説明

釣竿用リールシートおよび釣竿

【課題】 魚釣用リールのリール脚のリールシートへの固定力を向上させ、ガタツキや緩みを防止することが可能なリールシートを提供すること。
【解決手段】 釣竿用リールシート10は、釣竿用リール6のリール脚6aが載置されるリール脚載置面12aを有するリールシート本体12と、リール脚をリール脚載置面に着脱可能に固定する移動フード22とを有する。リールシートは、裏面保持部28aを有するリール脚保持部28を有する。この裏面保持部28aは、リール脚載置面と移動フードとの間の移動フードに覆われる領域内に配置されているとともに、移動フードによりリール脚がリール脚載置面に固定されたときにリール脚の裏面とリール脚載置面との間に挟持されてリール脚の裏面を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚釣用リールを取り付ける釣竿用リールシートおよびこの釣竿用リールシートを有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣竿に魚釣用リールを取り付けるリールシートは、リールのリール脚を載置するリール脚載置面をリールシート本体に形成し、このリール脚載置面の長手方向に沿って対向配置した1対のフードにより、リール脚をこのリール脚載置面上に保持する。これら1対のフードは、それぞれがリール脚を受け入れる開口部を有し、一方をリール脚載置面に沿って他方に向けて移動し、これらの1対のフード間にリール脚を挟持させることにより、リールを釣竿に装着する。
このようなリールシートには、金属製フードをプラスチック製螺環の前端に回転自在に係合し、この螺環の回転にしたがって筒状リールシート上を長手方向に移動し、対向する固定フードと共に、開口部で受け入れたリール脚をリール脚載置面に押圧し、保持するものがある(例えば特許文献1参照)。すなわち、リール脚のリールシートへの固定力はフード内面によりリール脚の表面が押し下げられ、リール脚がリール脚載置面に押し付けられることで発生している。
【特許文献1】特開平8−196170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、リール脚を固定した状態でフードに周方向の力を加えるとフードが回転することがあり、フードが回転するとリール脚のリールシートへの固定力が弱まり、ガタツキや緩みを生じることがある。すなわち、上述したように、リール脚をリールシートへ固定する際、フード内面によりリール脚の表面を押し下げてリール脚がリール脚載置面に押し付けるだけでは充分な固定力が得られない場合があり、リール脚をリールシートに押し付ける固定に改善の必要性がある。
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、魚釣用リールのリール脚のリールシートへの固定力を向上させ、ガタツキや緩みを防止することが可能な釣竿用リールシート及びこのような釣竿用リールシートを有する釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、この発明に係る釣竿用リールシートは、釣竿用リールのリール脚が載置されるリール脚載置面を有するリールシート本体と、前記リール脚を前記リール脚載置面に着脱可能に固定する移動フードとを有し、前記リール脚載置面と前記移動フードとの間の前記移動フードに覆われる領域内に配置されているとともに、前記移動フードにより前記リール脚が前記リール脚載置面に固定されたときに前記リール脚の裏面と前記リール脚載置面との間に挟持されて前記リール脚の裏面を保持する裏面保持部を有するリール脚保持部を備えている。
また、前記リール脚保持部は、前記リール脚載置面と前記移動フードとの間の前記移動フードに覆われる領域内に配置されているとともに、前記移動フードにより前記リール脚が前記リール脚載置面に固定されたときに前記リール脚の表面と前記移動フードとの間に挟持されて前記リール脚の表面を保持する表面保持部をさらに有することが好ましい。
また、前記裏面保持部および前記表面保持部は、一体的に形成されていることが好ましい。
また、前記リール脚保持部は、前記移動フードに設けられていることが好ましい。
また、前記裏面保持部は、前記リール脚載置面に設けられていることが好ましい。
また、前記裏面保持部および前記リール脚載置面の少なくとも一方には、前記リール脚を前記裏面保持部および前記リール脚載置面から滑るのを防止する滑り止めが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、移動フードがリール脚をリールシート本体のリール脚載置面に載置した状態で固定しているときに、リール脚の裏面とリール脚載置面との間にリール脚保持部の裏面保持部が挟持された状態で配設されるようにしたことによって、リール脚でリール脚保持部をリール脚載置面に押し付けることができる。このようにリール脚でリール脚保持部をリール脚載置面に押し付ける押し付け力によって、リール脚のリール脚載置面への固定力を向上させることができる。このため、フードとリール脚載置面との間に配設される魚釣用リールのリール脚について、ガタツキや緩みを防止することが可能な魚釣用リールシートを提供することができるとともに、このようなリールシートを有する釣竿を提供することができる。
【0006】
リール脚保持部のうちリール脚の表面を保持する表面保持部によってリール脚がリールシート本体の周方向に移動することを防止することができる。したがって、表面保持部と裏面保持部とが協働することにより、リールシートにリール脚を取り付けた状態でリール脚がリール脚載置面に対してガタ付きが生じたり、緩みが生じたりすることをより確実に防止できる。
裏面保持部と表面保持部とを一体化することにより、両者の作用をより確実に連動させることができ、リールシートにリール脚を取り付けた状態でリール脚がリール脚載置面に対してガタ付きが生じたり、緩みが生じたりすることをより確実に防止できる。
リール脚保持部が移動フードに設けられていることによって、確実にリール脚保持部の裏面保持部をリール脚の裏面とリール脚載置面との間に挟持することができる。
裏面保持部がリール脚載置面に設けられていることによって、リール脚がリール脚載置面に配置されたときに裏面保持部からリール脚がズレるのを防止することができる。
裏面保持部およびリール脚載置面の少なくとも一方に滑り止めが形成されることによって、リール脚保持部と協働して、より確実にリール脚をリール脚載置面に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明する。
【0008】
第1の実施の形態について図1ないし図7を用いて説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態によるリールシート10を用いた釣竿2を示す。
この釣竿2は、振り出し式の磯上物竿として形成してあり、穂先側の竿管を順に収納可能な最も大径の元側竿管4にリールシート10を設け、このリールシート10に魚釣用リール6を取り付けてある。この釣竿2には、竿管の外面に釣糸が付着するのを防止する釣糸ガイド8が、魚釣用リール6と同じ側で、釣竿2の穂先に向けて所定間隔をおいて固定され、竿先にはトップガイド8aが取り付けられている。このような釣糸ガイド8の個数および配置位置は、図示の例に限らず、任意に設定することが可能である。
【0009】
このような外通し式に代えて、魚釣用リール6から繰出した釣糸を釣竿2の竿管内に導入し、この竿管内で案内した後、中空構造の穂先竿から外部に導出する中通し式とすることも可能である。また、釣竿2は振出し式に限らず、いんろう継ぎ、並継ぎあるいは逆並継ぎ等の適宜の継ぎ形式のものであってもよい。
【0010】
リールシート10の後述するリールシート本体12の後端側には、例えばEVA等の柔軟な合成樹脂、あるいは、コルク等の天然材により、滑り難くかつ柔軟で握持し易く形成された中空管状構造のグリップ(後部握り部)4aが例えば接着剤を用いて一体的に結合されている。本実施形態では、リールシート本体12の後端に形成した凹部にグリップ4aの先端部が嵌合して、例えば接着剤を用いて強固に固着されている。このグリップ4aは、中空構造あるいは中実構造のいずれであってもよい。
【0011】
図2、図3および図4(A)から図4(C)に示すように、リールシート10は、魚釣用リール6のリール脚6aが載置されるリール脚載置面12aをその軸方向に沿って有するリールシート本体12を備えている。リールシート本体12は、図4(B)に示すように、全体として筒状に形成されている。リールシート本体12は、合成樹脂(例えばポリアミド系合成繊維やABS樹脂等)あるいは金属(例えばSUS、アルミニウム、チタン、真鍮等)等の適宜の材料から形成されている。
【0012】
このリールシート本体12は、リール脚載置面12aの反対側を僅かに膨出させ、握持する手で握り込んだときに、母指球またはその近部を支えることで握持し易い湾曲形状の外面を有する握り部12bを形成してある。
【0013】
リールシート本体12のリール脚載置面12aは、平坦または、リールシート本体12のリール脚載置面12aに隣接する他の周方向の部位(例えば握り部12b)よりも大きな曲率をもって略平坦に形成され、かつ、図2および図3に示す下側にリールシート本体12の軸方向に延びた状態に形成されている。リールシート本体12は、一端(竿先側)に固定フード14が一体的に配設されている。リールシート本体12のリール脚載置面12aの一端は、固定フード14の内部に配設されている。リールシート本体12は、他端(竿元側)に筒状部16およびネジ部18が一体的に設けられている。筒状部16には、リールシート本体12のリール脚載置面12aに連続して、又は、僅かな段差をもって筒状部載置面16aが形成されている。図6(A)に示すように、本実施形態では、リール脚載置面12aと筒状部載置面16aとの間は、リール脚6aの裏面(底面)6bが載置される後述するリール脚保持部28の裏面保持部28aおよびリール脚載置面12aの間をできるだけ面一にするように、リール脚保持部28の裏面保持部28aが配設される分の段差が形成されている。筒状部載置面16aは、ネジ部18にも連続して形成されている。筒状部16およびネジ部18の外側には、移動フード22が軸方向に移動自在に装着される。
【0014】
図2および図3に示すように、リールシート本体12の固定フード14には、リール脚6aの一端を受け入れる開口部14aが移動フード22に向けて開口されている。この固定フード14の開口部14aは、リールシート本体12の前方に向けて次第に内面の高さが低くなるように形成されている。この開口部14aにリール脚6aの一端を受け入れ、リール脚6aの一端が開口部14aにより押圧されたときに、このリール脚6aを固定フード14内に配設されたリール脚載置面12a側に向けて付勢する(押し付ける)。
【0015】
なお、固定フード14は、リールシート本体12に一体的に配設されている場合に限らず、金属又は硬質の合成樹脂でリールシート本体12と別体構造に形成し、リールシート本体12に強固に固定してもよい。金属で形成する場合には、リール6のリール脚6aに当接する部位に樹脂製部材を配置し、金属間の接触による各部材の損傷を防止することが好ましい。
【0016】
図5(A)および図5(B)に示すように、本実施形態の移動フード22は、リールシート本体12のネジ部18が挿通される軸方向孔22aを貫通させたスリーブ状に形成してあり、締付用ナット24と、フード本体26と、このフード本体26の内側に固定されたリール脚保持部28とを有する。フード本体26の後端には締付用ナット24が回転自在に連結されている。そして、締付用ナット24は例えば合成樹脂、金属、ポリアミド系合成繊維、ABS樹脂、アルミニウム、真鍮等により形成され、フード本体26は例えば金属(SUS、真鍮)等により形成され、リール脚保持部28は例えばポリアミド系合成繊維等により形成されている。リール脚保持部28は、後述する連結部28cで裏面保持部(フード挟持部)28aおよび表面保持部28bを適当な範囲でバネ性をもって開閉するように、適度な弾性を有する材料で形成される。
【0017】
締付用ナット24はネジ部18に螺合する雌ネジを内周側に形成し、外周側は滑り難く回転操作し易く形成されている。締付用ナット24の前端部は、フード本体26の後端部と相対回転自在でかつ抜け止めされた状態で連結されている。図5(A)および図6(A)に示す実施形態では、締付用ナット24の前端で径方向外方に拡径した状態に延びるフランジ部に、フード本体26の後端で径方向内方に縮径した状態に延びるフランジ部が嵌合され、自在に相対回転を可能としつつ抜け止めしている。なお、締付用ナット24とフード本体26との連結構造は、逆の構造であっても良い。すなわち、締付用ナット24の前端の径方向内方に縮径した状態に延びるフランジ部に、フード本体26の後端の径方向外方に拡径した状態に延びるフランジ部が嵌合され、自在に相対回転を可能としつつ抜け止めすることも好ましい。また、径方向内方や径方向外方に延びるフランジ部は、全周にわたって連続することが好ましいが、不連続であってもよい。
【0018】
締付用ナット24は、リールシート本体12のネジ部18に螺合され、かつ、回転可能に配設されている。フード本体26は締付用ナット24に連結されている。このため、ネジ部18に対して締付用ナット24を正方向に回転させると、締付用ナット24が固定フード14に対して近接するとともに移動フード22のフード本体26が固定フード14に対して近接する。一方、ネジ部18に対して締付用ナット24を逆方向に回転させると締付用ナット24が固定フード14に対して離隔するとともに移動フード22のフード本体26が固定フード14に対して離隔する。
【0019】
この締付用ナット24の回転によりリールシート本体12の軸方向に移動されるフード本体26は、前方および内周側に開口し、魚釣用リール6のリール脚6aの後端を受け入れるリール脚保持部28が配設された状態で固定される開口部26aを有する。このフード本体26の開口部26aは、移動フード22をリールシート本体12のネジ部18に装着したときに、固定フード14の開口部14aに対向する。フード本体26の開口部26aは、固定フード14の開口部14aとは逆に、後方に向けて次第に内面の高さが低くなるように形成されている。
【0020】
リール脚保持部28は、リールシート本体12のリール脚載置面12aに対向するリール脚6aの裏面(底面)6bが配設される略板状の裏面保持部28aと、リール脚6aの表面(リール脚6aの裏面以外の曲面)6cに当接される略曲面板状の表面保持部28bとを備えている。これら裏面保持部28aと表面保持部28bとは固定フード14に対して遠位の位置にある連結部28cにより一体的に形成されている。図6(B)および図7(B)に示すように、この実施形態では、裏面保持部28aと表面保持部28bとのうち連結部28c以外の部分は、分離されている。また、裏面保持部28aおよび表面保持部28bの両者は、移動フード22のフード本体26によってリール脚6aを固定する領域(リール脚6aをリール脚載置面12aに対して固定するための固定力を及ぼす範囲)内に配設されている。
【0021】
図6(A)に示すように、フード本体26には、貫通孔26bが形成されている。一方、リール脚保持部28の表面保持部28bには、突部28dが形成されている。そして、フード本体26の貫通孔26bには、リール脚保持部28の表面保持部28bの突部28dが嵌合され、かつ、接着剤等で固定されることにより一体化されている。このため、フード本体26がリールシート本体12の軸方向に移動すると、一体的にリール脚保持部28も移動する。なお、フード本体26の開口部26aのうちの固定フード14に近接する端部は、リール脚保持部28の表面保持部28bのうちの固定フード14に近接する端部と略面一、又は、表面保持部28bが突出することが好ましい。このような形状とすることにより、リール脚6aの後端がフード本体26に直接接触することなく、リール脚6aの後端が表面保持部28bにより保持される。
【0022】
表面保持部28bの内側の側面は、リール脚6aの表面6cの脚側面に沿って当接するように裏面保持部28aに向かって曲面状に形成されている。また、リール脚保持部28の表面保持部28bの外周は、フード本体26により覆われているので、表面保持部28bの変形が抑制されている。このため、表面保持部28bのうちの裏面保持部28aに向かって延出された端部により、リール脚6aの裏面6bから立ち上がる表面6cのうちの側面のフラツキを防止するように保持することができる。したがって、リール脚6aの後端の表面6cのうちの側面がリール脚保持部28の表面保持部28bから外側にズレることを防止している。そして、リール脚6aの後端がリール脚保持部28の連結部28cには至らない位置で係止される。このため、リール脚6aの後端がリール脚保持部28に配置されたときに、リールシート本体12の周方向にリール脚6aがズレることが抑制される。
【0023】
リール脚保持部28の裏面保持部28aには、リール脚6aの後端が裏面保持部28aに載置される際に裏面保持部28aの端部に引っ掛かるのを防止するため、傾斜面28eが形成されている。傾斜面28eは、裏面保持部28aのうちの一部に形成され、連結部28cに近接する側が固定フード14に近接する側よりも高く形成されている。傾斜面28eの傾斜角度は、適宜に設定可能である。このような傾斜面28eが形成されていることにより、リール脚6aを裏面保持部28aに容易に案内して載置させることができる。
【0024】
リール脚載置面12aには、リール脚6aの裏面(底面)6bがリール脚載置面12aに対して滑るのを防止する滑り止め(例えばネジ部18のネジ溝の凹凸を小さく形成したような複数の凸状部又は凹状部)が形成されていることが好ましい。特に、滑り止めとしての凸状部又は凹状部は、リールシート本体12の軸方向に対して直交する方向に、互いに平行に形成されていることが好ましい。凸状部又は凹状部には、リール脚保持部28の裏面保持部28aの裏面が当接される。このため、リール脚保持部28の裏面保持部28aの裏面と、筒状部16の筒状部載置面16aの凸状部又は凹状部との間に摩擦力を発生させて、リール脚6aを保持したリール脚保持部28がリールシート本体12の軸方向に移動するのを防止することができる。その他、滑り止めとして、図示しない梨地表面がリール脚載置面12aに形成されていたり、梨地表面を有するシールなどがリール脚載置面12aに貼り付けられていることなども好ましい。
また、特に、リール脚載置面12aの筒状部16の筒状部載置面16aには、リール脚保持部28の裏面保持部28aのリール脚載置面12aの筒状部載置面16a側が筒状部16に対して滑るのを防止するため同様の滑り止めが形成されていることが好ましい。また、裏面保持部28aの筒状部載置面16a側に同様の滑り止めが形成されていることも好ましい。
【0025】
なお、図示しないが、リールシート10のネジ部18にリールシート10の軸長方向に延設されるキー溝を形成し、移動フード22に、ネジ部18のキー溝に嵌められる凸状部が形成されていることが好ましい。このようにキーおよび凸状部を形成することにより、フード本体26が周方向に回転することを防止できる。
【0026】
魚釣用リール6のリール脚6aをリールシート10に固定する際の作用について説明する。
リールシート10の締付用ナット24を逆方向に回転させて、固定フード14と移動フード22との間隔を広くする。固定フード14に魚釣用リール6のリール脚6aの前端を配置してリール脚6aの裏面6bをリール脚載置面12aに載置するとともに、締付用ナット24を正方向に回転させて移動フード22を固定フード14に向かって移動させる。移動フード22のリール脚保持部28の裏面保持部28aの斜面部28eによりリール脚6aの後端をリール脚保持部28に案内する。このようにして、リール脚6aの後端を移動フード22のリール脚保持部28に配置する(図7(A)参照)。
【0027】
移動フード22を固定フード14に向かってさらに移動させると、リール脚保持部28の表面保持部28bにリール脚6aの後端の表面6cが押し付けられる。このため、リール脚保持部28の表面保持部28bは、リール脚6aの後端の表面6cをリールシート本体12のリール脚載置面12aや裏面保持部28aに向かって押圧するように力が働く。このとき、裏面保持部28aと表面保持部28bとは連結部28cにより連結されており、リール脚6aの裏面6bとリールシート本体12のリール脚載置面12aとの間に配設されたリール脚保持部28の裏面保持部28aが挟持された状態となる。すなわち、リール脚保持部28がリールシート本体12のリール脚載置面12aに強固に固定される。
【0028】
そして、裏面保持部28aの裏面はリールシート本体12の筒状部16の滑り止めが形成されていることが好適な筒状部載置面16a(リール脚載置面12a)に密着する。また、リール脚6aの表面6cの側面が表面保持部28bの内面(内側側面)に当接する。このため、リール脚保持部28がリールシート本体12の周方向に位置ズレすることが防止されている。
【0029】
図6(A)に示すように、この実施の形態では、リール脚保持部28の裏面保持部28aのうちリール脚6aの裏面6bが配置される面は、リールシート本体12よりも低い位置に形成されている。このため、リール脚6aの後端の裏面6bとリールシート本体12との間には隙間Cが形成されている。これは、リール脚6aによって裏面保持部28aが挟持されたときにリール脚載置面12aと裏面保持部28aとを面一にするように裏面保持部28aが変形するときに、裏面保持部28aがリール脚載置面12aよりも下側(リールシート本体12の中心軸側)に変形することを防止するように、変形可能な範囲を担保するために設けられたものである。すなわち、この隙間Cは、必ずしも必要ではなく、リール脚6aの裏面6bがリールシート本体12のリール脚載置面12aに載置された状態で固定されること、すなわち、リール脚6aが固定フード14および移動フード22により固定されることに加えて、リールシート本体12のリール脚載置面12aにリール脚6aの裏面6bが載置された状態で、リールシート本体12のリール脚載置面12aとリール脚保持部28の裏面保持部28aとが面一に固定されることが好ましい。
【0030】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
固定フード14に対して移動フード22を移動させてリール脚6aの後端を移動フード22のリール脚保持部28に配置し、リール脚6aの裏面6bの一部をリールシート本体12のリール脚載置面12aとの間で裏面保持部28aを挟み込むことによって、リール脚保持部28を挟持して固定することができる。すなわち、リール脚保持部28をリールシート本体12に挟持して固定することによって、移動フード22をリールシート本体12に固定することができる。換言すると、リール脚6aでリール脚保持部28の裏面保持部28aをリール脚載置面12aに押し付けることができる。このようにリール脚6aで裏面保持部28aをリール脚載置面12aに押し付ける押し付け力によって、リール脚6aのリール脚載置面12aへの固定力を向上させることができる。このように、リール脚6aのリールシート本体12への固定力を向上させ、リール脚6aがリールシート12に対してガタ付きが生じたり、緩みが生じたりすることを防止することができる。
【0031】
また、リール脚保持部28の表面保持部28bの外周は、フード本体26により覆われ表面保持部28bの変形が抑制されており、リール脚保持部28の表面保持部28bの側面は、リール脚6aの表面6cの形状に沿って裏面保持部28aに向かって曲げられている(延出されている)ので、表面保持部28bの裏面保持部28aに向かう端部により、リール脚6aの裏面6bから立ち上がる表面6cのうちの側面のフラツキを防止するように保持することができる。したがって、リール脚6aの後端の表面6cのうちの側面がリール脚保持部28の表面保持部28bから外側にズレることを防止している。
【0032】
そして、リール脚保持部28の裏面保持部28aおよび表面保持部28bは連結部28cで一体化されているので、裏面保持部28aに基づく作用および表面保持部28bに基づく作用を容易に相乗的に及ぼすことができる。
【0033】
また、リール脚保持部28を移動フード22のフード本体26の開口部26aに設けることによって、リール脚6aをリール脚載置面12aに配置する際に、確実にリール脚保持部28の作用をリール脚6aに及ぼすことができる。すなわち、常に適切な状態にリール脚6aをリールシート10に取り付けることができる。
【0034】
なお、この実施の形態では、リール脚保持部28として裏面保持部28aと表面保持部28bとを連結部28cで一体化した状態で有することが好適であるものとして説明したが、裏面保持部28aだけが移動フード22に配設された構造を有することも好ましい。この場合、例えばフード本体26の開口部26aの端部(フード本体26のうち、筒状部16の外周に沿う部分と筒状部16の外周から離れる開口部26aとの境界付近)に裏面保持部28aが固定される。このように、リール脚保持部28の裏面保持部28aが移動フード22に設けられていることによって、確実にリール脚保持部28の裏面保持部28aをリール脚6aの裏面6bとリール脚載置面12aとの間に配置して挟持することができる。
【0035】
また、この実施の形態では、1対のフードとして固定フード14と移動フード22とを有するリールシート10について説明したが、両方がリール脚保持部28を有する移動フードのリールシートとして形成されていても良い。
【0036】
なお、リールシート本体12のリール脚載置面12aに対する固定フード14および移動フード22の位置関係は、第1の実施の形態に特定されるものではない。例えば、リール脚載置面12aの前端に移動フード22を配置するとともに、載置面12の後端に固定フード14を配置してもよい。
【0037】
次に、第2の実施の形態について図8を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0038】
図8は、図6(A)中の6B−6B線に沿ったリールシート10の横断面の変形例を示す。
この実施形態では、図6(B)に示すフード本体26とリール脚保持部28とが一体的に形成され、かつ、リール脚保持部28の裏面保持部28aと表面保持部28bとが連結されている例である。図8に示すように、フード本体26とリール脚保持部28(図6(B)参照)を一体的に形成したものについて符号126を付し、フード本体と称する。このフード本体126は、リール脚保持部128を備えている。リール脚保持部128は、裏面保持部128aと表面保持部128bとを一体的に備えている。裏面保持部128aと表面保持部128bとの一部は、環状に形成されている。図示しないが、裏面保持部128aと表面保持部128bとは、連結部(図6(A)参照)でも連結されていることが好ましい。換言すると、この実施形態では、裏面保持部128aと表面保持部128bとが連結部で連結されていることは必ずしも必要ではない。
【0039】
釣竿用リール6のリール脚6aをリールシート10に固定する際の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、リール脚6aの後端を移動フード22のリール脚保持部128に配置する。
【0040】
移動フード22を固定フード14に向かってさらに移動させると、リール脚保持部128の表面保持部128bにリール脚6aの後端の表面6cが押し付けられる。リール脚保持部128の表面保持部128bは、リール脚6aの後端を裏面保持部128aに向かって押圧するように力が働く。このとき、裏面保持部128aと表面保持部128bとは少なくとも一部が環状に形成され、リール脚6aの他端の裏面6bとリールシート本体12のリール脚載置面12aとの間に配設されたリール脚保持部128の裏面保持部128aが挟持された状態となる。すなわち、リール脚保持部128がリールシート本体12に強固に固定される。
【0041】
そして、裏面保持部128aはリールシート本体12の筒状部16の筒状部載置面16aに密着し、かつ、リール脚6aの表面6cの側面が表面保持部128bの端部側に押し付けられたとしても、表面保持部128bは裏面保持部128aとともに環状に形成されているので開くことが防止されている。このため、リール脚保持部128がリールシート本体12に対して位置ズレすることが防止されている。
したがって、第2の実施の形態で説明した構造を有する場合であっても、第1の実施の形態で説明した効果を有することができる。
【0042】
なお、裏面保持部128aは、容易に変形するようにリール脚6aが配設される方向にスリットが形成されていることも好ましい。リール脚6aがリール脚保持部128に配設されたときにこのようにスリットが形成されていると、裏面保持部128aを広げてリール脚載置面12aに押し付けることができる。
【0043】
次に、第3の実施の形態について図9および図10を用いて説明する。この実施の形態は第1および第2の実施の形態の変形例であって、第1および第2の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0044】
図9から図10(C)に示すように、リール脚載置面12aに連続する筒状部16には、リール脚保持部228の裏面保持部228aが配設されている。なお、このリール脚保持部228は、略板状の裏面保持部228aと、例えば第1の実施の形態で説明した表面保持部28bとを有する。裏面保持部228aと表面保持部28bとは分離されている。表面保持部28bは第1の実施の形態で説明したようにフード本体26の開口部26aに配設されている。
裏面保持部228aは、リール脚載置面12aに連続する筒状部16に対して接着や筒状部16に設けられた図示しない凹部に対する嵌合等により固定されている。特に、裏面保持部228aは、移動フード22のフード本体26によってリール脚6aを固定する領域(リール脚6aをリール脚載置面12aに対して固定するための固定力を及ぼす範囲)内に配設されている。すなわち、裏面保持部228aは、リール脚載置面12aに対してリール脚6aが固定されたときにフード本体26の先端と基端との間の内側に配置されている。このため、裏面保持部228aはフード本体26に覆われる領域内に配置されている。このような領域に裏面保持部228aを配設することによって、フード本体26からリール脚6aを介して裏面保持部228aに与えられる押圧力を効率的に及ぼすことができる。
【0045】
裏面保持部228aは、例えばウレタン、ナイロン、PVCなどの合成樹脂、EVAの発泡材、合成ゴムなどの柔軟材等の弾性変形可能な素材で形成されている。又は、裏面保持部228aには第1の実施の形態で説明した素材を用いても良い。裏面保持部228aは、その幅がリール脚6aの幅と同等か、それよりも大きく形成されている。裏面保持部228aの幅はリール脚載置面12aの幅と同等またはそれよりも僅かに小さく形成されていることも好ましい。ここで用いられる裏面保持部228aの厚さは、フード本体26の内面によりリール脚6aの表面6cを押し下げてリール脚6aをリール脚載置面12aに押し付ける固定の際、リール脚6aの裏面6bに押圧されることにより弾性変形した後に裏面保持部228aの表面がリール脚載置面12aと面一となるなど、適宜の厚さを維持できるように形成されている。
【0046】
このため、図10(A)および図10(B)に示すように、裏面保持部228aは、リール脚6aの裏面6bにより押圧されることを考慮して、リール脚載置面12aに対して面一の状態よりも僅かに下側に突出されている。すなわち、リール脚6aの裏面6bにより押圧される前の裏面保持部228aの厚さは、リールシート12の下側に露出する表面がリール脚載置面12aに対して僅かに高くなる程度であることが好ましい。
【0047】
このように、フード本体26でリール脚6aをリール脚載置面12aに載置した状態で固定しているときに、リール脚6aの裏面6bとリール脚載置面12aとの間に裏面保持部228aが配設されることによって、リール脚6aで裏面保持部228aをリール脚載置面12aに押し付けて変形させることができる。このようにリール脚6aで裏面保持部228aをリール脚載置面12aに押し付ける押し付け力によって、リール脚6aのリール脚載置面12aへの固定力を向上させることができる。このため、フード本体26とリール脚載置面12aとの間に配設されるリール脚6aについて、釣竿2を用いて釣りをしているときにガタツキや緩みが生じるのを防止することができる。すなわち、裏面保持部228aは、第1の実施の形態で説明した裏面保持部28aと同様の作用を得ることができる。
【0048】
また、裏面保持部228aは、リール脚6aがリールシート本体12の周方向に移動することを防止する表面保持部28bと協働することによって、リールシート本体12にリール脚6aを取り付けた状態でリール脚6aがリール脚載置面12に対してガタ付きが生じたり、緩みが生じたりすることをより確実に防止できる。
【0049】
また、裏面保持部228aを表面保持部28bとは別に筒状部16に配置することにより、リールシート10の製造作業が容易であり、かつ、補修も自在で安価に行うことができる。
【0050】
なお、この実施の形態では、移動フード22のフード本体26に表面保持部28bを設けた例について説明したが、裏面保持部228aが配設されていることによって上述した効果を得ることができるので、表面保持部28bは必ずしも必要ではない。
【0051】
また、図示しないが、筒状部16に設けられる裏面保持部228aは、筒状部16のうちリール脚載置面12aに連続する部分に設けられているだけでなく、例えば環状など筒状部16の外周の全周に亘って設けられていることも好ましい。このとき、裏面保持部228aは横断面がC形状に形成された略環状や略管状に形成されていることも好ましい。この場合、横断面がC形状であるから端部間に隙間(スリット)を有するので、環状や管状の場合に比べて変形し易く、特にリール脚6aの裏面を裏面保持部228aの対向する端部の上に配置することによって、より確実にリール脚6aの裏面6bを保持することができる。また、横断面がC形状に形成された略環状体や略管状体の対向する端部の間に上述した裏面保持部228aを配設することも好適である。
【0052】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好ましい実施形態による釣竿の全体図。
【図2】図1に示す釣竿のリールシートの拡大図。
【図3】第1の実施の形態に係る、図1に示す釣竿のリールシートのうち、一部を断面にした拡大図。
【図4】(A)は第1の実施の形態に係るリールシート本体を示す概略図、(B)は図4(A)中の矢印4B方向から観察した状態のリールシート本体を示す概略図、(C)は図4(A)中の矢印4C方向から観察した状態のリールシート本体を示す概略図。
【図5】(A)は第1の実施の形態に係る移動フードを示す概略的な部分断面図、(B)は図5(A)中の矢印5B方向から観察した状態の移動フードを示す概略図
【図6】(A)は第1の実施の形態に係るリールシート本体に移動フードを装着するとともにリール脚を固定した状態を示す概略的な部分断面図、(B)は図6(A)中の6B−6B線に沿う概略的な横断面図。
【図7】(A)は第1の実施の形態に係るリールシート本体に移動フードを装着するとともにリール脚を固定した状態を示す概略的な斜視図、(B)は図7(A)中に示すリール脚保持部を示す概略的な斜視図。
【図8】第2の実施の形態に係る、図6(A)中の6B−6B線に沿う概略的な横断面図の変形例。
【図9】第3の実施の形態に係る、図1に示す釣竿のリールシートのうち、一部を断面にした拡大図。
【図10】(A)は第3の実施の形態に係るリールシート本体を示す概略図、(B)は図10(A)中の10B−10B線に沿うリールシート本体を示す概略的な横断面図、(C)は図10(A)中の矢印10C方向から観察した状態のリールシート本体を示す概略図。
【符号の説明】
【0054】
4a…グリップ、12…リールシート本体、16…筒状部、16a…筒状部側載置面、18…ネジ部、22…移動フード、24…締付用ナット、26…フード本体、26a…開口部、26b…貫通孔、28…リール脚保持部、28a…裏面保持部、28b…表面保持部、28c…連結部、28d…突部、28e…斜面部、C…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿用リールのリール脚が載置されるリール脚載置面を有するリールシート本体と、前記リール脚を前記リール脚載置面に着脱可能に固定する移動フードとを有する釣竿用リールシートであって、
前記リール脚載置面と前記移動フードとの間の前記移動フードに覆われる領域内に配置されているとともに、前記移動フードにより前記リール脚が前記リール脚載置面に固定されたときに前記リール脚の裏面と前記リール脚載置面との間に挟持されて前記リール脚の裏面を保持する裏面保持部を有するリール脚保持部を具備することを特徴とする釣竿用リールシート。
【請求項2】
前記リール脚保持部は、前記リール脚載置面と前記移動フードとの間の前記移動フードに覆われる領域内に配置されているとともに、前記移動フードにより前記リール脚が前記リール脚載置面に固定されたときに前記リール脚の表面と前記移動フードとの間に挟持されて前記リール脚の表面を保持する表面保持部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿用リールシート。
【請求項3】
前記裏面保持部および前記表面保持部は、一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の釣竿用リールシート。
【請求項4】
前記リール脚保持部は、前記移動フードに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の釣竿用リールシート。
【請求項5】
前記裏面保持部は、前記リール脚載置面に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の釣竿用リールシート。
【請求項6】
前記裏面保持部および前記リール脚載置面の少なくとも一方には、前記リール脚を前記裏面保持部および前記リール脚載置面から滑るのを防止する滑り止めが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の釣竿用リールシート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の釣竿用リールシートを有する釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−51282(P2010−51282A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222248(P2008−222248)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】