説明

釣り竿

【課題】 可動フードのリール脚固定位置への移動を容易に行える釣り竿のリールシート構造を提供する点にある。
【解決手段】 シートベース3に可動フード1をリール脚固定位置と退避位置とに亘ってスライド移動自在に取り付ける。可動フード1を位置固定するロック手段を、シートベース3に形成した係合歯部4と可動フード1に備えられるロック片1Dとで構成してする。係合歯部4の歯形を鋸歯状に形成し、係合歯部4における後向き傾斜面4bの傾斜度を緩やかなものに形成し、前向き面4aを垂直面に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベースに可動フードをリール脚固定位置とそのリール脚固定位置より後方に設定される退避位置とに亘って前後移動自在に取り付けるとともに、前記可動フードを位置固定するロック手段を、前記シートベースの可動フード取付面に形成した係合歯部と可動フードに備えられ前記係合歯部に弾性変形によって係合離脱自在なロック片とで構成してある釣り竿のリールシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
係合歯部の歯形としては山形状に形成し、その係合歯部における前向き傾斜面と後向き傾斜面との傾斜度を同一の急傾斜のものに設定してあった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平10−80240号公報(段落番号〔0010〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した係合歯部を有するロック手段においては、ロック手段によるロック状態を解除しなければ、可動フードをリール脚固定位置とそのリール脚固定位置より後ろ向きに後退する退避位置とに亘って移動させることはできなかった。
そうすると、可動フードを前進移動させる場合にもロック手段を解除した状態でなければ行うことはできないので、可動フードを細かく前進移動させてロック位置を調節する場合に、ロック操作とロック解除操作とを繰り返し行う必要があり、操作が煩雑になっていた。
【0005】
本発明の目的は、可動フードのリール脚固定位置への移動を容易に行える釣り竿のリールシート構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記係合歯部の歯形を鋸歯状に形成し、前記係合歯部における後向き傾斜面の傾斜度を前向き傾斜面の傾斜度より緩やかなものに設定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、係合歯部の後向き傾斜面の傾斜度が前向き傾斜面の傾斜度より緩やかな傾斜状態となっている。
これによって、可動フードを前進側に移動させようとすると、ロック片の先端が変形しながら係合歯部の後向き傾斜面に沿って移動し、その後向き傾斜面の歯先端部を乗り越えることができ、ロック片は元の姿勢に戻る。これによって、ロック手段への解除操作を必要とすることなく可動フードが係合歯部の1ピッチ分だけ移動できる。
【0008】
〔効果〕
したがって、可動フードを前進側に移動させる場合には、ロック手段の解除操作をすることなく行えるようになり、リール脚固定操作を容易迅速に行える。
このような操作性の向上を図るのに、係合歯部の傾斜度を変更するだけの簡単な構造変更だけで行うことができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記ロック片における前記歯部に係合する係合部を、前記係合歯部に近接する先端側程前記後方側に位置するように後向き傾斜姿勢に設定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、係合歯部の後向き傾斜面の傾斜度を小さくするとともに、ロック片の係合歯部に係合する係合部を後向き傾斜姿勢に設定したので、可動フードを前進側に操作した場合に、ロック片の係合部が係合歯部を乗り越える作用をより容易に行えるようになった。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記係合歯部を形成した前記シートベースの可動フード取付面における横幅方向の側端面に、横側方に向けて出入りする凹凸面を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、凹凸面を形成してあるので、リールシートを握る釣り人の手指が凹凸面に接触して、その手指が濡れた状態であっても滑り難い状態となり、竿を操る操作が容易になる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記係合歯部を形成した前記シートベースの可動フード取付面において、前記係合歯部を前記可動フード取付面の前記側端面に至る範囲まで形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
つまり、係合歯部を前記可動フード取付面の前記側端面に至る範囲まで形成してあるので、係合歯部と請求項3で記載した凹凸面とを一体のものとして形成でき、製作時に一工程で両者を製作できる。
【0015】
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1〜4のうちいずれかひとつに記載のリールシートを有する釣り竿を形成した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
このようなリールシートを備えることによって、使い易い釣り竿を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
筒状リールシートAに使用されている可動フード1のロック手段について説明する。
筒状リールシートAは、図1に示すように、前端部に固定フード2、後端部に可動フード1を配置して、リール脚を挿入固定するように構成されている。筒状リールシートAは、ナイロン樹脂やABS樹脂で成形されており、その筒状シートベース3を元竿の所定位置に外嵌させて、接着剤等でその元竿に装着固定されるようになっている。
【0018】
可動フード1は、図1及び2に示すように、両横側壁1A,1Aと天井壁1Bとからなる本体部と、天井壁1Bの内側に貼り付けられている樹脂フード1Cと、樹脂フード1Cの後端部内に嵌め込み固定されるとともにその樹脂フード1Cより後向き片持ち状に延出される弾性復帰可能なロック片1Dと、ロック片1Dに当接作用してそのロック片1Dを係合姿勢と係合解除姿勢とに切り換えるロック操作片1Eとで構成してある。
【0019】
ロック操作片1Eは、先端部分に平板状の摘まみ部を設けるとともに基端部に左右に突出する軸支部を張り出せて形成されている。一方、図2に示すように、両横側壁1A,1Aの後端部に円弧状の枢支部1a,1aを形成し、前記ロック操作片1Eの軸支部を挿入して左右軸支部の横向き軸芯を中心にしてロック操作片1Eを前後に揺動開閉自在に構成してある。
【0020】
以上のように構成された可動フード1は、左右両横側壁1A,1Aの下端部を折り返して、シートベース3の可動フード1の取り付け台3Aの誘導溝3B内に前記した折り返し部を挿入し、その取り付け台3Aの側面に沿って移動可能に構成してある。可動フード1は、固定フード2に近接する位置でリール脚を固定するリール脚固定位置とそのリール脚固定位置より後ろ向きに後退する退避位置とに亘ってスライド移動自在に構成してある。
【0021】
次に、ロック片1Dが係合する相手側となる係合歯部4について説明する。
図2に示すように、シートベース3の可動フード1の取り付け台3Aの上面に係合歯部4が装着されており、係合歯部4は鋸歯状に形成されている。鋸歯状歯部4の歯形の具体的形態は、図2(ハ)に示すように、固定フード2に向かう前向き面4aが垂直面で反対側の後向き面4bが傾斜面に形成されている。この後向き傾斜面4bの傾斜角度は垂直面に対して挾角θ=70°に設定されている。また、前向き垂直面4aと後向き傾斜面4bとが交差する歯先には僅かな平坦面4cが設けてあり、歯先が損傷することを阻止する構成を採ってある。なお、この鋸歯状歯部4は、ステンレス製の板材に形成されて、シートベース3の所定位置に嵌め込み固定されている。
【0022】
図2に示すように、前記した係合歯部4に係合するロック片1Dは、両側壁1Aと同様にチタンやアルミ等の金属製の板状部材であり、前記したように、樹脂フード1Cから後側に向けて延出してあるが、長手方向の中間位置に下向きの凹入部1dを形成するとともに、さらに後端側に円弧状部分1eを設けてあり、円弧状部分1eの後端を下向きで斜め後方側に延出してある。この下向き後端部分を歯部に係合する係合部1fとする。
【0023】
以上のように構成されたロック片1Dに対して、ロック操作片1Eの作用によって姿勢切換できるようになっている。つまり、図2(イ)に示すように、ロック操作片1Eの後端はロック片1Dの凹入部1d内に入り込んでロック解除姿勢に切換られており、そのロック解除状態から図2(ロ)に示すように、ロック操作片1Eを天井壁1Bの上方に沿ったロック姿勢に倒伏させた状態においては、凹入部1d内に入り込んでいるロック操作片1Eの後端が円弧状部分1eに当接作用してロック片1Dを押え付け、ロック片1Dの係合部1fを係合歯部4に係合する状態に切換え、可動フード1の位置を固定する。この状態がロック状態である。この状態は、固定フード2と可動フード1とでリール脚部を筒状リールシートAに締め付け固定する状態である。
【0024】
図2(イ)に示すように、ロック状態からロック操作片1Eを後方側に持ち上げ操作すると、円弧状部分1eに当接作用していたロック操作片1Eの後端がロック片1Dから離間して凹入部1d内に入り込む。このことによって、ロック片1Dを抑える操作力が解除され、ロック片1Dは自己の弾性復帰力によって上方に復帰作動する。これによって、ロック片1Dの係合部1fを係合歯部4に係合する状態から解放し、可動フード1の移動を許容する状態に切り換える。
【0025】
ロック姿勢でまだリール脚部を固定するのに十分でない場合には、ロック操作片1Eを起立させることなく、ロック操作片1Eを天井壁1Bに沿った倒伏姿勢のまま、可動フード1をリール脚部側に押し込むと、ロック片1Dがその弾性力によって係合歯部4に係合した状態から係合歯部4の後向き傾斜面4bを乗り越えて、次ぎの係合歯部4に係合する状態に復帰し、可動フード1を前進させることができる。
【0026】
〔第2実施形態〕
筒状リールシートAにおいては、以上のような構成に加えて、次ぎのような構成を備えている。図3に示すように、可動フード1の取り付け台3Aの両横側端面には、横側方に向けて出入りする凹凸面3Cを形成してある。このような凹凸面3Cを形成することによって、釣り人の手が濡れた状態であっても、リールシートAを握った状態で指がその凹凸面3Cに接触して滑りにくく、握り感覚が良好になる。
【0027】
〔第3実施形態〕
上記した第2実施形態では、可動フード1の取り付け台3Aの横側端面に凹凸面3Bを係合歯部4とは別個に形成したものを示したが、図4に示すように、凹凸面3Bと係合歯部4とを一体に形成したものでもよい。つまり、鋸歯状に形成した係合歯部4を延長して取り付け台3Aの横側端面まで形成することによって、横側端面に鋸歯状の凹凸面3Bを形成することができる。
このような構成を採る場合には、係合歯部4と凹凸面3Bとを金属製の板材に形成して、その板材を取り付け台3Aの上面に載置固定することになる。
【0028】
また、可動フード1の取り付け台3Aの横側端面に凹凸面3Bを形成する場合には、係合歯部4の歯形としては、前記した鋸歯状のものではなく、山形状のものであってもよい。
【0029】
〔別実施の形態〕
(1) 係合歯部4の歯形形状としては、次ぎのようなものでもよい。後向き傾斜面4bの傾斜度が前向き傾斜面の傾斜度より緩やかなものであれば、前向き面4aは、垂直面でなくてよく、傾斜していてもよい。
(2) 前記係合歯部1の歯形形状を適用する対象としては、板状リールシートであってもよい。
(3) 前記したリールシートAを適用する釣竿としては、釣糸ガイドを竿の外面に取り付けた外付け式の釣竿だけでなく、糸挿通経路を竿内に形成する中通し竿にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】筒状リールシートで示す斜視図
【図2】可動フードの取付固定構造を示し、(イ)は、ロック操作片をロック解除姿勢に設定した状態を示す縦断側面図、(ロ)は、ロック操作片をロック姿勢に設定した状態を示す縦断側面図、(ハ)は、係合歯部を示す縦断側面図
【図3】リールシート取付台の横側端面に凹凸面を形成した状態を示す斜視図
【図4】凹凸面と係合歯部とを一体のものとして形成した状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 可動フード
1D ロック片
3 シートベース
4 係合歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベースに可動フードをリール脚固定位置とそのリール脚固定位置より後方に設定される退避位置とに亘って前後移動自在に取り付けるとともに、前記可動フードを位置固定するロック手段を、前記シートベースの可動フード取付面に形成した係合歯部と可動フードに備えられ前記係合歯部に弾性変形によって係合離脱自在なロック片とで構成してある釣り竿のリールシート構造であって、
前記係合歯部の歯形を鋸歯状に形成し、前記係合歯部における後向き傾斜面の傾斜度を前向き傾斜面の傾斜度より緩やかなものに設定してある釣り竿のリールシート構造。
【請求項2】
前記ロック片における前記歯部に係合する係合部を、前記係合歯部に近接する先端側程前記後方側に位置するように後向き傾斜姿勢に設定してある請求項1記載の釣り竿のリールシート構造。
【請求項3】
前記係合歯部を形成した前記シートベースの可動フード取付面における横幅方向の側端面に、横側方に向けて出入りする凹凸面を形成してある請求項1又は2記載の釣り竿のリールシート構造。
【請求項4】
前記係合歯部を形成した前記シートベースの可動フード取付面において、前記係合歯部を前記可動フード取付面の前記側端面に至る範囲まで形成してある請求項1又は2記載の釣り竿のリールシート構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれかひとつに記載のリールシートを有する釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−191832(P2006−191832A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5323(P2005−5323)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】