在に装着されるハンドル把手73とを有している。ハンドルアーム71はアーム本体71aの先端に貫通して形成された雌ねじ部71bを有し、把手軸72は軸本体72aの先端に雌ねじ部71bに螺合可能に形成された雄ねじ部72bを有しており、ハンドルアーム71の雌ねじ部71bに把手軸72の雄ねじ部72bを螺合させた後にハンドルアーム71の先端に把手軸72をかしめ固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル組立体、特に、釣り用リールのハンドル軸の先端に装着されるハンドル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣り用リールには、スピニングリールや、両軸受リール等がある。スピニングリールは、ハンドル組立体と、ハンドル組立体を回転自在に支持するリール本体と、リール本体の前部に回転自在に支持されたロータと、リール本体に対して前後移動自在に配置されロータの回転によって外周面に釣り糸が巻き取られるスプールとを備えている。また、両軸受リールは、リール本体と、リール本体に回転自在に装着されたスプールと、スプールを回転させるためのハンドル組立体とを備えている。
【0003】
この種のハンドル組立体は、リール本体に回転可能に配置されたハンドル軸に装着されている。ハンドル組立体は、ハンドル軸からハンドル軸と交差する方向に延びるハンドルアームと、ハンドルアームの先端にかしめ固定された把手軸と、把手軸に回転自在に装着されたハンドル把手とを有している(たとえば、特許文献1参照)。
このようなハンドル組立体では、釣人はハンドル把手を把持して回転させることにより、ハンドルアームを回転させて、ハンドルアームが連結固定されたハンドル軸を介して、ロータやスプールを回転させている。
【特許文献1】特開2000−316433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のハンドル組立体では、把手軸はハンドルアームの先端にかしめ固定されているので、把手軸をハンドルアームに対して回転不能に固定できる。しかし、ハンドル把手を把持して前後方向に力を入れて回転させるとき、把手軸の左右方向に大きな力が作用することがある。このように、把手軸の左右方向に大きな力が作用すると、ハンドルアームの先端部に形成されたかしめ孔の隙間が広がり、把手軸とハンドルアームとの間にがたつきが生じるおそれがある。このように、把手軸とハンドルアームとの間にがたつきが生じると、ハンドルの回転操作に不具合を起こすおそれが生じる。
【0005】
本発明の課題は、釣り用リールのハンドル組立体において、把手軸とハンドルアームとのがたつきを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る釣り用リールのハンドル組立体は、釣り用リールのハンドル軸の先端に装着されるハンドル組立体であって、ハンドル軸の先端に基端が装着されハンドル軸と交差する方向に延びるアーム本体とアーム本体の先端に貫通して形成された雌ねじ部とを有するハンドルアームと、ハンドルアームの先端からハンドル軸に沿う方向に延びる軸本体と軸本体の先端に形成され雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部とを有し雌ねじ部に雄ねじ部を螺合させた後にハンドルアームの先端にかしめ固定される把手軸と、把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手とを備えている。
【0007】
このハンドル組立体では、ハンドルアームは、アーム本体の先端に貫通して形成された雌ねじ部を有し、把手軸は、軸本体の先端に雌ねじ部に螺合可能に形成された雄ねじ部を有している。ここでは、ハンドルアームの雌ねじ部に把手軸の雄ねじ部を螺合させた後に、ハンドルアームの先端に把手軸をかしめ固定することにより、ハンドル把手を把持して前後方向に力を入れて回転させても、把手軸とハンドルアームとの間にがたつきを生じにくくすることができる。
【0008】
発明2に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明1の釣り用リールのハンドル組立体において、把手軸は、雄ねじ部の先端部側からハンドルアームの先端にかしめ固定される。この場合、把手軸のハンドルアームに対するかしめ固定が容易かつ確実になる。
発明3に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明1又は2の釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドルアームは、黄銅製であり、把手軸は、ステンレス合金製である。この場合、ハンドルアームは、黄銅、いわゆる真鍮により形成されているので、ハンドルアームの加工が容易になる。また、把手軸は、ステンレス合金により形成されているので、強度を高く維持することができる。
【0009】
発明4に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明1から3のいずれかの釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドル把手は、把手軸の外周に回転自在に装着される筒状部と、筒状部に回転不能に設けられた把手部とを有している。この場合、回転部分である筒状部と把持部分である把手部とを別々に構成することにより、把手部を任意の形状に形成できるので、把手部の把持性を向上できる。
【0010】
発明5に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明4の釣り用リールのハンドル組立体において、把手部は、筒状部と一体成形されている。この場合、筒状部と把手部とを一体成形することにより、ハンドル把手を安価に形成できる。
発明6に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明4の釣り用リールのハンドル組立体において、把手部は、筒状部と別体で形成されている。この場合、筒状部と把手部とを異なる材質で形成することができる。
【0011】
発明7に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明6の釣り用リールのハンドル組立体において、筒状部は、金属製であり、把手部は、合成樹脂製である。この場合、たとえば筒状部を高強度な金属により形成し、把手部を把持性のよい合成樹脂により形成することができる。
発明8に係る釣り用リールのハンドル組立体は、発明4から7のいずれかの釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドル把手は、把手軸と筒状部との間に配置される軸受をさらに有している。この場合、ハンドル把手の把手軸に対する回転性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドルアームの雌ねじ部に把手軸の雄ねじ部を螺合させた後に、ハンドルアームの先端に把手軸をかしめ固定することにより、把手軸とハンドルアームとの間にがたつきを生じにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を採用した釣り用リールは、図1及び図2に示すように、トローリングに用いられる大型の両軸受リールである。釣り用リールは、筒状のリール本体1と、リール本体1の中心部に回転自在に装着されたスプール軸2と、スプール軸2に回転自在かつ軸方向移動不能に支持されたスプール3と、リール本体1の側方に配置されたハンドル組立体4とを備えている。また、釣り用リールは、ハンドル組立体4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構6と、スプール3の糸繰り出し方向の回転を制動するレバードラグ機構7と、スプール3の糸繰り出し方向の回転を規制する逆転防止機構9とをリール本体1の内部に備えている。
【0014】
リール本体1は、金属製の左右1対の皿状の第1側板10及び第2側板11と、第1側板10及び第2側板11が両端に印籠結合により同芯に結合され、複数本の固定ねじ8により固定された金属製の孔あき筒状のリールボディ12とを有している。第1側板10及び第2側板11は、その略中心部で回動自在にスプール軸2の両端を支持する。ハンドル組立体4側の第2側板11には、スプール軸2を支持するために軸方向外方に突出するボス部11aが設けられており、ボス部11aの周囲には、ハンドル組立体4のハンドル軸5を装着するための厚肉円板状の軸受ブロック15がねじ止めされている。
【0015】
リールボディ12と第1側板10及び第2側板11との間の上部にはリールハーネスに装着するためのハーネスラグ13が間隔を隔てて装着されている。リールボディ12の下部にはリールを釣竿に装着するための竿取付部14が設けられている。
スプール軸2は、両端に配置された左右1対の軸受31a、31bによりリール本体1の第1側板10及び第2側板11に回転自在に支持されている。またその内側で軸方向に間隔を隔ててスプール3の両端に配置された2つの軸受32a、32bによりスプール3を回転自在に支持する。スプール軸2の右端の軸受31bの外輪の右側にはレバードラグ機構7の後述する移動機構の構成部品が当接している。また内輪の左側には回転伝達機構6の後述する第3ギアが当接している。スプール軸2の左端の軸受31aの内輪の右側には逆転防止機構9が当接している。また外輪の右端には、第1側板10が当接している。スプール3を支持する右側の軸受32bの外輪の左側には熱感応油圧ドラグ機構33を介してスプールが当接している。また内輪の右側には図示しないワッシャを介して皿ばね34が当接している。この皿ばね34は、後述する制動操作レバーの揺動に対してドラグ力を急激に上昇させることなく広範囲でドラグ力を調整可能にするために設けられている。スプール3を支持する左側の軸受32aの内輪の左側にはレバードラグ機構7の後述する第2ディスク板が当接している。外輪の右側はスプール3に当接している。
【0016】
スプール3は、糸巻胴部3aと糸巻胴部3aの両端に一体形成されたフランジ部3bとを有している。右側のフランジ部3bの端面には、ドラグ作動時に音出しするための周方向に多数の音出し孔35aを有する音出しリング35が設けられている。この音出しリング35の音出し孔35aには第2側板11に取り付けられた音出しピン36が対向している。この音出しピン36は突出側に付勢されている。また、この音出しピン36は、レバー37(図3参照)により進出位置と退入位置とに移動自在であり、仕掛けの投入時を除いて通常は、レバー37により進出位置に配置される。このため、通常はスプール3が回転するとクリック音を発する。
【0017】
ハンドル組立体4は、図2に示すように、スプール軸2の下方にスプール軸2と平行に配置された筒状のハンドル軸5の突出端に固定されている。ハンドル軸5は、ボス部11aの下方に軸方向に間隔を隔てて配置された2つの軸受33a、33bによりリール本体1に回転自在に支持されている。軸受33a、33bは、ボス部11aの下方で軸受ブロック15にはめ込まれた筒状部材15aの内周面の両端に装着されている。ハンドル軸5の先端には、図4に示すように、径方向に貫通するスリット5aが形成されており、先端内面には雌ねじ5dが形成されている。
【0018】
ハンドル組立体4は、図7に拡大して示すように、ハンドル軸5(図2参照)の先端に基端が装着されハンドル軸5と交差する方向に延びるハンドルアーム71と、ハンドルアーム71の先端に固定される把手軸72と、把手軸72に回転自在に装着されるハンドル把手73とを有している。
ハンドルアーム71は、図7に示すように、ハンドル軸5(図2参照)と交差する方向に延びる板状のアーム本体71aと、アーム本体71aの先端にハンドル軸5(図2参照)に沿う方向に貫通して形成された雌ねじ部71bとを有している。アーム本体71aは、黄銅、いわゆる真鍮により形成されている。雌ねじ部71bのリール本体1側の開口部は、他の部分よりやや大径になるように座繰り部が形成されている。
【0019】
把手軸72は、図7に示すように、ハンドルアーム71の先端からハンドル軸5(図2参照)に沿う方向に延びるステンレス合金製の軸本体72aと、軸本体72aの先端に軸本体72aより小径となるように一体成形され雌ねじ部71bに螺合可能な雄ねじ部72bとを有している。把手軸72は、雌ねじ部71bに雄ねじ部72bを螺合させた後に、雄ねじ部72bの先端部側からハンドルアーム71の先端にかしめ固定されている。このため、雄ねじ部72bの先端部には、かしめ工具によるかしめ孔72cが形成される。ここでは、雄ねじ部72bの先端部が潰されて雌ねじ部71b開口の座繰り部から外方に広がることにより、把手軸72がハンドルアーム71の先端にかしめ固定される。
【0020】
ハンドル把手73は、図7に示すように、把手軸72の外周に回転自在に装着された筒状部74と、筒状部74に回転不能に装着された把手部75とを有している。筒状部74はアルミニウム合金やステンレス合金等の金属製である。把手部75は、筒状部74と別体で形成された長円形の部材であり、合成樹脂製である。筒状部74の先端部外周には、雄ねじ部74aが形成されており、把手部75の内周部に形成された雌ねじ部75aを雄ねじ部74aに螺合させることにより、把手部75を筒状部74に回転不能に固定している。筒状部74の先端部は、把手軸72の基端側の大径部分に接触するように配置されており、これにより筒状部74が把手軸72に抜け止めされている。また、筒状部74の基端部外周には、たとえば外形が6角形となるような非円形部74bが形成されており、組み立て時に6角レンチ等の工具により非円形部74bを挟持して筒状部74を支持するためのものである。把手部75の雌ねじ部75aと逆側の開口部75bは、銘板等の蓋部材76により閉塞されている。
【0021】
回転伝達機構6は、高低二速に切換可能な変速機構を備えている。回転伝達機構6は、図2及び図4に示すように、ハンドル組立体4のハンドル軸5に回転自在に支持された高速巻き取り用の第1ギア16及び低速巻き取り用の第2ギア17と、第1ギア16及び第2ギア17にそれぞれ噛み合う状態でスプール軸2に回転不能に装着された第3ギア18及び第4ギア19と、第1ギア16及び第2ギア17のいずれか一方とハンドル軸5とを結合し、回転を伝達する係合片20と、係合片20の両側で係合片20を位置決めする2つの圧縮ばね21a、21bと、係合片20の位置を設定する操作軸22とを有している。
【0022】
係合片20は、ハンドル軸5のスリット5a内に回転不能に配置されている。係合片20の中心部には突起部20aが設けられている。突起部20aは、圧縮ばね21aを受けるフランジ状のばね受け24の内周側に配置される。ばね受け24は、ハンドル軸5の先端にねじ止めされている。
操作軸22は、ハンドル軸5内部にハンドル軸5を貫通して外部に突出している。操作軸22は、ハンドル軸5の突出端にねじ込まれたガイド部5b及びハンドル軸5の中間部内周面に形成されたガイド部5cにより軸方向に移動自在に支持されている。操作軸22の外部への突出端には溝22aが形成されている。この溝22aに係合する、スライド型のストッパ23がハンドル組立体4に設けられている。また、操作軸22の逆側の端部には圧縮ばね21bを受けるばね受け部材22bが装着されている。
【0023】
このような構成の回転伝達機構6では、操作軸22を図2及び図4の操作軸芯の上側に示すように押し込むと、第2ギア17に係合片20が配置されハンドル組立体4の回転が第2ギア17を介して第4ギア19に伝達されスプール軸2及びスプール3が低速回転する。一方、スライド型のストッパ23をスライドさせて操作軸22を図4操作軸芯の下側に示すように引き出すと、第1ギア16に係合片20が配置されハンドル組立体4の回転が第1ギア16を介して第3ギア18に伝達されスプール軸2及びスプール3が高速回転する。
【0024】
レバードラグ機構7は、図2に示すように、スプール3の図2左端に装着された制動ディスク25と、制動ディスク25の両側に配置された1対の摩擦ディスク26、27と、制動ディスク25をスプール3を介して摩擦ディスク27から離反する方向に付勢する付勢手段であるコイルばね28(図6参照)と、スプール3及び摩擦ディスク27をスプール軸方向に往復移動させるための移動機構29とを有している。
【0025】
制動ディスク25は、図5に示すように、たとえばステンレス製のワッシャ状の円板部材であり、周方向に間隔を隔てて配置された複数本の取付ピン40により、スプール3の左側のフランジ部3bの端面にスプール3と接離する方向に所定距離移動自在かつスプール3に対して回転不能に装着されている。取付ピン40は、フランジ部3bの端面にねじ込まれるねじ部40aと、ねじ部40aより大径のガイド部40bと、ガイド部40bより大径の頭部40cとを有している。制動ディスク25は、取付ピン40のガイド部40bに軸方向移動自在に装着されており、ガイド部40bの軸方向長さから自身の厚みを引いた所定距離移動自在である。この取付ピン40が制動ディスク25の回り止め部材と制限部材とを兼ねている。制動ディスク25は、制動解除状態ではコイルばね28により付勢されて頭部40cに接触する位置に配置されている。なお、図4及び図5では、スプール軸芯より上側に制動状態が下側に制動解除状態が描かれている。
【0026】
摩擦ディスク26は、制動ディスク25のスプール3と逆側の面に対向して配置されている。摩擦ディスク26の制動ディスク25に対向する面には、たとえばカーボングラファイトや繊維強化樹脂などの耐摩耗素材製のリング状の摩擦板26aがビス等の適宜の固定手段により固定されている。摩擦ディスク26は、中心部に筒状のボス部26bを有しており、このボス部26bにスプール軸2の径方向に沿って貫通してスプール軸2に装着されたピン2aが係止されている。これにより摩擦ディスク26は、スプール軸2に回転不能に装着されており、スプール軸2とともに回転する。また、摩擦ディスク26のボス部26bの図5左端面には逆転防止機構9のラチェットホイール50が当接している。ラチェットホイール50は、ボス部26bの外周面にたとえばセレーションなどの適宜の係止手段により回転不能に装着されている。ラチェットホイール50は、軸受31aの内輪に当接している。また軸受31aの外輪は前述したように第1側板10に当接している。この結果、摩擦ディスク26は、スプール軸方向外方(図5左方)つまり制動ディスク25から離反する方向へ移動不能であるとともに、ラチェットホイール50により糸繰り出し方向の回転が禁止される。
【0027】
なお、逆転防止機構9は、外周面に鋸歯50aが形成されたラチェットホイール50と、ラチェットホイール50の外周側に配置され先端が鋸歯50aを係止するラチェット爪51とを有する爪式のものである。ラチェット爪51は、第1側板10の内側面に揺動自在に装着されており、引張ばねにより鋸歯50aを係止する側に付勢されている。
摩擦ディスク27は、制動ディスク25のスプール3側の面に対向して配置され、摩擦ディスク26と連動して回転しかつ摩擦ディスク26に対して接離するようにスプール軸方向に移動自在にスプール軸2に装着されている。摩擦ディスク27の制動ディスク25に対向する面には、たとえばカーボングラファイトや繊維強化樹脂等の耐摩耗性素材製のリング状の摩擦板27aがねじ止めされている。摩擦ディスク27は、スプール軸2の径方向に沿って貫通してスプール軸2に装着されたピン2bにより中心でスプール軸2に回転不能に装着されている。また、摩擦ディスク27の図5右端面にはワッシャ30を介して軸受32aの内輪が当接している。この結果、摩擦ディスク27は、軸受32aを介してスプール3により押圧されるとともに、スプール3を押圧する。
【0028】
摩擦ディスク26の外側は、ドラグカバー41により覆われている。ドラグカバー41は、たとえば放熱性能を考慮したアルミニウム合金製であり、中心に円形の開口を有する皿状のカバー本体41aと、カバー本体41aの外周面に一体形成されたリング状の取付部41bとを有している。カバー本体41aは、内部に摩擦ディスク26、27や制動ディスク25を収納可能な空間を有している。取付部41bは、複数本のビスなどの適宜の固定手段によりスプール3のフランジ部3bの端面に固定されている。このように複数本のビスにより固定すると、全体をスプールにねじ込み式で固定する場合に比べて締め付けトルクの管理が容易であり、組み立てが容易になる。
【0029】
取付部41bには、スプール側端面からスプール3側に突出する筒状のシール部41cが設けられている。スプール3の左側のフランジ部3bの端面には、環状溝3cが形成されており、この環状溝3cにシール部41cがはめ込まれている。この環状溝3cにシール部41cをはめ込むことで、シール部41cの内周面でスプール3とドラグカバー41との芯出しがなされている。シール部41cの外周面にはOリング42が装着され外周側からの液体の浸入を防止している。
【0030】
カバー本体41aの内周面にも摩擦ディスク26側に突出するシール部41dが設けられている。シール部41dには、リップ付きのシール部材43が装着されている。このシール部材43のリップの先端は、摩擦ディスク26のボス部26bの外周面に接触している。これにより内周側からの液体の浸入も防止される。これらのOリング42及びシール部材43により、ドラグカバー41とスプール3及びドラグカバー41と摩擦ディスク26とがシールされ、制動ディスク25や摩擦ディスク26、27が配置されるドラグカバー41内が水密に封止される。このようにOリング42と、シール部材43とを組み合わせることで、信頼性の高いドラグ防水構造が得られる。なお、Oリング42の装着を容易にするためにシール部41cにOリングの取付溝を設けてもよい。
【0031】
移動機構29は、図3から図5に示すように、リール本体1に揺動自在に設けられた制動操作レバー45と、制動操作部材の図3時計回りの揺動に応じてスプール3及び前記摩擦ディスク27を押圧して図4左方に移動させる押圧機構46と、摩擦ディスク27を付勢して制動操作レバー45の図3反時計回りの移動に応じてスプール及び摩擦ディスク27を図4右方に移動させるためのリターンばね47とを有している。
【0032】
リターンばね47は、両摩擦ディスク26、27の間においてスプール軸2の外周側に圧縮状態で装着され、両摩擦ディスク26、27を離反する方向に付勢しかつ摩擦ディスク27及びスプール3を図5右方に付勢する。
制動操作レバー45は、図2に実線で示す制動解除位置と2点鎖線で示す最大制動位置との間でリール本体1に揺動自在に装着されている。制動操作レバー45は、ボス部11aに揺動自在に装着されるレバー部45aと、レバー部45aの先端に固定されたつまみ部45bとを有している。レバー部45aの基端部は、押圧機構46を構成する第1カム部材60に回転不能に係止されている。
【0033】
押圧機構46は、ボス部11aの内周面に回転自在かつ軸方向移動不能に装着された第1カム部材60と、第1カム部材60の回動により軸方向に移動する第2カム部材61と、第2カム部材61に連動して軸方向に移動する押圧部材62と、押圧部材62による押圧力を調整するための押圧力調整機構65とを備えている。
第1カム部材60は、制動操作レバー45の揺動に連動して回動する大小2段の筒状部材である。第1カム部材60の小径の先端側(図4右側)の外周面には、セレーションなどの適宜の係止手段により制動操作レバー45のレバー部45aの基端が回転不能に係止されている。大径の基端側の端面には傾斜カム60aが形成されている。
【0034】
第2カム部材61は、筒状の部材であり、ボス部11aの内周面に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。第2カム部材61の第1カム部材60に対向する外周側の端面には、傾斜カム60aに係合する傾斜カム61aが形成されている。この2つの傾斜カム60a、61aの相対回動により第1カム部材60の回動運動が第2カム部材61の軸方向の直線運動に変換され第2カム部材61が軸方向に移動する。第2カム部材61には、径方向に突出する2本の係止ピン63が立設されている。係止ピン63の先端は、ボス部11aの内周面に軸方向に沿って形成された係止溝11bに係止されており、第2カム部材61をボス部11aに回転不能に係止している。第2カム部材61の内周面は、押圧部材62に螺合している。これにより第2カム部材61と押圧部材62との軸方向の相対位置関係を調整でき、制動操作レバー45の所定位置でのドラグ力を調整できる。
【0035】
押圧部材62は、鍔付き円筒状の部材であり、円筒部分の外周面が第2カム部材61に螺合している。また、鍔部分の図4左端面は僅かに突出しており、この突出部分が軸受32bの外輪に当接している。
押圧力調整機構65は、押圧部材62の中心部に先端部66aが回転不能かつ軸方向移動自在に係止される調整ノブ66を有している。調整ノブ66は、リール本体1にスプール軸芯回りに回転自在に装着されており、回転によりクリック音を生じるように構成されている。調整ノブ66を回動させると、押圧部材62が回動し、押圧部材62と押圧部材62に螺合する第2カム部材61との軸方向の相対位置が変化する。これにより制動操作レバー45が所定位置にあるときのドラグ力を調整できる。なお、図4では、スプール軸芯の下側に、押圧部材62と第2カム部材61とを接触させて押圧力を最小に調整した状態を示し、上側に、押圧部材62と第2カム部材61とが最も離反させて押圧力を最大に調整した状態を示している。
【0036】
このような両軸受リールのハンドル組立体2では、ハンドルアーム71は、アーム本体71aの先端に貫通して形成された雌ねじ部71bを有し、把手軸72は、軸本体72aの先端に雌ねじ部71bに螺合可能に形成された雄ねじ部72bを有している。ここでは、ハンドルアーム71の雌ねじ部71bに把手軸72の雄ねじ部72bを螺合させた後に、ハンドルアーム71の先端に把手軸72をかしめ固定することにより、ハンドル把手73を把持して前後方向に力を入れて回転させても、把手軸72とハンドルアーム71との間にがたつきを生じにくくすることができる。
【0037】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、釣り用リールのハンドル組立体として両軸受リールのハンドル組立体2を例にあげて説明したが、釣り用リールはこれに限定されるものではなく、スピニングリールのハンドル組立体にも本発明を適用できる。また、シングルハンドルのものに限定されるものではなく、ダブルハンドルのものであってもよい。
【0038】
(b) 前記実施形態では、把手部75は筒状部74と別体で形成されていたが、図8に示すように、把手部75と筒状部74とを一体成形してもよい。また、前記実施形態では、筒状部74は金属製であり、把手部75は合成樹脂製であったが、これらの材質に限定されるものではない。たとえば、把手部75と筒状部74とを一体成形した場合、把手部75と筒状部74とを金属または合成樹脂により形成してもよい。また、前記実施形態では、把手部75の形状は、長円形であったが、図9に示すように、3次元曲面を有する雨滴形状であってもよい。
【0039】
(c) 図9に示すように、把手軸72とハンドル把手73の筒状部74(把手部75の内周部分)との間に軸受77a、77bをさらに有していてもよい。この場合、軸受77a、77bを設けることにより、ハンドル把手73の把手軸72に対する回転性を向上できる。
(d) 前記実施形態では、ハンドルアーム71は、黄銅(真鍮)により形成されていたが、材質はこれに限定されるものではなく、他の銅合金やアルミニウム合金等によりハンドルアーム71を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態を採用した釣り用リールの斜視図。
【図2】前記釣り用リールの断面図。
【図3】前記釣り用リールの側面図。
【図4】前記釣り用リールの右断面拡大図。
【図5】前記釣り用リールの左断面拡大図。
【図6】レバードラグ機構の断面部分図。
【図7】ハンドル組立体の断面拡大図。
【図8】他の実施形態の図7に相当する図。
【図9】他の実施形態の図7に相当する図。
【符号の説明】
【0041】
1 リール本体
2 スプール軸
3 スプール
4 ハンドル組立体
5 ハンドル軸
71 ハンドルアーム
71a アーム本体
71b 雌ねじ部
72 把手軸
72a 軸本体
72b 雄ねじ部
72c かしめ孔
73 ハンドル把手
74 筒状部
74a 雄ねじ部
74b 非円形部
75 把手部
75a 雌ねじ部
75b 開口部
76 蓋部材
77a、77b 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールのハンドル軸の先端に装着されるハンドル組立体であって、
前記ハンドル軸の先端に基端が装着され、前記ハンドル軸と交差する方向に延びるアーム本体と、前記アーム本体の先端に貫通して形成された雌ねじ部とを有するハンドルアームと、
前記ハンドルアームの先端から前記ハンドル軸に沿う方向に延びる軸本体と、前記軸本体の先端に形成され前記雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部とを有し、前記雌ねじ部に前記雄ねじ部を螺合させた後に前記ハンドルアームの先端にかしめ固定される把手軸と、
前記把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手と、
を備えた釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項2】
前記把手軸は、前記雄ねじ部の先端部側から前記ハンドルアームの先端にかしめ固定される、請求項1に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項3】
前記ハンドルアームは、黄銅製であり、
前記把手軸は、ステンレス合金製である、請求項1又は2に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項4】
前記ハンドル把手は、前記把手軸の外周に回転自在に装着される筒状部と、前記筒状部に回転不能に設けられた把手部とを有している、請求項1から3のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項5】
前記把手部は、前記筒状部と一体成形されている、請求項4に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項6】
前記把手部は、前記筒状部と別体で形成されている、請求項4に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項7】
前記筒状部は、金属製であり、
前記把手部は、合成樹脂製である、請求項6に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項8】
前記ハンドル把手は、前記把手軸と前記筒状部との間に配置される軸受をさらに有している、請求項4から7のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−25763(P2006−25763A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213155(P2004−213155)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】