説明

鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムおよび方法

【課題】トロカール・カニューレのような手術器具挿入・抜去用中空管とそれぞれに対して挿抜される複数種の手術器具とを対応付けた手術情報記録・解析ファイルを自動作成する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムを提供する。
【解決手段】手術器具6iそれぞれに異なるIDのRFIDタグ9iを取り付け、トロカール・カニューレ5A,5B,5CそれぞれにはRFIDアンテナ7A,7B,7Cを取り付け、RFIDリード・ライト制御部3にてRFIDタグ9iのIDを読み取り、手術器具のトロカール・カニューレに対する挿入時刻と抜去時刻とのデータをリアルタイムに取得し、トロカール・カニューレの番号とそれに挿抜された手術器具ID、手術器具名と挿抜時刻を一組とする手術器具使用データを手術情報記録・解析ファイル200に時系列に自動登録する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムおよび方法、それらに使用するRFIDアンテナ、RFIDアンテナ装置、RFIDリーダ・ライタ、手術器具挿入・抜去用中空管、RFIDタグ、RFIDタグ装置、並びに、鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムおよび方法にて作成される手術情報記録・解析ファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡・腹腔鏡下手術は次のようにして行われている。
【0003】
(ア)それが胸部手術の場合には胸壁、またそれが腹部手術の場合には腹壁に複数の小孔を開け、それらの小孔それぞれにトロカール・カニューレと称する手術器具挿入・抜去用中空管を留置する。
【0004】
(イ)それらの手術器具挿入・抜去用中空管内に複数種の手術器具を挿入して外科操作を行う。そして手術対象の臓器の視認は、1つの手術器具挿入・抜去用中空管に挿入されている内視鏡によって行う。(この内視鏡による視認は、場合によって小切開から内視鏡を直接に挿入して行う場合もある。)
(ウ)内視鏡で撮像された臓器の動画像が映し出されるモニタを見つつ、手術器具挿入・抜去用中空管内に挿入された複数種の手術器具を操作して手術を進める。
【0005】
(エ)外科操作に応じて考案されている種々の手術器具を交換して必要な操作を行う。
【0006】
一般に、外科手術の際に取得される外科手術情報は、手術時間、出血量などの総体的な情報に限られており、各手術器具の使用順序や使用時間を正確に記録して情報として残すことは行われていない。
【0007】
しかしながら、このような各手術器具の使用順序や使用時間の正確な記録情報があれば、執刀医はこれらの情報から当該手術を客観的に、かつ正確に評価できるようになり、次の同様な手術への参考とできる。また、医師の自己の技量向上や新人教育の観点からも有益な情報として活用できる。
【0008】
そこで、上記の詳細な手術情報を記録するために、内視鏡の記録映像を人間が観察しながら作成しようとすれば、1時間程度の手術であっても数日から1週間は必要とする作業となる。特に、各手術器具の使用時間の計測には手間と時間がかかる問題点がある。そのために、従来から、各手術器具の使用順序や使用時間の正確な記録情報が取得できる技術の開発が望まれていた。
【0009】
従来、RFIDタグを手術器具や薬品容器に取り付け、所有者、殺菌済みなどの各種情報を書き込み、それを参照することで管理を正確かつ容易にする技術は特開2003−111772号公報(特許文献1)に記載されている。しかしながら、この技術は手術器具等の管理のためものものであり、各手術器具の使用順序や使用時間の正確な記録情報を取得するためのものではない。
【0010】
また、従来、特開2005−95567号公報(特許文献2)には手術中に行われた処置内容を忠実に再現させる内視鏡システムが記載されている。この特許文献2に記載の技術によれば、システムのRFID端末にて内視鏡や電気メスの処置具などに埋め込まれているIDタグより無線にて個別ID情報を読み取り、個別ID情報を機器パラメータ履歴、画像の時間軸と関連づけることで術者がどのような処置を行ったかを履歴として残すことができる。しかしながら、この特許文献2の技術は、内視鏡画像をずっと観察することによってしか得られない手術情報であり、単なる手術野のビデオ録画に使用された処置具を対応付けるだけであり、手術器具挿入・抜去用中空管とそれに対して挿抜される手術器具とのデータをリアルタイムに対応付けて自動記録する技術ではない。
【0011】
さらに、特開2006−254974号公報(特許文献3)には、複数種の内視鏡毎に識別用のICタグを取り付けておき、接眼部に取り付けられた内視鏡の種類をICタグリーダが読み取ったICタグのIDにて識別し、それぞれの内視鏡の特性に応じて明るさ、色合い、輪郭強調といった観察形態を自動調整する技術が記載されている。しかしながら、この特許文献3は手術情報を記録するものではなく、また、手術器具挿入・抜去用中空管とそれに対して挿抜される手術器具とをリアルタイムに対応付けて自動記録する技術などは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−111772号公報
【特許文献2】特開2005−95567号公報
【特許文献3】特開2006−254974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、内視鏡下の手術において複数の手術器具挿入・抜去用中空管とそれぞれに対して挿抜される複数種の手術器具とをリアルタイムに対応付けて自動記録し、あるいは、それらのデータに内視鏡の映像データをも対応づけて自動記録し、その手術情報記録・解析ファイルを利用することにより手術情報を多様に解析することができる鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムおよび方法、それらに使用するRFIDアンテナ、RFIDアンテナ装置、RFIDリーダ・ライタ、手術器具挿入・抜去用中空管、RFIDタグ、RFIDタグ装置、並びに、鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムおよび方法にて作成される手術情報記録・解析ファイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの特徴は、複数の手術器具それぞれに異なる手術器具IDを付けるために複数の手術器具それぞれに取り付けるための複数のRFIDタグと、前記RFIDタグの発信する手術器具IDを受信するために、複数の手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための複数のRFIDアンテナと、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの交信を制御し、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの間の交信が開始し維持されている間に取得するRFIDタグ情報を送出するRFIDリード・ライト制御部と、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報から手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその使用開始時刻および使用終了時刻を継続的に取得し、解析するコンピュータとを備えた鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムである。
【0015】
上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、さらに、手術野を撮影する内視鏡と、前記内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に保存する映像記録装置とを備え、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報から手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその使用開始時刻および使用終了時刻を継続的に取得すると共に、前記中空管の使用開始時刻および使用終了時刻に対応する時刻の映像データに付されたマーカ識別番号を継続的に取得し、解析するものとすることができる。
【0016】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報に基づき、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたものとすることができる。
【0017】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報に基づく手術器具名毎の使用開始時刻と使用終了時刻と、当該使用開始時刻と使用終了時刻とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号とを一組とした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたものとすることができる。
【0018】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、同じ中空管と同じ手術器具IDの電気メスに関して手術器具使用データが連続する場合、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入開始時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の電気メス使用データを作成するものとすることができる。
【0019】
さらに、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、前記手術器具使用データの中で、同じ中空管の同じ手術器具名であって前記電気メスの手術器具使用データと同期して手術器具の挿入開始時点と抜去時点とが連続して繰り返し出現する手術器具使用データについては、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の当該手術器具の手術器具使用データを作成するものとすることができる。
【0020】
本発明の別の特徴は、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空管取付手段を有し、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するために形成されたRFIDアンテナである。
【0021】
また、本発明の別の特徴は、鏡視下手術に使用する手術器具挿入・抜去用中空管であって、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するためのRFIDアンテナが管体の後端開口部に取り付けられている手術器具挿入・抜去用中空管である。
【0022】
また、本発明の別の特徴は、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空管取付手段を有し、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するために形成されたRFIDアンテナと、前記RFIDアンテナと接続され、前記RFIDアンテナに給電し、かつ前記RFIDアンテナの受信する手術器具IDを含むRFIDタグ情報を中空管毎にコンピュータに送出するRFIDリード・ライト制御部とを備えたRFIDリーダ・ライタである。
【0023】
また、本発明の別の特徴は、手術器具にスライド自在に套装するための円盤形のRFIDタグと、前記手術器具の適宜の位置に固定するスプリング押えと、前記手術器具に套装し、かつ、前記RFIDタグとスプリング押えとの間に介在させるためのスプリングとで成るRFIDタグ装置である。
【0024】
また、本発明の別の特徴は、手術器具の適宜の位置に貼り付けるために貼り付け面に粘着剤を塗布したフィルム状のRFIDタグである。
【0025】
また、本発明の別の特徴は、手術器具の適宜の位置に貼り付けるために貼り付け面に粘着剤を塗布し、金属製手術器具の金属表面への電磁誘導を防止する処理を貼付面に施したフィルム状のRFIDタグである。
【0026】
また、本発明の別の特徴は、中空の胴部の一端の内周面に雌ねじを切り、前記胴部の内部若しくは外部にRFIDアンテナ線をそのアンテナ面が、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に挿入される手術器具に取り付けられたRFIDタグ内蔵アンテナのアンテナ面に対向するように配置して成るRFIDアンテナである。
【0027】
また、本発明の別の特徴は、上記発明のRFIDアンテナと、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空のコネクタとで成るRFIDアンテナ装置であって、前記コネクタの外周に切られた雄ねじを前記RFIDアンテナの胴部の内周面に切られた雌ねじと螺合させて当該RFIDアンテナを前記コネクタを介して前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるようにしたRFIDアンテナ装置である。
【0028】
また、本発明の別の特徴は、複数の手術器具それぞれに異なる手術器具IDを付けるために複数の手術器具それぞれに取り付けるための複数のRFIDタグと、前記RFIDタグの発信する手術器具IDを受信するために、複数の手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための複数のRFIDアンテナと、前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けられ、手術器具の当該手術器具挿入・抜去用中空管への挿入・抜去を検出する光センサと、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの交信を制御し、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの間の交信が開始し維持されている間に取得するRFIDタグ情報を送出するRFIDリード・ライト制御部と、前記光センサの手術器具挿抜検出信号を中空管毎に出力する光センサ制御部と、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる手術器具挿抜検出信号とから手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその挿入開始時刻および抜去時刻を継続的に取得し、解析するコンピュータとを備えた鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムである。
【0029】
上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、さらに、手術野を撮影する内視鏡と、前記内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に保存する映像記録装置とを備え、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる手術器具挿抜検出信号とから手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその挿入開始時刻および抜去時刻を継続的に取得すると共に、前記中空管の使用開始時刻および使用終了時刻に対応する時刻の映像データに付されたマーカ識別番号を継続的に取得し、解析するものとすることができる。
【0030】
上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる前記手術器具挿抜検出信号に基づき、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたものとすることができる。
【0031】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいては、前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部および光センサ制御部から送られてくる前記情報および手術器具挿抜検出信号に基づく手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたものとすることができる。
【0032】
また、本発明の別の特徴は、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付け、当該中空管に対して挿入・抜去される手術器具に取り付けられたRFIDタグの発信する手術器具IDを含むRFID情報を受信するRFIDアンテナと、前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付け、当該中空管に対する手術器具の挿入・抜去を検出する光センサとを備えて成るRFIDアンテナ装置である。
【0033】
また、本発明の別の特徴は、鏡視下手術に使用する手術器具挿入・抜去用中空管であって、上記発明のRFIDアンテナ装置が取り付けられた手術器具挿入・抜去用中空管である。
【0034】
また、本発明の別の特徴は、1本又は複数本の手術器具挿入・抜去用中空管を用いた手術について、手術器具挿入・抜去用中空管の識別番号と手術器具挿入・抜去用中空管毎に挿抜された手術器具名と手術器具の挿抜時刻とを一組の手術器具使用データにして時系列に記録した手術情報記録・解析ファイルである。
【0035】
上記発明の手術情報記録・解析ファイルにおいては、前記手術器具挿入・抜去用中空管の識別番号と手術器具挿入・抜去用中空管毎に挿抜された手術器具名と手術器具の挿抜時刻と共に、当該挿抜時刻に対応する内視鏡の映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組の手術器具使用データにして時系列に記録したものとすることができる。
【0036】
また、本発明の別の特徴は、RFIDリーダ・ライタの送出する手術器具IDとその手術器具の挿抜時刻とのデータを継続的に入力するステップと、入力した手術器具IDと、前記手術器具IDに対応する手術器具名とその挿抜時刻とのデータを中空管毎にメモリに継続的に保持するステップと、前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録するステップとを有する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法である。
【0037】
上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法においては、同じ中空管と同じ手術器具IDの電気メスに関して手術器具使用データが連続する場合、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入開始時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の電気メス使用データとするものとすることができる。
【0038】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法においては、前記手術器具使用データの中で、同じ中空管の同じ手術器具名であって前記電気メスの手術器具使用データと同期して手術器具の挿入開始時点と抜去時点とが連続して繰り返し出現する手術器具使用データについては、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の当該手術器具の使用データを作成するものとすることができる。
【0039】
また、上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法においては、手術野を撮影する内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に映像記録装置に保存するステップを有し、前記手術器具使用データを前記手術情報記録・解析ファイルに登録するステップは、前記映像記録装置における前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上にマーカ識別番号を特定し、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成するものとすることができる。
【0040】
さらに、本発明の別の特徴は、RFIDリーダ・ライタの送出する手術器具IDを含むRFIDタグ情報と光センサの送出する手術器具挿抜検出信号とから、その手術器具のIDと挿抜時刻とのデータを継続的に入力するステップと、入力した手術器具IDと、前記手術器具IDに対応する手術器具名とその挿抜時刻とのデータを中空管毎にメモリに継続的に保持するステップと、前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録するステップとを有する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法である。
【0041】
上記発明の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法においては、手術野を撮影する内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に映像記録装置に保存するステップを有し、前記手術器具使用データを前記手術情報記録・解析ファイルに登録するステップは、前記映像記録装置における前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上にマーカ識別番号を特定し、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成するものとすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、トロカール・カニューレおよびこれに準じる手術器具挿入・抜去用中空管を使用する腹腔鏡下手術、内視鏡下手術のような鏡視下手術について、手術器具挿入・抜去用中空管毎に挿抜された手術器具名と手術器具の挿抜時刻とを一組の手術器具使用データにして時系列に記録した手術情報記録・解析ファイル、あるいはそれらに内視鏡の映像データを加えた手術情報記録・解析ファイルをリアルタイムに、かつ、自動的に作成することができ、執刀医にはこの手術情報記録・解析ファイルを分析することで当該手術を客観的にかつ正確に評価させることができ、医師の自己の技量向上や新人教育に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1つの実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムのシステム構成を示すブロック図。
【図2】上記実施の形態におけるRFIDアンテナを取り付けたトロカール・カニューレの斜視図。
【図3】上記実施の形態におけるRFIDアンテナを取り付けたトロカール・カニューレとRFIDタグを取り付けた手術器具との斜視図。
【図4】上記実施の形態において通常のトロカール・カニューレにRFIDアンテナを取り付ける構造を示す断面図。
【図5】上記実施の形態において気腹用のトロカール・カニューレにRFIDアンテナを取り付ける構造を示す断面図。
【図6】上記実施の形態におけるコンピュータシステムの機能構成を示すブロック図。
【図7】上記実施の形態において手術器具名・ID対応データ記憶部が記憶している手術器具名・ID対応データを示すデータシート。
【図8】上記実施の形態において電気メスを1回使用する場合の電気メスIDの取得動作のタイミングチャート。
【図9】上記実施の形態において1度の挿抜の期間内に電気メスを3回使用する場合の電気メスIDの取得動作のタイミングチャート。
【図10A】上記実施の形態における手術情報記録・解析ファイルの作成処理のフローチャート。
【図10B】上記実施の形態における手術情報記録・解析ファイルの作成処理中の処理Aの詳細なフローチャート。
【図11】上記実施の形態において作成された手術情報記録・解析ファイル。
【図12】上記実施の形態において作成された手術情報記録・解析ファイル内で表示されうる手術器具使用状況の集計表。
【図13】上記実施の形態において作成された手術器具使用状況の集計表から作成した使用手術器具毎の使用回数の棒グラフ。
【図14】上記実施の形態において作成された手術器具使用状況の集計表から作成した使用手術器具毎の使用頻度の円グラフ。
【図15】上記実施の形態において作成された手術器具使用状況の集計表から作成した使用手術器具毎の総使用時間の割合を示す円グラフ。
【図16】本発明の第2の実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムのブロック図。
【図17】上記実施の形態において通常のトロカール・カニューレに取り付けるRFIDアンテナの斜視図。
【図18】上記実施の形態において通常のトロカール・カニューレに取り付けるRFIDアンテナの別例の斜視図。
【図19】本発明の第3の実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムのブロック図。
【図20】上記実施の形態におけるRFIDアンテナと光センサを取り付けたトロカール・カニューレの斜視図。
【図21】上記実施の形態におけるRFIDアンテナ装置(RFIDアンテナ部分と光センサ部分を含む)の拡大斜視図。
【図22】上記実施の形態におけるRFIDアンテナ装置(RFIDアンテナ部分と光センサ部分を含む)を取り付けたトロカール・カニューレとRFIDタグを取り付けた手術器具との斜視図。
【図23】上記実施の形態におるRFIDアンテナ装置(RFIDアンテナ部分と光センサ部分を含む)における光センサによる手術器具挿抜の検出動作の説明図。
【図24】上記実施の形態におけるコンピュータシステムの機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0045】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムを図1に示す。本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムは、後述するデータ処理を行うための種々のアプリケーションソフトウェアがインストールされているコンピュータシステム1と、手術室に設置されている内視鏡モニタ2、RFIDリード・ライト制御部3、そして、鏡視下手術のために手術部位を撮像するために生体内に挿入して用いられる内視鏡4、必要本数(ここでは3本)の手術器具挿入・抜去用中空管としてのトロカール・カニューレ5A,5B,5C、RFIDアンテナ7A,7B,7C、そして各種の手術器具6iから構成されている。ここで符号6iの「i」は、手術器具が複数種あり、そのいずれであるかを区別するための符号であり、例えば、電気メス605、吸引管610、中空両開き鉗子613等の区別のために示している。また、以下では、手術時に生体に留置され、手術器具等を挿抜するためのトロカール・カニューレやそれに準ずる手術器具挿入・抜去用中空管を「トロカール・カニューレ」と称して説明するが、トロカール・カニューレに限定されるものではない。また、トロカール・カニューレは3本図示しているが、本数はこれに限るものではな。また、この本数に応じてRFIDアンテナの本数とRFIDリード・ライト制御部3への信号線の本数は変わる。
【0046】
また、本実施の形態では、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cに対応してRFIDアンテナ7A,7B,7C、RFIDアンテナ7A,7B,7Cに対応して信号線8A,8B,8C、そしてRFIDリード・ライト制御部3には信号線8A,8B,8Cの接続端子3A,3B,3Cが用意してある。尚、この組み合わせは手術中に変更しなければ任意である。
【0047】
RFIDリード・ライト制御部3は、接続端子3A,3B,3Cそれぞれから入力されるRFIDタグIDを含むタグ情報をコンピュータシステム1に送信する。さらに同時に、RFIDアンテナ7A,7B,7Cそれぞれの装着されているトロカール・カニューレ5A,5B,5Cそれぞれを識別するための中空管識別情報(信号あるいは番号)をコンピュータシステム1に送信する。この中空管識別情報は、コンピュータシステム1の入力ポート番号で代用することもできる。例えば、入力ポートがUSBポートの場合、それぞれのUSBポートの識別情報を利用しても良い。いずれにせよ、これら中空管識別情報はコンピュータシステム1内では個別の中空管識別番号として参照される。
【0048】
また、RFIDリード・ライト制御部3は必要に応じて、RFIDタグ内の情報を書き換えたり、新たな情報を追記したりする。
【0049】
RFIDリード・ライト制御部3は、RFIDアンテナ7A,7B,7Cのように複数のRFIDアンテナを個別に制御するために、複数の個別の制御回路から構成されても良い。あるいは、RFIDアンテナ切替装置のように複数のアンテナを単体の制御部で制御する方式も可能である。また、このリード・ライト制御部3全体あるいはその制御機能の一部をコンピュータシステム1が含んでも良い。
【0050】
また、図1ではRFIDリード・ライト制御部3とコンピュータシステム1との間を1本のケーブル線で接続しているが、これは便宜的なもので、前記の機構に応じて複数のケーブル線から構成されても良い。
【0051】
尚、本実施の形態では、コンピュータシステム1に入力されるRFIDリード・ライト制御部3からの信号をRFIDタグ情報と総称して説明する。
【0052】
図2に示すように、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cそれぞれ(ここでは、1本のみ示している。)にはRFIDタグ9iからID信号を受信する円筒形のRFIDアンテナ7A,7B,7Cが装着されている。この装着位置は、鏡視下手術にて手術対象に開けた小孔にトロカール・カニューレを挿入し留置した状態にてその中に手術器具を挿入して操作をする際にその操作を妨げない位置である。
【0053】
尚、このRFIDアンテナは円筒形に限らず、多角筒形その他の形状であってもよい。また、RFIDアンテナは、RFIDタグ9iへのデータ書き込みにも利用できるものである。さらに、RFIDアンテナ7iとRFIDタグ9iとの通信のための周波数は、特に限定しないが、現時点の日本で使用許可されている周波数帯を利用する。例えば、13.56MHz、433MHz、860−960MHz、さらには2.45GHzを利用することもできる。また、パッシブタイプのRFIDタグに代えて、必要に応じてアクティブタイプのものを利用することも可能である。
【0054】
図3に示すように、各種の手術器具6iにはRFIDタグ装置が取り付けてある。このRFIDタグ装置は、円盤形のRFIDタグ9i、スプリング押え11i、スプリング10iにより構成される。円盤形のRFIDタグ9iはスライド自在に套装してあり、手術器具6iの適切な位置にスプリング押え11iがネジ12にて固定してあり、RFIDタグ9iとスプリング押え11iとの間に比較的弱い力ながらRFIDタグ9iを手術器具6iの先端方向に付勢するスプリング10iが取り付けてある。スプリング10iは、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cのいずれかに手術器具6iを挿入して外科操作を行うときにその挿入深さが浅深変化しても常にRFIDアンテナ7A,7B,7C等と通信可能な距離に位置し、かつ、手術器具6iを操作する時に医師の手に余計な力を負担させることがない強さに設定してある。RFIDタグ9i各々には他と異なるID番号などが記憶させてある。
【0055】
RFIDタグ9iがRFIDアンテナ7A,7B又は7Cに近接すると、RFIDアンテナ7A,7B又は7CがRFIDタグ9iの送出するRFIDタグ情報を受信して信号線8A,8B又は8Cを通じてRFIDリード・ライト制御部3に送信する。尚、一般的には、アンテナ部分と制御部とが一体になったその装置の全体がRFIDリーダ・ライタと称されているが、本発明では別体にしたRFIDアンテナ7i(1台若しくは複数台)とRFIDリード・ライト制御部3とでRFIDリーダ・ライタを構成するものとしている。
【0056】
図4、図5を用いて、トロカール・カニューレ5i各々に取り付けるRFIDアンテナ7iの構造について説明する。図4に示すように、RFIDアンテナ7iは、中空の胴部71の先端部の内周に雌ねじ72を切り、胴部の後端外周にアンテナ線73を巻き付け、さらにその全体にカバー74を被せた構造である。そしてこの構造のRFIDアンテナ7iをトロカール・カニューレ5iの後端開口部に取り付けるために、トロカール・カニューレの構造により図4又は図5に示すような2種類の異なったコネクタ511,521のどちらかを用いる。尚、コネクタ511又は521とRFIDアンテナ7iとの組み合わせにてRFIDアンテナ装置を構成する。
【0057】
尚、図4のRFIDアンテナ7iはループアンテナを例示しており、アンテナ面は中空管入口面に対してほぼ平行となる。すなわち、アンテナから発射される電波やアンテナから発生する磁力線の向きは主として中空管入口面に対してほぼ垂直方向となるように例示しているが、アンテナ面が中空管入口面に対してほぼ垂直となるように形状や配置が工夫されたRFIDアンテナでも良く、RFIDタグ内蔵アンテナ面と安定的な交信を可能とするように形状や配置が工夫されたRFIDアンテナであれば、アンテナ面の向きは任意である。あるいは、ループアンテナ以外のアンテナでも良い。
【0058】
図4に示すコネクタ511は、トロカール・カニューレ5iが通常の単純な中空管構造である場合にそれにRFIDアンテナ7iを取り付けるためのものである。コネクタ511も中空管であり、その後部外周に雄ねじ512が切ってあり、先端側は先細り部513にして、トロカール・カニューレ5iの後端のテーパーになった開口部514に差し込んで固定するようにしてある。そして、このトロカール・カニューレ5iにRFIDアンテナ7iを取り付けるには、コネクタ511の先細り部513をトロカール・カニューレ5iの後端のテーパー型の開口部514に押し込んで固定し、このコネクタ511の雄ねじ512の部分にRFIDアンテナ7iの先端の雌ねじ72を螺合させることでトロカール・カニューレ5iの後端部分にRFIDアンテナ7iを取り付ける。
【0059】
他方、トロカール・カニューレ5iが気腹用であれば、図5(a)に示す構造のコネクタ521を利用する。気腹用のトロカール・カニューレ5iは、手術のためのスペースを腹腔内に確保するために二酸化炭素ガスを腹腔内に加圧注入するために使用されるもので、このトロカール・カニューレ5iの後端開口部にはゴムキャップ525を被せて加圧用の二酸化酸素ガスが逃げないように工夫されている。
【0060】
このような構造の気腹用のトロカール・カニューレ5iに対してRFIDアンテナ7iを取り付けるために、中空のコネクタ521の後部外周に雄ねじ522を切り、また先端側にはゴムキャップ525に套装するための接続口523を設けると共にゴムキャップ525にこの接続口523が密着してガス漏れしないようにゴム弾性カバー524を被せる構造にしている。そして、このような気腹用のトロカール・カニューレ5iにRFIDアンテナ7iを取り付けるには、先ず、図5(b)に示すように、コネクタ521の接続口523をトロカール・カニューレ5iの後端のゴムキャップ525の部分に嵌め込み、さらにゴム弾性カバー524を被せてコネクタ521をトロカール・カニューレ5iの後端部に固定する。そして、図5(c)に示すように、このコネクタ521の雄ねじ522の部分にRFIDアンテナ7iの先端の雌ねじ72を螺合させることで気腹用のトロカール・カニューレ5iの後端部分にRFIDアンテナ7iを取り付ける。
【0061】
図6に、本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムのコンピュータシステム1における処理機能をブロックに分解して示している。図6の記憶装置101はメインメモリ、CPU(中央処理装置)のレジスタ、一時メモリ、ハードディスク、大容量固定メモリ等、データを一時的に、また恒久的に記憶する手段を代表させて示したものであり、一般的にコンピュータシステム1に搭載される種々のデータ記憶手段を総称している。本明細書で称すメモリとはCPUのレジスタ、メインメモリ、一時メモリなどの総称であり、各処理に応じた最も適切なメモリを意味する。記憶装置101のハードディスクには鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析用のアプリケーションソフトウェアがインストールされている。また、RFIDデータ入力処理部103AはUSBなどの外部バスや拡張バスなども含み、RFIDタグ情報をコンピュータシステム1に入力する手段や制御法の総称である。映像データ入力処理部103Bは画像入力ボードなども含み、内視鏡4で取得された画像データをコンピュータシステム1に入力する手段や制御法の総称である。演算処理部109は鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析用のアプリケーションソフトウェアにおける全ての演算処理を行い、CPU内の演算装置も含む。クロック102は計時を統括する部位でCPU内のクロックも含む。
【0062】
本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムは中空管毎にそれに対して挿抜された手術器具名と挿抜時刻とのデータをリアルタイムに取得、保持してゆくための構成要素として、RFIDリード・ライト制御部3からのRFIDタグ情報を入力するRFIDデータ入力処理部103Aと、手術器具6i毎の手術器具名と手術器具IDとRFIDタグID番号(通常、タグ内のICチップにあらかじめ付与されている何桁もの数字)との対応関係を示す手術器具名・ID対応データを記憶する手術器具名・ID対応データ記憶部104と、各種の演算を行う演算処理部109と、手術データ処理部107を備えている。RFIDデータ入力処理部103Aはコンピュータに継続的に入力されてくる中空管識別情報を含むRFIDタグ情報をクロック102で作成される時刻とともに逐次メモリに格納していく。これらの情報に対して、手術データ処理部107は演算処理部109とともに、鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析用のアプリケーションソフトウェアのコマンドに従って、手術器具名の同定と挿抜時刻の判定を行い、その結果を中空管識別番号(中空管識別情報をそのまま利用しても良いし、新規に指定しても良い)、手術器具IDとともにメモリに格納していく。すなわち、手術器具名の同定は手術器具名・ID対応データ記憶部104の手術器具名・ID対応データを参照して、当該IDに対応する手術器具名を読み出す。尚、当該手術器具の挿抜時刻の判定方法は後述する。
【0063】
また、本システムは、手術データ処理部107が記憶装置101のメモリに保持させた中空管識別番号とそれに対して挿抜された手術器具IDと手術器具名と挿抜時刻とのデータに対して手術情報記録・解析ファイル200を作成するための構成要素として、手術器具名とその手術器具の挿入開始時刻と抜去時刻とを一組にした手術器具使用データを、中空管毎、したがってトロカール・カニューレ毎に時系列に作成して記憶装置101の手術情報記録・解析ファイル200に記録し、前記手術器具使用データ群を元にさらなる演算処理や総合的な分析を行い、それらの結果なども手術情報記録・解析ファイル200に記録する手術情報記録・解析ファイル作成部115と、この手術情報記録・解析ファイル作成部115の作成した手術情報記録・解析ファイル200の内容をディスプレイに表示し、プリントアウトし、あるいはネットワークにて他のシステムに送信する等のデータ出力を行う出力処理部108を備えている。
【0064】
本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおけるコンピュータシステム1は、さらに、手術記録映像と自動リンクさせる機能を実現するために、映像データ入力処理部103Bと映像データ処理部111を備える。手術野を撮影する内視鏡4からの映像データは映像データ入力処理部103Bを介してコンピュータシステム1に入力され、映像データ処理部111はその映像データを記憶装置101の大容量記憶装置に記録していく。そして、手術データ処理部107は演算処理部109とともに中空管と手術器具の同定および手術器具挿抜時刻の判定を行うと同時に、挿抜時刻に同期した映像データ上のアドレス情報として映像位置マーカ番号を作成し、メモリに格納していく。
【0065】
本実施の形態の手術情報記録・解析ファイル作成部115は、手術データ処理部107によって作成されメモリに保持されている前記の手術器具使用情報と映像位置マーカ番号をもとに、手術器具名毎の挿入開始時刻と抜去時刻と共に映像位置マーカ番号を付加して一組とした手術情報を中空管あるいはトロカール・カニューレ毎に時系列に記録して、手術情報記録・解析ファイル200を作成する。さらに例えば、手術情報記録・解析ファイル作成部115は手術情報記録・解析ファイル200上の映像位置マーカ番号をクリックすると、大容量記憶装置に記録されている映像データの中からその時点の映像データだけが再生できるような機能を付加することもできる。
【0066】
手術情報記録・解析ファイル作成部115は、前記の手術情報記録・解析ファイル200を手術終了時に一括して作成しても良いし、手術データ処理部107によって作成されメモリに逐次格納されていく前記の手術データから手術情報記録・解析ファイル200を逐次作成していっても良い。
【0067】
また、不測の事態によってこれらの手術情報が失われるのを防止するため、手術データ処理部107および手術情報記録・解析ファイル作成部115で作成される手術情報は記憶装置101内のハードディスク内に逐次記録していっても良い。
【0068】
また、手術器具として電気メスを使用する場合にはそのノイズの漏洩によりRFIDタグ9iとRFIDアンテナ7iとの間で無線通信が一時的にできなくなる可能性があるので、手術データ処理部107は、後述するアルゴリズムにて電気メスの使用情報を作成する。
【0069】
次に図7を用いて、上記構成の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムの動作について説明する。この動作はとりもなおさず、コンピュータシステム1が実行する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法でもある。手術の開始により手術対象の皮膚の1箇所あるいは複数箇所(ここでは、3箇所とする)に小孔を開け、それぞれの小孔にトロカール・カニューレ5A,5B,5Cを挿入して留置する。各トロカール・カニューレ5A,5B,5CにはRFIDアンテナ7A,7B,7Cが取り付けてあり、各RFIDアンテナ7A,7B,7Cの信号線8A,8B,8CをRFIDリード・ライト制御部3の接続端子3A、接続端子3B、接続端子3Cそれぞれに接続する。
【0070】
以下の説明では、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cそれぞれの中空管識別番号を「1」,「2」,「3」とする。また、図7の表に示したように、手術器具ID番号は、使用される中空両開き鉗子(1)が「101」、中空両開き鉗子(2)が「102」、使用される三穴式結繋鉗子が「111」、オジギ鉗子(1)が「114」、オジギ鉗子(2)が「115」、電気メスが「201」等々としている。同じ種類の手術器具であっても、個体別に手術器具ID、手術器具名を付して使用している。これらの手術器具名とそれに対応する手術器具ID番号とRFIDタグのID番号(タグ内のICチップにあらかじめ付与されている何桁もの数字)との対応関係はあらかじめ手術器具名・ID対応データとして手術器具名・ID対応データ記憶部104に登録してある。
【0071】
内視鏡下手術の開始に先立って、内視鏡4の映像データの撮影時刻を手術器具使用時刻と厳密に一致させておく。
【0072】
手術が開始され、外科医が必要な手術器具(ここではRFIDタグ91が取り付けられた手術器具ID番号「101」の中空両開き鉗子(1))を受け取り、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cのいずれかに挿入する(ここでは、最初にトロカール・カニューレ5A、中空管識別番号「1」に挿入したとする)と、中空両開き鉗子(1)に取り付けられているRFIDタグ91とRFIDアンテナ7Aの間で交信が開始され、RFIDタグ91のICチップ内のID番号をRFIDアンテナ7Aが受信し、信号線8Aおよび接続端子3Aを通じてRFIDリード・ライト制御部3に入力する。
【0073】
RFIDリード・ライト制御部3は、RFIDアンテナ7AとRFIDタグ91間の交信が継続している間、RFIDタグ91のID番号とトロカール・カニューレ5Aの番号「1」(すなわち中空管識別番号)とをコンピュータシステム1に送信し続ける。あるいは、交信開始時点のRFIDタグ情報のみをコンピュータシステム1に送信するような制御を行っても良い。
【0074】
コンピュータシステム1では、RFIDデータ入力処理部103AにRFIDリード・ライト制御部3からトロカール・カニューレ5Aの中空管識別番号「1」とRFIDタグ91のID番号が入力され、記憶装置101内のメモリに格納される。これと同時に、手術データ処理部107はその入力信号と同期した時刻をクロック102から取得しメモリに格納する。そしてまた同時に、手術データ処理部107は演算処理部109とともに、手術器具名・ID対応データ記憶部104を参照して、RFIDタグ91が取り付けられている手術器具ID番号である「101」と手術器具名である中空両開き鉗子(1)を取得し、メモリに格納する。また同時に、前記のRFIDタグ情報が最初に入力された時刻(すなわちRFIDタグとRFIDアンテナの交信が開始された時点の時刻)を中空両開き鉗子(1)の挿入開始時刻として判定し、メモリに保持する。あるいは、交信開始時点のRFIDタグ情報のみがコンピュータシステム1に入力される場合はその信号あるいは情報が入力された時刻をクロック102から取得し、中空両開き鉗子(1)の挿入開始時刻として判定する。以上のように、手術データ処理部107は、トロカール・カニューレ5Aの識別番号「1」と手術器具ID「101」と当該IDに対応する手術器具名「中空両開き鉗子(1)」とその挿入開始時刻のの情報を一組にしてメモリに格納する。
【0075】
また、内視鏡4にて撮像された映像データは逐次モニタ2に映し出され、同時に映像データ入力処理部103Bを介してコンピュータシステム1に入力され、映像データ処理部111はクロック102から取得した時刻データとともに映像データを記憶装置101のハードディスクなどの大容量記憶装置に記録していく。手術データ処理部107は、前記のように中空両開き鉗子(1)のトロカール・カニューレ5Aへの挿入開始時刻が確定すると同時に映像位置マーカ番号(図11ではTC1−1)を作成し、メモリに格納する。また同時に、映像データ処理部111は記憶装置101に記録されていく映像データに同期してこの映像位置マーカ番号を記録する。
【0076】
その後、トロカール・カニューレ5Aから中空両開き鉗子(1)が抜去されると、トロカール・カニューレ5AのRFIDアンテナ7Aと中空両開き鉗子(1)のRFIDタグ91との交信が途絶えるので、当該手術器具ID「101」の取得ができなくなるため、その時点でRFIDリード・ライト制御部3からのRFIDタグID番号はコンピュータシステム1へ入力されなくなる(これは必ずしもRFIDリード・ライト制御部3からのコンピュータシステム1への入力信号が途絶えることを意味するものではない)。このRFIDタグ情報の途絶時点をコンピュータシステム1では、手術データ処理部107などによる前記手術器具挿入時と同様の処理によって、トロカール・カニューレ5A(番号「1」)から中空両開き鉗子(1)が抜去された時刻と判定し、手術器具IDである「101」、手術器具名「中空両開き鉗子(1)」、トロカール・カニューレ5Aの識別番号「1」とともに、メモリに格納する。また挿入時と同様に映像データの処理がなされ、前記の抜去時刻に一致した映像データ上に映像位置マーカ番号(図11ではTC1−2)が付与され、抜去時の手術器具使用情報と対になってこの映像位置マーカ番号もメモリに格納される。
【0077】
同様に、トロカール・カニューレ5B(中空管識別番号「2」)に手術器具ID「102」の中空両開き鉗子(2)が挿入され、その器具に取り付けられているRFIDタグ92とRFIDアンテナ7Bとの間で交信が開始されると、RFIDリード・ライト制御部3を経て、RFIDタグ92の内蔵ICチップのRFIDタグID番号と中空管識別番号「2」がコンピュータシステム1に入力される。コンピュータシステム1は、この入力を受けて、上記と同様にして、入力開始時点すなわち交信開始時点を挿入開始時刻と判定し、その時刻にトロカール・カニューレ5B(中空管識別番号「2」)に手術器具ID「102」の手術器具名「中空両開き鉗子(2)」が挿入されたとする一組のデータをメモリに保持させる。また同時に、内視鏡4から映像データ入力処理部103Bと映像データ処理部111を経てコンピュータシステム1に入力され記憶装置101に記録され続けている映像データに、前記挿入開始時刻に同期して映像位置マーカ番号(図11ではTC2−1)が作成・記録される。この映像位置マーカ番号は前記の手術器具使用情報と対になってメモリにも格納される。
【0078】
もし、トロカール・カニューレ5Bから手術器具ID「102」の手術器具名「中空両開き鉗子(2)」が抜去される前に、トロカール・カニューレ5Aに手術器具ID「111」の三穴式結紮鉗子が挿入されたとすると、前記のようにコンピュータシステム1は、この器具に取り付けられているRFIDタグ93からのRFIDタグID番号を手術器具ID「111」に変換し、トロカール・カニューレ5Aの識別番号「1」、手術器具名「三穴式結紮鉗子」、挿入開始時刻、挿入開始時刻の映像マーカである映像位置マーカ番号(図11ではTC1−3)をメモリに格納する。
【0079】
こうして、手術データ処理部107は、取得した中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と挿入開始時刻のデータと挿入開始時点の映像マーカである映像位置マーカ番号、次に中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と抜去時刻のデータと抜去時点の映像マーカである映像位置マーカ番号、を入力順にメモリに保持させていく。
【0080】
次に、手術データ処理部107がメモリに保持させた中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と挿抜時刻のデータと映像位置マーカ番号を用いて、手術情報記録・解析ファイル200を作成する動作について説明する(図11)。
【0081】
前記のように、手術データ処理部107は中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と挿抜時刻と映像位置マーカ番号を関連づけて、入力順にメモリに格納しているので、このデータを手術情報記録・解析ファイル作成部115は、手術器具名と挿入時刻あるいは抜去時刻、映像位置マーカ番号を一組とする手術器具使用/内視鏡マーカ・データを中空管毎に時系列的に登録した手術情報記録・解析ファイル200を作成する。
【0082】
また上記の具体例によれば、トロカール・カニューレ5Aでは中空両開き鉗子(1)が使用されたが、その抜去時刻と挿入時刻との差から、中空両開き鉗子(1)の使用時間も計測できるので、それを表示することも可能である。さらに、トロカール・カニューレ5Aでは中空両開き鉗子(1)の挿入・抜去に続いて、三穴式結紮鉗子が挿入されたが、この三穴式結紮鉗子の挿入時刻から中空両開き鉗子(1)の抜去時刻を引くことによって、中空両開き鉗子(1)から三穴式結紮鉗子に器具を交換するのに要した時間(器具交換時間)も計算できる。
【0083】
電気メスの手術器具使用データの作成は特別である。電気メス使用時には高周波ノイズが発生し、それによって電気メスに取り付けられたRFIDタグと電気メスが挿入されているトロカール・カニューレのRFIDアンテナとの間の交信が途絶える可能性がある。これは、電気メス挿抜に関して以下で詳述するような誤認識を引き起こす。この誤認識をソフトウェア的に対処する方法を図8および図9に示している。図8のタイミングチャートに示すように、タイミングT1にて電気メス(手術器具ID「201」)がトロカール・カニューレ5A(中空管識別番号「1」)に挿入されると、その挿入時には電気メスに取り付けられているRFIDタグとそれが挿入されたトロカール・カニューレ5A(中空管識別番号「1」)のRFIDアンテナ7Aとの間で交信が始まり、RFIDアンテナ7Aは電気メスの手術器具ID「201」(RFIDタグのID番号を201に設定していると仮定する)を受信する。この手術器具IDはRFIDリード・ライト制御部3を経由して、中空管識別番号「1」と共にコンピュータシステム1に入力され、コンピュータシステム1によって、電気メスがトロカール・カニューレ5A(中空管識別番号「1」)に時刻T1に挿入されたと判定される。しかしながら、その直後のタイミングT2には電気メスの使用が開始され(電気メスのスイッチがオンにされ)、上述したように大きなノイズの漏洩が起こる。その発生するノイズにより電気メスに取り付けられているRFIDタグとこの電気メスが挿入されているトロカール・カニューレ5Aに取り付けられているRFIDアンテナ7Aとの間で無線交信ができなくなる。そして、タイミングT3にて電気メスの使用が止まる(電気メスのスイッチがオフにされる)と、再び上記のRFIDタグとそれが挿入されているRFIDアンテナ7Aとの間で無線交信が再開され、再び電気メスの手術器具ID「201」が取得される。しかしながら、電気メスは使用が終了すれば直ちに抜去されるので、トロカール・カニューレ5Aから抜去されるタイミングT4にて、電気メスのRFIDタグとそれが挿入されているトロカール・カニューレ5AのRFIDアンテナ7Aとの間の交信は終了する。上の手順にて手術器具使用データや手術情報記録・解析ファイル200を作成する場合、電気メスの実際には1回の挿抜期間T1〜T4が、現実にはあり得ないような短い時間T1〜T2の間、T3〜T4の間だけでの挿抜と誤認識してしまう。さらに、実際に電気メスのスイッチが入って電気メスが使用されている期間を当該トロカール・カニューレ5Aではどの手術器具も使用されていない期間と誤認識されてしまう。
【0084】
また、図9に示すように、電気メスをあるトロカール・カニューレ5Aに対する実際には1回だけの挿抜の間に電気メスのスイッチを3回オン/オフさせた場合についても考察する。この場合には、タイミングT11にて電気メスがトロカール・カニューレ5Aに挿入されたとすると、RFIDアンテナ7Aは電気メスの手術器具ID「201」を受信し、この手術器具IDはRFIDリード・ライト制御部3を経由して、中空管識別番号「1」と共にコンピュータシステム1に入力される。そして、コンピュータシステム1によって、電気メスがトロカール・カニューレ5A(中空管識別番号「1」)に時刻T11に挿入されたと判定される。しかしながら、その直後のタイミングT12には電気メスのスイッチが押されて上述したように大きなノイズの漏洩が起こる。その発生するノイズによりRFIDタグとそれが挿入されているRFIDアンテナ7Aとの間で無線交信ができなくなる。そして、タイミングT13にて電気メスのスイッチがいったん切られると、再び上記のRFIDタグとそれが挿入されているRFIDアンテナ7Aとの間で交信が再開され、再び電気メスの手術器具ID「201」が取得される。この後、タイミングT14〜T15の間、電気メスのスイッチが再び押されれば再び手術器具ID「201」の受信がこのT14〜T15の期間だけ停止する。そして、その後、タイミングT16にて電気メスのスイッチがまた再び押され、タイミングT17にてスイッチが切られれば、タイミングT16〜T17の間も再び電気メスの手術器具ID「201」の受信が停止する。そしてこれで電気メスの使用が終了して、タイミングT18にてトロカール・カニューレ5Aから抜去される。
【0085】
このような使用態様の場合、タイミングT11〜T12間、タイミングT13〜T14間、タイミングT15〜T16間、タイミングT17〜T18間、それぞれ現実にはあり得ない短時間の4回の使用があったとする手術器具使用データや手術情報記録・解析ファイル200内容が作成されてしまう。しかしながら、これは誤認識によるものであり、電気メスの真の使用回数は1回でなければならない。そこで、手術データ処理部107は、電気メスの手術器具使用データを作成するに際しては、同じ中空管識別番号に対して、他の手術器具の介在無くして、連続してN回の電気メスの手術器具ID「201」の挿抜の記録が取られている場合、この電気メスの手術器具使用データは1回の使用とする。つまり、タイミングT11〜T18の期間について電気メスは1回だけ使用されたとする手術器具使用データを作成してメモリに格納する。必要があれば、手術情報記録・解析ファイル作成部115はこのデータから手術情報記録・解析ファイル200を作成し、適宜記憶装置101のハードディスクなどに記録・保存する。
【0086】
また、電気メスの使用により、他のトロカール・カニューレに挿入されている他の手術器具に取り付けられているRFIDタグとそれが挿入されているトロカール・カニューレに取り付けられているRFIDアンテナとの間の交信が中断される場合も起こり得る。そのための対策として、手術データ処理部107は、電気メスの手術器具使用データと同期して、他の同じ中空管識別番号と同じ手術器具IDの手術器具の挿抜が繰り返し連続する期間がある場合には、その期間を含む一連の挿抜繰り返し期間における最初の読み取り開始時点を挿入開始時刻としその挿抜繰り返し期間の最後の抜去検出時点を抜去時刻とする1回分の当該手術器具の手術器具使用データを作成してメモリに格納する。また、手術情報記録・解析ファイル作成部115は手術情報記録・解析ファイル200を作成し、前記の手術器具使用データを逐次登録しても良い。
【0087】
以上の手術情報取得・解析用アルゴリズムの一例をフローチャート形式で、3本のトロカール・カニューレを例として図10A、図10Bに示す。
【0088】
ステップS1:手術情報取得・解析用アルゴリズムは、対象となる手術において取得され解析される手術情報を記録・表示するファイルとなる手術情報記録・解析ファイル200を作成し、これを開く。これと同時に、手術情報記録・解析ファイル作成部115は、記憶装置101の時系列の手術情報記録・解析ファイル200に情報を保存していく態勢に入る。または、この手術情報記録・解析ファイル200の作成は全ての手術情報が取得された後でも良い。
【0089】
ステップS2:ある手術器具がトロカール・カニューレ5A〜5Cいずれかに挿入されると、当該手術器具のRFIDタグ情報とともに当該トロカール・カニューレ識別番号(図10A、10Bではポート番号とする)がコンピュータシステム1に入力される。コンピュータシステム1(コンピュータシステム1内の細かな処理工程は前述した通りなのでここでは省略する)はまずそのポート番号を判別する。
【0090】
ステップS3−A〜S3−C:判別されたポート番号に応じてそれぞれの処理Aに進む。
【0091】
ステップS31〜S45:処理A(図10B)に示している。最初に手術器具IDを取得し(S31)、挿入された手術器具が電気メスか否か(新たに取得された手術器具IDが電気メスのものか否か)判断する(S32)。当該手術器具IDが電気メスのものであれば、当該トロカール・カニューレで前回に取得した手術器具IDが電気メスのものであったか否か(この前に使用された手術器具が電気メスであったか否か)判断する(S38)。そして前回手術器具IDが電気メスの手術器具IDでなければ、電気メスの手術器具IDを取得し始めた時刻を挿入時刻と判定する。また、映像位置マーカ番号を作成し、この挿入時刻に同期する内視鏡映像データ上にその映像位置マーカ番号を記録する。そして、当該手術器具IDに対応する手術器具名と挿入時刻、映像位置マーカ番号をメモリに格納する(S39,S40)。そして、前回取得の手術器具ID(前器具のID)の記録を今回取得の手術器具ID(現器具のID)にて更新してリターンする(S41)。
【0092】
ステップS38にて、前回取得の手術器具IDが電気メスに対応するものであれば、前器具IDを現器具IDにて更新することなく(更新しても結果は同じ)リターンする(S38にてTrueに分岐)。これにより、あるトロカール・カニューレに電気メスが挿入されている期間内にその電気メスのスイッチがオン/オフされた場合にも挿抜されたものとは認識しないことになる。
【0093】
ステップS32にて、現器具のIDが電気メスに対応するものでなかった場合、通常の手術器具が新たに当該トロカール・カニューレに挿入されたものと判断し、取得した手術器具IDに対して、前述のようにその挿入時刻を取得し、さらに映像位置マーカ番号を作成し、当該手術器具IDに対応する手術器具名と挿入時刻、映像位置マーカ番号をメモリに格納する。また、この挿入時刻に同期する内視鏡映像データ上に当該映像位置マーカ番号を記録する(S33,S34)。
【0094】
そして、前回取得された手術器具IDが電気メスのものであれば、電気メスの使用が終了して他の手術器具が新たに同じトロカール・カニューレに挿入されたものと判断し、当該トロカール・カニューレにおける最新の電気メス抜去時刻を用いて電気メス抜去情報を記録し、リターンする(S35,S36)。他方、ステップS35の判断にて、前回取得された手術器具IDが電気メスのものでなければ、今回取得した手術器具IDにて前回使用器具のIDを更新してリターンする(S37)。
【0095】
さらに、最初のステップS31にて、当該トロカール・カニューレにおいて手術器具IDが取得できなくなれば、当該手術器具が抜去されたものと判断して抜去時刻を取得する(S42)。前回使用器具のIDが電気メスに対応するものであれば、前記抜去時刻を電気メス用の仮の抜去時刻として保持してリターンする(S43,S44)。他方、ステップS43にて前回使用器具のIDが電気メスに対応するものでなければ、当該手術器具IDの手術器具に対する抜去時刻として記録(メモリに格納あるいは手術情報記録・解析ファイル200に記録)してリターンする(S43,S45)
S4−A,S4−B,S4−C:図10Aのフローチャートに戻り、ポート番号1〜3、つまりトロカール・カニューレ5A〜5Cのいずれについても処理Aが完了すれば、現ポートの使用が終了したか否かを判断し、現ポートの使用が未終了であればステップS2からの処理を繰り返す。
【0096】
S5−A,S5−B,S5−C:現ポートの使用が終了と判断すれば、最後の手術器具が電気メスであるか否かを判断する。
【0097】
S6−A,S6−B,S6−C:電気メスであれば、電気メス用抜去時刻を用いて電気メスに関する抜去情報を記録してステップS7に進む。他方、最後の手術器具が電気メスでなければ、そのままステップS7に進む。
【0098】
S7:すべてのポート、トロカール・カニューレについて挿抜計測が終了したか否かを判断する。
【0099】
S8,S9:すべてのトロカール・カニューレについて計測が終了すれば、計測結果を図11に示した手術情報記録・解析ファイル200に出力する。さらに、必要に応じて図12〜図15のような手術記録解析を付加して、手術情報記録・解析ファイル200を閉じる。
【0100】
このようにして、本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムによれば、複数のトロカール・カニューレ5A,5B,5Cとそれぞれに対して挿抜される複数種の手術器具6iの手術器具名とを対応付け、同時に内視鏡4により撮影した映像データに付加した手術器具挿抜時刻に対応する映像位置マーカ番号をも対応付けた図11に示すような手術情報記録・解析ファイル200をリアルタイムに自動作成できる。そして手術情報記録・解析ファイル200については、これを解析することにより、執刀医はこれらの情報から当該手術を客観的に、かつ正確に評価できるようになり、次の同様な手術への参考とできる。また、医師の自己の技量向上や新人教育の観点からも有益な情報として活用できる。
【0101】
上述のように、図11の手術情報記録・解析ファイル200は、中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名とその挿抜時刻のデータを加工し、トロカール・カニューレ5A,5B,5Cそれぞれの中空管識別番号を「1」,「2」,「3」それぞれとし、使用した手術器具情報やそれに対応した内視鏡映像情報をトロカール・カニューレ毎に時系列にまとめた表である。
【0102】
また、図12〜図15は、手術器具使用情報のサマリーを示している。これらの例示は手術データ処理部107がメモリに保持させている中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と挿抜時刻のデータに対するデータ加工のほんの一例であり、利用者の要求に応じて様々な切り口のサマリーを提示できる。図12は、記憶装置101のメモリに蓄えられた中空管識別番号と手術器具IDと手術器具名と挿抜時刻のデータを解析して、トロカール・カニューレを区別せずに、1回の手術全体において使用した手術器具毎にその使用回数(挿抜回数)、使用頻度、各手術器具毎の全使用時間をまとめたものである。この場合、同じ種類の手術器具については異なったIDのものも1つにまとめている。このデータを元にして作成したグラフとして、図13には使用手術器具の種類とその使用回数の棒グラフを示し、図14には手術器具毎の使用頻度の円グラフを示し、図15には総使用時間に対する手術器具毎の使用時間の占める割合の円グラフを示している。これらのデータ加工は、手術情報記録・解析ファイル作成部115により作成した手術情報記録・解析ファイル200に対しても同様に行えるものである。
【0103】
このような解析により、例えば、この手術では、吸引管(細)の挿抜回数が多いこと、その使用頻度が高いこと、中空両開き鉗子の全使用時間が長いこと等が観察できる。そして従来の同様の手術と比較すれば、今回の手術の傾向について把握できる。また、この手術が比較的経験の浅い外科医によるものであれば、既に取得してあるベテラン医師の同じような手術時のデータと比較することで、経験の浅い外科医の傾向を分析でき、また円熟するために必要な要素の究明にも利用することができる。
【0104】
尚、上記実施の形態においては、内視鏡による映像データを手術器具使用データにリンクさせることで、例えば、図11の手術情報記録・解析ファイル200においてトロカール・カニューレ1に中空両開き鉗子を挿入した使用開始時刻をポインティングデバイスにてクリックすれば、映像位置マーカ番号TC1−1(ここでは、時刻マーク16:55:22)から内視鏡の映像を再生させることができ、この中空両開き鉗子を使用している期間の手術野の様子を再現することができることになる。同様に、トロカール・カニューレ1に電気メスを挿入した使用開始時刻17:00:13をポインティングデバイスにてクリックすれば、映像位置マーカ番号TC1−5(ここでは、時刻マーク17:00:13)から内視鏡の撮影した手術野の映像を再生させることができ、電気メスを使用した期間の内視鏡の撮影した手術野の映像を再生することができることになる。
【0105】
しかしながら、これに限らず、映像とのリンクを必要としないのであれば、この部分の機能は省略することでシステムを簡素化できる。その場合には、図6の構成において、映像データ入力処理部103Bと映像データ処理部111とは省略することができる。
【0106】
(第2の実施の形態)
図16には、本発明の第2の実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムを示している。本実施の形態は、手術器具に取り付けるRFIDタグ9’iを特徴としている。第1の実施の形態ではRFIDタグには穴開き円盤形のものを使用したが、これに代えて、本実施の形態では裏面に粘着剤が塗布され、さらに金属製手術器具の場合には金属表面への電磁誘導を防止する処理を貼付面に施したフィルム状RFIDタグ9’iを使用する点が異なる、また、RFIDアンテナ7’A,7’B,7’Cの構造も異なる。尚、その他の構成は第1の実施の形態と共通であり、図16には図1と共通の要素には共通の符号を用いて示してある。
【0107】
図17は、RFIDアンテナ7’iの構造を示している。第1の実施の形態の場合、図4に示したRFIDアンテナ7iのように、コイルアンテナ73を採用したが、本実施の形態の場合、RFIDアンテナ7’iにはフィルム状RFIDタグ9’iとの感度の良い交信が可能なように、ループ状アンテナ73’を採用している。
【0108】
第1の実施の形態の円盤状のRFIDタグ9iと本実施の形態のフィルム状RFIDタグ9’iとの根本的な相違点はタグ内蔵の小アンテナの向きであり、これらは90°異なる。円盤状タグ内蔵アンテナ面は手術器具6iのシャフト軸と直交するように取り付けられるが、フィルム状RFIDタグ9’iは手術器具6iのシャフトに貼り付けるので、そのタグ内小アンテナ面はシャフト軸と平行となる。したがって、トロカール・カニューレ5A等に取り付けるRFIDアンテナ7’iのアンテナ面も円盤状タグ9iとフィルム状RFIDタグ9’iとでは90°違える必要がある。
【0109】
本実施の形態のフィルム状RFIDタグ9’iと効果的に交信できるRFIDアンテナ7’iの内蔵アンテナ73’は、ループ状アンテナで作製しており、図17に示すように、トロカール・カニューレ5A等の入口を約半周取り囲むようにしている。図17において、RFIDアンテナ7’iの他の構造、またコネクタ511,521の構造は、第1の実施の形態と同様である。これにより、通信電波(電磁誘導で通信する場合は、磁力線の向き)の多くはトロカール・カニューレ5A等の入口を横切るように発射され、フィルム状RFIDタグ9’i内蔵のアンテナとの間で効果的に通信できる。
【0110】
このRFIDアンテナ7”iの内蔵アンテナ73”は、図18に示すようにトロカール・カニューレ5A等の入口のほぼ全周を取り囲むタイプとすることもできる。あるいは、トロカール・カニューレ5A等の入口を1/3周、2/3周だけ囲むようなものとすることも可能であり、ループアンテナの電線径や巻き数、あるいはコンデンサ値や電気抵抗値に応じて、様々な取り囲み範囲が可能である。
【0111】
本実施の形態の場合も、コンピュータシステム1内の構成において(図6)、映像データ入力処理部103Bと映像データ処理部111とは省略することができる。
【0112】
本実施の形態の場合、第1の実施の形態よりもRFIDタグ9’iの取り扱いがしやすいので、第1の実施の形態と同様の作用、効果に加えて、システムの製造が容易である利点がある。
【0113】
尚、上記の両実施の形態において、RFIDリード・ライト制御部3は3端子入力のものを用いたが、これにはトロカール・カニューレ5A,5B,5CのRFIDアンテナ7A,7B,7C個々と通信する個別のRFIDリード・ライド制御部を採用することもできる。
【0114】
また、RFIDアンテナについては、既存のトロカール・カニューレのような手術器具挿入・抜去用中空管に対して後付けできる構造のものに代えて、製品として最初からRFIDアンテナが取り付けられている手術器具挿入・抜去用中空管を採用することもできる。
【0115】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムについて、図19〜図24を用いて説明する。尚、第1の実施の形態と共通する符号は、共通の要素を示している。
【0116】
本実施形態の特徴は、手術器具の挿抜時刻の取得は光センサに任せ、手術器具IDの取得はRFIDに任せる方式である。本実施の形態では、既存の手術器具挿入・抜去用中空管に後付けするRFIDアンテナ装置70A,70B,70C(あるいは製品として手術器具挿入・抜去用中空管に一体に取り付けられているRFIDアンテナ装置70A,70B,70C)に、手術器具6iに取り付けられたRFIDタグ9iのIDを受信する第1の実施の形態と同様のRFIDアンテナ7A,7B,7Cと共に、手術器具6iの挿入・抜去を検出する光センサ21A,21B,21Cが組み込まれており、RFIDアンテナ7A,7B,7CそれぞれがRFIDタグ9iのIDを検出すればRFIDリード・ライト制御部3にケーブル8A,8B,8Cそれぞれを通して出力し、ほぼ同時に光センサ21A,21B,21CそれぞれがRFIDアンテナ装置70A,70B,70Cそれぞれに何れかの手術器具6iが挿入されたこと、また挿入されていることを検出し、ケーブル8A,8B,8Cそれぞれを通して光センサ制御部22に出力するようにしている。
【0117】
図19のRFIDタグは第1の実施の形態である穴開き円盤状タグを例示しているが、第2の実施の形態のようにRFIDタグにフィルム状RFIDタグ9’iを採用することもできる。そしてその場合には、RFIDアンテナについては、図17に示したループ状アンテナ73’を内蔵したRFIDアンテナ7’i、図18に示したループ状アンテナ73”を内蔵したRFIDアンテナ7”iなど、フィルム状RFIDタグ内蔵の小アンテナとの交信に適したRFIDアンテナを採用する。勿論、前記ループ状アンテナの中空管入口の取り囲み範囲は図17、図18の例に限るものではない。
【0118】
この光センサ制御部22には、本実施の形態では3回線の信号線8A,8B,8Cの接続端子22A,22B,22Cが用意してあり、8A−22A、8B−22B、8C−22Cの組み合わせとなるように各信号線8A,8B,8Cが各接続端子22A,22B,22Cに接続してある。尚、この組み合わせは手術中に変更しなければ任意である。
【0119】
以下、A,B,Cの識別が必要でない場合には、光センサ21とし、RFIDアンテナ7とし、ケーブル8とし、RFIDアンテナ装置70、トロカール・カニューレ5として説明する。
【0120】
図23に詳しく示すように、光センサ21は、RFIDアンテナ装置70内にRFIDアンテナ7と共に組み込まれた発光部211と、この光発光部211に中空部を介して対向配置された受光部212にて構成されていて、ケーブル8は発光部211に給電し、受光部212の受光信号を出力するように接続されている。いま、図23(a)に示すようにRFIDアンテナ装置70内に手術器具が挿入されていない状態では、発光部211からの光213は受光部212にて受光され、受光部212は受光信号をケーブル8に出力する。一方、図22、図23(b)に示すように、何れかの手術器具6iが手術のためにトロカール・カニューレ5に挿入される場合、まずその後端開口部に位置するRFIDアンテナ装置70内に挿入されるが、その際には発光部211からの光213を挿入された手術器具6iが遮り、受光部212に光213が届かなくなる。この場合、受光部212はそれまで出力していた受光信号の出力が停止あるいは減弱する。受光部212の受光信号の変化は、光センサ制御部22を経由してコンピュータシステム1に入力される。コンピュータシステム1における器具の挿抜の判定はこの受光信号(受光量)の変化を利用する。
【0121】
図19〜23に例示したように光センサ21はRFIDアンテナ7の奥側に位置するように示しているが、第2の実施の形態のRFIDアンテナ7’iあるいは7”iの場合は特に、光センサ21は手前側でも良い。
【0122】
光センサ21の光の波長は基本的にはいずれの波長でも良く、可視光領域に限らない。また、レーザ光を使用しても良い。
【0123】
また、光センサ21として反射型光センサを利用しても良い。この場合、図23の発光部211と受光部212は同じ側に配置され、これらと対向して反射板を配置する構造となる。反射板は反射率の良い素材あるいは反射率の低い素材のいずれを使用しても良い。いずれの場合も器具が挿入されていない時の反射光量をベースラインとし、器具挿入による反射光量の変化を捉えるアルゴリズとなる。
【0124】
RFIDアンテナ装置70におけるRFIDアンテナ7は第1の実施の形態と同様である。
【0125】
本実施形態のコンピュータシステム1の処理機能をブロックに分解して示すと図24に示す構成となる。図24は光センサ信号入力処理部103C以外は図6と同じであるので、繰り返し説明を避け、相違点のみ述べる。本実施の形態の特徴は、手術器具の挿抜時刻の取得は光センサに任せ、手術器具ID取得はRFIDに任せる方式であるので、本実施の形態の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析用のアプリケーションソフトウェアでは第1および2の実施の形態のように電気メスによる電磁干渉を考慮するアルゴリズムは不要である。
【0126】
光センサ21の受光部212の受光信号は光センサ制御部22を経由して、コンピュータシステム1に光センサ信号入力処理部103Cを介して入力される。ここで、ある手術器具が当該中空管(トロカール・カニューレ)に挿入されると、受光部212の受光信号が変化する。この変化が設定基準を超えた場合、器具の挿入と手術データ処理部107は演算処理部109とともに判定し、その時刻をクロック102から取得し、器具挿入時刻とし、メモリに格納する。RFIDタグは手術器具の先端部には通常付けないので、RFIDアンテナとRFIDタグ間の交信が開始する前に光センサが器具挿入を判定することになる。したがって、光センサ制御部22でもトロカール・カニューレ5A,5B,5Cそれぞれを識別するための中空管識別情報をコンピュータシステム1に送信する必要がある(あるいは、光センサ制御部22がコンピュータシステム1と接続されるUSBポートのような入力ポート番号をこの中空管識別情報として代用する)。中空管識別情報は、第1および2の実施の形態のように、RFIDリード・ライド制御部からも送信される。もし電気メスによる電磁干渉が起こった場合、同一中空管において、RFIDタグ情報の入力は途絶えるため器具が抜去されたと判定されるが、光センサ信号には変化が認められないので、器具はその中空管に留まっていると判定される。このように、器具抜去判定においてRFID系と光センサ系で矛盾が生じた場合、光センサ系の判定を優先するアルゴリズムにする。手術器具のID取得はRFID系に任せる。
【0127】
本実施の形態にあっても、さらに、内視鏡映像と自動リンクさせる機能を実現するために、手術野を撮影する内視鏡4からの映像を処理する必要があるが、この処理方法も、手術器具の挿入時刻および抜去時刻を光センサ21で判定する以外は、第1および2の実施の形態と同じであるため説明は省略する。
【0128】
本実施の形態の場合も、コンピュータシステム1内の構成において(図24)、映像データ入力処理部103Bと映像データ処理部111とは省略することができる。
【0129】
尚、本実施の形態にあっても、RFIDアンテナは既存のトロカール・カニューレのような手術器具挿入・抜去用中空管に後付けする形態である場合には、第1の実施の形態と同様に図4〜図5に示した取付構造を採用することができる。また、その他、第1の実施の形態と同様の変形が可能である。
【0130】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0131】
1 コンピュータシステム
2 内視鏡モニタ
3 RFIDリード・ライト制御部
3A,3B,3C RFID信号接続端子
4 内視鏡
5A,5B,5C トロカール・カニューレ
6i 手術器具
7,7i,7’i,7”i,7A,7B,7C RFIDアンテナ
70,70A、70B、70C RFIDアンテナ装置
8A,8B,8C 信号線
9i、9’i RFIDタグ
10i スプリング
11i スプリング押え
101 記憶装置
102 クロック
103A RFIDデータ入力処理部
103B 映像データ入力処理部
103C 光センサ信号入力処理部
104 手術器具名・ID対応データ記憶部
107 手術データ処理部
108 出力処理部
109 演算処理部
111 映像データ処理部
115 手術情報記録・解析ファイル作成部
21,21A,21B,21C 光センサ
200 手術情報記録・解析ファイル
211 発光部
212 受光部
22 光センサ制御部
22A,22B,22C 光センサ信号接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の手術器具それぞれに異なる手術器具IDを付けるために複数の手術器具それぞれに取り付けるための複数のRFIDタグと、
前記RFIDタグの発信する手術器具IDを受信するために、複数の手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための複数のRFIDアンテナと、
前記RFIDアンテナとRFIDタグとの交信を制御し、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの間の交信が開始し維持されている間に取得するRFIDタグ情報を送出するRFIDリード・ライト制御部と、
前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報から手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその使用開始時刻および使用終了時刻を継続的に取得し、解析するコンピュータとを備えたことを特徴とする鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいて、さらに、手術野を撮影する内視鏡と、前記内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に保存する映像記録装置とを備え、
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報から手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその使用開始時刻および使用終了時刻を継続的に取得すると共に、前記中空管の使用開始時刻および使用終了時刻に対応する時刻の映像データに付されたマーカ識別番号を継続的に取得し、解析することを特徴とする鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報に基づき、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報に基づく手術器具名毎の使用開始時刻と使用終了時刻と、当該使用開始時刻と使用終了時刻とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号とを一組とした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、同じ中空管と同じ手術器具IDの電気メスに関して手術器具使用データが連続する場合、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入開始時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の電気メス使用データを作成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記手術器具使用データの中で、同じ中空管の同じ手術器具名であって前記電気メスの手術器具使用データと同期して手術器具の挿入開始時点と抜去時点とが連続して繰り返し出現する手術器具使用データについては、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の当該手術器具の手術器具使用データを作成することを特徴とする請求項5に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項7】
手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空管取付手段を有し、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するために形成されたRFIDアンテナ。
【請求項8】
鏡視下手術に使用する手術器具挿入・抜去用中空管であって、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するためのRFIDアンテナが管体の後端開口部に取り付けられていることを特徴とする手術器具挿入・抜去用中空管。
【請求項9】
手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空管取付手段を有し、手術器具に取り付けられているRFIDタグの発信する手術器具ID信号を受信するために形成されたRFIDアンテナと、
前記RFIDアンテナと接続され、前記RFIDアンテナに給電し、かつ前記RFIDアンテナの受信する手術器具IDを含むRFIDタグ情報を中空管毎にコンピュータに送出するRFIDリード・ライト制御部とを備えたことを特徴とするRFIDリーダ・ライタ。
【請求項10】
手術器具にスライド自在に套装するための円盤形のRFIDタグと、
前記手術器具の適宜の位置に固定するスプリング押えと、
前記手術器具に套装し、かつ、前記RFIDタグとスプリング押えとの間に介在させるためのスプリングとで成るRFIDタグ装置。
【請求項11】
手術器具の適宜の位置に貼り付けるために貼り付け面に粘着剤を塗布したフィルム状のRFIDタグ。
【請求項12】
手術器具の適宜の位置に貼り付けるために貼り付け面に粘着剤を塗布し、金属製手術器具の金属表面への電磁誘導を防止する処理を貼付面に施したフィルム状のRFIDタグ。
【請求項13】
中空の胴部の一端の内周面に雌ねじを切り、前記胴部の内部若しくは外部にRFIDアンテナ線をそのアンテナ面が、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に挿入される手術器具に取り付けられたRFIDタグ内蔵アンテナのアンテナ面に対向するように配置して成るRFIDアンテナ。
【請求項14】
請求項13に記載のRFIDアンテナと、手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための中空のコネクタとで成るRFIDアンテナ装置であって、
前記コネクタの外周に切られた雄ねじを前記RFIDアンテナの胴部の内周面に切られた雌ねじと螺合させて当該RFIDアンテナを前記コネクタを介して前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるようにしたことを特徴とするRFIDアンテナ装置。
【請求項15】
複数の手術器具それぞれに異なる手術器具IDを付けるために複数の手術器具それぞれに取り付けるための複数のRFIDタグと、
前記RFIDタグの発信する手術器具IDを受信するために、複数の手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けるための複数のRFIDアンテナと、
前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付けられ、手術器具の当該手術器具挿入・抜去用中空管への挿入・抜去を検出する光センサと、
前記RFIDアンテナとRFIDタグとの交信を制御し、前記RFIDアンテナとRFIDタグとの間の交信が開始し維持されている間に取得するRFIDタグ情報を送出するRFIDリード・ライト制御部と、
前記光センサの手術器具挿抜検出信号を中空管毎に出力する光センサ制御部と、
前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる手術器具挿抜検出信号とから手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその挿入開始時刻および抜去時刻を継続的に取得し、解析するコンピュータとを備えたことを特徴とする鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項16】
請求項15に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システムにおいて、さらに、手術野を撮影する内視鏡と、前記内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に保存する映像記録装置とを備え、
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる手術器具挿抜検出信号とから手術器具挿入・抜去用中空管毎に使用手術器具名とその挿入開始時刻および抜去時刻を継続的に取得すると共に、前記中空管の使用開始時刻および使用終了時刻に対応する時刻の映像データに付されたマーカ識別番号を継続的に取得し、解析することを特徴とする鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項17】
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部から送られてくる前記情報と前記光センサ制御部から送られてくる前記手術器具挿抜検出信号に基づき、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたことを特徴とする請求項15に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項18】
前記コンピュータは、前記RFIDリード・ライト制御部および光センサ制御部から送られてくる前記情報および手術器具挿抜検出信号に基づく手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録する手術情報記録・解析ファイル作成部を備えたことを特徴とする請求項16に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析システム。
【請求項19】
手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付け、当該中空管に対して挿入・抜去される手術器具に取り付けられたRFIDタグの発信する手術器具IDを含むRFID情報を受信するRFIDアンテナと、
前記手術器具挿入・抜去用中空管の後端開口部に取り付け、当該中空管に対する手術器具の挿入・抜去を検出する光センサとを備えて成るRFIDアンテナ装置。
【請求項20】
鏡視下手術に使用する手術器具挿入・抜去用中空管であって、請求項19に記載のRFIDアンテナ装置が取り付けられた手術器具挿入・抜去用中空管。
【請求項21】
1本又は複数本の手術器具挿入・抜去用中空管を用いた手術について、手術器具挿入・抜去用中空管の識別番号と手術器具挿入・抜去用中空管毎に挿抜された手術器具名と手術器具の挿抜時刻とを一組の手術器具使用データにして時系列に記録した手術情報記録・解析ファイル。
【請求項22】
前記手術器具挿入・抜去用中空管の識別番号と手術器具挿入・抜去用中空管毎に挿抜された手術器具名と手術器具の挿抜時刻と共に、当該挿抜時刻に対応する内視鏡の映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組の手術器具使用データにして時系列に記録した請求項21に記載の手術情報記録・解析ファイル。
【請求項23】
RFIDリーダ・ライタの送出する手術器具IDとその手術器具の挿抜時刻とのデータを継続的に入力するステップと、
入力した手術器具IDと、前記手術器具IDに対応する手術器具名とその挿抜時刻とのデータを中空管毎にメモリに継続的に保持するステップと、
前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録するステップとを有することを特徴とする鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。
【請求項24】
同じ中空管と同じ手術器具IDの電気メスに関して手術器具使用データが連続する場合、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入開始時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の電気メス使用データとすることを特徴とする請求項23に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。
【請求項25】
前記手術器具使用データの中で、同じ中空管の同じ手術器具名であって前記電気メスの手術器具使用データと同期して手術器具の挿入開始時点と抜去時点とが連続して繰り返し出現する手術器具使用データについては、その連続使用データの最初の挿入開始時点を真の挿入時点とし、連続使用データの最後の抜去時点を真の抜去時点とする1回分の当該手術器具の使用データを作成することを特徴とする請求項24に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。
【請求項26】
手術野を撮影する内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に映像記録装置に保存するステップを有し、
前記手術器具使用データを前記手術情報記録・解析ファイルに登録するステップは、前記映像記録装置における前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上にマーカ識別番号を特定し、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成することを特徴とする請求項23〜25のいずれかに記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。
【請求項27】
RFIDリーダ・ライタの送出する手術器具IDを含むRFIDタグ情報と光センサの送出する手術器具挿抜検出信号とから、その手術器具のIDと挿抜時刻とのデータを継続的に入力するステップと、
入力した手術器具IDと、前記手術器具IDに対応する手術器具名とその挿抜時刻とのデータを中空管毎にメモリに継続的に保持するステップと、
前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とを一組にした手術器具使用データを、前記中空管毎に時系列に作成して手術情報記録・解析ファイルに登録するステップとを有する鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。
【請求項28】
手術野を撮影する内視鏡の撮影する映像データをマーカと共に映像記録装置に保存するステップを有し、
前記手術器具使用データを前記手術情報記録・解析ファイルに登録するステップは、前記映像記録装置における前記手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上にマーカ識別番号を特定し、手術器具名毎の挿入開始時点と抜去時点と共に前記挿入開始時点と抜去時点とに対応する前記映像データ上のマーカ識別番号を付加して一組とした手術器具使用データを、中空管毎に時系列に作成することを特徴とする請求項27に記載の鏡視下手術における手術情報リアルタイム取得・解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−158303(P2010−158303A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1063(P2009−1063)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2008年11月19日、Staffordshire University(スタッフォードシャー大学)主催の「UK Postgraduate Workshop on Human Adaptive Mechatronics(HAM)」(人間適応型メカトロニクスに関する英国大学院生ワークショップ)のサイト http://www.epsrcham.org.uk/PlennaryHAMPGWORKSHOP.pdfにおいて発表
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】