説明

鋳物製品の製造方法、鋳物製品及び鋳造用金型装置

【課題】製品内部における引け巣、面引け及び湯境の発生を抑制でき、寸法精度及び強度が確保された鋳物製品を製造する鋳物製品の製造方法を提供する。
【解決手段】鋳造用金型装置20に金属溶湯を供給して凝固させる工程を備え、鋳造用金型装置20には、製品成形部21と、製品成形部21の下方側から溶湯を供給する湯道部22と、が設けられ、湯道部22には、製品成形部21と湯道部22とが接する接続部26の水平投影面の面積よりも水平断面積の大きい湯溜り部23が形成されており、湯溜り部23は、接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域の体積に対して100%以上500%以下の容量を有するとともに、湯溜り部23の上端から下方に向って接続部26の直上に位置する製品成形部21の最小高さ以上の高さ範囲においては、水平断面の断面積が接続部26の水平投影面の面積の100%以上200%以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳造用金型装置に金属溶湯を供給して凝固することで製造される鋳物製品の製造方法、鋳物製品及び鋳造用金型装置に関するものである。
特に、マニュアルトランスミッション(オートマティックマニュアルトランスミッション,デュアルクラッチトランスミッション等の自動制御機能を持つものも含む)用シンクロナイザーリングおよび各種ブッシュ,スリーブ,ライナー等の円筒状部品を鋳物製品として製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前述のシンクロナイザーリング等の円筒状部品は、例えば半連続鋳造法で得られた円柱状のインゴットに対して熱間押出加工や鍛造加工を行い、さらに機械加工等を行うことによって製造されていた。
最近では、製品の需給変動に柔軟に対応し、かつ、低価格化の要望に応えるために,製造リードタイムの短縮や歩留り改善等によるコストダウンが求められている。しかしながら、上述のような製造工程では、製造リードタイムの短縮をこれ以上推進することは非常に困難であった。
【0003】
一方、特許文献1,2には、溶湯に大気圧+αの圧力を掛けて鋳造する低圧鋳造法によって、鋳物製品を製造する技術が提案されている。
この低圧鋳造法においては、溶解原料の低減を図ることができるとともに、最終製品形状に近似した鋳物製品を製造可能である。このため、低圧鋳造法を適用することにより、製造リードタイムの短縮やコストダウンを図ることが可能となる。なお、この低圧鋳造法では、溶湯を加圧していることから押し湯効果を得ることが可能であることから、歩留まりを向上させるために、通常、溶湯を供給するための湯道が極力短くなるように、金型が設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−277697号公報
【特許文献2】特開平06−039519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低圧鋳造法では、最終凝固部に大きな引け巣や面引けが発生したり、不特定の位置で湯境が発生したりすることがある。このため、寸法形状の確保や強度の確保ができないおそれがあった。また、低圧鋳造の後に塑性加工等を行う場合には、塑性加工時に割れが発生してしまうおそれがあった。
このようなことから、シンクロナイザーリング等のように荷重が負荷される部品の製造には、低圧鋳造法を適用することができなかった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、製品内部における引け巣、面引け及び湯境の発生を抑制でき、寸法精度及び強度が確保された鋳物製品を製造する鋳物製品の製造方法及び鋳物製品、並びに、この鋳物製品の製造方法に用いられる鋳造用金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の鋳物製品の製造方法は、鋳造用金型装置に金属溶湯を供給して凝固させる工程を備えた鋳物製品の製造方法であって、前記鋳造用金型装置には、製品成形部と、前記製品成形部の下方に接続された湯道部と、が設けられ、前記湯道部には、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の水平投影面の面積よりも水平断面積の大きい湯溜り部が形成されており、前記湯溜り部は、前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積に対して100%以上500%以下の容量を有するとともに、前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲においては、水平断面の断面積が前記接続部の水平投影面の面積の100%以上200%以下とされていることを特徴としている。
【0008】
このような構成とされた本発明の鋳物製品の製造方法においては、製品成形部の下方に湯道部が配設され、この湯道部に湯溜り部が形成されており、この湯溜り部の容量や形状が上述のように規定されているので、最終凝固部が製品成形部以外の部分、すなわち、湯道部及び湯溜り部に位置することになり、鋳物製品の内部に、引け巣や面引け等の欠陥が生じることを抑制できる。よって、寸法精度及び強度に優れた鋳物製品を製造することが可能となる。
【0009】
なお、前記湯溜り部の容量が前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積の100%未満の場合、あるいは、前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲における水平断面の断面積が前記接続部の水平投影面の面積の100%未満である場合には、最終凝固部が製品成形部に位置するおそれがある。
一方、前記湯溜り部の容量が、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積の500%超である場合、あるいは、前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲における水平断面の断面積が前記接続部の水平投影面の面積の200%超である場合には、必要以上に湯溜り部が大きくなり、歩留まりが低下してしまう。
【0010】
以上のことから、前記湯溜り部の容量を、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積に対して100%以上500%以下とし、前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲における水平断面の断面積を前記接続部の水平投影面の面積の100%以上200%以下としている。
【0011】
なお、前記湯溜り部の容量を、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積の100%以上300%以下とすることが好ましい。
また、前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最大高さ以上の高さ範囲における水平断面の断面積を前記接続部の水平投影面の面積の100%以上200%以下とすることが好ましい。
【0012】
ここで、本発明の鋳物製品の製造方法においては、前記湯溜り部の上端と前記製品成形部の下端との距離が、前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最大高さ以下とされていることが好ましい。
この場合、最終凝固部を確実に湯道部側へと位置させることが可能となる。なお、この作用効果を確実に奏功せしめるために、前記湯溜り部の上端と前記製品成形部の下端との距離を、前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以下とすることが好ましい。
【0013】
また、前記接続部の水平投影面の面積が、当該水平投影面の直上に位置する前記製品成形部の領域における前記水平投影面に垂直な最小断面積の80%以上200%以下とされていることが好ましい。
この場合、接続部から製品成形部への湯流れが安定することになり、製品成形部に湯境が発生することを確実に抑制することが可能となる。
【0014】
前記製品成形部との接点を含む断面であって面積が最小となる前記湯道部の断面の法線と前記接続部の中央における法線とが成す角度が10°以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、接続部における湯流れが安定することになり、製品成形部へと溶湯を安定して供給することができ、製品成形部に湯境が発生することを確実に抑制することが可能となる。また、最終凝固部を湯道部及び湯溜り部へと確実に位置させることが可能となる。
【0015】
本発明の鋳物製品は、前述の鋳物製品の製造方法によって製造されたことを特徴としている。
この構成の鋳物製品においては、内部に引け巣、面引け等がなく、寸法精度及び強度に優れることになる。よって、荷重が負荷される部品としても適用することができる。
【0016】
本発明の鋳造用金型装置は、製品成形部と、前記製品成形部の下方に接続された湯道部と、を有し、前記湯道部には、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の水平投影面の面積よりも水平断面積の大きい湯溜り部が形成されており、前述の鋳物製品の製造方法において用いられることを特徴としている。
この構成の鋳造用金型装置においては、前述の鋳物製品の製造方法を実施することができ、鋳物製品の内部に引け巣や面引け等の欠陥が生じることを抑制できる。よって、寸法精度及び強度に優れた鋳物製品を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製品内部における引け巣、面引け及び湯境の発生を抑制でき、寸法精度及び強度が確保された鋳物製品を製造する鋳物製品の製造方法及び鋳物製品、並びに、この鋳物製品の製造方法に用いられる鋳造用金型装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である鋳物製品の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である鋳造用金型装置の概略断面説明図である。
【図3】本発明の実施形態である鋳物製品の製造方法を示すフロー図である。
【図4】図2に示す鋳造用金型装置の内部における凝固状態を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態である鋳造用金型装置の概略断面説明図である。
【図6】図5に示す鋳造用金型装置の内部における凝固状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態である鋳物製品、鋳物製品の製造方法及び鋳造用金型装置について、図1から図3を参照して説明する。
【0020】
本実施形態である鋳物製品10は、自動車等に用いられるマニュアルトランスミッション用のシンクロナイザーリングの素材であり、荷重が負荷される部品となるものである。本実施形態である鋳物製品10は、図1に示すように、貫通孔を有するとともに、軸線Oを中心とする円環状をなしている。
この鋳物製品10は、例えば、MBA2、MBA5、MBA52(MMCスーパーアロイ株式会社製)といった高力黄銅で構成されている。
【0021】
ここで、本実施形態である鋳物製品10は、溶湯に大気圧+αの圧力を掛けて鋳造する低圧鋳造法によって製造される。
本実施形態では、図2に示す鋳造用金型装置20を用いて、鋳物製品10を製造することになる。
【0022】
この鋳造用金型装置20は、図2に示すように、製品成形部21と、この製品成形部21の下方に接続された湯道部22と、を備えている。この湯道部22には、湯溜り部23と、湯溜り部23への溶湯を供給する溶湯供給路24と、が形成されている。
本実施形態では、製品成形部21のうち鋳物製品10の側壁部の外周面となる位置に湯道部22が接続されている。また、本実施形態では、湯溜り部23は、概略円板状をなしている。
【0023】
ここで、湯溜り部23の容積Vは、製品成形部21と湯道部22とが接する接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの体積Vに対して、1×V≦V≦5×Vの範囲内とされ、好ましくは、1×V≦V≦3×Vの範囲内とされている。
また、湯溜り部23の上端から下方に向かって接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最小高さHmin以上の高さ範囲、好ましくは接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最大高さHmax以上の高さ範囲では、湯溜り部23の水平断面の断面積Aが、接続部26の水平投影面Aに対して、1×A≦A≦2×Aの範囲内とされている。
【0024】
ここで、湯溜り部23の上端と製品成形部21の下端との距離hは、接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最大高さHmax以下とされている。
また、湯道部22のうち製品成形部21への開口面積、すなわち、接続部26の水平投影面の面積Aが、当該水平投影面の直上に位置する製品成形部21の領域Zにおける水平投影面に垂直な最小断面積Aminに対して、0.8×Amin≦A≦2×Aminの範囲内とされている。
【0025】
さらに、湯道部22は、製品成形部21との接点を含む断面であって面積が最小となる断面の法線L1と、接続部26の中央における法線L2と、が成す角度が10°以下とされている。本実施形態では、湯道部22が接続部26に対して鉛直方向下方に向けて延在していることから、上述の法線L1と法線L2とが一致することになる。
【0026】
次に、このような構成とされた鋳造用金型装置20を用いて本実施形態である鋳物製品10を製造する方法について、図3を用いて説明する。
【0027】
(溶解工程S01)
まず、MBA2、MBA5、MBA52(MMCスーパーアロイ株式会社製)といった高力黄銅の溶湯を溶製する。溶解原料を調製して、低周波誘導溶解炉で溶解することで、所定の組成の銅合金溶湯を得る。
【0028】
(銅溶湯供給工程S02)
次に、得られた銅合金溶湯を、図2に示す鋳造用金型装置20に供給する。このとき、溶湯温度を、融点+10℃以上融点+200℃以下とし、到達圧力を大気圧+0.2bar以上大気圧+1bar以下の範囲内とする。
すると、銅合金溶湯は、湯道部22を介して、製品成形部21へ供給される。
【0029】
(凝固工程S03)
鋳造用金型装置20に供給された銅合金溶湯を凝固させる。このとき、図4に示すように、製品成形部21から凝固が進行していき、最終凝固部30が、製品成形部21の外部、すなわち、湯道部22(湯溜り部23)に位置することになる。このようにして、鋳造成形品が成形される。
【0030】
(加工工程S04)
そして、凝固工程S03によって得られた鋳造成形品に対して機械加工等を行うことによって、図1に示す鋳物製品10(シンクロナイザーリング素材)が製造される。
【0031】
以上のような構成とされた本実施形態である鋳物製品10、鋳物製品10の製造方法及び鋳造用金型装置20によれば、製品成形部21の下方に湯道部22が配設され、この湯道部22に湯溜り部23が形成されており、図4に示すように、最終凝固部30が製品成形部21以外の湯道部22(湯溜り部23)に位置する構成とされているので、鋳物製品10の内部に、引け巣や面引け等の欠陥が生じることを抑制できる。よって、寸法精度及び強度に優れた鋳物製品10を製造することが可能となる。
【0032】
すなわち、湯溜り部23の容積Vは、製品成形部21と湯道部22とが接する接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの体積Vに対して、1×V≦V≦5×Vの範囲内とされ、好ましくは、1×V≦V≦3×Vの範囲内とされているので、湯溜り部23に貯留される銅合金溶湯が十分確保され、最終凝固部30を湯溜り部23側へと位置させることが可能となるのである。なお、湯溜り部23の容積Vを必要以上に大きくすると、歩留まりが低下してしまうため、V≦5×V、好ましくは、V≦3×Vと上限を規定しているのである。
【0033】
また、湯溜り部23の上端から下方に向かって接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最小高さHmin以上の高さ範囲、好ましくは接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最大高さHmax以上の高さ範囲では、湯溜り部23の水平断面の断面積Aが、接続部26の水平投影面Aに対して、1×A≦A≦2×Aの範囲内とされているので、湯道部22側における湯溜り部23の大きさが確保されることになり、最終凝固部30を湯溜り部23側へと位置させることが可能となる。
【0034】
本実施形態では、湯溜り部23の上端と製品成形部21の下端との距離hは、接続部26の直上に位置する製品成形部21の領域Zの最大高さHmax以下とされているので、最終凝固部30を確実に湯道部22(湯溜り部23)側へと位置させることが可能となる。
【0035】
また、湯道部22のうち製品成形部21への開口面積、すなわち、接続部26の水平投影面の面積Aが、当該水平投影面の直上に位置する製品成形部21の領域Zにおける水平投影面に垂直な最小断面積Aminに対して、0.8×Amin≦A≦2×Aminの範囲内とされているので、接続部26から製品成形部21に向けての湯流れが安定することになり、製品成形部21に湯境が発生することを確実に抑制することが可能となる。
【0036】
さらに、湯道部22は、製品成形部21との接点を含む断面であって面積が最小となる断面の法線L1と、接続部26の中央における法線L2と、が成す角度が10°以下とされ、本実施形態では、上述の法線L1と法線L2とが一致させられているので、接続部26における湯流れが安定することになり、製品成形部21へと銅合金溶湯を安定して供給することができる。また、最終凝固部30を湯道部22及び湯溜り部23へと確実に位置させることが可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、製品成形部21のうち鋳物製品10の側壁部の外周面となる位置に湯道部22が接続された構造の鋳造用金型装置20を用いて説明したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、製品成形部121のうち鋳物製品10の側壁部の端面となる位置に湯道部122が接続された構造の鋳造用金型装置120であってもよい。この場合であっても、図6に示すように、最終凝固部130は、製品成形部121以外の湯道部122(湯溜り部123)に位置することになる。
【0038】
また、本実施形態では、湯溜り部22が概略円板状をなすものとして説明したが、これに限定されることはなく、球状、円錐台状、四角柱状、円柱状等であってもよい。
さらに、鋳物製品10が自動車等に用いられるマニュアルトランスミッション用のシンクロナイザーリングの素材であるとして説明したが、これに限定されることはなく、他の部品等に用いられるものであってもよく、用途に限定はない。また、鋳造用金型を用いて得られた鋳造成形品を加工することによって得られる部品(例えば、シンクロナイザーリング等)も、本発明の鋳物製品に含まれる。すなわち、上述の鋳造用金型装置に金属溶湯を供給して凝固させる工程を有していれば、他の工程に限定はなく、加工工程や切削工程等を備えていてもよい。
【0039】
また、鋳物製品10を、例えば、MBA2、MBA5、MBA52(MMCスーパーアロイ株式会社製)といった高力黄銅で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の金属材料で構成されたものであってもよい。
さらに、低圧鋳造法によって鋳物製品10を成形するものとして説明したが、これに限定されることはなく、鋳造用金型装置20に対して下方から溶湯を供給する構成であればよい。
【実施例】
【0040】
本発明の作用効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
図2に示す形状の鋳造用金型装置において、湯道部、湯溜り部の寸法を表1に示すように変更して、各種鋳造用金型装置を準備した。なお、製品成形部のサイズは、外径60mm,内径50mm、高さ10mmとした。
【0041】
これらの鋳造用金型装置に供給する溶湯として、Zn−62.5mass%Cu−3mass%Al−3mass%Mn−1mass%Si−0.2mass%Cr−0.3mass%Niの組成の銅合金溶湯を、低周波溶解炉で1.8トンを溶製した。
この銅合金溶湯を、溶湯温度が1020℃、到達圧力が大気圧+0.405barの条件で低圧鋳造を行った。
【0042】
製造された鋳物製品について以下のような評価を行った。
寸法精度の評価として、リング円周上の120°間隔の位置において肉厚及び高さを測定し、その最大値と最小値との差を算出した。なお、最大値と最小値との差が0.3mm以下であれば合格と判定した。
湯境については、深さ0.5mm以上の局所的な線状欠陥の有無として評価した。
引け巣の有無については、X線透過試験によって評価した。リングの対称軸方向から管電圧170kvpで1min照射、製品成形部−湯道部−湯溜り部に亘る領域における最終凝固部の引け巣の位置を判定した。
評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
湯溜り部の容積Vが、製品成形部と湯道部とが接する接続部の直上に位置する製品成形部の領域の体積Vの100%以上500%以下の範囲内とされるとともに、湯溜り部の上端から下方に向かって接続部の直上に位置する製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲において、湯溜り部の水平断面の断面積Aが、接続部の水平投影面Aの100%以上200%以下の範囲内とされた本発明例1−14においては、寸法精度が十分であり、引け巣及び湯境が確認されなかった。
【符号の説明】
【0045】
10 鋳物製品
20、120 鋳造用金型装置
21、121 製品成形部
22、122 湯道部
23、123 湯溜り部
26、126 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用金型装置に金属溶湯を供給して凝固させる工程を備えた鋳物製品の製造方法であって、
前記鋳造用金型装置には、製品成形部と、前記製品成形部の下方に接続された湯道部と、が設けられ、
前記湯道部には、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の水平投影面の面積よりも水平断面積の大きい湯溜り部が形成されており、
前記湯溜り部は、前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の体積に対して100%以上500%以下の容量を有するとともに、
前記湯溜り部の上端から下方に向って前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最小高さ以上の高さ範囲においては、水平断面の断面積が前記接続部の水平投影面の面積の100%以上200%以下とされていることを特徴とする鋳物製品の製造方法。
【請求項2】
前記湯溜り部の上端と前記製品成形部の下端との距離が、前記接続部の直上に位置する前記製品成形部の領域の最大高さ以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の鋳物製品の製造方法。
【請求項3】
前記接続部の水平投影面の面積が、当該水平投影面の直上に位置する前記製品成形部の領域における前記水平投影面に垂直な最小断面積の80%以上200%以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳物製品の製造方法。
【請求項4】
前記製品成形部との接点を含む断面であって面積が最小となる前記湯道部の断面の法線と前記接続部の中央における法線とが成す角度が10°以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鋳物製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋳物製品の製造方法によって製造されたことを特徴とする鋳物製品。
【請求項6】
製品成形部と、前記製品成形部の下方に接続された湯道部と、を有し、前記湯道部には、前記製品成形部と前記湯道部とが接する接続部の水平投影面の面積よりも水平断面積の大きい湯溜り部が形成されており、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋳物製品の製造方法において用いられることを特徴とする鋳造用金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59775(P2013−59775A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198447(P2011−198447)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(510312950)MMCスーパーアロイ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】