説明

鉄道車両の運転室の窓開閉装置

【課題】運転席や車掌室の窓の開閉機構が丈夫で長持ちし、開閉動作も楽で故障しにくい鉄道車両の運転室の窓開閉装置を提供する。
【解決手段】内側の壁を除去した内部の構成を示す。この窓開閉装置は、ドア1の窓枠1a内部に組み込まれるが、開閉(上下)する窓2にガラス戸2gが嵌められ、下側に設けられた横枠2aの下側には横方向ガイド3が固定され、窓枠1aの縦方向には前記横方向ガイド3を縦方向にスライドさせる縦方向ガイド4が設けられ、アーム固定軸5回りに回転アーム6が回転するよう配置され、また、窓枠1aの中央部付近には開閉(上下)する窓2のバランスをとる窓釣合器7が設置されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の運転室或いは車掌室の窓を丈夫で長持ちし且つ円滑に開閉するための窓開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電車等の鉄道車両には客室に外部からの明りを取り込んだり、空気を入れ替えたり、或いは運転席(車掌室)で車両の発車や停止を確認するため、両側には開閉可能な窓が設けられる。この開閉式窓としては、上下に簡単に開閉できるよう通常「落とし窓」としてあるが、この「落とし窓」は開閉する際にあまり大きな重量がかからないよう軽減手段としてばねや流体シリンダやアクチュエータ等バランサー装置が用いられる。
【0003】
従来の窓を開閉するときのバランサー装置としては、枠内で窓を昇降可能に設け、該窓の下部に腕を配置し、該腕の上端で前記窓の下部を支承し、腕の下端を前記枠の一側に回転可能に連結し、前記腕よりも下方位置の枠部には支持部材を固設し、前記腕の中間部に複数個の上部軸穴を腕の長手方向に適宜間隔を有して形成し、前記支持部材には下側に水平方向の波形面を有する長穴状の上部穴を形成し、前記腕と支持部材の間に、腕を上方へ付勢する付勢手段を、その上端前部に係合し、下端を前記波形面に係合して架設した窓のバランサー装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
重量軽減手段として最も便利なものとしては、力のない女性や子どもでも操作可能な電動式の窓の開閉装置が知られている。しかし、途中で物や人体の一部が挟まったりした場合、人力で逆転させようとしても電動モータによる駆動装置の減速装置があるため駆動装置の逆転は困難である。そこで電動クラッチを用いて電動駆動と人力駆動とを切り換える装置が開示されている(特許文献2)。
【0005】
ガススプリングを用いた付勢手段や流体シリンダやアクチュエータ等を用いた窓の開閉機構は、ガス漏れ等により不具合が発生した場合、簡単には修理出来ず、また、多数の窓の開閉装置に使用する場合故障の確率も高くなる。一方、駆動機構の切り換えとして電動クラッチを用いた電動駆動機構の窓の開閉機構は、構造が比較的複雑となり、部品点数も多くその分組み込みが煩雑となり、切り換えや電動クラッチのON、OFF操作を必要とし操作性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−211497
【特許文献2】特開平10−317798号
【0007】
運転室や車掌室の窓には、従来は図4に示すような窓の開閉用の装置が用いられることがある(図は窓20が閉じた状態を示している)。この開閉用の窓20は、ドアの外枠22の中央部の片側にアーム軸固定具25を固定して上部アーム26aを回転自在に枢着し、該上部アーム26aの上端部にコロ29を回転可能に取り付け、該コロ29は横方向ガイド23内の溝23aを移動するようにしてある。また、前記アーム軸固定具25の上部アーム26aの近傍には、下部アーム26bの一方の端部が該上部アーム26aに対して軸25a回りに枢着するように取り付けられている。さらに、該下部アーム26bの他方の端部はリンク21aに軸により回転自在に取り付けられている。該リンク21aのもう一方は、ドアの外枠22の下部に設置されたコイルばね28のフック28aを係止させたリンク21bと相対回転可能に連結されている。
【0008】
また、窓20の端部両側には、前記横方向ガイド23と同様な溝を設けた縦方向に縦ガイド24、24が固定設置されている。すなわち、車掌等がこの窓を開けると、上部アーム26aは下降する窓20と一緒に前記アーム軸固定具25の軸25a回りに回転し、コロ29は前記横方向ガイド23の溝23aから縦ガイド24の溝に移動して下降する。そして、上部アーム26aは想像線で示すように下端部まで下りることになる。一方、下部アーム26bは、上部アーム26aが下端部まで下りると,コイルばね28のフックを係止したリンク21bは、該コイルばね28を引っ張った状態(伸ばした状態)で係止している。この場合、リンク機構は下降する窓20の任意の位置で停止させ安定させる役割をする。
【0009】
上記するように、上部アーム26aが下端部まで来て、窓が開いた状態になる。一方、窓20を閉める場合、下降した窓20を上げると、該窓20と共に上部アーム26aも上る。この場合、上部アーム26aには、前記コイルばね28が元の状態に戻るべく伸びの状態から縮小の状態へ付勢力がリンク機構を介して作用するため、窓を閉める力を補助して楽に窓を閉めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に示すような窓の開閉機構は、比較的簡単な構成で、また窓を閉める場合でも大きな力を必要とせず極めて便利な開閉機構である。しかし、繰り返して開閉するうちにコイルばねが疲労して破損しやすくなる、という問題がある。かかるコイルばねの破損は簡単に修理できず、修理するためには工場まで車両を移動させないと修復できず時間もかかる。また、電車の両側には運転席と車掌室に少なくとも四箇所に開閉窓があり、検査にも時間を要するという問題がある。
【0011】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、運転席や車掌室の窓の開閉機構が丈夫で長持ちし、開閉動作も楽で故障しにくい鉄道車両の運転室の窓開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、鉄道車両の運転室の窓開閉装置が、溝3aを形成した横方向ガイド3と、該横方向ガイド3を縦方向にスライドさせ内壁に固定される縦ガイド4と、片側の窓枠1aの中央部近傍に設けられたアーム固定軸5と、該アーム固定軸5の軸回りに回転しかつ端部に前記横方向ガイド3の溝3aに嵌め入れるコロ9を回転自在に取り付けた回転アーム6と、窓枠1aの中央部近傍に設けられ複数個のコイルばね8を用いた窓釣合器7と、
該窓釣合器7と回転アーム6とを前記アーム固定軸5近傍で接続されたリンク機構11と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鉄道車両の運転室の窓開閉装置を上記手段とすれば、多数のコイルばねを使用しているため繰り返し作用する力に対して強くなり簡単に破断しなくなる。また、長持ちするため、故障の回数を大幅に減らすことができるのでメインテナンスが楽となる。さらに、構成もコイルばねを多数取り付けた窓釣合器とし、アッセンブリ交換が可能となり取り換えが簡単となる。さらにまた、従来のように、コイルばねは昇降窓を開けた状態から閉めるため上下させる力が大きくならず比較的楽な開閉が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の鉄道車両の運転室の窓開閉装置の概要正面図である。
【図2】図1の窓釣合器部分の一部拡大図である。
【図3】本発明の鉄道車両の運転室の窓開閉装置を取り付けた運転室(車掌室)において、昇降窓を降ろして窓を開けた状態の図である。
【図4】従来の鉄道車両の運転室の窓開閉装置の概要正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の具体的実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、これらの図においても、図4に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0016】
図1は、本発明である鉄道車両の運転室の窓開閉装置の概要構成図であって、内側の壁を除去した内部の構成を示す。この窓開閉装置は、ドア1の窓枠1a内部に組み込まれるが、開閉(上下)する窓2にガラス戸2gが嵌められ、 下側に設けられた横枠2aの下側には横方向ガイド3が固定され、窓枠1aの縦方向には前記横方向ガイド3を縦方向にスライドさせる縦方向ガイド4が設けられ、アーム固定軸5回りに回転アーム6が回転するよう配置され、また、窓枠1aの中央部付近には開閉(上下)する窓2のバランスをとる窓釣合器7が設置されている。
【0017】
即ち、前記窓開閉装置ば、溝3aを形成した横方向ガイド3と、該横方向ガイド3を縦方向にスライドさせ内壁部10に固定される縦方向ガイド4と、片側窓枠1aの中央部近傍に設けられたアーム固定軸5と、該アーム固定軸5の軸回りに回転しかつ端部に前記横方向ガイド3の溝3aに嵌め入れるコロ9を回転自在に取り付けた回転アーム6と、窓枠1aの中央部近傍に設けられ複数個のコイルばね8を用いた窓釣合器7と、該窓釣合器7と回転アーム6とを前記アーム軸固定軸5近傍で前記窓釣合器7に接続されたリンク機構11と、を備えている。
【0018】
上記構成により、窓2を開けるときには、該窓2を把手等(図示せず)で押すと、回転アーム6は、アーム固定軸5回りに回転しながら端部のコロ9を転がしながら横方向ガイド3を縦ガイド4の下方向に移動させる。
【0019】
図2は、図1の窓釣合器7部分の一部拡大図である。該窓釣合器7は、多数のコイルばね8、8、・・と、両側にこれらのコイルばね8、8・・を固定するばね固定具12、13から構成され、一方のばね固定具12は取付板に設けた固定具14に雄ねじ15とナット16により固定され、他方のばね固定具13は、リンク11aを介してリンク11bとリンク11cに軸回転可能に枢着されている。前記回転アーム6と窓釣合器7とはリンク機構11(11a、11b、11c)を介して連結されている。この場合、コイルばね8の伸びに応じて張力が変化してもリンク機構11の作用により回転アーム6を上向きに付勢する力があまり変化しない。
【0020】
図3は、本発明の鉄道車両の運転室の窓開閉装置を取り付けた運転室(車掌室)において、開閉する窓2を降ろして窓を開けた状態の図を示す。すなわち、窓2を下方向へ押すと、回転アーム6の端部は、前記アーム回転軸5回りに回転し、該回転アーム6先端のコロ9が横方向ガイド6の溝3aを転がる。次いで縦方向ガイド4上を横方向ガイド3がスライドしながら降下する。この場合リンク11aが反時計回りに回転し、窓釣合器7のコイルばね8、8、・・を伸ばす。また、窓釣合器7は、回転アーム6とアーム固定軸5でリンク11bのトルクの付勢力に変換するが、コイルばね8、8、・・の伸びに応じて引っ張り力が変化してもリンク機構の作用により窓2を上向きに付勢する力はあまり変化しない。一方、窓2を閉める際には、窓釣合器7のコイルばね8、8、・・が上方へ付勢する力が作用しているため、窓2を閉める力を補助する。こうしてあまり大きな力を作用させることなく窓2を閉めることが可能となる。
【0021】
本発明で使用される窓釣合器7によれば、多数のコイルばね8を使用しているため、耐久力が増し、簡単には破断しなくなる。従って、その分故障が少なくなり,修理したり、メインテナンスする回数も減らすことができる。
【符号の説明】
【0022】
1a 窓枠
2 窓
3 横方向ガイド
3a 溝
4 縦方向ガイド
5 アーム固定軸
6 回転アーム
7 窓釣合器
8 コイルばね
9 コロ
11 リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を形成した横方向ガイドと、該横方向ガイドを縦方向にスライドさせ内壁に固定される縦ガイドと、片側の窓枠の中央部近傍に設けられたアーム固定軸と、該アーム固定軸の軸回りに回転しかつ端部に前記横方向ガイドの溝に嵌め入れるコロを回転自在に取り付けた回転アームと、窓枠の中央部近傍に設けられ複数個のコイルばね8を用いた窓釣合器と、該窓釣合器と回転アームとを前記アーム固定軸近傍で接続されたリンク機構と、を備えたことを特徴とする鉄道車両の運転室の窓開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−88467(P2011−88467A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241382(P2009−241382)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】