説明

開口部装置のピボットヒンジ機構

【課題】戸体を枠体に対して回動可能に取付けるための新規なピボットヒンジ機構を提案する。
【解決手段】戸体2を枠体5に回動可能に支持するための開口部装置1のピボットヒンジ機構3であって、上枠51に開口部55が形成され、前記戸体2に前記上枠51に挿入されるピボット軸部21が設けられ、前記ピボット軸部21の施工完了後の支承位置Mにて、前記開口部55に挿入された前記ピボット軸部21を保持するための支持部材としての表板36が前記上枠51に取付けられる、ピボットヒンジ機構3とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボットヒンジを介して戸体を回動可能に支持する構成の開口部装置に関し、より詳しくは、ピボットヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開口部装置において、戸体を枠体に対して回動可能に取付けるためのピボットヒンジ機構が知られており、このピボットヒンジ機構について開示する文献も存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される技術では、上枠・下枠・縦枠から形成される方形の枠体において、戸体の吊元側となる上下の隅部にピボットヒンジ機構を配置することとしている。また、前記ピボットヒンジ機構は、枠体の前記隅部に設けられるピボット受部材と、戸体の吊元側の上下部に設けられるピボット軸部材とから構成されることとしている。
【0004】
また、特許文献1にも開示されるように、ピボット受部材は、造形加工されたブロック状の部材にて構成され、枠体から見込方向外方に突設されることとしている。また、ピボット軸部材においても、戸体から枠の見込方向外方に突設されることとして、ピボット軸部材に設けた軸を、ピボット受部材に設けた挿入口に収容することとしている。
【特許文献1】特開平11−141217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、ピボットヒンジの構成部材が枠体から見込方向外方に突出した状態となり、その構成部材が開口部装置の外観の意匠性に影響することになる。例えば、開口部装置において、外観の雰囲気を可能な限りシンプルな構造とする場合には、ピボットヒンジの構成部材の存在が外観の雰囲気に悪影響を及ぼすことも考えられる。
【0006】
また、戸体や枠体の意匠との関連で、突出されるピボットヒンジの構成部材の意匠を統一する必要性が生じることもある。例えば、ピボットヒンジの構成部材の形状・模様・色彩を戸体のものと統一感を醸し出すように、設計・造形するといったことである。このような場合、ピボットヒンジの構成部材の設計費・加工費が嵩むことになってしまう。
【0007】
また、特に、風雨にさらされる箇所に設置される開口部装置においては、錆や劣化の進行が早いため、美感を保つための耐候性を確保するための設計が必要になり、ピボットヒンジの構成部材の設計費・加工費が嵩むことになってしまう。
【0008】
また、ピボットヒンジの構成部材が枠の見込方向外方に大きく突出する構成であると、突出した部位と他の部位とを干渉させないようにする設計が必要となる。また、突出した部位によって、人の足をつまずかせてしまうことや、物がぶつかることも考えられる。即ち、突出した部位が邪魔になってしまうのである。特に、開口部装置の設置空間が狭くなりがちなマンションやアパートなどの集合住宅においては、この問題は大きなものとなる。
【0009】
さらに、ピボットヒンジの構成部材が枠の見込方向外方に大きく突出する構成であると、突出した部位の表面へのホコリの堆積による汚れなどが発生し、汚れの拭き取りなどの必要も生じることになる。
【0010】
以上のように、ピボットヒンジの構成部材が枠の見込方向外方に大きく突出する構成であると、課題が多く存在することになる。そもそも、ピボットヒンジの構成部材が枠の見込方向外方に突出されるのは、ピボットヒンジにおける軸中心(ピボット軸部材の軸の中心軸)が、枠体からずらされた位置、つまりは、上枠・下枠の見込面の範囲外の位置に設けられるためである。
【0011】
そこで、上枠・下枠の見込面の範囲内に、ピボットヒンジにおける軸中心を配置することが検討されるが、この場合、戸体の施工時には、戸体側(又は枠体側)に突設させる軸と、上枠・下枠(又は戸体)との干渉の問題が生じることになる。この干渉を避けるために、軸を一旦戸体側(又は枠体側)に収容させる機構を採用することも検討される。しかし、軸を収容させる(引っ込める)機構は、軸の進退とともに、収容した状態/突出した状態を維持するための構造が必要となり、構成が複雑となるため、製作コストも嵩むことになる。また、ピボットヒンジの構成では、戸体を支持する軸に大きな荷重がかかることになるため、構成が複雑となり得る軸を収容させる機構では、荷重に対する高い剛性が確保し難いものと考えられる。
【0012】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑み、戸体を枠体に対して回動可能に取付けるための新規なピボットヒンジ機構を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1に記載のごとく、
戸体を枠体に回動可能に支持するための開口部装置のピボットヒンジ機構であって、
前記枠体に開口部が形成され、
前記戸体に前記開口部に挿入されるピボット軸部が設けられ、
前記ピボット軸部の施工完了後の支承位置にて、前記開口部に挿入された前記ピボット軸部を保持するための支持部材が前記枠体に取付けられる、
開口部装置のピボットヒンジ機構とするものである。
【0015】
また、請求項2に記載のごとく、
前記開口部は溝状であることととするものである。
【0016】
また、請求項3に記載のごとく、
前記支持部材は、前記開口部を遮蔽する表面を有するものである。
【0017】
また、請求項4に記載のごとく、
前記支持部材には、略U字状の軸受溝が構成されており、前記軸受溝の円弧部にて前記ピボット軸部の外周面を取り囲むこととするものである。
【0018】
また、請求項5に記載のごとく、
前記支持部材は、戸体の端面Tと枠体の見込面の間に収められることとするものである。
【0019】
また、請求項6に記載のごとく、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構を少なくとも一つ具備する、開口部装置とするものである。
【0020】
また、請求項7に記載のごとく、
枠体に形成された開口部に対し、ピボット軸部の施工完了後の支承位置から離れた位置において前記ピボット軸部を挿入する第一の工程と、
前記ピボット軸部を前記支承位置に移動させる第二の工程と、
第二の工程の後に、前記ピボット軸部の施工完了後の支承位置にて、前記開口部に挿入された前記ピボット軸部を保持するための支持部材を前記枠体に取付ける第三の工程と、
を含む、開口部装置の施工方法とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
即ち、請求項1に記載の発明においては、ピボット軸部が枠体の見込面の範囲内に収められるため、ピボットヒンジ機構の構成部材が大きく突出することがない。
【0023】
また、請求項2に記載の発明においては、戸体を傾けた状態でピボット軸部を開口部に挿入することが可能となり、ピボット軸部の開口部への挿入に際して、ピボット軸部を戸体に収容させる(引っ込める)機構を備える必要がない。つまりは、ピボット軸部21を固定式の構成とすることができ、これにより、構造の複雑化や製作コストの削減などを図ることができる。また、溝状とすることで、ピボット軸部を移動させる際に、溝の内周面にてピボット軸部をガイドすることが可能となる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明においては、前記開口部が遮蔽され、見込面の意匠性を向上することができる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明においては、支持部材を横方向から挿入して固定することが可能となって、施工性に優れたものとなる。
【0026】
また、請求項5に記載の発明においては、戸体が開いた状態においても、ピボットヒンジ機構の構成部材である表板が外観に現れることがなく、意匠性・耐候性に関連する設計被・加工費を削減することができ、また、開口部装置全体としての意匠性の自由度を向上することができる。
【0027】
また、請求項6に記載の発明においては、ピボットヒンジの構成部材が枠の見込方向外方に大きく突出する構成における意匠性や汚れの拭き取りなどの必要性などに関する課題が解決されるものとなる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明においては、作業者一人での戸体の施工を実施することができ、施工性・作業性が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態を説明する。
実施の形態として、
戸体を枠体に回動可能に支持するための開口部装置のピボットヒンジ機構であって、
前記枠体に開口部が形成され、
前記戸体に前記開口部に挿入されるピボット軸部が設けられ、
前記ピボット軸部の施工完了後の支承位置にて、前記開口部に挿入された前記ピボット軸部を保持するための支持部材が前記枠体に取付けられる、
開口部装置のピボットヒンジ機構とするものである。
【0030】
また、前記ピボットヒンジ機構は、開口部装置の上下で異なるピボットヒンジ機構がそれぞれ構成されることとし、上部に本実施形態のピボットヒンジ機構を、下部に他のピボットヒンジ機構が構成されることや、この配置を逆に構成することとしてもよい。また、本実施形態のピボットヒンジ機構を開口部装置の上下のそれぞれに適用することも可能である。即ち、開口部装置において、上部に設けられるピボットヒンジ機構を少なくとも一つ具備する構成とすれば、本発明の目的・課題を達成することが可能である。
以下、具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
図1に示す開口部装置1では、戸体2がピボットヒンジ機構3・4によって、枠体5に対して吊り込まれ、枠体5に対して戸体2が回動可能に支持されることとしている。前記枠体5は、上枠51、下枠52、左右の縦枠53・54によって方形に構成されており、戸体2が枠体5に囲まれるようにして収められるようになっている。
【0032】
また、図1に示すごとく、戸体2の吊元側の上部と上枠51の間には、ピボットヒンジ機構3が構成され、同様に、戸体2の吊元側の下部と下枠52の間には、ピボットヒンジ機構4が構成される。そして、これらピボットヒンジ機構3・4は、外観に現れることがなく、これにより、開口部装置1の外観を戸体2と枠体5の意匠のみで構成できるようになっている。
【0033】
次に、開口部装置1の上部に構成されるピボットヒンジ機構3について説明する。
図2に示すごとく、ピボットヒンジ機構3は、上枠51に形成されるピボット被係合部30と、戸体2の吊元側の上部に形成されるピボット係合部20とから構成される。
【0034】
まず、ピボット被係合部30について説明する。
図2に示すごとく、上枠51は中空部58を有する長尺部材にて構成されており、設置状態において下側に配置される下板部51aの下側面によって見込面51bが形成されている。見込面51bには、左右方向に長い溝状の開口部55が形成されている。また、見込面51bにおいて、開口部55の長手方向に沿う様にして複数箇所に貫通穴56・56が形成されている。さらに、見込面51bにおいて、貫通穴56・56よりも開口部55から離れた箇所には、貫通穴57・57が形成されている。また、開口部55、貫通穴56、貫通穴57は、それぞれ、前記下板部51aを貫通するように設けられ、これにより、開口部55、貫通穴56、貫通穴57を介して、中空部58と見込面51bが通じるようになっている。
【0035】
また、図2に示すごとく、上枠51の中空部58の中には、裏板31が挿入される。裏板31は板状部材で構成され、前記見込面51bに形成される貫通穴57・57に対応する位置に螺孔32・32が形成されている。そして、螺孔32・32に対し、固定具33・33を見込面51b側から貫通穴57・57を介して螺挿することにより、裏板31が下板部51aに対して固定されるようになっている。
【0036】
また、図2に示すごとく、裏板31においては、前記見込面51bに形成される開口部55に対応するようにして、左右方向に長い溝状の開口部34が形成されている。この開口部34は、裏板31を貫通するように設けられている。そして、図3(a)に示すごとく、裏板31を固定具33・33によって下板部51aに固定した状態では、見込面51bに形成された開口部55と、裏板31に形成された開口部34が重なって、上下方向に通じる一連の溝が形成されるようになっている。また、図5(a)に示すごとく、開口部34において、戸体2の吊元側に近い側の端部には円弧部34aが形設されており、該円弧部34aによって、後述するピボット軸部21の外周面21aと略同一の円弧を形成する内側面34bが構成されるようになっている。
【0037】
また、図3(a)に示すごとく、開口部55・34によって形成される一連の溝を左右方向に長く構成することで、後述する戸体2の吊り込み作業の際に、図4(a)に示すごとく、戸体2を傾けることによって、ピボット軸部21が施工完了後の支承位置Mから離れた位置となる状態で、ピボット軸部21を開口部55・34に挿入できるようになっている。また、これにより、ピボット軸部21の開口部55・34への挿入に際して、ピボット軸部21を戸体2に収容させる(引っ込める)機構を備える必要がない。つまりは、ピボット軸部21を固定式の構成とすることができ、これにより、構造の複雑化や製作コストの削減などを図ることができる。また、開口部55・34を溝状とすることで、ピボット軸部21を移動させる際に、溝の内周面にてピボット軸部21をガイドすることが可能となる。
【0038】
なお、本実施例のように、開口部55・34の溝を左右方向とする他、左右方向に対して傾いた斜め方向としてもよい。また、開口部55・34を溝状とする他、幅の広い楕円形状を長方形形状としてもよく、また、開口部55・34のいずれか一方の開口面積を狭くして、ピボット軸部21に接触させる部材を上枠51、又は、裏板31のいずれか一方としてもよい。
【0039】
また、図5(a)に示すごとく、裏板31の開口部34、及び、見込面51bの開口部55を、戸体2の吊元側に近い側の端部において、溝の長手方向と交差する方向に延設することで、窪み部34e・55eを形設することとしている。これにより、後述するピボット軸部21の一部が窪み部34e・55eに収容されることになり、戸体2の吊り込み作業時において、いったん窪み部34e・55eに収容したピボット軸部21が溝の長手部34d・55dに移動しようとした際において、段部34f・55fによってピボット軸部21の移動を規制できるようになっている。
【0040】
また、図2及び図3(a)(b)に示すごとく、見込面51bに対して表板36が取り付けられるものとしている。この表板36を固定するために、前記裏板31には、前記見込面51bに形成される貫通穴56・56に対応する位置に螺孔35・35が形成されている。また、見込面51bに取付けられる表板36には、前記貫通穴56・56に対応する位置に貫通穴37・37が形成されている。そして、固定具39・39を表板36の下面側から貫通穴37、貫通穴56を介して螺孔35・35に螺挿することにより、表板36が下板部51aに対して固定されるようになっている。
【0041】
また、図2及び図3(b)に示すごとく、表板36において、下板部51aに固定された際に戸体2のピボット軸部21に近い側となる端部には、戸体2のピボット軸部21に近い側が開放される略U字状の軸受溝38が形設されている。この軸受溝38にて、ピボット軸部21が収容されるようになっている。また、図5(b)に示すごとく、軸受溝38の円弧部38aによって、ピボット軸部21の外周面21aと略同一の円弧を形成する内側面38bが構成されるようになっている。
【0042】
また、図3(b)に示すごとく、表板36は、下板部51aに固定された状態で、前記ピボット軸部21の箇所を除き、前記開口部55・34を遮蔽するのみ十分な広さ面積を有する表面を有することとしている。これにより、前記開口部55・34が遮蔽され、見込面51bの意匠性を向上することができるようになっている。
【0043】
次に、戸体2の上部に形成されるピボット係合部20について説明する。
図2及び図4(a)に示すごとく、戸体2の上部には、ピボット係合部20が設けられており、該ピボット係合部20から上方に向かってピボット軸部21が突設されている。図4(a)に示すごとく、ピボット係合部20は、固定具23によって戸体2の上面に固定される板状のベース部22の上面において、ピボット軸部21を上方に向けて突設させる構成としている。
【0044】
また、図4(a)に示すごとく、ピボット軸部21は、見込面51bの開口部55、及び、裏板31の開口部34に挿入され、その先端が上枠51の中空部58に挿入される。そして、詳しくは後述するが、図4(a)に示すごとく、ピボット軸部21が戸体2の吊元側の方向に移動するように戸体2の角度を調整した状態で(支承位置M)、図3(b)に示すごとく、表板36の軸受溝38内にピボット軸部21が収容されるように表板36を見込面51bに固定する。これにより、図4(b)及び図5(b)に示すごとく、ピボット軸部21の外周面21aは、表板36の軸受溝38の内側面38bと裏板31の開口部34の内側面34bにて囲まれる。
【0045】
このようにして、ピボット軸部21が表板36と裏板31によって回動可能に支持され、ピボット係合部20がピボット被係合部30に対して回動可能に支持されるピボットヒンジ機構3が構成される。また、この構成では、表板36は、前記ピボット軸部21の施工完了後の支承位置Mにて、前記開口部55に挿入された前記ピボット軸部21を保持するための支持部材として機能することになる。
【0046】
なお、本実施例では、ピボット軸部21の外周面21aに対して、表板36の内側面38b、及び、裏板31の内側面34bが直接的に接触し得る構成としているが、各内側面38b・34bにゴムや樹脂などの弾性体を設けることとして、ピボット軸部21との直接的な接触を避け、異音や摩耗の低減を図ることとしてもよい。また、ピボット軸部21をゴムや樹脂などの弾性体からなる筒状の部材で覆うことにより、前記各内側面38b・34bとの接触を避け、異音や摩耗の低減を図ることとしてもよい。さらに、本実施例では、表板36を上枠51の下板部51aを介して裏板31に固定する形態としたが、上枠51の下板部51aに螺孔を形設することによれば、裏板31を省略することも可能である。この場合、表板36と下板部51aによってピボット軸部21を支持することになる。
【0047】
次に、開口部装置1の下部に構成されるピボットヒンジ機構4について説明する。
図6に示すごとく、ピボットヒンジ機構4は、下枠52に形成されるピボット被係合部40と、戸体2の吊元側の下部に形成されるピボット係合部25とから構成される。
【0048】
まず、ピボット被係合部40について説明する。
図6(a)に示すごとく、ピボット被係合部40は、固定具41によって下枠52の見込面52bの上面に固定される板状のベース部42の上面に、ピボット軸部43を上方に向けて突設させる構成としている。また、ピボット軸部43の上下方向中途部には、円筒状の支承部44が取付けられている。なお、例えば、ピボット軸部43は六角穴付ボルト、支承部44は六角ナットにて、それぞれ構成することが可能である。
【0049】
次に、ピボット係合部25について説明する。
図6(a)に示すごとく、ピボット係合部25は、戸体2の吊元側の下部に、円筒状の軸挿入部26を設けることで構成される。この軸挿入部26は、ピボット軸部43が挿入されて、ピボット軸部43の外周面に接触することになる筒状部26aを有している。また、軸挿入部26は、ピボット軸部43が筒状部26aに挿入された状態で、前記ピボット被係合部40の支承部44の上面に載置されるものであって、筒状部26aよりも外径を広く構成してなる載置部26bを有している。
【0050】
また、図6(a)に示すごとく、戸体2の吊り込み作業の際においては、戸体2は傾けたられた状態とし、ピボット軸部43に対してピボット係合部25の位置合わせを行うことになる。この位置合わせの作業においては、互いの厳密な位置を視認できず、両者が擦れ合う可能性があるため、ピボット係合部25については、ゴム、樹脂などの弾性素材により構成することが好適である。
【0051】
そして、図6(b)に示すごとく、前記ピボット軸部43を軸挿入部26に挿入することで、ピボット係合部25がピボット被係合部40に対して回動可能に支持されるピボットヒンジ機構4が構成される。
【0052】
次に、枠体5に対する戸体2の施工作業について説明する。
図7は、施工手順について順を追って説明したものである。
施工手順S1において、建物開口部に設置された枠体5に対し、戸体2を吊元側が高くなるように傾けた状態とし、まず、戸体2の上部のピボット係合部20を上枠51のピボット被係合部30に対し係合させる。ここでは、図4(a)に示すごとく、ピボット軸部21が開口部55・34に挿入された状態となる。なお、この施工手順S1の前段階の枠体5の施工において、裏板31が上枠51に対して固定されているものとする。
【0053】
そして、ピボット軸部21を開口部55・34に挿入させた状態(図4(a)参照)で、図7に示すごとく、戸体2の下部のピボット係合部25を下枠52のピボット被係合部40に対して係合させる。ここでは、図6(b)に示すごとく、ピボット軸部43が軸挿入部26に挿入された状態となり、ピボットヒンジ機構4が構成される。
【0054】
ここで、施工手順S1において特記すべきことは、戸体2を傾けることで、図4(a)に示すごとく、ピボット軸部21を開口部55・34に挿入した状態において、図6(a)に示すごとく、戸体2の下部のピボット係合部25とピボット被係合部40の間に隙間45を構成することができ、これにより、ピボット係合部25にピボット軸部43を挿入させることが可能になるということである。このことが可能となるのは、前記開口部55・34によって形成される一連の溝を左右方向に長く構成し、ピボット軸部21が施工完了後の支承位置M(図4(a)参照)から離れた位置となる状態で、ピボット軸部21を開口部55・34に挿入できるためである。この施工手順S1は、ピボット軸部21及びピボット軸部43が固定されている構成において、特異的な手順となる。
【0055】
次に、図7に示すごとく、施工手順S1が完了した施工手順S2の状態では、ピボットヒンジ機構3・4において、それぞれ、図4(a)、図6(b)の状態となる。ここで、図4(a)に示すごとく、戸体2が傾いた状態では、ピボット軸部21を裏板31の開口部34の内側面34c(戸体2の吊元側から遠い側の端面)に当接させるようにして、ピボット軸部21を裏板31によって支えることが可能となる。これにより、図7に示す施工手順S2の状態においては、施工作業者は、戸体2から手を放すことが可能となり、表板36を用意するなど、次の施工手順S3の準備を行うことが可能となる。このことは、特に、一人の作業者によって戸体2の施工を行う場合には、施工性・作業性が良好になるという点で、優れた効果を奏することになる。
【0056】
次に、図7に示す施工手順S3においては、図4(a)に示すごとく、傾いた戸体2を垂直に立てるようにして、図5(a)に示すごとく、ピボット軸部21を窪み部34e・55eに収容させた状態とする。ここで、戸体2の自重によって、いったん窪み部34e・55eに収容したピボット軸部21が溝の長手部34d・55dに移動しようとしても、段部34f・55fによってピボット軸部21の移動を規制できる。なお、この施工手順S3においては、図8(a)に示すごとくの状態となっている。そして、図4(b)に示すごとく、表板36の軸受溝38にピボット軸部21が挿入されるように、上枠51の見込面51bに対して表板36を当接させた状態とする。
【0057】
次に、図7に示すごとく、施工手順S4において、固定具39・39にて、表板36を上枠51に対して固定させる。この状態で、図8(b)に示すごとく、見込面51bに見えていた開口部55が表板36によって遮蔽されることになる。そして、固定具39・39によって表板36が規定の位置に固定する際には、図5(a)に示すごとく、窪み部34e・55eに収容されていたピボット軸部21が、図5(b)に示すごとく、表板36の軸受溝38の内側面38bによって押圧されて、裏板31の開口部34の内側面34bに当接するまで案内される。これにより、図4(b)に示すごとく、ピボット軸部21が表板36と裏板31によって回動可能に支持され、ピボット係合部20がピボット被係合部30に対して回動可能に支持されるピボットヒンジ機構3が構成される。
【0058】
以上のように、本実施例では、図4(b)に示すごとく、戸体2を枠体5に回動可能に支持するための開口部装置1のピボットヒンジ機構3であって、上枠51に開口部55が形成され、前記戸体2に前記上枠51に挿入されるピボット軸部21が設けられ、前記ピボット軸部21の施工完了後の支承位置Mにて、前記開口部55に挿入された前記ピボット軸部21を保持するための支持部材としての表板36が前記上枠51に取付けられる、ピボットヒンジ機構3とするものである。
【0059】
このピボットヒンジ機構3を採用することにより、ピボット軸部21が上枠51の見込面51bの範囲内に収められるため、ピボットヒンジ機構3の構成部材が大きく突出することがない。
【0060】
また、図4(a)に示すごとく、前記開口部55・34は溝状とするものである。
【0061】
これにより、戸体2を傾けた状態でピボット軸部21を開口部55・34に挿入することが可能となり、ピボット軸部21を開口部55・34の挿入に際して、ピボット軸部21を戸体2に収容させる(引っ込める)機構を備える必要がない。また、開口部55・34を溝状とすることで、ピボット軸部21を移動させる際に、溝の内周面にてピボット軸部21をガイドすることが可能となる。
【0062】
また、図3(b)に示すごとく、前記支持部材としての表板36は、前記開口部55を遮蔽する表面を有するものである。
【0063】
これにより、前記開口部55・34が遮蔽され、見込面51bの意匠性を向上することができる。
【0064】
また、図5(b)に示すごとく、前記支持部材としての表板36には、略U字状の軸受溝38が構成されており、前記軸受溝38の円弧部38aにて前記ピボット軸部21の外周面21aを取り囲むこととするものである。
【0065】
このように略U字状の軸受溝38を構成することにより、図7の施工手順S3、及び図8(a)に示すように、支持部材としての表板36を横方向から挿入して固定することが可能となって、施工性に優れたものとなる。
【0066】
また、図8(b)に示すごとく、前記支持部材としての表板36は、戸体2の端面2Tと上枠51の見込面51bの間に収められることとする。
【0067】
これにより、戸体2が開いた状態においても、ピボットヒンジ機構3の構成部材である表板36が外観に現れることがなく、意匠性・耐候性に関連する設計被・加工費を削減することができ、また、開口部装置1全体としての意匠性の自由度を向上することができる。
【0068】
また、上記の開口部装置1における施工については、図7に示すごとく、
上枠51に形成された開口部55に対し、ピボット軸部21の施工完了後の支承位置Mから離れた位置において前記ピボット軸部21を挿入する第一の工程と、
前記ピボット軸部21を前記支承位置Mに移動させる第二の工程と、
第二の工程の後に、前記ピボット軸部21の施工完了後の支承位置Mにて、前記開口部55に挿入された前記ピボット軸部21を保持するための支持部材としての表板36を前記上枠51に取付ける第三の工程と、
を含む、開口部装置1の施工方法とするものである。
【0069】
このような手順によれば、作業者一人での戸体2の施工を実施することができ、施工性・作業性が良好なものとなる。
【0070】
なお、以上に説明した実施例1においては、開口部装置1の上下で異なるピボットヒンジ機構3・4がそれぞれ構成されることとし、上部にピボットヒンジ機構3を、下部にピボットヒンジ機構4が構成されることとしたが、この配置を逆に構成してもよい。また、実施例1において上部に設けられるピボットヒンジ機構3を、上下のそれぞれに適用することも可能である。即ち、開口部装置において、実施例1において上部に設けられるピボットヒンジ機構3を少なくとも一つ具備する構成とすれば、本発明の目的・課題を達成することが可能である。
【0071】
さらに、以上に説明した実施例1においては、戸体が吊り込まれる対象となる上枠51、及び、下枠52は長尺物であって、枠体5は方形に構成されるものであるが、例えば、建物躯体開口部に、上枠・下枠のみを設置したところに戸体を吊り込む形態についても実施例1の構成は適用可能である。また、上枠においてピボットヒンジ機構を構成する箇所のみをブロック状に構成したものを躯体開口部に嵌め込む形態とし、実質的に枠体が現れない形態とすることも可能である。
【実施例2】
【0072】
本実施例2は、図9に示すごとく、上枠151において、下板部153(見込面154)と縦板部158(見付面159)において、戸体2の上部に設けられるピボット軸部21を挿入するための一連の溝状の開口部155を構成するものである。また、この開口部155は、上枠151の長手方向(左右方向)と直交する方向(見込方向)に形設することとし、裏板131の開口部134を形設する方向も、この開口部155に対応させたものとして、開口部155・134によって上下方向に通じる一連の溝が形成されることとするものである。
【0073】
そして、以上のような構成とすることで、図10(a)(b)に示すごとく、ピボット軸部21を上枠151の見付面159の側から開口部155・134に挿入させることが可能となる。そして、開口部155・134にピボット軸部21を挿入した状態で、図9及び図10に示す表板136を上枠151に対して固定する。表板136には、略U字状の軸受溝138が形設されており、軸受溝138の円弧部138aの内側面138bと、裏板131の開口部134の内側面134bによって、ピボット軸部21を取り囲む構成としている。これにより、ピボット軸部21が表板136と裏板131によって回動可能に支持され、ピボットヒンジ機構130を構成することができる。
【0074】
尚、本実施例2における表板136については、板部材をL字状に板金加工して、下面構成部136a、縦面構成部136bを設ける構成とし、上枠151の見込面154、及び、見付面159に現れる開口部155を、それぞれ下面構成部136a、縦面構成部136bにより遮蔽することで、意匠性を向上できるようにしている。
その他の構成については、上述の実施例1と同様であり、説明を省略するものとする。
【実施例3】
【0075】
本実施例3は、図11(a)(b)に示すごとく、ピボット係合部20A・20B及び戸体2A・2Bの構成についての実施例である。
図11(a)の構成の戸体2Aでは、吊元側の端部2aに二つの角部2b・2cが形成される端部構造とするものである。そして、この端部2aの上面に固定されるピボット係合部20Aのベース部22Aについては、平面視略正方形の形状とし、ピボット軸部21Aがベース部22Aの中心位置からずれた位置に配置される構成としている。
【0076】
また、図11(b)の構成の戸体2Bでは、吊元側の端部2dは、角部の存在しない円弧形状の端部構造とするものである。そして、この端部2dの上面に固定されるピボット係合部20Bのベース部22Bについては、戸体2の端部2dの円弧面を形成する円弧を有する形状とし、ピボット軸部21Bがこの円弧の中心に対応する位置に配置される構成としている。
【0077】
以上のように、ピボット係合部20A・20Bについては、戸体2A・2Bの端部構造に対応させてピボット軸部21A・21Bを配置させることができる。また、特に、図11(b)の構成の場合では、戸体2Bの端面2fと、縦枠54との間に形成される隙間空間60を小さく構成することができ、縦枠54と戸体2Bとの間へのものの挟み込みの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0078】
なお、本実施例3では、戸体の上部に形成されるピボット係合部とそのピボット軸部の位置関係の例について述べたが、枠体の下枠に形成されるピボット被係合部とそのピボット軸部における位置関係についても同様であり、上下のピボット軸部の配置は、平面視において互いに一致するように設計されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、戸体を枠体に対して回動可能に取付ける構成とする開口部装置について広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1に係るピボットヒンジ機構を具備する開口部装置の構成について示す図。
【図2】本実施例の実施例1に係る、開口部装置の上部に構成されるピボットヒンジ機構の構成部材について説明する図。
【図3】(a)は、上枠に形成した開口部にピボット軸部を挿入した状態について示す図。(b)は、上枠に表板を取付けた状態について示す図。
【図4】(a)は、開口部に挿入されたピボット軸部、及び、ピボット軸部の支承位置への移動について説明する図。(b)は支承位置に保持されるピボット軸部について示す図。
【図5】(a)は、ピボット軸部が窪み部に収容される状態について示す図。(b)は、表板と裏板によってピボット軸部が囲まれた状態について示す図。
【図6】(a)は、開口部装置の下部に構成されるピボットヒンジ機構の構成部材について説明する図。(b)は、同じくピボットヒンジ機構が形成された状態について示す図。
【図7】戸体の施工手順について説明する図。
【図8】(a)は、開口部に挿入したピボット軸部を支承位置に移動させた状態において枠体を下から臨む図。(b)は、表板を固定した状態において枠体を下から臨む図。
【図9】本実施例の実施例2に係る、開口部装置の上部に構成されるピボットヒンジ機構の構成部材について説明する図。
【図10】(a)は、戸体のピボット軸部を見付面側から開口部に挿入することについて説明する図。(b)は、表板の取り付けについて示す図。
【図11】(a)は、端部に角部を有する戸体に適用するピボット係合部の構成例について示す図。(b)は、端部を円弧状とする戸体に適用するピボット係合部の構成例について示す図。
【符号の説明】
【0081】
1 開口部装置
2 戸体
3 ピボットヒンジ機構
4 ピボットヒンジ機構
5 枠体
21 ピボット軸部
31 裏板
34 開口部
36 表板
43 ピボット軸部
51 上枠
55 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体を枠体に回動可能に支持するための開口部装置のピボットヒンジ機構であって、
前記枠体に開口部が形成され、
前記戸体に前記開口部に挿入されるピボット軸部が設けられ、
前記ピボット軸部の施工完了後の支承位置にて、前記開口部に挿入された前記ピボット軸部を保持するための支持部材が前記枠体に取付けられる、
開口部装置のピボットヒンジ機構。
【請求項2】
前記開口部は溝状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構。
【請求項3】
前記支持部材は、前記開口部を遮蔽する表面を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構。
【請求項4】
前記支持部材には、略U字状の軸受溝が構成されており、前記軸受溝の円弧部にて前記ピボット軸部の外周面を取り囲む、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構。
【請求項5】
前記支持部材は、戸体の端面と枠体の見込面の間に収められる、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の開口部装置のピボットヒンジ機構を少なくとも一つ具備する、開口部装置。
【請求項7】
枠体に形成された開口部に対し、ピボット軸部の施工完了後の支承位置から離れた位置において前記ピボット軸部を挿入する第一の工程と、
前記ピボット軸部を前記支承位置に移動させる第二の工程と、
第二の工程の後に、前記ピボット軸部の施工完了後の支承位置にて、前記開口部に挿入された前記ピボット軸部を保持するための支持部材を前記枠体に取付ける第三の工程と、
を含む、開口部装置の施工方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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