説明

開弁装置およびガス供給設備

【課題】 断熱圧縮によるガス温度上昇の防止とダイヤフラム弁の開放に要する時間の短縮とに加え、小型化が可能な開弁装置を提供する。
【解決手段】 開弁装置106は、駆動用流体供給ライン230と、高速供給ライン232と、低速供給ライン234とを備える。高速供給ライン232は、駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。低速供給ライン234は、高速供給ライン232による駆動用流体の供給速度よりも低い、開閉弁102の開放によるガスの温度上昇を防止可能な速度で駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。高速供給ライン232が、圧力制御弁250を有する。圧力制御弁250は、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えると閉じる。閉止圧力は、開閉弁102においてガスの漏れが生じる圧力を下回る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開弁装置およびガス供給設備に関し、特に、ガス温度上昇の抑制と開閉弁の開放に要する時間の短縮とに加え、小型化が可能な、開弁装置およびガス供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体製造ガス用高圧ガス容器弁にかかる発明を開示している。その高圧ガス容器弁は、弁体開閉のためのアクチュエータを備えている。この発明の特徴は、そのアクチュエータへ供給する駆動用流体の流量をオリフィスで絞っていることである。駆動用流体は、そのアクチュエータを駆動するために供給される。
【0003】
特許文献1に開示された高圧ガス容器弁は、駆動用流体の流量をオリフィスで絞る。駆動用流体の流量がオリフィスで絞られているので、弁体をゆっくり開放することができる。弁体をゆっくり開放することができるので、断熱圧縮によるアクチュエータ駆動用ガスの温度上昇を抑制できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された高圧ガス容器弁には、弁体を開放するための所要時間の合計が長すぎるという問題がある。
【0005】
特許文献2に開示された発明は、上述した問題を解決する。特許文献2に開示された発明は、制御器にかかる発明である。その制御器は、ダイヤフラム弁に接続される。その制御器は、ダイヤフラム弁開閉のためのアクチュエータを備えている。この発明の特徴は、そのアクチュエータが流量調整弁に加え補助連通路と緩衝機構とを備えていることである。この緩衝機構は調圧ばねなどから構成されている。駆動用流体をアクチュエータへ供給し始める際、駆動用流体は流量調整弁からも補助連通路からもアクチュエータ内の圧力室に入る。アクチュエータ内のピストンの移動距離が所定値を越えると補助連通路は閉鎖される。これにより、アクチュエータ内のピストンの移動距離が所定値を越えると、流量調整弁を通過した駆動用流体のみが圧力室に入ることになる。緩衝機構が設けられているので、補助連通路が閉鎖される前のピストンの動きがそのままダイヤフラム弁に伝わることはない。このため、アクチュエータ内のピストンが移動する際、ダイヤフラム弁が開放されてしまうことを防止できる。
【0006】
特許文献2に開示された制御器によれば、駆動用流体の供給開始直後における駆動用流体の流量を多くできる。緩衝機構が設けられているので、この時期はダイヤフラム弁の開閉にほとんど影響がない。そのため、ダイヤフラム弁を開放したときのガス温度上昇の抑制とダイヤフラム弁の開放に要する時間の短縮とを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−30399号公報
【特許文献2】特開2005−325893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された制御器は、緩衝機構を必要とする。緩衝機構を必要とする分、アクチュエータは大型化する。また、特許文献2に開示された制御器は流量調整弁と補助連通路と緩衝機構とを一体化しなければならない。このこともアクチュエータの大型化を招く。本発明は、このような問題点を解消するためになされたものである。その目的とするところは、ガス温度上昇の抑制と開閉弁の開放に要する時間の短縮とに加え、小型化が可能な、開弁装置およびガス供給設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、開弁装置106は、駆動用流体供給ライン230を備える。駆動用流体供給ライン230は、アクチュエータ104に接続される。アクチュエータ104は、開閉弁102の開放を制御する。開閉弁102は、ガスが流れる流路を開閉する。駆動用流体供給ライン230は、アクチュエータ104に駆動用流体を供給する。駆動用流体はアクチュエータ104を駆動するためのものである。開弁装置106は、高速供給ライン232と、低速供給ライン234とをさらに備える。高速供給ライン232は、駆動用流体供給ライン230に連なる。高速供給ライン232は、駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。低速供給ライン234は、高速供給ライン232と並列に駆動用流体供給ライン230に連なる。低速供給ライン234は、高速供給ライン232による駆動用流体の供給速度よりも低い、開閉弁102の開放によるガスの温度上昇を抑制可能な速度で駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。高速供給ライン232が、圧力制御弁250を有する。圧力制御弁250は、駆動用流体の圧力が所定の閉止圧力を超えると閉じる。閉止圧力は、開閉弁102においてガスの漏れが生じる圧力を下回る。
【0010】
圧力制御弁250は、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えると閉じる。このため、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えるまで、駆動用流体供給ライン230には高速供給ライン232から駆動用流体が供給されていることとなる。そのため、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えるまで、駆動用流体供給ライン230はアクチュエータ104へ迅速に駆動用流体を供給できる。駆動用流体を迅速に供給できるので、開閉弁の開放に要する時間の合計を短縮できる。
【0011】
その後、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えると圧力制御弁250が閉じる。圧力制御弁250が閉じるので、駆動用流体の圧力が閉止圧力を超えると、高速供給ライン232から駆動用流体供給ライン230への駆動用流体の供給は途切れる。低速供給ライン234による駆動用流体の供給は継続できる。低速供給ライン234により、高速供給ライン232よりも供給速度が低い、開閉弁102の開放によるガスの温度上昇を抑制可能な速度で、駆動用流体が供給されることにより、開閉弁102がすばやく開放されてしまうことが防止される。そのため、ガスの温度上昇が抑制される。
【0012】
高速供給ライン232から駆動用流体供給ライン230への駆動用流体の供給を途切れさせる際、開弁装置106はアクチュエータ104の動作を必要としない。アクチュエータ104の動作を必要としないため、高速供給ライン232から駆動用流体が供給されている期間のアクチュエータ104の動きを抑える緩衝機構を開弁装置106は必要としない。その結果、開弁装置106の小型化が可能になる。
【0013】
本発明の他の局面に従うと、ガス供給設備10は、開閉弁102と、アクチュエータ104と、開弁装置106とを備える。開閉弁102はガスの流路を開閉する。アクチュエータ104は、開閉弁102の開放を制御する。開弁装置106は、アクチュエータ104に接続される。開弁装置106は、アクチュエータ104を駆動するための駆動用流体をアクチュエータ104に供給する。開閉弁102が、弁本体120と、弁座122と、弁体124と、ステム126と、弾性体128とを有する。弁本体120は、一次側流路200、一次側流路200の出口が設けられる弁室202、および、弁室202に連なる二次側流路204を有する。弁座122は、弁室202内の一次側流路200の出口に設けられる。弁体124は、弁座122に密着することで一次側流路200の出口を塞ぐ。ステム126は、弁体124を弁座122に押付ける。弾性体128は、ステム126に対して、弁体124を弁座122に押付ける方向の力を与える。アクチュエータ104が、シリンダ130と、ピストン132とを有する。シリンダ130は、ピストン132を収容する。ピストン132は、弁体124から離れる方向にステム126を駆動する。開弁装置106が、駆動用流体供給ライン230を有する。駆動用流体供給ライン230は、アクチュエータ104を駆動するための駆動用流体をアクチュエータ104に供給する。開弁装置106は、高速供給ライン232と、低速供給ライン234とをさらに備える。高速供給ライン232は、駆動用流体供給ライン230に連なる。高速供給ライン232は、駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。低速供給ライン234は、高速供給ライン232と並列に駆動用流体供給ライン230に連なる。低速供給ライン234は、高速供給ライン232による駆動用流体の供給速度よりも低い、開閉弁102の開放によるガスの温度上昇を抑制可能な速度で駆動用流体供給ライン230に駆動用流体を供給する。高速供給ライン232が、圧力制御弁250を有する。圧力制御弁250は、駆動用流体の圧力が所定の閉止圧力を超えると閉じる。この閉止圧力は、駆動用流体の圧力が弁座122と弁体124との間でガスの漏れが生じる圧力を下回る。
【0014】
高速供給ライン232からの駆動用流体の供給を途切れさせる際、開弁装置106はアクチュエータ104の動作を必要としない。アクチュエータ104の動作を必要としないため、高速供給ライン232から駆動用流体が供給されている期間のアクチュエータ104の動きを抑える緩衝機構を開弁装置106は必要としない。その結果、開弁装置106の小型化ひいてはガス供給設備10の小型化が可能になる。
【0015】
また、上述した弁体124がダイヤフラムであることが好ましい。この場合、開弁装置106は、追加供給ライン236をさらに備える。追加供給ライン236は、高速供給ライン232および低速供給ライン234と並列に駆動用流体供給ライン230に連なる。追加供給ライン236は、駆動用流体の圧力が所定の高速化圧力を超えると開く。高速化圧力は、ダイヤフラムと弁座122との隙間からガス漏れが生じる圧力よりも高い圧力である。
【0016】
駆動用流体の圧力が高速化圧力を超えるとき、ダイヤフラムと弁座122との隙間からガス漏れが生じている。ガス漏れが生じているとき、ダイヤフラムは、一次側流路200内のガスと二次側流路204に漏れたガスとから圧力を受ける。圧力を受けるので、ダイヤフラムは、ステム126を押す。ステム126がダイヤフラムに押されると、アクチュエータ104のピストン132も押される。ピストン132が押されると、シリンダ130内のガスの圧力が低下する。一方、駆動用流体の圧力が高速化圧力を超えると追加供給ライン236が開くので、駆動用流体供給ライン230を経てシリンダ130内にガスが流入する。ガスが流入するので、ピストン132が押されたことによるシリンダ130内のガスの圧力の低下は抑えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガス温度上昇の防止とダイヤフラム弁の開放に要する時間の短縮とに加え、小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例にかかるガス供給設備の構成を示す図である。
【図2】ダイヤフラム式開閉弁の断面図である。
【図3】エア式アクチュエータの断面図である。
【図4】本発明の第1変形例にかかる開弁装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2変形例にかかる開弁装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3変形例にかかる開弁装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
[ガス供給設備の構成]
図1は、本実施例にかかるガス供給設備10の構成を示す図である。本実施例において、ガス供給設備10は、ガスボンベ100と、ガスボンベ100に装着されるダイヤフラム式開閉弁102と、ダイヤフラム式開閉弁102に接続されるエア式アクチュエータ104と、エア式アクチュエータ104に接続される開弁装置106と、開弁装置106に接続される電磁式切換弁108と、これらを収容するシリンダーキャビネット110とを備える。電磁式切換弁108を励磁したり消磁したりすることで、供給源20から供給されるエア(エアに限らず、その他の種類の駆動用流体であってもよいことは言うまでもない)がエア式アクチュエータ104に流れたりエア式アクチュエータ104から大気中へエアが放出されたりする。本実施例の場合、ガスボンベ100の中の供給ガスはダイヤフラム式開閉弁102を経由して図示しない半導体製造設備に供給される。
【0021】
[ダイヤフラム式バルブの構成]
図2はダイヤフラム式開閉弁102の断面図である。ダイヤフラム式開閉弁102の構成を説明する。ダイヤフラム式開閉弁102は、弁本体120と、弁座122と、ダイヤフラム124と、ステム126と、皿ばね128とを有する。本実施例にかかる弁本体120はガスボンベ100の口にねじ込まれる。弁本体120の内部に一次側流路200と弁室202と二次側流路204とが形成されている。ガスボンベ100の中から出た供給ガスは一次側流路200を通過する。弁座122は一次側流路200の出口に設けられている。この出口は、弁室202の中に設けられている。このため、弁座122は弁室202の中に設けられていることとなる。ダイヤフラム124は、弁座122に密着することで一次側流路200の出口を塞ぐ。すなわち、ダイヤフラム124は、本実施例における弁体である。ステム126は、ダイヤフラム124を弁座122に押付ける。皿ばね128は、ステム126に対して、ダイヤフラム124を弁座122に押付ける方向の力を与える。なお、ダイヤフラム124を弁座122に押付ける方向の力を与えることができるのであれば、皿ばね128に代えてコイルばねその他の弾性体を用いてもよいことは言うまでもない。ダイヤフラム124が弁座122に押付けられていないとき、一次側流路200を通過した供給ガスは弁室202内に流入する。弁室202には二次側流路204が連なっている。このため、弁室202内の供給ガスは二次側流路204を通ってダイヤフラム式開閉弁102から出る。
【0022】
[エア式アクチュエータの構成]
図3はエア式アクチュエータ104の断面図である。エア式アクチュエータ104の構成を説明する。エア式アクチュエータ104は、シリンダ130と、ピストン132とを備える。シリンダ130はピストン132を収容する。本実施例にかかるピストン132は、上述したステム126に連結されている。ピストン132は、開弁装置106から供給されたエアの圧力により、ダイヤフラム124から離れる方向にステム126を駆動する。
【0023】
シリンダ130は複数の部材によって構成されている。それらの部材によって、シリンダ130の中には第1エア室210と第2エア室212とが形成されている。また、シリンダ130の中には連通通路214が形成されている。連通通路214は、第1エア室210と第2エア室212とを連通させる。この他、第1エア室210には図示しないエア流入路が設けられている。開弁装置106から供給されたエアはこのエア流入路を介して第1エア室210に流入する。また、シリンダ130は、コイルバネ216を有する。コイルバネ216は、ピストン132に力を加える。本実施例においては、このコイルバネ216がピストン132に与える力は、エアがピストン132に与える力に比べると極めて小さい。これにより、このコイルバネ216の機能は、エアの圧力が低下したときピストン132を押戻す機能にほぼ限定される。
【0024】
ピストン132は、第1プレート220と、第2プレート222と、連結部材224と、軸226とを有する。第1プレート220は第1エア室210内のエアから圧力を受ける。第2プレート222は第2エア室212内のエアから圧力を受ける。連結部材224はダイヤフラム式開閉弁102のステム126に連結される。軸226には第1プレート220と第2プレート222と連結部材224とが固定されている。これらは一体となって動く。
【0025】
[開弁装置の構成]
本実施例にかかる開弁装置106(図1参照)は、駆動用流体供給ライン230と、高速供給ライン232と、低速供給ライン234とを備える。駆動用流体供給ライン230は、上述したシリンダ130に接続される。駆動用流体供給ライン230は、エアをシリンダ130に供給する。高速供給ライン232は駆動用流体供給ライン230に連なる。高速供給ライン232は、電磁式切換弁108を開いた直後に、駆動用流体供給ライン230にエアを供給する。低速供給ライン234は、高速供給ライン232と並列に駆動用流体供給ライン230に連なる。低速供給ライン234も、ピストン132にかかる圧力が増加するよう、駆動用流体供給ライン230にエアを供給する。その供給速度は、高速供給ライン232によるエアの供給速度よりも低い、ダイヤフラム式開閉弁102の開放による供給ガスの温度上昇を抑制可能な速度である。具体的なエアの供給速度は、エア式アクチュエータ104の大きさなどに基づいて適宜定められる。
【0026】
高速供給ライン232は、圧力制御弁250と逆止弁252とを有する。圧力制御弁250はエアの圧力が所定の圧力を超えると閉じる。その結果、高速供給ライン232は、エアの圧力がその「所定の圧力」を超えると閉止することとなる。この「所定の圧力」は、エア式アクチュエータ104におけるピストン132の大きさ、および、ダイヤフラム式開閉弁102における皿ばね128がステム126に対して与える力の大きさに基づいて、適宜定められる。この「所定の圧力」は、後述する「微少漏れ」が生じる圧力を下回ることが必要である。本実施例では、この「所定の圧力」を「閉止圧力」と称する。逆止弁252は、圧力制御弁250に直列に接続される。逆止弁252は、エア式アクチュエータ104側のエアが電磁式切換弁108側へ逆流することを防止する。
【0027】
低速供給ライン234は、流量調整弁260と逆止弁262とを有する。流量調整弁260はエア式アクチュエータ104へ供給するエアの流量を制限する。本実施例にかかる流量調整弁260は、エアの流量を任意に設定できる。このため、低速供給ライン234によるエアの供給速度が、ダイヤフラム式開閉弁102の開放による供給ガスの温度上昇を抑制可能な速度より低くなるよう、流量調整弁260におけるエアの流量を予め設定しておく。逆止弁262は、流量調整弁260に並列となるよう設けられる。逆止弁262は、電磁式切換弁108側のエアがエア式アクチュエータ104側へ流れることを防止する。後述するように、エア式アクチュエータ104へエアを供給している間は電磁式切換弁108側のエアの圧力が高いので、エア式アクチュエータ104側から電磁式切換弁108側へエアが流れることはない。エア式アクチュエータ104側から電磁式切換弁108側へエアが流れるのは、電磁式切換弁108が開いて電磁式切換弁108側のエアの圧力が大気圧に等しくなったときである。
【0028】
[開弁装置の動作]
半導体製造設備のオペレータがその半導体製造設備に供給ガスを供給する際に本実施例にかかる開弁装置106を利用してダイヤフラム式開閉弁102をスローオープンさせるための手順を説明する。
【0029】
まず、オペレータは、電磁式切換弁108を励磁する。このとき低速供給ライン234におけるエアの流量は流量調整弁260によって制限されている。そのため、エアは主として高速供給ライン232を経由して駆動用流体供給ライン230へ流れる。駆動用流体供給ライン230に流入したエアはただちにそこを通過してエア式アクチュエータ104に入り、その中のピストン132を押上げる。ピストン132が押上げられるとエア式アクチュエータ104の連結部材224はダイヤフラム式開閉弁102のステム126に密着する。その結果、ピストン132の動きが停止する。しかしこの時のエアの圧力(上述した閉止圧力未満)ではダイヤフラム式開閉弁102に内蔵されているステム126を引上げることができない。この状態のまま、エアは低速供給ライン234と高速供給ライン232と駆動用流体供給ライン230とを経由してエア式アクチュエータ104に入り続ける。エアがエア式アクチュエータ104に入り続けるので、エア式アクチュエータ104内の気圧は上昇し続ける。
【0030】
その後、ピストン132にかかる圧力が閉止圧力になると圧力制御弁250が閉じる。これにより、高速供給ライン232を経由するエアの流れは止まる。一方、低速供給ライン234はエアを供給し続ける。そのため、エアがエア式アクチュエータ104にゆっくりと入り続ける。これにより、エア式アクチュエータ104内のピストン132にかかる圧力は徐々に大きくなる。ピストン132にかかる圧力が徐々に大きくなるため、ダイヤフラム式開閉弁102の皿ばね128によるステム126を押下げる力はピストン132によるステム126を押上げる力によって徐々に打消される。やがて、ピストン132の力と皿ばね128の力とが拮抗すると、ダイヤフラム式開閉弁102のダイヤフラム124が開く前に、そのダイヤフラム124と弁座122との隙間から供給ガスが漏れ始める。本実施例では、この状態を「微少漏れ」と称する。その間もエアがエア式アクチュエータ104にゆっくりと入り続ける。これにより、ダイヤフラム式開閉弁102の一次側流路200だけでなく二次側流路204にも供給ガスが入ることとなる。
【0031】
ダイヤフラム式開閉弁102の二次側流路204に供給ガスが十分入った頃、エア式アクチュエータ104内のピストン132にかかる圧力はさらに大きくなっている。このため、ダイヤフラム124はいずれ全開となる。
【0032】
次に、半導体製造設備への供給ガスの供給を緊急遮断するときの動作を説明する。緊急遮断が必要となったとき、オペレータは、電磁式切換弁108を消磁する。これにより、開弁装置106へのエア供給が停止する。また、開弁装置106よりも電磁式切換弁108側の部分の気圧は大気圧となる。そのため、エア供給開始直後のエア式アクチュエータ104内の気圧がまだ高くなっていない時期を除き、開弁装置106よりも電磁式切換弁108側の部分は開弁装置106よりもエア式アクチュエータ104側の部分より気圧が低くなる。そのため、開弁装置106よりもエア式アクチュエータ104側から電磁式切換弁108側へエアの逆流が生じる。このとき、エアは高速供給ライン232を経由しない。高速供給ライン232がそういった逆流を防止するための逆止弁252を有しているためである。エアは主に低速供給ライン234の逆止弁262を経由して逆流する。これにより、エア式アクチュエータ104内のピストン132を押上げる力は失われる。それが失われるので、ダイヤフラム式開閉弁102の皿ばね128によりステム126は押下げられる。コイルバネ216によりピストン132は押戻される。ステム126が押下げられるので、ダイヤフラム124は弁座122を塞ぐ。これにより、半導体製造設備への供給ガスの供給は遮断される。
【0033】
[本実施例にかかる開弁装置およびガス供給設備の効果の説明]
以上のようにして、本実施例にかかる開弁装置106ひいてはガス供給設備10は、ダイヤフラム式開閉弁102のダイヤフラム124と弁座122との隙間から供給ガスが微少漏れしない程度の力で、エア式アクチュエータ104内のピストン132を迅速に押上げる。その後、まずダイヤフラム124と弁座122との隙間から供給ガスを微少漏れさせ、ダイヤフラム式開閉弁102の二次側流路204に供給ガスを入れ、ダイヤフラム124を開く。このような手順を経ることにより、供給ガスが速く流れることを抑える。また、供給ガスが速く流れることを抑えることで、断熱圧縮によって供給ガスが発熱することも抑える。その結果、特に、ガスの発熱抑制と弁を開くための所要時間の短縮とを実現できる。
【0034】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。例えば、上述した開弁装置106はエア式アクチュエータ104に内蔵されていてもよい。また、高速供給ライン232と低速供給ライン234とのうち一部が一体化されていてもよい。その他の様々な変形例も本発明の範囲に含まれる。以下、そのような変形例の一部を説明する。
【0035】
<第1変形例>
図4は、本発明の第1変形例にかかる開弁装置140の構成を示す図である。本変形例にかかる開弁装置140は、開弁装置106に代えて、ガス供給設備10に含まれるものである。本変形例にかかる開弁装置140は、追加供給ライン236をさらに備える。追加供給ライン236は、高速供給ライン232および低速供給ライン234とに並列に駆動用流体供給ライン230に連なる。追加供給ライン236は、ばね付き逆止弁270を備える。このばね付き逆止弁270は、上述した微少漏れが生じる圧力より高い所定の圧力(ここでは「高速化圧力」と称する)で開く。そのため、追加供給ライン236は、エアの圧力が高速化圧力超えると開くこととなる。仮にその高速化圧力を0.3MPaとし、上述した閉止圧力を0.2MPaとすると、気圧が0MPaを超え0.2MPa以下ならばエアは主として高速供給ライン232を流れる。気圧が0.2MPaを超え0.3MPa以下ならば、エアは低速供給ライン234を流れる。気圧が0.3MPaを超え供給源20におけるエアの元圧(たとえば0.5MPa)以下ならば、エアのほとんどは追加供給ライン236を経由する。これにより、微少漏れが生じてダイヤフラム式開閉弁102の二次側空間に供給ガスが十分流れたことにより、ダイヤフラムがステム126とピストン132とを押し、シリンダ130内のエアの気圧が低下する際、シリンダ130内にエアが補充されることとなる。
【0036】
<第2変形例>
図5は、本発明の第2変形例にかかる開弁装置142の構成を示す図である。本変形例にかかる開弁装置142は、開弁装置106に代えて、ガス供給設備10に含まれるものである。本変形例にかかる開弁装置142は、ラインフィルタ272を備える。ラインフィルタ272は、電磁式切換弁108と直列に接続される。これにより、エアの清浄度が不明確であると予測される場合とパーティクルが大量に流れると予想される場合とに、流量調整弁260の目詰まりを予防できる。
【0037】
<第3変形例>
図6は、本発明の第3変形例にかかる開弁装置144の構成を示す図である。本変形例にかかる開弁装置144は、開弁装置106に代えて、ガス供給設備10に含まれるものである。本変形例にかかる開弁装置144は、予備減圧弁274を備える。予備減圧弁274は、電磁式切換弁108と直列に接続される。これにより、開弁装置144に供給されるエアの気圧が不安定な場合にも、高速供給ライン232と低速供給ライン234とに供給されるエアの気圧を安定化させることができる。エアの気圧を安定化させることができるので、開弁装置144の動作を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0038】
10…ガス供給設備
20…供給源
100…ガスボンベ
102…ダイヤフラム式開閉弁
104…エア式アクチュエータ
106,140,142,144…開弁装置
108…電磁式切換弁
110…シリンダーキャビネット
120…弁本体
122…弁座
124…ダイヤフラム
126…ステム
128…弾性体
130…シリンダ
132…ピストン
200…一次側流路
202…弁室
204…二次側流路
210…第1エア室
212…第2エア室
214…連通通路
216…コイルバネ
220…第1プレート
222…第2プレート
224…連結部材
226…軸
230…駆動用流体供給ライン
232…高速供給ライン
234…低速供給ライン
236…追加供給ライン
250…圧力制御弁
252,262…逆止弁
260…流量調整弁
270…ばね付き逆止弁
272…ラインフィルタ
274…予備減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流れる流路を開閉する開閉弁の開放を制御するアクチュエータに接続され、前記アクチュエータを駆動するための駆動用流体を前記アクチュエータに供給する駆動用流体供給ラインを備える開弁装置であって、
前記駆動用流体供給ラインに連なり、前記駆動用流体供給ラインに前記駆動用流体を供給する高速供給ラインと、
前記高速供給ラインと並列に前記駆動用流体供給ラインに連なり、前記高速供給ラインによる前記駆動用流体の供給速度よりも低い、前記開閉弁の開放による前記ガスの温度上昇を抑制可能な速度で前記駆動用流体供給ラインに前記駆動用流体を供給する、低速供給ラインとをさらに備え、
前記高速供給ラインが圧力制御弁を有し、
前記圧力制御弁が、前記開閉弁において前記ガスの漏れが生じる圧力を下回る所定の閉止圧力を前記駆動用流体の圧力が超えると、閉じることを特徴とする、開弁装置。
【請求項2】
ガスの流路を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の開放を制御するアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続され、前記アクチュエータを駆動するための駆動用流体を前記アクチュエータに供給する開弁装置とを備え、
前記開閉弁が、
一次側流路、前記一次側流路の出口が設けられる弁室、および、前記弁室に連なる二次側流路を有する弁本体と、
前記弁室内の前記一次側流路の出口に設けられる弁座と、
前記弁座に密着することで前記一次側流路の出口を塞ぐ弁体と、
前記弁体を前記弁座に押付けるステムと、
前記ステムに対して、前記弁体を前記弁座に押付ける方向の力を与える弾性体と有し、
前記アクチュエータが、
前記弁体から離れる方向に前記ステムを駆動するピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダとを有し、
前記開弁装置が、前記アクチュエータを駆動するための駆動用流体を前記アクチュエータに供給する駆動用流体供給ラインを有する、ガス供給設備であって、
前記開弁装置が、
前記駆動用流体供給ラインに連なり、前記駆動用流体供給ラインに前記駆動用流体を供給する高速供給ラインと、
前記高速供給ラインと並列に前記駆動用流体供給ラインに連なり、前記高速供給ラインによる前記駆動用流体の供給速度よりも低い、前記開閉弁の開放による前記ガスの温度上昇を抑制可能な速度で前記駆動用流体供給ラインに前記駆動用流体を供給する、低速供給ラインとをさらに備え、
前記高速供給ラインが圧力制御弁を有し、
前記圧力制御弁が、前記駆動用流体の圧力が前記弁座と前記弁体との間で前記ガスの漏れが生じる圧力を下回る所定の閉止圧力を超えると閉じることを特徴とする、ガス供給設備。
【請求項3】
前記弁体がダイヤフラムであり、
前記開弁装置は、前記高速供給ラインおよび前記低速供給ラインと並列に前記駆動用流体供給ラインに連なる追加供給ラインをさらに備え、
前記追加供給ラインが、前記ダイヤフラムと前記弁座との隙間からガス漏れが生じる圧力よりも高い所定の高速化圧力を前記駆動用流体の圧力が超えると開くことを特徴とする、請求項2に記載のガス供給設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−57720(P2012−57720A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201619(P2010−201619)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】