説明

閉鎖力増強機構付きダイヤフラム型電磁弁

【課題】負荷からの流体圧がダイヤフラムに逆圧として作用してもこのダイヤフラムが弁座を開放することのないダイヤフラム型電磁弁を得る。
【解決手段】ダイヤフラム弁部11に、パイロット流体圧の作用により動作して主弁座16を開閉する主ダイヤフラム14の他に、この主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力を増強するための機構として、補助弁体17と、この補助弁体17にパイロット流体圧を作用させる補助パイロット圧力室30bと、上記補助弁体17の作用力を上記主ダイヤフラム14に伝達する伝達ロッド33とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムで弁座を開閉するダイヤフラム型電磁弁に関するものであり、更に詳しくは、上記ダイヤフラムによる弁座閉鎖力を増強するための機構を備えたダイヤフラム型電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にダイヤフラム型電磁弁は、例えば特開2001−304436号公報に開示されているように、2ポート弁としての弁構造を有していて、供給ポートと出力ポートとを結ぶ流路の途中に形成された弁座を、ダイヤフラムで開閉するように構成されると共に、このダイヤフラムを、内部パイロット形の電磁操作式パイロット弁で開閉操作するように構成されている。
【0003】
このようなダイヤフラム型電磁弁の用途の一つに、酸素濃縮がある。これは、例えば図7に記号で示すように、一括供給用流路3と一括排出用流路4と2つの出力用流路5a,5bとを備えたマニホールドベース2に、第1〜第4のダイヤフラム型電磁弁1a,1b,1c,1dを搭載して電磁弁アセンブリを形成し、上記2つの出力用流路5a,5bにはそれぞれ窒素吸着用の容器である第1及び第2タンク6a,6bを接続し、上記4つの電磁弁1a,1b,1c,1dを選択的かつ関連的に動作させて上記タンク6a,6bに圧縮空気を供給し又は排出することにより、酸素濃縮を行うものである。
【0004】
ところが、例えば第1電磁弁1aを図示の閉弁位置から開弁位置に切り換えて第1タンク6aに圧縮空気を供給し、充填したあと、再び図示の閉弁位置に切り換えて充填状態を保持している状態で、第2電磁弁1bを図示の閉弁位置から開弁位置に切り換えて第2タンク6bに圧縮空気を供給すると、上記一括供給用流路3中の空気圧が一時的に低下するため、第1タンク6aからの逆圧の作用によって第1電磁弁1aのダイヤフラムが一時的に押し開かれることがある。これは、第2電磁弁1bで第2タンク6bに圧縮空気を充填し、保持している状態で、第1電磁弁1aで第1タンク6aに圧縮空気を供給する場合も同じである。
このように、ダイヤフラム型電磁弁は、その用法によっては負荷からの逆圧の作用によって不安定な挙動を行う場合があり、これが流体制御機器としての信頼性や精度の低下につながることになるため、早急な改善を要求されている。
【特許文献1】特開2001−304436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、負荷からの流体圧がダイヤフラムに逆圧として作用してもこのダイヤフラムが弁座を開放することのない、弁座閉鎖力が大きく動作安定性に優れたダイヤフラム型電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、マニホールドベースに取り付けるための取付面を有するハウジングに、上記取付面に開口する主流体用の供給ポート及び出力ポートと、これら両ポートを結ぶ主流路の途中に位置する主弁座と、この主弁座を開閉する主ダイヤフラムと、この主ダイヤフラムに上記主弁座を閉鎖する方向の作用力を発生させる主パイロット圧力室とを設けたダイヤフラム弁部、及び、上記主パイロット圧力室に対してパイロット流体を給排する電磁操作式のパイロット弁部からなり、上記ダイヤフラム弁部がさらに、上記主ダイヤフラムの弁座閉鎖力を増強するための補助弁体と、この補助弁体に上記パイロット弁部からのパイロット流体を作用させる補助パイロット圧力室と、上記補助弁体と連動して変位することによって該補助弁体の作用力を上記主ダイヤフラムに伝達する伝達ロッドとを有することを特徴とする閉鎖力増強機構付きダイヤフラム型電磁弁が提供される。
【0007】
本発明において好ましくは、上記補助弁体と伝達ロッドとが、上記主ダイヤフラムと同心位置に該主ダイヤフラムに対して直列に配設されると共に、上記主パイロット圧力室と補助パイロット圧力室とが相互に連通していることである。
【0008】
また、本発明においては、上記補助弁体のストローク可能範囲を主ダイヤフラムの動作ストロークより大きくすることにより、上記両パイロット圧力室にパイロット流体が供給されて主ダイヤフラムが主弁座を閉鎖しているとき、該補助弁体がストローク端の手前の位置を占めるように構成されていることが望ましい。
【0009】
本発明においては、上記補助弁体を、ピストンで形成することも、上記主ダイヤフラムと同じ形状及び大きさのダイヤフラムで形成することもできる。
【0010】
上記補助弁体をピストンで形成する場合、上記伝達ロッドが該ピストンと一体に形成されていて、これらのピストンと伝達ロッドとの内部を貫通する連通孔によって上記補助パイロット圧力室と主パイロット圧力室とが相互に連通されていることが望ましい。
【0011】
また、本発明において好ましくは、上記ハウジングが、上記取付面を有する第1ブロックと、この第1ブロックに結合された第2ブロックと、この第2ブロックに結合された第3ブロックとからなっていて、上記第1ブロックと第2ブロックとの間に上記主ダイヤフラムが配設されると共に、この第2ブロックと第3ブロックとの間に上記補助弁体が配設され、かつ、該第2ブロックに上記伝達ロッドが設けられており、上記第2ブロックと補助弁体及び伝達ロッドを取り外し、上記第1ブロックと第3ブロックとを主ダイヤフラムを介して相互に結合することにより、閉鎖力増強機構を持たないダイヤフラム型電磁弁を形成可能とすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主ダイヤフラムによる弁座閉鎖力が補助弁体によって増強されているため、負荷からの流体圧がこの主ダイヤフラムに逆圧として作用しても、この主ダイヤフラムが主弁座を開放することがなく、動作安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2は本発明に係る閉鎖力増強機構付きダイヤフラム型電磁弁(以下、単に「電磁弁」と称することもある。)の第1実施形態を示すものである。この第1実施形態の電磁弁10Aは、供給ポートPと出力ポートAとを結ぶ主流路15の途中の主弁座16を主ダイヤフラム14で開閉するように構成されたダイヤフラム弁部11と、パイロット流体の給排によって上記主ダイヤフラム14を開閉操作する電磁操作式のパイロット弁部12とからなるもので、上記ダイヤフラム弁部11がさらに、上記主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力を増強するための機構として、ダイヤフラム17aからなる補助弁体17を有している。
以下の説明においては、上記補助弁体17を形成するダイヤフラム17aを、「補助ダイヤフラム」と称することとする。
【0014】
上記ダイヤフラム弁部11は、平面視形状が実質的に矩形であるハウジング13を有している。このハウジング13の下面は、マニホールドベースの弁載置面に取り付けるための実質的に平らな取付面18となっていて、この取付面18に、上記供給ポートPと、出力ポートAと、パイロット供給ポートPPと、パイロット排出ポートPEとが設けられると共に、これらの各ポートの回りを取り囲むシール部材19が取り付けられている。
【0015】
上記各ポートP,A,PP,PEの位置関係は、上記取付面18の中央に円形の出力ポートAが配設され、この出力ポートAの回りを取り囲むように円環状の供給ポートPが同心状に配設され、この供給ポートPの外側の、上記出力ポートAの中心軸線Lを挟んで互いに相対する位置に、パイロット供給ポートPPとパイロット排出ポートPEとが配設されている。
【0016】
上記ハウジング13の内部には、上記供給ポートPに通じる供給側主流路15Pと、出力ポートAに通じる出力側主流路15Aと、パイロット供給ポートPPに通じるパイロット供給流路22と、パイロット排出ポートPEに通じるパイロット排出流路23とが、上記中心軸線Lと平行するように上向きに延びている。このうち供給側主流路15Pと出力側主流路15Aとは、上記主ダイヤフラム14が収容された主弁室24に連通し、この主弁室24を介して相互に連通しており、この主弁室24内には上記主弁座16が、該主弁室24に開口する上記出力側主流路15Aの回りを取り囲むように形成されている。
【0017】
環状をした上記供給側主流路15Pは、その外周壁と出力側主流路15Aを区画する内周側壁とが放射方向の複数の結合壁によって相互に結合されることにより、円弧状をした複数の孔部分に区画されている。
また、上記パイロット供給流路22とパイロット排出流路23は、上記両ダイヤフラム14,17aの端部に形成された連通孔25を経てさらに延在し、上記パイロット弁部12のパイロット供給口PIとパイロット排出口PRとにそれぞれ連通している。
【0018】
上記主ダイヤフラム14は、ゴム弾性を有する素材によって円盤形に形成され、外周部をハウジング13に気密に保持されることにより、上記出力ポートAと同心状の位置に、中央部分が上記主弁座16に接離する方向に(上下方向)に変位自在なるように配設されている。そして、この主ダイヤフラム14によって上記主弁室24が、上記主弁座16が位置する主流路側部分24aと、反対側の主パイロット圧力室24bとに区画され、この主パイロット圧力室24bが、連通孔26a,26bを通じて上記パイロット弁部12のパイロット出力口PAに連通している。
上記主ダイヤフラム14の下面には、上記主弁座16に当接することによって該主弁座16を閉鎖する円環状の弁シール部14aが形成され、反対側の上面中央部には、金属や合成樹脂などの硬質素材からなる突起形をしたキャップ27が取り付けられている。
【0019】
また、上記補助ダイヤフラム17aは、ハウジング13の内部の上記主ダイヤフラム14に対して取付面18とは反対側の位置に形成された補助弁室30内に、上記主ダイヤフラム14に対して同心状かつ直列に配設されている。この補助ダイヤフラム17aは、上記主ダイヤフラム14と同様の素材によってこの主ダイヤフラム14と同形かつ同大をなすように形成されたもので、この補助ダイヤフラム17aによって上記補助弁室30が、一側の伝達室30aと反対側の補助パイロット圧力室30bとに区画されている。このうち伝達室30aは、伝達孔31を介して上記主パイロット圧力室24bに連通し、また、上記補助パイロット圧力室30bは、上記連通孔26bを介してパイロット出力口PAに連通している。
【0020】
従って、上記主パイロット圧力室24bと補助パイロット圧力室30bとは相互に連通していて、上記パイロット出力口PAから上記連通孔26b,26aを通じてパイロット流体が同時に供給されるようになっており、これらのパイロット圧力室24b,30bにパイロット流体が供給されると、上記主ダイヤフラム14と補助ダイヤフラム17aとが同時に動作する。
【0021】
上記伝達室30aは、呼吸通孔32を介して上記パイロット排出流路23に連通しており、また、上記伝達孔31は、上記中心軸線Lに沿って延在し、上記伝達室30aと主パイロット圧力室24bとをそれらの中央部の位置で相互に連通している。
【0022】
上記補助ダイヤフラム17aと主ダイヤフラム14との間には、これら両ダイヤフラム間の作用力の伝達を行う円柱状の伝達ロッド33が設けられている。この伝達ロッド33は、上記伝達孔31内に軸線Lに沿って摺動自在なるように配設され、平坦な基端部33aが補助ダイヤフラム17aの下面に当接すると共に、先端部の窪み33b内に上記主ダイヤフラム14の上面のキャップ27が嵌合、当接している。従って、この伝達ロッド33も上記両ダイヤフラム14及び17aに対して同心状に位置し、これらのダイヤフラムの変位に連動して同じ方向に一緒に変位する。
なお、上記伝達ロッド33の先端部は、窪み33bのない平坦な面に形成し、この平坦な先端部を主ダイヤフラム14の上面のキャップ27に当接させても良い。
【0023】
上記伝達ロッド33の外周に形成された環状の凹溝内には、この伝達ロッド33の外周と上記伝達孔31の内周との間をシールするシール部材34が取り付けられている。図示の例では、摺動抵抗軽減のため、リップタイプの一方向性シール部材が、主パイロット圧力室24bから伝達室30aへと向かうエアの流れを阻止する向きに設置されているが、このシール部材34は、Oリングやその他の適宜断面形状を有するものであっても良い。
【0024】
かくして両ダイヤフラム14,17a間に上記伝達ロッド33が介在することにより、主パイロット圧力室24bにパイロット流体が供給されて主ダイヤフラム14が主弁座16を閉鎖したとき、同時に補助パイロット圧力室30bにも供給されるパイロット流体によって補助ダイヤフラム17aが主ダイヤフラム14側に向けて変位し、上記伝達ロッド33を介してこの主ダイヤフラム14を主弁座16に向けて押圧することになるため、該主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力が、この補助ダイヤフラム17aによる作用力分だけ増強されることになる。
【0025】
また、上記両パイロット圧力室24b,30bのパイロット流体が排出されると、上記両ダイヤフラム14,17aを弁座閉鎖方向に押圧する力が消失するため、主ダイヤフラム14が供給ポートPからの主流体の作用力によって押し上げられ、主弁座16を開放する。この主ダイヤフラム14の開放動作は上記伝達ロッド33を介して補助ダイヤフラム17aに伝達され、この補助ダイヤフラム17aも図の上向きに一緒に変位する。
【0026】
ここで、図1及び図2から明らかなように、上記補助ダイヤフラム17aのストローク可能範囲は、主ダイヤフラム14の動作ストロークよりも大きく設定されていて、上記両パイロット圧力室24b,30bにパイロット流体が供給されて主ダイヤフラム14が主弁座16を閉鎖しているとき、該補助ダイヤフラム17aはストローク端の手前の位置で停止し、座30cとの間に僅かな間隔が介在するように構成されている。このように構成することにより、上記主ダイヤフラム14が主弁座16を閉鎖した時に、補助ダイヤフラム17aによる作用力が、上記伝達ロッド33を介してこの主ダイヤフラム14に完全に伝達されることになる。
【0027】
上記ハウジング13は、上記取付面18を有する第1ブロック13aと、この第1ブロック13aに結合された第2ブロック13bと、この第2ブロック13bに結合された第3ブロック13cとからなっている。そして、上記第1ブロック13aと第2ブロック13bとの間に上記主弁室24が区画、形成されると共に、上記主ダイヤフラム14が配設され、この主ダイヤフラム14の外周部分がこれら両ブロック13a,13b間に挟持、固定されている。また、上記第2ブロック13bと第3ブロック13cとの間に上記補助弁室30が区画、形成されると共に、上記補助ダイヤフラム17aが配設され、この補助ダイヤフラム17aの外周部分がこれら両ブロック13b,13c間に挟持、固定されている。さらに、上記第2ブロック13bに上記伝達ロッド33が設けられている。また、上記パイロット供給流路22とパイロット排出流路23とは、これらの各ブロックに跨るように延在している。
【0028】
このようなハウジング13の構成により、上記第2ブロック13bと補助ダイヤフラム17a及び伝達ロッド33を取り外し、上記第1ブロック13aと第3ブロック13cとを主ダイヤフラム14を介して相互に結合することにより、閉鎖力増強機構を持たない通常型のダイヤフラム型電磁弁を形成することができる。
なお、上記各ブロック13a,13b,13cには、互いの接合面に突起と孔とが形成されていて、それらを相互に係合させることによって位置決めされた状態で相互に結合されるようになっているが、それらの図示は省略されている。
【0029】
上記パイロット弁部12は、上記第3ブロック13cの上面に形成された凹段部36内に着脱自在に取り付けられている。このパイロット弁部12は、ノーマルオープン形の3ポート電磁弁としての構成を有するもので、パイロット弁部材43でパイロット流路の連通状態を切り換える流路切換部41と、上記パイロット弁部材43を操作する電磁操作部42とからなっている。
【0030】
上記流路切換部41においては、弁ボディ45の側面に、上記パイロット供給流路22に連通する上記パイロット供給口PIと、上記両パイロット圧力室24b,30bに上記連通孔26a,26bを介して連通するパイロット出力口PAと、上記パイロット排出流路23に連通する上記パイロット排出口PRとを有している。また、上記弁ボディ45の内部には、上記各口が連通するパイロット弁室を有し、このパイロット弁室内に上記パイロット弁部材43が収容され、このパイロット弁部材43で、上記パイロット供給口PIの回りを取り囲むパイロット供給弁座50と、パイロット排出口PRの回りを取り囲むパイロット排出弁座51とを、交互に開閉するようになっている。
【0031】
一方、上記電磁操作部42は、ボビン52に巻かれた励磁コイル53と、該ボビン52の中心孔内に収容された固定鉄心54及び可動鉄心55と、該可動鉄心55を初期位置に復帰させる鉄心復帰ばね56とを有していて、上記可動鉄心55は連結バー58によって上記パイロット弁部材43に連結されている。
【0032】
そして、上記励磁コイル53に通電していない状態では、図1の下半部に示すように、上記可動鉄心55が鉄心復帰ばね56のばね力によって初期位置まで前進させられ、連結バー58を介してパイロット弁部材43をパイロット排出弁座51に押し付けるため、該パイロット排出弁座51が閉じてパイロット供給弁座50が開放し、パイロット排出口PRが遮断されてパイロット供給口PIとパイロット出力口PAとが連通した状態となる。この状態では、上記パイロット供給ポートPPからのパイロット流体が、上記パイロット供給口PI及びパイロット出力口PAを経て上記主ダイヤフラム14の背後のパイロット圧力室24bに供給されると共に、補助ダイヤフラム17aの背後の補助パイロット圧力室30bにも供給される。
【0033】
一方、上記励磁コイル53に通電すると、図1の上半部に示すように、上記可動鉄心55が固定鉄心54に吸着されて動作位置まで後退するため、パイロット弁部材43は、弁復帰ばね59により押されて上記パイロット排出弁座51から離れると共に、パイロット供給弁座50に押し付けられる。このため、上記パイロット排出弁座51が開放してパイロット出力口PAとパイロット排出口PRとが連通すると共に、パイロット供給弁座50が閉じてパイロット供給口PIが遮断される。この状態では、上記両パイロット圧力室24b,30bが外部に開放されることにより、パイロット流体は排出される。
図中の符号59は受電用コネクタで、制御装置からの給電用コネクタを接続するためのものである。
【0034】
上記構成を有するダイヤフラム型電磁弁10は、図1に示すように、供給ポートPとパイロット供給ポートPPとが、マニホールドベースを介して共通の圧力流体源(圧縮空気源)60に接続されると共に、パイロット排出ポートPEが外部に開放され、さらに、出力ポートAが負荷(例えばタンク)61に接続された状態で使用される。
【0035】
ここで、上記パイロット弁部12の励磁コイル53が非通電の状態では、上述したように、パイロット供給弁座50が開放してパイロット供給口PIとパイロット出力口PAとが連通するため、パイロット供給ポートPPからのパイロット流体が上記主パイロット圧力室24bと補助パイロット圧力室30bに供給される。このため、主ダイヤフラム14が、このパイロット流体による作用力によって主弁座16に押し付けられ、この主弁座16を閉鎖することにより、供給ポートPから出力ポートAに至る主流路15は遮断されている。同時に、補助パイロット圧力室30bに供給されるパイロット流体によって上記補助ダイヤフラム17aが主ダイヤフラム14側に向けて変位し、上記伝達ロッド33を介してこの主ダイヤフラム14を主弁座16に押し付けるため、該主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力は、この補助ダイヤフラム17aによる作用力分だけ増強される。
【0036】
上記励磁コイル53に通電すると、パイロット供給口PIが遮断され、パイロット出力口PAとパイロット排出口PRとが連通するため、上記両パイロット圧力室24b,30b内のパイロット流体はパイロット排出ポートPEから外部に排出される。このため、供給ポートPからの主流体の作用力により主ダイヤフラム14が押し上げられて主弁座16を開放し、該主流体は出力ポートAへと流れて上記負荷61に供給されることになる。
このとき、上記主ダイヤフラム14の変位は上記伝達ロッド33を介して補助ダイヤフラム17aに伝達され、この補助ダイヤフラム17aも図の上向きに一緒に変位する。
【0037】
上記負荷61に主流体が必要量供給、充填されたあと、上記励磁コイル53を非通電にすると、パイロット流体が上記両パイロット圧力室24b,30bに供給されるため、上述したように、主ダイヤフラム14が主弁座16を閉鎖すると同時に、補助ダイヤフラム17aが伝達ロッド33を介してこの主ダイヤフラム14を閉鎖方向に押圧した状態となり、負荷61に対する主流体の充填状態が保持される。
【0038】
上述した充填保持状態において、例えば、上記圧力流体源60に並列に接続された図示しない他の電磁弁が動作し、他の負荷に主流体が供給された場合には、上記パイロット供給ポートPPの流体圧が一時的に低下し、それに応じて両パイロット圧力室24b,30b内のパイロット流体圧も低下する。
このとき、上記補助弁体17を具備しない通常型のダイヤフラム電磁弁においては、主ダイヤフラム14が出力ポートAを介して作用する負荷61側の圧力即ち逆圧によって一時的に主弁座16を開放し、充填保持状態が不安定になることがある。
しかし、上記実施形態の電磁弁においては、補助弁体17によって主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力が高められているため、負荷61側の流体圧が出力ポートAを通じて該主ダイヤフラム14に開方向に逆圧として作用しても、この主ダイヤフラム14が主弁座16を開放することはなく、上記充填保持状態が安定的に保持されることになる。
【0039】
図3は本発明の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態の電磁弁10Bが上記第1実施形態の電磁弁10Aと異なる点は、補助ダイヤフラム17aが加圧スプリング63で主ダイヤフラム14側に向けて常時付勢されているという点である。即ち、上記補助ダイヤフラム17aの背面(上面)のキャップ27と、補助パイロット圧力室30bの中央部に形成された凹部30dの底壁との間に、上記加圧スプリング63が介設され、この加圧スプリング63で補助ダイヤフラム17aが主ダイヤフラム14側に向けて押圧されている。従って、この第2実施形態の電磁弁10Bにおいては、主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力が、上記第1実施形態の電磁弁10Aに比べて上記加圧スプリング63の付勢力の分だけ増強されることになる。
なお、この第2実施形態の電磁弁10Bにおける上記以外の構成及び作用については、実質的に上記第1実施形態の電磁弁10Aと同じであるから、それらの主要な同一構成部分に第1実施形態で用いたものと同じ符号を付してその説明は省略する。
【0040】
図4は本発明の第3実施形態を示すもので、この第3実施形態の電磁弁10Cが上記第2実施形態の電磁弁10Bと異なる点は、補助弁体17がダイヤフラムではなく、ピストン17bで形成されているという点である。即ち、ハウジング13に形成された補助弁室30内には、円盤形をした上記ピストン17bが摺動自在に収容され、このピストン17bによって該補助弁室30が、補助パイロット圧力室30bと伝達室30aとに区画されている。上記ピストン17bの外周には環状の凹溝64が形成され、この凹溝64内に、リップタイプをした一方向性のシール部材65が、補助パイロット圧力室30bから伝達室30aへと向かうエアの流れを阻止する向きに設置されている。しかし、このシール部材65は、Oリングやその他の適宜断面形状を有するものであっても良い。
【0041】
また、上記ピストン17bの上面中央部には、上記補助パイロット圧力室30bの中央部の凹部30dに嵌合する軸部66が形成され、該軸部66の外周の段部と凹部30dの底壁との間に、上記ピストン17bを主ダイヤフラム14側に向けて付勢する加圧スプリング63が介設されている。
更に、上記ピストン17bと伝達ロッド33とが一体に形成されていて、該伝達ロッド33の下端(先端)に形成された窪み33b内に、上記主ダイヤフラム14の上面のキャップ27が、周囲にギャップを介在させた状態に嵌合し、ロッド先端の上記窪み33bを取り囲む環状部分がキャップ27の肩部に当接している。そして、これらのピストン17bと伝達ロッド33の内部を貫通する連通孔68により、上記補助パイロット圧力室30bと主パイロット圧力室24bとが相互に連通されている。この連通孔68における伝達ロッド33側の端部は上記窪み33b内に開口し、この窪み33bを通じて上記主パイロット圧力室24bに連通しており、上記ロッド先端の環状部分には、流体流通用の溝33cが放射方向に形成されている。
なお、この第3実施形態の電磁弁10Cの上記以外の構成及び作用については、実質的に上記第2実施形態の電磁弁10Bと同じであるから、それらの主要な同一構成部分に第2実施形態と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0042】
図5は本発明の第4実施形態を示すもので、この第4実施形態の電磁弁10Dが上記第3実施形態の電磁弁10Cと異なる点は、伝達ロッド33の先端部が、キャップ27が嵌合する窪みのない実質的に平坦な面に形成されていて、この先端部を主ダイヤフラム14の上面のキャップ27の上面に当接させている点である。この先端部には、連通孔68からの圧力流体を主パイロット圧力室24bに円滑に導くための溝33cが放射方向に形成されている。
この第4実施形態の電磁弁10Dの上記以外の構成及び作用については、実質的に上記第3実施形態の電磁弁10Cと同じであるから、それらの主要な同一構成部分に第3実施形態と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0043】
なお、上記第3及び第4実施形態の電磁弁10C及び10Dにおいては、ピストン17bと伝達ロッド33とが一体に形成されているが、それらは別体であっても良い。また、主パイロット圧力室24bと補助パイロット圧力室30bとが、上記ピストン17bと伝達ロッド33との内部を貫通する連通孔68によって相互に連通されているが、上記第1実施形態の電磁弁10Aのように、ハウジング13の内部に形成した連通孔26aによって互いに連通されていても良い。
更に、図示した各実施形態の電磁弁10A〜10Dにおいては、補助弁体17及び伝達ロッド33が1組だけ設けられているが、それらは2組以上設けることもできる。この場合、複数の補助弁体17と伝達ロッド33とが、順次直列に連なった状態に配設されることになる。
【0044】
図6には、上記第1実施形態の電磁弁10Aを使用して構成した酸素濃縮のための電磁弁アセンブリの構成が記号で示されている。この電磁弁アセンブリは、4つの電磁弁10A1〜10A4をマニホールドベース70上に搭載して形成したもので、第1電磁弁10A1及び第2電磁弁10A2の供給ポートPと、第1〜第4電磁弁10A1〜10A4のパイロット供給ポートPPとが、マニホールドベース70の一括供給用流路71にそれぞれ接続され、この一括供給用流路71を介して圧縮空気源60に接続されている。また、第3電磁弁10A3及び第4電磁弁10A4の供給ポートPと、第1〜第4電磁弁10A1〜10A4のパイロット排出ポート(図示せず)とが、マニホールドベース70の一括排出用流路72にそれぞれ接続され、この一括排出用流路72を介して外部に開放されている。
【0045】
更に、上記第1電磁弁10A1及び第3電磁弁10A3の出力ポートAが、それぞれマニホールドベース70の第1出力用流路73に接続されると共に、この第1出力用流路73を通じて酸素濃縮のためのタンクである第1負荷61aに接続され、第2電磁弁10A2及び第4電磁弁10A4の出力ポートAが、それぞれマニホールドベース70の第2出力用流路74に接続されると共に、この第2出力用流路74を通じて酸素濃縮のためのタンクである第2負荷61bに接続されている。
【0046】
上記電磁弁アセンブリにおいて、第1負荷61a及び第2負荷61bに対する圧縮空気の供給は、第1電磁弁10A1及び第2電磁弁10A2により行われ、上記負荷61a,61bからの圧縮空気の排出は、第3電磁弁10A3及び第4電磁弁10A4により行われる。即ち、第1負荷61aに対する圧縮空気の供給は、第1電磁弁10A1に通電して該第1電磁弁10A1を図6とは逆の開弁位置に切り換えることにより行われ、供給後の充填状態の保持は、該第1電磁弁10A1を非通電にして図6の閉弁位置に切り換えることにより行われる。このとき第3電磁弁10A3は、非通電によって図6の閉弁位置を占めている。
また、該第1負荷61aからの圧縮空気の排出は、上記第3電磁弁10A3に通電して該第3電磁弁10A3を図6とは逆の開弁位置に切り換えることにより行われる。このとき上記第1電磁弁10A1は、非通電によって図6の閉弁位置を占めている。
第2負荷61bに対する圧縮空気の供給及び排出についても、第2電磁弁10A2と第4電磁弁10A4とが上記と同様に切換操作されることにより行われる。
【0047】
ここで、上記第1負荷61aに圧縮空気が供給されたあと、第1電磁弁10A1が閉じて充填状態を保持している状態で、第2電磁弁10A2が動作して第2負荷61bに圧縮空気が供給されることによって一括供給用流路71中のエア圧力が一時的に低下しても、上記第1電磁弁10A1においては、上述したように、補助弁体17によって主ダイヤフラム14の弁座閉鎖力が高められているため、第1負荷61a側の流体圧が出力ポートAを通じて該主ダイヤフラム14に開方向に逆圧として作用しても、この主ダイヤフラム14が主弁座16を一時的に開放することはない。これは、第2電磁弁10A2で第2負荷61bに圧縮空気を充填し、保持している状態で、第1電磁弁10A1で第1負荷61aに圧縮空気を供給する場合も同じである。
【0048】
上記第2〜第4実施形態の電磁弁10B〜10Dを用いて同様の電磁弁センブリを形成することもできるが、その際、排出用の第3電磁弁及び第4電磁弁においては、補助弁体17を主ダイヤフラム14側に向けて押圧する上記加圧スプリング63を持たないものを使用することが望ましい。その理由は、負荷61の圧縮空気を排出する際に、この加圧スプリング63による付勢力の分だけ負荷61に残圧が残るためである。
なお、排出用の上記第3電磁弁及び第4電磁弁としては、上記補助弁体17を備えていない通常型のダイヤフラム型電磁弁を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る閉鎖力増強機構付きダイヤフラム型電磁弁の第1実施形態の断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明に係る電磁弁の第2実施形態の断面図である。
【図4】本発明に係る電磁弁の第3実施形態の断面図である。
【図5】本発明に係る電磁弁の第4実施形態の断面図である。
【図6】第1実施形態の電磁弁で構成した電磁弁アセンブリを記号で示す空気圧回路図である。
【図7】従来の電磁弁アセンブリを記号で示す空気圧回路図である。
【符号の説明】
【0050】
P 供給ポート
A 出力ポート
10A,10B,10C,10D ダイヤフラム型電磁弁
11 ダイヤフラム弁部
12 パイロット弁部
13 ハウジング
13a 第1ブロック
13b 第2ブロック
13c 第3ブロック
14 主ダイヤフラム
15 主流路
16 主弁座
17 補助弁体
17a 補助ダイヤフラム
17b ピストン
18 取付面
24b 主パイロット圧力室
30b 補助パイロット圧力室
33 伝達ロッド
68 連通孔
70 マニホールドベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールドベースに取り付けるための取付面を有するハウジングに、上記取付面に開口する主流体用の供給ポート及び出力ポートと、これら両ポートを結ぶ主流路の途中に位置する主弁座と、この主弁座を開閉する主ダイヤフラムと、この主ダイヤフラムに上記主弁座を閉鎖する方向の作用力を発生させる主パイロット圧力室とを設けたダイヤフラム弁部、及び、上記主パイロット圧力室に対してパイロット流体を給排する電磁操作式のパイロット弁部からなり、
上記ダイヤフラム弁部がさらに、上記主ダイヤフラムの弁座閉鎖力を増強するための補助弁体と、この補助弁体に上記パイロット弁部からのパイロット流体を作用させる補助パイロット圧力室と、上記補助弁体と連動して変位することによって該補助弁体の作用力を上記主ダイヤフラムに伝達する伝達ロッドとを有することを特徴とする閉鎖力増強機構付きダイヤフラム型電磁弁。
【請求項2】
上記補助弁体と伝達ロッドとが、上記主ダイヤフラムと同心位置に該主ダイヤフラムに対して直列に配設され、また、上記主パイロット圧力室と補助パイロット圧力室とが相互に連通していることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
上記補助弁体のストローク可能範囲を主ダイヤフラムの動作ストロークより大きくすることにより、上記両パイロット圧力室にパイロット流体が供給されて主ダイヤフラムが主弁座を閉鎖しているとき、該補助弁体がストローク端の手前の位置を占めるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
上記補助弁体がダイヤフラムからなっていて、上記主ダイヤフラムと同じ形状及び大きさに形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電磁弁。
【請求項5】
上記補助弁体がピストンであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電磁弁。
【請求項6】
上記補助弁体がピストンからなり、また、上記伝達ロッドが該ピストンと一体に形成されていて、これらのピストンと伝達ロッドとの内部を貫通する連通孔によって上記補助パイロット圧力室と主パイロット圧力室とが相互に連通されていることを特徴とする請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の電磁弁。
【請求項7】
上記ハウジングが、上記取付面を有する第1ブロックと、この第1ブロックに結合された第2ブロックと、この第2ブロックに結合された第3ブロックとからなっていて、上記第1ブロックと第2ブロックとの間に上記主ダイヤフラムが配設されると共に、この第2ブロックと第3ブロックとの間に上記補助弁体が配設され、かつ、該第2ブロックに上記伝達ロッドが設けられており、上記第2ブロックと補助弁体及び伝達ロッドを取り外し、上記第1ブロックと第3ブロックとを主ダイヤフラムを介して相互に結合することにより、閉鎖力増強機構を持たないダイヤフラム型電磁弁を形成可能であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−39083(P2008−39083A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214901(P2006−214901)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】