説明

鉄骨部材の接合構造

【課題】低コストで、鉄骨部材の接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくする。
【解決手段】複数の鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、ノード110と、ウェブプレート402及び心棒部450と、を介して接合される。そして、ある鉄骨部材50からエンドプレート54とスタッド60とを介してノード110、111に応力が伝達されると共に、ノード110、111に伝達された応力が他の鉄骨部材50のエンドプレート54とスタッド60とを介して他の鉄骨部材50に伝達される。ウェブプレート402を介しても応力がノード110、111に伝達されると共に伝達された応力がウェブプレート402を介して他の鉄骨部材50に伝達される。よって、鉄骨部材50同士を溶接等で直接接合する構成と比較し、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材50を容易に低コストで接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄骨部材の端部に一体化した端部プレートと、端部プレートを貫通するねじ鉄筋と、ねじ鉄筋の両端に接続する定着金物と、を用い、端部プレートをモルタル部材に突き合わせると共にねじ鉄筋を端部プレート又はモルタル中に定着することで、鉄骨部材とモルタル部材の接合部の納まりを簡潔にすると共に配筋作業性とモルタルの充填性とを確保しながら応力伝達機構を明快にした鉄骨部材とモルタル部材とを接合する接合部構造が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献2には、管体からなる主部材の側面に設けた開口部に、端部にせん断突起を有する副部材を差込み、周りを充填グラウト材で固定することで、溶接作業を少なくして製作コストを低減した鉄骨骨組の接合構造が提案されている(特許文献2を参照)。
【0004】
特許文献3には、鉄骨部材を相互に間隔を保って突き合わせて鋼材によって連結した後に、鉄骨部材相互の間隔に繊維補強モルタルを充填して一体化することで、接合部分の剛性が大きく、かつ施工の容易な鉄骨部材の接合構造が提案されている(特許文献3を参照)。
【0005】
特許文献4には、柱と梁とが交差する鉄筋コンクリート造の柱梁仕口部が繊維補強コンクリートによって構成され、梁に設けられ柱梁仕口部の上方及び下方に位置する端部が繊維補強コンクリートと一体となる梁主筋と、梁主筋の端部に設けられた定着強化手段と、柱梁仕口部内の梁主筋の外側に位置し柱に設けられた柱主筋の周囲を取り囲む補強部材と、を備え、両側から柱梁仕口部へ向う梁主筋の端面が互いに向かい合うように構成することで、接合作業を容易に行なうことができ且つ十分な接合強度を得ることができる柱梁仕口部の接合構造が提案されている(特許文献4を参照)。
【0006】
ここで、ラーメン構造のように梁と柱で構成されていない自由な形態の空間構造とする場合は、鋼構造とする場合が多い。このような自由な形態の空間構造とする場合、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材を接合する必要があるため、例えば、鋳鋼や複雑で高コストの溶接作業等が必要となり施工コストが高くなることが多い。また、鉄骨部材の接合端面の高精度な加工は、高価な製作機械や熟練技能者を必要とすることが多い。
【0007】
一方、鉄骨部材の接合を低コストで接合できる溶接方法等で鉄骨部材の端部同士を接合すると、設計の自由度が小さくなり形態に制約が生じ、その結果、所望する自由な形態の空間構造とすることが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−252891号公報
【特許文献2】特開2000−87504号公報
【特許文献3】特開2005−213821号公報
【特許文献4】特開2008−31699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、低コストで、鉄骨部材の接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくし、所望する自由な形態の空間構造物を実現させることが求められている。
【0010】
本発明は、低コストで、鉄骨部材の接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、充填材が固化して形成された固定部と、前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、前記エンドプレート間を連結する連結部材と、前記連結部材に設けられると共に前記固定部の中に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達手段と、を備えている。
【0012】
したがって、充填材が固化することによって形成される固定部と応力伝達手段が設けられた連結部材とを介して鉄骨部材が接合される。よって、鉄骨部材同士を溶接等で直接接合する構成と比較し、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材を容易に低コストで接合することができる。
【0013】
また、エンドプレートを介して固定部に応力が伝達されると共に、固定部を介して複数の鉄骨部材の端部間で応力が伝達される。また、連結部材とエンドプレートとを介して、鉄骨部材の端部間の応力伝達がなされる。これにより、複数の鉄鋼部材の端部の接合強度が確保される。更に、各鉄骨部材から伝達された応力を連結部材と固定部との両方で受ける。よって、連結部材が応力伝達手段を有しない構造と比較し、複数の鉄骨部材の接合強度が向上する。
【0014】
よって、例えば、鉄骨部材の端部同士を溶接で直接接合する構造等と比較し、低コストで複数の鉄骨部材の接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。
【0015】
請求項2の発明は、複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、充填材が固化して形成された固定部と、前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、前記エンドプレート間を連結する連結部材と、前記エンドプレートから突出するように設けられると共に前記固定部に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達部材と、を備えている。
【0016】
したがって、複数の鉄骨部材の長手方向の端部に設けられたエンドプレートから突出する応力伝達部材が固定部に埋設されると共に、連結部材がエンドプレートを連結することで、複数の鉄骨部材が接合される。よって、鉄骨部材同士を溶接等で直接接合する構成と比較し、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材を容易に低コストで接合することができる。
【0017】
また、ある鉄骨部材からエンドプレートと応力伝達部材とを介して固定部に応力が伝達されると共に、固定部に伝達された応力が他の鉄骨部材のエンドプレートと応力伝達部材とを介して他の鉄骨部材に伝達される。更に、連結部材とエンドプレートとを介して、鉄骨部材間の応力伝達がなされる。よって、複数の鉄骨部材の端部同士が溶接等で直接接合されていなくても、複数の鉄骨部材の端部間で応力が伝達されるので、複数の鉄鋼部材の端部の接合強度が確保される。
【0018】
したがって、低コストで複数の鉄骨部材の端部を接合する接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。
【0019】
請求項3の発明は、複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、充填材が固化して形成された固定部と、前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、前記エンドプレート間を連結する連結部材と、前記連結部材に設けられると共に前記固定部の中に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達手段と、前記エンドプレートから突出するように設けられると共に前記固定部に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達部材と、を備えている。
【0020】
したがって、請求項1と請求項2と同様に、低コストで複数の鉄骨部材の端部を接合する接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。
【0021】
請求項4の発明は、少なくとも対向配置された対を成す前記エンドプレートを有し、前記対向配置された対を成すエンドプレート間を連結する前記連結部材には緊張力が付与され、対向配置された前記エンドプレート間の前記固定部に圧縮力が付与されている。
【0022】
したがって、固定部における対向配置された対を成すエンドプレート間にかかる引張応力に対する強度が向上する。よって、圧縮力付与手段を有していない構造と比較し、複数の鉄骨部材の端部の接合強度が向上する。
【0023】
請求項5の発明は、前記充填材は、繊維補強モルタルで構成されている。
【0024】
したがって、固定部の引張強度とじん性(靭性)とが向上するので、充填材が繊維補強モルタル以外で構成されている場合と比較し、複数の鉄骨部材の接合強度が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、本発明が適用されてない接合構造と比較し、低コストで、鉄骨部材の接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された鉄骨構造部で構成された構造物の屋根を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す斜視図である。
【図3】ノードに埋設されたウェブプレートを図示した図2に対応する斜視図である。
【図4】図2と図3とに示す接合部位の、(A)はノードの内部をZ方向から見た平面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿ったY方向と直交する断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された図1とは別の接合部位を示す斜視図である。
【図6】ノードに埋設されたウェブプレートを図示した図5に対応する斜視図である。
【図7】ウェブプレート同士の接合部位の他の例を示す図6に対応する図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す(A)はノードに埋設されたウェブプレートを図示した斜視図であり、(B)はウェブプレートをZ方向から見た拡大平面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す(A)はノードの内部をZ方向から見た平面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿ったY方向と直交する断面を示す断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係る鉄骨部材の接合構造の変形例が適用された接合部位を示す(A)はノードの内部をZ方向から見た平面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿ったY方向と直交する断面を示す断面図であり、(C)は補強筋を示す平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す斜視図である。
【図12】本発明の第四実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す(A)はノードの内部をZ方向から見た平面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿ったY方向と直交する断面を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された接合部位を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第一実施形態>
図1〜図7を用いて、本発明の第一実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された空間構造物について説明する。
【0028】
図1は、構造物10の屋根11を構成する鉄骨構造部12の斜視図である。鉄骨構造部12は本発明の第一実施形態に係る鉄骨部材の接合構造が適用された空間構造物とされている。屋根11は上側に凸状とされたドーム状とされている。また、図1の矢印UP方向が鉛直方向上側方向を示している。なお、本実施形態においては、後述するZ方向(法線方向)と鉛直方向(矢印UP方向)とは一致しない。
【0029】
鉄骨構造部12は、主体フレームとしての複数の鉄骨部材50が接合されることによって構成されている。そして、鉄骨部材50の軸方向(長手方向)の端部52(図4参照)同士が接合される接合部位に、本発明の鉄骨部材の接合構造が適用されている。
本実施形態では、鉄骨部材50は軸方向と直交する断面が略H形状のH形鋼とされている。しかし、鉄骨部材50はH形鋼に限定されない。H形鋼以外の形鋼であってもよい。或いは形鋼以外の鋼材であってもよい。
【0030】
図2は、図1の接合部位20を示す斜視図である。接合部位20は、四本の鉄骨部材50XL,50XR、50YR,50YLが平面視十字状に接合された接合部位とされている。鉄骨部材50XL,50XRはX方向に沿って配置され、鉄骨部材50YR,50Lは、Y方向に沿って配置されている。
【0031】
また、以降、X方向に沿って配置されている部材及び当該部材に設けられている部材には、「X」又は「XL,XR」を付し、Y方向に沿って配置されている部材及び当該部材に接合されている部材には符号の後に「Y」又は「YL,YR」を付す。また、Z方向に沿って配置された部材及び当該部品に設けられている部材には「Z」又は「ZU,ZL」を付す。但し、これらを区別して説明する必要がない場合は、X,XL,XR,Y,YL,YR、Z,ZU,ZL、U、Lを省略する。
【0032】
ここで、本実施形態の図1以外の各図において、X方向とY方向とは直交し、X方向及びY方向と直交する方向がZ方向である。そして、本実施形態では、Z方向から見た場合を平面視とする。本実施形態においては、Z方向はドーム状の屋根11の法線方向と略一致し、X方向及びY方向はドーム状の屋根11の接線方向と略一致する。なお、図1と図2とに示すように、Z方向はドーム状の屋根11の法線方向と略一致し、鉛直方向(矢印UP)とは必ずしも一致しない。
【0033】
なお、屋根11はドーム状とされているので、正確には、各鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、X方向とY方向とで構成される同一平面上になく、若干であるがZ方向に傾いて配置され接合されている(各鉄骨部材50は若干ではあるがZ方向に角度をもって接合されている)。
【0034】
しかし、判りやすくするため、以降の説明は、図2等に図示されているように、鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、X方向とY方向とで構成される同一平面状に配置されているものとして説明する。言い換えると、鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、X方向又はY方向に沿って配置され、且つ平面視十字状に配置されているものとして説明する。
また、鉄骨部材50以外のX方向及びY方向に沿って配置されているとして説明する部材及び当該部材に設けられている部材も、実際にはZ方向に傾いて配置されていてもよい。
なお、鉄骨構造部12は、X方向、Y方向、及びZ方向に沿って配置されていない部材によっても構成されている。
【0035】
図2に示すように、各鉄骨部材50の端部52(図4も参照)はノード110を介して接合されている。本実施形態においては、ノード110は、Z方向に所定の厚みを有する平面視正八角形状のブロック体とされている。また、本実施形態においては、ノード110は、型枠などによって形成された充填空間に繊維補強モルタルQが充填され固化することによって形成されている。なお、繊維補強モルタルQは、合成繊維や鋼繊維などをモルタルに複合して補強されたモルタル材とされている。
【0036】
図2〜図4に示すように、ノード110におけるZ方向と直交する壁面二面を外周面112U,112Lとする(図3と図4(B)を参照)。また、ノード110におけるZ方向に沿った壁面八面を外周面114A,114B,114C,114D,114E,114F,114G、114Hとする(図4(A)を参照)。
【0037】
図2〜図4に示すように、各鉄骨部材50の端部52には、鋼板等で構成されたエンドプレート54が設けられている。なお、エンドプレート54の面外方向(板厚方向)は、鉄骨部材50の軸方向と一致する。各鉄骨部材50の端部52とエンドプレート54とは、本実施形態では溶接によって接合されている。なお、溶接以外の接合方法で接合されていてもよい。また、ノード110の外周面114Bにエンドプレート54YLが接触し、外周面114Dにエンドプレート54XLが接触し、外周面114Fにエンドプレート54YRが接触し、外周面Hにエンドプレート54XRが接触する。
【0038】
図3と図4とに示すように、各鉄骨部材50の端部52に接合されたエンドプレート54には、複数のスタッド60が接合されている。各スタッド60の先端部には、半球状のコブ部62が形成されている。
なお、スタッドは図3及び図4以外の構造であってもよい。例えば、鉄筋スタッドでもよく、ノード110内側の先端には機械式定着部やコブ定着部があってもよい。
【0039】
なお、スタッド60は、エンドプレート54から突出するように設けられると共にノード110に埋設され定着することによって、ノード110と応力伝達を行なう応力伝達部材とされている。
【0040】
本実施形態では、鉄骨部材50Xのエンドプレート54Xには、スタッド60XがX方向に突出するように接合されている。そして、各スタッド60Xは、Y方向に沿って列状に並び、且つその列がZ方向に間隔をあけて二つ設けられている。
同様に鉄骨部材50Yのエンドプレート54Yには、スタッド60YがY方向に突出するように接合されている。そして、各スタッド60Yは、X方向に沿って列状に並び、且つその列がZ方向に間隔をあけて二段設けられている。
なお、スタッド60は、Z方向に3段以上設けられていてもよいし、1段のみ設けられていてもよい。更に、各スタッド60は、X方向又はY方向に沿って列状に並んでいなくてもよい。また、スタッド60は各エンドプレート54に複数設けられていなくてもよく、各エンドプレート54に少なくとも一つ以上のスタッド60が設けられていればよい。
【0041】
前述したように、ノード110の中に、スタッド60が埋設され定着されている。X方向に沿って対向して配置された鉄骨部材50XRのスタッド60XRのコブ部62XRと、鉄骨部材50XLのスタッド60XLのコブ部62XLと、が後述するウェブプレート402Yを間に挟んでX方向に間隔をあけて対向して配置されている。
同様に、Y方向に沿って対向して配置された鉄骨部材50YRのスタッド60YRのコブ部62YRと、鉄骨部材50YLのスタッド60YLのコブ部62YLと、が後述するウェブプレート402Xを間に挟んでY方向に間隔をあけて対向して配置されている。
【0042】
なお、スタッド60同士が干渉しないように、X方向に沿って配置された鉄骨部材50Xのスタッド60Xと、Y方向に沿って配置された鉄骨部材50Yのスタッド60Yと、でZ方向の位置を変えて設けられている。なお、干渉しないように設けられていれば、どのように設けられていてもよいが、本実施形態では、X方向のスタッド60XがZ方向外側に配置され、Y方向のスタッド60Yは、その間(Z方向内側)に配置されることで干渉しないように構成されている。
【0043】
各鉄骨部材50の端部52に接合されたエンドプレート54には、ノード110に埋設されるウェブプレート402が接合されている。ウェブプレート402には、面外方向外側に突出する複数のスタッド404が接合されている。
ウェブプレート402Xは、Y方向を面外方向としてX方向に沿って配置されている。ウェブプレート402Yは、X方向を面外方向としてY方向に沿って配置されている。
【0044】
別の言い方をすると、ウェブプレート402は、エンドプレート54間を連結し、連結されるエンドプレート54を有する鉄骨部材50の軸方向(本実施形態ではX方向とY方向)と直交する方向(本実施形態ではZ方向)から見て、ノード110と重なるように配置されている。
【0045】
このように、ノード110を間に挟んで配置されたエンドプレート54間をウェブプレート402が連結する。なお、ノード110を間に挟んで配置されたエンドプレート54間とは、対向するエンドプレート54間だけでなく、隣り合うエンドプレート54間、例えば、エンドプレート54YRとエンドプレート54XLとの間を連結する場合も含む。
【0046】
更に、ノード110のZ方向から見た中心部分には鋼製の心棒部450が、Z方向を軸方向として埋設されている。そして、この心棒部450の外周面に各ウェブプレート402の先端部が接合されている。よって、各鉄骨部材50の端部52間が、ウェブプレート402及び心棒部450を介して連結されている。
【0047】
つぎに、本実施形態の鉄骨部材50の接合工程について説明する。なお、ここで説明する施工工程は一例であって、他の施工工程であってもよい。
【0048】
まず、鉄骨部材50の端部52にエンドプレート54を接合し、エンドプレート54にスタッド60及びスタッド404が設けられたウェブプレート402を接合する。鉄骨部材50を平面視十字状に配置する。そして、十字の中心に配置された心棒部450に各ウェブプレート402の先端部を接合する。
【0049】
型枠(図示略)を設け、型枠の中(充填空間)に繊維補強モルタルQを充填する。このとき、エンドプレート54が型枠の一部を構成する。そして、繊維補強モルタルQが固化することでスタッド60、ウェブプレート402、心棒部450が埋設されたノード110が形成されると共に、鉄骨部材50の端部52間が、ノード110と、ウェブプレート402及び心棒部450と、を介して接合される。
【0050】
なお、構造物10(図1参照)の建築現場外の工場で予め鉄骨部材50が接合された状態のノード110を製作して建築現場に運んでもよいし、建築現場で鉄骨部材50が接合された状態のノード110を製作してもよい。
【0051】
或いは、ドーム状の屋根11(図1参照)を構成する鉄骨構造部12の施工時にノード110を製作して鉄骨部材50を組み付けてもよい。なお、この場合、各鉄骨部材50の接合位置や接合角度を微調整することで、各鉄骨部材50の製造誤差や施工誤差等を吸収することができる。
【0052】
ここまでは、上述したように図1の接合部位20(図2参照)を用いて説明したが、鉄骨構造部12の他の接合部位も本発明が適用された接合構造とされている。
【0053】
例えば、図1に示す六本の鉄骨部材50が接合部位30(図5参照)も本発明が適用された接合構造とされている。よって、つぎに、図1の六本の鉄骨部材50が接合された接合部位30の接合構造を、図5と図6とを用いて簡単に説明する。
【0054】
図5と図6とに示すように、ノード111は、Z方向に所定の厚みを有する平面視九角形状のブロック体とされている。そして、六本の各鉄骨部材50が、ノード110と、ウェブプレート402及び心棒部450と、を介して接合される。
【0055】
各鉄骨部材50の軸線は、平面視においてノード110の中心点で交差するように配置されている。六本の鉄骨部材50の内、五本の鉄骨部材50は等角度間隔で放射状に配置されている。そして、残り一本の鉄骨部材50は、等角度間隔で配置された鉄骨部材50の内の二本の間に配置されている。
【0056】
なお、図6では、エンドプレート54に接合されたスタッド60の図示は省略されている。
【0057】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
複数(接合部位20では四本、接合部位30では六本の)の鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、ノード110、111と、ウェブプレート402及び心棒部450と、を介して接合される。また、鉄骨部材50の端部52に設けられたエンドプレート54から突出したスタッド60がノード110、111に埋設されることによっても、複数の鉄骨部材50が接合される。
【0058】
そして、ある鉄骨部材50からエンドプレート54とスタッド60とを介してノード110、111に応力が伝達されると共に、ノード110、111に伝達された応力が他の鉄骨部材50のエンドプレート54とスタッド60とを介して他の鉄骨部材50に伝達される。また、ウェブプレート402には応力伝達を行なうスタッド404を有しているので、ウェブプレート402を介しても応力がノード110、111に伝達されると共に伝達された応力がウェブプレート402を介して他の鉄骨部材50に伝達される。更に、エンドプレート54と、ウェブプレート402及び心棒部450と、を介して、鉄骨部材50の端部52間の応力伝達がなされる。これらにより、複数の鉄鋼部材50の接合強度が確保される。
【0059】
例えば、接合部位20の場合では、鉄骨部材50XLからエンドプレート54XL、スタッド60XL、ウェブプレート402XLを介してノード110に応力が伝達されると共に、ノード110に伝達された応力がエンドプレート54XR,54YL,54YR、スタッド60XR,60YL,60YR、ウェブプレート402XR、402YL,402YRを介して他の鉄骨部材50XR,50YL,50YRに伝達される。
【0060】
更に、鉄骨部材50XLのエンドプレート54XLとウェブプレート402XL及び心棒部450とを介して、ウェブプレート402XR,402YL,402YRとエンドプレート54XR,54YL,54YRから他の鉄骨部材50XR,50YL,50YRに応力が伝達される。
【0061】
よって、複数の鉄骨部材50の端部52同士が溶接等で直接接合されていなくても、ノード110、111とウェブプレート402及び心棒部450とを介して複数の鉄骨部材50の端部52間で応力が伝達されるので、複数の鉄骨部材50の端部52の接合強度が確保される。
【0062】
また、繊維補強モルタルQが固化することによって形成されるノード110、111とウェブプレート402及び心棒部450とによって、鉄骨部材50が接合されている。よって、鉄骨部材50同士を溶接等で直接接合する構成と比較し、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材50を容易に低コストで接合することができる。
【0063】
したがって、低コストで複数の鉄骨部材50の端部52を接合する接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。この結果、所望する自由な形態の空間構造物(本実施形態ではドーム状の屋根11)を容易に低コストで実現することができる。
【0064】
なお、ノード110、111は繊維補強モルタルQが固化することによって形成されているので、繊維補強モルタルQ以外の充填材でノード110、111が構成されている場合と比較し、ノード110、111の引張強度とじん性(靭性)とが向上する。よって、エンドプレート54からスタッド60及びウェブプレート402を介してノード110、111にかかる引張応力に対する強度が大きくなる。したがって、ノード110、111が繊維補強モルタルQ以外の充填材で構成されている場合と比較し、複数の鉄骨部材50の端部52の接合強度が向上する。
【0065】
なお、本実施形態の接合部位20、30においては、ノード110、111にかかる圧縮方向の応力は主にエンドプレート54によって伝達され、ノード110、111にかかる引張方向の応力は主にウェブプレート402とスタッド60とによって伝達される。
【0066】
なお、本実施形態では、ノード110、111は、繊維補強モルタルQで構成されていたが、これに限定されない。他の充填材であってもよい。例えば、繊維補強されたコンクリートやグラウト等の充填材でノードが形成されていてもよい。或いは、繊維補強されていないモルタル、コンクリート、グラウト等の充填材でノードが形成されていてもよい。
【0067】
ウェブプレート402のスタッド404とエンドプレート54のスタッド60とは設けられていなくてもよい。
【0068】
ここで、本実施系形態では、各ウェブプレート402の先端部が心棒部450の外周面に接合されていたが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、隣り合うウェブプレート402の側面を連結プレート542で接合してもよい。
或いは、図示は省略するが、各ウェブプレート402の先端部同士を直接接合してもよい。
【0069】
<第二実施形態>
つぎに本発明の第二実施形態に係る鉄骨部材の接合構造について、図8を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
ウェブプレート402には、面外向に貫通する貫通孔406が形成されている。そして、図8(B)に示すように、貫通孔406に繊維補強モルタルQ(図2を参照)が入り込み固化することで、繊維補強モルタルQで構成されたコッター408が形成される。なお、図8では、エンドプレート54に接合されたスタッド60の図示は省略されている。
【0071】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
鉄骨部材50の軸方向(長手方向)の端部52からエンドプレート54、スタッド60、及びウェブプレート402のコッター408を介してノード110に応力が伝達される。また、ノード110に伝達された応力がエンドプレート54、スタッド60、及びウェブプレート402のコッター408を介して他の鉄骨部材50に伝達される。
【0072】
したがって、コッター408が形成されたウェブプレート402が設けられていない構造と比較し、複数の鉄骨部材50の接合強度が向上する。
【0073】
また、図8(B)に示すように、貫通孔406に補強筋409を挿通してもよい。そして、補強筋409を挿通させることで、応力伝達性能が更に向上し、その結果、複数の鉄骨部材50の接合強度が更に向上する。
【0074】
<第三実施形態>
つぎに本発明の第三実施形態に係る鉄骨部材の接合構造について、図9を用いて説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
図9に示すように、ノード110におけるZ方向と直交する壁面八面のうち、鉄骨部材50のエンドプレート54が接している対向する外周面114Dと外周面114Hの間、及び、外周面114Bと外周面114Fとの間、を貫通するようにシース管302が埋設されている。なお、シース管302はX方向とY方向に沿って平面視十字状に配置されると共に(図9(A)参照)、Z方向に間隔をあけて配置されている(図9(B)参照)。
【0076】
また、エンドプレート54におけるシース管302に対応する位置に挿通孔(図示略)が形成され、シース管302と挿通孔とにPC鋼棒304が挿通されている。PC鋼棒304の両軸端のナット306を締め込むことによって、PC鋼棒304に緊張力が付与され、これにより対向配置されたエンドプレート54XLとエンドプレート54XRとの間と、対向配置されたエンドプレート54YLとエンドプレート54YRとの間と、にプレストレス(圧縮力)が付与されている。
【0077】
また、ノード110の中には、鉄筋で構成された補強筋120X,120Yが埋設されている。補強筋120Xと補強筋120Yとは、平面視格子状に配置され且つ補強筋120と補強筋120Yとが交差した部位で接合されている。
【0078】
図9(B)に示すように、補強筋120X,120Yが平面視格子状に配置されて接合された格子状鉄筋は、Z方向に間隔をあけて二つ配置されている。また、各補強筋120の端部は、Z方向内側に向けて湾曲され、定着されている。つまり、X方向及びY方向から見ると補強筋120は略U字形状とされている。
【0079】
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
PC鋼棒304に緊張力が付与されることによって、ノード110にプレストレス(圧縮力)が付与され、この結果、ノード110にかかる引張応力に対する強度が向上する。よって、ノード110にプレストレス(圧縮力)が付与されていない構成と比較し、複数の鉄骨部材50の接合強度が向上する。
【0080】
また、埋設された補強筋120によってノード110の強度(特に引張強度)が向上する。よって、補強筋120が埋設されていない構成と比較し、複数の鉄骨部材50の端部52の接合強度が向上する。
【0081】
なお、本実施形態では、緊張材として、PC鋼棒304を用いたがこれに限定されない。例えば、PC鋼線、PC鋼より線、或いは炭素繊維やビニロン繊維などの繊維材料で構成された線材であってもよい。
【0082】
なお、本実施形態では、補強筋120Xと補強筋120Yとが平面視格子状に配置されていたが、これに限定されない。
【0083】
例えば、図10に示す変形例のように、平面視同心円状に配筋された第一補強筋122と、第一補強筋122の円中心から放射状に配筋された第二補強筋124と、が接合され埋設された構成であってもよい。
【0084】
変形例の第一補強筋122と第二補強筋124とは、Z方向に間隔をあけて二つ組、配置されている。また、各第二補強筋124の外側の端部は、Z方向内側に向けて湾曲され、定着されている。つまり、X方向及びY方向から見ると補強筋120は略L字形状とされている。
【0085】
なお、平面視において、第一補強筋122と、該第一補強筋122の中心部から放射状に配筋された第二補強筋124と、を有する構造とすると、ノード110の平面視における強度が略均等に向上する。よって、鉄骨部材50の端部52がノード110に接合された接合位置等による接合強度の差が低減される。各鉄骨部材50が平面視略十字形状以外に配置された構成の接合部位、例えば、各鉄骨部材50が等角間隔で接合された接合部位30(図1、図5参照))や各鉄骨部材50がばらばらの角度間隔で配置された接合部位(図示略)等に適用すると好適とされる。
【0086】
<第四実施形態>
つぎに本発明の第四実施形態に係る鉄骨部材の接合構造について、図11と図12とを用いて説明する。なお、第一実施形態〜第三実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0087】
ノード110におけるZ方向外側の外周面112U,112L(図3と図4(B)を参照)に接触するように補強プレート512が設けられている。つまり、補強プレート512ZUと補強プレート512ZLとは、ノード110を間に挟んでZ方向に対向して配置されている(図14(B)参照)。補強プレート512の内面(ノード110側の面)には、Z方向に突出しノード110に埋設され定着するスタッド514が接合されている。また、補強プレート512の端面は、エンドプレート54に接合されている。
【0088】
ノード110におけるZ方向に沿った壁面八面を構成する外周面における鉄骨部材50が接合されていない(エンドプレート54が接触していない)外周面114A,114C,114E,114Gには、シート524A,524C,524E,524Gが設けられている。なお、本実施形態では、シート524は炭素繊維で構成されたシートとされている。なお、以降、各シートを区別する必要がない場合は単にシート524と記す。
【0089】
シート524のZ方向両端はZ方向に間隔をあけて対向配置された補強プレート512に接合されている。別の言い方をすると、二枚の補強プレート512が対向して配置され、対向配置された補強プレート512間がノード110の外周面に沿って設けられたシート524よって連結されている。
【0090】
よって、各エンドプレート54は、補強プレート512によって連結されている。また、補強プレート512とシート524がノード110の外周面を拘束する。なお、シート524とエンドプレート54とは、接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。
【0091】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
複数の鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、ノード110と補強プレート512とを介して接合される。また、鉄骨部材50の端部52に設けられたエンドプレート54から突出したスタッド60がノード110に埋設され定着することによっても、複数の鉄骨部材50が接合される。
【0092】
そして、ある鉄骨部材50からエンドプレート54とスタッド60とを介してノード110に応力が伝達されると共に、ノード110に伝達された応力が他の鉄骨部材50のエンドプレート54とスタッド60とを介して他の鉄骨部材50に伝達される。また、補強プレート512には応力伝達を行なうスタッド514を有しているので、補強プレート512を介しても応力がノード110に伝達されると共に伝達された応力が補強プレート512を介して他の鉄骨部材50に伝達される。更に、補強プレート512とシート524を介して、鉄骨部材50の端部52間の応力伝達がなされる。これらにより、複数の鉄鋼部材50の接合強度が確保される。
【0093】
よって、複数の鉄骨部材50の端部52同士が溶接等で直接接合されていなくても、複数の鉄骨部材50の端部52間で応力が伝達されるので、複数の鉄骨部材50の端部52の接合強度が確保される。
【0094】
また、繊維補強モルタルQが固化することによって形成されるノード110、111と補強プレート512とによって、鉄骨部材50が接合されている。よって、鉄骨部材50同士を溶接等で直接接合する構成と比較し、多種多様な角度をもって取り合う鉄骨部材50を容易に低コストで接合することができる。
【0095】
したがって、低コストで複数の鉄骨部材50の端部52を接合する接合強度を確保しつつ、設計の自由度を大きくすることができる。この結果、所望する自由な形態の空間構造物を容易に低コストで実現することができる。
【0096】
また、各鉄骨部材50からエンドプレート54とスタッド60とを介してノード110に伝達された応力が、スタッド514から補強プレート512に伝達される。よって、各鉄骨部材50からノード110に伝達された応力の一部を補強プレート512が受ける(負担する)ので、その分ノード110の応力負担が軽減される。
【0097】
また、補強プレート512にスタッド514設けることで、補強プレート512に圧縮方向の応力がかかる場合における補強プレート512の座屈防止作用を発揮する。
【0098】
更に、補強プレート512とシート524とが、ノード110の外周面を拘束している。よって、ノード110に伝達された応力によってノード110の外周面が膨出する方向に変形しようとしても、補強プレート512とシート524によってノード110の外周面の変形が抑制されるので、ノード110の強度が向上する。
【0099】
したがって、補強プレート512とシート524とを有しない構造と比較し、複数の鉄骨部材50の接合強度が向上する。
【0100】
なお、本実施形態では、対向配置された補強プレート512間がシート524よって連結されていたが、これに限定されない。例えば、シートでなく、鋼製等のプレートで連結されていてもよい。また、図12に二点破線(想像線)で図示しているように、ノード110に埋設された支柱部材530で補強プレート512間が連結されていてもよい。なお、支柱部材530で補強プレート512が連結されている構成であっても、補強プレート512によってノード110の外周面を拘束し外周面の変形を抑制する効果を有する。
【0101】
要は、ノード110の外側から、ノード110の外周面の変形を抑制する抑制手段を有する構成であれば、ノード110の強度が向上し、複数の鉄骨部材50の接合強度が向上する。
【0102】
また、補強プレート512同士が連結されていない構成であってもよい。このように補強プレート512同士が連結されていない構成の場合は、ノード110の外周面の変形を抑制する抑制効果は小さくなるが、各鉄骨部材50からノード110に伝達された応力の一部を補強プレート512が受ける(負担する)効果は、連結された構造と略同程度の効果を有する。
また、補強プレート512にはスタッド514が形成されていなくてもよい。この場合、補強プレート512はノード110との応力伝達効果は有しない。
【0103】
なお、モルタルを打設した後にその近傍で溶接作業を行なうとモルタル強度が低下する場合がある。よって、補強プレート512の端面とエンドプレート54との接合は、ノード110を打設する前に行なうことが望ましい。
【0104】
<その他>
前述したように、上記実施形態では、鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、X方向とY方向とで構成される同一平面状に配置されているとして説明したが、図1に示すように屋根11はドーム状とされているので、正確には、各鉄骨部材50の軸方向(長手方向)は、若干傾いて配置されZ方向に角度をもって接合されている(各鉄骨部材50同一平面状に配置されていない)。つまり、実際には各鉄骨部材50が3次元的に接合されている。しかし、鉄骨部材がZ方向に角度を持つことなくX方向とY方向とで構成される同一平面状に配置された(鉄骨部材が2次元的に接合された)接合部位にも、本発明を適用することができる。
【0105】
なお、図13に示すように、図5に示す接合部位30に、更に鉄骨部材51がZ方向に大きく角度を持って3次元的に配置され接合された接合部位40にも本発明を適用することができる。
【0106】
また、図示は省略するが、鉄骨部材がノードの中心から略放射状に配置されているような構成の場合等、補強筋をノードの中に球形状に配置して埋設させる構造とすると、鉄骨部材の接合位置による接合強度の差が低減される。
【0107】
このように、本発明は、二本の鉄骨部材の軸線が同一又は略同一軸線上に配置された接合部位のみでなく、複数の鉄骨部材の軸線が交差して配置された鉄骨部材の接合部位に適用することができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0108】
12 鉄骨構造部
20 接合部位
30 接合部位
40 接合部位
50 鉄骨部材
51 鉄骨部材
52 端部
54 エンドプレート
60 スタッド(応力伝達部材)
110 ノード(固定部)
111 ノード(固定部)
114 外周面
304 PC鋼棒(連結部材)
402 ウェブプレート(連結部材)
404 スタッド(応力伝達部手段)
406 貫通孔(応力伝達手段)
408 コッター(応力伝達部手段)
450 心棒部(連結部材)
512 補強プレート(連結部材)
514 スタッド(応力伝達手段)
542 連結プレート(連結部材)
Q 繊維補強モルタル(充填材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、
充填材が固化して形成された固定部と、
前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、
前記エンドプレート間を連結する連結部材と、
前記連結部材に設けられると共に前記固定部の中に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達手段と、
を備える鉄骨部材の接合構造。
【請求項2】
複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、
充填材が固化して形成された固定部と、
前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、
前記エンドプレート間を連結する連結部材と、
前記エンドプレートから突出するように設けられると共に前記固定部に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達部材と、
を備える鉄骨部材の接合構造。
【請求項3】
複数の鉄骨部材の軸方向の端部を接合する鉄骨部材の接合構造であって、
充填材が固化して形成された固定部と、
前記鉄骨部材の前記端部に設けられ、前記固定部の外周面に接触し、前記固定部と応力伝達を行なうエンドプレートと、
前記エンドプレート間を連結する連結部材と、
前記連結部材に設けられると共に前記固定部の中に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達手段と、
前記エンドプレートから突出するように設けられると共に前記固定部に埋設され、前記固定部と応力伝達を行なう応力伝達部材と、
を備える鉄骨部材の接合構造。
【請求項4】
少なくとも対向配置された対を成す前記エンドプレートを有し、
前記対向配置された対を成すエンドプレート間を連結する前記連結部材には緊張力が付与され、対向配置された前記エンドプレート間の前記固定部に圧縮力が付与されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鉄骨部材の接合構造。
【請求項5】
前記充填材は、繊維補強モルタルで構成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の鉄骨部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246885(P2011−246885A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118088(P2010−118088)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】