説明

鉢植え用短日処理装置

【課題】鉢植えの短日植物に対して短日処理を場所をとることなく行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】鉢植え用短日処理装置として、対象となる鉢植え植物を内部に収容できる大きさを有する筒状体であり、上下方向である筒状体の中心軸方向に縮めることができる、外面が遮光部材により覆われる本体部と、前記本体部を所定の縮んだ状態である第一状態に保持する第一状態保持手段と、前記本体部を所定の伸びた状態である第二状態に保持する第二状態保持手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉢植え植物の日照時間を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日長が一定時間より短くなると花芽を分化させ花を咲かせる性質を持つ、いわゆる短日植物を栽培する際、自然条件での開花は秋から冬にかけての日長が短くなった季節からである。このような短日植物には、カランコエ、ポインセチア、シャコバサボテン、朝顔、コスモス、サルビア、秋キクなどがある。また、これらの植物の鉢植えは室内で栽培する場合、室内の照明の影響で短日条件にならず開花しなかったりすることもある。
【0003】
このような短日植物の花芽の形成をコントロールするために、所定時間遮光して日長時間を人工的に変化させて花芽形成を促進するすることを短日処理といい、これにより季節にかかわらず短日植物の花を咲かせることができる。短日処理の為の遮光時間は一般的に一日当たり13〜16時間とされる。
【0004】
このような短日処理を実現する方法として、農家では例えば下記特許文献1〜3に示されるような、ハウス内の屋根や壁面を移動させて定期的な遮光を行うことが行われている。また、下記特許文献4には実験的に短日処理を行うために、植物を栽培したハウスを暗室内へ相対的に平行移動させることにより遮光を実現することが示されている。
また、一般的な園芸家が趣味的に室内やベランダ等で短日植物の鉢植え植物を楽しむ場合の短日処理の方法としては、大きめのダンボール箱を夕方5時頃から翌朝8時ころまで植物に覆い被せておくことが一般的に知られている。
なお、短日処理ではないが、ねぎ等に軟白部分を作る為に単体の植物を遮光する器具が下記特許文献5〜7に示されている。
【特許文献1】特開平7−135860号公報
【特許文献2】特開平7−246035号公報
【特許文献3】特開平9-70232号公報
【特許文献4】実開平6−11441号公報
【特許文献5】特開2005−269948号公報
【特許文献6】特開2005−245376号公報
【特許文献7】特開2003−61461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉢植えで園芸を行う場合には、上記特許文献1から3のやり方は現実的ではなく、また、特許文献4のように鉢を暗室に入れたり出したりする方法は、余分なスペースが必要となる。また、ダンボール箱や特許文献5から7に記載の器具を植物に被せる方法は、被せるものを取り去った後に片付ける場所が必要になり、やはり余分な場所をとることとなる。
本発明は、このような問題に鑑みて、鉢植えの短日植物に対して短日処理を場所をとることなく行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、対象となる鉢植え植物を内部に収容できる大きさを有する筒状体であり、上下方向である筒状体の中心軸方向に縮めることができる、外面が遮光部材により覆われる本体部と、前記本体部を所定の縮んだ状態である第一状態に保持する第一状態保持手段と、前記本体部を所定の伸びた状態である第二状態に保持する第二状態保持手段とを有する鉢植え用短日処理装置である。このような構成を有する鉢植え用短日処理装置は、鉢植えの短日植物を本体内部に収容し、遮光を行う際は、本体部が伸びた第二状態に保持し、遮光を行わない際には、本体部を縮めた第一状態に保持するようにして使用する。
請求項2に記載の発明は、前記鉢植え用短日処理装置において、さらに、前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段と、前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段とを有するものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の鉢植え用短日処理装置において、前記第二状態保持手段は前記本体部の上縁を上方へ向うよう力を付与する弾性体により形成され、 前記第一状態保持手段は前記弾性体を拘束する拘束手段を有するものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鉢植え用短日処理装置において、前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段が前記弾性体により形成され、 前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段が前記拘束手段の拘束をタイマーにより解除するものである。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の鉢植え用短日処理装置において、前記第一状態保持手段と前記第二状態保持手段は、前記本体部の上下方向に平行に設けられた長尺の支持部材と、この支持部材に沿って移動し所定位置で固定できる、前記本体部の上縁と連結される移動部材とからなるものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の前記鉢植え用短日処理装置において、前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段が前記移動部材を移動させる移動装置により形成され、前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段が前記移動装置の動作をタイマーにより制御するものである。
【0009】
請求項7に記載の発明は、前記鉢植え用短日処理装置において、さらに、前記筒状体の本体部の上部開口に開閉可能な蓋を有するものである。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の鉢植え用短日処理装置において、前記蓋は前記本体部が第一状態では開いており、前記本体部が第一状態から第二状態に変形する動作に連動して閉じるように構成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明は、筒状に形成される本体部が、上下に伸縮することにより、遮光を行わない際には本体部を縮めた第一状態に保持することで、本体部をその場から取り去らなくてもよく、また、この状態において本体部は、鉢植えを取り囲む狭い空間内に収まるので場所の占有も少なく抑えることができる。そして、遮光を行う際は本体部をそのまま伸ばした第二状態に保持すれば足りるので作業性もよい。
請求項2に記載の発明は、タイマーにより縮んだ第一状態から伸びた第二状態に変形させることにより、短日処理作業をうっかり忘れて花芽形成促進効果の帳消しになることを防ぐことができるとともに、自動的に遮光状態となるので使用者の労力を軽減することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、第二状態保持手段を弾性体により形成し、第一状態保持手段を弾性体を拘束する拘束手段により形成することで、第一状態から第二状態へ移行させる際に、拘束手段を解除するだけで弾性力により自動的に第二状態へ移行するので、やはり、作業者の労力を軽減することができる。
請求項4に記載の発明は、制御手段をタイマーにより前記拘束手段を解除するものとすることで、簡易な構成でタイマーによる自動制御を実現することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、本体部とは別に支持部材を設け、この支柱部材が第二状態となった本体部を支えるので、本体部が第二状態を維持するための構成を有する必要がなくなり、本体部の材質や構造の自由度を高くすることができる。
請求項6に記載の発明は、支持部材を移動する移動部材が移動装置により移動し、この移動装置の動作を制御手段がタイマーにより制御する構成とすることで、移動装置をモーターや油圧機器にすることで、電気的な制御に好適なものとすることできる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、本体部の上部開口に開閉可能な蓋を設けることで、遮光時に蓋を閉じることでより遮光率を高めることができる。
請求項8に記載の発明は、蓋が本体部が第一状態から第二状態に変形する動作に連動して閉じるので、本体部を第二状態とするだけで蓋を自動的に閉じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る鉢植え用短日処理装置Xの斜視図を示す。短日処理装置Xは、上方に向って外径が大きくなる円筒状の本体部10と、本体部10の内壁に沿って設けられる圧縮バネ20と、本体部10の上面に形成される蓋30と、タイマーにより作動する制御装置50とから構成される。
本体部10は、黒い色の薄い合成樹脂性の円筒形状のシート体11が側面を形成し、シート体11の下縁および上縁の開口部を補強するとともに形状を維持するための円形の合成樹脂性の下枠12および上枠13が、シート体11の下縁および上縁のそれぞれに固定されている。シート体11は、遮光部材により形成されていれば足りるので、黒い不織布などを採用することもできる。
圧縮バネ20は、長さが本体部10を完全な円筒状にした際の長さよりもやや短い長さを有し、本体部の内面に沿うように上方に向って外径が大きくなるように形成されている。圧縮バネ20の下端は本体部10の下枠12に固定され、また、上端側が本体部10の上枠13に固定されている。この圧縮バネ20によって、本体部10を所定の伸びた状態である第二状態に保持する第二状態保持手段を構成する。また、圧縮バネ20を圧縮した状態に拘束すると本体部10を縮んだ状態とすることができ、拘束を解除すると、本体部10は縮んだ状態から伸びた第二状態に変形する。即ち、圧縮バネ20は、本体部10を縮んだ第一状態から伸びた第二状態へ変形させる駆動手段としての機能も果たしている。
【0015】
蓋30は、略半球状の本体部10と同じシート部材により形成される蓋本体31と、蓋本体31の形状を維持するための、アーチ状の骨組み32、33、34と、各骨組み32、33、34の両端を本体部10の上枠13の一つの直径を回転軸として回動可能に保持する、軸止部35とから構成される。蓋本体31の下面の形状は本体部10の上枠13の形状をやや一方側を延長したような形状をしており、骨組み32はこの延長した開口縁に沿って固定されている。骨組み33、34は、それぞれ蓋本体31の形状を維持するように蓋本体31の内面に固定される。
蓋30の軸止部35は、本体部10が縮んだ状態において、蓋30を開いた状態にし、本体部10が伸びだ状態において蓋30が閉じた状態となるような構造を有する。図2(a)(b)に軸止部35の内部構造を示す回転軸に垂直な平面で切った断面図を示す。図2(a)は蓋30が開いた状態を示し、図2(b)は蓋30が閉じた状態を示している。軸止部35は、円筒体35b、円筒体35bの両側面に固定される円筒体35bの外径よりも大きな外径を有する円板からなるフランジ35c、両フランジ35cを回動可能に保持する本体部10の外枠13に固定される回動軸35d、円筒体35bの外周に立設固定される係止棒35e、中心側が回転軸35dに固定され、外周側が円筒体35bの内周に固定されるゼンマイバネ35f、係止棒35eに一端が固定され他端が本体部10の下枠12に固定される作用紐35aとから構成される。なお、蓋30の骨組み32、33、34は回転軸35dに回動自在に固定されているとともに、骨組み32は内側のフランジ35cに固定されている。係止棒35eは蓋30が閉じた状態で斜め下方に向いており、この状態で作用紐35aは円筒体35bの上方を通るように巻きつけられている。作用紐35aの長さは、本体部10が伸びた前記第二状態となった際に、係止棒35eを引っ張って図2(b)のような状態となる長さに設定されている。以上のような構造によって、本体部10が縮んだ状態においては、ゼンマイバネ35dの作用により蓋30の骨組み32が開く方向に円筒体35bは付勢され、蓋30は開いた状態となり、本体部10が伸びると、作用紐35aに係止棒35aが引っ張られて骨組み32が回動して蓋30が閉じる。さらに、再び本体部10を縮めるとゼンマイバネ35dにより蓋30は開くこととなる。
【0016】
制御装置50は、本体部10を縮んだ状態に挟持固定し、タイマーにより所定時間が経過すると開くように構成されている。図3(a)に制御装置50の拡大斜視図を示し、図3(b)に図3(a)のA−A断面図を示す。制御装置50は、縮んだ状態の本体部10を挟む下方の挟持片を構成する下部挟持体51、下部挟持体51に一端側で回動可能に固定される、縮んだ状態の本体部10を挟む上方の挟持片を構成する上部挟持体52、下部挟持体51と上部挟持体52の回動部分を両側から覆う円盤状のカバー53、ゼンマイにより回転するタイマー55、下部挟持片51と上部狭持片52とを互いに閉じた状態に締結するとともに、タイマーと連動して締結を解除する狭持係脱機構56とから構成される。
タイマー55は、一般的なゼンマイ式のタイマーであり筐体55a内にゼンマイ、ゼンマイ により回転する時限軸、時限軸に連動する歯車減速機、歯車減速機により回転するがんぎ歯車、がんぎ歯車の動作を制御するテンプなどから構成されるタイマー機構が内蔵されている。タイマー55の時限軸55cは筐体55aの外側に設けられるツマミ55bが固定されるとともに、下部狭持体51、上部狭持体52を軸止する固定軸にもなっている。タイマー55は、ここでは、最大12時間の時間が設定できるようになっており、筐体55aの外側に設けられた目盛に合わせて任意の時間を設定することができる。
【0017】
下部狭持体51の狭持側は長方形状の板体により構成され、回動軸側にはこの板体の上面に立設する2枚の扇型のスポーク部材51aが固定されている。また、上部狭持体52の狭持側も長方形状の板体により構成され、回動軸側にはこの板体の下面に垂下する2枚の扇型のスポーク部材52aが固定されている。そして、それぞれのスポーク部材51a、52aには重なる穴が穿たれ、この穴にタイマー55の時限軸55cが貫通することで、下部狭持体51と上部狭持体52とは回動可能に固定されている。
狭持係脱機構56は、上部狭持体52の板体の下面から垂下する、先端に回動軸側に向う爪が設けられた弾性を有する板体からなる係止板56a、係止板56aの爪に係合する、下部狭持体51に固定される板体からなる係合部56b、係合部56bに係止した係止板56aの爪を押し出して、係止板56aと係合部56bとの係合を解除する、棒状態からなる作用干56c、作用干56cを回動軸と反対側へ付勢する引張バネ56d、タイマー55の時限軸55cに固定され、作用干56cを押し出す涙形の板体からなるカム板56eとからなる。このような構成により、上部狭持体52を閉じると、係止板56aの爪が、下部狭持体51の係合部56bと係合して、上部狭持体52と下部狭持体51とは閉じた状態に固定されることになる。そして、タイマー55の時限軸55cが回転すると、カム板56eも回転し、やがてカム板56eの先端が作用干56cの端部を押し、これにより作用干56cが係止板56cの爪を解除するように移動し、係止板56aと係合部56bとの係合を解除する。これにより、上部狭持体52は開放され開く方向に回動可能となる。なお、係止板56aが係合部56bに係合していない状態では、作用干56cは回同軸と反対側に位置するので、カム板56eが当たらず、タイマーの時限軸を自由に回転させることができる。制御装置50はこのような構成により、圧縮バネ20を縮めた状態で本体部10を狭持することで、弾性体である圧縮バネ20を拘束する拘束手段となり、本体部10を所定の縮んだ状態に保持する前記第一状態保持手段を形成する。
【0018】
次に、以上のような構成を有する鉢植え用短日処理装置Xの使用方法について説明する。まず、使用者は、短日植物の鉢植えを囲むように本体部10を置く。次に、制御装置50のそれぞれのタイマー55を短日植物の日長時間と現在時刻とから定められる時間に合わせる。例えば日の出の時刻に8時間だけ日の光に当てる場合はタイマーを8時間に設定する。ここでは、2個の制御装置50を使用するので、それぞれの制御装置50に同じ時間を設定する。次に、使用者は、上から圧縮バネ20を押し縮めることで本体部10を縮まった状態とし、この状態で、制御装置50の下部狭持体51を本体部10の下枠12の下に差し入れ、上部狭持体52を本体部10の上枠13の上方から倒して挟み、下部狭持体51と上部狭持体52とを固定する。ここでは、2個の制御装置50により、2箇所本体部10を狭持固定するものとする。これにより、図4のような状態となる。その後、タイマーがセットした時刻になると、制御装置50が作動して下部狭持体51と上部狭持体52との係合が解除され、圧縮バネ20は拘束力がなくなることで上方へ伸び、これにつれて本体部10も上方へ伸びる。これにより、作用紐35aが伸びきって軸止部35を回転させ、これにより蓋30が閉じて図1に示すような状態となる。
このように、本実施形態に係る鉢植え用短日処理装置Xを用いると、朝7時にタイマーを10時間にセットすれば、短日植物が露出した状態が10時間後の夕方5時に本体部10が伸びて蓋30が閉まり遮光状態となる。これにより、室内の照明などの影響を排除でき、翌朝まで約14時間の暗黒状態が確保され植物体にとっての短日処理となる。一般に、短日処理を継続する期間は30日〜45日間とされている。つぼみの形成が確認できたら処理を中止してよい。
【0019】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る鉢植え用短日処理装置Yについて説明する。図5に鉢植え用短日処理装置Yの斜視図を示す。短日処理装置Yは、円筒状の本体部60と、本体部60の上面に形成される蓋70と、本体部60を伸びた状態と縮んだ状態に伸縮させる駆動部80と、駆動部80をタイマーにより制御する制御部90と、制御部90を内蔵し、本体部60、駆動部80を支持する筐体100とから構成される。
本体部60は、黒い色の薄い合成樹脂性の円筒形状のシート体61を側面とし、シート体61の下縁および上縁の開口部を補強するとともに形状を維持するための円形の合成樹脂性の下枠62および上枠63が、シート体61の下縁および上縁のそれぞれに固定されている。シート体61は、遮光部材により形成されていれば足りるので、やはり黒い不織布などを採用することもできる。
蓋70は、略半球状の本体部60と同じシート部材により形成される蓋本体71と、蓋本体71の形状を維持するための、アーチ状の骨組み72、73、74と、各骨組み72、73、74の両端を本体部60の上枠63の一つの直径を回転軸として回動可能に保持する、軸止部75とから構成される。蓋本体71の下面の形状は本体部60の上枠63の形状をやや一方側を延長したような形状をしており、骨組み72はこの延長した開口縁に沿って固定されている。骨組み73、74は、それぞれ蓋本体71の形状を維持するように蓋本体71の内面に固定される。軸止部75は、本体部60が縮んだ状態において、蓋70を開いた状態にし、本体部60が伸びだ状態において蓋70が閉じた状態となるような構造を有する。この構造は実施形態1で示した鉢植え用短日処理装置Xの蓋30における軸止部35と同じ構造であるので、説明は省略する。
【0020】
駆動部80は、本体部60の長手方向に平衡に設けられるボールネジ81と、ボールネジ81を補強すべくボールネジ81に平行に設けられる補助柱82、ボールネジを回転駆動するギアドモーター83とから構成される。ボールネジ81は、移動部材となるナット部81aと長尺の支持部材となるネジ部81bとから構成され、ネジ部81bの回転によりナット部81aが昇降する。そして、ナット部81aは連結干81aaにより本体部60の上枠63と連結固定されている。補助柱82は金属製の角パイプ状の部材であり、下端は筐体100に固定され、上部にボールネジ81のネジ部81bの上端を回動可能に支持する支持板82aが固定されている。また、ナット部81aと補助柱82とは、摺動リング81abにより連結されている。摺動リング81abは、補助柱82を取り囲むリング体と、リング体の外周の一箇所とナット部81aの外周の一箇所とを連結固定する棒体とからなり、これにより、ナット部81aは回転しないように規制される。ギアドモーター83は筐体100に嵌入しており、ボールネジ81のネジ部81bの下端に回動軸が連結されている。駆動部80は、このような構造により、本体部60を所定の縮んだ第一状態に保持する第一状態保持手段及び本体部60を所定の縮んだ第二状態に保持する第二状態保持手段を構成する。また、駆動部80は、本体部60を第一状態から第二状態へ変形させるべく移動手段たるナット部81aを移動させる移動装置として機能し、駆動手段としての機能も果たす。
【0021】
制御部90は、一般的なCPU、RAM、ROMから構成されるマイコンによりギアドモーター83の動作を制御するものであり、操作パネルとして液晶画面により時刻表示を行う時刻表示部91と、操作ボタン92a、92bと、ギアドモーター83の回転を強制的に行う駆動ボタン92cとが設けられている。ここでは、時刻表示部91は通常は、マイコンのタイマーに連動して現在時刻を表示しているが、操作ボタン92aを押すとタイマーセットモードに変わり、操作ボタン92aを押すごとに表示時刻が10分ごとに切り替わるので、所望の時刻が表示されたときに操作ボタン92bを押すと本体部60が縮んだ状態となる時刻がセットされる。次に、同様の操作を行うと本体部60を伸びた状態となる時刻がセットされ、時刻表示部91は通常の時刻表示に戻るようになっている。また、駆動ボタン92cは、シーソースイッチであり、一方側を押すとギアドモーター83が一方向に回転し、他方側を押すとギアドモーター83がこれとは逆の方向に回転するようになっている。
筐体100は、合成樹脂により成型された上面と下面が瓢箪型の箱体であり、瓢箪型の大きなふくらみを形成する上面に本体60の下枠62が固定され、瓢箪型の小さなふくらみを形成する上面に駆動部80のギアドモーター83が嵌入固定されている。
【0022】
次に、以上のような構成を有する鉢植え用短日処理装置Yの使用方法について、説明する。まず、使用者は、制御装置90の駆動ボタン92cを操作して、ボールネジ81のナット部81aを下降させて本体部60を縮んだ状態とする。なお、蓋70は実施形態1と同様に本体部60が縮むと自動的に開く。この状態で、筐体100の瓢箪型の大きなふくらみを形成する上面の本体部60の内部に鉢植えの短日植物Pを載置する。これにより図6に示すような状態となる。そして、制御装置90の操作ボタン92a、92bを操作して、本体部60を縮んだ状態にする時刻と、伸ばした状態にする時刻とを設定する。ここでは、午前8:00に、午前7:00を縮んだ状態の時刻として設定し、午後5:00を延びた状態の時刻に設定したものとする。これにより、午後5:00になると制御部90がギアドモーター83を回転させ、この回転によりボールネジ81のネジ部81bが回転してナット部81aが上昇する。これにより、ナット部81aに一体に連結されている本体部60の上枠63が上昇する。制御部90は本体部60が十分に延びる所定の時間だけギアドモーターを駆動するように設定してあり、図5に示すような状態となったところで、動作が終了する。なお、蓋70は実施形態1に係る鉢植え用短日処理装置Xと同様に本体部60が伸びる過程において上方近傍で閉じるようになっている。この状態で、短日植物に対して遮光することができる。そして、次の朝7:00になると、再び制御部90がギアドモーター83を先とは逆に回転させる。これにより、ボールネジ81のネジ部81bが回転しナット部81aが下降して、蓋70が開き、本体部60の上枠63が下降し、図6に示すような状態に戻り、短日植物に光を当てることができる。以下、同様にして毎日同じ時刻に本体部60が伸びて遮光状態となり、同じ時刻に本体部60が縮んで遮光状態が解除されることとなる。
【0023】
なお、上記実施形態では、本体部10、60や蓋30、70は黒い合成樹脂シートを用いたが、本体部10、60や蓋30、70の外部に動物や植物を模した飾りつけを施したり、美観を考慮した配色やイラストを配したりすることによりインテリアとしての価値を見出すことも有効である。
また、本発明の構成要素の材質等は適宜変更できることはいうまでもなく、また、駆動装置の昇降については、バネやボールネジのほか、ゴムを用いたりリンク機構を用いたりすることができる。
さらに、上記実施形態では、円筒状の鉢に植えられた鉢植えを例示したが、長方形状のプランターに対しては本体部の断面を長方形状の筒にすれば足り、複数の鉢植えについて短日処理をする場合は、断面積の大きな筒状体とすればよい。
また、上記実施形態では、本体部は薄いシート体により形成することで、上下に伸び縮みできるようになっているが、この他にも、蛇腹状に形成したり、入れ子状に筒を重ねることで伸縮できるようにしてもよい。
それから、上記実施形態では蓋を設けているが、遮光率を高く設定する必要のない植物に対しては蓋はなくても本体部の長さが十分にあれば足りる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る鉢植え用短日処理装置の斜視図である。
【図2】(a)(b)ともに実施形態1に係る軸止部の内部構造を示す回転軸に垂直な平面で切った断面図であり、(a)は蓋が閉じた状態を示し、(b)は蓋が開いた状態を示す。
【図3】(a)は実施形態1に係る制御装置の拡大斜視図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】実施形態1に係る鉢植え用短日処理装置の縮んだ状態を示す斜視図である。
【図5】実施形態2に係る鉢植え用短日処理装置の斜視図である。
【図6】実施形態2に係る鉢植え用短日処理装置の縮んだ状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
X、Y 鉢植え用短日処理装置
P 鉢植え短日植物
10、60 本体部
20 圧縮バネ
30、70 蓋
50、90 制御装置
80 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる鉢植え植物を内部に収容できる大きさを有する筒状体であり、上下方向である筒状体の中心軸方向に縮めることができる、外面が遮光部材により覆われる本体部と、
前記本体部を所定の縮んだ状態である第一状態に保持する第一状態保持手段と、
前記本体部を所定の伸びた状態である第二状態に保持する第二状態保持手段と
を有する鉢植え用短日処理装置。
【請求項2】
前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段と、
前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段と
をさらに有する
請求項1に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項3】
前記第二状態保持手段は前記本体部の上縁を上方へ向うよう力を付与する弾性体により形成され、
前記第一状態保持手段は前記弾性体を拘束する拘束手段を有する
請求項1に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項4】
前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段が前記弾性体により形成され、
前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段が前記拘束手段の拘束をタイマーにより解除する
請求項3に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項5】
前記第一状態保持手段と前記第二状態保持手段は、前記本体部の上下方向に平行に設けられた長尺の支持部材と、この支持部材に沿って移動し所定位置で固定できる、前記本体部の上縁と連結される移動部材とからなる
請求項1に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項6】
前記本体部を前記第一状態から前記第二状態へ変形させる駆動手段が前記移動部材を移動させる移動装置により形成され、
前記駆動手段の動作をタイマーにより制御する制御手段が前記移動装置の動作をタイマーにより制御するものである
請求項5に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項7】
前記筒状体の本体部の上部開口に開閉可能な蓋をさらに有する請求項1から6のいずれか1項に記載の鉢植え用短日処理装置。
【請求項8】
前記蓋は前記本体部が第一状態では開いており、前記本体部が第一状態から第二状態に変形する動作に連動して閉じるように構成される請求項7に記載の鉢植え用短日処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−215468(P2007−215468A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39146(P2006−39146)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(504126363)
【Fターム(参考)】