説明

関数発生回路

【課題】水晶振動子を振動させるための制御信号の変曲点が製造ばらつきによってずれることを抑制できる、関数発生回路を提供すること。
【解決手段】周囲温度に応じて、水晶振動子35を振動させる発振回路30の制御電圧Vcを出力する関数発生回路であって、周囲温度の検出電圧を1次の温度特性で出力する温度検出回路2と、0次成分発生回路4の出力と1次成分発生回路5の出力と3次成分発生回路16の出力とを加算し、且つ、2次成分発生回路11の出力を加算又は減算することを切り替えて、制御電圧Vcを生成する加減算回路12とを備え、2次成分発生回路11が、制御電圧Vcの変曲点における温度を補正する変曲点温度補正回路を有する、関数発生回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子を振動させる発振回路の制御信号を出力する関数発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、水晶振動子35を振動させる発振回路30の制御電圧Vcを出力する関数発生回路として温度補償回路20を備える温度補償型水晶発振器(TCXO)50のブロック図である。TCXO50は、集積回路(IC)で構成されている。TCXO50に用いられるATカットの水晶振動子35は、その発振周波数fの温度特性として、図2に示されるような3次曲線の温度特性を持っている。図2の縦軸は、3次曲線の変曲点の温度における固有共振周波数をf0とするとき、固有共振周波数f0に対する温度変化に伴う固有共振周波数の周波数誤差(Δf/f0)を表す。つまり、水晶振動子35の発振周波数fの温度特性は、下記の式(1)の3次関数
f=a(T−T0)+b(T−T0)+c ・・・(1)
によって表される。Tは温度、T0は3次曲線の変曲点の温度(基準中心温度)、aは3次の係数,bは温度特性の傾き係数,cは発振周波数のオフセット係数を表している。
【0003】
この発振周波数fの温度変化に伴う変動を抑えるため、発振回路30には、周囲温度Tに応じて変化する制御電圧Vcが印加されることによって発振周波数fを調整可能な可変容量素子31,32が使用されている。温度補償回路20は、周囲温度Tに基づいて生成した制御電圧Vcを可変容量素子31,32に印加することによって、水晶振動子35の発振周波数fの温度特性が相殺され、水晶振動子35の温度変化による発振周波数fの変動を補償している。
【0004】
温度補償回路20によって生成される制御電圧Vcは、3次成分発生回路6、1次成分発生回路5、0次成分発生回路4のそれぞれで作成された電圧を加算することにより得られ、下記の式(2)の3次関数
Vc=α(T−T0)+β(T−T0)+γ ・・・(2)
によって近似される。αは3次項の係数、βは1次項の係数、γは0次項の係数である。T0を用いて3次関数を定義することにより、式(2)のように2次項を省略できるため、温度補償回路20の回路規模を縮小できる。この式(2)内のα,β,γ及びT0の調整によって、水晶振動子35の発振周波数fの温度変化による変動が補償される。
【0005】
T0の調整は、T0調整回路3によって行われる。T0調整回路3は、式(2)内のT0を、水晶振動子35自体の温度特性によって定まる変曲点の温度に一致するように調整する。
【0006】
なお、関数発生回路の先行技術文献として、特許文献1,2,3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4070139号公報
【特許文献2】特開2007−325033号公報
【特許文献3】特開平8−116214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、T0調整回路3による調整を行っても、関数発生回路等の製造ばらつきによって、図3(a)(b)に示されるように、関数発生回路によって実際に生成された制御電圧Vcの変曲点における温度がT0からT0’にずれてしまうおそれがある。このような製造ばらつきによるT0のずれは、制御電圧Vcによって補償された後の発振周波数fの中に、図3(c)に示されるような2次成分として残ってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、水晶振動子を振動させるための制御信号の変曲点が製造ばらつきによってずれることを抑制できる、関数発生回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る関数発生回路は、
周囲温度に応じて、水晶振動子を振動させる発振回路の制御信号を出力する関数発生回路であって、
周囲温度の検出電圧を1次の温度特性で出力する温度検出回路と、
前記制御信号の0次成分を発生させる0次成分発生回路と、
前記制御信号の1次成分を発生させる1次成分発生回路と、
前記制御信号の2次成分を発生させる2次成分発生回路と、
前記制御信号の3次成分を発生させる3次成分発生回路と、
前記0次成分発生回路の出力と前記1次成分発生回路の出力と前記3次成分発生回路の出力とを加算し、且つ、前記2次成分発生回路の出力を加算又は減算することを切り替えて、前記制御信号を生成する加減算回路とを備え、
前記2次成分発生回路が、前記制御信号の変曲点における温度を補正する変曲点温度補正回路を有する、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る関数発生回路は、
周囲温度に応じて、水晶振動子を振動させる発振回路の制御信号を出力する関数発生回路であって、
周囲温度の検出電圧を1次の温度特性で出力する温度検出回路と、
前記制御信号の0次成分を発生させる0次成分発生回路と、
前記制御信号の1次成分を発生させる1次成分発生回路と、
前記制御信号の2次成分を発生させる2次成分発生回路と、
前記制御信号の3次成分を発生させる3次成分発生回路と、
前記3次成分よりも高次の成分を発生させる高次成分発生回路と、
前記0次成分発生回路の出力と前記1次成分発生回路の出力と前記3次成分発生回路の出力と前記高次成分発生回路の出力とを加算し、且つ、前記2次成分発生回路の出力を加算又は減算することを切り替えて、前記制御信号を生成する加減算回路とを備え、
前記2次成分発生回路が、前記制御信号の変曲点における温度を補正する変曲点温度補正回路を有する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水晶振動子を振動させるための制御信号の変曲点が製造ばらつきによってずれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】温度補償回路20を関数発生回路として備える温度補償型水晶発振器(TCXO)50のブロック図である。
【図2】発振周波数fの補正についての説明図である。
【図3】発振周波数fの2次成分についての説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である温度補償型水晶発振器(TCXO)100のブロック図である。
【図5A】周波数誤差の温度特性を示した図である。
【図5B】周波数誤差の温度特性を示した図である。
【図6A】高温領域と低温領域の周波数誤差の補正についての説明図である。
【図6B】高温領域と低温領域の周波数誤差の補正についての説明図である。
【図7】補正電圧成分の傾き角度の調整についての説明図である。
【図8】補正電圧成分の傾き変化点の位置調整についての説明図である。
【図9】3次成分発生回路16と2次成分発生回路11と補正項回路10の具体的な構成図である。
【図10】2次成分発生回路11の具体的な構成図である。
【図11】電流I1〜I4,IL,IH,検出電圧VT,合成電流Iout1の温度特性を示す。
【図12】制御電圧Vcの傾き角度の調整についての説明図である。
【図13】制御電圧Vcの傾き変化点の位置調整についての説明図である。
【図14】DAコンバータ13dの一例を示した回路図である。
【図15】本発明の第2の実施形態である温度補償型水晶発振器(TCXO)200のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。図4は、本発明の第1の実施形態である温度補償型水晶発振器(TCXO)100のブロック図である。図1と同様の構成については、その説明を省略する。TCXO100は、集積回路(IC)で構成されている。
【0015】
TCXO100は、温度補償回路21と、ATカットの水晶振動子35を振動させる発振回路30と、メモリ40とを備える。温度補償回路21は、発振回路30の制御電圧Vcを出力する関数発生回路である。発振回路30は、水晶振動子35が入出力部間に並列接続されたCMOSインバータ33と、CMOSインバータ33の入力部とグランドとの間に接続された可変容量素子31と、CMOSインバータ33の出力部とグランドとの間に接続された可変容量素子32と、CMOSインバータ33の入出力部間に並列接続された抵抗34とを備える。可変容量素子31,32の具体例として、可変容量ダイオード(バリキャップ)が挙げられる。発振回路30は、可変容量素子31,32のそれぞれの両端に印加される制御電圧Vcに応じて、発振周波数fを端子FOUTから出力する。メモリ40は、温度補償回路21が上記の式(2)内のα,β,γ及びT0を算出するために必要なデータを記憶する装置である。メモリ40内のデータは、CLK端子とDATA端子を介して、TCXO100の外部から書き換え可能である。メモリ40には、製品出荷前の個々の製品毎に調整されたデータが記憶される。
【0016】
なお、水晶振動子35は、図4の場合、端子XT1,XT2を介してTCXO100に外付けされている。また、水晶振動子35及び発振回路30の構成は、上記の式(1)によって表される温度特性を有するものであれば、図示の構成に限定されない。
【0017】
温度補償回路21は、基準電圧発生回路1、温度検出回路2、T0調整回路3、0次成分発生回路4、1次成分発生回路5、3次成分発生回路16、2次成分発生回路11、加減算器12を備える。
【0018】
基準電圧発生回路1は、端子GNDのグランド電位を基準に、端子VDDから入力される直流電源電圧をレギュレートすることによって、基準電圧Vrefを生成する。基準電圧発生回路1によって生成された基準電圧Vrefに基づいて、電圧値が互いに異なる複数の一定の参照電圧(後述の参照電圧V1等)が生成される。これらの参照電圧は、例えば、基準電圧Vrefを抵抗によって分圧する抵抗分割回路によって生成される。
【0019】
温度検出回路2は、発振回路35を含むTCXO100の温度を周囲温度Tとして検出し、検出された周囲温度Tに応じた電圧を周囲温度Tの検出電圧として1次の温度特性(特に、1次の負の温度特性)で出力する。温度検出回路2は、例えば、周囲温度Tの増加に対して単調減少する1次の負の温度特性で変化する電圧を周囲温度Tの検出電圧VTとして出力する。温度検出回路2は、水晶振動子35の温度を検出するものでもよい。
【0020】
T0調整回路3は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、式(2)内のT0を、水晶振動子35自体の温度特性によって定まる変曲点の温度に一致するように調整する。
【0021】
0次成分発生回路4は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、制御電圧Vcの0次成分Vc0を生成する。1次成分発生回路5は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、制御電圧Vcの1次成分Vc1を生成する。3次成分発生回路16は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、制御電圧Vcの3次成分Vc3を生成する。2次成分発生回路11は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、制御電圧Vcの2次成分Vc2を生成する。加減算器12は、0次成分Vc0と1次成分Vc1と3次成分Vc3との加算値に対して、2次成分Vc2を加算又は減算のいずれかを行って得られる制御電圧Vcを発振回路30に出力する。
【0022】
3次成分発生回路16は、補正項回路10を備える。図4の場合、補正項回路10は、3次成分Vc3よりも高精度な補正をする3次成分補正回路に相当する。補正項回路10は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、制御電圧Vcの3次成分Vc3よりも高次の電圧成分を生成する高次成分発生回路である。従来のTCXOは−30〜85℃の温度範囲で温度補償を行っていたが、近年、TCXOの温度補償範囲の拡大が要求されている。水晶振動子は、電極接着時の接着剤の付き方等によって、図5A,5Bに示されるように、高温領域と低温領域で3次関数では充分に近似されない周波数変化を示すものである。そのため、従来の補償温度範囲を広げた場合、従来の3次関数での近似補正では、図6A(a),図6B(a)のように、高温領域と低温領域で周波数誤差(△f/f0)が大きくなり、補償精度が低下してしまう。そこで、温度補償回路21は、3次関数近似での周波数誤差が所定の基準値以上の低温領域及び高温領域において、その両領域での発振周波数の変動を補償するための補正項回路10を備えている。
【0023】
補正項回路10は、例えば、80℃以上の高温領域と−30℃以下の低温領域に残った周波数偏差を打ち消す図6A(b),図6B(b)に示される補正電圧成分を発生させるための補正信号を出力する補正電圧発生回路7を備える(図4参照)。補正電圧発生回路7は、−30〜80℃の通常の温度領域では補正電圧成分を一定値に調整する補正信号を出力し、図6A(a)に示される周波数誤差の場合には、80℃以上の高温領域では高温になるほど補正電圧成分を大きな値に調整する高温側補正信号を出力し、−30℃以下の低温領域では低温になるほど補正電圧成分を小さな値に調整する低温側補正信号を出力する。一方、図6B(a)に示される周波数誤差の場合には、80℃以上の高温領域では高温になるほど補正電圧成分を小さな値に調整する高温側補正信号を出力し、−30℃以下の低温領域では低温になるほど補正電圧成分を大きな値に調整する低温側補正信号を出力する。したがって、補正電圧発生回路7によって、図6A(c),図6B(c)に示されるように、高温領域と低温領域での温度補償の精度が向上する。
【0024】
また、補正項回路10は、補正電圧発生回路7によって生成される補正電圧成分の高温領域及び低温領域での傾き度合を調整可能な傾き度合調整信号を出力する傾き度合調整回路8を備える。傾き度合調整回路8は、例えば、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、図7に示されるように、高温領域と低温領域の補正電圧成分の傾き角度を調整する。したがって、傾き度合調整回路8によって、高温領域と低温領域での制御電圧Vcの傾き度合の微調整が可能となるので、高温領域と低温領域での発振周波数fの補正精度が向上する。
【0025】
また、補正項回路10は、補正電圧発生回路7によって生成される補正電圧成分の傾き角度が急変する傾き変化点の位置を調整可能な位置補正信号を出力することによって、補正電圧発生回路7によって生成される補正電圧成分を発生させる温度領域を調整する補正領域調整回路9を備える。補正領域調整回路9は、例えば、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、図8に示されるように、低温側の傾き変化点と高温側の傾き変化点の一方又は両方の位置を調整する。また、補正領域調整回路9は、例えば、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、図8に示されるように、低温側の傾き変化点と高温側の傾き変化点との差を一定のまま、低温側と高温側の両方の傾き変化点の位置を調整する。したがって、補正領域調整回路9によって、高温領域と低温領域での制御電圧Vcの傾き変化点の微調整が可能となるので、高温領域と低温領域での発振周波数fの補正精度が向上する。
【0026】
図9は、3次成分発生回路16と2次成分発生回路11と補正項回路10の具体的な構成図である。図9には、補正項回路10の構成要素として、補正電圧発生回路7(7A,7B)、傾き度合調整回路8、補正領域調整回路9(9A,9B)が示されている。図9において、Q*は、トランジスタを表す。トランジスタは、MOS型でもバイポーラ型でもよい。なお、基準電圧発生回路1、温度検出回路2、T0調整回路3、0次成分発生回路4、1次成分発生回路5は、従来と同じでよいため、それらの具体的な回路構成や加減算の説明は省略する。
【0027】
3次成分発生回路16は、4つの差動増幅回路16a〜16dと、差動増幅回路16a〜16dの各出力信号を合成した信号を出力する信号合成回路17を備える。差動増幅路16a,16bは、変曲点温度T0よりも低温側の通常温度領域において、制御電圧Vcの3次成分Vc3を調整するための低温側調整電流I1,I2を出力する。差動増幅回路16c,16dは、変曲点温度T0よりも高温側の通常温度領域において、制御電圧Vcの3次成分Vc3を調整するための高温側調整電流I3,I4を出力する。
【0028】
差動増幅回路16aは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと基準電圧Vrefに基づいて生成された参照電圧V1とが入力される差動対(Q1,Q2)を備える。差動増幅回路16bは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと基準電圧Vrefに基づいて生成された参照電圧V2とが入力される差動対(Q3,Q4)を備える。差動増幅回路16cは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと基準電圧Vrefに基づいて生成された参照電圧V3とが入力される差動対(Q5,Q6)を備える。差動増幅回路16dは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと基準電圧Vrefに基づいて生成された参照電圧V4とが入力される差動対(Q7,Q8)を備える。
【0029】
一方、低温側補正電圧発生回路7Aは、通常温度領域よりも低温の領域において、制御電圧Vcを補正するための低温側補正電流ILを出力する差動増幅回路16lを備える。低温側補正電流ILの合成先は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、スイッチSW5によって切り替えられる。低温側補正電流ILの出力の要否は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて切替可能なスイッチSW1によって制御される。したがって、スイッチSW1をオンすることによって、低温側補正電流ILの出力が停止され、低温側補正電圧発生回路7Aの機能が停止する。逆に、スイッチSW1をオフすることによって、低温側補正電流ILが出力され、低温側補正電圧発生回路7Aが機能する。また、高温側補正電圧発生回路7Bは、通常温度領域よりも高温の領域において、制御電圧Vcを補正するための高温側補正電流IHを出力する差動増幅回路16hを備える。高温側補正電流IHの合成先は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、スイッチSW6によって切り替えられる。高温側補正電流IHの出力の要否は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて切替可能なスイッチSW2によって制御される。したがって、スイッチSW2をオンすることによって、高温側補正電流IHの出力が停止され、高温側補正電圧発生回路7Bの機能が停止する。逆に、スイッチSW2をオフすることによって、高温側補正電流IHが出力され、高温側補正電圧発生回路7Bが機能する。
【0030】
差動増幅回路16lは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと低温側補正領域調整回路9Aから出力された参照電圧VLとが入力される差動対(QL1,QL2)を備える。差動増幅回路16hは、温度検出回路2から出力された検出電圧VTと高温側補正領域調整回路9Bから出力された参照電圧VHとが入力される差動対(QH1,QH2)を備える。
【0031】
また、傾き度合調整回路8は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、差動増幅回路16lの差動対(QL1,QL2)及び差動増幅回路16hの差動対(QH1,QH2)に流す定電流の電流値を調整可能な定電流調整回路13aを備える。定電流調整回路13aは、例えば、DAコンバータと該DAコンバータの出力が入力されるトランジスタQL3とによって、差動対(QL1,QL2)に流す定電流の電流値を調整し、DAコンバータと該DAコンバータの出力が入力されるトランジスタQH3とによって、差動対(QH1,QH2)に流す定電流の電流値を調整する。
【0032】
また、低温側補正領域調整回路9Aは、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、例えばDAコンバータによって、参照電圧VLの電圧値を調整可能な電圧調整回路13bを備える。高温側補正領域調整回路9Bは、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、例えばDAコンバータによって、参照電圧VHの電圧値を調整可能な電圧調整回路13cを備える。
【0033】
信号合成回路17は、各差動増幅回路の出力電流を合成した電流Iout1を生成してDAコンバータ13dに出力する一対のトランジスタ(Q9,Q10)で構成されたカレントミラーを備える。
【0034】
図11は、電流I1〜I4,IL,IH,検出電圧VT,合成電流Iout1の温度特性を示す。変曲点の温度T0は、温度T2とT3の間の温度である。各参照電圧及び各温度の大小関係は図示の通りである。参照電圧VHは、3次成分発生回路16の差動増幅回路16a〜16dに入力される参照電圧V1〜V4のいずれよりも低い。また、参照電圧VLは、参照電圧V1〜V4のいずれよりも高い。
【0035】
参照電圧V2は、変曲点の温度T0よりも低い温度T2を、検出温度VTの1次の負の温度特性を表す1次近似式に代入して求められる電圧である。参照電圧V1,VLについても同様である。また、参照電圧V3は、変曲点の温度T0よりも高い温度T3を、検出温度VTの1次の負の温度特性を表す1次近似式に代入して求められる電圧である。参照電圧V4,VHについても同様である。
【0036】
したがって、合成電流Iout1に等価な電圧に変換する電圧変換手段によって、制御電圧Vcの電圧成分として、3次成分が生成される。この電圧変換手段として、図9には、DAコンバータ13d及び増幅回路14が開示されている。増幅回路14は、演算増幅器14aと、演算増幅器14aの反転入力端子と出力端子とを接続する抵抗14bとを備える。演算増幅器14aの反転入力端子には、DAコンバータ13dの出力電圧(出力電流)が入力される。演算増幅器14aの非反転入力端子には、参照電圧Vdcが入力される。DAコンバータ13dの出力値は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、調整される。図14は、DAコンバータ13dの一例を示した回路図である。図9等に示される13d以外の他のDAコンバータも、図14と同様の構成であってもよい。
【0037】
また、定電流調整回路13aによって、差動増幅回路16lの差動対(QL1,QL2)及び/又は差動増幅回路16hの差動対(QH1,QH2)に流す定電流の電流値を調整することによって、図12に示されるように、制御電圧Vcの傾き角度を調整することができる。また、電圧調整回路13b,13cによって、参照電圧VHとVLの一方又は両方を調整することによって、図13に示されるように、制御電圧Vcの傾き変化点の位置を調整することができる。
【0038】
このように、補正項回路10を追加することによって、精度の良い温度補償が可能な温度領域を低温側にも高温側にも広げることができる。
【0039】
ところで、図4に示されるように、温度補償回路21は、2次成分発生回路11を備えている。温度補償回路21は、3次成分発生回路16と2次成分発生回路11が共用の差動増幅回路を含んでいる点を特徴としている。
【0040】
図10は、2次成分発生回路11の具体的な構成図である。3次成分発生回路16と2次成分発生回路11が共用する差動増幅回路は、図9において既に示した差動増幅回路16bと16cに相当する。2次成分発生回路11は、差動増幅回路16bから出力される低温側調整電流I2と差動増幅回路16cから出力される高温側出力電流I3とを足した第1の合成電流と、その第1の合成電流に対して逆向きで電流値が等しい第2の合成電流とを選択的に切り替えて出力する電流出力回路18を備える。なお、図10において、Q*は、トランジスタを表す。トランジスタは、MOS型でもバイポーラ型でもよい。
【0041】
電流出力回路18は、スイッチSW3,4が共にオンしているとき、トランジスタQ19,Q20から電流が流れずにトランジスタQ21,Q22から電流が流れるので、第1の合成電流Iout2(=I2+I3)を出力する。また、電流出力回路18は、スイッチSW3,4が共にオフしているとき、トランジスタQ19,Q20から電流が流れる一方でトランジスタQ21,Q22から電流が流れないので、第2の合成電流Iout2(=−(I2+I3))を出力する。スイッチSW3,4のオン/オフは、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、切り替えられる。
【0042】
したがって、合成電流Iout2に等価な電圧に変換する電圧変換手段によって、制御電圧Vcの電圧成分として、2次成分が生成される。この電圧変換手段として、図10には、DAコンバータ13e及び増幅回路14が開示されている。DAコンバータ13eの出力値は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、調整される。
【0043】
つまり、2次成分発生回路11によって、制御電圧Vcの2次成分を生成することができる。そして、スイッチSW3,4のオン/オフによって、図10に示されるように、2次成分の極性を反転させることができる。つまり、スイッチSW3,4のオン/オフによって、2次成分の加算と減算を切り替えることができる。また、2次成分の値をDAコンバータ13eによって調整できる。
【0044】
このように、T0調整を行うT0調整回路3とは別に、2次成分発生回路11を追加することにより、ICの製造ばらつきによって上述の2次成分のずれ(図3(c)参照)として生ずるT0のずれを精度良く取り除くことができる。すなわち、T0調整回路3によって調整されるT0成分は水晶振動子35自体の温度特性から設計的に決められる値であるが、T0調整回路3による調整を行っても、制御電圧Vcの変曲点の温度T0がプロセス変動で高温側又は低温側にばらつく場合がある。2次成分発生回路11は、このばらつきを、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、T0’がT0に一致するように補償する回路である。メモリ40には、製品出荷前に、個々の製品毎に、T0’をT0に一致させる調整データが記憶される。また、差動増幅回路を3次成分発生回路16と2次成分発生回路11が共用する構成を有しているので、2次成分発生回路11を追加したとしても、回路規模の増大を抑えることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0046】
例えば、図15は、本発明の第2の実施形態である温度補償型水晶発振器(TCXO)200のブロック図である。図15の場合、補正項回路10は、3次成分発生回路16によって生成される3次成分Vc3よりも高次の成分VcXを発生させる高次成分発生回路に相当する。図15の場合の3次成分発生回路16は、補正電圧発生回路7と傾き度合調整回路8と補正領域調整回路9が含まれていない点で、図4の場合の3次成分発生回路16と異なる。補正項回路10は、メモリ40に記憶されたデータに基づいて、高次の電圧成分VcXを生成する。加減算器12は、0次成分Vc0と1次成分Vc1と3次成分Vc3と高次成分VcXとの加算値に対して、2次成分Vc0の加算又は減算のいずれかの演算を行って、制御電圧Vcを発振回路30に出力する。他の構成は、図4のTCXO100と同様のため、その説明を省略する。この第2の実施形態も、上述の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 基準電圧発生回路
2 温度検出回路
3 T0調整回路
4 0次成分発生回路
5 1次成分発生回路
6 3次成分発生回路
7A 低温側補正電圧発生回路
7B 高温側補正電圧発生回路
8 傾き度合調整回路
9 補正領域調整回路
10 補正項回路
11 2次成分発生回路
12 加減算器
13a〜13d DAC
14 増幅器
16 3次成分発生回路
16a〜16d 差動増幅回路
17 信号合成回路
18 電流出力回路
20,21 温度補償回路
30 発振回路
31,32 可変容量素子
35 水晶振動子
40 メモリ
50,100,200 温度補償型水晶発振器(TCXO)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度に応じて、水晶振動子を振動させる発振回路の制御信号を出力する関数発生回路であって、
周囲温度の検出電圧を1次の温度特性で出力する温度検出回路と、
前記制御信号の0次成分を発生させる0次成分発生回路と、
前記制御信号の1次成分を発生させる1次成分発生回路と、
前記制御信号の2次成分を発生させる2次成分発生回路と、
前記制御信号の3次成分を発生させる3次成分発生回路と、
前記0次成分発生回路の出力と前記1次成分発生回路の出力と前記3次成分発生回路の出力とを加算し、且つ、前記2次成分発生回路の出力を加算又は減算することを切り替えて、前記制御信号を生成する加減算回路とを備え、
前記2次成分発生回路が、前記制御信号の変曲点における温度を補正する変曲点温度補正回路を有する、ことを特徴とする、関数発生回路。
【請求項2】
前記3次成分発生回路が、前記3次成分よりも高精度な補正をする3次成分補正回路を備える、請求項1に記載の関数発生回路。
【請求項3】
前記3次成分補正回路は、前記制御信号の極値点における温度よりも高い第1の温度領域及び前記制御信号の極値点における温度よりも低い第2の温度領域で、前記3次成分の補正成分を発生させる、請求項2に記載の関数発生回路。
【請求項4】
前記補正成分の傾き度合を調整する傾き度合調整回路を備える、請求項3に記載の関数発生回路。
【請求項5】
前記補正成分を発生させる温度領域を調整する補正領域調整回路を備える、請求項3又は4に記載の関数発生回路。
【請求項6】
周囲温度に応じて、水晶振動子を振動させる発振回路の制御信号を出力する関数発生回路であって、
周囲温度の検出電圧を1次の温度特性で出力する温度検出回路と、
前記制御信号の0次成分を発生させる0次成分発生回路と、
前記制御信号の1次成分を発生させる1次成分発生回路と、
前記制御信号の2次成分を発生させる2次成分発生回路と、
前記制御信号の3次成分を発生させる3次成分発生回路と、
前記3次成分よりも高次の成分を発生させる高次成分発生回路と、
前記0次成分発生回路の出力と前記1次成分発生回路の出力と前記3次成分発生回路の出力と前記高次成分発生回路の出力とを加算し、且つ、前記2次成分発生回路の出力を加算又は減算することを切り替えて、前記制御信号を生成する加減算回路とを備え、
前記2次成分発生回路が、前記制御信号の変曲点における温度を補正する変曲点温度補正回路を有する、ことを特徴とする、関数発生回路。
【請求項7】
前記高次成分発生回路は、前記制御信号の極値点における温度よりも高い第1の温度領域及び前記制御信号の極値点における温度よりも低い第2の温度領域で、前記高次の成分を発生させる、請求項6に記載の関数発生回路。
【請求項8】
前記高次の成分の傾き度合を調整する傾き度合調整回路を備える、請求項6又は7に記載の関数発生回路。
【請求項9】
前記高次の成分を発生させる温度領域を調整する補正領域調整回路を備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の関数発生回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の関数発生回路と、前記発振回路とを備える、水晶発振回路。
【請求項11】
請求項10に記載の水晶発振回路と、前記水晶振動子とを備える、水晶発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−119781(P2012−119781A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265630(P2010−265630)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【特許番号】特許第4715972号(P4715972)
【特許公報発行日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】