説明

鉄道車両の天井構造

【課題】吹き出し口カバー及び吊手受けを取付ける際に、現車において取付け作業者の負担及び取付け作業の手間を少なくすることができるとともに、吹き出し口カバーと吊手受けとを精度良く取付けることができる鉄道車両の天井構造を提供すること。
【解決手段】鉄道車両の天井構造は、空調ダクト40と、この空調ダクト40の吹き出し口40dを覆う吹き出し口カバー50と、屋根構体10の支持骨13に取付けられる吊手受け60及び灯具70とを備える。吹き出し口カバー50は、剛体で且つ平面状である剛体平面部51を有し、空調ダクト40に取付けられる前に吊手受け60が剛体平面部51に予め取付けられた吹き出し口ユニットFUになっている。この吹き出し口ユニットFUは、剛体平面部51で屋根構体10の支持骨13に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き出し口カバーと吊手受けとを備えた鉄道車両の天井構造に関し、特に、吹き出し口カバーは吊手受けが予め取付けられた吹き出し口ユニットになっている鉄道車両の天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の天井構造として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。下記特許文献1に記載された天井構造では、図7に示したように、冷風又は温風を運ぶ管路である空調ダクト140が屋根構体110に取付けられ、吹き出し口カバー150が空調ダクト140の吹き出し口140dを覆っている。そして、吊手受け160が空調ダクト140より枕木方向外側(図7の右側)にて屋根構体110の支持骨113に取付けられ、灯具170が吊手受け160より枕木方向外側にて屋根構体110の支持骨113及び内骨111に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された天井構造では、取付け作業者が、現車において上向きの作業で、吹き出し口カバー150の取付け位置を調整しつつ吹き出し口カバー150を取付けるとともに、吊手受け160の取付け位置を調整しつつ吊手受け160を取付けている。即ち、吹き出し口カバー150及び吊手受け160を取付けるために、取付け作業者が現車において上方を見続けながら、取付け位置の調整及び取付け作業を二度行っていた。このため、現車における取付け作業者の負担及び取付け作業の手間が大きく、更に吹き出し口カバー150と吊手受け160とをそれぞれ精度良く取付けることが難しかった。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべく、吹き出し口カバー及び吊手受けを取付ける際に、現車において取付け作業者の負担及び取付け作業の手間を少なくすることができるとともに、吹き出し口カバーと吊手受けとを精度良く取付けることができる鉄道車両の天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る鉄道車両の天井構造は、屋根構体に取付けられ冷風又は温風を運ぶ管路である空調ダクトと、この空調ダクトの吹き出し口を覆う吹き出し口カバーと、前記空調ダクトより枕木方向外側に配置され屋根構体の支持骨に取付けられる吊手受け及び灯具と、を備えたものであって、前記吹き出し口カバーは、剛体で且つ平面状である剛体平面部を有し、前記空調ダクトに取付けられる前に前記吊手受けが前記剛体平面部に予め取付けられた吹き出し口ユニットになっていて、前記吹き出し口ユニットは、前記剛体平面部で屋根構体の支持骨に取付けられていることを特徴とする。
ここで、剛体とは、弾性体と異なり、通常時に作用する外力では変形しない物体を意味する。
【0007】
(2)(1)に記載された鉄道車両の天井構造において、前記吹き出し口ユニットは、前記剛体平面部に前記灯具を取付けるための取付け孔を有することを特徴とする。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の天井構造において、前記剛体平面部の枕木方向内側の部位は、前記空調ダクトの下側に配置される中央天井板の枕木方向外側の部位の上から取付けられ、前記剛体平面部の枕木方向外側の部位は、前記屋根構体の支持骨に取付けられている脇天井板の枕木方向内側の部位の上から取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明に係る鉄道車両の天井構造によれば、吹き出し口カバーは、空調ダクトに取付けられる前に、吊手受けが剛体平面部に予め取付けられた吹き出し口ユニットになっている。そして、この吹き出し口ユニットは、現車において剛体平面部で屋根構体の支持骨に取付けられるようになっている。このため、従来のように、取付け作業者が現車において上向きの作業で、吹き出し口カバーの取付け位置を調整しつつ吹き出し口カバーを取付けるとともに、吊手受けの取付け位置を調整しつつ吊手受けを取付ける必要がない。即ち、吹き出し口ユニットの取付け位置の調整及び取付け作業を一度行うことによって、吹き出し口カバー及び吊手受けを取付けることができる。従って、吹き出し口カバー及び吊手受けを取付ける際に、現車において取付け作業者の負担及び取付け作業の手間を少なくすることができる。
また、屋根構体の支持骨に取付けられる吹き出し口ユニットの剛体平面部は、剛体で且つ平面状である。このため、吹き出し口ユニットはその剛性が十分高いものであり、吹き出し口ユニットを取付ける際には、剛体平面部において目標とする枕木方向及びレール方向に対して正確に延びるように平面出しをすることが容易である。従って、吹き出し口ユニット、即ち吹き出し口カバーと吊手受けとを精度良く取付けることができる。
【0010】
(2)この場合には、灯具は剛体で且つ平面状である剛体平面部の取付け孔に取付けられる。このため、灯具の取付け位置の調整が容易であり、取付け作業者の負担を少なくすることができる。更に、灯具と剛体平面部との間に隙間が生じることを防止でき、見栄えを良くすることができる。
【0011】
(3)この場合には、剛体平面部の枕木方向内側の部位が、中央天井板の枕木方向外側の部位の上から取付けられるため、中央天井板の枕木方向外側の端部分に隙間が生じていても、この隙間が車室内から隠れるようになっている。このため、中央天井板を取付ける際に枕木方向にラフに取付けることができ、枕木方向の長さを調整する手間を少なくすることができる。
また、剛体平面部の枕木方向外側の部位が、脇天井板の枕木方向内側の部位の上から取付けられている。このため、脇天井板の枕木方向内側の端部分に隙間が生じていても、この隙間が車室内から隠れるようになっている。このため、脇天井板を取付ける際に枕木方向にラフに取付けることができ、枕木方向の長さを調整する手間を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の天井構造をレール方向から見たときの正面図である。
【図2】図1に示した吹き出し口カバー及び吊手受けの斜視図である。
【図3】図1に示したX部分の拡大断面図である。
【図4】吹き出し口ユニット及び灯具の取付け作業を説明するための図である。
【図5】(A)図1に示したY部分の拡大図である。(B)図1に示したZ部分の拡大図である。
【図6】(A)従来において灯具が取付けられている状態を枕木方向から見たときの説明図である。(B)本実施形態において灯具が取付けられている状態を枕木方向から見たときの説明図である。
【図7】従来の天井構造をレール方向から見たときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る鉄道車両の天井構造について、図面を参照しながら以下に説明する。鉄道車両の車体は、台枠、側構体、屋根構体、妻構体の六面体で構成されている。図1は、屋根構体10及び側構体20の上部に適用されている天井構造TNをレール方向(車両長手方向)から見たときの正面図である。図1では、一側の天井構造TNが示されている。しかし、一側の天井構造TNと他側の天井構造とは同一の構成であるため、一側の天井構造TNについてのみ説明して、他側の天井構造の説明は省略する。天井構造TNは、図1に示したように、送風機としての横流ファン30と、空調機支持部材としてのCチャンネル金具31と、空調ダクト40と、吹き出し口カバー50と、吊手受け60と、灯具(蛍光灯)70とを備えている。
【0014】
屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、断面がハット形状の第1内骨11が固着されている。第1内骨11は、Cチャンネル金具31を支持するためのものである。この第1内骨11は、枕木方向(車両幅方向)における車両中央部に配置されていて、ライナー81を介してCチャンネル金具31の枕木方向外側の部位を支持している。
【0015】
また、屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、断面が略L字状の第2内骨12が固着されている。第2内骨12は、空調ダクト40を支持するためのものである。この第2内骨12は、第1内骨11より枕木方向外側に配置されていて、ライナー82を介して空調ダクト40の枕木方向外側の部位を支持している。なお、ライナー81,82は、Cチャンネル金具31及び空調ダクト40が正確に枕木方向及びレール方向に延びるように、Cチャンネル金具31及び空調ダクト40の水平度合い(平面度)を調整するとともに、室内の高さを調整するためのものである。
【0016】
また、屋根構体10の車両内側には、図1に示したように、支持骨13が固着されている。支持骨13は、脇天井板91等を支持するためのものである。この支持骨13は、第2内骨12より枕木方向外側に配置されていて、屋根構体10から懸架された断面がハット形状の本体部13aと、この本体部13aの枕木方向外側の部位に固着されている断面が略L字状の取付け部13bとを有している。本体部13aの高さ寸法は、空調ダクト40の高さ寸法と同程度である。取付け部13bは、ライナー85を介して脇天井板91の枕木方向内側の部位を支持している。
【0017】
側構体20の上部の車両内側(枕木方向内側)には、図1に示したように、第3内骨21が固着されている。第3内骨21は、脇天井板91及び側幕板92を支持するためのものである。この第3内骨21は、ライナーを介して脇天井板91の枕木方向外側の部位を支持するとともに、側幕板92の上端を支持している。
【0018】
横流ファン30は、図示しない空気調和機(エアコン)が生成した冷風又は温風を攪拌して車室の隅々まで冷風又は温風を送り込むためのものである。この横流ファン30はフランジ部を有していて、このフランジ部がCチャンネル金具31の先端部に支持されている。Cチャンネル金具31は、枕木方向における車両中央部に配置されていて、横流ファン30を支持するためのものである。なお、横流ファン30の下方には、整風板32が配置されている。
【0019】
空調ダクト40は、図示しない空気調和機が生成した冷風又は温風を運ぶ管路である。この空調ダクト40は、複数の金属板によって断面が略矩形状に形成されていて、枕木方向内側にメインダクト40aを有し、枕木方向外側にサブダクト40bを有している。また、空調ダクト40は、メインダクト40aとサブダクト40bとを連通する連通口40cを有し、サブダクト40bの下面には、冷風又は温風を車室内へ送るための吹き出し口40dが形成されている。
【0020】
空調ダクト40のメインダクト40aの下側には、中央天井板93が配置されている。具体的に、中央天井板93は、シート状の化粧シートであって、メインダクト40aの下面に直接接着されている。なお、中央天井板93は、化粧パネル(高圧メラミン化粧板)であって、図示しないボルトでメインダクト40aに取付けられていても良い。
【0021】
吹き出し口カバー50は、空調ダクト40の吹き出し口40dを覆うものである。この吹き出し口カバー50は、空調ダクト40のサブダクト40b及び支持骨13の下方に配置されている。ここで、図2は、図1に示した吹き出し口カバー50及び吊手受け60の斜視図である。吹き出し口カバー50は、図1及び図2に示したように、平面状の剛体平面部51と、この剛体平面部51から上方に膨らんでいる膨出部52とを有している。
【0022】
剛体平面部51は、図2に示したように、レール方向に延びる板状に形成されていて、例えばアルミニウム合金又はFRP(繊維強化プラスチック)で構成された剛体である。ここで、剛体とは、ゴムや樹脂等で構成される弾性体とは異なり、通常時に作用する外力では変形しない物体を意味する。このため、剛体平面部51は、通常時に変形しない程度に硬いものである。
【0023】
剛体平面部51の枕木方向内側には、空調ダクト40の吹き出し口40dと連通する連通孔51aが6個形成されている。各連通孔51aはレール方向に延びていて、レール方向に所定量離れて2個ずつ平行に配置されている。また、剛体平面部51の枕木方向外側には、灯具70を取付けるための取付け孔51bが形成されている。2個の取付け孔51bはレール方向に延びていて、レール方向に所定量離れている。膨出部52は、ハット状に形成されていて、フランジ部で剛体平面部51の枕木方向内側の部位に接合されている。この膨出部52は、吹き出し口カバー50が取付けられている状態で、連通孔51aを塞がない位置、即ち連通孔51aによる冷風又は温風の流れを妨げない位置に設けられている。
【0024】
この吹き出し口カバー50は、図1に示したように、膨出部52のチャンネル部で、ライナー83及び図示しないボルトを用いて空調ダクト40のサブダクト40bの下面に取付けられている。また、吹き出し口カバー50は、剛体平面部51の枕木方向の中央部位で、ライナー84及びボルトBTを用いて支持骨13の本体部13aのチャンネル部に取付けられている。また、吹き出し口カバー50は、剛体平面部51の枕木方向外側の部位で、ライナー85及び図示しないボルトを用いて支持骨13の取付け部13bの下端に取付けられている。なお、ライナー83,84,85は、剛体平面部51が正確に枕木方向及びレール方向に延びるように、剛体平面部51の水平度合い(平面度)を調整するとともに、室内の高さを調整するためのものである。
【0025】
ところで、本実施形態においては、吹き出し口カバー50が、空調ダクト40、支持骨13の本体部13a及び取付け部13bに取付けられる前に、図2に示したように、吊手受け60が剛体平面部51に予め取付けられた吹き出し口ユニットFUになっている。即ち、吹き出し口カバー50と吊手受け60とは、空調ダクト40や支持骨13に取付けられる前に、一体的に接合されたユニットになっている。これは、現車において吹き出し口カバー50及び吊手受け60を取付ける際に、取付け作業者の負担及び取付け作業の手間を少なくするためである。
【0026】
吊手受け60は、空調ダクト50より枕木方向外側に配置されていて、図2に示したように、正方形の板状である連結部61と、この連結部61から下方に延びる支持部62とを有している。連結部61は、吹き出し口カバー50の剛体平面部51に連結する部分である。支持部62は、吊手棒TAを支持する部分である。ここで、図3は、図1に示したX部分の拡大断面図である。吊手受け60は、図3に示したように、ボルトBAが連結部61及び剛体平面部51に対して下から貫通することによって、吹き出し口カバー50に取付けられるようになっている。ボルトBAの先端部は、剛体平面部51から上方に僅かに突出している。このため、ライナー84には、ボルトBAの先端部を逃がす逃げ孔84aが予め形成されている。
【0027】
次に、吹き出し口ユニットFU及び灯具70の取付け手順について、図4を用いて説明する。図4は、吹き出し口ユニットFU及び灯具70の取付け作業を説明するための図である。図4に示したように、吹き出し口ユニットFUが取付けられる前に、横流ファン30がCチャンネル金具31に取付けられ、空調ダクト40が第2内骨12に取付けられ、脇天井板91が支持骨13の取付け部13b及び第3内骨21に取付けられ、側幕板92が第3内骨21に取付けられた状態になっている。
【0028】
そして、この状態で、取付け作業者が、現車において図4の黒い矢印で示したように、吹き出し口ユニットFUを持ち上げながら、膨出部52を空調ダクト40のサブダクト40bの下面に取付け、剛体平面部51の枕木方向の中央部位を支持骨13の本体部13aのチャンネル部に取付け、剛体平面部51の枕木方向外側の部位を支持骨13の取付け部13bの下端に取付ける。なお、図3に示したように、剛体平面部51の枕木方向の中央部位は、ボルトBTが吊手受け60の連結部61と剛体平面部51とライナー84と支持骨13の本体部13aとを下から貫通することによって、取付けられている。
【0029】
こうして、吹き出し口ユニットFUを取付けた後に、取付け作業者が、現車において図4の白い矢印で示したように、灯具70を持ち上げながら、灯具70の略直方体形状である頭部71を剛体平面部51の取付け孔51bに嵌め込み、灯具70の鍔部72を図示しないボルトを用いて剛体平面部51に取付ける。なお、天井構造TNの取付け作業は常に車室内側から行われるため、電気配線を予め灯具70の頭部71に接続しておき、その後、電気配線が接続された灯具70の頭部71が剛体平面部51の取付け孔51bに嵌め込まれることになる。また、図2に示したように、吊手TBが吊るされている吊手棒TAが、吊手受け60の支持部62に取付けられる。
【0030】
ここで、図5(A)は、図1に示したY部分の拡大図である。図5(A)に示したように、剛体平面部51の枕木方向内側の部位51Yは、中央天井板93の枕木方向外側の部位93Yの上から取付けられている。このため、中央天井板93の枕木方向外側の端部分に隙間S1が生じていても、この隙間S1が車室内から隠れるようになっている。このため、中央天井板93を取付ける際に枕木方向にラフに取付けることができ、枕木方向の長さを調整する手間を少なくすることができる。言い換えると、中央天井板93は枕木方向の寸法精度が低いものであっても良く、中央天井板93を製造する際にラフな作り込みが可能である。
【0031】
また、図5(B)は、図1に示したZ部分の拡大図である。図5(B)に示したように、剛体平面部51の枕木方向外側の部位51Zは、脇天井板91の枕木方向内側の部位91Zの上から取付けられている。このため、脇天井板91の枕木方向内側の端部分に隙間S2が生じていても、この隙間S2が車室内から隠れるようになっている。このため、脇天井板91を取付ける際に枕木方向にラフに取付けることができ、枕木方向の長さを調整する手間を少なくすることができる。言い換えると、脇天井板91は枕木方向の寸法精度が低いものであっても良く、脇天井板91を製造する際にラフな作り込みが可能である。
【0032】
本実施形態における天井構造TNの作用効果について説明する。
この天井構造TNによれば、吹き出し口カバー50は、空調ダクト40のサブダクト40bに取付けられる前に、吊手受け60が剛体平面部51に予め取付けられた吹き出し口ユニットFUになっている。そして、この吹き出し口ユニットFUは、現車において剛体平面部51で屋根構体10の支持骨13に取付けられるようになっている。このため、従来のように、取付け作業者が現車において上向きの作業で、吹き出し口カバー50の取付け位置を調整しつつ吹き出し口カバー50を取付けるとともに、吊手受け60の取付け位置を調整しつつ吊手受け60を取付ける必要がない。即ち、吹き出し口ユニットFUの取付け位置の調整及び取付け作業を一度行うことによって、吹き出し口カバー50及び吊手受け60を取付けることができる。従って、吹き出し口カバー50及び吊手受け60を取付ける際に、現車において取付け作業者の負担及び取付け作業の手間を少なくすることができる。
【0033】
また、屋根構体10の支持骨13に取付けられる吹き出し口ユニットFUの剛体平面部51は、剛体で且つ平面状である。このため、吹き出し口ユニットFUはその剛性が十分高いものであり、吹き出し口ユニットFUを取付ける際には、剛体平面部51において目標とする枕木方向及びレール方向に対して正確に延びるように平面出しをすることが容易である。従って、吹き出し口ユニットFU、即ち吹き出し口カバー50と吊手受け60とを精度良く取付けることができる。
【0034】
また、この天井構造TNによれば、吹き出し口ユニットFUは剛体平面部51に灯具60を取付けるための取付け孔51bを有しているため、灯具60は剛体で且つ平面状である剛体平面部51に取付けられるようになっている。このため、灯具60の取付け位置の調整が容易であり、取付け作業者の負担を少なくすることができる。この効果について、図6を用いて詳しく説明する。図6(A)は、従来において灯具270が取付けられている状態を枕木方向から見たときの説明図である。一方、図6(B)は、本実施形態において灯具70が取付けられている状態を枕木方向から見たときの説明図である。
【0035】
図6(A)に示したように、従来においては、灯具270が、天井パネル290の上に取付けられるようになっている。ここで、天井パネル290は、図示しない屋根構体の内骨に取付けられているが、この内骨には溶接によって熱歪みが生じていることが多い。このため、図6(A)に示したように、天井パネル290は、熱歪みが生じている内骨に取付けられることによって、平面状でなく歪んだ状態になる。こうして、灯具270を天井パネル290の上に取付ける際に、取付け位置の調整が難しく、上向き作業での取付け作業者の負担が大きかった。更に、灯具270の鍔部272と天井パネル290との間に大きな隙間S3が生じて、見栄えが悪くなっていた。なお、図6(A)において、隙間S3は誇張して描かれている。
【0036】
これに対して、図6(B)に示したように、本実施形態においては、灯具70が取付けられる剛体平面部51は、剛体で且つ平面状であるため、歪みがほとんどない。このため、灯具70を剛体平面部51の上に取付ける際に、取付け位置の調整が容易であり、上向き作業での取付け作業者の負担を少なくすることができる。更に、灯具70の鍔部72と剛体平面部51との間に隙間が生じることを防止でき、見栄えを良くすることができる。
【0037】
以上、本発明に係る鉄道車両の天井構造TNについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、吹き出し口ユニットFUは、剛体平面部51に灯具70を取付けるための取付け孔51bを有していたが、取付け孔51bを有していなくても良い。即ち、剛体平面部51の枕木方向の長さは、図1に示したように、中央天井板93の枕木方向外側の部位から支持骨13の取付け部13bの下端までであるが、中央天井板93の枕木方向外側の部位から支持骨13の本体部13aの右端部分までであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
TN 天井構造
10 屋根構体
13 支持骨
30 横流ファン
40 空調ダクト
40d 吹き出し口
50 吹き出し口カバー
51 剛体平面部
51b 取付け孔
60 吊手受け
70 灯具
91 脇天井板
93 中央天井板
FU 吹き出し口ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根構体に取付けられ冷風又は温風を運ぶ管路である空調ダクトと、
この空調ダクトの吹き出し口を覆う吹き出し口カバーと、
前記空調ダクトより枕木方向外側に配置され屋根構体の支持骨に取付けられる吊手受け及び灯具と、を備えた鉄道車両の天井構造において、
前記吹き出し口カバーは、剛体で且つ平面状である剛体平面部を有し、前記空調ダクトに取付けられる前に前記吊手受けが前記剛体平面部に予め取付けられた吹き出し口ユニットになっていて、
前記吹き出し口ユニットは、前記剛体平面部で前記屋根構体の支持骨に取付けられていることを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の天井構造において、
前記吹き出し口ユニットは、前記剛体平面部に前記灯具を取付けるための取付け孔を有することを特徴とする鉄道車両の天井構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両の天井構造において、
前記剛体平面部の枕木方向内側の部位は、前記空調ダクトの下側に配置される中央天井板の枕木方向外側の部位の上から取付けられ、
前記剛体平面部の枕木方向外側の部位は、前記屋根構体の支持骨に取付けられている脇天井板の枕木方向内側の部位の上から取付けられていることを特徴とする鉄道車両の天井構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236496(P2012−236496A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106582(P2011−106582)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)