防水性・透湿性の靴
甲革(11)を備えてなり、この甲革が、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である甲革膜(12)によって、少なくとも一部分で裏張りされている防水性・透湿性の靴。甲革膜(12)は、液体状態にある水に対して不透過性である底革(13)へ密封状に接続されている。この密封状接続は、組付中底(15)の中に含まれた密封要素(14)によってもたらされている。密封要素(14)は、にかわ、密封用接着剤、あるいは底革を設けるための高分子材料のような密封材料に関して透過性であり、また、甲革膜(12)を把持する密封材料で含浸されているとともに、底革(13)へ接続されているか、あるいは、それとともに単一体を形成し、底革(13)を甲革膜(12)へ密封している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防水性・透湿性の靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の快適性は、解剖学的に適合する諸特性を修正することに関連があるだけでなく、発汗により靴の内部に発生した水蒸気の外方透過を修正することにも関連がある、という事実が現在知られている。
【0003】
伝統的に、透湿性の靴は、なめし革のような天然材料あるいは同等製造物を用いるものであるが、しかしながら、それらの透湿特性のために、雨天あるいは悪天候のときには、良好な防水性が保証されず、また、実際に水を比較的たやすく吸収する。
【0004】
このような理由で、なめし革(あるいは同種の他のもの)から作られ、透湿性・防水性の膜(例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、e−PTFE、ポリウレタン、PUなどから作られた)が備わったライニングへ結合され、中底へ縫い付けられ、あるいは中底へにかわで接合された甲革の備わった靴が、ここ数年、使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、さらにまた知られているように、足の汗の大部分は、足の裏と、典型的には高分子材料から作られている靴の底革との境界面に発生する。
【0006】
このような境界面に生成された汗は蒸発することができず、そのため、足が載る足載せ部の上に凝縮し、ほんのわずかな割合の汗だけが甲革を通して蒸発する、ということが明らかである。
【0007】
従って、完全に防水性かつ透湿性である靴を提供するために、上で説明された甲革のような防水性・透湿性甲革に結合された透湿性・防水性底革(例えば、イタリア特許第1,282,196号に開示された底革のようなもの)を有する靴が、これまで何年間も考案されてきた。
【0008】
この種の靴は、例えば、国際公開WO097/14326号に開示されている。実際に、WO097/14326号に開示された靴には、孔のある接地体と、水の浸透を許容しないようにするために、この接地体の孔を被覆するとともにこの接地体に周辺でかつ密封状に接合された防水性・透湿性の膜とで設けられた底革が備わっている。
【0009】
この底革によれば、靴の内側の環境と外側の環境との間における熱および水蒸気の効果的な交換に加えて、適正な蒸気透過が保証され、さらに、上記膜が結合された上記甲革によって達成されるものに類似した方法によって、外部の湿気および水に対する必要な耐密性が保証される。
【0010】
この靴の形状構成では、底革および甲革は、両方とも透湿性かつ防水性である、はっきりと異なる2つの部材であり、これらは、その接続箇所における水の上昇を防止するために、互いに結合され、かつ、密封されている。
【0011】
従って、これらの靴に使用された底革は、水蒸気の透過が可能であるが水が外側から内方へ移動しないように構成されており、このため、この底革の構造は伝統的な底革よりも複雑であり、また、この複雑さは、上記膜の収容によって、また、底革に対する上記膜の適正な周辺密封によって生じている。
【0012】
記載されたこの種の靴における甲革の構造は伝統的な甲革と比較して、通常、きわめて複雑であり、また、この複雑さは、上記膜の備わったライニングと上記中底の下方に配置された付加的な膜との密封が可能なように同ライニングをそれ自体の上に折り曲げる必要性から、あるいは、甲革と底革との周辺密封をもたらすために甲革よりも大きい膜の備わったライニングを備える必要性から生じている。
【0013】
これらの解決法を採用すると、設けられた靴には、爪先部およびかかと部で折り曲げられていてもいなくても、膜の備わったライニングに実際にたやすく形成され、甲革の膜と中底に配置された膜との容易な密封に対する完全な弊害になる折れしわがある、といういくつかの短所につながる。
【0014】
外部からの水のほんのわずかな浸透さえも防止するためには、底革が透湿性のものであるか否かにかかわらず、これらの靴の製造において、中底、上記膜の備わったライニング、および底革の間における接続領域の密封に注意を払うことが一般に重要である。
【0015】
この発明の目標は、中底、膜および底革の間における接続領域の効果的な密封部が備わっている防水性・透湿性の靴を提供することである。
【0016】
この目標の範囲内で、この発明の1つの目的は、防水性かつ水蒸気透過性であって、構造的に簡単に獲得される靴を提案することである。
【0017】
この発明の別の目的は、完全に防水性かつ水蒸気透過性であるとともに、丈夫であり、また耐久性がある靴を提供することである。
【0018】
この発明の別の目的は、防水性かつ水蒸気透過性であるとともに、公知のシステムおよび技術で製造することのできる靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目標、これらの目的、および後にいっそう明らかになるであろう他の目的は、甲革を備えてなり、この甲革が、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である甲革膜によって、少なくとも一部分で裏張りされ、上記甲革膜が、液体状態にある水に対して不透過性である底革へ密封状に接続されている防水性・透湿性の靴であって、上記密封状接続は、組付中底の中に含まれた密封要素によってもたらされ、上記密封要素は、にかわ、密封用接着剤、あるいは上記底革を設けるための高分子材料のような密封材料に関して透過性であり、上記密封要素は、上記甲革膜を把持する上記密封材料で含浸されているとともに、上記底革へ接続されているか、あるいは、それとともに単一体を形成し、上記底革を上記甲革膜へ密封していることを特徴とする防水性・透湿性の靴によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
この発明のさらに別の特性および利点は、添付図面において非限定的な例として示されたこの発明による靴の、好ましいが限定的ではないいくつかの実施形態の記載から、いっそう明らかになるであろう。
【0021】
【図1】図1は、この発明による靴の斜視図である。
【図2】図2a、図2bおよび図2cは、この発明による靴の第1実施形態の3つの変形例における細部の拡大断面図である。
【図3】図3は、この発明による靴の上記第1実施形態における細部の図である。
【図4】図4は、この発明による靴の第2実施形態における細部の拡大縮尺断面図である。
【図5】図5は、この発明による靴の上記第2実施形態に関する変形例における細部の拡大縮尺断面図である。
【図6】図6は、この発明による靴の第3実施形態における細部の拡大縮尺断面図である。
【図7】図7は、この発明による靴の上記第3実施形態に関する変形例における細部の拡大縮尺断面図である。
【図8】図8は、この発明による靴の甲革部の断面における細部の拡大縮尺図である。
【図9】図9は、この発明による靴の底革の断面における細部の拡大縮尺図である。
【0022】
この特許獲得過程の間にすでに公知であると認められた任意のものは、特許請求されることがなく、また、放棄の対象でない、と解されることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面によれば、参照符号10が防水性・透湿性の靴を全体として表わしており、この靴には甲革11が備わり、この甲革は、液体状態にある水に対して不透過性であり、かつ、水蒸気に対して透過性である甲革膜12によって、少なくとも一部分が裏張りされている。
【0024】
有利であるのは、この甲革が先革およびかかと革で補強されていることであるが、これらの先革およびかかと革は、添付図面には示されておらず、また、両方とも、透湿性のものであるかあるいは有孔のものであり、さらに、それらの透湿性を阻害しないようにするために、スポット接着によって甲革へ接合されている。
【0025】
甲革膜12は、液体状態にある水に対して不透過性である底革13へ密封状に接続されている。
【0026】
この発明による靴10の特質は、甲革膜12と底革13との間における上記密封状接族部が密封要素14によって設けられ、この密封要素が組付中底15に含まれている、という点にある。
【0027】
上記密封要素14は密封材料に対して透過性であり、この密封材料は例えば、にかわであってもよく、あるいは、上記底革が作られた高分子材料であってもよく、また、上記密封要素14は、上記密封材料で含浸されており、甲革膜12を把持するとともに底革13へ接続されているか、あるいは、底革13を甲革膜12へ密封する単一体を、それらとともに形成している。
【0028】
好ましいのは、この靴10に透湿性・防水性インサート16もまた備わっていることであり、その場合、同インサートには、液体状態にある水に対して不透過性であり、水蒸気に対して透過性である膜17が備わっており、同インサートは、それが被覆する開口あるいは複数の孔によって画定された、底革13の少なくとも1つの透湿性部分18に配置されている。
【0029】
透湿性・防水性インサート16、底革13および甲革膜12は、この靴を液体状態にある水に対して不透過性にするために、少なくとも密封要素14によって密封状に接続されている。
【0030】
さらに一般的には、代わりの解決法において、透湿性・防水性インサート16、底革13および甲革膜12のうちの少なくとも2つは、少なくとも密封要素14によって密封状に接続されている。
【0031】
密封要素14は、透湿性部分18の周辺領域および上記インサートの膜17の周辺領域に設けられていると、有利である。
【0032】
さらにまた、密封要素14は、3次元布地、合成材料から作られたメッシュ、金属材料から作られたメッシュ、およびアラミド繊維布地の中から選択された材料から作られていると、都合がよい。
【0033】
この靴10には内側ライニング19が備わっていると、有利である。好都合であるのは、細かいナイロンメッシュ20が、甲革膜12に結合されているとともに、その取り扱いを改善するために適したものであることである。
【0034】
さらに記載されていないいくつかの実施形態では、上記甲革膜に結合された2つ以上の細かいナイロンメッシュが存在している。
【0035】
特に図8を参照すると、内側ライニング19は、
−連続気泡型発泡ポリマーから作られた透湿性パッド21、
−布地あるいはなめし革から作られて靴10の内側に設置された透湿層22
を備えているのが好ましい。
【0036】
甲革膜12と上記インサートの膜17とは、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタンなどの中から選択された材料から作られているのが好ましい。
【0037】
特に図9を参照すると、透湿性・防水性インサート16は、
−使用中におけるユーザーの足の沈下を防止するために、透湿性部分18の延長部あるいは多数の孔にその補強が必要なときに、上記インサートの膜17の下方に配置され、かつ、設けられた透湿性支持層23、
−上記インサートの膜17を補強するとともに、その取り扱いを改善するために、透湿性合成材料、例えばナイロンから作られ、その膜17に関する上向き領域に結合された細かいメッシュ24、
−上記インサートの膜17と支持層23との間における衝撃に対してその膜17を保護するために、上記インサートの膜17に関する下向き領域に結合された透湿性保護層25、
−上記インサートの膜17と支持層23との間に、例えばKevlar(登録商標)から作られ、穿孔および切断に対する高い抵抗性がある透湿層26
のうちの少なくとも1つを備えている。
【0038】
図2aにおいて非限定的な例としてその第1構成的変形例に示された第1実施形態では、靴10には、透湿性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、好ましくは第1シュトローベル(Strobel)縫い目29aによって内側ライニング19の下方端縁に周辺で結合された内側中底27が備わっていると、有利である。
【0039】
図8において非限定的な例として示されたように、内側ライニング19には、好ましくは細かいナイロンメッシュ20の介在を伴った、甲革11に対向する甲革膜12が備わっていると、都合がよい。
【0040】
内側ライニング19には、密封用接着剤によってあるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目があると、有利である。
【0041】
組付中底15には、内側中底27において、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素28が備わっているのが好ましい。
【0042】
加えて、密封要素14は、好ましくは第2シュトローベル縫い目29bによって周辺で甲革11へ接続され、かつ、内側ライニング19と内側中底27との間における接続の領域を跨ぐように配置された中心要素28の枠によって構成されている。
【0043】
底革13には、中心要素28に配置されているのが好ましい透湿性・防水性インサート16と、これに対応する透湿性部分18とが設けられている。
【0044】
さらにまた、底革13は、高分子材料から作られているのが好ましく、また、組付中底15において甲革11の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、密封要素14は、甲革膜12を把持し、底革13を上記甲革膜12へ密封するために、それを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0045】
甲革に対する直接射出は、高分子材料の射出という単一作業で底革13が甲革11に直接、設けられる製造方法であって、適切に作られた母型が、甲革組付体の全体が嵌められる金属製靴型によって閉鎖される製造方法である。
【0046】
上記高分子材料は、もちろん、流体であるかあるいは加熱によって流体にされたものであり、上記甲革組付体の底部に底革13を直接形成するために、上記母型の中へ射出されるが、ほとんど液体である上記高分子材料は、甲革11の材料および中底15の材料に事実上、容易に浸透することができるとともに、それらへ上記高分子材料自体を確実に固定することができる。
【0047】
透湿性・防水性インサート16は、液体状態にある水に対する底革13の耐密性のために、また、その透湿性・防水性インサート16での水蒸気に対するその透過性のために、透湿性部分18を被覆するように底革13へ周辺で密封されている。
【0048】
直接射出および実質的にそれと同等のものの代案である1つの方法では、底革13は、高分子材料から作られており、また、好ましくは、事前型成形されて、組付中底15において、接着剤によって甲革11の下部に結合されている。
【0049】
密封要素14は、甲革膜12を把持して底革13を甲革膜12へ密封するために、それを通して浸透した上記にかわによって含浸されている。
【0050】
上記のにかわに代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0051】
具体的には、密封要素14は、甲革膜12を把持するためにそれに浸透する上記密封用接着材料によって含浸されている。
【0052】
底革13は、甲革膜12への密封を完全なものにするために、密封用接着材料により含浸された密封要素14へ、接着剤によって密封されている。
【0053】
加えて、透湿性・防水性インサート16は、液体状態にある水に対する底革13の耐密性のために、また、その透湿性・防水性インサート16での水蒸気に対するその透過性のために、底革13へ周辺で密封状に接続されている。
【0054】
上記第1実施形態のこの第1変形例では、透湿性・防水性インサート16は、それを被覆しているとともにそれに対して透湿性部分18とは反対側にある透湿性あるいは有孔の部分30が備わった底革13の内側に収容されている。
【0055】
図2bに例として示された、上記第1実施形態の第2変形例では、透湿性・防水性インサート16は、底革13の上に重ね合わされて、組付中底15においてそれを支持している。
【0056】
この第2変形例では、透湿性・防水性インサート16は、密封要素14に含浸される密封用接着材料によって、または、これに代わるものとしての接着剤によるかあるいは底革13を構成する高分子材料によって、密封要素14へ周辺で密封されている。
【0057】
底革13には接地層13aが備わっているが、この接地層は透湿性部分18において孔が開けられていると、都合がよい。
【0058】
図2cに非限定的な例として示された代わりの組付体による解決法では、甲革11に、組付中底15への接続のためのフラップ11aが備わり、これらのフラップ11aは、甲革11と底革13との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ法」として知られた作業方法によって、その下方で折り曲げられている。
【0059】
具体的には、上記接続用フラップ11aは、底革13と密封要素14との間に一部分だけが介在されるように、また、甲革膜12を密封するためのその容易な含浸を妨げないように、組付中底15の下方に折り曲げられている。
【0060】
密封要素14は接続用フラップ11aによって完全には覆われていないが、その理由は、そうでないときには、底革13の高分子材料の浸透あるいは密封要素14における密封用材料の浸透が阻止されるからである、ということに留意すべきである。
【0061】
この場合には、底革13への甲革部の接続のための「AGO靴型合わせ」作業法が備わっている靴10の甲革部の実現の間に、組付中底15の下方に折り曲げられた甲革11のフラップ11aは、上記接着剤の固着のために粗くされている。
【0062】
この作業の間に、組付中底15は、そこへ接続された甲革膜12と粗面加工機との間に介在されて、この加工機による甲革膜12の損傷が際立たされる。
【0063】
図4に非限定的な例として示された第2実施形態では、靴110には2つの組付中底が備わっているのが好ましく、その第1組付中底115aには、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、第1密封要素114aを形成する第1フレームによって包囲された第1中心要素128aが備わっており、その第2組付中底115bには、第1中心要素128aにおける下向き領域において透湿性・防水性インサート116によって構成され、かつ、第2密封要素114bを構成する第2フレームによって包囲された第2中心要素が備わっている。
【0064】
有利であるのは、フレームを形成する第1密封要素114aが、好ましくは第1シュトローベル縫い目129aによって内側ライニング119へ周辺で接続されており、また、フレームを形成する第2密封要素114bが、対応する接続領域を跨ぐように配置されているとともに、次には、好ましくは第2シュトローベル縫い目129bによって甲革111へ周辺で結合されている、ことである。
【0065】
好都合なことに、甲革膜112の取り扱いを改善するため、内側ライニング119には、甲革膜112に結合された好ましくは細かいナイロンメッシュの介在で、甲革111に対向する甲革膜112が備わっている。
【0066】
有利であるのは、内側ライニング119に、密封用接着剤によって、あるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目が備わっていることである。
【0067】
さらにまた、第1密封要素114aは、それを跨ぐように、第2密封要素114bと上記第2中心要素、すなわち透湿性・防水性インサート116との間の接続領域に重ね合わされているのが好ましい。
【0068】
底革113は、高分子材料から作られているとのが好ましく、また、組付中底115aおよび115bにおいて甲革111の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、第1密封要素114aおよび第2密封要素114bは、上記高分子材料が、甲革膜112を把持し、甲革膜112および上記インサートの膜117を底革113へ密封するまで、それらを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0069】
上記甲革の下部に対する底革113のオーバーモールドの間に、この靴の甲革部が嵌められる直接射出のための靴型が用意されるが、この靴型は、射出によって第1密封要素114aへ浸透する高分子材料がそれを通して靴の中へ漏れ出すのを防止するために適したものである。
【0070】
これに代えて、また、実質的に同等の方法で、底革113は、高分子材料を用いて事前型成形されると都合がよく、また、組付中底115aおよび115bにおいて、接着剤によって甲革111の下部に結合されており、ここで、第1境界114aおよび第2境界114bは、甲革膜112を把持し、甲革膜112および上記インサートの膜117を底革113へ密封するために、それらを通して浸透した上記接着剤によって含浸されている。
【0071】
上記接着剤に代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0072】
具体的には、第1密封要素114aおよび第2密封要素114bは、甲革膜112と上記インサートの膜117とを把持するためにそれらを通して浸透した上記密封用接着材料によって含浸されている。
【0073】
底革113は、密封を完全にするために密封用接着材料により含浸された第2密封要素114bへ接着剤によって密封されている。
【0074】
この第2実施形態においてもまた、図5に非限定的な例として示された代わりの組付体による解決法では、甲革111に、組付中底115bへの接続のためのフラップ130が備わっていて、これらのフラップ130は、甲革111と底革113との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ法」として知られた作業方法によって、組付中底115bの下方に折り曲げられている。
【0075】
具体的には、接続用フラップ130は、底革113と第2密封要素114bとの間に一部分だけが介在されるように、また、甲革膜112を密封するためにその容易な含浸を妨げないように、組付中底115bの下方に折り曲げられている。
【0076】
図6に非限定的な例として示された第3実施形態では、組付中底215には、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素228が備わっており、加えて、密封要素214は中心要素228に関する枠によって構成されていると、都合がよい。
【0077】
好ましいのは、甲革膜212が甲革211へ少なくともその一部において内部で結合されていることであり、また、都合がよいのは、甲革膜212が、例えば靴の内側へ向けられた甲革211の面に、その取り扱いを改善するために適している少なくとも細かいナイロンメッシュによって、被覆されていることである。
【0078】
有利であるのは、甲革211に、密封用接着剤によってあるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目があることである。
【0079】
甲革211および甲革膜212は、いわゆる「AGO靴型合わせ」作業法によって密封要素214と底革213との間にそれらの一部分が介在されるように、また、それらの接続部において甲革膜212の下部フラップが甲革211と密封要素214との間に挟み込まれるように、密封要素214に関する下向き領域に接続されている。
【0080】
具体的には、甲革膜212の上記下部フラップは、一部分だけが底革213と密封要素214との間に介在されるように、また、甲革膜212を密封するための容易な含浸を妨げないように、組付中底215の下方に折り曲げられている。
【0081】
ライニング219は、好ましくはシュトローベル縫い目229によって密封要素214の周辺領域へ接続されていると、都合がよい。
【0082】
有利であるのは、底革213に、中心要素228において、透湿性・防水性インサート216と、対応する透湿性部分218とが備わっていることである。
【0083】
図7に非限定な例として示された、上記実施形態の変形例では、中心要素228は透湿性・防水性インサート216によって構成されている。
【0084】
この変形例では、透湿性・防水性インサート216には、周辺帯において底革213へ密封状に接続された上記インサートの膜217が備わっていると、有利である。
【0085】
上記インサートの膜217は、底革213の透湿性部分218に対向しており、また、上記周辺帯を露出状態にする透湿性材料から作られた保護要素によって被覆されている。
【0086】
さらにまた、上記インサートの膜217は、密封要素214へ周辺で接続されている。
【0087】
底革213は、高分子材料から作られているのが好ましく、また、組付中底215において甲革211の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、密封要素214は、甲革膜212を把持し、それを底革213へ密封するために、それを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0088】
上記高分子材料は上記インサートの膜217をさらに把持している。
【0089】
直接射出および実質的にそれと同等のものの代案である1つの方法では、底革213は、高分子材料から作られており、また、事前型成形されて、組付中底215において、接着剤によって甲革211の下部に結合されているのが好ましい。
【0090】
密封要素214は、甲革膜212を把持してそれを底革213へ密封するために、それを通して浸透した上記接着剤によって含浸されている。
【0091】
上記インサートの膜217は、その周辺帯で接着剤によって底革213へ接合されていると、都合がよい。
【0092】
上記の接着剤に代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0093】
組付中底により形成された密封要素によってもたらされた、中底と膜と底革との間における接続領域の効果的な密封部が備わっている防水性・透湿性の靴を提供するこの発明によって、上記の意図された目標および諸目的が達成されることが実際にわかった。
【0094】
具体的には、この発明による靴によれば、甲革の膜の、底革への、かつ/または、インサートの膜への効果的な密封接続が可能である。
【0095】
さらにまた、この発明による、水に対して不透過性であり、かつ、水蒸気に対して透過性である靴は、構造的に簡単に獲得され、丈夫であり、また耐久性があり、さらに、公知のシステムおよび技術で製造することができる。
【0096】
このように構想されたこの発明は、そのすべての細部が添付の特許請求の範囲における適用範囲内にある多数の改造および変更を受けることが可能であり、また、すべての細部は、技術的に同等の他の諸要素でさらに置き換えることも可能である。
【0097】
実際に、使用される上記材料は、それらが特定の用途で互換可能である限り、不確定の形状および寸法とともに、諸要件および最新技術による任意のものであってよい。
【0098】
この出願が優先権を主張するイタリア特許出願番号PD2008A000377における開示は、参照によってこの明細書に組み入れられている。
【0099】
任意の請求項において言及された技術的特徴構成が参照符号に従うときには、それらの参照符号は、特許請求の範囲の理解度を向上させる目的だけのために含まれており、そのような参照符号には、そのような参照符号によって例示として識別されたそれぞれの要素の解釈に関するどのような限定的効果もない。
【技術分野】
【0001】
この発明は防水性・透湿性の靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の快適性は、解剖学的に適合する諸特性を修正することに関連があるだけでなく、発汗により靴の内部に発生した水蒸気の外方透過を修正することにも関連がある、という事実が現在知られている。
【0003】
伝統的に、透湿性の靴は、なめし革のような天然材料あるいは同等製造物を用いるものであるが、しかしながら、それらの透湿特性のために、雨天あるいは悪天候のときには、良好な防水性が保証されず、また、実際に水を比較的たやすく吸収する。
【0004】
このような理由で、なめし革(あるいは同種の他のもの)から作られ、透湿性・防水性の膜(例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、e−PTFE、ポリウレタン、PUなどから作られた)が備わったライニングへ結合され、中底へ縫い付けられ、あるいは中底へにかわで接合された甲革の備わった靴が、ここ数年、使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、さらにまた知られているように、足の汗の大部分は、足の裏と、典型的には高分子材料から作られている靴の底革との境界面に発生する。
【0006】
このような境界面に生成された汗は蒸発することができず、そのため、足が載る足載せ部の上に凝縮し、ほんのわずかな割合の汗だけが甲革を通して蒸発する、ということが明らかである。
【0007】
従って、完全に防水性かつ透湿性である靴を提供するために、上で説明された甲革のような防水性・透湿性甲革に結合された透湿性・防水性底革(例えば、イタリア特許第1,282,196号に開示された底革のようなもの)を有する靴が、これまで何年間も考案されてきた。
【0008】
この種の靴は、例えば、国際公開WO097/14326号に開示されている。実際に、WO097/14326号に開示された靴には、孔のある接地体と、水の浸透を許容しないようにするために、この接地体の孔を被覆するとともにこの接地体に周辺でかつ密封状に接合された防水性・透湿性の膜とで設けられた底革が備わっている。
【0009】
この底革によれば、靴の内側の環境と外側の環境との間における熱および水蒸気の効果的な交換に加えて、適正な蒸気透過が保証され、さらに、上記膜が結合された上記甲革によって達成されるものに類似した方法によって、外部の湿気および水に対する必要な耐密性が保証される。
【0010】
この靴の形状構成では、底革および甲革は、両方とも透湿性かつ防水性である、はっきりと異なる2つの部材であり、これらは、その接続箇所における水の上昇を防止するために、互いに結合され、かつ、密封されている。
【0011】
従って、これらの靴に使用された底革は、水蒸気の透過が可能であるが水が外側から内方へ移動しないように構成されており、このため、この底革の構造は伝統的な底革よりも複雑であり、また、この複雑さは、上記膜の収容によって、また、底革に対する上記膜の適正な周辺密封によって生じている。
【0012】
記載されたこの種の靴における甲革の構造は伝統的な甲革と比較して、通常、きわめて複雑であり、また、この複雑さは、上記膜の備わったライニングと上記中底の下方に配置された付加的な膜との密封が可能なように同ライニングをそれ自体の上に折り曲げる必要性から、あるいは、甲革と底革との周辺密封をもたらすために甲革よりも大きい膜の備わったライニングを備える必要性から生じている。
【0013】
これらの解決法を採用すると、設けられた靴には、爪先部およびかかと部で折り曲げられていてもいなくても、膜の備わったライニングに実際にたやすく形成され、甲革の膜と中底に配置された膜との容易な密封に対する完全な弊害になる折れしわがある、といういくつかの短所につながる。
【0014】
外部からの水のほんのわずかな浸透さえも防止するためには、底革が透湿性のものであるか否かにかかわらず、これらの靴の製造において、中底、上記膜の備わったライニング、および底革の間における接続領域の密封に注意を払うことが一般に重要である。
【0015】
この発明の目標は、中底、膜および底革の間における接続領域の効果的な密封部が備わっている防水性・透湿性の靴を提供することである。
【0016】
この目標の範囲内で、この発明の1つの目的は、防水性かつ水蒸気透過性であって、構造的に簡単に獲得される靴を提案することである。
【0017】
この発明の別の目的は、完全に防水性かつ水蒸気透過性であるとともに、丈夫であり、また耐久性がある靴を提供することである。
【0018】
この発明の別の目的は、防水性かつ水蒸気透過性であるとともに、公知のシステムおよび技術で製造することのできる靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目標、これらの目的、および後にいっそう明らかになるであろう他の目的は、甲革を備えてなり、この甲革が、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である甲革膜によって、少なくとも一部分で裏張りされ、上記甲革膜が、液体状態にある水に対して不透過性である底革へ密封状に接続されている防水性・透湿性の靴であって、上記密封状接続は、組付中底の中に含まれた密封要素によってもたらされ、上記密封要素は、にかわ、密封用接着剤、あるいは上記底革を設けるための高分子材料のような密封材料に関して透過性であり、上記密封要素は、上記甲革膜を把持する上記密封材料で含浸されているとともに、上記底革へ接続されているか、あるいは、それとともに単一体を形成し、上記底革を上記甲革膜へ密封していることを特徴とする防水性・透湿性の靴によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
この発明のさらに別の特性および利点は、添付図面において非限定的な例として示されたこの発明による靴の、好ましいが限定的ではないいくつかの実施形態の記載から、いっそう明らかになるであろう。
【0021】
【図1】図1は、この発明による靴の斜視図である。
【図2】図2a、図2bおよび図2cは、この発明による靴の第1実施形態の3つの変形例における細部の拡大断面図である。
【図3】図3は、この発明による靴の上記第1実施形態における細部の図である。
【図4】図4は、この発明による靴の第2実施形態における細部の拡大縮尺断面図である。
【図5】図5は、この発明による靴の上記第2実施形態に関する変形例における細部の拡大縮尺断面図である。
【図6】図6は、この発明による靴の第3実施形態における細部の拡大縮尺断面図である。
【図7】図7は、この発明による靴の上記第3実施形態に関する変形例における細部の拡大縮尺断面図である。
【図8】図8は、この発明による靴の甲革部の断面における細部の拡大縮尺図である。
【図9】図9は、この発明による靴の底革の断面における細部の拡大縮尺図である。
【0022】
この特許獲得過程の間にすでに公知であると認められた任意のものは、特許請求されることがなく、また、放棄の対象でない、と解されることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面によれば、参照符号10が防水性・透湿性の靴を全体として表わしており、この靴には甲革11が備わり、この甲革は、液体状態にある水に対して不透過性であり、かつ、水蒸気に対して透過性である甲革膜12によって、少なくとも一部分が裏張りされている。
【0024】
有利であるのは、この甲革が先革およびかかと革で補強されていることであるが、これらの先革およびかかと革は、添付図面には示されておらず、また、両方とも、透湿性のものであるかあるいは有孔のものであり、さらに、それらの透湿性を阻害しないようにするために、スポット接着によって甲革へ接合されている。
【0025】
甲革膜12は、液体状態にある水に対して不透過性である底革13へ密封状に接続されている。
【0026】
この発明による靴10の特質は、甲革膜12と底革13との間における上記密封状接族部が密封要素14によって設けられ、この密封要素が組付中底15に含まれている、という点にある。
【0027】
上記密封要素14は密封材料に対して透過性であり、この密封材料は例えば、にかわであってもよく、あるいは、上記底革が作られた高分子材料であってもよく、また、上記密封要素14は、上記密封材料で含浸されており、甲革膜12を把持するとともに底革13へ接続されているか、あるいは、底革13を甲革膜12へ密封する単一体を、それらとともに形成している。
【0028】
好ましいのは、この靴10に透湿性・防水性インサート16もまた備わっていることであり、その場合、同インサートには、液体状態にある水に対して不透過性であり、水蒸気に対して透過性である膜17が備わっており、同インサートは、それが被覆する開口あるいは複数の孔によって画定された、底革13の少なくとも1つの透湿性部分18に配置されている。
【0029】
透湿性・防水性インサート16、底革13および甲革膜12は、この靴を液体状態にある水に対して不透過性にするために、少なくとも密封要素14によって密封状に接続されている。
【0030】
さらに一般的には、代わりの解決法において、透湿性・防水性インサート16、底革13および甲革膜12のうちの少なくとも2つは、少なくとも密封要素14によって密封状に接続されている。
【0031】
密封要素14は、透湿性部分18の周辺領域および上記インサートの膜17の周辺領域に設けられていると、有利である。
【0032】
さらにまた、密封要素14は、3次元布地、合成材料から作られたメッシュ、金属材料から作られたメッシュ、およびアラミド繊維布地の中から選択された材料から作られていると、都合がよい。
【0033】
この靴10には内側ライニング19が備わっていると、有利である。好都合であるのは、細かいナイロンメッシュ20が、甲革膜12に結合されているとともに、その取り扱いを改善するために適したものであることである。
【0034】
さらに記載されていないいくつかの実施形態では、上記甲革膜に結合された2つ以上の細かいナイロンメッシュが存在している。
【0035】
特に図8を参照すると、内側ライニング19は、
−連続気泡型発泡ポリマーから作られた透湿性パッド21、
−布地あるいはなめし革から作られて靴10の内側に設置された透湿層22
を備えているのが好ましい。
【0036】
甲革膜12と上記インサートの膜17とは、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタンなどの中から選択された材料から作られているのが好ましい。
【0037】
特に図9を参照すると、透湿性・防水性インサート16は、
−使用中におけるユーザーの足の沈下を防止するために、透湿性部分18の延長部あるいは多数の孔にその補強が必要なときに、上記インサートの膜17の下方に配置され、かつ、設けられた透湿性支持層23、
−上記インサートの膜17を補強するとともに、その取り扱いを改善するために、透湿性合成材料、例えばナイロンから作られ、その膜17に関する上向き領域に結合された細かいメッシュ24、
−上記インサートの膜17と支持層23との間における衝撃に対してその膜17を保護するために、上記インサートの膜17に関する下向き領域に結合された透湿性保護層25、
−上記インサートの膜17と支持層23との間に、例えばKevlar(登録商標)から作られ、穿孔および切断に対する高い抵抗性がある透湿層26
のうちの少なくとも1つを備えている。
【0038】
図2aにおいて非限定的な例としてその第1構成的変形例に示された第1実施形態では、靴10には、透湿性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、好ましくは第1シュトローベル(Strobel)縫い目29aによって内側ライニング19の下方端縁に周辺で結合された内側中底27が備わっていると、有利である。
【0039】
図8において非限定的な例として示されたように、内側ライニング19には、好ましくは細かいナイロンメッシュ20の介在を伴った、甲革11に対向する甲革膜12が備わっていると、都合がよい。
【0040】
内側ライニング19には、密封用接着剤によってあるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目があると、有利である。
【0041】
組付中底15には、内側中底27において、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素28が備わっているのが好ましい。
【0042】
加えて、密封要素14は、好ましくは第2シュトローベル縫い目29bによって周辺で甲革11へ接続され、かつ、内側ライニング19と内側中底27との間における接続の領域を跨ぐように配置された中心要素28の枠によって構成されている。
【0043】
底革13には、中心要素28に配置されているのが好ましい透湿性・防水性インサート16と、これに対応する透湿性部分18とが設けられている。
【0044】
さらにまた、底革13は、高分子材料から作られているのが好ましく、また、組付中底15において甲革11の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、密封要素14は、甲革膜12を把持し、底革13を上記甲革膜12へ密封するために、それを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0045】
甲革に対する直接射出は、高分子材料の射出という単一作業で底革13が甲革11に直接、設けられる製造方法であって、適切に作られた母型が、甲革組付体の全体が嵌められる金属製靴型によって閉鎖される製造方法である。
【0046】
上記高分子材料は、もちろん、流体であるかあるいは加熱によって流体にされたものであり、上記甲革組付体の底部に底革13を直接形成するために、上記母型の中へ射出されるが、ほとんど液体である上記高分子材料は、甲革11の材料および中底15の材料に事実上、容易に浸透することができるとともに、それらへ上記高分子材料自体を確実に固定することができる。
【0047】
透湿性・防水性インサート16は、液体状態にある水に対する底革13の耐密性のために、また、その透湿性・防水性インサート16での水蒸気に対するその透過性のために、透湿性部分18を被覆するように底革13へ周辺で密封されている。
【0048】
直接射出および実質的にそれと同等のものの代案である1つの方法では、底革13は、高分子材料から作られており、また、好ましくは、事前型成形されて、組付中底15において、接着剤によって甲革11の下部に結合されている。
【0049】
密封要素14は、甲革膜12を把持して底革13を甲革膜12へ密封するために、それを通して浸透した上記にかわによって含浸されている。
【0050】
上記のにかわに代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0051】
具体的には、密封要素14は、甲革膜12を把持するためにそれに浸透する上記密封用接着材料によって含浸されている。
【0052】
底革13は、甲革膜12への密封を完全なものにするために、密封用接着材料により含浸された密封要素14へ、接着剤によって密封されている。
【0053】
加えて、透湿性・防水性インサート16は、液体状態にある水に対する底革13の耐密性のために、また、その透湿性・防水性インサート16での水蒸気に対するその透過性のために、底革13へ周辺で密封状に接続されている。
【0054】
上記第1実施形態のこの第1変形例では、透湿性・防水性インサート16は、それを被覆しているとともにそれに対して透湿性部分18とは反対側にある透湿性あるいは有孔の部分30が備わった底革13の内側に収容されている。
【0055】
図2bに例として示された、上記第1実施形態の第2変形例では、透湿性・防水性インサート16は、底革13の上に重ね合わされて、組付中底15においてそれを支持している。
【0056】
この第2変形例では、透湿性・防水性インサート16は、密封要素14に含浸される密封用接着材料によって、または、これに代わるものとしての接着剤によるかあるいは底革13を構成する高分子材料によって、密封要素14へ周辺で密封されている。
【0057】
底革13には接地層13aが備わっているが、この接地層は透湿性部分18において孔が開けられていると、都合がよい。
【0058】
図2cに非限定的な例として示された代わりの組付体による解決法では、甲革11に、組付中底15への接続のためのフラップ11aが備わり、これらのフラップ11aは、甲革11と底革13との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ法」として知られた作業方法によって、その下方で折り曲げられている。
【0059】
具体的には、上記接続用フラップ11aは、底革13と密封要素14との間に一部分だけが介在されるように、また、甲革膜12を密封するためのその容易な含浸を妨げないように、組付中底15の下方に折り曲げられている。
【0060】
密封要素14は接続用フラップ11aによって完全には覆われていないが、その理由は、そうでないときには、底革13の高分子材料の浸透あるいは密封要素14における密封用材料の浸透が阻止されるからである、ということに留意すべきである。
【0061】
この場合には、底革13への甲革部の接続のための「AGO靴型合わせ」作業法が備わっている靴10の甲革部の実現の間に、組付中底15の下方に折り曲げられた甲革11のフラップ11aは、上記接着剤の固着のために粗くされている。
【0062】
この作業の間に、組付中底15は、そこへ接続された甲革膜12と粗面加工機との間に介在されて、この加工機による甲革膜12の損傷が際立たされる。
【0063】
図4に非限定的な例として示された第2実施形態では、靴110には2つの組付中底が備わっているのが好ましく、その第1組付中底115aには、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、第1密封要素114aを形成する第1フレームによって包囲された第1中心要素128aが備わっており、その第2組付中底115bには、第1中心要素128aにおける下向き領域において透湿性・防水性インサート116によって構成され、かつ、第2密封要素114bを構成する第2フレームによって包囲された第2中心要素が備わっている。
【0064】
有利であるのは、フレームを形成する第1密封要素114aが、好ましくは第1シュトローベル縫い目129aによって内側ライニング119へ周辺で接続されており、また、フレームを形成する第2密封要素114bが、対応する接続領域を跨ぐように配置されているとともに、次には、好ましくは第2シュトローベル縫い目129bによって甲革111へ周辺で結合されている、ことである。
【0065】
好都合なことに、甲革膜112の取り扱いを改善するため、内側ライニング119には、甲革膜112に結合された好ましくは細かいナイロンメッシュの介在で、甲革111に対向する甲革膜112が備わっている。
【0066】
有利であるのは、内側ライニング119に、密封用接着剤によって、あるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目が備わっていることである。
【0067】
さらにまた、第1密封要素114aは、それを跨ぐように、第2密封要素114bと上記第2中心要素、すなわち透湿性・防水性インサート116との間の接続領域に重ね合わされているのが好ましい。
【0068】
底革113は、高分子材料から作られているとのが好ましく、また、組付中底115aおよび115bにおいて甲革111の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、第1密封要素114aおよび第2密封要素114bは、上記高分子材料が、甲革膜112を把持し、甲革膜112および上記インサートの膜117を底革113へ密封するまで、それらを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0069】
上記甲革の下部に対する底革113のオーバーモールドの間に、この靴の甲革部が嵌められる直接射出のための靴型が用意されるが、この靴型は、射出によって第1密封要素114aへ浸透する高分子材料がそれを通して靴の中へ漏れ出すのを防止するために適したものである。
【0070】
これに代えて、また、実質的に同等の方法で、底革113は、高分子材料を用いて事前型成形されると都合がよく、また、組付中底115aおよび115bにおいて、接着剤によって甲革111の下部に結合されており、ここで、第1境界114aおよび第2境界114bは、甲革膜112を把持し、甲革膜112および上記インサートの膜117を底革113へ密封するために、それらを通して浸透した上記接着剤によって含浸されている。
【0071】
上記接着剤に代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0072】
具体的には、第1密封要素114aおよび第2密封要素114bは、甲革膜112と上記インサートの膜117とを把持するためにそれらを通して浸透した上記密封用接着材料によって含浸されている。
【0073】
底革113は、密封を完全にするために密封用接着材料により含浸された第2密封要素114bへ接着剤によって密封されている。
【0074】
この第2実施形態においてもまた、図5に非限定的な例として示された代わりの組付体による解決法では、甲革111に、組付中底115bへの接続のためのフラップ130が備わっていて、これらのフラップ130は、甲革111と底革113との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ法」として知られた作業方法によって、組付中底115bの下方に折り曲げられている。
【0075】
具体的には、接続用フラップ130は、底革113と第2密封要素114bとの間に一部分だけが介在されるように、また、甲革膜112を密封するためにその容易な含浸を妨げないように、組付中底115bの下方に折り曲げられている。
【0076】
図6に非限定的な例として示された第3実施形態では、組付中底215には、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素228が備わっており、加えて、密封要素214は中心要素228に関する枠によって構成されていると、都合がよい。
【0077】
好ましいのは、甲革膜212が甲革211へ少なくともその一部において内部で結合されていることであり、また、都合がよいのは、甲革膜212が、例えば靴の内側へ向けられた甲革211の面に、その取り扱いを改善するために適している少なくとも細かいナイロンメッシュによって、被覆されていることである。
【0078】
有利であるのは、甲革211に、密封用接着剤によってあるいはその上にヒートシールされる密封用テープによって密封された縫い目があることである。
【0079】
甲革211および甲革膜212は、いわゆる「AGO靴型合わせ」作業法によって密封要素214と底革213との間にそれらの一部分が介在されるように、また、それらの接続部において甲革膜212の下部フラップが甲革211と密封要素214との間に挟み込まれるように、密封要素214に関する下向き領域に接続されている。
【0080】
具体的には、甲革膜212の上記下部フラップは、一部分だけが底革213と密封要素214との間に介在されるように、また、甲革膜212を密封するための容易な含浸を妨げないように、組付中底215の下方に折り曲げられている。
【0081】
ライニング219は、好ましくはシュトローベル縫い目229によって密封要素214の周辺領域へ接続されていると、都合がよい。
【0082】
有利であるのは、底革213に、中心要素228において、透湿性・防水性インサート216と、対応する透湿性部分218とが備わっていることである。
【0083】
図7に非限定な例として示された、上記実施形態の変形例では、中心要素228は透湿性・防水性インサート216によって構成されている。
【0084】
この変形例では、透湿性・防水性インサート216には、周辺帯において底革213へ密封状に接続された上記インサートの膜217が備わっていると、有利である。
【0085】
上記インサートの膜217は、底革213の透湿性部分218に対向しており、また、上記周辺帯を露出状態にする透湿性材料から作られた保護要素によって被覆されている。
【0086】
さらにまた、上記インサートの膜217は、密封要素214へ周辺で接続されている。
【0087】
底革213は、高分子材料から作られているのが好ましく、また、組付中底215において甲革211の下部への直接射出によって型成形されており、ここで、密封要素214は、甲革膜212を把持し、それを底革213へ密封するために、それを通して浸透した上記高分子材料によって含浸されている。
【0088】
上記高分子材料は上記インサートの膜217をさらに把持している。
【0089】
直接射出および実質的にそれと同等のものの代案である1つの方法では、底革213は、高分子材料から作られており、また、事前型成形されて、組付中底215において、接着剤によって甲革211の下部に結合されているのが好ましい。
【0090】
密封要素214は、甲革膜212を把持してそれを底革213へ密封するために、それを通して浸透した上記接着剤によって含浸されている。
【0091】
上記インサートの膜217は、その周辺帯で接着剤によって底革213へ接合されていると、都合がよい。
【0092】
上記の接着剤に代わるものとして、シリコーン接着剤あるいは熱可塑性接着剤あるいは「反応性ホットメルト」として一般に知られた密封剤のような接着剤および密封材料、例えば、登録商標Ipatherm S 14/176によって知られたもののようなポリウレタン、またはこの種の他のものを使用することができる。
【0093】
組付中底により形成された密封要素によってもたらされた、中底と膜と底革との間における接続領域の効果的な密封部が備わっている防水性・透湿性の靴を提供するこの発明によって、上記の意図された目標および諸目的が達成されることが実際にわかった。
【0094】
具体的には、この発明による靴によれば、甲革の膜の、底革への、かつ/または、インサートの膜への効果的な密封接続が可能である。
【0095】
さらにまた、この発明による、水に対して不透過性であり、かつ、水蒸気に対して透過性である靴は、構造的に簡単に獲得され、丈夫であり、また耐久性があり、さらに、公知のシステムおよび技術で製造することができる。
【0096】
このように構想されたこの発明は、そのすべての細部が添付の特許請求の範囲における適用範囲内にある多数の改造および変更を受けることが可能であり、また、すべての細部は、技術的に同等の他の諸要素でさらに置き換えることも可能である。
【0097】
実際に、使用される上記材料は、それらが特定の用途で互換可能である限り、不確定の形状および寸法とともに、諸要件および最新技術による任意のものであってよい。
【0098】
この出願が優先権を主張するイタリア特許出願番号PD2008A000377における開示は、参照によってこの明細書に組み入れられている。
【0099】
任意の請求項において言及された技術的特徴構成が参照符号に従うときには、それらの参照符号は、特許請求の範囲の理解度を向上させる目的だけのために含まれており、そのような参照符号には、そのような参照符号によって例示として識別されたそれぞれの要素の解釈に関するどのような限定的効果もない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲革(11,111,211)を備えてなり、この甲革が、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である甲革膜(12,112,212)によって、少なくとも一部分で裏張りされ、前記甲革膜(12,112,212)が、液体状態にある水に対して不透過性である底革(13,113,213)へ密封状に接続されている防水性・透湿性の靴であって、前記密封状接続は、組付中底(15,115,215)の中に含まれた密封要素(14,114,214)によってもたらされ、前記密封要素(14,114,214)は、にかわ、密封用接着剤、あるいは前記底革を設けるための高分子材料のような密封材料に関して透過性であり、前記密封要素(14,114,214)は、前記甲革膜(12,112,212)を把持する前記密封材料で含浸されているとともに、前記底革(13,113,213)へ接続されているか、あるいは、それとともに単一体を形成し、前記底革(13,113,213)を前記甲革膜(12,112,212)へ密封していることを特徴とする防水性・透湿性の靴。
【請求項2】
当該靴は、透湿性・防水性インサート(16,116,216)を備え、このインサートは、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である同インサートの膜(17,117,217)を含み、前記インサートは、少なくとも1つの開口によって、あるいは複数の孔によって画定された、前記底革(13,113,213)の少なくとも1つの透湿性部分(18,118,218)に配置され、この透湿性部分は、当該靴の液体状態にある水に対する耐密性のために少なくとも前記密封要素(14,114,214)によって密封状に接続されている前記透湿性・防水性インサート(16,116,216)、前記底革(13,113,213)および前記甲革膜(12,112,212)のうちの少なくとも2つを被覆し、前記密封要素(14,114,214)は、前記透湿性部分(18,118,218)の周辺領域と、それを被覆する前記インサートの前記膜(17,117,217)の周辺領域とに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記密封要素(14,114,214)は、3次元布地、合成材料から作られたメッシュ、金属材料から作られたメッシュ、およびアラミド繊維布地の中から選択された材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項4】
当該靴は、細かいナイロンメッシュ(20)を備え、このナイロンメッシュは、前記甲革膜(12,112,212)へ、その取り扱いを改善するために、密接状に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項5】
当該靴は、内側ライニング(19)を備え、この内側ライニングは、
−連続気泡型発泡ポリマーから作られた透湿性パッド(21)、
−当該靴(10)の内側にある透湿層(22)
のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項6】
前記甲革膜(12,112,212)と前記インサートの前記膜(17,117,217)とは、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、および同種の他のものの中から選択された材料から作られていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項7】
前記透湿性・防水性インサート(16,116,216)は、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)の下方に配置された透湿性支持層(23)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)を補強するために、合成材料から作られ、前記インサートの前記膜(17,117,217)に関する上向き領域に結合された透湿性の細かいメッシュ(24)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)と前記支持層(23)との間における衝撃に対してその膜を保護するために、前記インサートの前記膜(17,117,217)に関する下向き領域に結合された透湿性保護層(25)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)と前記支持層(23)との間にあり、穿孔および切断に対する高い抵抗性がある透湿層(26)
のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項8】
当該靴は、第1実施形態では、透湿性であるかあるいは散乱状に穿孔された内側中底(27)を備え、この内側中底は、前記甲革膜(12)を含んでいる前記内側ライニング(19)の下方端縁に周辺で結合され、前記組付中底(15)は、前記内側中底(27)において、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素(28)を備え、前記密封要素(14)は、前記中心要素(28)に関する枠によって構成され、周辺で前記甲革(11)へ接続され、かつ、前記内側ライニング(19)を前記内側中底(27)へ接続するための領域を跨ぐように配置され、前記底革(13)は、少なくとも前記中心要素(28)において、前記透湿性・防水性インサート(16)と、対応する前記透湿性部分(18)とを有していることを特徴とする請求項5に記載の靴。
【請求項9】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(15)において、前記甲革(11)の下部における直接射出によって型成形され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持して前記底革(13)を前記甲革膜(12)へ密封するために、それを通して浸透した前記高分子材料によって含浸され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆するように前記底革(13)へ周辺で密封されていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項10】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(15)において、事前型成形されて、接着剤によって前記甲革(11)の下部に結合され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持して前記底革(13)を前記甲革膜(12)へ密封するために、それを通して浸透した前記接着剤によって含浸され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、密封部を形成するために前記底革(13)へ周辺で接続され、それによって、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆していることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項11】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、前記組付中底(15)において、事前型成形されて、接着剤によって前記甲革(11)の下部に結合され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持するために、それを通して浸透した密封用接着材料によって含浸され、前記底革(13)は、前記甲革膜(12)への密封を完全なものにするために、前記密封用接着材料により含浸された前記密封要素(14)へ、接着剤によって密封され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆して前記底革(13)への密封部を形成するように、周辺で接続されていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項12】
前記甲革(11)に、前記組付中底(15)への接続のためのフラップが設けられ、これらのフラップは、前記密封要素(14)と前記底革(13)との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ」作業法によって、その下方で折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項13】
当該靴は、第2実施形態では、前記組付中底(115)を2つ備え、その第1組付中底(115a)は、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、前記密封要素のうちの第1密封要素(114a)を構成する第1フレームによって包囲された第1中心要素(128a)を備え、その第2組付中底(115b)は、前記第1中心要素(128a)における下向き領域において前記透湿性・防水性インサート(116)によって構成され、かつ、前記密封要素のうちの第2密封要素(114b)を構成する第2フレームによって包囲された第2中心要素(128b)を前記2つの組付中底(115a,115b)の間に備え、前記第1密封要素(114a)は、前記甲革膜(112)を備えている内側ライニング(119)へ周辺で接続されており、また、前記第2密封要素(114b)は、対応する接続領域を跨ぐように配置され、前記第2密封要素(114b)は、前記甲革(111)へ周辺で接続され、前記第1密封要素(114a)は、前記第2密封要素(114b)と前記透湿性・防水性インサート(116)との間の接続のための領域に重ね合わされ、かつ、同領域を跨いでいることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項14】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(115a,115b)において、前記甲革(111)の下部の上への直接射出によって型成形され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と、前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、また、それらを前記底革(113)へ密封するために、それらを通して浸透した前記高分子材料によって含浸されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項15】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、事前型成形されるとともに、前記組付中底(115a,115b)において、接着剤によって前記甲革(111)の下部に結合され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、また、それらを前記底革(113)へ密封するために、それらを通して浸透した前記にかわによって含浸されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項16】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、事前型成形されるとともに、前記組付中底(115a,115b)において、接着剤によって前記甲革(111)の下部に結合され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と、前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、それらを通して浸透した密封用接着材料によって含浸され、前記底革(113)は、前記密封用接着材料により含浸された前記第2密封要素(114b)へ接着剤によって密封されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項17】
前記甲革(111)は、前記第2組付中底(115b)への接続のためのフラップ(130)を有し、これらのフラップは、前記第2密封要素(114b)と前記底革(113)との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ」作業法によって、前記第2組付中底(115b)の下方に折り曲げられていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項18】
第3実施形態では、前記組付中底(215)は、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素(228)を備え、前記密封要素(214)は前記中心要素(228)に関する枠によって構成され、前記甲革(211)は、「AGO靴型合わせ」作業法によって前記密封要素(214)と前記底革(213)との間にそれ自体の一部分が介在されるように、それに結合された前記甲革膜(212)とともに、前記密封要素(214)に関する下向き領域に接続され、前記甲革膜(212)の下部フラップが、前記甲革(211)と前記密封要素(214)との間でそれらの接続部において挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項19】
前記底革(213)は、少なくとも前記中心要素(228)において、前記透湿性・防水性インサート(216)と、対応する前記透湿性部分(218)とを有していることを特徴とする請求項18に記載の靴。
【請求項20】
前記中心要素(228)は、前記透湿性・防水性インサート(216)によって構成されていることを特徴とする請求項18に記載の靴。
【請求項1】
甲革(11,111,211)を備えてなり、この甲革が、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である甲革膜(12,112,212)によって、少なくとも一部分で裏張りされ、前記甲革膜(12,112,212)が、液体状態にある水に対して不透過性である底革(13,113,213)へ密封状に接続されている防水性・透湿性の靴であって、前記密封状接続は、組付中底(15,115,215)の中に含まれた密封要素(14,114,214)によってもたらされ、前記密封要素(14,114,214)は、にかわ、密封用接着剤、あるいは前記底革を設けるための高分子材料のような密封材料に関して透過性であり、前記密封要素(14,114,214)は、前記甲革膜(12,112,212)を把持する前記密封材料で含浸されているとともに、前記底革(13,113,213)へ接続されているか、あるいは、それとともに単一体を形成し、前記底革(13,113,213)を前記甲革膜(12,112,212)へ密封していることを特徴とする防水性・透湿性の靴。
【請求項2】
当該靴は、透湿性・防水性インサート(16,116,216)を備え、このインサートは、液体状態にある水に対して不透過性であって水蒸気に対して透過性である同インサートの膜(17,117,217)を含み、前記インサートは、少なくとも1つの開口によって、あるいは複数の孔によって画定された、前記底革(13,113,213)の少なくとも1つの透湿性部分(18,118,218)に配置され、この透湿性部分は、当該靴の液体状態にある水に対する耐密性のために少なくとも前記密封要素(14,114,214)によって密封状に接続されている前記透湿性・防水性インサート(16,116,216)、前記底革(13,113,213)および前記甲革膜(12,112,212)のうちの少なくとも2つを被覆し、前記密封要素(14,114,214)は、前記透湿性部分(18,118,218)の周辺領域と、それを被覆する前記インサートの前記膜(17,117,217)の周辺領域とに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記密封要素(14,114,214)は、3次元布地、合成材料から作られたメッシュ、金属材料から作られたメッシュ、およびアラミド繊維布地の中から選択された材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項4】
当該靴は、細かいナイロンメッシュ(20)を備え、このナイロンメッシュは、前記甲革膜(12,112,212)へ、その取り扱いを改善するために、密接状に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項5】
当該靴は、内側ライニング(19)を備え、この内側ライニングは、
−連続気泡型発泡ポリマーから作られた透湿性パッド(21)、
−当該靴(10)の内側にある透湿層(22)
のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項6】
前記甲革膜(12,112,212)と前記インサートの前記膜(17,117,217)とは、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、および同種の他のものの中から選択された材料から作られていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項7】
前記透湿性・防水性インサート(16,116,216)は、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)の下方に配置された透湿性支持層(23)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)を補強するために、合成材料から作られ、前記インサートの前記膜(17,117,217)に関する上向き領域に結合された透湿性の細かいメッシュ(24)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)と前記支持層(23)との間における衝撃に対してその膜を保護するために、前記インサートの前記膜(17,117,217)に関する下向き領域に結合された透湿性保護層(25)、
−前記インサートの前記膜(17,117,217)と前記支持層(23)との間にあり、穿孔および切断に対する高い抵抗性がある透湿層(26)
のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項8】
当該靴は、第1実施形態では、透湿性であるかあるいは散乱状に穿孔された内側中底(27)を備え、この内側中底は、前記甲革膜(12)を含んでいる前記内側ライニング(19)の下方端縁に周辺で結合され、前記組付中底(15)は、前記内側中底(27)において、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素(28)を備え、前記密封要素(14)は、前記中心要素(28)に関する枠によって構成され、周辺で前記甲革(11)へ接続され、かつ、前記内側ライニング(19)を前記内側中底(27)へ接続するための領域を跨ぐように配置され、前記底革(13)は、少なくとも前記中心要素(28)において、前記透湿性・防水性インサート(16)と、対応する前記透湿性部分(18)とを有していることを特徴とする請求項5に記載の靴。
【請求項9】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(15)において、前記甲革(11)の下部における直接射出によって型成形され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持して前記底革(13)を前記甲革膜(12)へ密封するために、それを通して浸透した前記高分子材料によって含浸され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆するように前記底革(13)へ周辺で密封されていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項10】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(15)において、事前型成形されて、接着剤によって前記甲革(11)の下部に結合され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持して前記底革(13)を前記甲革膜(12)へ密封するために、それを通して浸透した前記接着剤によって含浸され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、密封部を形成するために前記底革(13)へ周辺で接続され、それによって、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆していることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項11】
前記底革(13)は、高分子材料から作られ、前記組付中底(15)において、事前型成形されて、接着剤によって前記甲革(11)の下部に結合され、前記密封要素(14)は、前記甲革膜(12)を把持するために、それを通して浸透した密封用接着材料によって含浸され、前記底革(13)は、前記甲革膜(12)への密封を完全なものにするために、前記密封用接着材料により含浸された前記密封要素(14)へ、接着剤によって密封され、前記透湿性・防水性インサート(16)は、液体状態にある水に対する前記底革(13)の耐密性のために、また、前記透湿性・防水性インサート(16)での水蒸気に対するその透過性のために、前記透湿性部分(18)を被覆して前記底革(13)への密封部を形成するように、周辺で接続されていることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項12】
前記甲革(11)に、前記組付中底(15)への接続のためのフラップが設けられ、これらのフラップは、前記密封要素(14)と前記底革(13)との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ」作業法によって、その下方で折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項13】
当該靴は、第2実施形態では、前記組付中底(115)を2つ備え、その第1組付中底(115a)は、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔され、かつ、前記密封要素のうちの第1密封要素(114a)を構成する第1フレームによって包囲された第1中心要素(128a)を備え、その第2組付中底(115b)は、前記第1中心要素(128a)における下向き領域において前記透湿性・防水性インサート(116)によって構成され、かつ、前記密封要素のうちの第2密封要素(114b)を構成する第2フレームによって包囲された第2中心要素(128b)を前記2つの組付中底(115a,115b)の間に備え、前記第1密封要素(114a)は、前記甲革膜(112)を備えている内側ライニング(119)へ周辺で接続されており、また、前記第2密封要素(114b)は、対応する接続領域を跨ぐように配置され、前記第2密封要素(114b)は、前記甲革(111)へ周辺で接続され、前記第1密封要素(114a)は、前記第2密封要素(114b)と前記透湿性・防水性インサート(116)との間の接続のための領域に重ね合わされ、かつ、同領域を跨いでいることを特徴とする請求項2に記載の靴。
【請求項14】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、かつ、前記組付中底(115a,115b)において、前記甲革(111)の下部の上への直接射出によって型成形され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と、前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、また、それらを前記底革(113)へ密封するために、それらを通して浸透した前記高分子材料によって含浸されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項15】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、事前型成形されるとともに、前記組付中底(115a,115b)において、接着剤によって前記甲革(111)の下部に結合され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、また、それらを前記底革(113)へ密封するために、それらを通して浸透した前記にかわによって含浸されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項16】
前記底革(113)は、高分子材料から作られ、事前型成形されるとともに、前記組付中底(115a,115b)において、接着剤によって前記甲革(111)の下部に結合され、前記第1密封要素(114a)および前記第2密封要素(114b)は、前記甲革膜(112)と、前記インサートの前記膜(117)とを把持するために、それらを通して浸透した密封用接着材料によって含浸され、前記底革(113)は、前記密封用接着材料により含浸された前記第2密封要素(114b)へ接着剤によって密封されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項17】
前記甲革(111)は、前記第2組付中底(115b)への接続のためのフラップ(130)を有し、これらのフラップは、前記第2密封要素(114b)と前記底革(113)との間にそれらの一部分が介在されるように、「AGO靴型合わせ」作業法によって、前記第2組付中底(115b)の下方に折り曲げられていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項18】
第3実施形態では、前記組付中底(215)は、水蒸気に対して透過性であるかあるいは散乱状に穿孔された中心要素(228)を備え、前記密封要素(214)は前記中心要素(228)に関する枠によって構成され、前記甲革(211)は、「AGO靴型合わせ」作業法によって前記密封要素(214)と前記底革(213)との間にそれ自体の一部分が介在されるように、それに結合された前記甲革膜(212)とともに、前記密封要素(214)に関する下向き領域に接続され、前記甲革膜(212)の下部フラップが、前記甲革(211)と前記密封要素(214)との間でそれらの接続部において挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項19】
前記底革(213)は、少なくとも前記中心要素(228)において、前記透湿性・防水性インサート(216)と、対応する前記透湿性部分(218)とを有していることを特徴とする請求項18に記載の靴。
【請求項20】
前記中心要素(228)は、前記透湿性・防水性インサート(216)によって構成されていることを特徴とする請求項18に記載の靴。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2012−513223(P2012−513223A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541304(P2011−541304)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066442
【国際公開番号】WO2010/072547
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502346105)ジェオックス エス.ピー.エー. (27)
【氏名又は名称原語表記】GEOX S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Feltrina Centro 16,31044 MONTEBELLUNA(Treviso),Localita Biadene,ITALY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066442
【国際公開番号】WO2010/072547
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502346105)ジェオックス エス.ピー.エー. (27)
【氏名又は名称原語表記】GEOX S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Feltrina Centro 16,31044 MONTEBELLUNA(Treviso),Localita Biadene,ITALY
【Fターム(参考)】
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