釣竿先端部構造とその製造方法
【課題】竿杆損傷を防止しつつ釣竿先端部品の係合状態の信頼性を高めた釣竿穂先部構造とその製造方法を提供する。
【解決手段】竿杆穂先領域10の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部10Bよりも径の大きな抜止部10Aに形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部TAに形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品BAを被せ、固定している。
【解決手段】竿杆穂先領域10の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部10Bよりも径の大きな抜止部10Aに形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部TAに形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品BAを被せ、固定している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿先端部に釣竿先端部品を装着させた構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿は竿杆の先端部に、釣竿先端部品の構成要素としてのリリヤンやフック部品を設けたり、トップガイドを装着したりして目的の釣竿を形成している。トップガイド装着例として下記特許文献1があり、フック装着例として特許文献2がある。例えば特許文献1では、竿杆先端部に凹入部を設け、この領域に、トップガイド本体を保持した筒状ホルダーを外嵌した後、前記凹入部に対応する部分の筒状ホルダーをカシメ処理してトップガイドを装着している。このように構成すればトップガイドの抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−20406号公報
【特許文献2】実用新案登録第3085450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、竿杆先端部は細径であり、筒状の部材をカシメ処理して、竿杆先端部に設けた凹入部と確実に係合させるには、或る程度強い力でかしめる必要がある。その際、細径の竿杆先端部の凹入部を損傷させる恐れが高い。また、この損傷を恐れてカシメ処理を僅かにすれば、今度は逆に係合が不十分となり、釣竿使用中にトップガイドが外れる恐れが生じる。
依って本発明は、竿杆損傷を防止しつつ釣竿先端部品の係合状態の信頼性を高めた釣竿穂先部構造とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて本願第1の発明は、竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品を被せ、固定したことを特徴とする釣竿先端部構造を提供する。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の前記抜止部が後細テーパ部から成るか又は後細テーパ部を有している。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の前記樋状基部と覆部品は、その外側から紐状部材で巻回し、合成樹脂材で糸止め処理を施して固定すると共に、該紐状部材の巻回と糸止め処理は、前記樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至っている。
【0007】
第4の発明は、竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成し、
当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、その内周面を前記抜止部に沿った形状に形成しておき、
前記抜止部を前記樋状基部に挿入させ、
更に前記抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に覆部品を被せ、固定する
ことを特徴とする釣竿先端部の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明では、筒状基部ではなくて、円周の一部を欠いた樋状基部によって竿杆の穂先先端部の抜止部を受け、更に円周の残り部を他部品としての覆部品で覆い、これらを固定するため、釣竿先端部品の基部を穂先先端部と重ねた状態でカシメ処理する必要がなく、竿杆穂先先端部を損傷させたり、カシメ不足を生じる恐れが防止でき、信頼性の高い釣竿先端部構造となっている。また、抜止部の存在によって釣竿先端部品の抜け止めが成され、釣竿先端部の信頼性が向上する。
【0009】
第2の発明では、抜止部が後細テーパ部から成るかそれを有するため、釣竿先端部品の樋状基部の内周面を予め後細テーパ状に形成しておけばよく、互いの組付けが容易であって釣竿先端部の製造が容易となる。
第3の発明では、樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至って紐状部材の巻回と糸止め処理を行うため、穂先先端部に対する樋状基部と覆部品の後端による応力集中の発生を防止できる。
【0010】
第4の発明では、釣竿先端部品の樋状基部の内周面を、予め竿杆穂先領域の抜止部に沿った形状に形成しておくため、竿杆穂先領域に組み付ける際に、カシメ等の後加工処理が不要となり、組付けの際に竿杆穂先領域を損傷させたり、カシメ不足等の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る釣竿先端部の第1実施形態例の縦断面図である。
【図2】図1の矢視線B−Bによる横断面図である。
【図3】図1の釣竿先端部の組立前である製造途中図である。
【図4】図3の釣竿先端部の製造途中図を上方から見た図である。
【図5】図3、図4で示す製造組立を終えた状態の製造途中の他の図である。
【図6】第2実施形態例の縦断面図である。
【図7】図6の矢視線G−Gによる横断面図である。
【図8】図6の釣竿先端部の組立前である製造途中図である。
【図9】図8の釣竿先端部の製造途中図を上方から見た図である。
【図10】図8、図9で示す製造組立を終えた状態の製造途中の他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1〜図5に示す通り、釣竿先端部品としてトップガイドを装着させる釣竿先端部構造とその製造方法の第1実施形態例を説明する。エポキシ樹脂等の合成樹脂マトリックスを炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製の中実竿杆の穂先領域10の先端部10Aを後細状(円錐台形状)の抜止部10Aに形成している。その後端位置の最小径部10B付近の領域が直ぐ後ろ部であり、抜止部は該直ぐ後ろ部よりも大径である。最小径部10Bから後方所定位置までは、その後方の緩やかなテーパ率の前細状か一定径である本体領域10Dよりも大きなテーパ率の前細状領域10Cである。
【0013】
セラミックスや金属製のガイドリングGを保持するトップガイド保持体Tは、金属や繊維強化樹脂材で形成できる。ガイドリング保持部TCと、支脚部TBと、装着基部である樋状基部TAとを有している。この樋状基部は筒体ではなく筒体を半割にしたような樋状であり、釣竿後方側端部は開口している。また、その内周面TSは、竿杆穂先領域10の抜止部10Aと前細状領域10Cと本体領域10Dの一部に沿った形状に形成されている。この例では樋状基部TAの外周は円筒状である。この例の金属製トップガイド保持体Tの樋状基部TAは、鋳造や鍛造でも形成でき、また適宜な手法で形成した素材を切削や研削することでも形成できる。このことは後述の第2実施形態例やその他の場合にも同様である。
【0014】
更には、この図示例とは異なるが、板金部材を湾曲させて半割の樋状に形成した後、長さ方向中間領域を絞るように形成して樋状基部となし、樋状基部となるこの要素部品を支脚部TBに溶接接続してトップガイド保持体Tを構成することもできる。こうして樋状基部を形成すれば、その外周は当然にして、最小径部10Bに対応する部分が細径化して窪んでいる。下記の覆部品BAについても、上述したのと同様に鋳造、鍛造、切削、研削等の他、板部材を使用しても形成できる。
【0015】
ガイドリングGを保持し、前記樋状基部TAを有するトップガイド保持体Tの樋状基部の内周面TSに、竿杆穂先領域10の抜止部10A等を挿入させると、樋状基部の径方向反対側の竿杆は露出したままである。そこに、樋状基部と類似形状の覆部品BAを被せる。即ち、覆部品BAの内周面BSは、竿杆穂先領域10の抜止部10Aと前細状領域10Cと本体領域10Dの一部に沿った形状に形成されている。覆部品BAを被せた状態の平面図が図5に図示されている。
【0016】
その後、樋状基部と覆部品の上から紐状部材(糸状部材)20を巻回し、さらにその巻回は、樋状基部と覆部品の前端よりも前方側から、樋状基部と覆部品の後端を過ぎた本体領域10Dにまで至っており、その紐状部材の領域に糸止め剤30を塗布する。この紐状部材と糸止め剤とは、樋状基部TAと覆部品BAとを竿杆に保持させ固定すると共に、釣竿が撓んだ際、樋状基部TAと覆部品BAとの後端が竿杆穂先領域10に及ぼす応力集中を防止する。また、樋状基部TAや覆部品BAを竿杆穂先領域10に組み付ける際に、夫々、接着剤を使用して、樋状基部TAと覆部品BAを固定したり、更にこれらを竿杆に固定してもよい。
【0017】
また、樋状基部TAと覆部品BAの各後端位置は、抜止部10Aの途中位置であったり、前細状領域10Cの途中位置でもよい。なお、樋状基部TAが受けている竿杆の径方向反対側に覆部品BAを被せるだけでなく、両部材TA,BAは互いに凹凸等で係合する係合部を有し、互いに係合した状態で竿杆に対して仮止め作用をなし、その後固定してもよい。この係合は固定後の釣竿先端部品と竿杆穂先領域との固定力の向上にも寄与し得る。
【0018】
次に、図6〜図10に図示する第2実施形態例を説明する。この例の釣竿先端部品としては釣糸基部のチチワを装着させるためのフック部材である。このフック部材は、チチワを係止させる係止部材40と、その基部40Aを回動自在に保持して竿杆穂先領域10に装着させる装着部材50とを有している。この例では両部材共に金属製である。装着部材50の先部には環状凹部50Kが設けられており、係止部材40の基部40Aも前記環状凹部50Kに係合する凹部40Kを設けており、これらが係合し合って係止部材40が回動自在になっている。
【0019】
竿杆穂先領域10の先端部である抜止部10A’は、最小径部10B’の前後に亘ってくびれた環状凹部の前側半分を含んでいる。その直ぐ後ろ部は最小径部10B’付近であり、抜止部10A’は該直ぐ後ろ部よりも大径である。環状凹部の後方は緩やかなテーパ率の前細状か一定径の本体領域10Dである。前記装着部材50の装着用の樋状基部50Aは筒体ではなく筒体を半割にしたような樋状であり、釣竿後方側端部は開口している。また、その内周面50Sは、竿杆穂先領域10の抜止部10A’と環状凹部の後側半分と本体領域10Dの一部とに沿った形状に形成されている。この例では樋状基部50Aの外周は円筒状である。第1実施形態例で述べたのと同様に、樋状基部を鋳造や削り出しでなくて、板金部材を使って形成することもできる。
【0020】
樋状の覆部材52Aも第1実施形態例の覆部材BAと同様であり、その内周面52Sは、竿杆穂先領域10の抜止部10A’と環状凹部の後側半分と本体領域10Dの一部とに沿った形状に形成されている。覆部品52Aを被せた状態の平面図が図10に図示されている。その後の紐状部材20の巻回や糸止め材30の塗布のことは第1実施形態例の場合と同様である。
【0021】
釣竿先端部品は上記2種類の実施形態例のものには限らない。また、釣竿先端部品の竿杆穂先領域への装着基部は円筒ではなくて円周方向に2つの部材に分割しているが、3つ以上の部材に分割していてもよい。何れにしても、その装着基部を、円筒状に形成するのではなく、円周方向に2つ以上に分割した内の一つである樋状に形成するため、その内周面を予め抜止部の形状に沿った形状に形成しておくことができ、その形状で竿杆穂先領域に組付けできる。従って、釣竿先端部品を竿杆穂先領域に装着させる際にかしめたりする後加工処理の必要性が無く、竿杆を損傷させたり、カシメ不足を生じるような不具合が防止できる。
【0022】
更には、樋状基部と覆部品の竿杆への固定は、接着剤を使用した固定や、紐状部材を巻回して合成樹脂で糸止めする固定に限らず、樋状基部と覆部品を竿杆穂先領域に被せた外側に合成樹脂シート材で被覆する等、種々の方法で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、竿杆穂先領域先端部に各種釣竿先端部品を装着する釣竿に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
10 竿杆穂先領域
10A,10A’ 抜止部
20 紐状部材
30 糸止め剤
40 係止部材
50 係止部材用の装着部材
50A 装着部材の樋状基部
52A 覆部材
BA 覆部材
T トップガイド
TA トップガイドの樋状基部
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿先端部に釣竿先端部品を装着させた構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿は竿杆の先端部に、釣竿先端部品の構成要素としてのリリヤンやフック部品を設けたり、トップガイドを装着したりして目的の釣竿を形成している。トップガイド装着例として下記特許文献1があり、フック装着例として特許文献2がある。例えば特許文献1では、竿杆先端部に凹入部を設け、この領域に、トップガイド本体を保持した筒状ホルダーを外嵌した後、前記凹入部に対応する部分の筒状ホルダーをカシメ処理してトップガイドを装着している。このように構成すればトップガイドの抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−20406号公報
【特許文献2】実用新案登録第3085450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、竿杆先端部は細径であり、筒状の部材をカシメ処理して、竿杆先端部に設けた凹入部と確実に係合させるには、或る程度強い力でかしめる必要がある。その際、細径の竿杆先端部の凹入部を損傷させる恐れが高い。また、この損傷を恐れてカシメ処理を僅かにすれば、今度は逆に係合が不十分となり、釣竿使用中にトップガイドが外れる恐れが生じる。
依って本発明は、竿杆損傷を防止しつつ釣竿先端部品の係合状態の信頼性を高めた釣竿穂先部構造とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて本願第1の発明は、竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品を被せ、固定したことを特徴とする釣竿先端部構造を提供する。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の前記抜止部が後細テーパ部から成るか又は後細テーパ部を有している。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の前記樋状基部と覆部品は、その外側から紐状部材で巻回し、合成樹脂材で糸止め処理を施して固定すると共に、該紐状部材の巻回と糸止め処理は、前記樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至っている。
【0007】
第4の発明は、竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成し、
当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、その内周面を前記抜止部に沿った形状に形成しておき、
前記抜止部を前記樋状基部に挿入させ、
更に前記抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に覆部品を被せ、固定する
ことを特徴とする釣竿先端部の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明では、筒状基部ではなくて、円周の一部を欠いた樋状基部によって竿杆の穂先先端部の抜止部を受け、更に円周の残り部を他部品としての覆部品で覆い、これらを固定するため、釣竿先端部品の基部を穂先先端部と重ねた状態でカシメ処理する必要がなく、竿杆穂先先端部を損傷させたり、カシメ不足を生じる恐れが防止でき、信頼性の高い釣竿先端部構造となっている。また、抜止部の存在によって釣竿先端部品の抜け止めが成され、釣竿先端部の信頼性が向上する。
【0009】
第2の発明では、抜止部が後細テーパ部から成るかそれを有するため、釣竿先端部品の樋状基部の内周面を予め後細テーパ状に形成しておけばよく、互いの組付けが容易であって釣竿先端部の製造が容易となる。
第3の発明では、樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至って紐状部材の巻回と糸止め処理を行うため、穂先先端部に対する樋状基部と覆部品の後端による応力集中の発生を防止できる。
【0010】
第4の発明では、釣竿先端部品の樋状基部の内周面を、予め竿杆穂先領域の抜止部に沿った形状に形成しておくため、竿杆穂先領域に組み付ける際に、カシメ等の後加工処理が不要となり、組付けの際に竿杆穂先領域を損傷させたり、カシメ不足等の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る釣竿先端部の第1実施形態例の縦断面図である。
【図2】図1の矢視線B−Bによる横断面図である。
【図3】図1の釣竿先端部の組立前である製造途中図である。
【図4】図3の釣竿先端部の製造途中図を上方から見た図である。
【図5】図3、図4で示す製造組立を終えた状態の製造途中の他の図である。
【図6】第2実施形態例の縦断面図である。
【図7】図6の矢視線G−Gによる横断面図である。
【図8】図6の釣竿先端部の組立前である製造途中図である。
【図9】図8の釣竿先端部の製造途中図を上方から見た図である。
【図10】図8、図9で示す製造組立を終えた状態の製造途中の他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1〜図5に示す通り、釣竿先端部品としてトップガイドを装着させる釣竿先端部構造とその製造方法の第1実施形態例を説明する。エポキシ樹脂等の合成樹脂マトリックスを炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製の中実竿杆の穂先領域10の先端部10Aを後細状(円錐台形状)の抜止部10Aに形成している。その後端位置の最小径部10B付近の領域が直ぐ後ろ部であり、抜止部は該直ぐ後ろ部よりも大径である。最小径部10Bから後方所定位置までは、その後方の緩やかなテーパ率の前細状か一定径である本体領域10Dよりも大きなテーパ率の前細状領域10Cである。
【0013】
セラミックスや金属製のガイドリングGを保持するトップガイド保持体Tは、金属や繊維強化樹脂材で形成できる。ガイドリング保持部TCと、支脚部TBと、装着基部である樋状基部TAとを有している。この樋状基部は筒体ではなく筒体を半割にしたような樋状であり、釣竿後方側端部は開口している。また、その内周面TSは、竿杆穂先領域10の抜止部10Aと前細状領域10Cと本体領域10Dの一部に沿った形状に形成されている。この例では樋状基部TAの外周は円筒状である。この例の金属製トップガイド保持体Tの樋状基部TAは、鋳造や鍛造でも形成でき、また適宜な手法で形成した素材を切削や研削することでも形成できる。このことは後述の第2実施形態例やその他の場合にも同様である。
【0014】
更には、この図示例とは異なるが、板金部材を湾曲させて半割の樋状に形成した後、長さ方向中間領域を絞るように形成して樋状基部となし、樋状基部となるこの要素部品を支脚部TBに溶接接続してトップガイド保持体Tを構成することもできる。こうして樋状基部を形成すれば、その外周は当然にして、最小径部10Bに対応する部分が細径化して窪んでいる。下記の覆部品BAについても、上述したのと同様に鋳造、鍛造、切削、研削等の他、板部材を使用しても形成できる。
【0015】
ガイドリングGを保持し、前記樋状基部TAを有するトップガイド保持体Tの樋状基部の内周面TSに、竿杆穂先領域10の抜止部10A等を挿入させると、樋状基部の径方向反対側の竿杆は露出したままである。そこに、樋状基部と類似形状の覆部品BAを被せる。即ち、覆部品BAの内周面BSは、竿杆穂先領域10の抜止部10Aと前細状領域10Cと本体領域10Dの一部に沿った形状に形成されている。覆部品BAを被せた状態の平面図が図5に図示されている。
【0016】
その後、樋状基部と覆部品の上から紐状部材(糸状部材)20を巻回し、さらにその巻回は、樋状基部と覆部品の前端よりも前方側から、樋状基部と覆部品の後端を過ぎた本体領域10Dにまで至っており、その紐状部材の領域に糸止め剤30を塗布する。この紐状部材と糸止め剤とは、樋状基部TAと覆部品BAとを竿杆に保持させ固定すると共に、釣竿が撓んだ際、樋状基部TAと覆部品BAとの後端が竿杆穂先領域10に及ぼす応力集中を防止する。また、樋状基部TAや覆部品BAを竿杆穂先領域10に組み付ける際に、夫々、接着剤を使用して、樋状基部TAと覆部品BAを固定したり、更にこれらを竿杆に固定してもよい。
【0017】
また、樋状基部TAと覆部品BAの各後端位置は、抜止部10Aの途中位置であったり、前細状領域10Cの途中位置でもよい。なお、樋状基部TAが受けている竿杆の径方向反対側に覆部品BAを被せるだけでなく、両部材TA,BAは互いに凹凸等で係合する係合部を有し、互いに係合した状態で竿杆に対して仮止め作用をなし、その後固定してもよい。この係合は固定後の釣竿先端部品と竿杆穂先領域との固定力の向上にも寄与し得る。
【0018】
次に、図6〜図10に図示する第2実施形態例を説明する。この例の釣竿先端部品としては釣糸基部のチチワを装着させるためのフック部材である。このフック部材は、チチワを係止させる係止部材40と、その基部40Aを回動自在に保持して竿杆穂先領域10に装着させる装着部材50とを有している。この例では両部材共に金属製である。装着部材50の先部には環状凹部50Kが設けられており、係止部材40の基部40Aも前記環状凹部50Kに係合する凹部40Kを設けており、これらが係合し合って係止部材40が回動自在になっている。
【0019】
竿杆穂先領域10の先端部である抜止部10A’は、最小径部10B’の前後に亘ってくびれた環状凹部の前側半分を含んでいる。その直ぐ後ろ部は最小径部10B’付近であり、抜止部10A’は該直ぐ後ろ部よりも大径である。環状凹部の後方は緩やかなテーパ率の前細状か一定径の本体領域10Dである。前記装着部材50の装着用の樋状基部50Aは筒体ではなく筒体を半割にしたような樋状であり、釣竿後方側端部は開口している。また、その内周面50Sは、竿杆穂先領域10の抜止部10A’と環状凹部の後側半分と本体領域10Dの一部とに沿った形状に形成されている。この例では樋状基部50Aの外周は円筒状である。第1実施形態例で述べたのと同様に、樋状基部を鋳造や削り出しでなくて、板金部材を使って形成することもできる。
【0020】
樋状の覆部材52Aも第1実施形態例の覆部材BAと同様であり、その内周面52Sは、竿杆穂先領域10の抜止部10A’と環状凹部の後側半分と本体領域10Dの一部とに沿った形状に形成されている。覆部品52Aを被せた状態の平面図が図10に図示されている。その後の紐状部材20の巻回や糸止め材30の塗布のことは第1実施形態例の場合と同様である。
【0021】
釣竿先端部品は上記2種類の実施形態例のものには限らない。また、釣竿先端部品の竿杆穂先領域への装着基部は円筒ではなくて円周方向に2つの部材に分割しているが、3つ以上の部材に分割していてもよい。何れにしても、その装着基部を、円筒状に形成するのではなく、円周方向に2つ以上に分割した内の一つである樋状に形成するため、その内周面を予め抜止部の形状に沿った形状に形成しておくことができ、その形状で竿杆穂先領域に組付けできる。従って、釣竿先端部品を竿杆穂先領域に装着させる際にかしめたりする後加工処理の必要性が無く、竿杆を損傷させたり、カシメ不足を生じるような不具合が防止できる。
【0022】
更には、樋状基部と覆部品の竿杆への固定は、接着剤を使用した固定や、紐状部材を巻回して合成樹脂で糸止めする固定に限らず、樋状基部と覆部品を竿杆穂先領域に被せた外側に合成樹脂シート材で被覆する等、種々の方法で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、竿杆穂先領域先端部に各種釣竿先端部品を装着する釣竿に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
10 竿杆穂先領域
10A,10A’ 抜止部
20 紐状部材
30 糸止め剤
40 係止部材
50 係止部材用の装着部材
50A 装着部材の樋状基部
52A 覆部材
BA 覆部材
T トップガイド
TA トップガイドの樋状基部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品を被せ、固定したことを特徴とする釣竿先端部構造。
【請求項2】
前記抜止部は後細テーパ部から成るか又は後細テーパ部を有している請求項1記載の釣竿先端部構造。
【請求項3】
前記樋状基部と覆部品は、その外側から紐状部材で巻回し、合成樹脂材で糸止め処理を施して固定すると共に、該紐状部材の巻回と糸止め処理は、前記樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至っている請求項1又は請求項2記載の釣竿先端部構造。
【請求項4】
竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成し、
当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、その内周面を前記抜止部に沿った形状に形成しておき、
前記抜止部を前記樋状基部に挿入させ、
更に前記抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に覆部品を被せ、固定する
ことを特徴とする釣竿先端部の製造方法。
【請求項1】
竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成しており、当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、該樋状基部の内周面は前記抜止部の形状に沿っており、前記抜止部を前記樋状基部で受け、更に該抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に、その内周面が前記抜止部の形状に沿った覆部品を被せ、固定したことを特徴とする釣竿先端部構造。
【請求項2】
前記抜止部は後細テーパ部から成るか又は後細テーパ部を有している請求項1記載の釣竿先端部構造。
【請求項3】
前記樋状基部と覆部品は、その外側から紐状部材で巻回し、合成樹脂材で糸止め処理を施して固定すると共に、該紐状部材の巻回と糸止め処理は、前記樋状基部と覆部品の後端位置よりも後方の竿杆領域にまで至っている請求項1又は請求項2記載の釣竿先端部構造。
【請求項4】
竿杆穂先領域の先端部を、該先端部の直ぐ後ろ部よりも径の大きな抜止部に形成し、
当該抜止部に装着させる釣竿先端部品は、その装着基部を円周の一部を欠いた樋状基部に形成すると共に、その内周面を前記抜止部に沿った形状に形成しておき、
前記抜止部を前記樋状基部に挿入させ、
更に前記抜止部の前記樋状基部に対する径方向反対側に覆部品を被せ、固定する
ことを特徴とする釣竿先端部の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−95542(P2012−95542A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243385(P2010−243385)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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