説明

鉄塔作業時の休憩用足掛け

【課題】 鉄塔作業において休憩を行う場合に、鉄塔鋼材への着脱が容易であり、万が一落下させた場合であっても安全性を確保することができ、さらに足裏への負担を軽減する。
【解決手段】 鉄塔鋼材20に取り付ける本体11と、本体11と一体に形成され、鉄塔鋼材20に巻き付けることにより、本体11との間に鉄塔鋼材20を挟み込む巻き付け部12とを備える。本体11の外周に沿って断面略L字状の切れ込み部13を設けることにより、本体11と一体となるように巻き付け部12を形成し、断面略L字状の鉄塔鋼材20に適した休憩用足掛けとする。本体11及び巻き付け部12を鉄塔鋼材20に固定する固定用ベルト30を備える。本体11及び巻き付け部12は、弾性及び可撓性を有する発泡プラスチックにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔作業を行う際に、作業者の足場となる鉄塔鋼材に取り付けて使用する鉄塔作業時の休憩用足掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔等の鉄塔上で工事や点検等の作業を行う場合には、鉄塔を構成する鉄塔鋼材を足場として利用することが一般的である。しかし、鉄塔鋼材は鉄塔を支持・補強するためのものであり、足場として使用するには不適当な場合もある。
【0003】
そこで、従来、断面略L字状の鉄塔鋼材に取り付けて使用する「作業足場」(特許文献1)が開示されている。特許文献1(特開平9−137601号公報)に記載された「作業足場」は、作業地点に予め足場が設けられていない鉄塔での作業を容易にするためのものであり、断面略L字状の鉄塔鋼材の互いに向かい合った両側端部に、着脱自在に側端部を挟持して係合する係合部材と、これら係合部材を互いに近接離間させて鉄塔鋼材の両側端部に係合させる締結ボルトと、係合部材に対して一端部が外方に延出して固定された踏み板部材とを備えている。
【0004】
そして、鉄塔作業を行う作業者は、鉄塔鋼材の側端部に係合部材を位置させて、締結ボルトを締め付けることにより、鉄塔鋼材に対して作業足場を固定し、この作業足場に足を乗せて作業を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−137601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鉄塔作業が高所で行われる場合には、休憩の度にいちいち地上まで降りることは面倒であるため、鉄塔鋼材の適宜位置に安全帯を取り付けた状態で、足場となる鉄塔鋼材に足をかけたまま休憩することが多い。一般的な鉄塔鋼材は、断面略L字状となっており、特にL字の端部が上方へ向かっている、いわゆる雨うけ型の鉄塔鋼材の場合には、足裏に体重が掛かると、鉄塔鋼材の端部が足裏に食い込んで足裏への負担が大きくなるという問題があった。
【0007】
休憩時に、上記した特許文献1に記載された作業足場を用いることも可能であるが、この作業足場は、締結ボルトにより着脱するため、取り付け及び取り外しが面倒である。また、作業足場は、金属製の部材により形成されており、万が一、落下させてしまった場合には、重大な事故に繋がるおそれもある。また、特許文献1に記載された作業足場は、縦方向の鉄塔鋼材(支柱)に取り付けることを前提としたものであり、横方向の鉄塔鋼材に取り付けて使用することはできない。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、鉄塔作業において休憩を行う場合に、鉄塔鋼材への着脱が容易であり、万が一、落下させた場合であっても安全性を確保することができ、さらに足裏への負担を軽減することが可能な鉄塔作業時の休憩用足掛けを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄塔作業時の休憩用足掛け(10)は、上述した目的を達成するため、鉄塔鋼材(20)に取り付ける本体(11)と、本体(11)と一体に形成され、鉄塔鋼材(20)に巻き付けることにより、本体(11)との間に鉄塔鋼材(20)を挟み込む巻き付け部(12)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、一般的な断面略L字状の鉄塔鋼材(20)に適応させるため、巻き付け部(12)は、本体(11)の外周に沿って断面略L字状の切れ込み部(13)を設けることにより、本体(11)と一体となるように形成することが可能である。
【0011】
また、鉄塔鋼材(20)に取り付けられた本体(11)及び巻き付け部(12)の外周に巻き付けて、本体(11)及び巻き付け部(12)を鉄塔鋼材(20)に固定する固定用ベルト(30)を備えることが好ましい。
【0012】
さらに、本体(11)及び巻き付け部(12)は、弾性及び可撓性を有する発泡プラスチックにより形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の発明では、巻き付け部(12)と本体(11)との間に鉄塔鋼材を挟み込むことにより、鉄塔鋼材(20)に対して休憩用足掛け(10)を取り付けることができ、巻き付け部(12)の巻き付けを解除することにより、鉄塔鋼材(20)から休憩用足掛け(10)を取り外すことができる。また、略水平方向や斜め方向等、鉄塔を構成する殆どすべての鉄塔鋼材に対して容易に取り付けることができるので、作業者の休憩位置を限定することがなく、作業性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、本体(11)の外周に沿って断面略L字状の切れ込み部を設けることにより巻き付け部(12)を形成した場合には、休憩用足掛け(10)を容易に製造することができると共に、製造コストを低減することが可能となる。
【0015】
また、本体(11)及び巻き付け部(12)を鉄塔鋼材(20)に固定する固定用ベルト(30)を備えた構成とした場合には、鉄塔鋼材に対して休憩用足掛け(10)を確実に固定することができるので、安全性を高めることが可能となる。
【0016】
また、弾性及び可撓性を有する発泡プラスチックを用いて休憩用足掛け(10)を形成した場合には、製造が一層容易となると共に、作業者の足裏に掛かる負担が軽減する。さらに、軽量化を図ることができるので、持ち運びが容易となるばかりでなく、万が一、落下させた場合であっても安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けの側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けの正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けを鉄塔鋼材(雨よけ)に取り付ける様子を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けを鉄塔鋼材(雨うけ)に取り付ける様子を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る鉄塔作業時の休憩用足掛けの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<休憩用足掛けの概要>
以下、図面を参照して、本発明の休憩用足掛けの実施形態を説明する。図1〜図6は本発明の実施形態に係る休憩用足掛けを示すものである。図1は休憩用足掛けの斜視図である。図2は休憩用足掛けの側面図である。図3は休憩用足掛けの正面図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る休憩用足掛け10は、図1〜図3に示すように、鉄塔鋼材20に取り付ける本体11と、本体11と一体に形成された巻き付け部12とを備えている。そして、巻き付け部12を鉄塔鋼材20に巻き付けることにより、本体11との間に鉄塔鋼材20を挟み込むようになっている。
【0020】
<形状>
本実施形態の休憩用足掛け10は、鉄塔の構成材として一般的に用いられている断面略L字状の鉄塔鋼材20に取り付けるための形状を有している。すなわち、本実施形態の休憩用足掛けは、全体として直方体状となっており、本体11の外周に沿って断面略L字状の切れ込み部13を設けることにより、本体11と一体となった巻き付け部12が形成されている。なお、本体11及び切れ込み部13の寸法は、一般的な鉄塔鋼材20の寸法に合致させればよい。
【0021】
このような形状とすることにより、特に、送電鉄塔の構成材として一般的に用いられている断面略L字状の鉄塔鋼材20に取り付けた際に、鉄塔鋼材20に対して容易に着脱及び固定することができる。
【0022】
<材料>
本体11及び巻き付け部12は、弾性及び可撓性を有する発泡プラスチックにより形成すことが好ましい。本体11及び巻き付け部12の材料としては、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、ウレタンフォーム、フォームラバー等を用いることができる。このように、本体11及び巻き付け部12を発泡プラスチックにより形成することにより、軽量化を図ることができる。このため、持ち運びが容易となり、さらに、万が一落下させた場合であっても安全性を確保することができる。なお、本体11及び巻き付け部12の材料としては、天然ゴム、合成ゴムや、その他の高分子樹脂を用いることもできる。
【0023】
<固定用ベルト>
また、本実施形態の休憩用足掛け10は、鉄塔鋼材20に取り付けられた本体11及び巻き付け部12の外周に巻き付けて、本体11及び巻き付け部12を鉄塔鋼材20に固定するための固定用ベルト30を備えていることが好ましい。この固定用ベルト30は、紐状や帯状であり、本体11及び巻き付け部12の外周に巻き付けることが可能な長さを有している。固定用ベルト30の材料は特に限定されるものではないが、例えば、布やビニール製とすることができる。また、本体11及び巻き付け部12の外周に巻き付けた状態で重複する部分に面ファスナーやスナップボタン等の係止手段を取り付けることにより、固定用ベルト30の巻き付け状態を容易に保持することができる。
【0024】
<具体的な使用方法>
図4は本実施形態に係る休憩用足掛けを鉄塔鋼材(雨よけ)に取り付ける様子を示す説明図である。図5は本実施形態に係る休憩用足掛けを鉄塔鋼材(雨うけ)に取り付ける様子を示す説明図である。また、図6は本実施形態に係る休憩用足掛けの使用状態を示す斜視図である。
本実施形態に係る休憩用足掛け10は、送電鉄塔の構成材として一般的に用いられている断面略L字状の鉄塔鋼材20に取り付けて使用することができる。以下、鉄塔鋼材20の形状の違いに応じた取り付け方法を説明する。
【0025】
<鉄塔鋼材(雨よけ)への取り付け>
図4を参照して、送電鉄塔の構成材として一般的に用いられている断面略L字状の鉄塔鋼材20であって、上部が略水平方向の横板部となっており、この横板部から下方へ向かって縦板部が延設された、いわゆる「雨よけ」型の鉄塔鋼材20への取り付け方法を説明する。
【0026】
本実施形態の休憩用足掛け10を「雨よけ」型の鉄塔鋼材20へ取り付けるのは、図4に示すように、巻き付け部12の端部を操作して、本体11と巻き付け部12との間隔を広げる。そして、横板部を巻き付け部12の最奥部へ向かって押し込み、縦板部に巻き付け部12の端部側を被せることにより、鉄塔鋼材20に対して休憩用足掛け10を取り付ける。この状態で、鉄塔鋼材20に取り付けられた本体11及び巻き付け部12の外周に固定用ベルト30を巻き付けて、本体11及び巻き付け部12を鉄塔鋼材20に固定する。
【0027】
<鉄塔鋼材(雨うけ)への取り付け>
図5を参照して、送電鉄塔の構成材として一般的に用いられている断面略L字状の鉄塔鋼材20であって、下部が略水平方向の横板部となっており、この横板部から上方へ向かって縦板部が延設された、いわゆる「雨うけ」型の鉄塔鋼材20への取り付け方法を説明する。
【0028】
本実施形態の休憩用足掛け10を「雨うけ」型の鉄塔鋼材20へ取り付けるのは、図5に示すように、巻き付け部12の端部を操作して、本体11と巻き付け部12との間隔を広げる。そして、本体11を回転させながら、縦板部を巻き付け部12の最奥部へ向かって押し込み、横板部に巻き付け部12の端部側を被せることにより、鉄塔鋼材20に対して休憩用足掛け10を取り付ける。この状態で、鉄塔鋼材20に取り付けられた本体11及び巻き付け部12の外周に固定用ベルト30を巻き付けて、本体11及び巻き付け部12を鉄塔鋼材20に固定する。
【0029】
<休憩時の使用方法>
鉄塔作業において作業員が休憩する際には、上述したように、「雨うけ」型又は「雨よけ」型の鉄塔鋼材20に対して本実施形態の休憩用足掛け10を取り付けて、固定用ベルト30で固定する。そして、安全帯(図示せず)を鉄塔鋼材20の適宜位置に取り付けて安全を確保した状態で、足裏を休憩用足掛け10に載せて休憩を行う。このように、角張った鉄塔鋼材20に対して直接足裏を載せた場合と比較して、柔軟性を有する休憩用足掛け10に足裏を載せることができるので、作業者の足裏に掛かる負担を軽減することができる。特に、「雨うけ」型の鉄塔鋼材20は、その端縁が足裏に食い込み、足裏に掛かる負担が大きい。そこで、図6に示すように、「雨うけ」型の鉄塔鋼材20に休憩用足掛け10を取り付けることにより、作業者の足裏に掛かる負担を確実に軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の鉄塔作業時の休憩用足掛けは、送電鉄塔等の鉄塔上で工事や点検等の作業を行う際の休憩時に、鉄塔を構成する鉄塔鋼材に取り付けて、簡易的な足置きとして利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 休憩用足掛け
11 本体
12 巻き付け部
13 切れ込み部
20 鉄塔鋼材
30 固定用ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔作業時に、足場となる鉄塔鋼材(20)に取り付けて使用する休憩用足掛け(10)であって、
鉄塔鋼材(20)に取り付ける本体(11)と、
前記本体(11)と一体に形成され、鉄塔鋼材(20)に巻き付けることにより、前記本体(11)との間に鉄塔鋼材(20)を挟み込む巻き付け部(12)と、を備えた、ことを特徴とする鉄塔作業時の休憩用足掛け。
【請求項2】
断面略L字状の鉄塔鋼材(20)に取り付けるための休憩用足掛け(10)であって、
前記巻き付け部(12)は、前記本体(11)の外周に沿って断面略L字状の切れ込み部(13)を設けることにより、前記本体(11)と一体となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄塔作業時の休憩用足掛け。
【請求項3】
前記鉄塔鋼材(20)に取り付けられた前記本体(11)及び前記巻き付け部(12)の外周に巻き付けて、前記本体(11)及び前記巻き付け部(12)を前記鉄塔鋼材(20)に固定する固定用ベルト(30)を備えた、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄塔作業時の休憩用足掛け。
【請求項4】
前記本体(11)及び巻き付け部(12)は、弾性及び可撓性を有する発泡プラスチックにより形成されている、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の鉄塔作業時の休憩用足掛け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−184974(P2011−184974A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52574(P2010−52574)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】