説明

釣竿

【課題】先端側の耐衝撃性を向上させることができる穂先を有する釣竿の提供を目的としている。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る釣竿の穂先4は、樹脂が含浸された強化繊維によって構成され、その長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定される。一例として、穂先4は、樹脂から形成される内側領域20と、少なくとも強化繊維から形成され且つ内側領域20を取り囲む外側領域30とから成る中実断面を有し、手方向基端側から先端側に向かって穂先4の外径が次第に細くなることにより、先端側ほど内側領域20に対する外側領域30の割合が小さくなっている。これにより、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、特に、先端側の耐衝撃性を向上させることができる穂先を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中実棒状の穂先は様々な素材および形態のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば磯竿は、魚信を取り易くする敏感は穂先が求められ、竿の先端部分が曲がる先調子の竿が存在する。これらの穂先に共通する課題の1つは、穂先の剛性(強度)の向上であり、衝撃によって破損や折れが生じないことが必要とされる。
【特許文献1】特開2006−101779号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、穂先はその先端側ほど径が細く、そのため、特に穂先の先端側が障害物(例えば、釣り場に存在する岩など)と接触して破損し易い。また、仕掛けの巻き込み等に起因する竿の曲げに伴って穂先が折れてしまう場合もある。したがって、特に、穂先の先端側の耐衝撃性を向上させることが求められる。これに関連して、穂先の耐衝撃性を向上させるために、穂先全体を樹脂含有率の高い材料で製作することも考えられるが、この場合には、穂先全体が軟らかくなってしまい、穂持ち竿との剛性差が大きく、竿全体が滑らかに撓まない。
【0004】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、先端側の耐衝撃性を向上させることができるとともに、滑らかに曲がる釣竿の優れた調子や撓みバランスに寄与できる穂先を有する釣竿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の釣竿は、中実状の穂先であって、樹脂が含浸された強化繊維によって構成され、その長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高いことを特徴とする穂先を有する。
【0006】
上記構成によれば、穂先の長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定されているため、樹脂の物理特性に起因して長手方向の先端側ほど衝撃吸収性に優れる。したがって、穂先の先端側ほど耐衝撃性が高くなる。その結果、穂先の先端側が障害物と接触して破損したり、あるいは、仕掛けの巻き込み等に起因する竿の曲げに伴って穂先が折れてしまうといったことを防止できる。また、穂先全体を樹脂含有率の高い材料で製作するのではなく、樹脂含有率を穂先の基端側から先端側に向かって高く設定しているため、穂先全体が軟らかくなりすぎてしまうことがなく、穂持ち竿との剛性差を抑えて竿全体の滑らかな撓みに寄与できる。
【0007】
また、上記構成において、穂先は、樹脂から形成される内側領域と、少なくとも強化繊維から形成され且つ前記内側領域を取り囲む外側領域とから成る中実断面を有していても良い。また、この構成に加えて、長手方向基端側から先端側に向かって穂先の外径を次第に細くすることにより、先端側ほど内側領域に対する外側領域の割合を小さくする(先端側ほど、断面全体に占める内側領域の割合を大きくする)ようにすれば、穂先の先端側ほど樹脂含有率が高くなるため、穂先の先端側ほど耐衝撃性が高くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、先端側の耐衝撃性を向上させることができる穂先を有する釣竿を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明に係る釣竿の一実施形態について説明する。
図1には釣竿の一例が示されている。この釣竿1は、魚釣用リール(スピニングリール)50の脚部52を着脱可能にする筒状のリール脚固定装置10を装着した元竿3と、穂持ち竿7aを含む複数本の中継竿7と、穂持ち竿7aに対して継合される穂先4とを備えた5本継ぎとして構成されている。この場合、両竿部材の継合は、振り出し式に構成されていても良いし、並継式に構成されていても良い。また、各竿杆の継合本数は任意である。また、後述するように、穂先4の構造は中実状に構成されている。
【0010】
竿杆(穂先4を含む)には、複数の釣糸ガイド(外ガイド)5が設けられており、リール脚固定装置10に装着されたリール50から繰出される釣糸を案内するようになっている。また、元竿3には、必要に応じて、リール脚固定装置10の前後にグリップが設けられていても良い。
【0011】
図2に示されるように、穂先4は、穂持ち竿7aに接続される基端4aと、穂先4の先端側を形成する先端4bとを有しており、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂が含浸された強化繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維)によって構成されている。無論、強化繊維に樹脂を含浸して形成された、いわゆるプリプレグシートを含んでいても良い。プリプレグシートについては、それを構成する強化繊維が、軸長方向、周方向、或いは傾斜方向に引き揃えられたものであっても良い。
【0012】
また、本実施形態において、穂先4は、その長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定されている。具体的に、本実施形態では、長手方向基端側から先端側に向かって段階的に或いは連続的に樹脂含有率が変化しており、例えば先端4bと基端4aとの間で樹脂含有率が10%異なる。あるいは、穂先4の全長の20%に当たる先端4bを含む先端側領域の樹脂含有率が40%〜50%であり、穂先4の全長の80%に当たる基端4aを含む基端側領域の樹脂含有率が50%〜60%である。
【0013】
また、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率を基端側の樹脂含有率よりも高く設定する具体的な竿構造として、以下の構造が考えられる。
【0014】
すなわち、まず、穂先4の中実断面を図4に示すように構成する。図示のように、中実状の穂先4は、内側領域20と、この内側領域20を取り囲む外側領域30とから成る円形の中実断面を有している。この場合、内側領域20は、竿の軸心を中心とする所定の直径rを有する円形断面を成し、外側領域30は、内側領域20の外周を取り囲む直径がRの環状断面を成している。なお、本実施形態では、中実断面が円形断面であるが、断面の形状は任意である。具体的には、長円形状や矩形状の中実断面を有していても良く、また、内側領域20と外側領域30との境界も長円形状や矩形状を成していても良い。
【0015】
この場合、外側領域30が少なくとも強化繊維30aから形成され、内側領域20が樹脂20aから形成される。より具体的には、外側領域30は、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂が含浸され且つ軸長方向に引き揃えられた強化繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維)30aの束から成っており、この束は撚りがかかっていても或いはかかっていなくても良い。一方、内側領域20は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの樹脂20aから成る。樹脂20aのみから成っていても良く、あるいは、樹脂20a中に繊維などが散在された構成であっても構わない。なお、内側領域20を形成する樹脂20aの周囲に外側領域30を形成する強化繊維30aを配置する中実構造の形成方法としては、例えば、ガラス管成形や引抜成形などが挙げられる。
【0016】
そして、このような断面構造に加えて、図3に示されるように、長手方向基端側から先端側に向かって穂先4の外径を次第に細くすることにより、先端側ほど内側領域20に対する外側領域30の割合を小さくする(先端側ほど、断面全体に占める内側領域20(樹脂)の割合を大きくする)ようにする。このようにすれば、図3の(b)の断面と図3の(c)の断面とを比較して明らかなように、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定される。この場合、例えば、先端4bにおいては、内側領域20の直径rが穂先の中実断面全体の直径、すなわち、外側領域30の直径Rの10%〜30%に設定されるとともに、基端4bにおいては、内側領域20の直径rが外側領域30の直径Rの5%〜20%に設定されることが好ましい。これにより、先端4bと基端4aとで樹脂含有率を5%〜10%異ならせることができる。なお、図3の中実断面では、外側領域30の断面のみが基端側から先端側に向かってテーパ状に先細っており、内側領域20の断面積は全長にわって一定であるが、内側領域20の断面形状も基端側から先端側に向かってテーパ状に先細っていても良い。ただし、この場合も、先端側ほど内側領域20に対する外側領域30の割合を小さくする(先端側ほど、断面全体に占める内側領域20(樹脂)の割合を大きくする)ようにして、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定されるようにする。
また、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率を基端側の樹脂含有率よりも高く設定する他の手段としては、図5に示されるような手段も考えられる。すなわち、穂先の中実断面を図3に示されるような樹脂含有率の異なる同心状の2つの領域から形成するのではなく、穂先4をその全長にわたって強化繊維30aと樹脂20aとの混合体により形成するとともに、穂先4の基端側の中実断面(図5の(b))における繊維密度を先端側の中実断面(図5の(a))における繊維密度よりも高く設定し、それにより、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率を基端側の樹脂含有率よりも高く設定しても良い。このような断面形態は、例えばガラス管成形などの行なう際に基端側に繊維を多く配置することで実現できる。
また、穂先4の基端側の中実断面における繊維密度を先端側の中実断面における繊維密度よりも高く設定するために、繊維の外径を先端側から基端側に向かって太く形成しても良い。これによっても、穂先4の長手方向先端側の樹脂含有率を基端側の樹脂含有率より高く設定できる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態の釣竿1の穂先4は、樹脂が含浸された強化繊維によって構成され、その長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高く設定されている。そのため、樹脂の物理特性に起因して長手方向の先端側ほど耐衝撃性に優れる。その結果、穂先4の先端側が障害物と接触して破損したり、あるいは、仕掛けの巻き込み等に起因する竿の曲げに伴って穂先が折れてしまうといったことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る釣竿の一例を示す側面図である。
【図2】図1の釣竿の穂先の側面図である。
【図3】(a)は本発明の他の実施形態に係る穂先の長手方向断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図3の穂先の断面図である。
【図5】他の実施形態に係る断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 釣竿
4 穂先
4a 基端
4b 先端
20 内側領域
20a 樹脂
30 外側領域
30a 強化繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実状の穂先であって、樹脂が含浸された強化繊維によって構成され、その長手方向先端側の樹脂含有率が基端側の樹脂含有率よりも高いことを特徴とする穂先を有する釣竿。
【請求項2】
樹脂から形成される内側領域と、少なくとも強化繊維から形成され且つ前記内側領域を取り囲む外側領域とから成る中実断面を有することを特徴とする請求項1に記載の穂先を有する釣竿。
【請求項3】
長手方向基端側から先端側に向かって穂先の外径が次第に細くなることにより、先端側ほど内側領域に対する外側領域の割合が小さくなることを特徴とする請求項2に記載の穂先を有する釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−81878(P2010−81878A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254676(P2008−254676)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】