説明

鉄道高架橋における遊間漏水防止装置

【課題】コンクリート床版遊端の表面における防水シートの接触界面を通しての界面漏入と、コンクリート床版の遊端表面のコンクリート表層部を通しての浸透漏入とを防止し、遊間漏水を確実に防止しつつ、床版の伸縮を良好に吸収する鉄道高架橋における遊間漏水防止装置を提供する。
【解決手段】鉄道高架橋における遊間8を防水シート5で覆い、該防水シート5の左右翼シート部6,7を第一、第二コンクリート床版1A,1Bの水路4の遊端表面に支持し、該防水シート5の中間部を上記両支持部間において褶曲し、上記第一、第二コンクリート床版1A,1Bの水路4の遊端表層部に第一、第二浸透防水層11,12を形成し、更に上記防水シート5の左右翼シート部6,7表面と該左右翼シート部6,7の上記遊間8とは反対側の端縁に沿う第一、第二コンクリート床版1A,1Bの上記水路4の表面部分とを連続して覆う第一、第二塗布防水層13,14を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道高架橋を形成するコンクリート床版の遊端間に形成された遊間を通しての漏水を防止する遊間漏水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1,図2に示すように、コンクリート床版1は床版表面から嵩上げされて橋長方向に延びる上り用と下り用のスラブ軌道2を有し、両スラブ軌道2間に中央通路3を備え、各スラブ軌道2の外側に沿い橋長方向に延びる水路4を形成している。
【0003】
而して新幹線等の鉄道高架橋は一定長の単位コンクリート床版1毎に順次構築する関係から、橋長方向において隣接する第一コンクリート床版1Aの遊端と同第二コンクリート床版1Bの遊端間には、橋幅方向に連続する遊間8(スラブ軌道間遊間8aと水路間遊間8bと通路間遊間8c)が生成され、該遊間8を通しての漏水を防止する工事、特に水路間遊間8bにおける遊間漏水防止工事が不可欠となる。
【0004】
従来上記鉄道高架橋における遊間漏水防止装置として、遊間8の内奥に弾性バックアップ材を圧入した上でシリコン等の防水材を充填する方法、又はシート材で水平に覆い、その左右翼をスラブ軌道2の表面に接着剤で水密的に接着する方法等が採られているが、温度変化や強い振動によってシリコンや防水シートの接着面に剥離を生じ、該剥離部からの雨水の漏入を来たし、遊間漏水を適切に防止し難い問題、更には上記シリコン充填法やシート材で水平に覆う方法では床版1の伸縮を充分に吸収し難い問題を有しており、その解決が課題となっている。
【0005】
発明者らは上記鉄道高架橋における遊間漏水防止装置として、図3に示すように、第一コンクリート床版1Aの遊端、特に水路間遊端の表面に比較的肉厚のゴムシートの如き曲げ弾性と圧縮弾性を有する防水シート5の左翼シート部6を支持すると共に、第二コンクリート床版1Bの水路間遊端の表面に同防水シート5の右翼シート部7を支持して上記水路間遊間8bを該防水シート5で覆いつつ同遊間8b内にU字形に褶曲し、該防水シート5の表面に鉄板(押え板)9を重ね、該押え板9をボルト17にて床版1A,1Bに対し締結し、防水シート5の左右翼を強く押圧して床版表面に密着せしめ、褶曲部10にてコンクリート床版1A,1Bの伸縮を吸収しつつ、防水シート5の密着にて上記遊間8bにおける漏水を防止する方法を試行した。
【0006】
上記遊間漏水防止装置を、水路間遊間8bとスラブ軌道間遊間8aと通路間遊間8cに連続して形成する方法についても試行した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
然しながら上記遊間をゴムシートの如き防水シートで覆い、該防水シートを押え板で押圧する構造では、上記先行例における強振動による剥離漏水を解消でき、コンクリート床版の充分な伸縮吸収効果を得ることができたが、防水シートの左右翼シート部が支持されたコンクリート床版遊端の表面と防水シートの左右翼シート部裏面との接触界面に雨水が界面漏入し遊間漏水を来す問題、更には防水シートの左右翼シート部を支持する上記コンクリート床版遊端の表面のコンクリート表層部に雨水が浸透漏入し遊間漏水を来す問題を有し、上記遊間における漏水防止目的を確実に達成し難い課題を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記鉄道高架橋における遊間漏水防止装置が有する課題を適切に解決することを目的とするものである。
【0009】
本発明に係る遊間漏水防止装置は、鉄道高架橋におけるコンクリート床版の水路遊端間の遊間を曲げ弾性と圧縮弾性を有する比較的肉厚の防水シートで覆い、該防水シートの左翼シート部を上記水路間遊間を形成する第一コンクリート床版の遊端表面に支持すると共に、第二コンクリート床版の水路遊端表面に同防水シートの右翼シート部を支持して防水シートを上記両支持部間において褶曲する構成を採用しつつ、上記防水シートの左翼シート部を支持するコンクリート床版の水路遊端表面(床版低床部表面)の表層部に第一浸透防水層を形成すると共に、防水シートの右翼シート部を支持するコンクリート床版の水路遊端表面(床版低床部表面)の表層部に第二浸透防水層を形成してコンクリート床版の遊端表層部における前記雨水の浸透漏入を防止し、これに起因する遊間漏水を防止する構成としたものである。
【0010】
更に上記第一、第二浸透防水層に加え、上記防水シートの左翼シート部表面と該左翼シート部の端縁に沿う上記第一コンクリート床版の床版低床部表面部分とを覆う第一塗布防水層を形成すると共に、防水シートの右翼シート部表面と該右翼シート部の端縁に沿う上記第二コンクリート床版の床版低床部表面部分とを覆う第二塗布防水層を形成し、前記防水シートの左右翼シート部とコンクリート床版の水路遊端(床版低床部遊端)表面との接触界面を通しての雨水の界面漏入を防止する構成としたものである。
【0011】
よって上記第一、第二浸透防水層と第一、第二塗布防水層と防水シートの協働により前記遊間漏水防止目的を確実に達成できるようにしたものである。
【0012】
更に他例として、上記第一コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端上に遮水堰を形成し、上記両水路の遊端間遊間を曲げ弾性と圧縮弾性を有する比較的肉厚のゴムシート、合成樹脂シートの如き防水シートで覆い、該防水シートの左翼シート部を上記第一コンクリート床版の遮水堰の表面に支持すると共に、同防水シートの右翼シート部を上記第二コンクリート床版の遮水堰の表面に支持し、該防水シートの中間部を上記両支持部間において褶曲する構成を採用しつつ、上記第一コンクリート床版の遮水堰の表層部に第一浸透防水層を形成すると共に、上記第二コンクリート床版の遮水堰の表層部に第二浸透防水層を形成し、更に上記防水シートの左翼シート部の表面と該左翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第一コンクリート床版の床版低床部の表面部分とを連続して覆う第一塗布防水層を形成すると共に、上記防水シートの右翼シート部表面と該右翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第二コンクリート床版の床版低床部の表面部分とを連続して覆う第二塗布防水層を形成し、前記防水シートの左右翼シート部とコンクリート床版の遮水堰表面との接触界面を通しての雨水の界面漏入を防止する構成としたものである。
【0013】
よって遮水堰と防水シートと上記第一、第二浸透防水層と第一、第二塗布防水層の協働により前記遊間漏水防止目的を確実に達成できるようにしたものである。
【0014】
更に上記防水シートの左右翼シート部表面を押え板で押圧する構造を併用し、防水シートと第一、第二塗布防水層と上記第一、第二浸透防水層の三者を加圧密接せしめ、上記漏水防止効果を向上させたものである。
【0015】
上記押え板は上記防水シートの表面を押圧する一枚の押え板で形成するか、上記防水シートの左翼シート部を押圧する第一押え板と防水シートの右翼シート部を押圧する第二押え板で形成し、第一押え板と第二押え板間に遊間を形成して互いに拘束されることなくコンクリート床版の伸縮に追随して接近離間できるようにする。
【0016】
又は上記第一押え板と第二押え板間を上記両コンクリート床版の伸縮を吸収する伸縮吸収板で連結し、該伸縮吸収板にて上記防水シートの褶曲部を覆って雨水侵入と劣化を防止すると共に、コンクリート床版の伸縮に追随し接近離間できるようにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鉄道高架橋における遊間漏水防止装置によれば、防水シートの左右翼シート部が接触支持されたコンクリート床版遊端の表面と同左右翼シート部下面との接触界面に雨水が界面漏入し遊間漏水を来す問題と、防水シートの左右翼シート部を接触支持する上記コンクリート床版の遊端表面のコンクリート表層部に雨水が浸透漏入し遊間漏水を来す問題を確実に防止しつつ、床版伸縮を吸収する目的を有効に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態を図4乃至図10に基づき説明する。
【0019】
新幹線等の鉄道高架橋におけるコンクリート床版1は図1,2に基づき説明したように、橋長方向に延びる凸成されたスラブ軌道2と凹成された水路4と同通路3を有し、隣接する第一コンクリート床版1Aの遊端と同第二コンクリート床版1Bの遊端間に遊間8を有する。該遊間8は上記スラブ軌道2の遊端間と水路4の遊端間と通路3の遊端間を横切るように橋幅方向に連続して延在する。
【0020】
図4,図10に示すように、上記遊間8、少なくとも上記水路間遊間8bをゴムシートの如き可撓性を有する防水シート5、即ち曲げ弾性と圧縮弾性を有する比較的肉厚の防水シート5で覆い、該防水シート5の左翼シート部6を上記遊間8bを形成する第一コンクリート床版1Aの遊端(水路4を形成する床版低床部29の遊端)の表面に支持すると共に、第二コンクリート床版1Bの遊端(水路4を形成する床版低床部30の遊端)の表面に同防水シート5の右翼シート部7を支持して防水シート5を上記両支持部間において上記遊間8b内にU字形に褶曲するか、又は破線示するように遊間8b上にU字形に褶曲し、雨水に対し遊間8bを閉鎖しながら、該褶曲部10にてコンクリート床版1A,1Bの伸縮を吸収する構成とする。褶曲部10を上方に立ち上げる場合は、それ自身が遮水堰を構成する。
【0021】
上記防水シート5の左翼シート部6を支持するコンクリート床版1Aの水路遊端表面(床版低床部29表面)の表層部に第一浸透防水層11を形成すると共に、防水シート5の右翼シート部7を支持するコンクリート床版1Bの水路遊端表面(床版低床部30表面)の表層部に第二浸透防水層12を形成してコンクリート床版1A,1Bの遊端表層部における前記雨水の浸透漏入L2を防止し、これに起因する遊間漏水L3を防止する。
【0022】
更に上記第一、第二浸透防水層11,12に加え、上記防水シート5の左翼シート部6表面と該左翼シート部6の端縁に沿う上記第一コンクリート床版1Aの床版低床部29表面部分とを連続して覆う第一塗布防水層13を形成すると共に、防水シート5の右翼シート部7表面と該右翼シート部7の端縁に沿う上記第二コンクリート床版1Bの床版低床部表面部分とを連続して覆う第二塗布防水層14を形成し、前記防水シート5の左右翼シート部6,7とコンクリート床版1A,1Bの水路遊端(床版低床部29,30の遊端)表面との接触界面15を通しての雨水の界面漏入L1を防止する。
【0023】
上記図4に示す鉄道高架橋における遊間漏水防止装置は、コンクリート床版1A、1Bの水路間遊間8bとスラブ軌道間遊間8aと通路間遊間8cとに連続して形成する場合を含む。
【0024】
又上記図4に示す鉄道高架橋における遊間漏水防止装置は、図10に示す如く水路4遊端に段落ち部33を形成し、又は水路4遊端とスラブ軌道2遊端と通路3遊端に連続する段落ち部33を形成し、該段落ち部33の底面上に上記防水シート5と上記第一、第二浸透防水層11,12と上記第一、第二塗布防水層13,14と後記する押え板16を施工した場合を包含する。
【0025】
即ちコンクリート床版1A,1Bの遊端表面とは、上記の通り、水路4の底面(床版低床部29,30の表面)が全長においてフラットな場合の他、遊端のみに上記段落ち部であるL形段部を形成した場合、又は逆に凸部を形成した場合を含む。
【0026】
以下第二例として上記水路4遊端に凸部たる遮水堰25,26を形成し、上記鉄道高架橋における遊間漏水防止装置を構成した場合について説明する。
【0027】
図5A,Bに示すように、上記第一コンクリート床版1Aの水路4を形成する床版低床部29の遊端上に遮水堰25をコンクリートにて一体に嵩上げする。
【0028】
同様に、上記第二コンクリート床版1Bの水路4を形成する床版低床部30の遊端上に遮水堰26をコンクリートにて一体に嵩上げする。該遮水堰25,26はスラブ軌道2と略同レベルとなるように嵩上げする。
【0029】
図6に示すように、上記両水路4の遊端間の上記遊間8bを防水シート5で覆い、該防水シート5の左翼シート部6を上記第一コンクリート床版1Aの遮水堰25の表面に支持すると共に、同防水シート5の右翼シート部7を上記第二コンクリート床版1Bの遮水堰26の表面に支持し、該防水シート5の中間部を上記両支持部間において上記両遮水堰25,26間に形成された遊間8b内に垂下するように褶曲するか、又は破線示するように遊間8b内にU字形に膨出するように褶曲する。
【0030】
更に上記第一コンクリート床版1Aの遮水堰25の表層部に第一浸透防水層11を形成すると共に、上記第二コンクリート床版1Bの遮水堰26の表層部に第二浸透防水層12を形成してコンクリート床版1A,1Bの遊端表層部における前記雨水の浸透漏入L2を防止し、これに起因する遊間漏水L3を防止する。
【0031】
加えて上記防水シート5の左翼シート部6の表面と該左翼シート部6の上記遊間8bとは反対側の端縁に沿う第一コンクリート床版1Aの床版低床部29の表面部分とを連続して覆う第一塗布防水層13を形成すると共に、上記防水シート5の右翼シート部7表面と該右翼シート部7の上記遊間8bとは反対側の端縁に沿う第二コンクリート床版1Bの床版低床部30の表面部分とを連続して覆う第二塗布防水層14を形成し、前記防水シート5の左右翼シート部6,7とコンクリート床版1A,1Bの遮水堰25,26表面との接触界面15を通しての雨水の界面漏入L1を防止する。
【0032】
好ましくは図4,図6に示す遊間漏水防止装置において、上記防水シート5の左右翼シート部6,7と接する表層部に上記第一、第二浸透防水層11,12を形成するに際し、図示のように、防水シート5が途切れた部分、即ち左右翼シート部6,7の端縁に沿う上記両コンクリート床版1A,1Bの表面部分23,24に第一、第二浸透防水層11,12を連続して形成する。
【0033】
よって第一、第二浸透防水層11,12と第一、第二塗布防水層13,14とは、防水シート5が途切れたコンクリート床版1A,1Bの表面部分23,24において互いに密着せしめる。
【0034】
又上記遊間8bとは反対側の遮水堰25,26の端部表面を垂直面にする他、傾斜面27,28にし、上記第一、第二浸透防水層11,12を該垂直面又は傾斜面27,28に連続して形成するか、又は該端部表面(垂直面又は傾斜面27,28)の下端縁に連続するコンクリート床版1A,1Bの表面部分23,24に同防水層11,12を連続して形成する。
【0035】
以上説明した防水シート5の左右翼シート部6,7は床版表面、即ち第一、第二浸透防水層11,12の表面に単に重ね置きするか、重ね置きした上でボルトで固定するか、接着剤で固定する。
【0036】
コンクリートは水に対し浸透性を有し、上記第一、第二浸透防水層11,12にて防水シート5が途切れた部分(左右翼シート部6,7の端面に沿う部分)からのコンクリートを通しての雨水の浸透漏入L2を防止する。
【0037】
更に上記第一、第二浸透防水層11,12はコンクリート表層部に浸透しつつ、コンクリート表面に平滑な薄膜を形成し、上記防水シート5の左右翼シート部6,7との密着性を向上し、水密状態を健全に形成する。
【0038】
加えて床版表面部分23,24に施された第一、第二塗布防水層13,14と同第一、第二浸透防水層11,12とを強固に密着し、水密効果を向上する。
【0039】
上記遊間漏水防止装置により、防水シート5による遮水作用と、上記第一、第二浸透防水層11,12による浸透漏入防止作用と、第一、第二塗布防水層13,14による界面漏入防止作用との協働により、簡単な構成で前記遊間漏水防止目的を確実に達成できる。
【0040】
又上記界面漏入L1をより確実にする手段として、防水シート5の左右翼シート部6,7が支持されるコンクリート床版1A,1Bの遊端表面間に水膨張性止水剤32の層を形成する。
【0041】
即ち第一、第二浸透防水層11,12が施された床版1A,1Bの表面と防水シート5の左右翼シート部6,7間に上記水膨張性止水剤32を成層する。この水膨張性止水剤32はクロロピレンゴムに高分子吸水性ポリマーを配合したものであり、水を吸収して膨張し止水効果を発揮する。
【0042】
更に図4,図6に示すように、上記防水シート5の左右翼シート部6,7表面を押え板16で押圧する構造を併用し、防水シート5と第一、第二塗布防水層13,14と上記第一、第二浸透防水層11,12とコンクリート床版1A,1B遊端の表面(遮水堰25,26表面を含む)を加圧密接せしめ、上記遊間漏水防止効果を向上させたものである。
【0043】
図4,図6に示すように、上記押え板16は上記防水シート5の表面を押圧する金属板の如き一枚の押え板で形成する。該押え板16は第一、第二塗布防水層13,14に面圧を与えて防水シート5の左右翼シート部6,7の表面に加圧密着せしめ、同時に該左右翼シート部6,7に面圧を与えて第一、第二浸透防水層11,12の表面に加圧密着せしめる。
【0044】
一枚の押え板16を用いる場合、押え板16と少なくとも一方の塗布防水層13又は14との間に保護板31を介在し、換言すると、塗布防水層13又は14の表面に保護板31を重ね、該保護板31の表面に押え板16を重ね、押え板16が床版1A,1Bの伸縮に追随して保護板31の表面において摺動できるようにする。
【0045】
上記押え板16は防水シート5と第一、第二浸透防水層11,12と第一、第二塗布防水層13,14を覆い劣化を防止すると共に、遊間8(水路間遊間8b又は水路間遊間8bとスラブ軌道間遊間8aと通路間遊間8c)内における防水シート5の褶曲部10を覆い、同所への雨水侵入を防止する。
【0046】
上記押え板16の締結手段として、例えば押え板16の橋長方向の両端をボルト17にてコンクリート床版1A,1Bの遊端に対し締結する。
【0047】
又遮水堰25,26を設ける場合には、上記押え板16は遮水堰25,26に対しボルト17により締結する。
【0048】
即ちボルト17は押え板16と、保護板31と、第一、第二塗布防水層13,14と、防水シート5の左右翼シート部6,7と、第一、第二浸透防水層11,12を貫き、遊端(遮水堰25,26を含む)に対し締結する。ボルト17頭部はパッキン22を介して押え板16表面に座着する。
【0049】
この場合、一方のボルト17が貫挿される押え板16の端部には橋長方向に長い長孔18を設け、該長孔18内に一方のボルト17を遊挿し、該長孔18の範囲で押え板16がコンクリート床版1A,1Bの伸縮に追随して移動できるようにする。
【0050】
押え板16の他例として図7に示すように、互いに分離する第一押え板16aと第二押え板16bを用いることができる。即ち上記防水シート5の左翼シート部6を第一押え板16aで押圧し、防水シート5の右翼シート部7を第二押え板16bで押圧し、該第一、第二押え板16a,16bの端部間に遊間20を形成して第一押え板16aと第二押え板16bとが互いに拘束されることなくコンクリート床版1A,1Bの伸縮に追随して接近離間できるようにする。
【0051】
又押え板16の他例として図8,図9に示すように、上記第一押え板16aと第二押え板16b間に上記両コンクリート床版1A,1Bの伸縮を吸収する伸縮吸収板19を形成し、該伸縮吸収板19にて遊間8(水路間遊間8b又は水路間遊間8bとスラブ軌道間遊間8aと通路間遊間8c)における防水シート5の褶曲部10を覆って雨水侵入と劣化を防止し、且つコンクリート床版1A,1Bの伸縮に追随して接近離間できるようにする。
【0052】
図8,図9に示した上記伸縮吸収板19の具体例について詳述すると、図8に示すように、互いに分離せる第一押え板16aと第二押え板16bを用い、該第一押え板16aの端部と第二押え板16bの端部に互いに遊び20を介して相の手遊合する相の手継手部21を設け、遊び20の範囲で接近離間方向に移動可能にする。同時に相の手継手部21、即ち伸縮吸収板19にて上記防水シート5の褶曲部10を覆う。
【0053】
又図9は上記第一、第二押え板16a,16bの端部間を薄肉の山形又は蛇腹状の伸縮吸収板19にて一体に連結し伸縮できるようにしており、該伸縮吸収板19の両端を第一、第二押え板16a,16bの各端に螺子止め又は鋲止め又は溶接した例を示している。
【0054】
次に上記した第一、第二浸透防水層11,12と第一、第二塗布防水層13,14の具体例について説明する。
【0055】
上記第一、第二浸透防水層11,12を形成する防水材の一例としてウレタン系防水材(ウレタン系溶剤プライマー)又はエポキシ系防水材(エポキシ系溶剤プライマー)を用いる。エポキシ系防水材の配合例を挙げれば、下記の通りである。
【0056】
<主剤>(A液)
エポキシ樹脂 40〜 50%
造膜助剤・添加剤 1〜 5%
水 40〜 50%
<硬化剤>(B液)
変性脂肪族ポリミアン 30〜 40%
造膜助剤・添加剤 1〜 5%
水 50〜 60%
<フィラー> 90〜100%
【0057】
又上記第一、第二塗布防水層13,14を形成する防水材の一例としてウレタン系防水材(ウレタンポリマー樹脂)を用いる。配合例を挙げれば、下記の通りである。
【0058】
<主剤>(A液)
4,4’−ジフェニルメタンジイシシアネート(MDI) 30〜40%
NCO基末端ウレタンプレポリマー 45〜55%
可塑剤 10〜20%
<硬化剤>(B液)
ポリミアン 10〜20%
ポリオール 75〜85%
着色顔料 1〜 5%
添加剤 1〜 3%
【0059】
上記第一、第二浸透防水層11,12を形成する防水材と、上記第一、第二塗布防水層13,14を形成する防水材とは、好ましい例示として高圧で施工面に吹き付ける方法を適用する。
【0060】
何れのジェットスプレーの場合にも、A液とB液を事前に混合した上で施工面に吹き付ける。又はA液とB液を異なるノズルから同時に噴射し、施工面に吹き付ける衝突混合吹き付け法による。
【0061】
上記第一、第二塗布防水層13,14は比較的層厚に形成することが好ましく、その方法として上記ウレタン樹脂系防水材を上記事前混合又は衝突混合による吹き付け方法により形層する。
【0062】
本発明に係る鉄道高架橋における遊間漏水防止装置によれば、コンクリート床版1A,1Bの伸縮を良好に吸収しつつ、前記接触界面15に雨水が界面漏入する問題と、上記コンクリート床版1A,1Bの遊端表面のコンクリート表層部に雨水が浸透漏入する問題を有効に解消し、遊間漏水を防止する目的を適切に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】鉄道高架橋におけるコンクリート床版の正面図。
【図2】上記床版間の遊間を示す平面図。
【図3】鉄道高架橋における遊間漏水防止装置の試行例を示す断面図。
【図4】鉄道高架橋における遊間漏水防止装置の第一例を示す断面図。
【図5】Aは遮水堰を設けたコンクリート床版の平面図、Bは同正面図。
【図6】鉄道高架橋における遊間漏水防止装置の第二例を示す断面図。
【図7】上記第一例と第二例における押え板の第一構造例を示す断面図。
【図8】上記第一例と第二例における押え板の第二構造例を示す断面図。
【図9】上記第一例と第二例における押え板の第三構造例を示す断面図。
【図10】鉄道高架橋における遊間漏水防止装置の第三例を示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
1…コンクリート床版、1A…第一コンクリート床版、1B…第二コンクリート床版、2…スラブ軌道、3…通路、4…水路、5…防水シート、6…左翼シート部、7…右翼シート部、8…遊間、8a…スラブ軌道間遊間、8b…水路間遊間、8c…通路間遊間、10…褶曲部、11…第一浸透防水層、12…第二浸透防水層、13…第一塗布防水層、14…第二塗布防水層、15…接触界面、16…押え板、16a…第一押え板、16b…第二押え板、17…ボルト、18…長孔、19…伸縮吸収板、20…遊間,遊び、21…相の手継手部、22…パッキン、23,24…コンクリート床板の表面部分、25,26…遮水堰、27,28…傾斜面、29,30…床版低床部、31…保護板、32…水膨張性止水剤、33…段落ち部、L1…界面漏入、L2…浸透漏入、L3…遊間漏水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋長方向において隣接する第一コンクリート床版と第二コンクリート床版の夫々にスラブ軌道と水路とが形成され、該第一、第二コンクリート床版の各遊端間に上記両スラブ軌道の遊端間と両水路の遊端間において連続する遊間が形成されている鉄道高架橋における遊間漏水防止装置であって、上記両水路の遊端間の上記遊間を防水シートで覆い、該防水シートの左翼シート部を上記第一コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端表面に支持すると共に、同防水シートの右翼シート部を上記第二コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端表面に支持し、該防水シートの中間部を上記両支持部間において褶曲し、上記第一コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端表層部に第一浸透防水層を形成すると共に、上記第二コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端表層部に第二浸透防水層を形成し、更に上記防水シートの左翼シート部表面と該左翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第一コンクリート床版の上記水路を形成する床版低床部の表面部分とを連続して覆う第一塗布防水層を形成すると共に、上記防水シートの右翼シート部表面と該右翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第二コンクリート床版の上記水路を形成する床版低床部の表面部分とを連続して覆う第二塗布防水層を形成したことを特徴とする鉄道高架橋における遊間漏水防止装置。
【請求項2】
橋長方向において隣接する第一コンクリート床版と第二コンクリート床版の夫々にスラブ軌道と水路とが形成され、該第一、第二コンクリート床版の各遊端間に上記両スラブ軌道の遊端間と両水路の遊端間において連続する遊間が形成されている鉄道高架橋における遊間漏水防止装置であって、上記第一コンクリート床版の水路を形成する床版低床部の遊端上に遮水堰を形成し、上記両水路の遊端間の上記遊間を防水シートで覆い、該防水シートの左翼シート部を上記第一コンクリート床版の遮水堰の表面に支持すると共に、同防水シートの右翼シート部を上記第二コンクリート床版の遮水堰の表面に支持し、該防水シートの中間部を上記両支持部間において褶曲し、上記第一コンクリート床版の遮水堰の表層部に第一浸透防水層を形成すると共に、上記第二コンクリート床版の遮水堰の表層部に第二浸透防水層を形成し、更に上記防水シートの左翼シート部の表面と該左翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第一コンクリート床版の床版低床部の表面部分とを連続して覆う第一塗布防水層を形成すると共に、上記防水シートの右翼シート部表面と該右翼シート部の上記遊間とは反対側の端縁に沿う第二コンクリート床版の床版低床部の表面部分とを連続して覆う第二塗布防水層を形成したことを特徴とする鉄道高架橋における遊間漏水防止装置。
【請求項3】
上記防水シートの左翼シート部を押圧する第一押え板と防水シートの右翼シート部を押圧する第二押え板とを備え、第一押え板の遊端と第二押え板の遊端間に遊間を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道高架橋における遊間漏水防止装置。
【請求項4】
上記第一押え板と第二押え板間を上記両コンクリート床版の伸縮を吸収する伸縮吸収板で連結したことを特徴とする請求項3記載の鉄道高架橋における遊間漏水防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−19369(P2009−19369A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181280(P2007−181280)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(300082140)エコ ジャパン株式会社 (19)
【出願人】(301077437)朝日エンヂニヤリング株式会社 (17)
【Fターム(参考)】