説明

釣り糸ガイド

【課題】ガイドリングを保持するフレームに作用する負荷を緩和すると共に、ガイドリングの脱落を確実に防止することのできる釣り糸ガイドを提供すること。
【解決手段】釣り糸を案内するガイドリング12と、このガイドリングを嵌合する保持孔16を保持部18に設けた繊維強化樹脂製のフレーム14とを有する釣り糸ガイド10であって、保持孔16の内周面16aに、ガイドリング12の外周面12bに当接する突部42と、ガイドリングの外周面に対して非当接の凹部44,46とを、保持孔16に対するガイドリング12の嵌合方向Hに沿って配置し、フレーム14よりも柔軟な材料で形成される固定部材48をガイドリング12の外周面12bと保持孔16の内周面16aとの間に形成される空隙部Sに配設した釣り糸ガイド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿に用いる釣り糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣り糸ガイドは、釣り糸が釣り竿の表面に付着するのを防止するために、間隔をおいて釣り竿の外側に取付けられる。このような釣り糸ガイドには、ガイドリングを金属製のフレームで保持し、このガイドリングを保持する保持部から釣り竿の長手方向に向けて取付足を前後方向に延ばし、これらの取付足を介して釣り竿に固定するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、硬質耐磨耗性材料からなる外側環と内側環との間に配置する中間環と、この中間輪から前後に延びる取付片とを、補強繊維を混入した熱可塑性合成樹脂で連続した一体に形成したものもある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−340661号公報
【特許文献2】実開昭60−151363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、フレームをステンレス鋼やチタン合金等の金属製の一枚の板材料をプレス加工等で成形した一体構造の釣り糸ガイドは、全体に重く、釣り竿に取付ける際に竿管を変形させ、傷つけることもある。更に、保持部から前後に延びる取付足を介して釣り竿に固定するために、釣り糸ガイドを固定した部位の撓み性が阻害される。一方、補強繊維を混入した熱可塑性合成樹脂で中間環と取付片とを一体形成した釣り糸ガイドは、撓み性があるため、金属製のフレームにおけるこれらの欠点を改善することが可能である。
【0006】
しかし、釣り糸を案内するガイドリングとして作用する内側環は、外側環と共に硬質耐磨耗性材料で形成されており、撓み性の大きな合成樹脂材料製の中間環で確実に保持することは困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、ガイドリングを保持するフレームに作用する負荷を緩和すると共に、ガイドリングの脱落を確実に防止することのできる釣り糸ガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によると、釣り糸を案内するガイドリングと、このガイドリングを嵌合する保持孔を保持部に設けた繊維強化樹脂製のフレームとを有する釣り糸ガイドであって、前記保持孔の内周面に、ガイドリングの外周面に当接する突部と、ガイドリングの外周面に対して非当接の凹部とを、前記保持孔に対するガイドリングの嵌合方向に沿って配置し、前記フレームよりも柔軟な材料で形成される固定部材を前記ガイドリングの外周面と保持孔の内周面との間に形成される空隙部に配設した釣り糸ガイドが提供される。
【0009】
前記突部は、前記保持部の前面と後面との間で、前記保持孔の軸方向に沿う中間部に形成されることが好ましい。
【0010】
また、前記突部は、前記前面と後面との間の軸方向に沿う中心位置から、前面側又は後面側に偏倚した位置に形成されてもよい。
【0011】
更に、前記保持孔の内周面に、周方向に沿って複数の支持部を半径方向内方に突設し、この支持部に前記突部と凹部とが形成されるものであってもよい。
【0012】
前記固定部材は、前記保持孔に隣接する保持部の内周側側面部を覆うこともできる。
【0013】
前記突部は、前記保持孔の内周面の周方向に沿って、軸方向の同一位置に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の釣り糸ガイドによると、フレームが繊維強化樹脂で形成されているために、釣り糸ガイドを軽量化し、フレームに作用する外力を撓みで緩和すると共に、フレームの撓み変形を固定部材が吸収してガイドリングを確実に保持し、その脱落を確実に防止することができる。
【0015】
突部が、保持部の前面と後面との間で、保持孔の軸心方向に沿う中間部に形成される場合には、負荷が作用した場合でも、この突部からの破損を防止することができる。
【0016】
特に、この突部が、軸方向に沿う中心位置から前面側又は後面側に偏倚した位置に形成される場合には、ガイドリングの装着が容易となり、フレームが撓んでも柔軟な固定部材によって保持されたことと相まってガイドリングが脱落し難くなる。
【0017】
保持孔の内周面に、周方向に沿って複数の支持部を半径方向内方に突設し、この支持部に突部と凹部とを形成する場合には、保持部に、保持孔の径方向に沿う撓み変形が生じた場合でも、確実にガイドリングを保持することができる。
【0018】
固定部材が、保持孔に隣接する保持部の内周側側面部を覆う場合には、ガイドリングと保持部との間に釣り糸が入り込むのを確実に防止することができる。
【0019】
突部が、保持孔の内周面の周方向に沿って、軸方向の同一位置に配置される場合には、ガイドリングの外周面を軸方向に沿う同一位置で保持することができ、より確実にガイドリングを保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による釣り糸ガイドをの正面図。
【図2】図1の釣り糸ガイドの側面図。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図。
【図4】釣り糸ガイドのフレームにガイドリングを装着するときの説明図。
【図5】釣り糸ガイドのフレームにガイドリングを装着した状態の説明図。
【図6】他の実施形態による釣り糸ガイドの一部の説明図。。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2は、本発明の実施形態による釣り糸ガイド10を示す
本実施形態の釣り糸ガイド10は、釣り竿の竿管8の外面に釣り糸が付着するのを防止する外ガイドとして形成してあり、僅かな勾配を形成された竿管8の外周上の所要位置に取付け、例えば糸巻、糸止め、あるいは接着剤等の適宜の固定手段を用いて固定することができる。必要な場合には、適宜の摩擦保持手段により、所要位置に保持し、必要に応じて、前方の穂先側から後方の元側に沿って、竿管8の軸線Cと平行な軸方向に沿って前後に移動し、所要位置に摩擦力で保持するようにしてもよい。
【0022】
竿管8は通常と同様に、炭素繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグシートを周方向、軸長方向あるいは軸長方向に対して適宜角度に傾斜した偏向方向に引き揃えて巻回し、これらの複数の繊維層を積層した中空竿管から形成したものでよい。
【0023】
この竿管8に取付ける釣り糸ガイド10は、ガイドリング12と、このガイドリングを保持するフレーム14とを備える。フレーム14は、ガイドリング12を嵌合する保持孔16を貫通させた保持部18と、この保持部18を一端側で支える支脚部20とを有する板状構造に形成してある。このフレーム14は、支脚部20の他端側に固定部22を一体に形成してあり、この固定部22が糸巻や、接着等の固定手段により竿管8の外面上に固定される。釣り糸ガイド10を竿管8上で移動させる場合には、固定部22をリング状に形成してもよい。
【0024】
図4に示すように、保持部18の保持孔16に嵌合して保持されるガイドリング12は、滑らかな湾曲面で形成した内面を釣り糸案内面12aとして有し、この釣り糸案内面12aで囲まれた釣り糸導通孔を通して釣糸を案内する。本実施形態のガイドリング12は、釣り糸案内面12aの軸方向の両端部を円環状に丸めた湾曲面で形成し、その中間部位を円筒状に形成してある。また、外周面12bも、軸方向の両端部を円環状に丸めた湾曲面で形成し、中間部位を軸方向に沿ってほぼ同一の外径を有する円筒状に形成してある。外周面12bの両端部に形成した円環状の湾曲面は、図4の断面で見たときに内周側が外周側よりも大きな半径の曲面で形成してあるが、釣り糸に損傷を与えないものであれば、これらの曲面は互いに同じ半径を有してもよく、逆に、外周側が内周側よりも大きく形成したものでもよい。
【0025】
図1及び図2に示すように、このガイドリング12は、釣り糸道通孔の中心軸Oを竿管8の軸線Cとほぼ平行に配向させた状態で、フレーム14で保持される。このガイドリング12は、例えばシリコンカーバイト(SiC)、アルミナオキサイト、タングステンカーバイト、セラミックあるいは金属等、フレーム14よりも耐磨耗性に優れた硬質材料で形成するのが好ましい。いずれの場合も、ガイドリング12は、後述するように板状構造のフレーム14の保持部18の肉厚Tよりも、軸方向寸法を長く形成し、釣り糸がフレーム14に直接接触するのを防止することが好ましい。
【0026】
このガイドリング12を保持する保持部18は、外周縁部18aがガイドリング12よりも大径のリング状に形成してあり、貫通孔として形成した保持孔16はこれに嵌合されたガイドリング12の釣り糸動通孔の中心軸Oと同軸状に形成することが好ましい。
【0027】
支脚部20は、保持部18の外周縁部18aの最大径部よりも固定部22側の部位から、滑らかな曲線状に延びる外縁部20aを中心軸Oの両側に有し、これらの外縁部が固定部22の両縁部に滑らかに移行する。これにより、保持部18を所要位置に保持するための十分な強度を確保し、更に、釣り糸が引っ掛かり易い角部の形成を防止してある。
【0028】
この支脚部20の両外縁部20a間の幅が、所要強度を維持するために必要とする以上に大きい場合には、図2に示すような凹部20bを板厚方向に貫通させて形成してもよい。このような凹部20bは、1つに限らず、複数設けてもよく、また、貫通形成することなく、釣り糸道通孔の中心軸Oの軸方向に沿う一方又は双方に凹設させたものでもよい。いずれの場合も、釣り糸が引掛かり易い角部又は凸部の無い滑らかな外面を形成することが好ましい。
【0029】
この支脚部20は、保持部18から離隔した端部に固定部22を一体に形成してあり、この固定部22を介してこのフレーム14を竿管8に固定することができる。本実施形態では、支脚部20から離隔する自由端側を元側すなわち魚釣用リール側に配置した状態で竿管8に固定してある。この固定部22は、取付けられる竿管8の外径よりも狭い幅寸法を有する板状形状を有し、支脚部20に対して反対側の裏面24が竿管8に載置される載置面を形成する。
【0030】
支脚部20側の表面26は、支脚部20から離隔する自由端側で裏面24側に傾斜する傾斜面に形成してあるが、この固定部22の長手方向に沿って次第に竿管8側に湾曲する曲面状に形成してもよい。また、表面26は、固定部22の幅方向に沿って、側縁部に向けて次第に竿管8側に湾曲する曲面状形状を有してもよい。固定部22の表面26をこのような曲面状に形成することにより、竿管8に固定したときに、釣り糸が引掛かり易い角部又は凸部の無い滑らかな外面を形成することができ、また、糸巻き、糸止めが容易となる。
【0031】
なお、固定部22の裏面24は、平坦面に形成することも可能であるが、図2に示すように竿管8の外面に沿う湾曲面で形成することで、載置面が竿管8の外面形状に好適に適合し、竿管8に対する固定力を向上することができる。
【0032】
このように、固定部22と保持部18とを連結し、保持部18を所要の向き及び位置に配置する支脚部20には、固定側屈曲部28および保持側屈曲部30を設けてある。これらの屈曲部28,30の屈曲角度を調整することで、固定部22に対する保持部18およびガイドリング12の姿勢を変更することができる。図1に示すガイドリング12は、中心軸Oを竿管8の軸線Cに平行に配置したものであり、これらの屈曲角度を調整することにより、これに限らず種々の向きに配向させることができることは明らかである。
【0033】
支脚部20と固定部22との間に形成される固定側屈曲部26の傾斜角度α1は、30〜90度の範囲とし、保持側屈曲部30は、支脚部20の中間部21と保持部18との間の傾斜角度α2は、0〜45度の範囲とし、両傾斜角度を合計した角度すなわち固定部22に対する保持部18の角度を30度以上、100度以下とすることが好ましい。
【0034】
このように構造を有するフレーム14は、固定部22を含む少なくとも一部が強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを積層して板状形状に形成した積層成形材32で形成される。フレーム14の全体を積層成形材32で形成する場合には、その製造工程が簡略化され、軽量構造に形成することができる。
【0035】
図3は、強化繊維の引き揃え方向を種々の方向に配向させる積層成形材32の積層構造例を示す。このような積層成形材32は、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維にマトリックス樹脂として、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸した複数枚の繊維強化プリプレグを積層することで形成することができ、熱硬化性樹脂に代えて熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0036】
この積層成形材32は、厚さ方向の中央に、強化繊維が固定部22の長手方向に沿う長手方向の繊維強化樹脂層32を配置し、この上下に、強化繊維を固定部22の長手方向に対して交差する方向に指向する交差方向の繊維強化樹脂層36,38を配置し、これらの交差方向の繊維強化樹脂層の外側に、強化繊維を織成した織布層40,40を配置してある。符号Mは積層成形体30の厚さ方向の中立面を示す。
【0037】
なお、固定部22は、図1および図2に示すように、竿管8の軸線Cに沿って細長い板状形状に形成するだけでなく、例えば竿管8の周方向寸法の方が竿管8の軸長方向よりも長くなるように形成することも可能であり、または、屈曲部28を滑らかな湾曲状に形成することも可能である。
【0038】
厚さ方向の中央に配置する長手方向の繊維強化樹脂層34は、竿管8の撓みバランスを向上し、竿管8と釣り用ガイド10の強度の向上および安定化を図るため、竿管8の軸長方向の強化繊維の弾性率(引張り弾性率)よりも小さな弾性率(引張り弾性率)を有する強化繊維で形成することが好ましい。更に、固定部に配置した強化繊維の大部分(例えば50%以上又は70%以上)を、竿管8の軸長方向の強化繊維の弾性率(引張り弾性率)よりも小さな弾性率(引張り弾性率)を有する強化繊維で形成することが好ましい。
【0039】
この繊維強化樹脂層34は、竿管8の軸長方向に対して強化繊維を0°±5°(又は0°±10°)の角度で一方向に引き揃えた繊維強化プリプレグを複数層重ねて形成することが好ましい。
【0040】
交差方向の繊維強化樹脂層36は、固定部22の長手方向に対してそれぞれ25〜65度の範囲で、ほぼ45度が好ましい角度で交差する方向に指向し、かつ、互いに逆方向に配向された内側斜向繊維層36aと外側斜向繊維層36bとで形成してある。同様に、長手方向の繊維強化樹脂層34を挟んで反対側に配置される交差方向の繊維強化樹脂層38も、固定部22の長手方向に対してそれぞれ25〜65度の範囲で、ほぼ45度が好ましい角度で交差し、かつ、互いに逆方向に配向された内側斜向繊維層38aと外側斜向繊維層38bとを有する。
【0041】
この繊維強化樹脂層36,38の斜向繊維層36a,36b,38a,38bは、それぞれ竿管8の軸長方向に対して強化繊維を45°±15°(又は45°±30°)の角度で一方向に引き揃えた繊維強化プリプレグを中央の繊維強化樹脂層34に重ねて形成することが好ましい。
【0042】
このような交差方向の繊維強化樹脂層36,38を長手方向の繊維強化樹脂層34の厚さ方向両側に配置することにより、釣り糸ガイド10の特に固定部10の軽量化、強度の向上および安定化を図ることができる。
【0043】
交差方向の繊維強化樹脂層36,38及び後述する織布層40が形成する強化繊維の繊維量は、固定部22を形成する強化繊維量の全体の半分以上(1/2以上)とすることにより、竿管8に取付けたときに、竿管8の撓みバランスを向上し、応力集中を緩和し、強度の向上を図ることができる。
【0044】
交差方向の繊維強化樹脂層36,38の外側に配置する織布層40は、その強化繊維として、例えば複数の強化繊維からなる繊維束を互いに交差状に織り込んで形成することができる。この織布層40の織り込み構造として、例えば、2つの方向に延びる繊維束を組合せた二軸織物、または、3つの方向に延びる繊維束を組合せた三軸織物等、種々の織物構造に形成することが可能である。いずれの場合も、織物層40の主たる繊維又は繊維束の方向が固定部22の長手方向に対して互いに傾斜し(45°±15°又は45°±30°の範囲)、長手方向に対して対称的に配置することが好ましい。
【0045】
この織布層40は、軸長方向に対してそれぞれ45°±15°の角度で延びる強化繊維(繊維束)と軸長方向に対して0°〜70°の角度で延びる強化繊維(繊維束)とを織り込んで形成した繊維強化プリプレグで形成することができる。この織布層40を形成する繊維強化プリプレグは、軸長方向の繊維層34を形成する軸長方向の繊維強化プリプレグに対し、樹脂含有量(RC:wt%)を多くしてある。
【0046】
この織布層40は、互いに交差する繊維束で形成される編み目の大きさを、支脚部20の最小幅部分(例えば凹部20bの両側の部位)よりも小さく形成することが好ましい。特に屈曲部28でこの編み目の大きさを小さくし、固定部22および保持部18の部位でも同様に小さくするとよい。
【0047】
このような織布層40を最外側に配置することにより、外層からの強化繊維の剥離を防止して強度を安定化することができる。
【0048】
これらの交差方向の繊維強化樹脂層36,38を形成する強化繊維は、長手方向の繊維強化樹脂層34を形成する強化繊維と同様な弾性率を有するものでもよい。
【0049】
なお、織布層40の繊維束が3つの方向以上の多数の方向に延びる繊維束を組合せて形成される場合には、長手方向の繊維強化樹脂層34を省略して、積層成形材32の繊維強化樹脂層を全て織布層40で形成することも可能である。
【0050】
このような積層成形材32からフレーム14を製造する場合は、各繊維強化樹脂層34,36,38および織布層40を形成する繊維強化プリプレグシート(図示しない)を所定形状に切断し、その繊維方向を上述の積層成形材32の各繊維方向に沿わせて重ね合わせる。積層する繊維強化プリプレグシートの枚数又は層数は、繊維強化プリプレグシートの種類や重ねる条件に応じて任意に調整することができ、例えば一度に積層成形材32に必要な全体の分を重ね合わせることも可能であるが、複数回に分けることで、各繊維強化プリプレグシート中の強化繊維の動きを少なくした状態で金型(図示しない)に高精度でセットすることができる。
【0051】
金型には繊維強化プリプレグシートは、予め重ね合わせた状態でセットしてもよく、一枚ずつ順にセットしてもよい。繊維強化プリプレグを金型の一方にセットした後、他方のの金型で繊維強化プリプレグを加圧し、双方の金型を一体的に固定する。このとき、未硬化状態(仮キュア後を含む)の繊維強化プリプレグシートに屈曲部28,30を形成し、フレーム14の形状に相当する形状に保持する。これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、安定化を図ることができる。この後、繊維強化プリプレグシートを加熱硬化し、所定形状に成形した積層成形材32として金型から取り出す。
【0052】
金型から取り出した積層成形材32は、例えば肉厚が一定の帯状の板状体として形成されており、フレーム14に形成する部位を多数連ねた状態に形成される。各フレーム14は、例えばプレス加工、ウォータージェット等の流体の噴出による切出し、エンドミル等の刃具による切出し等の適宜の方法により、この板状体からそれぞれ切出し、加工することができる。
【0053】
このように形成されるフレーム14は、肉厚の等しい板状形状に限らず、その厚さ、強化繊維の量または引張り弾性率を、部位に応じて変化させあるいは調整することができる。この厚さ、強化繊維の量又は引張り弾性率の調整は、板状体を形成する際に積層厚さ又は積層する繊維強化プリプレグを種々に変更することで調整することができる。
【0054】
この板状体からそれぞれのフレーム14を加工する際に、保持部18の保持孔16および支脚部20の凹部20bを同時に加工することが好ましい。必要な場合には、フレーム14を切出し加工した後に、保持孔16および凹部20b等の加工を行ってもよい。
【0055】
図4に示すように、保持孔16は、内周面16aに、ガイドリング12の外周面12bに当接する突部42と、この外周面12bに対して非当接の凹部44,46とを前後方向すなわち保持孔16に対するガイドリング12の嵌合方向Hに沿って形成してある。なお、非当接とは、ガイドリング12がその外周部12bを保持孔16の突部42に当接して保持されたときに、保持部18に対する支持機能が発揮されない状態をいい、間隙が形成されている状態に限らず、例えば物理的に接触した状態であっても実質的な支承機能が発揮されていない状態も含む。
【0056】
本実施形態では、突部42は、保持孔16の中心軸に沿う保持部18の軸方向断面図(図4)で見たときに、それぞれ逆方向に向く円錐状面で形成した凹部44,46間の頂部として半径方向内方に突出し、この保持孔16の内周面16aの周方向に沿って連続した突条を形成する。この突部42の内径Rは、ガイドリング12の外径よりも僅かに小さく形成されており、ガイドリング12を保持孔16に対して所定の方向に正しく嵌合させたときに、この突部42がガイドリング12の外周面12bに摩擦係合し、ガイドリング12を確実に保持する。この所定の方向は、竿管8の軸線Cに対するガイドリング12の内周面12aの中心軸Oの配向方向であり、軸線Cに平行な方向に限らず、釣り糸を好適に案内するために、軸線Cに対して例えば50°〜80°程度傾斜させた状態でもよい。
【0057】
このような突部42は、保持孔16の内周面16aから突出するものであれば、保持部18の前面19aと後面19bとの間で、適宜の位置に形成することが可能であるが、負荷の作用による繊維強化層の剥離等、この突部からの損傷を防止するために、保持部18の前面19aと後面19bと同一面内に配置することなく、これらの前面19aと後面19bとの間の保持孔16の中心軸Oに沿う中間部に配置することが好ましい。
【0058】
本実施形態では、保持部18の前面19aと後面19bとの間の軸方向に沿う中心位置に積層成形材32の中立面Mが配置され、この中立面Mよりも後方位置で、後面10b側に偏倚した斜向繊維層36a36b内に配置してある。この場合には、ガイドリング12を保持孔16に嵌合する際に、前面19b側の凹部46の幅すなわち中心軸方向の傾斜面を利用してガイドリング12を案内することができ、ガイドリング12の装着が容易となる。更に、突部42がガイドリング12で押圧されても、織布層40にガイドリングが当らず、最外側の織布層40が強化繊維の剥離を防止して強度を安定化することができる。
【0059】
いずれの場合も、突部42は、中立面Mに平行な面内に配置されることが好ましい。これにより、突部42は、保持孔16の内周面16aの周方向に沿って、中心軸Oの軸方向に沿う同一位置に配置されることになり、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で保持することができ、より確実にガイドリング12を保持することができる。
【0060】
なお、図4には、突部42は、斜向繊維層36a,36bの境界面に沿って形成してあるが、1つの繊維層内に形成してもよいことは明らかである。また、凹部44,46は、截頭円錐状の曲面で形成してあるが、これらの凹部44,46を形成する曲面は、中心軸Oの方向にとって凸状又は凹状に湾曲したものであってもよい。
【0061】
このような内周面16aを形成した保持孔16内に、ガイドリング12を例えば圧入、接着、カーリング等、適宜の方法を用い、嵌合方向Hに沿って嵌合すると、突部42がガイドリング12の外周面12bを周方向から押圧して保持する。突部42が中立面Mと略平行に配置されていることにより、ガイドリング12は中心軸Oを保持孔16の中心軸線と同軸状に配置した状態に保持される。凹部44,46は外周面12bに対して非当接の状態に維持される。保持部18の前面19aおよび後面19bからガイドリング12が突出する長さは、それぞれ同じであることが好ましいが、一方の突出量を多くしてもよい。
【0062】
図5に示すように、突部42でガイドリング12を保持したときに、内周面16aの凹部44,46と外周面12bとの間に形成される空隙部Sに、フレーム14を形成する積層成形材32の特に上述のマトリックス樹脂よりも柔軟な材料で形成される固定部材48を配置し、ガイドリング12と保持部18とに接着固定してある。
【0063】
このように、固定部材48が空隙部Sを埋める状態に配置されることにより、フレーム14の保持部18が、例えば外力で撓み変形したときに、固定部材48は弾性変形し、保持部の変形を吸収することができる。これにより、ガイドリング12は、突部42で保持された姿勢を変えることなく、確実に保持される。
【0064】
このような固定部材48は、例えばエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤等で形成することが好ましく、このような材料で形成することにより、ガイドリング12を安定して保持することが可能となる。また、ガイドリング12は固定部材48により緩衝効果を持って支持される。なお、エポキシ変性シリコン、アクリル変性シリコン、変性アクリル樹脂等を固定剤48として使用することができる。
【0065】
このように形成した本実施形態の釣り糸ガイド10は、フレーム14が繊維強化樹脂で形成されているために、釣り糸ガイド10を軽量化し、フレーム14に作用する外力を撓みで緩和すると共に、フレーム14の撓み変形を固定部材48が吸収してガイドリング12を確実に保持し、その脱落を確実に防止することができる。
【0066】
固定部材48が、図5に符号48aで示すように、保持孔16に隣接する前面19a及び後面19bの内周側側面部を覆う場合には、ガイドリング12と保持部16との間に間隙が形成されている場合でも、この間隙内にに釣り糸が入り込むのを確実に防止することができる。
【0067】
更に、突部42が、保持孔16の内周面16aの周方向に沿って、軸方向の同一位置に配置されることにより、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で均等な力で保持することができ、より確実にガイドリングを保持することができる。
【0068】
図6及び図7は、他の実施形態による釣り糸ガイド10Aを示す。
【0069】
この実施形態の釣り糸ガイド10Aは上述の釣り糸ガイド10とほぼ同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
本実施形態の釣り糸ガイド10Aは、保持孔16の内周面16aから、周方向に沿って複数の支持部50を半径方向内方に突設してあり、各支持部50に、上述の突部42と凹部44,46とを、ガイドリング12の中心軸Oの方向に沿って形成してある。これらの支持部50は、径方向に対向する6つの部位に配置してあるが、3つの部位以上であれば、適宜の数とすることができる。これらの支持部50は、ガイドリング12を均等に保持するために、周方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。
【0071】
図6に示すように、各支持部50は内周面16a側から半径方向内方に向けて、周方向寸法が次第に減少する先細状に形成してあり、各支持部50の互いに周方向に対向する側面部は内周面16aから半径方向内方に滑らかに連続する曲面で形成されている。そして、これらの側面間には、軸方向溝52が形成され、この軸方向溝52内には、上述の固定部材48が充填される。この場合にも、保持孔16に隣接する前面19a及び後面19bの内周側側面部を固定部材48aで覆い、釣り糸が入り込むのを防止することが好ましい。
【0072】
このように、保持孔16の内周面16aに、周方向に沿って複数の支持部50を半径方向内方に突設し、この支持部50に突部42と凹部44,46とを形成する場合には、保持孔16の径方向に沿って保持部18が撓み変形した場合でも、この撓み変形が軸方向溝52で吸収される。このため、各支持部50に形成した突部42が確実にガイドリング12を保持する。
【0073】
各支持部50に形成する突部42は、保持孔16の内周面16aに沿って、中心軸Oに沿う同一位置に配置されることが好ましく、これにより、ガイドリング12の外周面12bを軸方向に沿う同一位置で均等に保持することができ、より確実にガイドリング12を保持することができる。
【0074】
このように形成される釣り糸ガイド10,10Aは、魚釣用リールから離隔するにつれて、保持部18およびガイドリング12の大きさが小さくなり、竿管8の軸線Cとガイドリング12の中心軸Oとの間の距離も小さくなる。突部42の配置位置、内周面16aからの突出量、複数の支持部50に突部42を形成する場合はその支持部50の数も、ガイドリング12の大きさに応じて適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
10…釣り用ガイド、12…ガイドリング、14…フレーム、16…保持孔、16a,内周面、42…突部、44,46…凹部、48…固定部材、S…空隙部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を案内するガイドリングと、このガイドリングを嵌合する保持孔を保持部に設けた繊維強化樹脂製のフレームとを有する釣り糸ガイドであって、
前記保持孔の内周面に、ガイドリングの外周面に当接する突部と、ガイドリングの外周面に対して非当接の凹部とを、前記保持孔に対するガイドリングの嵌合方向に沿って配置し、前記フレームよりも柔軟な材料で形成される固定部材を前記ガイドリングの外周面と保持孔の内周面との間に形成される空隙部に配設したことを特徴とする釣り糸ガイド。
【請求項2】
前記突部は、前記保持部の前面と後面との間で、前記保持孔の軸方向に沿う中間部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の釣り糸ガイド。
【請求項3】
前記突部は、前記前面と後面との間の軸方向に沿う中心位置から、前面側又は後面側に偏倚した位置に形成されることを特徴とする請求項2に記載の釣り糸ガイド。
【請求項4】
前記保持孔の内周面に、周方向に沿って複数の支持部を半径方向内方に突設し、この支持部に前記突部と凹部とが形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の釣り糸ガイド。
【請求項5】
前記固定部材は、前記保持孔に隣接する保持部の内周側側面部を覆うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の釣り糸ガイド。
【請求項6】
前記突部は、前記保持孔の内周面の周方向に沿って、軸方向の同一位置に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の釣り糸ガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−223917(P2011−223917A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96310(P2010−96310)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】