説明

鋼橋の塗り替え方法

【課題】水平部分の先端にある角部の塗装膜が厚くなるようにした鋼橋の塗り替え方法を提供すること。
【解決手段】鋼橋100の略水平方向に張り出した水平部分112の先端角部に施した塗装膜115の塗り替えであって、水平部分112の先端上側にある角部を曲面10を加工する加工工程と、その曲面10を加工した部分に塗装を行う塗装工程とを有する鋼橋の塗り替え方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装を施した鋼橋の塗り替え方法に関し、特に水平部分の先端にある角部に対する塗り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼橋には、鋼材が腐食しないように保護するため塗装が施されている。しかし、定期的に塗り替えを行わなければ塗料が剥げてしまい、防食効果が十分でなくなり錆びが発生するなどし、鋼橋の機能を低下させることになる。ところで、図2に示すように、鋼橋100は断面I形となる鋼製の主桁101が長手方向に延びている。幅方向に複数配置されたその主桁101同士は、対傾構102および分配横桁103などの部材がガセットプレート104を介して連結されている。主桁101は、ウェブ111の上下にフランジ112が形成され、断面がI形の鋼材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−058051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼橋100は、水平に延びているフランジ112の上などに水が溜まりやすい。そして、フランジ112などでは、例えば図3に示す図2のA部拡大図のように、先端の角部120に塗料が十分厚みをもって塗装できない。そのため、塗装膜115の膜厚が他の部分と比べて薄くなっている分、劣化が早くなってしまっている。塗装が行われた鋼橋100の各箇所の中でも、フランジ112のような水平部分であって、特に先端の角部に腐食が生じやすい。鋼橋は定期的に塗料の塗り替えが行われるが、そうした劣化の早い箇所に合わせて再塗装の間隔を決定すれば、塗り替え頻度が多くなってしまう。鋼橋の場合、塗装箇所が高所になるなど作業が困難な場所が多いため、塗り替えの間隔は長いことが望ましい。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決すべく、水平部分の先端にある角部の塗装膜が厚くなるようにした鋼橋の塗り替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋼橋の塗り替え方法は、鋼橋の略水平方向に張り出した水平部分の先端角部に施した塗装膜の塗り替え方法であって、前記水平部分の先端上側にある角部を曲面加工する加工工程と、その曲面加工した部分に塗装を行う塗装工程とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る鋼橋の塗り替え方法は、前記加工工程が、前記水平部分の塗装膜を剥がす工程と、塗装膜を剥がした前記角部を曲面にする工程とを有することが好ましい。
また、本発明に係る鋼橋の塗り替え方法は、前記加工工程で前記角部に曲率半径が2mm乃至3mmの曲面を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明によれば、例えば主桁のフランジ部分など、鋼橋の水平部分について塗装膜の塗り替えを行う際、加工工程で前記水平部分の先端上側にある角部を曲面加工する加工工程と、その曲面加工した部分に塗装を施す塗装工程とを有するので、塗り替えらた水平部分の曲面角部には膜厚の厚い塗装膜が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】鋼橋のフランジ部について行った塗り替え工程を示した図である。
【図2】鋼橋の主桁についてフランジを長手方向に示した図である。
【図3】図2のA部を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る鋼橋の塗り替え方法について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、図2に示した鋼橋100の主桁101を構成するフランジ112を例に挙げて説明する。既設の鋼橋100では、水平方向に張り出したフランジ112の先端角部が鋭い角形状になっているため、その角部には塗料が厚さを保ち難くなっている。塗り替え塗装時、フランジ112のその他の部分では500μm程度の膜厚があるのに対し、角部には300μmもない状態である。
【0010】
そこで、本実施形態では、角部の塗装膜が厚く成るように、加工を施した後に塗り直しを行うこととした。図1は、鋼橋のフランジ部について行った塗り替え工程を示した図である。図1(a)に示すように、主桁101には、ウェブ111及びフランジ112に塗装膜115が施されている。そこで、先ず図1(b)に示すように、塗り替えに際してはフランジ112の塗装膜115を一旦剥がして地金を現す。既設の鋼橋100では、フランジ112の先端角部が鋭い角形状になっている。従来はそのまま再塗装を施していたが、本実施形態では、図1(c)に示すように、その先端角部の特に上側を削り、曲面加工を施す。
【0011】
曲面加工によって形成された曲面10は、その断面の曲率半径が2mm乃至3mmである。この曲面加工はフランジ112の長手方向に連続して行われ、曲面10が全体に渡って形成される。曲面10の加工は、フランジ112の下側には行わない。下側に曲面を設けると、水が落ちずに裏面に回り込んでしまうからである。そして、曲面10が形成されたフランジ112には、図1(d)に示すように改めて塗装が行われ、フランジ112の表面に塗装膜115が施される。
【0012】
こうして塗り替えが行われフランジ112の曲面10部分には、従来より厚い膜厚の塗装膜115が形成される。フランジ112の曲面10部分と平面部分の膜厚と比較したところ、曲面10の曲率半径が2mmの場合には平面部分の70%程の膜厚があり、曲率半径が3mmの場合には平面部分の80%程の膜厚があった。しかも、曲面10によってフランジ112上の水は落ち易くなった。なお、曲率半径を2mm乃至3mmにしたことによって強度に影響を与えることなく、上記効果を得ることが可能になった。
【0013】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では主桁101のフランジ112を対象にして説明した、鋼橋100を構成するその他の部分であってもよい。
【符号の説明】
【0014】
10 曲面
100 鋼橋
101 主桁
111 ウェブ
112 フランジ
115 塗装膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼橋の略水平方向に張り出した水平部分の先端角部に施した塗装膜の塗り替え方法において、
前記水平部分の先端上側にある角部を曲面加工する加工工程と、
その曲面加工した部分に塗装を行う塗装工程とを有することを特徴とする鋼橋の塗り替え方法。
【請求項2】
請求項1に記載する鋼橋の塗り替え方法において、
前記加工工程は、前記水平部分の塗装膜を剥がす工程と、塗装膜を剥がした前記角部を曲面にする工程とを有することを特徴とする鋼橋の塗り替え方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鋼橋の塗り替え方法において、
前記加工工程では、前記角部に曲率半径が2mm乃至3mmの曲面を形成することを特徴とする鋼橋の塗り替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72580(P2012−72580A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217124(P2010−217124)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】