説明

鉄道車両用乗降口の床構造

【課題】車室内からもホームからも乗降口を明確に識別することができる鉄道車両用乗降口の床構造を提供する。
【解決手段】鉄道車両の乗降口に設けられた乗降扉14の車室内側床部に、光源としてLED22を利用した発光ユニット20を埋設するとともに、該発光ユニットの上方の床面に硬質透光部材28を着脱可能に設ける。また、発光ユニット20は上方が開口した溝形部材21の底部にLED22を設けるとともに、LED22を透明合成樹脂23で埋め込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用乗降口の床構造に関し、詳しくは、鉄道車両の車体側面に設けられた乗降口の床部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の乗降口床面とホーム上面との段差や両者の隙間を解消するために種々の提案が為されており、例えば、車体側ホーム側からステップ板を出没させることなどが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−180483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、乗降口とホームとの関係は一様ではなく、また、全ての車両及びホームに対応させるためには莫大な設備コストが必要であり、また、メンテナンスにも多大なコストや手間を必要とする。
【0004】
一方、「移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に対する基準」の第30条には、鉄道車両の旅客用乗降口に対する規定が設けられ、さらに、車内の段の端部とその周囲の部分との色の明度の差が大きいこと等により、車内の段を容易に識別できるものであることが規定されている。また、鉄道車両ではなく、自動車の構造及び設備における乗降口に対しては、第35条にて「乗降口の踏み段は、その端部とその周囲の部分との色の明度の差が大きいこと等により踏み段を容易に識別できるものでなければならない。」と規定されている。
【0005】
これらの規定等に基づいて、近年の鉄道車両では、乗降口の床面に黄色のラインやプレートを設けたりして乗降口を容易に識別できるようにしているが、より明確に識別できるものが望まれている。
【0006】
そこで本発明は、車室内からもホームからも乗降口を明確に識別することができる鉄道車両用乗降口の床構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両用乗降口の床構造は、鉄道車両の乗降口に設けられた乗降扉の車室内側床部に光源を埋設するとともに、該光源の上方の床面に硬質透光部材を設けたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の鉄道車両用乗降口の床構造は、前記光源が、上方が開口した溝形部材の底部に設けられるとともに、前記溝形部材の溝内に充填された透明合成樹脂に埋め込まれていること、さらに、前記光源が、乗降扉が閉じているときに消灯し、乗降扉が開く際に点滅し、乗降扉が開いているときに点灯し、乗降扉が閉じる際に点滅することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鉄道車両用乗降口の床構造によれば、乗降扉内側の床面が点灯又は点滅するため、乗降扉が開く前に降車客に対して乗降口を確実に認識させることができ、乗降客が開いた状態では乗車客にも乗降口を確実に認識させることができる。また、硬質透光部材を着脱可能に設けておくことにより、乗降客に踏まれたりして表面が汚れたり傷付いたりしても光源に影響することがなく、硬質透光部材のみを交換すれば初期の状態に戻すことができる。
【0010】
さらに、光源を透明合成樹脂に埋め込むことにより、光源部分を確実に保護することができるとともに、水の侵入から光源を保護することができる。また、乗降扉の開閉等に伴って光源を点灯、点滅、消灯させることにより、乗降扉の開閉動作に対する注意も喚起することができ、走行中に目障りとなることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図は本発明の一形態例を示すもので、図1は図2のI−I断面図、図2は乗降口の一半部を示す平面図、図3は光源として使用した発光ユニットの一例を示す一部断面正面図、図4は鉄道車両の車体における乗降口及び光源部の配置例を示す説明図である。
【0012】
まず、本形態例に示す乗降口11は、車体12の両端に配置されたデッキ部13の両側にそれぞれ設けられており、各乗降口11には、両開き構造の乗降扉14が設けられている。各乗降扉14は、床面に設けられたガイドレール15及び上部ガイド(図示せず)にガイドされて乗降口11を開閉するように形成されている。
【0013】
ガイドレール15の外側に位置するクツズリ16には、開口幅方向中央に外れ止め17が設けられるとともに、2本の表示帯18が開口幅方向全体にわたって設けられている。この表示帯18は、乗降口11の床面縁端の視認性を向上させるために設けられるものであって、クツズリ16に対して明度が大きく異なる色、例えば黄色に着色された細長い部材がクツズリ16に嵌め込まれている。
【0014】
一方、ガイドレール15の内側で乗降扉14の車室内側直近の床部には、発光ユニット20が埋設されている。この発光ユニット20は、上方が開口した溝形部材21の底部に長手方向に対して所定間隔で光源となる複数のLED22を配設し、該LED22を溝形部材21の溝内に充填された透明合成樹脂23に埋め込むとともに、溝形部材21の両端からリード線24を引き出し、さらに、溝底板両端部に固定ネジ25の止着部26を設けている。透明合成樹脂23は、溝形部材21の開口上方まで断面矩形状に突出するように形成されており、また、溝形部材21内に水分が進入しないように形成されている。
【0015】
前記発光ユニット20は、溝形部材21の下面が台枠上面板27の上面に接しないようにして床部内に配置され、前記止着部26を挿通した固定ネジ25を扉下枠部に設けられた取付金具(図示せず)に止着することによって車体12の所定位置に取り付けられる。発光ユニット20の上方に位置する床面には、硬質透光部材28が着脱可能な状態で設けられている。この硬質透光部材28は、断面凸形状を有するものであって、抑え板29に設けたスリット29aに凸部28aを嵌合させた状態で固定ネジ30によって床板31の上面に取り付けられている。
【0016】
このように配設された発光ユニット20は、リード線24を電源制御部に接続し、乗降扉14の開閉作動状態や車両の走行位置に応じてLED22を点灯又は点滅させることにより、乗客に対しては、点滅させることによって停車駅に接近したことや停車時に開く乗降扉14の位置及び方向を知らせることができる。また、ドアスイッチに連動して点灯又は点滅させることにより、乗降扉14が開閉動作を行う際の注意を喚起することができる。さらに、乗降扉14が開いているときに点灯又は点滅させることにより、車内やホームの乗降客に対して乗降口11の床面を認識させることができ、足下への注意を喚起してホームとの隙間や段差をより確実に認識させることができる。
【0017】
また、光源としてLED22を透明合成樹脂23に埋め込んだ発光ユニット20を用いることにより、LED22を外力等から保護することができるので、長期にわたって安定した状態で使用することができる。さらに、発光ユニット20の下面を浮かせて配置したことによって発光ユニット20が水に浸ることを防止でき、透明合成樹脂23で埋め込んだことと相俟ってLED22や配線等が水分によって損傷することを防止できる。
【0018】
しかも、発光ユニット20の上方に硬質透光部材28を設けたことにより、踏まれても発光ユニット20や透明合成樹脂23が直接損傷することを防止することができる。また、硬質透光部材28を抑え板29及び固定ネジ30によって取り付けたことにより、硬質透光部材28の上面が傷付いたり、汚れたりしても容易に交換することが可能である。
【0019】
なお、乗降口11や乗降扉14等の形態及び構造は任意であり、車体片側に1箇所でもよく、3箇所以上に設置されていてもよい。また、透明合成樹脂23は、車体装着時に硬質透光部材28によって保護されるので、比較的安価な透明合成樹脂、例えば、AS樹脂、PS樹脂等を用いることができる。一方、硬質透光部材28は、靴底や傘の先端等からの衝撃に耐えられるように、PC樹脂やガラス等を用いることが好ましい。透明合成樹脂23及び硬質透光部材28は、適当な光量が得られれば半透明であってもよく、着色してあってもよい。また、光源となるLED22は、任意の発色のものを使用することができるが、注意を喚起する意味からは、赤色や黄色が好ましい。さらに、複数の色調のLEDあるいは他の光源を組み合わせることもでき、異なる色調で点灯又は点滅させることもでき、状況に応じて点滅間隔が異なるように設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図2のI−I断面図である。
【図2】乗降口の一半部を示す平面図である。
【図3】光源として使用した発光ユニットの一例を示す一部断面正面図である。
【図4】鉄道車両の車体における乗降口及び光源部の配置例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
11…乗降口、12…車体、13…デッキ部、14…乗降扉、15…ガイドレール、16…クツズリ、17…外れ止め、18…表示帯、20…発光ユニット、21…溝形部材、22…LED、23…透明合成樹脂、24…リード線、25…固定ネジ、26…止着部、27…台枠上面板、28…硬質透光部材、28a…凸部、29…抑え板、29a…スリット、30…固定ネジ、31…床板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の乗降口に設けられた乗降扉の車室内側床部に光源を埋設するとともに、該光源の上方の床面に硬質透光部材を設けたことを特徴とする鉄道車両用乗降口の床構造。
【請求項2】
前記光源は、上方が開口した溝形部材の底部に設けられるとともに、前記溝形部材の溝内に充填された透明合成樹脂に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用乗降口の床構造。
【請求項3】
前記光源は、乗降扉が閉じているときに消灯し、乗降扉が開く際に点滅し、乗降扉が開いているときに点灯し、乗降扉が閉じる際に点滅することを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両用乗降口の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−176429(P2007−176429A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379374(P2005−379374)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(391016299)名古屋鉄道株式会社 (4)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)